【姫川家】

友紀「う～んめでたいっ！誇らしいっ！ビールが旨いっ！」

美嘉「……」

友紀「あれぇ？どしたの美嘉ちゃん？あたしのオゴリなんだから飲んで飲んで☆」

美嘉「や、アタシ未成年だし……」

友紀「堅いコト言わないでよ～。高卒の野球選手だって優勝したらビールかけで飲んでるじゃ～ん」

美嘉「それって大昔のコンプラガバガバだったころの話でしょ……てかさ」



美嘉「2023シーズン、まだ始まってないんだけど」

友紀「えっ」

美嘉「えっ？じゃないよ。まだ2月じゃん」

友紀「……」

友紀「やーだなーもー。美嘉ちゃん知らないの？これは“予祝”って言うんだよ！」

美嘉「はあ……」

友紀「つまりね、キャッツの2連覇を先に喜び、祝ってしまうことで現実を引き寄せようというゲン担ぎで……」

美嘉「いや、結構話題になってたから予祝がなんなのかは知ってるよ。だけどそもそもさ……」



美嘉「キャッツ、去年優勝してないよね？」

友紀「えっ」

美嘉「むしろBクラス……」

友紀「……」


友紀「……あ、あはははははは！そうだったねー忘れてたよー。アハアハアハ」

美嘉（すごいな。人間って左右の目を別々の方向に動かせるんだ）

友紀「もー！ちょっとくらいおねーさんの現実逃避に付き合ってくれたっていいじゃーん！お酒か？お酒が足りてないのか？？」

美嘉「だからアタシ未成年だって……」

友紀「じゃミルクにしよっか！“ピニャ・コラーダ”とかどう？ウチのマスコット！」

美嘉「マスコットじゃないしアルコール入りなのは変わんないじゃん」

友紀「カルシウム、フソクシテイマセンカ？」

美嘉「そのネタ、おじいちゃんのキャッツファンにしか通じないと思うよ……」

友紀「……」

美嘉「……」

友紀「……はあああ～っ」

友紀「だってさあ……現実逃避しなきゃやってらんないじゃん……成績云々以前に閉塞感しかなかったシーズンだったし……」

美嘉「アタシはリーグ違うからキャッツの試合あんま見てないけど、若手色々試してたしタイトルホルダーもいるし、そんなに悲観しなくていいんじゃない？」

友紀「若手を試したって言っても本気で世代交代しようとしてる起用に見えなかったっていうかさ……ベテランばっか使い続けると叩かれるからガス抜きで学徒動員したような印象なんだよねえ……」

友紀「まあ、活躍してくれた子もいるし新人王も出たのは嬉しいけどさ……投手はホントにヤバイよ。結局最後までローテも勝ちパターンも立て直せなかったし……そもそも一昨年から『おかしくね？』って言われてる投手起用が改善されてない！なにも！」

美嘉「投手はね……1回崩れると時間かかるよね……ウチも散々苦労したし……」

友紀「だよね～。レオンズといえば愉快な投手陣だもんね」

美嘉「い、一応去年はいい感じだったんだよ？最後に力尽きちゃったけど……」

友紀「2009年とか伝説だよね。サヨナラ負けの新記録作ったんだっけ」

美嘉「マジでやめて……最多勝と沢村賞がいるのに防御率4点台とか散々煽られたんだから……」

友紀「ゴメンゴメン！リーグ違うけど一緒に引退試合観に行った仲なんだしさ、2人で傷口の舐めあいっこしようよ～」

美嘉「ああ、引退試合か……よかったよね……ホント……」

友紀「あたし的には引退後はキャッツに戻ってきて欲しかったけど、あんなスピーチされちゃったらね」

美嘉「うん……ヤバ、思い出したらちょっと涙出てきちゃった……」

友紀「嫌なこと多かったシーズンでもさ、ああいう思い出がひとつあるだけで来年もまた頑張って応援しようって思えるんだよね」

美嘉「わかる……すっごくわかる……」

友紀「うっしゃ！改めて乾杯しよっか！湿っぽい空気も、嫌な思い出も！ぜーんぶ吹っ飛ばそう！」

美嘉「オッケー。アタシはオレンジジュースにするけど」


友紀「それでは……2023年のキャッツ・レオンズの健闘を祈って～」

美嘉「うん！」

友紀「まずはＢクラス脱出……そして優勝……最後は日本シリーズで再会！を願って！」

美嘉「……ん？」

友紀「カンパー」

美嘉「ちょっと待って」

友紀「はっ？なんで止めるの？」

美嘉「や、なんか勘違いしてるみたいだけどさ……ウチ、Ｂクラスじゃないよ？」

友紀「えっ」

美嘉「後半失速しちゃったけど一応3位には入ってるし……」


友紀「……」

美嘉「……」

友紀「……裏切り者」

美嘉「えっ」

友紀「うらぎりものー－！！いかにも『仲間です～』みたいな顔して近づいてきやがって！ハラの底ではあたしのこと笑ってたんでしょー！！」

美嘉「そんなこと思ってないよ！？てかアタシは友紀ちゃんに無理矢理連れてこられたんだけど……」

友紀「美嘉ちゃんのバカ！アホ！でべそ！浅草観光！うあああああああああああああーーー！！！」

ｶﾞﾁｬ！ﾊﾞﾀﾝ!

美嘉「ちょ、どこ行くの！？」

美嘉「……はあ」

美嘉「ウワサには聞いてたけど……悪酔いした友紀ちゃん、想像以上のめんどくささだわ」

美嘉「普段はいい人なのになあ」


ﾁｰﾝ♪

美嘉「あ、友紀ちゃんスマホ忘れてる」

ﾁｰﾝ♪ ﾁｰﾝ♪ ﾁｰﾝ♪

美嘉「なんかすごい数の通知が来てるけど……触らない方がいい、よね？」

　・

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　・

友紀「ひーとすーじつーらぬーくゆーめーのだんどー」ﾌﾗﾌﾗ

ｶﾞｱﾝ！

友紀「痛ぁ゛っ！？」

道流「ちょ、お姉さん大丈夫ッスか！？」

友紀「あだだだだ……なんでこんなとこに車停めてんの……」

道流「スイマセン！この辺暗いからわかりにくいッスよね。もうすぐ開店なんで今から照明つけようとしてたとこで」

友紀「開店？」

友紀（……あ。この車、よく見たらキッチンカーだ）

道流「あの、ケガとかしてないッスか？」

友紀「うん。ごめんねあたしこそ不注意で。ちょっと飲み過ぎちゃってさ……」

道流「それだったら少し休んでいきません？テーブルと椅子もあるし、ストーブも用意してるんで」

友紀「いいの？……じゃあ、ちょっとだけ」

ﾄﾞｻｯ

友紀「えっと……ラーメン屋さん、だよね？いつもここでやってるの？」

道流「いえ、今日が初めてなんスよ。自分いつもは店でやってるんスけど、前から移動販売にも興味あって。で、知り合いのツテでこの車借りられたんス」

友紀「あちこち回ってお店の宣伝しようってことね」

道流「それもあるけど、やっぱラーメンを愛する者として、屋台に近い形での営業を経験してみたかったんス」

道流「日本でラーメンが人気になったのって屋台のおかげなんスよ。戦後の焼け野原を駆け回ったラーメン屋さんは復興の原動力で、今ある老舗や大手チェーンも元をたどれば屋台から始まってるところが多いんス」

友紀「へえ……あたしは屋台のラーメン屋なんてマンガでしか見たことないなあ」

道流「まあ、法律が厳しくなったし、コンビニやファミレスみたいなライバルが増えちゃったッスからね……福岡みたいに観光産業として定着してるところだとまだ沢山あるんスけど……」

友紀「でもいいじゃん。そういう初心に返るっていうか、ルーツに触れる的なの。ロマンあるよね」

道流「ですよね！！」

道流「よかったら光麺でも味見していきませんか？サービスにしとくんで」

友紀「こーめん？」

道流「麺とスープだけのラーメンのことッス。かけそばみたいなもんスね」

ｶﾁｬﾁｬ
ｼﾞｬｯｼﾞｬｯ
ﾄﾝｯ

道流「どうぞ！」

友紀「あ、ありがと……。いただきます」

ｽﾞｽﾞｰｯ

友紀「あ……」

道流「どうッスか？」

友紀「うん……美味しい……けど、それだけじゃなくて……」

ｽﾞｽﾞｯ

友紀「なんか……懐かしい感じ……」

友紀「あたし宮崎の生まれだから豚骨ラーメンはよく食べてたんだけどさ、こっちの豚骨ラーメンはあんまり好きじゃないんだよね。濃すぎるって言うか」

道流「東京の豚骨ラーメンは博多や横浜の影響が強くてこってり系が主流ッスからね～。ウチはあっさり系でダシの味をじっくり味わってもらうのが目的のスープッス」

友紀「そっか……」

ｽﾞｽﾞｯ

友紀「ああ……“ラーメンってこんな味だったな”って……そういう味だ……」

友紀（昔、お兄ちゃんとキャッツのキャンプ見に行った帰りに奢ってもらったラーメンもこんな味だったっけ）

友紀（楽しかったなあ。お兄ちゃんが選手の名前とか色々解説してくれたけど、目の前のプレーに熱中しすぎて全然頭に入らなかった……）

友紀（信じられないくらい遠くまで打球を飛ばす人がいて、びっくりするくらい早い球を投げる人がいて）

友紀（誰もが真剣で、キラキラしてて……それを見るだけで興奮したし、“がんばれ！”って声が自然と出ちゃうんだよね）

友紀（初心に返る……か……）

友紀（あたし、なにやってんだろ。いつの間にか勝ち負けにばっかり拘るようになって、ストレス溜めて、友達に八つ当たりして……最低じゃん……）

友紀（あたしが本当に好きなのはチャンピオンフラッグなんかじゃない。キャッツのみんなが頑張る姿を見て！それを応援することなんだ！）

ｽﾞｽﾞｽﾞ～ｯ……ﾀﾝ!

友紀「ごちそうさま！お金ここに置いとくね！」

道流「え？いいッスよサービスで」

友紀「いーのっ！すっごく美味しかったし、大事なこと思い出せたから！じゃっ！」

友紀「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！」

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ……

道流「な、なんか激しい人だったな……」

道流「でもまあ、ウチのラーメンで元気になってくれたのなら料理人冥利に尽きるってもんだ」

道流「うしっ！今日も頑張るか！！」

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【姫川家】

ﾊﾞｰﾝ！

友紀「美嘉ちゃんっ！」

美嘉「あ……お帰り……」

友紀「ごめんっ！！！あたしヤケ酒しすぎてちょっとおかしくなってて、それで……」

美嘉「あはは、すっかりアルコール抜けてんじゃん。いつもの友紀ちゃんだ」

友紀「ホントにごめん！ラーメン食べて頭冷やしたら目が覚めたっていうか、初心を取り戻したっていうか、その……」

美嘉「え？ラーメン？」

友紀「えっとね、たまたま見つけたお店なんだけどあたしの地元の味に近くて。それで小さい頃の、純粋に野球が好きだった気持ちを思い出せたんだ」

美嘉「ふーん……」

美嘉「ラーメン食べてたんだ……アタシに留守番させといて……」

友紀「う……その……ごめんなさい……」

美嘉「……じゃ、今から連れてってよ」

友紀「えっ？」

美嘉「もちろん友紀ちゃんのオゴリでね！それでぜんぶチャラってことで♪」

友紀「……うんっ！ありがとう！」

友紀「そんじゃ行こっか！すごくガタイのいいお兄さんがやってる店でさ……」


ﾁｰﾝ♪ ﾁｰﾝ♪ ﾁｰﾝ♪


友紀「あれ？あたしのスマホの音？」

美嘉「そうだ、友紀ちゃんスマホ忘れて飛び出してったっしょ？なんかいっぱい通知来てたよ」

友紀「ええ？誰からだろ？」

ﾎﾟﾁｯ

きらり『うきゃ～☆友紀ちゃんみてゆ～？今日は奏ちゃんとぉ、ペンギンズ優勝祝いの129次会だにぃ♪』

奏『よかったら混ざらない？去年の面白かった試合の話とかしたいわね』

きらり『きらりはあ～、6月の16点取ったキャッツ戦が一番楽しかったあ☆』

奏『あの試合は私も印象に残ってるわ。5ホーマーなんてそうそう見れないし』

きらり『キャッツ投手陣はポンコツかわゆいの～☆』

きらり『う～ん？なかなか既読がつかないにぃ？』

奏『必死で無視してるのかしら。なら無視できないようにしてあげましょ』

きらり『おっけ～☆くらえ！きらり秘蔵フォルダの写真ばくげき～！』

ｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟ！

奏『見事にキャッツ戦で勝ったときの画像ばかりね。なら私も』

ｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟ！

きらり『あははは！キャッツのエラーがいっぱいだにぃ☆』

奏『去年のキャッツは珍プレーが多かったから沢山あるわよ。とくに外野手はね』

ｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟｼｭﾎﾟ！

きらり『あはははははははははは！！』

美嘉「うわあ……」

友紀「…………………」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

美嘉「ゆ、友紀ちゃん？大丈夫？」



友紀「ﾌﾟｯﾂｰｰﾝ」

友紀「行こう美嘉ちゃん。2人でこのヤキトリ共を血祭りにしてやるんだ」

ｶﾞｼｯ

美嘉「ちょっ！？ラーメンは！？ていうか初心思い出したんじゃなかったの！？」

友紀「ああ思い出したよ……殺意をね……あたしとしたことが思い出に浸って……悪くない気分だった……負け犬の心地よさっていうのかな……スキになってきてしまってた……」

友紀「だけど本当は昔のあたしに戻りたかったんだ！！！外野席で声張り上げてた残忍で冷酷なあたしに戻ってなにも気にせず徹底的に戦いたかったんだ！！！」

友紀「ましてや向こうから煽ってきやがったんだから受けて立つしかないよね……！おかげで今はいい気分だぜ……」

美嘉「ええ……」

友紀「さあ行こう！ペンギンも！しましまも！コアラも！赤いのも！星も！全部キャッツがねじ伏せて突き進む！2023年は逆襲のシーズンにするんだ！」

ｽﾞﾝｽﾞﾝ

美嘉「ひ、ひっぱらないでっ！？そもそもアタシキャッツファンじゃないっ……」

友紀「キャッツうーーーーーっ！ファイトおーーーーーーっ！！！」

美嘉（ダメだこりゃ）

お　し　ま　い

一応断っておくとこの物語はフィクションで、実在の人物・団体とは何ら関係がありません

奏（の中の人）もヤクだったのかよ……おーヤバい

さえはん（対美嘉姉）･ミリのﾅｵ！（横）＆みちこが参戦していたらもっと通知欄燃えてそう（他の野球好き中の人はわかんない）



今年こそ5位以上になれますように（名古屋の球団）

乙でーす
美嘉ねえって野球好きなの？

>>42
中の人が猫屋敷球団のファン

>>42
元プロ野球選手と結婚するくらいには好きだぞ

>>44
入籍時点ではまだ現役だったよ！

乙
ファッキューきらり
ファッキュー奏

>>13
浅草観光やらかしたのはユッキのとこの選手じゃ…

>>5
姫川友紀の正体見たり！

>>41
中の人にあわせてしまむー(虎党)、蘭子(鷹党)を入れて開幕直前特番ネタができますね
そこへオリオンズユニで登場するウサミンまで見えた

>>49
17歳が30年前に消えた球団の名前なんて知ってるわけないだろ！いい加減にしろ！

菜々さんは大阪タイガースや名古屋金鯱軍があった頃の人じゃないのか？

>>51
中日スタヂアムじゃなくて鳴海球場（現：名鉄自動車学校）を知ってそう

>>52
珍プレー好プレーのアンタッチャブルのザキヤマのナレーションに、違和感を感じてそう

>>53の続き
司会「珍プレーといえば？」
しまむー「マクガフの無人の一塁への牽制球」
蘭子「防球ネットに呑まれる牧原」
ウサミン「中日の宇野のヘディング」

(ネタがわからんのでぐぐった)

>>51-54
おまいらいくつだ！

せいぜい、任天堂シアトルマリナーズぐらいにしてやれよ