可憐「あのー…、雪歩ちゃん。ＭＣパートでの一発ギャグを考えている最中、すみません」

雪歩「ちがうよ！？　ポエムを書いていたんですぅ」

可憐「に、似たようなものですよね……えへへ」

雪歩「えへへ、じゃないよ！　なに、急にどうしたの？」

可憐「よければ相談乗ってほしいんです」

雪歩「というと？」

可憐「実は今度、とあるドラマに出演させていただくことになったんです」

雪歩「ドラマに出演？　あれ、最近その手のオーディション受けていたっけ？」

可憐「いえ、監督のご厚意で……出演といっても、ほんの端役ではあるんですが……」

雪歩「そうなんだ。それで相談っていうのは？」

可憐「それが……その役っていうのが、お洒落なカフェの店員なんです」

雪歩「お洒落なカフェ？」

可憐「はい。でも私、カフェで働いたことなんてないし、ましてやお洒落なカフェだなんて……」

雪歩「まぁ、演技については実際の経験がなくても大丈夫だよ。私も魔王とか演じているわけだし」

可憐「な、なるほど？　えっと、それで……もしよければ雪歩ちゃんに演技指導してもらえたらなぁって。前に千鶴さんといっしょにカフェの店員を演じていましたよね？」

雪歩「あのPersona voiceのコミュのやつね」

可憐「それにミリクロ衣装はプリティウェイトレスなわけだし、私よりずっとカフェの店員っぽいですよね」

雪歩「そうとも言えるかもですぅ」

可憐「というわけで、演技指導お願いできますか？」

雪歩「ふふっ、他ならぬ可憐ちゃんの頼みだもん、私なんかでよかったらいくらでも付き合いますぅ！」

可憐「ありがとうございます……！　それじゃぁ、さっそく雪歩ちゃんはお客さんの役で」

雪歩「うん。そうしたら可憐ちゃんが店員さんだね」

可憐「では、入ってくるところからお願いします。こう、暖簾をくぐってきてもらって」

雪歩「暖簾？！　お洒落なカフェで暖簾って、え、和風なあれなの」

可憐「ドアは下から上に引き上げるタイプでお願いします。がらがら、がっしゃーんっと」

雪歩「それはもうシャッターだよね！？　暖簾くぐって、シャッター上げてって、どんなカフェなの！？」

可憐「さっさと役のほうに入っていただいていいですか？」

雪歩「まさかの催促！　う、うん。それじゃぁ、はじめるね」

可憐「はい♪」

雪歩「あ、こんなところにカフェなんてあったんだ。さっそく入って、」

可憐「お洒落な、カフェです…！」

雪歩「……見るからにお洒落なカフェがある、入ってみよう。えーっと、暖簾をくぐって、シャッター上げて、こ、こんにちはー」

可憐「へいっ、らっしゃい！」

雪歩「待って、ちょっと待って」

可憐「？」

雪歩「開幕直後、私の中のお洒落なカフェイメージと、わりと解離しているよ？　え、なに、お寿司屋さんなの？」

可憐「お洒落なカフェですよ？」

雪歩「偶然、その日の店員さんが江戸っ子だったってことでいいの、これ」

可憐「うーん……江戸かエドワードかで言えば、江戸ですね」

雪歩「なにその二択！？」

可憐「てやんでぇ！」

雪歩「こっちの台詞だよ！　いや、言わないけれども！」

可憐「本日はおひとり様ですよね」

雪歩「決めてかからないで！　待ち合わせているかもですぅ！」

可憐「あ……よくよく見たら、背後に……では２名様でご案内しますね」

雪歩「背後に何！？　え、憑いているとか、そういうの！？」

可憐「えっと、お客様、空気はお吸いになられますか？」

雪歩「吸うよ！　ばんばん吸うよ！　それ、訊くなら煙草でしょ！？」

可憐「たらこ？」

雪歩「なんで！？　逆に訊くけど、日常的にたらこ吸っている人、今まで見たこ」

可憐「３名様ご案内します……！」

雪歩「最後までつっこませてよ！　って、ひとり増えている！？」

可憐「こちらのお席、窓からいい景色が堪能できます…！」

雪歩「へぇ」

可憐「窓があれば、の話ですけど」

雪歩「ないの！？　仮定の話とかいいよ！」

可憐「ご注文決まりましたら、厨房まで叫んでください」

雪歩「そんなシステムなの！？　え、呼び出しボタンとか、そういうのないんですか？」

可憐「生憎、つい昨日に全部壊れてしまいまして……」

雪歩「そんなことある！？」

可憐「き、昨日の仕事終わりに、みんなで早押しクイズ大会をしていたときは、ちゃんと押せていたんですけど……」

雪歩「原因それだよ！　あれ、早押しクイズに向いていないでしょ！？　なにしているの！？」

可憐「まぁ、ボタン一つに左右されるような人生というのも嫌でしょうから……ふふっ」

雪歩「なんで得意気！？　全然うまいこと言っていないからね！」

可憐「こちらがメニューになっております。厚いので気をつけてお読みください」

雪歩「そんな、熱々のステーキ皿みたいに言われても―――って、厚っ、ちっさ！」

可憐「月まで届かせる勢いで折りたたんでおりますので…！」

雪歩「こんな折らなくていいよね！？　教室でまわす手紙でもこんな折りたたまないよ！」

可憐「開かれては、畳み直すので私たち店員も毎日骨が折れるんですよね……」

雪歩「骨折り損だよ！」

雪歩「えっと、何かおすすめのメニューってあるんですか」

可憐「店長のきまぐれスイーツなんていかがです？」

雪歩「へぇ、どういうの？」

可憐「……あ、すみません、今日はないみたいです。気まぐれなので」

雪歩「作るかどうかのところから気まぐれなの！？」

可憐「いちおう３週間に一度ぐらいは作っているので……」

雪歩「けっこうな低頻度！　メニューから消すべきでしょ！」

可憐「そうだ、フルーツタルトなんてどうですか？」

雪歩「フルーツタルト？」

可憐「ええ、有名洋菓子店に負ける劣るの、絶品とは言えないそこそこの味ですよ」

雪歩「褒めようよ！　そこはちょっとぐらい誇張してもいいよ！」

可憐「5種類の果物を贅沢に使った一品なんです…！」

雪歩「というと？」

可憐「紅玉、つがる、ふじ、ジョナゴールド、世界一の5種ですね」

雪歩「全部、リンゴじゃん！！実質、1種類だよ！　そこは誇張しちゃダメでしょ！？」

雪歩「じゃあ……ドリンクメニューはどんな感じなんですか？」

可憐「カレーでしたら、あ、甘口から辛口までありますよ…！」

雪歩「普通、カレーはドリンク扱いしないよ！！」

可憐「ち、ちなみに温かさもコールドとベリーコールドがあります」

雪歩「カレーなのに！？　というか、冷たいのととても冷たいのしかないの！？」

可憐「お砂糖はふたつでよかったですか？」

雪歩「カレーなのに！？　ひとつもいらないよ！！」

雪歩「………と、とりあえず、この抹茶ラテひとつお願いしますぅ」

可憐「マッチョラテがおひとつ」

雪歩「抹茶だよ！　なんなの、マッチョラテって、筋肉質なラテってどんなラテ！？」

可憐「今ならライス小が無料でつけられますけど、どうなさいますか？」

雪歩「いらないよ！　可憐ちゃん、可憐ちゃん。ここまでお洒落要素、皆無だよ、びっくりだよ、私」

可憐「そ、そうですか？　何が足りないんでしょう……？」

雪歩「足りないというより、余計が過ぎるというか……」

可憐「あっ。え、えっと、当店ではお客様のご要望に合わせたお洒落なBGMをかけさせてもらっていますよ……！」

雪歩「BGM？　たとえばどういうの？」

可憐「幅広い年代層から支持を得ている、国民的とも言える作品のテーマソングのジャズピアノアレンジなんかもあります」

雪歩「な、なんかすごそうだね」

可憐「それではお聞きください、サ○エさん主題歌ジャズアレンジ」

雪歩「サザ○さん！？　まさかの選曲ですぅ！」

可憐「あと、ア○パンマンのマーチのオーケストラバージョンとか」

雪歩「すごいけど、私が求めるおしゃれはそこにはないですぅっ！」

可憐「あと、癒し系のアロマを焚いています」

雪歩「あ、いいね、可憐ちゃんらしくて。どういうの？」

可憐「初夏の清々しい朝、香る花々が咲く散歩道をゆったりと歩いているところに、色鮮やかな蝶々が低く通り過ぎていくのを、つい目で追いかけた先で見つけた犬の糞をイメージしたアロマとなっています」

雪歩「最後で台無しだよ！　それはもう犬の糞の匂いってことじゃん！　っていうか、そこまでシチュエーションを限」

可憐「チャーシュー麺一丁！」

雪歩「最後までつっこませて！」

可憐「す、すみません、お客様。当店ではチャーシュー麺は扱っておりませんでして……」

雪歩「だろうね！！　お洒落なカフェのチャーシュー麺なんて聞かないからね！！　って、そもそも頼んでないんだよ！！！」

可憐「塩ラーメンならあるんですけど………」

雪歩「あるの！？　じゃぁ、もうチャーシュー買ってきて、入れればチャーシュー麺みたいなものじゃん！！」

可憐「こちらも、コールドとベリーコールドから選べますよ？」

雪歩「冷麺オンリー！！」

可憐「そろそろお会計のほうよろしいですか？」

雪歩「えっ、あ、うん」

可憐「では、専属の会計士呼んでまいりますので」

雪歩「いやいやいや！　そういうのではないよね！？」

可憐「では、39765円となります」

雪歩「ほわぁっ！？　高すぎない！？」

可憐「抹茶ラテが765円と、私とのトーク代が39000円となっています……！」

雪歩「トーク代！？　え、そういうお店だったの！？」

可憐「私と話せて幸せでしたよね？」

雪歩「なんだその自信！！　何歩踏み出せたら、そこまで言えるの！？」

可憐「てやんでぇ！」

雪歩「江戸っ子はもういいよ！！」

可憐「あ、カレーに使う玉ねぎを切らしていたので、買ってきておいてくださいね」

雪歩「なんで帰る客に買い出し頼むの！？」

可憐「で、でも、ほら、私たち帰るお部屋はいっしょですから……///」

雪歩「同棲してた！？　とってつけたような、ゆきかれ要素！！」

可憐「来店記念として、こちらのオリジナルTシャツにオリジナルトートバッグはお土産にいかがですか？」

雪歩「うわっ、お洒落！　ここだけめっちゃお洒落感ある！！　もうこれを売るだけのお店でいいよ！！」

可憐「…………という感じですけど、ど、どうでした、私のカフェ店員」

雪歩「今回のオファーは断ったほうがいいと思いますぅ！」


おわりですぅ！

以上です。
可憐をもっと原作寄りのままボケさせたかったんですが、自分の力量では無理でした、えへへ…。

おつかれんちゃん
可憐が得意のポーカーフェイスでボケ倒してると思うとシュール