愛「え、どうしたの急に」

聖「今度、私が主役のイベントがあって……プロデューサーさんが、“なにか新しいことに挑戦してみないか”って……」

愛「それで、ALIVEを？」

聖「うん……。私、小さい頃に聴いて以来、あの歌が大好きで……カバー曲って、権利とか色々大変かもしれないけど……歌ってみたいなって……」

愛「そ、そう？なんか照れちゃうな～！」

聖「えっと……私が小さい頃の話だから……その……」

愛「あ。もしかしてあたしじゃなくて……」

聖「うん……お母さんのほう……」

愛「ｶﾞｸｯ」

聖「で、でも、愛ちゃんのALIVEも好き……なんていうか、圧倒されるような迫力があって……」

愛「あはは……ありがと……」

聖「それで……もし良かったら……私のALIVEを、愛ちゃんに聴いて欲しい」

愛「うん！それは大歓迎だよ！」

聖「じゃあ……レッスンルームに……」

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聖「ふぅ……はぁ……どう？愛ちゃん……」

愛「えーっと、その……」

聖「お願い……正直な感想、聴きたい……」

愛「なんて言うか……後半、明らかに息切れしてたように聴こえたなーって」

聖「やっぱり……」

愛「聖ちゃん、無理して大声出そうとしてない？この曲7分もあるからセーブして歌わないと持たないと思うよ」

聖「愛ちゃんは、してるの？セーブ……」

愛「あたしはとくに意識しなくても歌えちゃうからなあ～。はじめてスタジオで歌った時も一発ＯＫだったし」

聖「やっぱり……それなら私も……セーブしないで歌いきれるようにならないと……」

愛「無理しなくてもいいと思うけどなー？聖ちゃんの声、すごくよく通るし」

聖「でも……それじゃ、正しいALIVEの歌い方じゃ、ない……」

愛「正しい歌い方って、何？」

聖「え？」

愛「あたしはそんなこと考えたこともないよ。まあ、今みたいな感じでALIVEを歌えるようになるまではいろいろあったけど」

聖「いろいろって……？」

愛「え～っと……」ｷｮﾛｷｮﾛ


愛（近くには誰もいない、よね）

愛「実を言うとあたし、昔は歌がそんなに好きじゃなかったんだ」

聖「えっ……？」

愛「小さい頃はよく歌ってたんだけどね。細かいこととか考えなかったし」


愛「……でも、物心がついてくるにつれて、周りの人たちがあたしを“ママの娘”としか見てないことがわかってきちゃって」

愛「上手く歌えたら“さすがママの子だね”で、失敗したら“ママはあんなに凄かったのになあ”で……だんだん、歌が楽しくなくなっちゃって」

愛「そんな自分を変えたくて、アイドルを目指したんだ。ママよりすごいアイドルになってやる～！って」


聖「そう……だったんだ……」

愛「だけど全然ダメ！何度オーディション受けても門前払い！」

愛「当たり前だよね。歌もダンスもダメで……ママを超えたい、って思ってても、肝心の歌に対して素直に向き合えなかったっていうか。もうどうしたらいいかわかんなくなっちゃって」

愛「でも、そんなあたしの歌を好きだって言ってくれる人と出会えて……その人の紹介で876プロに入れたの」


愛「それからいろいろあって、アイドルに復帰したママとオーディションで戦うことになって」

愛「復活したママは、聞いていたのよりもずっとずっと凄くて……なにを歌っても敵わない、どうにかしなくちゃって、悩んで悩んで」

愛「ふと思ったんだ。“あたしは何のために歌ってるんだろう？”って」

愛「ママを超えたいのは、本当。でもなんでそう思うのか......」

愛「それでやっと気づいたんだよね。あたしは歌が好きで好きでたまらなくて、なのにママの存在から目を逸らすために、自分の気持ちに蓋をしてただけなんだって」

愛「あたしは歌が好き。そのきっかけは、小さい頃からママがずっと子守歌で聴かせてくれた曲――」


聖「それが……ALIVE？」

愛「うん！」

愛「あたしの原点の曲、ALIVEをようやく素直な気持ちで歌えるようになって」

愛「そしたら、できたの！ママの歌い方じゃない、あたしだけのALIVE！」


聖「自分だけの……歌……」

愛「で！そのALIVEでどっかーん！とママをやっつけちゃったのがあたし！真・日高愛なのです！！」

聖「し……しん……？」

愛「……ごめん、ちょっと調子乗っちゃった」

愛「え～っと、長くなっちゃったけど、要するにあたしのALIVEの歌い方はあたしにしかできないと思うし、する必要ないと思うんだよね」

聖「……でも、それじゃどうしたらいいのか余計わからない……」

愛「なら、聖ちゃんの正直な気持ちを込めて歌ってみたらいいんじゃないかな」

聖「正直な……気持ち？」

愛「うん。聖ちゃんは、なんのために歌うの？誰にALIVEを聞かせたいの？」

聖「私……」


聖「…………」

聖「私は……」

聖「はじめて、私の歌を聴いてくれた人……プロデューサーさんに……もっともっと、歌を聴いて欲しい……」

聖「……でも」

聖「今は、プロデューサーさんだけじゃない……私を支えてくれた、大勢の人たちにも……歌を届けたい……」

聖「今度のイベントも……たくさんの人が、私の歌を聴きたいって、言ってくれて……そのおかげで……だから……」


愛「そっか」

愛「あ！ちょっと思いついたんだけど、いちどALIVEの2番から歌ってみない？」

聖「え……どうして？」

愛「なんとなくだけど、今の聖ちゃんの話聞いたら、こっちの歌詞のほうが感情ニュー……ニュイー？しやすいんじゃないかなって」

聖（……“感情移入”って言いたいのかな）


聖「……うん。やってみる」

聖（私の、気持ちを……）

“ひとりで寂しかったときにも”

“あなたはいつも 微笑みをくれた”

聖（プロデューサーさん……）


“見守っててね”

“素敵な私が飛び立つまで”

聖（ファンの、みなさん……）


聖（私……もっともっと、歌いたい……ずっとずっと、みんなの側にいさせて欲しい……）

聖（だから……！）

聖「すー、はー……」

聖「……行きます……！」

　♪

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　♪

　♬

　♪

聖「……ふぅ」

愛「……」

聖「どう……だった……？」

愛「…………」

聖「愛ちゃん？」


愛「……ううっ、ぐすっ」

聖「え……！？どうしたの……！？」

愛「ごべんね゛……凄すぎて……なんか、泣けてぎちゃっで……」

聖「そんな、大げさ……」

愛「そんなことないよ～！あたしともママとも違う“聖ちゃんの”ALIVEだった！」

聖「……ありがとう。愛ちゃんの……おかげ……」

愛「良かった……良かったよお……」ｼｸｼｸ

愛「えへへ、泣いたら喉乾いてきちゃった。飲み物取って来るね」

ｶﾞﾁｬ

モバP「あ」

愛「え？」



愛＆P「　・　・　・　・　・　・　・　」

愛「ええええええええええっっっっっっ！？プロデューサーさん、いつからそこにいたんですかっ！？」

モバP「あー、いや、別に盗み聞きとかはしてないんで……」

愛「思いっきりドアに耳くっつけてたじゃないですか！まさか、あたしの恥ずかしい告白も聞かれて……！」

モバP「ないない、そんなことないですって。ドア越しじゃ日高さんの声なのか聖の声なのかもよくわかりませんでしたから」

愛「やっぱり盗み聞きしてるー―――！！！」

モバP「あ、飲み物ですよね？俺取ってくるんで……」ｽﾀｽﾀ

愛「待て――！！話を逸らすなー－！！」ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ!


聖「……行っちゃった」

聖「…………ふふっ」

聖（歌って、不思議……。聴いてもらうだけで、プロデューサーさんや愛ちゃん、たくさんの人と出会えて……どんどん世界が広がって……）


聖（……アイドルになって……良かった）


聖（ありがとう……私を支えてくれた、すべての人たち……）


聖（私……幸せです……）

お し ま い

それでCVはいつ発表になるんですかね

乙



聖の声であらいぶかぁ……何人死人がでるかなぁ

乙
先輩の立場で振る舞う愛ちゃんが新鮮でした