【PM8:30】
【高速道路 車内】


P「.........」

貴音「...............」

P「............ハァ」

貴音「進みませんね」

P「事故だなこりゃ。渋滞の終わりが全然見えないぞ」

貴音「仕方がありません。行きの道中でなかっただけ良かったと思いましょう」

P「悪いな。貴音は寝ててもいいんだぞ。事務所に着いたら起こすから」

貴音「いえ、居眠り運転の大半は同乗者が寝ているときに起こっていると聞きますし、このままPの話相手になります」

P「そうか？じゃあベタだけどしりとりでもーー」

貴音「食べ物の話にいたしましょう」

P「いやそれだけはないわ」

貴音「何故ですか？」

P「なんでってお前、いつ車から降りられるのかもわからん状況でその話題は最悪だろ。いつもみたいにすぐどっかの店に入れるわけじゃないんだぞ」

貴音「だからこそです。どの道空腹に悩まされるのであれば、会話を弾ませて気を紛らわすほうがましかと」

P「そうかぁ？逆効果な気がするけどなあ」

貴音「ものは試しです」

P「まあ、貴音がそこまで言うなら」

貴音「では......想像してみてください」

P「うん」

貴音「ここに鮮度抜群、ぴちぴちの鯖が丸ごと一匹あります」

P「鮮度抜群のサバが一匹...」

貴音「さて、Pはこの鯖をどうしますか？」

P「ん......とりあえず頭を落として内臓を出すだろ。そんでアニサキスが入ってないかをよ～く確認して...」

貴音「その工程は必須ですね」

P「で、問題無さそうなら三枚におろして、
半身はシメサバにするかな」

貴音「やはり！私も同じ考えです！」

P「鮮度良いサバが手に入ったなら義務だよな。シメサバ作らないとか何の冗談だよと」

貴音「私は塩と砂糖を1:1でたっぷり振りかけて締め、りんご酢に浸けて調理します」

P「俺は米酢だな。砂糖の割合を少し多めにして甘くする」

貴音「柚子やれもんの絞り汁を混ぜるのも良いですよ」

P「あー絶対旨いなそれ。旬の時期のサバって皮下脂肪が真っ白な層になっててさ、見てるだけで脳が溶けそうな気分になるんだよ...」

貴音「醤油に浸けた瞬間、ぱあっと脂の膜が広がるのもたまりませんね」

P「まったく、なんで魚の脂ってのはあんなに旨いんだろうな...」

貴音「さて、まだ半分残っておりますよ」

P「うーん、シメサバの次だから今度は火を通したいな」

貴音「では、私は竜田揚げを推します」

P「はい勝利確定」

貴音「衣で包んで揚げることで余分な水分だけを蒸発させ、熱でとろとろになった脂肪は逃さないっ！かぶりついた瞬間に舌の上で弾ける脂との会瀬っ！上質な鯖が手に入った時こそ作りたい料理ですね」

P「揚げ物って実は脂が乗った食材で作るのが一番旨いんだよなぁ...。アジフライとかも良いアジで作ると全然別物だし」

貴音「さあ、Pの番ですよ」

P「じゃあ...サバ味噌で」

貴音「これまた鉄板っ！」

P「鉄板だけど意外と奥が深いんだよ。味噌に味醂混ぜたり豆板醤混ぜたり、臭み消しを生姜じゃなくて梅干しとか青ネギにしたり、昆布や椎茸を一緒に煮て出汁を染み込ませるのも旨いんだ...」

貴音「なんと...そのような方法は思いもよりませんでした」

P「竜田揚げの弾ける脂もいいけどさ、煮込んでとろっとろになったサバの腹身は...」

貴音「ああっ！たまりませんっ！ご飯を用意しなければっ！」

P「俺は酒だな！日本酒1合くらいなら瞬時に飲めるぞっ！」

貴音「ふふふ...」


P「フフフフ......」


貴音「......」


P「.........」

P「腹減ったな」

貴音「はい」

P「ぶっちゃけ後悔してるだろ」

貴音「多少は」

P「まあ、楽しかったからいいよ。うん」

貴音「ありがとうございます」

貴音「...それにしても、鯖とは不思議な魚ですね」

P「どういう意味だ？」

貴音「独特な臭みがあり、寄生虫が付いていることもある。"なぜそんなものを食べるのか？""他のものを食べれば良いじゃないか？"魚食の習慣がない国の人々からはそう思われているそうです」

P「ああ、言われてみればな。酢に浸けたり生姜と煮たりして臭みを取るけど、そんな手前かけてまで食べようとするってこと自体が異端っちゃ異端かもな」

貴音「にも関わらず日本人はあの手この手で鯖を美味しく食べる方法を模索し続けた...やはり、数々の欠点を補って余りあるほど美味しい、魅力的な魚なのだということですね」

P「なるほどな」

P「.....................あっ」

貴音「なにか？」

P「今の話だけどさ、俺も似たようなものを知ってるぞ」

貴音「察するにじゃがいもやこんにゃくでしょうか？そのままでは毒のあるものを工夫してーー」

P「いや、食べ物じゃなくて......人間なんだけどさ」

貴音「人間？」

P「そう。いっつも人を煙に巻くような態度で、しょっちゅう飯をタカりにきて、そのうえ大食いでさ」



貴音「..................えっ？」



P「なんでこんな奴をプロデュースしなくちゃいけないんだって思ったこともあるし、タカられまくって内心キレることもあるんだけどさ」

貴音「あの.........それは、もしや...」

P「それでもなんだかんだで放っておけなくてさ。結局、そんなことどうでもよくなるくらい魅力的なんだよ。アイドルとして...なにより......ひとりの女性として」

貴音「なっっっっ！？」

P「どうだ？けっこう良いこと言っただろ」

貴音「なっ、なにを突然っ、こ、こんな場所でっ...!」

P「なんだお前、そんなに取り乱して。いつも人のことからかってるくせに自分がからかわれるのは苦手か」

貴音「か、からかったっ！？今のが冗談だったと言うのですかっ！わ、私が...ひ、ひ、ひ...」

P「ひ？」

貴音「ひとりの女性として魅力的だとおっしゃったことです！冗談だったのですか！」

P「ああ、それは...」

貴音「はっきりしてくださいつ！」

P「それは......」

貴音「..................」ﾄﾞｷﾄﾞｷ





P「とっぷしぃくれっとです☆」

貴音「～～～～～～～～～～～ッッッッッッッ！！！！！！！！！！」ﾌﾟｲｯ

P「ん？どうした？急に窓の外眺めだして」

貴音「知りませんっ」

P「貴音さ～ん？俺が事故らないように話相手になってくれるんじゃなかったんですか～？」

貴音「知りませんっ！このいけず！」

P（うお、顔真っ赤だな）


P（まったく......そういうところだよ、お前が魅力的なのは.........）

P（結局事務所に到着した頃には10時を回っていたが、小鳥さんが夜食を用意して待ってくれていた）


P（一言もしゃべることなく食べ終えて足早に帰宅した貴音を見て、"ケンカでもしたんですか？"と聞かれたが、疲れてるんでしょうとだけ言っておいた）


P（いつもタカられてるんだし、たまにはこんな日があったっていいだろう...。まあ、明日は俺の特製サバ味噌をご馳走してやるか。たぶんそれで機嫌直るだろうし）

お し ま い

SS祭も残り2日、ようやく終わりが見えて来ました
同時に、もう終わってしまうのか～という寂しさもあったり...

毎晩遅くの投稿というスタイルを選んで最初は不安だったのですが、毎回コメントを頂けて本当に嬉しいです
最終回まであと少し、最後までお付き合い頂ければ幸いです

ちなみに最近参考にしてハマってるサバ味噌のレシピはこちら
https://twitter.com/syakkin_dama/status/1453710723381555200?t=qWqM7QTZt66NA0vtRXDVpQ&s=19
マジで旨いです、マジで（大事なことなので2回）

今日もいい飯テロでした
お姫ちんもデレを見せてきてPドル成分もいい感じです

昼は唐揚げの予定だったけど大戸屋でも行けばさば味噌あるかな

>>25
やよい軒でもいいぞ！

乙
コンニャクって毒だったのか…

正確にはこんにゃく芋に多量の蓚酸が含まれるので皮膚につくと痒みが出たりかぶれたりするし、食べると尿路結石を誘発するという話だな
食べられるレベルまで蓚酸を流すと他の栄養物質もほぼ全部流れるのでコンニャクはカロリーゼロ

>>28
そんなめんどくさい方法使ってまでまで毒芋をなんとか食べられるようにした人は偉大ですな
古代人の知恵に感謝