雪歩「ど、どういうこと！？　そんな、いきなりお別れだなんて！！！」

可憐「理由、わかりませんか？」

雪歩「う、うん。だって、昨夜だってあんなに深く愛を育んだのに……！」

可憐「戯言ですね。そのひんそーな胸に手をあてて、よく考えてみたください」ﾊﾞｲﾝｯ

雪歩「ううっ………わからない、わからないよっ！」

可憐「はぁ。じゃあ、聞きますけど」

雪歩「え？」

可憐「私とお茶、どっちが大切なんですか？」

雪歩「！？　も、もちろん可憐ちゃんですぅ！」

可憐「今、一瞬、迷いましたよね？」

雪歩「迷っていないよ！」

可憐「嘘だッ！！！」

雪歩「！？！？？！」

可憐「0.765秒、返事が遅れていましたよ？」

雪歩「そ、そんなのって……」

可憐「さよなら、雪歩ちゃん。穴にでも埋まっていてください」

雪歩「可憐ちゃん！？　待って！　可憐ちゃーーーーーん！！！」






雪歩「――――はっ！！！！　あ、あれ？　私の部屋……」

雪歩「………な、なんだ夢かぁ。よかったぁー、ぐすっ、うう……うん？」ﾁﾗｯ

雪歩「もうこんな時間ですぅ！　今日は朝からお仕事があるから、早く行かないと！！！」

雪歩「はぁ……はぁ…ま、間に合いましたぁ。お、おはようございますー」ｶﾞﾁｬｯ



春香「へー、それじゃあ、可憐ちゃん、もういないんですね」

律子「そうなのよ。ずいぶん急な話だったけどね」

雪歩「え―――？」ｵﾓﾜｽﾞﾆﾓﾂｦﾕｶﾆｵﾄｼﾎ

春香「うん？　あ、雪歩。おはよう。あのね、可憐ちゃんが……って、雪歩？」

雪歩「ぐすっ……」ｼﾞﾜｯ

律子「えっ！？　どうして泣き出すのよ？！」

数分後

春香「落ち着いた？」

雪歩「うん……な、なーんだ。可憐ちゃんに急なオファーが入って、１時間前ぐらいに出発したってことかぁ。もうっ、春香ちゃんったら、とんでもないタイミングでとんでもないこと言いだすんだから、ひどいですぅ」

春香「はいはい」

律子「あの若手人気女優の代役らしいわ。Pの話では、制作側は元々、企画段階でその人と可憐のどちらを起用するか迷っていたそうなんだけど、ネームバリューをとったみたいね」

雪歩「でも、その人がつい昨日、別番組の収録で怪我しちゃった、と……」

春香「ほら、○○○って人」

雪歩「え？　たしか以前、私と可憐ちゃん、それに恵美ちゃんたちも出演したドラマで、えっと……可憐ちゃんたち演じるバニーポリスの幹部を演じていた人だよね？」

春香「そうそう。雪歩も少しはお話しなかった？」

雪歩「わ、私は全然……。あ、でも可憐ちゃんはわりと親しげに話しかけられていたなぁ。私は思わず、歯ぎしりしていた気がしますぅ」

春香「えぇ……」

律子「怪我をした当人も、可憐なら任せられる、って感じみたいわ。と言っても、別にドラマや舞台の代役ってわけではないんだけどね」

雪歩「へぇ。じゃあ、どんなお仕事なんですか？」

春香「4泊5日、秘境で幻の香木探しをするらしいよ」

雪歩「！？」

律子「なかなかマニアックな企画よね。ちゃんと数字とれるのかしら………って、雪歩？」

雪歩「あ、あわわわわわわ」

春香「なに、今度はどうしたの？」

律子「まぁ、だいたい予想はつくけど」

雪歩「なんで二人ともそんなに冷静なんですかぁ！？！？！？　むしろ冷製ですぅ！！　冷たすぎるよ！！」

春香「どうどう、落ち着いて雪歩」

雪歩「だ、だって、しばらく可憐ちゃんと会えないってことだよ！？」

律子「そうね。場所が場所だけに下手したら、連絡自体、頻繁には難しいかもしれないわね」

雪歩「……ちょっと、急用を思い出しました。席を外させてもらいますぅ」

律子「待ちなさいっての。そんな簡単に行けるところじゃないわよ？」

春香「あずささんのテレポート借りて、運がよければ、かなぁ」

雪歩「うう……そ、そんな…。可憐ちゃんと肌を重ねられない日々を過ごすなんて、ひどい拷問ですぅ」

春香「重ねたことあるの？」

雪歩「まだないけど……」

春香「じゃあ、いいじゃん」

雪歩「よくないよ！！　あの笑顔を見ることができない、あの声も聞けない、香りも嗅げないなんて……！」

春香「でも、心は繋がっている。でしょ？」ﾄﾞﾔｯ

雪歩「は？　そんなふわっとしたあれやこれやでどうにかなるなら、バニーポリスはいらないですぅ」ﾔﾚﾔﾚﾎ

春香（こいつめんどくさいな……）

律子「ん、ん。まぁ、実際、いつもみんなで一緒にいることが難しいのはわかるでしょう？　でも忙しいってのは悪くないことよ。劇場の1人1人がアイドルとして世間に認知されて、求められるべきよね。今回のロケで、きっと可憐はまた1つ、アイドルとしても、人としても成長してくると思うわ」

雪歩「………」

律子「だからね、雪歩。ここは先輩として、どっしり構えて、帰ってきた時にあたたかく迎えてあげればいいじゃない」

雪歩「……わかりました。可憐ちゃんの、新しい下着を見繕っておきますぅ」

春香（そういう成長じゃない…！！）

3日後　劇場　

恵美「叶えたい想いに純粋なまま～♪　朝焼けは高鳴りへのクレッシェンド～♪っと……琴葉の次のソロ曲、どっちが実装されるのかなー」ｶﾞﾁｬｯ

雪歩「」ﾔﾂﾚﾎ

恵美「雪歩！？　ど、どったの！？」

雪歩「足りない………」

恵美「へ？」

雪歩「可憐ちゃんが、いない……」

恵美「あー……」

恵美「電話とかメールはしたの？」

雪歩「」ｺｸｯ

恵美「それで？」

雪歩「電話はろくに繋がらないし、忙しいみたいでメールはそんなに返してくれないんですぅ」

恵美「あー……」

雪歩「このままじゃ、私……」

恵美「雪歩……？」

雪歩「認めちゃダメなの　分かってるの～♪　言い聞かせて逃げた「想い」　出口なんて知らないよ～♪」ﾀﾁｱｶﾞﾘﾎ

恵美「！？」

雪歩「止まれない（壊れそうなの）　…アタシ」ｽｯ､ｽｯ､ｽｯ

恵美（振り付けまで！？）

雪歩「手渡せない言葉があるの～♪　もうずっとここで立ち止まっているよ　失くせないよ　笑顔の距離、まだ…（動けない）～♪」ﾈｯｼｮｳﾎ

恵美（え、えっと……？）

雪歩「（可憐ちゃんは）あとどれだけ、ロケしているの？～♪」

恵美「替え歌？！　もう2日ぐらいだよ！！」

雪歩「書きなぐった（MY詩集の）ページに染みてく　小さな雨粒（Let me know, Where's Karen…？）～♪」ﾏﾀﾞｳﾀｳﾎ

恵美「どこって、秘境でロケだよ、そこにいるはずだよ！」

雪歩「消えてく―――フローズン・ワールド」ｷﾒﾎﾟｰｽﾞｯ

恵美「ワードね！？」

雪歩「ふぅ………二番いっていいかな？」

恵美「にゃはは……遠慮してくれる？」

雪歩「あ、恵美ちゃん。おはよう」

恵美（今、気づいたの？！）

雪歩「そういえばね、私って初期の企画段階では恵って名前だったみたいね」

恵美「へ、へぇ……」

雪歩「と、いうわけで恵美ちゃん。頼まれたらイヤと言えない恵美ちゃん」

恵美「ど、どうして言い直したの？」

雪歩「可憐ちゃんと同じ16歳で、可憐ちゃんに匹敵する、スタイルがグンバツ、ザギンのシースーな恵美ちゃん」

恵美（ダメだ、この子……早くなんとかしないと…！）

雪歩「抱きしめていい？」ﾆｺｯ

恵美「え？」

雪歩「はぐはぐゆきぽっぽしちゃっていいですかぁ……？」

恵美「……！」

雪歩「無言は肯定、だよね―――」ﾕﾗｯ


ｶﾞｷｨｨｨﾝｯ！

雪歩「！！　琴葉……ちゃん？」

琴葉「間に合ったみたいね。予習しておいてよかった。恵美、大丈夫？」

恵美「いや、もう何がなんだか……」

雪歩「デストレイピア……まさかまだ扱えるなんて、ね」ｸﾞｸﾞｸﾞｯ

琴葉「見たところ普通のスコップだけど……さすがね、雪歩ちゃん」ｸﾞｸﾞｯ

恵美「えぇ……」

ｷﾝｯ､ｶﾞｷﾝｯ､ｷﾝｷﾝｷﾝ､ｶﾞｯ！！！！

琴葉「！！　もらった―――っ！」

雪歩「ふふっ、それはどうかな」ﾆﾔﾘﾎ

琴葉「穴……？！　い、いつの間に！？」

恵美「琴葉！！」

琴葉（ダメ、間に合わない……！）

雪歩「これで終わりですぅ！！」


雪歩「！？　防がれた！？」

？？？「ふぅー……っと」

エレナ「お待たせだヨ！」

琴葉・恵美「エレナ！」

雪歩「くっ……」

琴葉「形勢逆転ね。雪歩ちゃん、恵美のことは諦めて。ことめぐ、ことエレは許されても、ゆきめぐは異端なの」

雪歩「マイナーカプ推しだって幸せになっていいはずだ！」

恵美（なんか台詞をとられた気分……）

エレナ「ウーン、じゃあ、しかたないネ。ここはワタシのデスサンバで……」

恵美「待って、2人とも」

琴葉「恵美……？」

恵美「ねぇ、雪歩。もしそうしたいのなら、いいよ、いくらでも私に抱き着きなよ」

琴葉・エレナ「！？」

雪歩「………」

恵美「でも、ほんとは雪歩が一番わかっているよね？　可憐の代わりなんて誰にもできないって」

雪歩「！」

恵美「こんなところで馬鹿やってないで、やることあると思う。少なくとも私は、今の雪歩を見て可憐が喜ぶなんて思えない」

雪歩「う………ううっ」ｽｺｯﾌﾟﾕｶﾆｶﾗｰﾝッ

エレナ「ユキホ……」

琴葉「行こう、恵美、エレナ。これ以上は……私たちじゃどうしようもできないから」

雪歩「うわぁああああーん…！！！　可憐ちゃぁぁああん」ﾄﾞｳｺｸﾎ

ﾔｻｼｲｶｵﾘ ﾉｺﾙｽﾃｰｼﾞ～♪


雪歩「！！　可憐ちゃんからの着信……！？」

可憐『も、もしもし、雪歩ちゃん？』

雪歩「う、うん！　あ、あれ？　今日は話し声、クリアに聞こえるね？」

可憐『えっと……今は、まだ町のほうにいますから……むしろやってきたというか……その…』

雪歩「可憐ちゃん……？」

可憐『す、すみません！　忙しかったですよね！？　雪歩ちゃんのことだから、お、お仕事頑張っているはずですもんね……』

雪歩「え？　あ、えっと、そ、そういうわけじゃ……」

可憐『もしかして学校でした！？　す、すすすみません、そうですよね、平日の夕方ですもんね、えっと、じゃあ、私、これで―――』

雪歩「待って！！　あの、何か用事があって電話してきてくれた、とかじゃないの？　たとえば…うーん……明日の夜に放送予定の、春香ちゃんが1人漫才に挑戦するも滑り倒してしまう番組を録画しておいてほしい、とか」

可憐『ち、ちがいます…！　それについてはもう準備できていて……。私はただ…』

雪歩「ただ？」

可憐『雪歩ちゃんの声がちゃんと聞きたくなって』

雪歩「！！」ｷｭﾝｯﾎ

可憐『なんて、えっと、め、迷惑でしたか……？』

雪歩「…………ない」

可憐『え？』

雪歩「そんな、迷惑なんてことないですぅ！！！………ぐすっ」

可憐『雪歩ちゃん？　な、泣いているんですか』

雪歩「き、気のせいだよ？　お茶が目に染みただけですぅ」

可憐『あっ、もう時間が……えっと、えっと―――雪歩ちゃん！』

雪歩「うん？」

可憐『わ、私はここ数日雪歩ちゃんと会えなくて、寂しかったです……！　だ、だから帰ってきたら、その、2人でお茶しましょうね♪』

雪歩『約束しますぅ！』ｱﾙｺｳｰ　ﾊﾃﾅｲﾐﾁｰ　ｳﾀｵｳｰ　ｿﾗｦｺｴﾃ

物陰にて

春香「やれやれ、とりあえずこれで暴走が収まってくれるといいんですけどね」

律子「そうね。………ねぇ、その手に持っているのは、雪歩のために作ってきたお菓子？」

春香「！！　べ、べつに雪歩のためだけじゃないですよ」

律子「ふうん」

春香「律子さんが持っているその本は？」

律子「ああ、これ？　気晴らしにと思ってね、雪歩に貸そうかなって……でも、やめておこうかしら」

春香「どんな話なんですか？」

律子「ん？　ありがちな、でも、だからこそグッとくるラブストーリーよ。一度は離れ離れになった恋人たちが無事に再会を果たしてハッピーエンド」

春香「なるほど、ふふっ」



雪歩「でね、そのとき、天界から颯爽と現れた亜美ちゃんとエミリーちゃんがね……」ﾏｼﾝｶﾞﾝﾄｰｸﾎ

可憐『あ、あの！　もう電話している時間は……うう』

雪歩「ふふふっ、可憐ちゃん、大好きですぅ！！！！」


おしまい…です！

次か、次の次あたりは暴走雪歩じゃないのを書きたいなぁ（書けるとは言っていない）

おつ！面白かった
ﾔﾂﾚﾎ好き

暴走しないゆきかれなんてあるんですか？(偏見