琴葉「プロデューサー」

シタP「ん？　琴葉、どうした？」

琴葉「ちょっと相談があるんですけど、今、時間ありますか？」

シタP「大丈夫だよ。どこか、会議室とかの方がいいかい？」

琴葉「いえ、ここでいいですよ」

シタP「わかった。じゃあそこのテーブルで話そう。先にそっちで待っててくれ」

琴葉「はい」

シタP「……よし」

シタP「お待たせ。それで、どんな相談だ？」

琴葉「あの…、私、インターンシップがしてみたいんです」

シタP「インターンシップ」

琴葉「はい」

シタP「ってことは、どこかの職場で実際に働いてみたいと」

琴葉「はい」

シタP「なるほどなぁ。琴葉もそういうことを考える時期か」

琴葉「はい。あ、でも、アイドルを辞めたいとかじゃないんですよ？」

琴葉「社会勉強というか、人生の経験というか……」

シタP「インターンシップに興味がある？　それか、アイドルとは違うこともやってみたい？」

琴葉「そんな感じです」

シタP「そうかぁ……」

シタP「まぁ、アイドルやってると、普通の学生としての活動ができなかったりするもんな。興味を持つ気持ちはわかるよ」

シタP「ちなみに、どんな仕事をやってみたいんだ？　もしかしたらどこかにお願いできるかもしれないし、候補があれば教えてくれ」

琴葉「お嫁さんです」

シタP「えっ？」

琴葉「お嫁さんでお願いします」

シタP「ん？」

琴葉「お嫁さんがいいです」

シタP「ちょ、ちょっとタイム」

シタP「お嫁さんって、あのお嫁さん？　いわゆる婚姻関係における妻というもの？」

琴葉「その通りです」

シタP「えっ、インターンシップって言ってたけど、何かしらの職業を経験したいわけではないの？」

琴葉「主婦業も立派な仕事ですよ？」

シタP「それはそうだけど、こう、なんか、違くない？」

シタP「例えば身近なとこで言えばさ、事務員の仕事をやってみるとか、そういうのがインターンシップじゃない？」

琴葉「それもインターンシップですけど、私はお嫁さんがいいんです」

シタP「うーん、そうかぁ……」

シタP「……仮にお嫁さんをやるとしてさ、どこでやるつもりなの？　どっかのハウススタジオ借りる？」

琴葉「いえ、プロデューサーのお宅がいいです」

シタP「はい？」

琴葉「プロデューサーのお宅です。旦那さんをやってくれる方もそこにいますし」

シタP「……琴葉さん、マジで言ってる？」

琴葉「もちろん本気です」

シタP「わぁー、曇りのない目」

シタP「でもそれは許可するつもりはないし、俺は旦那役もやらないよ？」

琴葉「なんでですか？」

シタP「なんでもだよ」

琴葉「お嫁さんだからダメなんですか？　だったらメイドでもいいですよ」

シタP「メイドかぁ…。それガチなやつ？　それともメイド喫茶みたいな感じ？」

琴葉「もちろん真面目な方です」

シタP「ですよね」

琴葉「忠実なメイドとして、プロデューサーにお仕えします」

シタP「そんなに俺を世話したいの？」

琴葉「はい。プロデューサーの身の回りのお世話をさせてください」

シタP「えーと、ごめん。間に合ってます」

琴葉「そんなこと言わずに。あ、メイドがダメなら執事でもいいですよ」

シタP「執事も結構です」

琴葉「では家政婦ならどうですか？」

シタP「家政婦もいらないよ」

琴葉「それならお手伝いさんは」

シタP「似たようなもんじゃん」

琴葉「召使で妥協します」

シタP「お世話系の仕事しか狙ってこねぇ！」

琴葉「おかしいな…。大きな要求から小さくしていけば、相手が応じやすいって本には書いてあったのに……」

シタP「ドアインザフェイスかよ。こっちから見たら、なりふり構わず来てるようにしか見えなかったぞ」

シタP「あと、厳密に言うなら小さくできてないからな？　執事はメイドより格上だからな？」

琴葉「そんな！　私、ミスしていたんですね……」

シタP「ミスというかまぁ、そもそも開かないドアだから」

シタP「開かないドアを叩いたところで、ドアインザフェイスにはならないよ」

琴葉「ではまずオープンザドアしてください」

シタP「ドアチェーンしてからね」

琴葉「中に入れるつもりはないんですね……」

シタP「……そんなに俺のお世話がしたいの？」

琴葉「はい。プロデューサーは毎日忙しく仕事してますから、少しでもサポートできればなって」

シタP「琴葉……」

琴葉「あと、プロデューサーの身の回りの世話ができるということは、プロデューサーのお家にお邪魔できるかなって」

シタP「そっちが本音か」

琴葉「まずは掃除だけでもさせてください。お願いします！」

シタP「事務所のデスク周りならいいけど」

琴葉「プロデューサーのお宅の掃除！」

シタP「それはダメ」

琴葉「どうしてですか？　私、手を抜いたりはしませんよ。掃除機掛けから水回りの掃除まで、しっかりやります」

琴葉「必要なら窓拭きとか、普段手が伸びにくいところも掃除します」

琴葉「あ、もしかして掃除だけでは足りませんか？　お洗濯もしますよ？」

琴葉「干すのはもちろん、取り込んで畳んで、タンスにしまうところまでやります」

琴葉「それから、お口に合うかはわかりませんが、料理もがんばります」

琴葉「プロデューサーの好みの味付けがあれば、その通りにしますよ」

琴葉「どうですか？　プロデューサー。私にインターンシップさせる気になりましたか？」

シタP「本当にやってくれたらすごく助かるけど、気持ちだけで大丈夫だよ」

琴葉「助かるなら受け入れてくれてもいいんじゃないですか？」

シタP「受け入れたら最後な気がするんだよなぁ」

琴葉「うーん、家事だけでは足りないようなので……オプションも付けます！」

シタP「オプションって言っちゃったよ」

琴葉「お疲れの時は肩たたきやマッサージもしますよ。デスクワークで肩や腰が凝ってますよね？」

シタP「たしかに凝ってる。揉んでもらえるのはちょっと嬉しいな」

琴葉「そうですよね！　これはいいですよね！」

シタP「マッサージはぶっちゃけ惹かれる」

琴葉「あとですね…、ちょっと恥ずかしいですけど、プロデューサーがご希望なら、お風呂で背中も流します」

琴葉「その…、ちゃんと予習してますのでお任せください///」

シタP「うん、今のは聞かなかったことにするね」

琴葉「というわけで、家事でも癒しでも、できることならなんでもやります」

琴葉「なのでどうか、プロデューサーのお宅でインターンシップさせてください！　お願いします！！」

シタP「お断りします」

琴葉「お願いします！！」

シタP「ダメです」

琴葉「お願いします！！」

シタP「ゲームの断れない選択肢かよ。ダメなものはダメ」

琴葉「どうしてですか！　私がアイドルだからですか？」

シタP「動機が不純だからだよ」

琴葉「うーん…。小さな要求から通してだんだんと要求を大きくしていけば、交渉は上手くいきやすいって本には書いてあったのに……」

シタP「今度はフットインザドアか。つま先すら入ってなかったような気がするが」

琴葉「そんな…！　私、またもミスを…！」

シタP「気付いてなかったのか…。さっきと同じく、ただなりふり構わずアピールしてるようにしか見えなかったぞ」

琴葉「そうですか…。じゃあ次はもっと勉強して、交渉の場に挑みますね」

シタP「ウチに来ようとするのは、できれば今回で諦めてほしいな」

琴葉「夢は諦めない人しか叶えられないんですよ！」

シタP「なんか間違った自己研鑽をしたっぽいな。ちょっと何の本参考にしたのか教えてくれる？」

ｺﾝｺﾝｶﾞﾁｬｯ

恵美「おはよ～。プロデューサーいる？」

シタP「おう。おはよう恵美」

琴葉「おはよう、恵美」

恵美「琴葉もおはよ～！」

恵美「あ、んでさ、プロデューサーちょっといい？　今、建て込み中？」

シタP「いや、大丈夫だよ。何か相談？」

恵美「にゃはは、いや～、あのね？　今度のお休み一緒じゃん？」

恵美「そんでね？　よかったら、1日付き合ってほしいな～なんて……」

琴葉（デート！？）

シタP「1日？　なにするんだ？」

恵美「ちょっと買い物とかいろいろね！　あ、でも、無理しなくていいよ？　半日だけでもいいし、なんなら1件だけでも」

恵美「今度の撮影で着る衣装見繕うのがメインだから、プロデューサーはそこだけ付き合ってくれればオッケー！」

シタP「ああ、そういえば私服指定の撮影があったな。そういうことなら付き合うよ」

恵美「ホント！？」

シタP「うん。でも、俺でいいのか？　私服なら女子と一緒に見た方がいいんじゃ……」

恵美「プロデューサーでいいの！　たまには男子の意見も必要でしょ？」

シタP「そういうもんか」

恵美「そういうもの！」

琴葉（OKしてもらえてる……）

恵美「にゃはは、それじゃ○○日に××駅前集合で、よろしくね！」

シタP「わかった。時間は10時くらいでいいかな？」

恵美「いいよ！　ちなみに、その後って……」

シタP「ん？　俺は何もないけど」

恵美「そうなの？　じゃあさ、もう1件付き合ってもらってもいい？」

シタP「もう1件？」

恵美「うん。衣装見に行きたいお店の近くにさ、気になってるスイーツのお店があってね」

恵美「よかったらそこも一緒に行きたいな～って」

琴葉（要求を重ねてる…！）

シタP「うーん…、まぁそのぐらいならいいか」

恵美「やった！　じゃあそこも行こうね！」

シタP「ああ。他には見ておきたい店とかあるのか？」

恵美「1件目しだいかな～。他にも何件か回っていいの？」

シタP「いい衣装が見つからなかったら、探さないとだろう？」

恵美「にゃはは、ありがとね！」

恵美「時間余ったら余ったで、雑貨とか小物とか見てもいい？」

シタP「いいぞ」

恵美「やった～♪」

琴葉（予定がどんどん埋まっているわね……）

恵美「ね、ね、プロデューサー。時間によっては～…、そのままディナーまで行っちゃったりする？」

シタP「いや、あんまり遅くなるのは親御さんにも悪いからなぁ……」

恵美「なら、早めならいい？」

シタP「ははは。夕飯まで食べたら、本当に1日中一緒にいるようになっちゃうな」

恵美「ちょっと早めに切り上げてファミレスとかさ、どう？」

シタP「俺は構わないけど……」

恵美「じゃあファミレスも行きたい！　買い物早めに終わったら、そこでお喋りしててもいいしね！」

シタP「それもそうか。じゃあその流れでいくか」

恵美「うん！」

琴葉（結局1日デート…！）

琴葉（1日デートの提案から1件だけに縮小して交渉。そして了承を得てから要求を追加し、最終的には1日デートの約束へ）

琴葉（これはまさしく、ドアインザフェイス＆フットインザドア…！）

琴葉「……あの！！」

恵美「！」

シタP「！」

恵美（やば、目の前でお出かけの約束取り付けたのはマズかったかな…？）

シタP（しまった。これは琴葉の機嫌を損ねてしまったかもしれない）

恵美「……琴葉、どったの？」

琴葉「恵美……」

琴葉「いや、恵美師匠！！　弟子入りさせてください！！！」

恵美「なんで！？」

以上です。
お読みいただきありがとうございます。

今まで書いたのとは少し違うテイストの琴葉で書いてみたつもりです。
でもそんなに変わってないかも？

今年はこれ含めて2本しか書けなかったので、来年はもっと書きたいですね。
では読んでいただいた皆様、良いお年を。

乙
このPはいつか刺されそうだなとなんとなく思いました

乙
暴走琴葉いいね。ザssって感じ。
あと、てっきり恵美がピッキングする流れかと思った。

おつ
自分は恵美がすでに家で暮らしてると思ってた

乙
ポンコツ琴葉かわいい

感想ありがとうございます！

>>23
それ別の作品でも言われたことあります
自分の作風なのかも

>>24
今回の琴葉は王道（？）琴葉っぽく書いたので伝わってよかったです
恵美に何かさせる手もあったけど、今回は上手く膨らませられなかったのでシンプルにまとめました

>>25
実はこっそり同棲してるPっていうのはちょっと書いてみたいテーマではあります

>>26
ですよね
自分もSSにおける琴葉はポンコツだったり空回りだったりでちょっとキャラ崩れてるぐらいがかわいいと思っています

>>1さん、すみません。
よければ他に書いたSSを教えてくれませんか？

>>28
今年書いたもう1本はこちらです。管理人さんにまとめ記事にしてもらえました。
http://sorekarano.blomaga.jp/articles/248147.html

他にもいくつか書いててそれからの出来事さんに全部ではないですけどいくつか記事にしてもらってます
上のSSで検索すればたぶん某渋がひっかかると思いますのでそちらからもどうぞ。

>>29ありがとうございます。早速読ませていただきます

>>28
今年書いたもう1本はこちらです。管理人さんにまとめ記事にしてもらえました。
http://sorekarano.blomaga.jp/articles/248147.html

他にもいくつか書いててそれからの出来事さんに全部ではないですけどいくつか記事にしてもらってます
上のSSで検索すればたぶん某渋がひっかかると思いますのでそちらからもどうぞ。

二重投稿されちゃった
失礼しました