愛『ううっ……うううっ……涼さん……ぐすっ』

涼『泣かないでよ愛ちゃん。これでお別れってわけじゃないんだしさ』

愛『ごめんなさい……今日ぐらい、笑顔でいなきゃって思ってたんですけど……涙が……』

涼『何度も言うけど、僕、876プロに籍は残してもらうことになってるんだからね。当分は315プロの仕事で忙しいけど、必ず戻って来るから』

愛『…………はいっ！それまであたし、なにがなんでもこの事務所を守ってみせます！もう泣き虫は卒業します！』

涼『大袈裟だなあ。……でも、愛ちゃんがこれから876プロのエースになるのは事実か。頑張ってね』

愛『はい！だから涼さん、いつかまた一緒にお仕事してください！約束です！』

涼『うん。約束するよ』

愛「じゃあ、指切りです！」

ｷﾞｭｯ

愛『ゆーびきーりげーんまーんうーそつーいたーらはーりせんぼーんのーますっ！』

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～1年後～

《今週のランキング一位は、またまたこの3人！F-LAGSで「夢色VOYAGER」です！》

《いやー凄いですね。これで4週連続ですか。完全に人気アイドルとして定着してます》

《武田さん、この快進撃をどう見られますか？》

《3人とも個性的なメンバーですが、その中心にいるのは間違いなく秋月涼君でしょう。》

《彼の力には以前から注目していたんだけどね......まったく、大した子だよ》

愛「…………」

ｶﾞﾁｬ　ﾊﾞﾀﾝ

石川社長「愛、そろそろ車出すわよ。シートベルト締めて」

愛「……はい」

ｶﾁｯ　
ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ……

愛（あれから、涼さんは順調にヒット曲を出して、イケメン男性アイドルとしてブレイクしている）

愛（街を歩いても、電車に乗っても、どこでもF-LAGSの広告が目に入るくらい）

愛（考えてみれば、女の子のアイドルしてた頃から売れっ子だったんだし、当然の結果なのかなって思う）

愛（テレビの画面越しに見る涼さんはいつもハツラツとして、キラキラ輝いて……本当に楽しそう）

石川社長「今日はバラエティの収録が2本だったわね？」

愛「はい」

石川社長「悪いけど、私は営業回りがあるから迎えは行けないわ。帰りはタクシー使ってね」

愛「はい」

愛（876プロは、所属アイドルがあたしだけになった影響もあって、かなり規模が小さくなってしまった）

愛（スタッフさんもどんどん辞めていって、今ではあたしと社長の2人だけ）

愛（社長が銀行や得意先への対応で手いっぱいになっているせいで、新人アイドルの発掘も上手くいっていないみたい）

愛（だから、あたしがいっぱい仕事をして、事務所を支えないと……）

愛（あたしが……）

愛（……）

石川社長「愛？どうかしたの難しい顔して」

愛「えっ？あ、いえ、なんでもないです！ちょっと、ぼーっとしちゃって……」

石川社長「大丈夫？最近スケジュールきつめだし、疲れてるんじゃないの？」

愛「いえいえだいじょーぶですって！気にしないでください！本当に！」

石川社長「ならいいけど……」

愛（あたしは……Bランクには上がったものの、そこからは鳴かず飛ばず）

愛（気分転換になるかもと思って受けたトーク番組の仕事が予想外の好評で、どんどんバラエティ系の仕事を入れるようになった）

愛（反面、ステージに立つことはほとんど無くなって……今では自分の歌の歌詞すら忘れかけている）

愛（このままじゃダメだと思ったのは1度や2度じゃないけど、事務所の状況を考えたら順調にいってるバラエティの仕事を断るわけにはいかないし）


愛（……ああ、ダメダメ！難しいコト考えるな！バカなんだから！）

愛（今はとにかく目の前の仕事を頑張ろう！涼さんが戻って来るまで、あたしが876プロを守るって約束したんだから！）

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【スタジオ】

愛「それであたし、思い切って川に飛び込んだんです！とりゃーって！そしたら川の深さが足首くらいしかなくって……」

司会「浅っ！！つーかそんなもん飛び込む前に気づくやろ！」

愛「夢中になっててわからなかったんですよ～。おまけに魚だと思ったのはただのペットボトルだったし……」

司会「なんでそんな見間違いできるん！？」

愛「だってあたし、バカですから！てへっ♡」

ﾜﾊﾊﾊﾊﾊﾊ!

司会「さて、恒例の愛ちゃんドジっ子トークも終わったとこで……そこの怪しいやつ！」

亜利沙「……？」ｷｮﾛｷｮﾛ

司会「お前やお前！他におらんやろ！」

亜利沙「ぎゃわっ！？こ、これは失礼しました！ありさ的にはそんなに怪しい挙動をしてたつもりはないんですけど！」

司会「そんなソワソワキョロキョロしてて怪しくないわけがあるかっ！」

ﾜﾊﾊﾊﾊﾊﾊ!

亜利沙「すいませんでした～。まさかその、ひ、日高愛ちゃんと共演できるなんて夢にも思ってなかったもので、ど、動悸が……ﾑﾌｯ」

愛「大丈夫ですか？苦しいならまず、深呼吸です！」

亜利沙「は、はいぃっ！すうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……ｳｯ!?」

愛「吸いすぎ吸いすぎ！吐き出して！」

亜利沙「ｹﾞﾎｯｺﾞﾎｯ！」

司会「おい、誰か救急車呼んでくれえ！」

ﾜﾊﾊﾊﾊﾊﾊ!

亜利沙「め、面目ない……。でもありさ、前から愛ちゃんの大ファンでして……」

愛「そうなんですか！なんか照れちゃいますね～」

亜利沙「はい！とくにその、は、“ハッピース”が大好きなんです！」


愛「……………え？」

亜利沙「あの曲は本当にこう、仲良し3人の友情がぎゅっと詰まってて、可愛くて、尊みの塊と言っても過言ではない歌詞でしてね、ありさ的にはそれ以上に」

司会「はいはい、亜利沙ちゃんに任せとったら尺なくなってまうんでVTR用意しといたわ。そんじゃどうぞ～」


愛（ハッピース……）

ハッピース　私たちきっと　出会えて良かったよね♪

ハッピース　さあ私たち　これからもよろしくね

ワクワクドキドキや　イライラすることもあるけど

どれも素敵だから　やっぱずっと3人でいたいね

愛「………………」


亜利沙「愛ちゃん？どうかしたんですか？顔色が悪いような」

愛「……ううん。なんでもないですよ。あはは……」

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【テレビ局駐車場】
ｶﾞﾁｬ　ﾊﾞﾀﾝ

愛「……いつものところまで」

運転手「わかりました」

ﾌﾞﾛﾛﾛﾛﾛ……


愛（頭の中で、さっき聞いたハッピースがずっと鳴り響いていた）

愛（出会えて良かった……ずっと一緒……3人で……）

愛（あの曲を歌ってた頃のあたしは、本当にそう思ってた）

愛（でも今は、みんなバラバラで……涼さんも、あの人も……）

愛「はっ！？」


愛（なに考えてるの？もうあの人のことは考えないようにするって決めたのに）

愛（あんな人……もう二度と、顔も見たくない）

愛（……なのに）


愛「う、ううう……」

愛（なんでこんなに悲しいの？なんで涙が出そうになるの？）

愛（我慢しなきゃ……。涼さんと、約束したんだから……）

愛（涼さん……）

愛（りょう、さ、ん…………）



愛「さびしいよ……」

お　し　ま　い　

次回、愛はどうする……？

『羽ばたきのMy Soul』は名曲ですよね
①ということで、この先どうなるか続きを楽しみにしています