『続いてのニュースです』


『昨日、都内で3階建ての建物が全焼する火災が発生し、高齢者1名が建物内に取り残されました』


『しかし、突如現れた変態仮面により救出され、現在は病院で治療を受けているとのことです…』

Ｐ「パンツ野郎、またお手柄か…ここんとこ毎日ニュースに出てるな」

雪歩「…そう、みたいですね」

Ｐ「まあ…初めて会ったときは驚いたけど、何度も雪歩たちを助けてくれたもんな」

雪歩「…はい」

Ｐ「しかしコイツ、最近は色んなパンツ被って出現するようになったな？前は雪歩のパンツしか被らなかったのに」

雪歩「…………」

P「雪歩？どうしたんだぼーっとして？」

雪歩「いえ、なんでもないですぅ」

雪歩（変態仮面さん…）


雪歩（何度も助けてもらって…恥ずかしいコトも何回かされて…いや、私のほうからしちゃったこともあったけど……）


雪歩（けっきょく、被るパンツは誰のでもよかったんだね……私のじゃなくて、他の人のでも…）


雪歩（私だけは…ちょっと、特別なのかなって思ってたけど……思い上がりだったのかな………）

ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ…
ﾊﾞｰﾝ!

亜利沙「お、おはよーございますっ！すいません！遅くなりました！」

P「また遅刻か…どうしたんだよ亜利沙。最近多いぞ」

亜利沙「すいません！すいません！すぐ着替えますから！」

P「いいよ。今日のレッスンは休め。トレーナーには俺から話しとくから」

亜利沙「そそそそんな、申し訳なさすぎますっ！いいです、大丈夫です、急げば、まだ――」


Ｐ「いいわけあるかっ！！」

亜利沙「ひっ！？」

Ｐ「お前、鏡見たか？そんな酷い顔したアイドルを人前に出せるかよ」

亜利沙「ご、ごめんなさい…」

Ｐ「…俺はこれから打ち合わせだから、戻ってくるまで休んでろ。後で病院に連れてってやるから」

亜利沙「はい……すいません…」

Ｐ「よし。雪歩、悪いけど少し亜利沙のこと見ててやってくれ」

雪歩「わ、わかりました」

Ｐ「じゃ、なるべく早く戻るからな……大人しくしてろよ」

ﾊﾞﾀﾝ!

雪歩「………」

亜利沙「…………ちょっと、仮眠してきます…」

雪歩「あ、それなら私も――」

亜利沙「ごめんなさい。少し…ひとりになりたいんです」

雪歩「でも」

亜利沙「お願いします…今は…そっとしておいてください」

ﾊﾟﾀﾝ

雪歩「亜利沙ちゃん………」

　・

　・

　・
　
　・

【事務所】

雪歩「救急箱…たしか、小鳥さんの机のあたりに…」


ｺﾞﾁｬｯ


雪歩「うっ」

雪歩（小鳥さん、こんなに整理ができない人だったっけ…？）

雪歩「…ちょっと、整理してあげようかな。救急箱もどこにあるのかわからないし」

ｶﾞｻｺﾞｿ

雪歩「仕事の書類とかには触らないようにして……お菓子のビニールとか、あきらかなゴミは捨てちゃっていいよね。………うわ、本がたくさん…」

雪歩「すごく古い本ばかり……。『学理応用催眠術自在』『実用催眠学』『心理作用読心術自在』……発行は……明治３６年！？」

雪歩「小鳥さん、こういうの読むんだ…。ちょっと、意外かも……」

雪歩「こっちは…『キリスト教大辞典』か。………あれ？」

雪歩「この本だけ、付箋が貼ってあるページがある…」


ﾊﾟﾗｯ



雪歩「………………！！！」

～【7つの大罪】～

キリスト教において罪の根源とされる、七つの悪しき感情・欲望を指す言葉。
「七つの罪源」ともいわれる。

雪歩「そうだ……思い出した！7つの大罪！暴走した人たちの特徴がこれそっくりだったんだ！」


雪歩「琴葉ちゃんが『憤怒』、玲音さんが『色欲』、四条さんが『暴食』、のり子さんが『強欲』、美希ちゃんが『怠惰』、伊織ちゃんが『傲慢』！」

雪歩「じゃあ……最後のひとつは……確か…」


ﾊﾟﾗｯ





雪歩「………………………………えっ？」

～【嫉妬】～

萩　原　雪　歩

雪歩「なんで…？私の、名前が……？」

小鳥「それは、あなたが私の計画のラストピースだからよ。雪歩ちゃん」

雪歩「！？」

ﾄﾞｽｯ!

雪歩「うっ………！？」ｶﾞｸｯ



小鳥「ダメじゃない、盗み見なんて…ホントはもう少し時間をかけてあなたの嫉妬心を育てていくはずだったのに……」

小鳥「…ま、バレちゃったものはしょうがないわね。予定より早いけど…最終フェーズ突入といきますか！」

　・

　・

　・

　・

【更衣室】

亜利沙「ここ数日、色んなパンツを被ってみてわかったこと…」

亜利沙「まず、変身するには雪歩ちゃんのパンツでないとダメ。これは仕方ないですね」

亜利沙「しかしその上から他のパンツを被ることで、短時間ですが飛躍的に身体能力をアップさせることができる」

亜利沙「さらにその上にもう1枚…その上にももう1枚…と増やすことでさらにパワーアップが可能…」

亜利沙「しかし、そのぶん体への負担も増えるわけで……昨日の3枚重ねのあとは大変でした……家に帰った途端意識が無くなって、気が付いたら朝になってましたからね…」

亜利沙「でも……この力を使いこなせれば、きっと妄想仮面にも勝てるはず！」

亜利沙「毎日の訓練で少しずつ被れる枚数が増えているのには変わりないわけですし……今日こそ、4枚にチャレンジです！」

ｷｮﾛｷｮﾛ

亜利沙「Ｐさん、ごめんなさい…。でも、ありさは一刻も早く妄想仮面を倒さなきゃいけないんです！」


亜利沙「………装着！」


ｶｯﾂ!

亜利沙「そしてクロス・アウッ！」（脱衣）

変態仮面「続けて2枚目！」

ﾄﾞｸﾝ! ﾄﾞｸﾝ! ﾄﾞｸﾝ!


変態仮面「うむ…素晴らしい高揚感…パワーがみなぎる！3枚目！」


ﾊﾞｸﾝ! ﾊﾞｸﾝ! ﾊﾞｸﾝ! ﾊﾞｸﾝ!

変態仮面「ぬううっ！！！」

ﾊﾞｸﾝ! ﾊﾞｸﾝ! ﾊﾞｸﾝ! ﾊﾞｸﾝ!

変態仮面「心臓が…爆発しそうだ……！！！」

変態仮面「だ…が……まだまだ………いけっ……4枚目！」





雪歩「そこでなにしてるんですか？」

変態仮面「わあああーーーーーーーーーーーーーーっっっっっっ！！！！！！！？？？？」

変態仮面「ゆ、雪歩ちゃん！？」

雪歩「はい。あなたの萩原雪歩ですよぉ。えへへへへへ」

変態仮面（私としたことが、力の制御に精一杯で接近に気づけなかったか…？というか雪歩ちゃん、どこかいつもと違うような…？）

雪歩「変態仮面さぁん。それ、誰のパンツなんですかぁ？」

変態仮面「む…？こ、これはですね話すと長くなるのですが…」



雪歩「………知ってますよ。私以外のアイドルから盗んだパンツでしょ」

ｽﾞﾝ!

変態仮面「！？」

変態仮面（なんだっ……！？体がっ……重っ…！？）


雪歩「さんざん私の心を弄んで…パンツまで盗んで……それで今は他の女のパンツに夢中なんですよね…」

ｺﾞｯ!

変態仮面（おっ、も…！？こ、これは……重力が、何倍にも強くなったような…！？）

変態仮面「雪歩ちゃん……キミはっ…まさか…！？」


雪歩「ゆるさない」

ﾄﾞｺﾞｯ!

変態仮面「ぐああああっ！？」


雪歩「ゆるさないゆるさないゆるさないゆるさない許さないゆるさないゆるさない赦さない許さない許さないゆるさないゆるさない赦さないゆるさないゆるさない」

ﾐｼﾐｼﾐｼ！

変態仮面（体が……砕けるっ……！？）

変態仮面（なぜ…？なぜなんだ………雪歩ちゃん……！）


雪歩「絶対に許さない…私じゃない女のパンツなんて…こうしてやる！」

ﾎﾟｲｯ

雪歩「これも！これもこれもこれも！」

ﾎﾟｲｯ　ﾎﾟｲｯ　ﾎﾟｲｯ　ﾎﾟｲｯ　ﾎﾟｲｯ

雪歩「！！………これっ、は…」



♡ＹＵＫＩＨＯ♡



雪歩「………ふふっ」

雪歩「ふふふふふふふふふふふふふふうふふふふうふふふふふふうふふふふふふふふふふふふふふふふふふふうふふふふうふふふふふふうふふふふふ」

雪歩「なぁんだ……ちゃんと私のパンツ、被っててくれたんだぁ」

変態仮面「ゆ…雪歩ちゃん、私は…」


雪歩「　他　の　女　の　パ　ン　ツ　の　下　敷　き　に　し　て　！　？　」


ﾎﾞｷｲｯ!

変態仮面「うがああああああああああああ！！！？？？」

雪歩「許さない！こんなパンツ！こんなパンツなんか！」


変態仮面「ダメだっ…それを取ったら……！」


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ！！！！！！！！！！！！」

ﾎﾟｲｯ




雪歩「…………………………え？」

亜利沙「う…あ……あああ……」


雪歩「あ、り、さ、ちゃ、ん…？…………なんで…？」


亜利沙（見られた……雪歩ちゃんに………見られたっ……）

ﾄﾞｯｶｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱｱﾝﾝﾝﾝﾝﾝﾝﾝ!!!!


雪歩「きゃあっ！？」

亜利沙「うわあっ！？」


妄想仮面「ピョーッピョッピョッピョッ！ついに！ついに揃ったわ！7つの大罪を宿した、究極のパンツが！」

亜利沙「なっ…！？妄想仮面…！？」

妄想仮面「今までご苦労様。正直、あなたがここまでやるとは思ってなかったわ。それ以上に予想外だったのは雪歩ちゃんのほうだったけどね」

亜利沙「最初から……これが目的だったんですね……ありさにパンツを集めさせることが…！」

妄想仮面「そういうこと。最後は雪歩ちゃんと戦って疲労困憊のあなたから全てかっさらうつもりだったんだけど……こんなに力の差があったなんてね。嬉しい誤算だわぁ」


ﾋｮｲ

妄想仮面「おお～、さすがアイドルの体は軽いわね」

亜利沙「なっ…！？雪歩ちゃんになにをする気ですか！？」

妄想仮面「一緒に来てもらうのよ。究極の変態となった私が作る新たな世界へ……。この子には才能がある。私の右腕になれるよう“教育”するわ」

亜利沙「どうして…！パンツは全部集まったんでしょう！？雪歩ちゃんはもう関係ないじゃないですか！」

妄想仮面「ホントはそのつもりだったんだけどね～。私の正体知られちゃったし、放っておくわけにはいかないかなって」

亜利沙「そんな…っ！待って！」


ｶﾞｼｯ!

妄想仮面「なに？」

亜利沙「ありさが………ありさがやりますから……なんでも協力しますから……なんでもやりますから…………雪歩ちゃんを、連れて行かないで……」

妄想仮面「…あのねぇ」


ﾄﾞｶｯ!


亜利沙「いぎゃあああああああああああああ！！！！！！！」

妄想仮面「なんで有望な子を諦めて、ボロきれみたいに這いつくばってるあなたを連れてかなきゃいけないの」

亜利沙「うぐっ…えぐっ……おねがい…お願いします……おねがい…」

妄想仮面「あなた、アイドルでしょう？オーディションで負けても泣いて頼めば仕事が貰える？才能が無くても土下座して頼めばアイドルになれる？違うでしょう？これ以上がっかりさせないで欲しいわ」

亜利沙「あ、ああ、あああ……」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

妄想仮面「…ま、これからも正義の味方続けるならいつかまた会えるわよ。今度は殺されちゃうかもしれないけどね♡」



妄想仮面「じゃ、そういうことで……とうっ！」ｼｭﾊﾞｯ!

亜利沙「ま………て………」

亜利沙（寒い…………体中が、痛い…………目が、みえない…………）



亜利沙「雪歩ちゃん……………………ゆ、き、ほ、ちゃ………………………」




亜利沙「……………………………………………………………………………ごめんな、さい…」

　・

　・

　・

　・

　・

　・

　・

　・

　・

　・

　・

　・

　終


次回、最終回