響「……」

響「……ふう」

ﾂﾝﾂﾝ

響「…………ちっちゃくなっちゃったなお前。しぼんだ風船みたいだ」

響「……」


Ｐ「響。順番が来たぞ」

響「うん……今行く」

――――――

――――

――

【喫茶店】
ｻﾞｰｰｰｰｰｰ……

P「雨、強くなってきたな」

響「うん……」


P「……」

響「…………」

P「ペットの火葬、初めて見たけど案外早く終わるんだな」

響「ハムスターは小さいからな。大きな動物だともっと時間かかるぞ」

P「ハム蔵、何年生きたんだっけ」

響「8年」

P「すごいな。ハムスターの寿命って普通3年くらいだろ？」

響「ちゃんと記録取ってれば世界記録だったかもしれないな～」

P「だな」

ｻﾞｰｰｰｰｰｰ……


P「……」

響「……」

P「…………」


響「なんだよ。さっきからジロジロ見て」

P「あ、悪い。そんなつもりじゃなかったんだが」

響「いつも通りにしててよ。こっちが変な気分になってくるぞ」

P「すまんすまん。……なんつーか、意外とあっさりしてるんだな」

響「意外？」

P「うん。もっと取り乱すかと思ってた」

響「まあ、これが初めてじゃないし。だいぶ前からハム蔵の様子見て“そろそろだな”って覚悟もできてたし」

P「死期が近いとか、わかるのか？」

響「うん。あんまりエサを食べなくなって、どんどん痩せてきて……最後のほうはほとんど寝てばっかになってたな」

響「それで昨日、朝起きてハム蔵を見たら……今まで飼ってきた子たちもそうだったけど、ハムスターって本当にあっけなくお別れになっちゃうんだ」

Ｐ「……辛いな」

響「う～ん、確かに悲しかったけど……それより“ありがとう”“お疲れ様”って気持ちのほうが大きかったかな」


ｻﾞｰｰｰｰｰｰ……

――――――

――――

――

P「……」

響「……」

響「さっきの話だけどさ」

Ｐ「うん？」

響「自分、初めて飼ったハムスターが死んだときは大泣きしたんだよね。大声出して」

Ｐ「いつの話だ？」

響「小学生の時。その子は2年でお別れだったんだけど、3日くらい泣きっぱなしだったなあ」

響「次に飼った子は3年生きたけど、やっぱり泣いちゃった」

響「なのに、いちばん長く一緒にいたハム蔵に対しては全然涙が出なくて……自分、どんどん鈍感になっちゃってるのかなって……」


Ｐ「……それは鈍感になったんじゃなくて、強くなってるってことだと思うぞ」

響「え？」

Ｐ「死を冷静に受け止められるのは、本気で大切にしていたものを失って、本気で悲しんだことがある人間だけだ。ハム蔵の死に対して取り乱さないでいること、それ自体が今までに飼ってきたペットたちを響が大切にしていたことの証なんだよ」

響「そう……なのかな」


Ｐ「こういう例えが正しいのかは自信がないんだが……俺だったら自分が死んで響がわんわん泣くより、“ありがとう”“お疲れ様”って笑顔で送り出してくれたほうが嬉しいぞ」

Ｐ「悲しんで引きずるだけが愛情の証明じゃない。乗り越えて前に進むことが幸せな時間をくれた家族への手向けになる……俺は、そう思う」


響「…………うん」

――――――

――――

――

ｶﾞﾁｬ
ｱﾘｶﾞﾄｳｺﾞｻﾞｲﾏｼﾀｰ

Ｐ「響、傘は？」

響「持ってるけど……いいや。小雨になってきたし、なんだか今日はあの日みたいに雨の中をダッシュで帰りたい気分さー」

Ｐ（あの日？…………ああ、響チャレンジの……）


響「それじゃプロデューサー！また明日！」

Ｐ「おう。風邪ひくなよ？」

響「もっちろん！自分、完璧だからなーー！！」

ﾊﾞﾁｬﾊﾞﾁｬﾊﾞﾁｬ……

（俺は、走り去る響の姿が雨の向こうに消えるまで見送った）


（ずっとその肩にしがみついていた小さな命はもういないけど、響の走りはいつも以上に力強かった）



P「……ありがとな、ハム蔵」

お し ま い

ペットロスを題材にした話はいつか書きたいと思っていたのですが、今回のテーマである雨とは相性がいいんじゃないかと思い作ってみました
しっとりした雰囲気が伝われば幸い

乙
公式は年を取らない世界で良かったな、としみじみ思った

うちの子（ミニチュアダックス）の時を思い出した…
思ったよりダメージを受けたけど思い出す機会をくれたことに感謝

一つだけ
響はペットをペットと呼ばずに家族と呼ぶのと同様に、エサではなくご飯と呼びます

お疲れ様です

愛猫がもう11歳ですが、もしペットロスの時は響のように落ち着いて見送れる自信はありません。きっと、すごく取り乱すだろうなぁ…

弱ってくとこ見てたらなんとなく心の整理がつくんだよね
数年前に飼ってた猫が死んだ時は顎部骨肉腫で口がまともに動かせなくなって、最後は水とちゅーるぐらいしか食べられなくなって3ヶ月くらいあったから「みう苦しくないな」っていう安堵もあった
一週間後に子猫拾ったから秘密結社NNNは絶対ある