【12月某日　315プロ】

涼「おはようございまーす!」

一希「…涼か。おはよう」ペラッ

涼「一希さんが読んでるの漫画…しかもその薄さは同人誌ですか?」

一希「…ああ、神保町を回っていた時にふと目に入ってな｡たまにはこういうのを読むのもいい」

涼「へ〜｡でも、一希さんが漫画読んでるのはレアな光景ですね｡絵柄も何だか少女漫画みたいな感じですし」

大吾「確かに、普段は見ない光景じゃのう」

涼「大吾くん」

大吾「先生はその漫画のどこが気に入ったんじゃ?」

一希「…この漫画の作者、『荒木比奈』という人はアイドル活動をしながら漫画も描いている人らしくてな」

涼「荒木比奈…ああ、346プロのアイドルさんですね」

大吾「何じゃ涼、知っとるんか?」

涼「知り合いってわけじゃないけど…346プロさんとも何回かお仕事させてもらってるから名前だけは知ってるぐらいかな」

一希「…アイドルと漫画家、どちらも忙しいだろうに兼業しているのはすごいと思ってな。漫画もだが、この作家がどんな人なのか気になって、一度会ってみたいと思うくらいだ」

涼「346プロ…か」

大吾「どうしたんじゃ涼?」

涼「…いえ、876プロのアイドルとしての立場ですけど、今度その346プロでお仕事することになっていて」

一希「…そうなのか?」

涼「プロデューサーと石川社長にも確認しないといけないですけど、もし会いに行くのでしたら僕の付き添いという形なら一緒に入れるかもって思いまして」

一希「…おれの予定次第でもあるが、一応確認してもらっていいか、涼?」

大吾「涼、わしからも頼むぞ」

涼「うん、もっとも入れたからって会えるとは限らないけど…」

一希「…ああ、それでも構わない」

【その数日後　346プロ】

346P「F-LAGSのお二方、ようこそ346プロへ。お話は伺っています、この先の部屋に荒木はいるのでご案内いたします」

一希「…申し訳ありません、いきなり押しかけた形なのに案内していただけるなんて」

346P「いえいえ、荒木もアイドルのファンが会いに来てくれたのなら喜ぶでしょう。ちょうど新作の漫画も完成した頃でしょうし」

大吾「おお、それは楽しみじゃのう!」

一希「新作、か…」

比奈「…うーん、ネタが思い浮かばないっス…」

比奈「ふぅ…比奈、スランプっス…」(耽美な溜息)

裕美「ふざけんなぁ荒木ァ！！！」ドゴォッ！！

比奈「おわた!?」ゴフッ！

裕美「明日の朝までに入稿しないと印刷間に合わないっていうのに何余裕ぶっこいてんのよ！？」

由里子「裕美ちゃん、怒りでキャラ変わってるじぇ…?」

裕美「由里子さんは黙ってて!とにかく、明日までに24ページ上げなきゃいけないんだから溜息ついてないで早く描きなさい!」

比奈「そんなこと言われてもっス…」


一希「…入っていい空気なのかこれは…?」

大吾「…なんかぶち修羅場じゃのう…」

346P「ああ、うん…たまにあることなので大丈夫ですよ…」

一希「(…全然大丈夫には見えないが…)」

346P「…荒木お前さぁ、あれだけスケジュールに余裕持たせてあげたのにまったく原稿できてないってどういうことなのよ?」

比奈「うぅ…すまないっスプロデューサー…」

346P「それも全然進んでないどころか描くネタすら浮かんでいないって…」

比奈「…この前思いつきで描いてみた少女漫画風の漫画がすごく評判が良くて…だから今回もその路線で行こうと思ったんスけど…何分普段描かない作風だからネタが浮かばなかったんスよ…」

346P「だからって1ページも描けてないのは…」

比奈「…ファンの要望に応えたくて前より良いのを描こうと思ったんスけど…そう考えたらどうしても納得いく漫画が描けるようなアイデアが出てこなくて何も書けなかったんス…」

346P「荒木…」

比奈「ここまで悩んでも書けないなら…この路線で描こうなんて考えるんじゃなかったっス…」

一希「(…書けない…?)」

大吾「どうしたんじゃ?先生…」

一希「(…あの頃の父さんみたいだ…どうしても小説が書けなくて苦しんでいたあの頃の…)」

346P「…お前がそこまで思い悩んでいたことに気がつけなかった俺も悪かった。だったら今回は仕方ないな…」

比奈「…何とか間に合わせの原稿だけでも仕上げてみせるっス…」

一希「…ですが、それで荒木さんは満足できるものを描けるんですか?」

比奈「…九十九さん?…でも…」

一希「…最後まで諦めずに、自分が納得できるものを描けるように頑張ってみませんか?」　

大吾「先生…?」

比奈「九十九さん…どうしてそこまで…?」

一希「…おれはあなたの漫画が好きだから…納得のいかない作品を描いて後悔してほしくないんです…!」

比奈「九十九さん…!」

由里子「でも、比奈センセがネタが浮かばないのにどうするじぇ?」

比奈「そうっスねぇ…せめてアイデアが刺激されるようなモデルの人でもいれば…」

裕美「そうねぇ…」

？「フフフ…話は聞かせてもらった！」

一希「…誰だ!?」

―振り返ると、そこには黒装束に身を隠した謎の女性が立っていた

専務「アイドルがピンチの時に必ず忍び寄る黒い影…その正体は謎のベールに包まれた愛の盗っ人【ラブ・ハンター】…！」

専務「人呼んで、『シンデレラの魔法使い』！！」パァーン！

比奈「(うわぁ…どこかで聞いた声と雰囲気の人が来たっス…)」

由里子「(こういう場合気づいても言ってあげないのが優しさだじぇ…)」

裕美「(それにしたってハンター(盗っ人)って何よ…?)」

346P「シンデレラの魔法使いと名乗るお方…どこの誰かは存じませんが何か解決策があるとでも?」

裕美「え⁉プロデューサー本当に分からないんですか!?」

専務「フフッ、もちろん。最高のモデルを連れて来ている」

涼「…」ドキドキ

［秋月涼∶モバマスの姿］

一希「…涼!?」

涼「…本当にこれが人助けになるんですか?美城専務さん?」

専務「…しっ!その名で呼んでは駄目だ!」

裕美「(…まだ隠してる…)」

比奈「…おお、まさにイメージ通りっス…!」

涼「(…僕、男なんだけどな…)」

比奈「…！最高の漫画が描けそうなインスピレーションが湧いてきたたっス！ぜひとも私の作品のモデルになってほしいっス！」

涼「は、はぁ…僕で役に立つのなら…」

専務「フフフ…流石はシンデレラの魔法使い」

裕美「専務…一応お礼は言いますけど次からその格好はやめてくださいね…」

比奈「さぁーっ描くっスよ!最高のインスピレーションも湧いてきたし残り12時間で24ページ絶対仕上げてみせるっス!」

裕美「燃えてきたわね比奈ちゃん!」

一希「…おれにも出来ることがあれば手伝わせてください!」

大吾「ワシも力になれるならなんでもするぞ!」

比奈「九十九さんはトーン貼りを!兜さんは指定したところにベタ塗ってほしいっス!」

涼「僕はどうすれば…」

比奈「そこに座ってイメージしていてくださいっす！アナタは今恋をしている女の子なんでスよ！？『恋の咲く季節』って感じっス！！」

大吾「すごいテンションじゃ…ぶち燃えておるのう…」

裕美「比奈ちゃんのクオリティが上がってるわ。これなら確かに行けるかも…!」

由里子「フフ…次の同人誌は秋月涼総受け本なんてどうだじぇ比奈センセ?」

涼「そ、総受け…?」

裕美「…うん、それはいいからあなたも手伝って大西さん」

由里子「フヒヒ…スカートの中どうなってるか確認してもいいかじぇ…?」

涼「や、やめてくださいよ!」

裕美「邪魔しないで大西さん!!」

一希「…とにかく、今はやれることを最大限頑張りましょう」

比奈「…九十九さん」

一希「…何でしょうか?」

比奈「…いえ、今日は本当にありがとうございますっス」

一希「…いえ、単なるおれの自己満足の行動なので気にしないでください」

比奈「それでも、終わったら何かお礼をさせてほしいっス」

一希「…お礼なんて必要ありませんよ。ですが…しいて言うならあなたのサインをもらってもいいでしょうか?」

比奈「ふふっ、それならお安い御用っス」

一希「…ありがとうございます。よし、それでは間に合うように頑張りましょう!」

比奈「はいっス!」

−12時間後

346P「…24ページ原稿がちゃんと完成してる…!やればできるじゃないか荒木…」

比奈「……」

裕美「……」

一希「……」

大吾「……」

涼「……」

-死屍累々…

346P「…じゃ、じゃあお前ら今日はしっかり休めよ｡俺は代わりに原稿届けて来るから…」バタン

一希「…お、終わった…」

大吾「…こんなしんどい仕事生まれて初めてじゃ…」

涼「…大丈夫ですかみなさん…?」

大吾「おお、涼もモデルお疲れ様じゃ」

一希「…それでは、おれたちはいい加減帰るとするか」

比奈「あっ…」

比奈「みなさん、今回は本当にありがとうございましたっス!」

一希「…いえ、おれたちがやりたくてやったことですから」

大吾「おかげさまで良い経験させてもらったからのう!」

涼「いつかお仕事で一緒になる機会があったらその時はまたよろしくお願いします!」

比奈「…みんなのおかげで、サイコーの漫画が描けたっス…」

裕美「…比奈ちゃん、次は締め切りギリギリにならないようにしてね?」

比奈「うっ…!分かってるっス…」


―完

【オマケ∶数日後　346プロ専務室】

ちひろ「専務、例の物をお持ちしました」

専務「うむ、机の上に置いておいてくれ」

専務「(荒木比奈の完成原稿が誰よりも早く読める、これも役得というものか…しかし今回は「男に間違われる女の子」と「女に間違われる男の子」のラブロマンスとはまた思い切った内容だな)」

ちひろ「専務、今度のイベントで一緒にコスプレしませんか?懐かしの『南国少年パプワくん』の」

専務「おお、いいな!なら君がチャッピー、私がパプワで、シンタロー役には武内君を呼ぶか」

ちひろ「わぁ、いいですね!」

専務「フッ、私の華麗なシットロト踊りで観衆を魅了してやるとしよう♡」


―ほんとうにおわり

【後書き】
書きたいものを書いた結果、非常に滅茶苦茶な内容に仕上がりましたが自分としては満足しています。でも、巻き込まれたデレマスアイドルのPの方々には焼き土下座で勘弁していただきたいです
『荒木先生の漫画を手伝う』というネタが先行してクロスとして微妙な感じなのは反省ですが、「書きたいものが書けない」苦しみを知っている一希さんとは唯一絡みを作れたかなって思います｡ただ、それにしてもモデルになるような美少女は事務所内にいっぱいいるだろうと言われたら何も言い返せません
あとデレのアイドルで一番出したかった美城専務を出せたのは大満足でした

それでは、いつも通りご意見、ご指摘大歓迎です

専務、何してんすか

乙ですわ

みっしーは中の人的にもこういうネジがおかしい役やりかねない。

>>24
コメントありがとうございます
いやーどうしても専務にこういう役やらせたかったんですよね

>>25
コメントありがとうございます
なんせCV∶田中敦子さんですからね

315×346だけど846要素もあるということか、これぞ越境祭だな！
しかしデレアニに出れなかった面子がアニメの世界観でわちゃわちゃしてるのはなんかこう、いいな

都築さんに黒スーツ着せて眼鏡掛けさせて、バトルアクス構えて微笑んでいただければ、締め切りちゃんと守れるんじゃないですかね。


……アスラン君、何で君がそんなに怯えているのかな？

>>27
コメントありがとうございます
涼ちんがいると876要素も入れられて便利ですね
アニメ当時は荒木先生にも関ちゃんにもボイスがついてなかったんですねぇ…あとはユリユリですが

>>28
コメントありがとうございます
声優ネタかゲーム内ネタでしょうか?自分の知識不足で反応できずに申し訳ありません…

>>27
荒木先生は一応アニメ出てるよ…ほとんどモブキャラみたいな扱いだけど

>>30
失礼をば
今二期目を放映しているアニメに、作中最強クラスの編集者に主人公の片割れが締め切り際に脅かされるタイムリーなくだりがあったものでつい……

専務とちひろさんがそれなら、部長はヨッパライダーでまゆがイトウくん。凛がタンノくんですな

>>32
今二期をやっているアニメというと『虚構推理』でしょうか?
すいません、アニメにも疎くて…

>>33
コメントありがとうございます
一瞬中の人繋がりの配役かと思いました（笑）そんなわけないですね
でも美脚が売りのしぶりんとタンノくんの組み合わせは悪くないかもですね