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【第6夜】餃子の巻http://imasbbs.com/patio.cgi?read=23499&ukey=0&cat=765


例によって、味の評価等は個人的な好みなので多少の偏りがあるのはご了承願います

【PM8:53】

Ｐ「………」ﾓｸﾞｯ

貴音「………」ﾊﾌｯ

Ｐ「…………」ﾊﾌﾊﾌ

貴音「…………」ﾊﾟｸﾊﾌﾊﾟｸﾊﾟｸ

Ｐ「………」ｽﾞｽﾞｰｯ

貴音「…………」ｽﾞｽﾞｰｯ



Ｐ「ふう…」

貴音「はあ……」

Ｐ「旨いな」

貴音「はい。しみじみと…」

Ｐ「魚へんに雪と書いて鱈……やっぱ冬は鱈ちりだな」

貴音「繊維質な歯触り…ほのかに感じられる甘み…ポン酢でも生醤油でも、思い思いの味付けで食す楽しみ……たまりませんね」

Ｐ「新鮮な鱈でこその味わいだよな。鮮度が悪いとアンモニア臭くて悲しいことになるけど」

貴音「そして、裏の主役とも言える野菜」

Ｐ「鍋だと何故か野菜がいくらでも食えるようになるんだよな…。4人もいれば白菜が丸1個無くなったりするし」

貴音「豆腐やしらたきもお忘れなく」

Ｐ「わかってるって。ちゃんと入れてあるだろ」

貴音「そして……全ての食材の旨みが集合した出汁…」

Ｐ「ああ…これが楽しみで鍋をやってると言っても過言じゃない……」

Ｐ「………」ｽﾞｽﾞｰｯ

貴音「…………」ｽﾞｽﾞｰｯ




Ｐ・貴音「はああぁぁ～～～っ」

貴音「しかし、よろしいのでしょうか？事務所でこんなものを食べて」

Ｐ「今さらそんなこと気にするほど真面目じゃないだろウチは。もっと好き放題してる奴らがわんさかいるからな」

貴音「ふふ……それもそうでした」

Ｐ「けっきょく今年も皆忙しくてお疲れ様会とかできそうにないからな…今日はまあ、せめてお前とだけでも1年の労をねぎらいたいとか、そんなとこだ」

Ｐ（それに、先手を打って満腹にさせとけばタカられようがないからな）

貴音「ご配慮、痛みいります」

Ｐ「今年はお前のおかげでだいぶ景気が良かったからな。来年もよろしく頼むぞ」

貴音「はい。Ｐのためならば」

Ｐ「まあ、俺個人としてはめちゃくちゃ損した気がしないでもないんだが…」

貴音「年の瀬に細かいことは言いっこなしですよ」

Ｐ「へいへい」

貴音「ところで…先ほど鱈の美味しさについて話したばかりですが、Ｐは最初から鱈がお好きでしたでしょうか？」

Ｐ「ん？どういう意味だ？」

貴音「幼いころに初めて鱈を食べたとき、味が淡泊すぎてあまり美味しく感じなかったのでは？」

Ｐ「あ、そういうことか。……確かに、ガキのころはあまり旨いもんだと思わなかったな…」

貴音「白身魚をはじめとする淡い味わいの食材…例えば蛸や烏賊なども、はじめはなにが美味しいのかわからないことが多いのです」

Ｐ「そういえば、漫画ではじめてタコの刺身を食べたアメリカ人が”味がしない”って言ってるのを見たことがあるな」

貴音「それをやがて美味しく感じるようになる…これを後天的味覚、”あくわいあぁど・ていすと”と言うそうです」

Ｐ「要するにアレか、”大人の味覚”ってやつか」

貴音「逆に、刺激の強い味に対しても同じことが起きますね。辛いもの、苦いものなど…」

Ｐ「わかるわかる。初めてワサビ入りの寿司を食べた時は泣くほど辛かったし、コーヒーなんて苦いだけでなにが旨いんだろうと思ってたけど、今はどっちも好きになったよ」

貴音「最初は刺激ばかりを感じて美味しく感じられなくても、慣れることによってそれ以外の味や風味を感じられるようになり、やがてそれに魅せられるようになる……私、これは食べ物以外にも言えることだと思うのです」

Ｐ「食べ物以外？」

貴音「ですから、その………」



貴音「…人間関係においても、です」



Ｐ「…………」

貴音「…正直に申し上げます。私、765に移籍したばかりの頃はＰのことを怖い方だと思っておりました」

Ｐ「そうか…。言い訳になるけど、あの頃は俺も貴音に対してどう接していいのかがよくわかってなかったんだよ。余所のプロダクションから移籍してきたアイドルを担当するのは初めてだったし、正直貴音ってなに考えてるのかよくわからないところがあったし……ごめんな」

貴音「いえ、それは致し方ないことです」

Ｐ「お互い様、か」

貴音「はい」

Ｐ「…それで、今はどうなんだ？アクワード・テイストを得た貴音から見た俺は、どんな感じだ？」

貴音「それは…」

Ｐ「………」

貴音「………」ｽｰｯ





貴音「この上なく頼もしい…できることならば、このまま、ずっと共に歩みたいと……そう思っております」

Ｐ「…そうか。良かった」

貴音「あ…あまり驚かれないのですね？私なりに、その、勇気を出して言葉にしたのですが…」

Ｐ「まあ、なんだ。なんとなくそんな感じがしたというか、言おうとしてることが大体わかる気がしたというか。俺の貴音に対するアクワード・テイストだ」

貴音「……ふふっ。Ｐには敵いませんね。すべてお見通しでしたか」

Ｐ「それなりに長い付き合いだしな。あまりプロデューサー様をなめるなよ？」

貴音「では、今度は私がＰの思っていることを当てて差し上げましょう」

Ｐ「お、いいね。受けて立とうじゃないか」

貴音「では遠慮無く。Ｐは今こう思われているはず……………」







貴音「”次はふぐちりが食べたい”と」

Ｐ「いや全然思ってねーよ」

ｶﾞﾁｬ


？？「こんばんはー。ふぐちりの出前お持ちしましたー」ﾄﾞｶﾄﾞｶ

Ｐ「はいぃ！？」

貴音「待ちわびておりました！嗚呼、なんと美しい切り身…！」

Ｐ「いやいや頼んだ覚えねーぞ！？つーかふぐちりの出前なんて聞いたこともねーぞ！？」

？？「いやー、昔ウチのそばに住んでたギャンブラーのお得意さんが大のふぐ好きでして。徹夜麻雀しながらふぐちり食べたいとか色々と無茶をさせられたもんで、今でもその名残で裏メニューとして残してあるんですよ」

Ｐ「なんじゃそりゃあ！？」

？？「それで、ご注文していただいた”高槻やよい”様はどちらに？」

Ｐ「は？やよい？今日はもうとっくに帰って……」








やよい（じ～～～～～～～～～～～～～～）

Ｐ「………やよいさん。いつからそこに？」

やよい「最初からいましたよぉ。”Ｐがふぐちりご馳走してくれる”って貴音さんから聞いたんで！」

Ｐ「た～～～～～～～～か～～～～～～～～～～ね～～～～～～～～～～～～～～！」

貴音「そしてＰは今こう思っているはずです。”やはり鍋は人数が多ければ多いほど美味しい。よくやったぞ貴音”と」

Ｐ「思ってねえーーーよっ！」

やよい「待ちぼうけが長すぎてお腹ぺこぺこです～。家で待ってる弟たちのためにタッパーも用意してきたのに」

Ｐ「家族にまで連絡してあるのかよ……」

やよい「はうあっ！でもよく考えたらこんなにたくさん持ち帰れませんっ！」

Ｐ「そりゃな。つーか何人前あるんだよこれ」

やよい「うう～。今日はふぐが食べられるよって言ったら皆大喜びだったのに～。きっと今頃飢えて死にそうになってるんだ～」ｳﾙｳﾙ

Ｐ「ぐっ……」

やよい「ごめんね…。計画性のないお姉ちゃんでごめんね…」ｼｸｼｸｼｸ

Ｐ「今すぐ全員連れてきなさいっ！」

　
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　・

ﾜｲﾜｲﾜｲ
ｶﾞﾔｶﾞﾔｶﾞﾔｶﾞﾔ
ｳﾏｰｲ！
ｵｲｼｰ！



貴音「ふふ……思いもかけず賑やかな年末になりましたね」

Ｐ「ソーデスネー。最後の最後にまた財布の中身すっからかんにされるとか思いもしませんでしたネー」

貴音「こうして子供たちが楽しそうにしている様を見ると、まるで私とＰに家族ができたかのように感じませんか？」

Ｐ「そういう方向に持って行きたかったのか？感動のフィナーレにするつもりだったのか？悪いけど過程が酷すぎて全然ときめかねぇわ。喪失感しか感じないわ」

やよい「ふたりとも！しゃべってないで早く食べないと無くなっちゃいますよ！」

Ｐ「はいはい……」


（来年が思いやられるな…………）

（こうして俺の年末は終わりを告げた……新しい年への多大な不安を残しつつ……）


（それなりに長い期間担当して、貴音の魅力的なところも、それ以上に厄介なところも知り尽くしたと思っていたが……まだまだこの女の腹の底は計り知れないのだと……痛いほど思い知った………痛すぎるほどに……）


（アクワード・テイスト…。俺が貴音のすべてを理解するのには、まだまだ時間が必要らしい…）

貴音「来年も、そのまた次の年も……このように賑やかに過ごせるようになりたいものですね………あなた様♡」


Ｐ「なってたまるかっっっ！！！！」

残　業　す　る　貴　音　と　Ｐ
　　　　　～　完　～

長いようで短かった6日間のＰドル杯、本当に楽しかったです
数もさることながらどれも力作ぞろいで、書いていても見ていても面白かったです

最後に、このような催しを企画してくださった主催者様、ありがとうございました
次回があればまた参加したいです

ＳＳ祭りに合わせて投稿制限の解除をしてくださったＢＢＳ管理人様、ありがとうございました
これからもよろしくお願いします

そして、毎晩遅くの投稿にも関わらず読んでくださった方々、コメントをくださった方々、本当にありがとうございました

また別の作品を綴ることがあるかもしれませんので、そのときは改めてよろしくお願いします
それでは、良きＳＳライフを…

連日の飯テロ乙でした