それからの出来事()
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【百合注意】可憐「ここが白雪ミリオン女学園……」
1 :
お兄ちゃん
2020/12/17 14:44:36
ID:2yD18d71ow
百合注意です。苦手な方はブラウザバックお願いします。
一部、年齢の変更およびそれに伴うアイドル間での呼称の改変があります。
地の文あったりなかったりです。人称も混ぜこぜ。そのあたりの統一感を気にする方はすみません。
2 :
プロデューサーはん
2020/12/17 14:45:07
ID:2yD18d71ow
春の夜に眠れぬ少女が1人。
篠宮可憐は暗い部屋で天井を見つめる。暗さに慣れた目はしかし、天井に何も見いだせずにいた。
目を閉じれば明日に迫った入学式、高校生になる自分の姿をいくらでも思い描けるはずであるが。
可憐は徐に起き上がると部屋の明かりをつけた。壁にかかったハンガー、そこに吊るされた真新しい制服の前に立つ。
溜息をひとつ。深く。期待と不安の入り混じり加減は、今や後者が強く、彼女を全身をこわばらせている。
可憐「素敵な制服……わ、私にはもったいないぐらい……うう…」
襟を正し、肩を撫で、スカートのプリーツを指でなぞる。
可憐「会えるのかな……会えるといいな」
くしゅんっ、と。思い出に浸るのを肌寒さが邪魔をして。窓を叩く風が早く眠れと言っているようでもあった。
可憐「……雪歩ちゃん」
少女の呟きは、深まる夜にすっと吸い込まれてそれっきりだった。
3 :
Pさぁん
2020/12/17 14:45:22
ID:2yD18d71ow
春の朝に臆する少女が1人。
慣れない通学バスに揺られること30分足らず、心なしか好奇の視線を向けられながら。
白雪ミリオン女学園の校門の前へとたどり着いた可憐は、すーっ、はーっと呼吸を整える。
可憐「ここが白雪ミリオン女学園……」
おずおずと門をくぐって、玄関にいたるまで、一歩ごとに、ほんの少しずつ明らかになるその広大な敷地に圧倒される可憐。
本当に自分はここにいていいのだろうか、と何度も自問する。訊ける人がいれば訊きさえしたかもしれない。
が、少女は1人であった。だんだんと歩を鈍らせる可憐をよそに、談笑しながら少女を追い越す生徒たち。
その大半は可憐のことを二度見していたのだが、その事実とその眼差しの意味など考える余裕はなかった。
4 :
変態大人
2020/12/17 14:45:37
ID:2yD18d71ow
気がつけば立派な講堂の中、整列するパイプ椅子の1つに可憐は座っていた。縮こまっている。視線は床を離れることはない。
どうやって受付を済ませ、どんな道をたどってきたのか、ろくに覚えていない。
少女はなけなしの勇気をこれでもかと振り絞って、どうにかこうにかここまできたのだった。
憔悴。これからがはじまりだというのに、逃げ出したい気持ちでいっぱいで。
そんな状態のまま式典がいよいよ始まる。それまで囁き声が犇めいていた空間が一瞬で厳かな静けさで満たされた。
学園長の挨拶から始まって、式典は滞りなく進行していく。
起立や礼をする時以外は、ほとんど俯いたままの可憐も、耳だけは演壇側へと集中させていた。
可憐(やっと終わり、かな。でも、これから各教室に戻って、自己紹介とか……内部進学組の子たちは、しないのかな? じゃ、じゃあ、もしかして私から、なんてこともあり得るんじゃ……うう…)
式の次のことを考えていた可憐に、聞き慣れぬ言葉が司会進行を務める教師から飛び出す。
可憐(生徒代表淑女・第81代『白雪』からのご挨拶―――?? でも、さっき生徒会長の田中なんとかさんの挨拶があったのに…?)
5 :
プロヴァンスの風
2020/12/17 14:45:51
ID:2yD18d71ow
可憐は周囲の空気が変わるのを感じる。なんと言ったらいいのだろう、そう、なんだか浮き立つような。
??「ご紹介に与りました―――」
可憐「っ!!」
思わず可憐は顔を上げた。その声に聞き覚えがあったから。瞬く間に記憶が甦る、あの頃の光景が、彼女の香りが、声が、笑顔が―――
けれども、そんな思い出をすべて振り払うだけの現実が、視線の先にあった。1人の少女。
過去と照らし合わせれば、大人びていて、いっそう美しくある、花咲く乙女。
可憐「雪歩ちゃん…!」
それは前夜の呟きよりもはっきりと空気を震わせる。震わせてしまう。慌てて口をつぐむ可憐。
が、周囲の生徒がいっせいに自分へと視線を向けるのがわかった。しかもその目にこめられているのは決して好意ではないのがピリピリと伝わる。
可憐は再び俯く。項垂れて、自分の過ちがどうか彼女の迷惑にならないことを強く願う。
6 :
おやぶん
2020/12/17 14:46:14
ID:2yD18d71ow
1人の生徒の声、私語などものともせずに『白雪』の挨拶は進む。
可憐はほとんど無意識に顔をまたあげていた。その声の主を見ずにはいられなかったのだ。
確かめずにはいられなかった。本当に彼女であることを、他でもない、自分がこの学園を志した理由、憧れあるいはそれ以上の何か熱く切ない気持ちを寄せる相手であるのを……。
可憐(雪歩ちゃんだ。間違いない。雪歩ちゃんがいる―――)
夢中で雪歩の声を聴き、姿を目に焼き付ける可憐。やがて挨拶が終わり、少女は深々とお辞儀をして壇上から去った。
それでもなお夢心地が続いていた可憐は、教室へと帰るために起立して回れ右をする号令に遅れて反応することとなった。
羞恥よりも高揚感が勝っていた。今すぐに彼女のもとへと駆け出して、何か一言でもいい、言葉を交わしたい、何から、何を話そう、話せばいいんだろう……そんなことを思いながら可憐は教室へとふわふわと進んだ。
今朝、荷物を置きに一度入っただけの教室へと帰ると、10分間のお手洗い休憩となった。
あてがわれた席に座り、呆けている可憐にとって、周りのおしゃべりなど耳に入らなかった。
そして誰かが目の前に立っても、目に入っていなかったのである。
7 :
Pチャン
2020/12/17 14:46:28
ID:2yD18d71ow
ばんっ、と。机を叩く音がした。誰の? 私のだ。誰が? ―――えっ、この人、誰?
可憐の目の前に3人の生徒がやってきて、そのうちの1人が机を手で叩いたときでさえも、可憐はそんな調子だった。
モブ子「あなた、何様なわけ? 入学早々に、白雪様のご挨拶を邪魔するなんて、しかも『ちゃん』づけ? なんなの?」
教室にいる生徒が皆、可憐たちのほうを見やった。それから、見続ける人、さっと目線を外す人、それぞれだ。
可憐「あの……白雪様って?」
可憐は素直に訊ねた。雪歩がどういう立場であるのか、それをまだきちんと理解していなかった。それは恥ずべきことのように思えた。
だから、訊いた。そしてそれは可憐の前に立つ少女を逆撫で、憤慨させるのに十二分に役立った。
モブ子「ふざけないでっ!!! ちょっと美人で胸が大きいからって、調子に乗るんじゃないわよ!! 学園の恥さらし!!」
講堂にて可憐の近くに座っていたその少女が向ける敵意、その金切り声をまともに浴びて、可憐はようやくいつもの可憐を取り戻す。
8 :
夏の変態大三角形
2020/12/17 14:46:41
ID:2yD18d71ow
可憐(!! あわわわわわわわっ!?)
パニックとなった。見た目の華やかさとは裏腹に慌てふためくその様を、名前のとおり可憐だと感じた生徒も教室にはいたかもしれない。
だが、誰も可憐に助け舟を出してあげようという素振りを見せることはなかった。
1人をのぞいて。
??「まぁ、待ちなって。いきなり新しい子、困らせてどうすんの? とって喰うつもりなの?」
モブ子「――っ。所さんは黙っていて!」
恵美「ええー、恵美でいいよ? せっかくまた同じクラスになったんだし。たしか5年生のときぶりだっけ?」
モブ子「……! へ、へぇ、よく覚えているわね。でも、今はそんなこと―――」
恵美「なんかさぁ、あの頃と変わったね? あの頃は、ほら、いっつも……」
9 :
Pしゃん
2020/12/17 14:46:54
ID:2yD18d71ow
モブ子「!? と、所さん、思い出話は、ま、また今度でいいのよ! 私はこの生意気な子を……」
恵美「だから、恵美でいいって。ねぇ、ここはアタシに任せてくれない? 悪いようにはしないから」
モブ子「……ふんっ、なによ。生徒会の真似事? あんなのただの雑用係の集まりじゃないの。所詮、白雪会の引き立て役よ。あの生徒会長だって、」
恵美「へぇー、琴葉に文句あるわけ?」
可憐(わ、笑っている。でも、目は笑っていない……!)
モブ子「! べ、べつに興味ないわ。……いいわ、あなたに任せる。この子をちゃーんと指導しておきなさいよ。……行くわよ、2人とも」
そう言って3人は可憐たちの前から去って、廊下へと消えた。
可憐は席を立つと、恵美に頭を下げる。
10 :
Pーさん
2020/12/17 14:47:07
ID:2yD18d71ow
可憐「あ、ありがとうございます…! えっと、私……」
恵美「いいの、いいの。なんか訳ありの感じ? 今は時間ないから、あとでまた話そうよ。えっと、」
可憐「篠宮です。し、篠宮可憐」
恵美「はぁー、綺麗な名前。すっごい美人だし、まるでアイドルか女優じゃん! アタシは所恵美、恵美って呼んで、アタシも可憐って呼ぶね、にゃはは」
可憐「う、うん。恵美ちゃん、あの……1つだけ。白雪様っていうのは、」
??「白雪会について紹介するとなると、765時間あっても足りませんよ!!」
可憐「えっ!?」
恵美と可憐が話すところに、音もなく現れ、話に加わってきたのはツインテールをした生徒だった。
11 :
プロデューサー君
2020/12/17 14:47:22
ID:2yD18d71ow
恵美「……じゃあ、亜利沙も放課後、時間作ってくれる? 可憐にいろいろ教えてあげなくちゃね」
亜利沙「いいんですか!? ついでに島原先輩や田中先輩との尊いあれこれをお聞きしてもいいですか!!」
恵美「はいはい。とりあえず、可憐に自己紹介しなよ」
亜利沙「あっ! す、すみません。松田亜利沙ですっ! 新聞部に入っていて、学園内の……」
恵美「ストップ、亜利沙。話、長くなりそうだから」
可憐「私は篠宮可憐です」
亜利沙「むひょぉー! これがギャップ萌えですか!? 派手なのに、おずおずとしていて可愛い!なんだかこれは、春の嵐の予感がしますよ!!」
可憐「えぇ……」
12 :
おやぶん
2020/12/17 14:47:36
ID:2yD18d71ow
放課後に敷地内のカフェで会話する少女が3人。
可憐(お母さんに、放課後は新しくできたお友達と遊んでから帰るって連絡したら喜んでくれたなぁ……)
恵美「でさ、確認なんだけど、さっきの話だと、可憐ってうち(学園)のことをあんまり知らずに受験したわけだよね?」
可憐「う、うん。いろいろ調べたうえで、その、落ちちゃったら、がっかりするし……」
恵美「いやいや、ふつーはそーいうのをモチベーションにするって! この学校に入ったら、こーしよう、あーしよう、みたいな? あ、でも、べつに否定したいわけじゃないよ。可憐には可憐の理由、よしっ」
可憐「あ、ありがとう」
可憐(受験前は雪歩ちゃんのこと、確かめるのが怖かった。でも、今は後悔している……もっと知っておくべきだったよね)
亜利沙「ん、ん。こほん、おっほん」
13 :
せんせぇ
2020/12/17 14:47:49
ID:2yD18d71ow
恵美「どったの、亜利沙。何か喉に詰まった?」
亜利沙「ちがいますよ! ……そろそろ、いいですか? 白雪会のこと、お話しても」
可憐「よ、よろしくお願いします」
恵美「手短にしてあげなよ? ディープな部分、っていうか、わりと憶測なところは省いていいからね?」
亜利沙「了解ですっ!」
可憐(『白雪』である雪歩ちゃん……もしかして簡単には会って話せないのかな)
14 :
Pはん
2020/12/17 14:48:03
ID:2yD18d71ow
亜利沙「では、なるべく簡潔に言いましょう。白雪会というのは、この白雪ミリオン女学園にとっての象徴たる7人の生徒のこと、言わば学園のアイドルのことなんです!」
可憐「学園のアイドル……?」
恵美「それだけならどんな学校にもいると言えばいるかもだけどね」
亜利沙「ですが、白雪会は学園公式です! オフィシャルですっ! 活動には学園の予算の一部があてられるんです!」
可憐「活動って?」
亜利沙「さまざまですよ。学園内で各種行事ごとに、舞踊や歌唱を披露したり、外部に向けての学園のPRだったり」
可憐「7人とも高等部の生徒なんですか?」
恵美「ううん、そういうわけじゃないよ」
15 :
EL変態
2020/12/17 14:48:15
ID:2yD18d71ow
亜利沙「まず会を束ねる白雪様は高校3年生というのは決まっているんです。そして白雪様以外の6人は六花と称されていて、初等部・中等部・高等部から各2人ずつ選出するのが不文律となっていますね。あと、原則として任期は全員1年です」
可憐「へぇ……選挙でもするんですか?」
恵美「昔はそうしていたんだっけ?」
亜利沙「そうです。でも、話すのが憚れる程度に悲しい出来事も多々あったようでして……今は六花については白雪様にその選出が完全に委ねられていますね」
可憐「? 白雪様は?」
亜利沙「次代の白雪様選出の際には、白雪会の7人と、会を補佐する教師2人、それから生徒会長1人の計10人による投票になります。ただし、自分には投票しないことと、白雪様の票はそれだけで5票分だというのがあります」
可憐「その投票形式にも何か謂れが……?」
亜利沙「ええ、汗と涙、そして血をなしでは語ることのできない物語があるのですが……」
16 :
ぷろでゅーさー
2020/12/17 14:48:28
ID:2yD18d71ow
恵美「なしなし、そういうのはいいよ。可憐の教育によくなーい」
亜利沙「で、ですよねー」
可憐「あの、でも今日は白雪様以外の、えっと、六花の人たちは壇上にいませんでしたよね?」
亜利沙「まだ確定していませんからね。任期が1年と言いましたけれど、実際には5月の大型連休明けに、正式な会発足の行事がありまして……いえ、もっと厳密にいうと、その連休中に7人は強化合宿を行って、仲を深めつつ、その歌や踊りに……」
恵美「ようは5月からってこと。まぁ、もう少なくとも4人は決まっているらしいけどね」
可憐「そうなんですか?」
亜利沙「ええ。それまでの六花経験だったり、白雪様との交友関係だったりを考えれば、残るは高等部の1人と中等部の1人、計2枠ですね」
可憐「……………」
17 :
箱デューサー
2020/12/17 14:48:42
ID:2yD18d71ow
恵美「あー……えっとね、可憐、その……」
可憐「???」
亜利沙「も、もしかして可憐さんは、六花を目指しているんですか…?」
可憐「えっ。べ、べつにそういうわけじゃ……わ、私なんかが学園の象徴なんて」
恵美「酷なことを言うけど、可憐が選ばれることはない、かな」
可憐「え」
亜利沙「高等部からの編入組で白雪会に選出された生徒はこれまでただの1人もいないんです。これも不文律というやつなんです……」
可憐「そ、そうなんだ」
18 :
Pたん
2020/12/17 14:49:00
ID:2yD18d71ow
亜利沙「そもそも、今年度の白雪様……萩原先輩は中等部からの編入組ですが、それだって珍しいことなんです。なんでしたら、それが許されていなかった時代のほうが長くて、この白雪会というのは―――」
亜利沙が白雪会の歴史を語る中、可憐は相槌を打ちつつも、考えは別のところにあった。
六花になれることができたのなら、雪歩ちゃんといっしょに過ごせる時間が増えるはず。
でも六花になれなくたって、雪歩ちゃんとまた話すことはできる…よね?
それを確かめないと―――。
亜利沙「……と、そこで時の白雪様であった馬場さんは実のお姉さんを、」
可憐「あの、亜利沙ちゃん!」
亜利沙「は、はい? なんでしょう。ここからがいい話で……」
恵美「いいから、聞いてあげなよ」
19 :
プロヴァンスの風
2020/12/17 14:49:13
ID:2yD18d71ow
可憐「ゆ……じゃなくて、白雪様とは普通に話すことはできるんですよね? えっと、ごく普通に先輩後輩として、友達になったりっていうのは……」
亜利沙「そ、それは………」
恵美「………」
亜利沙「結論を言えば、難しいです。OMをノーツ速度300・パフェ率100でフルコンする程度に」
可憐「え――――」
亜利沙「白雪会は実質アイドルですから。学園で生活している間もそうですし、それはプライベートでもそうです。もしも下手に親交を深めようと画策するものなら……」
可憐「も、ものなら?」
亜利沙はあたりを見回す。そして声を潜める。
20 :
箱デューサー
2020/12/17 14:49:26
ID:2yD18d71ow
亜利沙「おそらく今年度もいるであろう、過激派に何をされるかわかりませんよ」
可憐「!? か、過激派?」
亜利沙「しーっ、静かに。いいですか、可憐さん。白雪会の7人は、それはもう、代々、最高に可愛い子たちなんです。同性であろうと、あるいは同性だからこそなのか、彼女たちを信奉し、彼女たちの守護を己が使命と捉え、一切の穢れを嫌う派閥も存在するんです。そういう人間にとっては、単なる友人でも、そして時には家族さえも嫉妬や憎悪の対象、排除すべきだという考えに至ることもあって、過去にはやはり悲劇があったそうなんです」
可憐「そんな……」
恵美「ほんと、どうかしているよ」
亜利沙「恵美ちゃん?」
恵美「……なんでもない、忘れて」
可憐(そんな存在に雪歩ちゃんは……)
21 :
ダーリン
2020/12/17 14:49:38
ID:2yD18d71ow
恵美「ねぇ、可憐」
可憐「な、なに」
恵美「えーっと……聞いてもいい? いや、話したくなかったらいいんだけど。その……萩原先輩との関係」
亜利沙「それは亜利沙もぜひ……って、恵美ちゃん、そんな顔しないでくださいよ! あ、亜利沙は、新しくできた友達のことをもっと知りたくて……」
恵美「ごめん、ごめん。………どう? 可憐」
可憐「その……何かもしかしたら期待されているかもしれないけど、どうってことない関係なんです」
恵美「というと?」
可憐「小学校が同じで、ほんの数年間だけ毎日のようにいっしょに遊んでくれて、それで――――」
22 :
プロヴァンスの風
2020/12/17 14:49:54
ID:2yD18d71ow
雪歩『ねぇ、可憐ちゃん。前に初恋の話したよね。結局、私たち2人揃ってまだかも、って。でもね、あのときは言えなかったけれど、ううん、わからなかったけれど、今はわかるの。だって、こんなにもお別れが……つらいから。あのね、私は―――』
23 :
番長さん
2020/12/17 14:50:08
ID:2yD18d71ow
可憐(あの日のあの言葉……それは今、2人に言うべきことじゃないよね)
可憐「それだけです。それだけなんです」
恵美「…………」
亜利沙「いや、それを知ったら、何人かは可憐さんを刺しにくるかもですよ!?」
可憐「ええっ!??!」
恵美「大丈夫、そんなことないから。もう、亜利沙、怖がらせちゃダメだって」
亜利沙「ええ、でも、萩原先輩は六花時代から昔のことは全然、公表してくれなくて……」
可憐「………」
24 :
彦デューサー
2020/12/17 14:50:23
ID:2yD18d71ow
可憐(話題、変えないと)
可憐「あ、あの。生徒会のほうは、どんな感じなんですか?」
恵美・亜利沙「「え?」」
可憐(あ、あれ? 何かまずかったかな……そういえば、あの金切り声さん、何か言っていたような…)
亜利沙「どうって………」
恵美「亜利沙、そんな目配せしなくていいよ。ありのまま、話してあげて」
亜利沙「は、はい。恵美ちゃんがそういうなら」
可憐「?」
25 :
P様
2020/12/17 14:50:36
ID:2yD18d71ow
亜利沙「生徒会は……その、運営係なんです」
可憐「運営? な、なんの?」
亜利沙「白雪会のです。もちろん、他にも普通の学校と同じような仕事もあります。でも、この学園にとって生徒会というのは、白雪会の運営という見方が強いです」
可憐「!! ということは、生徒会は白雪会の人たちと、」
恵美「ないよ、それは」
可憐「え?」
亜利沙「最も近くて最も遠い存在。そうあるべき……そう認識されるようになったのも、過去の悲劇が発端です」
恵美「………しかも、これは過去というにしては、最近のことだけどね」
26 :
der変態
2020/12/17 14:50:51
ID:2yD18d71ow
可憐(いったい生徒会と白雪会の人たちに何が……私は押し黙ってしまった2人が怖くて、何も聞けませんでした)
可憐(そしてその日は解散。白雪ミリオン女学園の生徒としての初日はこのように終えたのでした)
可憐(雪歩ちゃん……どうにかして、会いたい、話したい。でも、不安もある)
可憐(あなたは私のことを覚えていますか―――?)
27 :
Pさぁん
2020/12/17 14:51:06
ID:2yD18d71ow
可憐(学園に入学して早2週間が経ちました。編入組の生徒はメンタルケアも兼ねて、担任教師との面談が放課後にセッティングされています)
可憐「し、失礼しますっ…」
千鶴「ふふっ、そんな緊張しなくてもいいですわ」
可憐「は、はい」
可憐(二階堂先生……まだ新人だけれど生徒からの信頼は厚く、亜利沙ちゃんが言うにはここの卒業生で、六花を務めたこともあったそうです。亜利沙ちゃん曰く、白雪会経験者の卒業生のうちでは、教師は地味なほうらしいけれど……)
千鶴「正直、篠宮さんに関してはそれほど心配しておりませんの。所さんや松田さん、それに高坂さんやあの野々原さんともすぐに仲良くなるなんて、大したものですわ」
可憐「……てへへ。出会いに恵まれたなぁ、って思います」
千鶴「そうね。どう? 篠宮さんから何か相談は? 先生にしか話しにくいこともあるとは思いますの」
28 :
プロヴァンスの風
2020/12/17 14:51:20
ID:2yD18d71ow
可憐「えっと………」
可憐(悩み。真っ先に浮かぶのは、雪歩ちゃんのこと。何かあったわけではなくて。その逆。何もない。私はまだ入学してからただの一度も、雪歩ちゃんと2人きりになったことはないし、廊下での挨拶すらない。すれ違うことさえないなんて、この学園の広さがかえって恨めしく感じます。姉妹制度でもあればなぁ……なんて)
可憐「な、ないです」
千鶴「それにしては、間がありましたわね」
可憐「あの、それじゃあ、この前、恵美ちゃんから聞いた話で、学園に潜むヴァンパイアのことは――――」
千鶴「ちがいますわよね」
可憐「ち、ちがう?」
千鶴「篠宮さん、明日の放課後は用事がありまして?」
29 :
仕掛け人さま
2020/12/17 14:51:34
ID:2yD18d71ow
可憐「いえ、明日は恵美ちゃんたちが忙しいみたいなので。強いていえば、どこかの部活動見学にでもって……」
千鶴「では、白の庭にいらっしゃい」
可憐「白の庭?」
千鶴「そう。学園の誇る4つの庭。赤の庭、青の庭、黄の庭……それぞれ姫の庭、妖精の庭、天使の庭なんて大層な異称もありますが、それに並んで白の庭があるのはご存知ですわよね?」
可憐「………他の3つよりは小さくとも、特別な庭。し、白雪会が許した者しか立ち入れない神聖なる庭、でしたよね。どうして私が……」
千鶴「白雪が貴女と会って話がしたいそうですわ」
可憐「?!」
千鶴「この招待、受け入れるというならば、わたくしが適当な用事を明日の放課後に、貴女に与えて白の庭の近くまで向かわせますわ。貴女が何の理由もなしに堂々と近寄っていい場所ではありませんからね」
30 :
ご主人様
2020/12/17 14:51:45
ID:2yD18d71ow
可憐「あの、先生……」
千鶴「深くは訊ねないでほしいですわ。わたくしはただ、あの子の……白雪ではなく雪歩ちゃんの頼みを聞いただけ。貴女が応じるかは別として。どうしますの?」
可憐「………会います。会わせてください。……雪歩ちゃんに」
千鶴「そう。わかりましたわ。では、明日。今日はもういいですわよ。家に帰ってゆっくり休みなさい。あまり考えこまないようにね」
可憐「………はい」
可憐(まさかこんな形で雪歩ちゃんからコンタクトをしてくれるなんて――――嬉しい。けど、どこか不安があります。胸騒ぎが………)
バスを降りた可憐は春の夕焼けを見つめながら、明日晴れることを祈るのだった。
31 :
プロデューサーさま
2020/12/17 14:51:57
ID:2yD18d71ow
翌日 曇天の放課後
可憐は千鶴の手引きによって、白の庭付近まで誰にも目撃されることなく到着した。
可憐(ここを抜ければ、入口はすぐそこ――――)
??「あら? あなたは………」
可憐「!? あ、あなたは――――――天空橋朋花さん?」
朋花「ふふっ。いかにも、私は六花の1人、天空橋朋花です~。と、学園内で紹介する機会もあまりないのですが~」
可憐(中等部の六花の1人にして、いずれ白雪の名を得ることがほぼ確定しているという女の子……亜利沙ちゃんから写真を見せてもらったことはあったけど、こんなときにこんなところで会うなんて…!)
可憐「えっと、私は、その……」
32 :
プロデューサー
2020/12/17 14:52:09
ID:2yD18d71ow
朋花「……そう狼狽えなくてもいいですよ~? お名前を聞かせていただいてもいいですか~?」
可憐「こ、高等部1年、篠宮可憐です」
朋花「なるほど、あなたが………ふふっ」
可憐「わ、私のことを知っているんですか!?」
朋花「多くは知りませんよ~。ただ、二階堂先生から、今日ここで貴女をお見かけしても、黙って通してほしいとお願いされています~」
可憐「二階堂先生が……?」
朋花「手料理まで持参されまして~、あの方は雪歩さんには何かと甘いところがありますからね~」
可憐(どういうことなんだろう……?)
33 :
下僕
2020/12/17 14:52:21
ID:2yD18d71ow
朋花「篠宮さん、お花は好きですか?」
可憐「え? は、はい。癒される香りを持っている種類もありますし……」
朋花「私も好きなんです~。ここのお庭のお世話を任されて光栄ですよ~。今日はもう帰るところですが~」
可憐「そ、そうなんですね」
朋花「でも、時々、悪い虫がつくこともありまして~。それにも対処しないといけないんです~」
可憐「それは……大変ですね」
朋花「はい~。でも、それだけではないんですよ~?」
可憐「………」
34 :
Pーさん
2020/12/17 14:52:33
ID:2yD18d71ow
朋花「お花がいつも私の慈愛に応えてくれるとは限らないんです~。どんなに大切に育てていたつもりであっても、たとえばその棘が私に指に刺さることがありますね~。他にも枯れてしまうことだって」
可憐「あの、私、そろそろ……」
朋花「篠宮さん、たとえ棘が刺さって血を流したとしても、それはお花が貴女を嫌っているわけではないんです~。ただ、何か、そう、距離の取り方が間違ったんでしょうね~」
可憐「……天空橋さん? えっと…」
朋花「ふふっ。引きとめて申し訳ありません~。これでは約束を破ったことになるかもしれませんね~。このことは二階堂先生には内緒にしておいてくださいね~?」
可憐「は、はい」
可憐は朋花に別れを告げると、足早に白の庭の中へと入った。
35 :
P様
2020/12/17 14:52:47
ID:2yD18d71ow
朋花「………桃子ちゃんが篠宮さんのことを知ったら、少々、厄介なことになるかもしれませんね~」
学園の若き聖母こと天空橋朋花はそう呟いて、空を見上げた。
朋花「雨、降りそうですね。早く帰りましょう~」
白の庭の中に入った可憐は温室の前に1人の少女が立っているのを見つける。
可憐は離れたところから大きな声を出して、彼女の名を呼ぼうとしてやめた。
それは、はしたないことだ。この学園の乙女らしからぬ行為だ。
いや――そんなのが言い分けであるのは可憐自身が一番わかっている。
声をかけることができなかったのだ。遠くからでもわかったから。そこに立つ、萩原雪歩は微笑みを浮かべてなどいない、と。
36 :
そなた
2020/12/17 14:53:06
ID:2yD18d71ow
可憐「ゆ、」
雪歩「入って」
近くまで来て、雪歩に声をかけようとした可憐。しかし、それは雪歩の短い言葉、指示によって阻まれる。
雪歩は温室の中に一足先に入り、可憐はその背中を追う。
あの頃の背中ではない。でも、たしかに雪歩の背中だ。
可憐は想いが溢れる。それらに逐一、名前をつけてはいられない。
幸か不幸か、雪歩は可憐に会話をすぐに促すことはなかった。
温室の中、雪歩は可憐に背中を見せたまま。しばらくしても、そのままで、話し始める。
37 :
プロデューサー様
2020/12/17 14:53:23
ID:2yD18d71ow
雪歩「可憐ちゃん。訊いていいかな」
可憐「な、なんですか」
雪歩は可憐のことを記憶していた。覚えている。覚えていてくれた。その事実に喜ぶことが許される空気ではなかった。
花の香りさえ可憐にとって今は邪魔な存在だった。
雪歩「どうしてこの学園に?」
可憐「それは――――――」
雪歩「…………」
6歩ぐらいだろうか、雪歩と可憐には距離があった。
可憐は息を深く吸い込み、吐く。そして1歩踏み出す。まだ背中は遠い。
が、声は充分に届く。そのはず。
38 :
監督
2020/12/17 14:53:39
ID:2yD18d71ow
可憐「雪歩ちゃんに、もう一度会いたかったから」
雪歩「会って、どうするの?」
可憐「えっ」
雪歩「…………」
可憐「どうって……私はただ、もう一度…」
雪歩「………」
可憐「話がしたくて」
雪歩「話? 何の?」
39 :
彦デューサー
2020/12/17 14:53:57
ID:2yD18d71ow
可憐「何のって……なんでも。たわいない、とりとめのない、そんな、どこにでもある、でも……どこにもはない、私と雪歩ちゃんだけの、おしゃべり」
雪歩「………」
可憐「そういうのがありました。あったんです。それが大切で、宝物のような時間で、だから、私は……」
雪歩「できないと思う」
可憐「!!」
雪歩「少なくともここに、学園にいる間はできないと思う。ううん、できないよ」
可憐「メールや電話も?」
雪歩「どうだろう」
可憐「………」
40 :
番長さん
2020/12/17 14:54:11
ID:2yD18d71ow
可憐は怖がる。でも、訊く。訊くしかない。
可憐「雪歩ちゃん………。雪歩ちゃんは、私に会いたくなかったですか?
雪歩「…………」
可憐「あのお別れでよかったですか?」
雪歩「可憐ちゃん。私はね……」
可憐「はい」
息を呑む。雪歩の言葉を待つ。まだ会えていない。そんな気がする。
会いたかった雪歩ちゃんに自分はまだ会えていない。
41 :
ボス
2020/12/17 14:54:22
ID:2yD18d71ow
雪歩は言う。可憐に伝える。
雪歩「私はもう会いたくなかったな」
可憐はたしかにその言葉を耳にする。
42 :
仕掛け人さま
2020/12/17 14:54:37
ID:2yD18d71ow
可憐「嘘………」
気の抜けた調子で。可憐は言う。誰に届かせようともしていない声。
可憐「そんなのって………嘘、ですよね?」
2歩進んだ。まだ背中には触れられない。
雪歩「嘘じゃないよ。私は、可憐ちゃんと再会したくなかった」
可憐「どうして、そんなこと………だって、今日、私を呼んだのは、雪歩ちゃん……ですよね?」
もう1歩進む。
雪歩「私の過去を知るあなたに、付きまとわれでもしたら嫌だから。先手を打っただけ」
43 :
EL変態
2020/12/17 14:54:50
ID:2yD18d71ow
可憐「――――っ」
あと1歩進んで、そうしたら、手が届く。もう2歩進めば、抱きしめることだってできる距離。
それなのに。
可憐の足は進まない。
雪歩「可憐ちゃん。もう一度、ちゃんとしよっか」
可憐「え……」
雪歩「おわかれ、しよう。あの時、中途半端になっちゃったから」
可憐「それって……」
44 :
Pサン
2020/12/17 14:55:04
ID:2yD18d71ow
滲む視界で、可憐は雪歩がこちらを振り向いたのが最初、わからなかった。
とめどなく流れる涙をぬぐわなければ目にできない。
俯いたままではいけない。
可憐はどうにか視界を開く。
雪歩と対面する。雪歩は、ほんの1歩だけ可憐に近づく。
そうして2人の距離はたった1歩分となる。
可憐「………雪歩ちゃん」
雪歩「………」
可憐「なんで泣いているんですか………!」
45 :
ダーリン
2020/12/17 14:55:18
ID:2yD18d71ow
雪歩「ここの花の香りに惑わされて。それだけ」
可憐「嘘、ですよね」
雪歩「どうかな……ふふっ、わかんないや」
可憐「私……よくわかりませんけれど……雪歩ちゃんは白雪であることを選ぶって、選んだってことなんですね」
雪歩「………」
可憐「………だったら、しかた、ないですよね」
雪歩「………」
可憐「私もこんな形で会いたくなかった、です」
46 :
下僕
2020/12/17 14:55:31
ID:2yD18d71ow
可憐「それでも言わせてください」
雪歩「………」
可憐「私は雪歩ちゃんのことが――――」
光った。稲光だ。
いつの間にか、空を暗雲が覆っていた。
遅れて、轟音。近くに落ちた? どうだろう。
雨の振りつけてくる音がする。
いつ、どのタイミングだったか、雪歩はもう1歩踏み出していた。
47 :
我が下僕
2020/12/17 14:55:55
ID:2yD18d71ow
可憐の口を雪歩の唇が塞いだ。
数秒の後、雪歩は再び可憐に背中を見せる。
いや、可憐にしてみればその背中を見ることもない。
雪歩は温室を出るために姿勢を変えたに過ぎない。
可憐はその場にとどまることしかできなかった。
雪歩「さよなら、可憐ちゃん。私はやっぱり……会いたくなかったよ」
雨音に混じった涙声を可憐は聞いた。
48 :
Pさぁん
2020/12/17 14:56:10
ID:2yD18d71ow
雪歩が温室を去り、雨に濡れながらも遠くへ、可憐が何歩踏み出したって届かない距離へと離れた頃。
ふと雨が弱まった。泥へと沈んだ可憐の意識は、ようやく底を這い出て正常に戻る。
可憐は温室を出る、白の庭を出る。
ふらふらと帰路へと着く。
その道中、彼女に傘を差し伸べる人がいる。
可憐「誰………ですか?」
そこにいたのは、赤いリボンが似合う少女だ。
春香「春香。天海春香だよ。よろしく、篠宮さん。ううん、もう可憐ちゃんでいいかな」
49 :
ボス
2020/12/17 14:56:26
ID:2yD18d71ow
可憐「何者ですか……?」
春香「雪歩の親友、ってところかな」
可憐「雪歩ちゃんの…?」
春香「ねぇ、可憐ちゃん」
春香は囁く。甘く。
春香「雪歩を白雪から解放したくない?」
つづかない……!
50 :
師匠
2020/12/17 14:59:14
ID:2yD18d71ow
以上です。続きません。打ち切りです。
書きたい人がいればどうぞ。
来年はゆきかれあるかなー。
51 :
do変態
2020/12/18 08:43:29
ID:3v6fLPkGjo
続きはよ。
52 :
我が友
2020/12/18 12:50:18
ID:iFwUlirqiI
年末にこの続きを書くんでしょう知ってるわ
乙
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