【CPSS22】気持ちも包む【ことさよ】
1 : Pしゃん   2022/02/14 22:57:48 ID:rWA8Pm9Ra6
立っておくれ。
地の文形式です。
2 : Pちゃん   2022/02/14 22:58:29 ID:rWA8Pm9Ra6
2月14日、バレンタインデー。人それぞれの理由でチョコレートのやり取りがされる1日だ。765プロも例外じゃなく、プロデューサーをはじめ、社長や小鳥さんに美咲さん達にもチョコレートを渡している人が絶えない。
かくいう私もその一人で、先述の皆さんに渡してからオペラセリアのメンバーや、恵美とエレナに渡していった。本当は事務所のみんなに渡したかったけど、作って持ってくるのが大変だから人数絞った方が良いんじゃないかと恵美に言われ、一晩悩んだ末にその助言に従って作った。実際に他の娘達に聞いてみたら今年ユニットで一緒だったメンバーに加えて特に渡しておきたい人に絞って作っていた子が多かった。志保ちゃんは可奈ちゃんに渡すのかと聞かれて少し頬を染めていたし、たまたまレッスンが一緒だった奈緒ちゃんに至っては美奈子ちゃんからかなり大きな手作りチョコレートを渡されてどうやって食べようか思案していた。人それぞれにバレンタインデーの過ごし方があった。
3 : P殿   2022/02/14 22:58:47 ID:rWA8Pm9Ra6
かくいう私もたくさんの人からもらって紙袋がそれなりに膨らんでいた。学校でもらった分は家に置いてきているけど、事務所だと来て早々にエレナからもらい、続いて恵美とまさかの昴ちゃんと続々と渡されたからだ。先程のオペラセリアのみんなからも私が渡したもののお返しやメンバー間のチョコレートという体でもらっているし、今年のホワイトデーはそれなりに大変になるかもしれないと思った。
もらってばかりの状況が続いているけど、私が渡したいチョコレートはあともう一人分あった。その相手とはまだ会えていないので、待っていたらいずれ顔を合わせるだろうと思い劇場から事務所の控室へ向かうことにした。ちなみに控室ではバレンタインデー限定のチョコレート置き場が設けられていた。小鳥さん曰く、真ちゃんがたくさんもらってくるので置き場だけでもという考えで作られたらしい。私もこれまでにもらった分をそこに置いて、最後の一個を手にしソファーへ腰かけた。
4 : レジェンド変態   2022/02/14 22:59:02 ID:rWA8Pm9Ra6
「喜んでくれるかな」
ソファーで1人静かになった事務所の中でポツリとそんなことを呟いていた。例の包みを眺めながら考えを巡らせていた。心なしか緊張してきた気もする。
「いつも通りにすれば大丈夫……。いつも通りに……」
暗示をかけるように自分へ言い聞かせた。まだ来ないのかな、そう思って時計を見ようとした。
「お疲れ様です」
ドアを開けてよく通る馴染み深い声と一緒に入ってきたのは、私がチョコレートを渡す最後の相手だった。
5 : 兄ちゃん   2022/02/14 22:59:20 ID:rWA8Pm9Ra6
「お疲れさま、紗代子」
「あ、琴葉さん。お疲れ様です!」
私の姿を発見するや否や快活な笑顔で挨拶を返してくれた。ただ、どうしてか紗代子の笑顔に少し引っかかりを覚えた。やけに嬉しそうな気がして。
すると、足早に近づいてきたと思ったら右手の紙袋をそっと降ろしてから左腕に下げている紙袋へ手を突っ込んで放送された包みを取り出し、私へ差し出してきた。
「これ、良かったら受け取ってください」
「私に?」
「はいっ」
「あ、ありがとう」
包みを受け取った私を見て、思い出したように紗代子はこう続けた。
「あ、そうだった。ハッピーバレンタイン!」
言い終わってから照れくさそうにはにかむ姿が可愛らしい。
6 : プロデューサー   2022/02/14 22:59:40 ID:rWA8Pm9Ra6
「これ、手作りなの?」
「はい。他の人たちにも渡してきました」
「そうなの」
「ええ。ただ、本当は事務所のみんなに渡したかったんですけどね」
「人数を絞ったの?」
「はい。プロデューサーや社長、小鳥さんや美咲さん、それから今年一緒に活動したchicAAmorの皆さんや、海美と百合子に」
大半は想定内だけど、他の2人が予想外だった。
「海美ちゃんと百合子ちゃんにも?」
「はい。よく楽しい時間を過ごさせてもらってますから。あ、他のみんなとの時間はそうでもないっていうわけじゃないですよ?」
「分かってるわよ。ふふっ」
考えることは似ているなと思った。ふと、私に渡してくれたチョコレートはどんな理由があるんだろう。聞くのは無粋かと思ったけど、知らずにいるのはもどかしい気がして考えるより先に口が開いていた。
7 :   2022/02/14 23:00:08 ID:rWA8Pm9Ra6
「それなら、私にくれたのは?」
「琴葉さんにも、いつもお世話になってますから。感謝の気持ちを込めて作ったんです」
驚いた。どこか優しさを感じさせる微笑を浮かべた紗代子にもだけど、それ以上にここまで考え方が似るなんて思っていなかったからだ。
「なるほどね……。紗代子も、なんだ」
「も?」
「はい、私からも。ハッピーバレンタイン♪」
ずっと渡したかった最後の一個を差し出した。
「え?あの、これ」
「うん」
「ありがとうございます……!」
手に取るのを躊躇っていた紗代子を首肯で促して私からの‘気持ち’を受け取ってもらった。
8 : ごしゅPさま   2022/02/14 23:00:22 ID:rWA8Pm9Ra6
それから解説というわけじゃないけど、私がチョコレートに何を込めたかを伝えた。
「私の方こそ紗代子に助けられてるよ。だから、そのお礼の一環。少しずつ返せていけたらなと思ったの」
「そんな、お礼を言われることじゃないですよ……。仲間、ですから」
「仲間だからこそ、でもあるでしょ?紗代子が今度困っていたら、必ず助けるから」
「それなら私も、琴葉さんのお役に立てることがあったらいつでも駆け付けます」
「それならその次は私が」
「では、私もその次に」
ここまで言い合って笑い合った。こんなに考え方が似通うのも珍しく、だからこそ私たちは仲良くなれたのかなと、そう心の片隅で思った。
9 : 我が友   2022/02/14 23:00:40 ID:rWA8Pm9Ra6
家に帰り、紙袋から事務所でもらったチョコレートを一個ずつ取り出して置いていく。堤も人それぞれでカラフルだ。最後に、紗代子からもらった包みを置く。
「みんなのもそうだけど、大事に食べないと」
自分へ確認する意味でそう独り言ちた。
10 : せんせぇ   2022/02/14 23:02:48 ID:rWA8Pm9Ra6

琴葉さんからもらったチョコは帰宅してから開封した。事務所で開けるのはちょっともったいないような気がしたからだ。
「どんなチョコなんだろう」
期待で行動が逸りそうになるのを堪えながら包みを丁寧に開封していく。そして、ふたを開けたその中身は目を見張るものだった。
「うわあ……」
感嘆の声が漏れる。私はそのチョコを持ってハリ子の元へ移動した。
11 : プロデューサーさま   2022/02/14 23:05:31 ID:rWA8Pm9Ra6
「見て、ハリ子!琴葉さんからもらったチョコだよ!」
ハリ子がつぶらな瞳を向けたのを確認してからそのチョコを見せる。何を隠そう、琴葉さんがくれたチョコはハリネズミの形をしていたのだ。
「すごく可愛いねー!……あっ」
ここで私はふと思い出した。予定があるので家に帰ってから開封するという旨を伝えると少しがっかりしていた琴葉さんの姿を。きっと自信と不安がないまぜになっていたに違いない。申し訳ないことをした。
12 : Pさん   2022/02/14 23:08:24 ID:rWA8Pm9Ra6
「すごく可愛いです。ハリ子にも見せました、と」
メッセージを送信してから改めてそのチョコを見る。見れば見るほどよくできているし、可愛い。ただ、ちょっとだけ難点を見つけてしまった。
「可愛くて、食べちゃっていいのか分からないよ……」
何日も放置するわけにはいかないけど、かといってバリバリ食べられるかというとそれはそれで勇気が要る。

後日、恐る恐るチョコを完食したのでした……。
13 : 貴殿   2022/02/14 23:09:33 ID:rWA8Pm9Ra6
終わりです。どうしても‘ことさよ’で一本は書きたかったけどなかなかネタが思い浮かばずバレンタインデーネタに縋って大急ぎで書き上げたものでした。

誰かの暇つぶしになれたら幸いです。お目汚し失礼しました。
14 : バカP   2022/02/15 07:07:55 ID:JuMch2gfHg

ことさよの人よね。ガチの正統派で参加嬉しい。
15 : P君   2022/02/15 07:54:42 ID:1QZL2Dg.Kw
乙です
正統派ですね
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