愛『尾崎さん……本当に、辞めちゃうんですか……？』

尾崎『……ごめんなさい。もう決めたことだから』

愛『でもっ……まなみさんに続いて、尾崎さんまでいなくなっちゃったら、あたしっ……』

尾崎『私にはもう、アイドルを育てる資格がないのよ』

愛『絵理さんとの勝負に負けたからですか？』

尾崎『それは直接の原因じゃないわ』


尾崎『あの子に叩きのめされて……ようやく気付いたの。自分の間違いに』

尾崎『つまらない意地で絵理を失って……勝手に逆恨みして、あまつさえその復讐心を満たすためにあなたや秋月さんを利用した』

尾崎『許されることじゃないわ』

愛『そんなことない！あたし、尾崎さんに利用されたなんて思ってません！』

愛『尾崎さん、あたしのこと何度も助けてくれたじゃないですか。マスコミの人たちからも守ってもらって……それに……』

愛『もう、嫌なんです！876プロから人がいなくなるの……！』


尾崎『日高さん』

愛『お願いですっ……考え直して……』

尾崎『……』


尾崎『…………ごめんなさい』

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ﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟﾋﾟ…

愛「うっ……」

ﾁｭﾝﾁｭﾝ　ﾁｭﾝﾁｭﾝ


愛「……はあ。嫌な夢」


愛（もう、忘れたいのに）

【日高家】

愛「おはよう……」

舞「おはよう。朝ご飯すぐに食べちゃってね。私これから現場だから」

愛「はぁい」


舞（じ～～）

愛「……なあに？そんなにじろじろ見て」

舞「愛、少し瘦せたんじゃない？ほっぺがこけてるように見えるわよ」

愛「だって最近忙しいんだもん……太るよりいいでしょ。アイドルなんだし」

舞「そうかしら？私、あなたより何倍も仕事多いけど、スタイル崩したことないわよ。いつでも全盛期、ピカピカ舞ちゃん！」

愛「ママは特別だよ……」

舞「それと！いつになったらオーディションに出てくるのよ？愛がいないと張り合いがなくてつまらないんだけど」

愛「しばらくはバラエティに専念するって言ったでしょ。どんどん仕事が入ってくるから他の事する暇がないの」

舞「ふーーーーん。仕事があるのは結構だけど、歌の練習はしてるの？」

愛「それは……その……」

舞「一旦サボり癖が付くとね、歌詞も歌い方も忘れて二度と戻れなくなっちゃうことがあるらしいわよ。ま、私は10年以上ブランクがあっても余裕で復帰できたけどね」


愛（……もう、なってるよ）

舞「あ、それとテレビつけてくれない？こないだ取材受けたんだけど、そろそろ放送されると思うのよね」

愛「はーい」

ﾋﾟｯ

《それでは次のコーナーに参りましょう！今、若者を中心に大人気のネットアイドル“Ellie”の素顔に迫る！》


愛「っ！？」

舞「あら、この子またテレビに出てるのね。ネットアイドルってアンダーグラウンドな存在だと思ってたけど……時代も変わったなあ」

愛「ごちそうさま」

舞「え？まだほとんど食べてないじゃない」

愛「仕事に送れるから。行ってきます」

舞「ちょっと愛……」

ﾊﾞﾀﾝ!

愛「......」


愛（なんで、忘れさせてくれないの）

愛（なんで、あたしの頭の中から消えてくれないの）

愛（覚えてたって辛いだけなのに。苦しいだけなのに）


愛「事務所......今日は、歩いていこう......」

ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ

愛（尾崎さんの気持ち、今ならわかる気がする）

愛（嫌いな人がスポットライトを浴びているのを見ると、むしゃくしゃして、胸が締め付けられるみたいに痛くなる）

愛（尾崎さんは自分が悪いって言ってたけど）

愛（それでも、あたしにとっては……まなみさんがいなくなった876プロで、一番頼れる人だったのに）

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絵理『愛ちゃん……ありがとう……』

絵理『……わたし、愛ちゃんがいたから頑張れた』

絵理『星井さんに勝てたの……愛ちゃんのおかげ』

絵理『だから……できれば、これからもずっと、一緒にアイドルしていけたらいいなって……』
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愛（うそつき）


愛（急にいなくなって、尾崎さんまであたしから奪っていって）

愛（大嫌い）

愛（絵理さんのことなんか……大嫌い）

お　し　ま　い　

次回、愛はどこへ……？

乙
読んでいて胸が締め付けられる思いです