星梨花「ねえ、杏奈ちゃん。もうすぐレッスンの時間だよ。起きて」

杏奈「んと……おはよう、です」

星梨花「また夜ふかしてたんでしょ」

杏奈「……そう、かも」

星梨花「ちゃんと夜は寝ないとダメだよ！」

杏奈「うん」

杏奈（杏奈の方が歳上なんだけどなあ）

星梨花「アイドルはね、しっかり睡眠とって、体力と健康なお肌と」ｸﾄﾞｸﾄﾞ

杏奈（星梨花は皆んなの前では妹キャラなのに、杏奈の前ではお姉さんキャラ。ちょっとモヤモヤ）

杏奈（そうだ！　星梨花もゲーム沼に引き込んじゃえ）

杏奈「レッスン行く、よ」

星梨花「ほんと？」

杏奈「でも星梨花も……レッスン終わったらゲームに付き合って」

星梨花「ゲーム？　わたしあんまりやったことないよ」

杏奈「星梨花とゲーム、したい」

星梨花「うん、分かったよ」

レッスン後

杏奈「じゃあ杏奈のゲーム貸すから……やって、みよ」

星梨花「いいの？」

杏奈「……色々教えるより、やってみた方が、いい」

星梨花「えへへ、分かりました。先生！」

杏奈（先生、いい響き）

杏奈「そのボタンでジャンプ、こうすれば走れる、よ」

星梨花「す、すごいです！　あっあそこにいるのは何かな？」

杏奈「シンボルエンカウントの、敵。ぶつかってみて」

星梨花「え、えーいっ！」

ゲーム「独特の言葉を話すアーティストと妄想読書家が現れた！」

星梨花「わわっどうしよ杏奈ちゃん！」

杏奈「落ち着いて……ザコ敵、だから」

星梨花「この技は？」

杏奈「魔法。撃ってみても、いいよ？」

星梨花「分かりました！　えいっ」

ゲーム「夢色トレイン！　出発進行ー！」

星梨花「た、倒せました！」

杏奈「すごい。星梨花は、筋がいい」

星梨花「ほんと？」

杏奈「でも長く通してやるなら……魔法を使う回数を減らしてMP管理、大事」

星梨花「うう、難しいんだね」

杏奈「すぐに慣れる、よ」

こうして2人はゲームに勤しんだ。

杏奈「……楽しかった？」

星梨花「うんっ！」

杏奈「よかったら、サブROMあるから、持ってくる、よ？」

星梨花「サブROM？」

杏奈「一緒に協力プレイが、できる」

星梨花「やってみたいです！」

杏奈「じゃあ明日……持ってくる、ね」

星梨花「えへへ、楽しみです」

次の日

杏奈「そろそろゲーム、しよ」

星梨花「その前に、もしよかったらお茶をいれてくるね。クッキーも持ってたよ」

杏奈「クッキー……食べたい、です」

星梨花「教えてもらってばっかりじゃ悪いからそのお礼だよ」　

数分後

杏奈「クッキー、おいしい。紅茶も合う、ね」

星梨花「えへへ、ありがとうございます」

杏奈「じゃあそろそろ、やろっか」

星梨花「うん！」

ゲーム中

星梨花「わわっ敵がたくさん」

杏奈「杏奈に、任せて」

星梨花「杏奈ちゃんすごい！」

杏奈「星梨花は杏奈が……守る」

星梨花「かっこいいです！」

数十分後

星梨花「ふう、少し疲れました」

杏奈「じゃあ今日は、一旦、終わる？」

星梨花「そうしようかな」

杏奈「よかったら……サブロム、貸せるよ」

星梨花「とってもうれしいけど、ちょっと悪いよ」

杏奈「だったら、スマホでやってみる？」

星梨花「スマホでもできるの？」

杏奈「対応、してるから。アプリ、インストールしてあげる、ね」

星梨花「ありがとう杏奈ちゃん！」

杏奈「さっそく今晩、やってみる？」

星梨花「はいっ」

杏奈「じゃあ夜にこの広場に来て、ね」

夜　ネット上

星梨花「杏奈ちゃんまだかなー」

vivid rabbit「星梨花ちゃん？」

星梨花「はいっ！もしかして杏奈ちゃん？」

杏奈「そうだよ！」

星梨花「アバターかっこいいです！」

杏奈「ありがと！　星梨花ちゃんも本名プレイじゃなくて、アカウント名つけるといいと思うよ！」

星梨花「ネットではオンモードなんですね」

杏奈「三点リーダ打つのめんどくさいからね」

星梨花「そういうものなんだね。うーんとアカウント名なんにしよう」

杏奈「杏奈はビビットラビットだよ」

星梨花「じゃあわたしもラビットにします。星梨花だから……スターラビットです！」

杏奈「おそろいだね！」

星梨花「えへへ、じゃあまずどこに行きましょう」

杏奈「まずこの装備つけてみて」

星梨花「こう？」

杏奈「ほらステータスが上がってるでしょ」

星梨花「すっごく強くなってます」

杏奈「でしょ。プレゼントするね！」

星梨花「いいの？」

杏奈「杏奈は上位互換の装備持ってるから大丈夫！」

星梨花「上位互換？」

杏奈「とにかく杏奈には余ってるから」

星梨花「ありがとう、杏奈ちゃん」

杏奈「じゃあ冒険へしゅっぱーつ」

星梨花「なんだかテーマパークのお姉さんみたいです！」

翌日

星梨花（昨日はゲームしてたから、眠いなあ）

杏奈「ふわあ、おはようです」

星梨花「あっ杏奈ちゃんも眠そう」

杏奈「星梨花が落ちたあとも、これからのステージの計画、立ててたから」

星梨花「そこまでしなくていいのに」

杏奈「星梨花とゲーム、楽しいから」

星梨花「ほんと？」

杏奈「でも遅くまでゲームしてたこと、プロデューサーさんに秘密、だよ」

星梨花「えへへ、怒られちゃうもんね」

杏奈「そう、だから2人だけの秘密。秘密の共有」

杏奈（なんか百合子さんがうつったかも）

星梨花「なんだかドキドキするね！」

こうして2人の夜のゲームタイムは日々続いた。

ある日のこと。

星梨花「！　杏奈ちゃん、あぶない！　」

杏奈「わわ、ありがと。まさか、星梨花に助けられるとは」

星梨花「普段から助けてもらってるからね。たまには役に立ててよかったあ」

杏奈「……そのお礼とも言えるかもだけど、渡したいものがあるの。あの塔のてっぺんにいこう。着いてきて」

星梨花「うん」

星梨花「わあ、星がきれい」

杏奈「ここは知る人ぞ知る夜景が見えるんだよ」

星梨花「すごーい」

杏奈「ほら、星梨花ちゃん、これあげる」

星梨花「これは？」

杏奈「指輪だよ。杏奈たち、結婚しよ」

星梨花「結婚？」

杏奈「このゲーム、結婚システムあるから。とにかく、これからも杏奈といっしょに遊んでっってこと！」

星梨花「えへへ、ありがとう。大事にするね」

にもつがいっぱい！

杏奈「ちゃんと普段からバッグ整理してね」

星梨花「なんだか捨てられてなくて」

杏奈「締まらないなあ、なんて」

こうして2人は笑い合った。

ある日

杏奈（星梨花ちゃんをゲーム沼に落とすのが目的だったけど、普通に杏奈、星梨花ちゃんとゲームするの楽しんでるなあ）

杏奈（今日も星梨花ちゃんとゲームしよっと……って来ないなあ。チャットも既読付かないし、寝ちゃったのかな）

杏奈「……」

杏奈「寂しい、です」ｷﾞｭｯ

次の日　事務所

星梨花「杏奈ちゃん、昨日はオンできなくて、ごめんなさい」

杏奈「大丈夫だよ。……寝落ちしちゃった？」

星梨花「それが、夜遅くまでゲームしてるのをパパに見つかって、スマホを取り上げられたの」

杏奈「……そっか。ごめんなさい」

星梨花「なんで杏奈ちゃんが謝るの？」

杏奈「ううん」

星梨花「とにかくこれからゲーム一緒にできなくなるから、ごめんね」

杏奈「……うん」

星梨花は気まずそうに去っていった

杏奈「……」ﾎﾞｰ

百合子「どうしたの、杏奈ちゃん？　また寝不足？」

杏奈「実はカクカクシカジカ、です」

百合子「あー、星梨花ちゃんのお家厳しいもんね」

杏奈「せっかく星梨花ちゃんともっと仲良くなれたのに……でも、そもそも杏奈が間違ってたのかな」

百合子「どういうこと？」

杏奈「純粋な子に餌付け、みたいな、です。小さな子にお菓子あげるから、と誘拐するような」

百合子「星梨花ちゃん、そこまで子どもじゃないと思うけど」

杏奈「ほんとの意味で仲良くなれた、わけじゃない、です」

百合子（杏奈ちゃんの家は転勤族で友だちができてもすぐ離ればなれになるから、ゲーム好きになったって言ってたっけ。仕事のせいもあって放任気味に育った杏奈ちゃんと、箱入り娘のように育った星梨花ちゃん。お家の事情で合わないことも仕方ないかもしれない）

杏奈「星梨花ちゃんがこのまま、ゲームにハマったら寝不足でアイドルにも勉強にも支障がでるかもしれないし。……星梨花ちゃんとゲームするのやめよう、かな」

その話を少し離れて隠れていた星梨花は聞いていた。

星梨花（星梨花とゲームやめよう、なんて寂しいです。それにしても杏奈ちゃんはまた百合子さんとお話ししてます。やっぱり杏奈ちゃんは百合子さんと仲良しなんですね）

星梨花（当たり前です。百合子さんはわたしよりゲームする時間があるし、わたしよりゲームもとってもうまいです。今思えば、杏奈ちゃんは、わたしのサポートばっかりでつまらなかったかもしれません）

星梨花（百合子さんはたまに難しいことを言うけど、わたしから見たらステキなお姉さんです。成長中ラバーも楽しそうでしたし、もし、遊ぶとき百合子さんかわたしか選ばなきゃならなくなったら、百合子さんを選ぶんだろうな）

星梨花（今思えば、お姉ちゃんのように思ってる未来さんも静香さんととっても仲良しだし、翼さんだって美希さんときっとキています。エミリーちゃんだって、紬さんや貴音さんのことが好きです。わたしはずっと誰かのトクベツな存在になれません）

星梨花「……」

百合子「泣き声……？　って星梨花ちゃん、そんなところに隠れていたの？」

杏奈「……あっ」

そのとき星梨花はおもむろに駆け出した。

百合子「杏奈ちゃん、追いかけて！」

杏奈「……」

百合子「早く！」

杏奈「百合子さんも着いてきて、ください」

百合子「え、私も？」

杏奈「杏奈は、あんまりおしゃべり上手じゃないから」

百合子「分かったよ」

百合子（追いかけなさいと悟った顔で言う名脇役にちょっと憧れてたんだけどなあ）

屋上

星梨花「……」

杏奈「……星梨花ちゃん、いました」

百合子（やっぱりこういうときは屋上だよね。あと何故か大きいシーツがいっぱい干してある）

星梨花「あっ杏奈ちゃん、ごめんね、急に泣いちゃって」

杏奈「大丈夫だよ。それにお家でゲームできなくても、事務所に持ってくるから」

星梨花「ありがとう。でもわたしはゲーム下手だから、杏奈ちゃんの迷惑だと思う」

杏奈「そんなことないよ！星梨花ちゃんとゲーム楽しかった。昨日の夜も寂しくて寝られなかったぐらい」

百合子（杏奈ちゃん、オンモードだ。それぐらい真剣なんだ）

星梨花「……泣いたのはね、杏奈ちゃんとゲームできないのもあるんだけど、やっぱりわたしは誰かのトクベツになれないんだって」

杏奈「？」

星梨花「だって今も百合子さんが隣にいるでしょ」

百合子（やっぱ私こない方がよかったやん）

杏奈「百合子さん、トクベツってどういうこと？」ｺｿｺｿ

百合子「トクベツ……私もよく分かんないけど少なくとも恋人同士はトクベツな関係だと思う」ｺｿｺｿ

杏奈「星梨花ちゃんは杏奈と恋人同士になりたかったってこと？」

星梨花「えっ」

星梨花（びっくりしたけど、杏奈ちゃんとトクベツな関係になりたかったのは本当です。ということは、杏奈ちゃんトクベツな関係になりたい。トクベツ＝恋人。つまり杏奈ちゃんと恋人同士になりたい？）

星梨花「そういえば、杏奈ちゃんだって、ゲームの中でプロポーズしてくれました」

百合子「えっ」

杏奈（あれは結婚すると子どもができて、その子どもはスキルを受け継ぐから、強いキャラを作れるだけなんだけど、そんなこと言い出せない）

杏奈（でも星梨花ちゃんと過ごして楽しかったのも事実。星梨花ちゃんをゲーム沼に引き込んだ責任もある）

杏奈（これまで星梨花ちゃんと過ごして、名前をつけるのが難しい気持ちもあった。杏奈の本心は星梨花ちゃんともっと一緒に過ごしたい。それを叶えるためには……）

杏奈「杏奈たちトクベツな関係になってみようよ、恋を知るために」

星梨花「……うん」

2人の間にいじらしい空気が流れる。

杏奈（あれ、百合子さんいつのまにかどこか行ってる）

今回の後日談。

2人は恋人同士になったが、それ以上の進展はなかった。たまに星梨花が恋人ぽいことをやってみようと距離を詰めるが、杏奈は半分困りながら、半分照れながら、それをかわしていた。

杏奈は今回の結論が正解なのかと疑ったりするが、その答えは保留とした。

案外数年後、大人になったときに振り返ると答えが出るかもしれない。

杏奈「星梨花ちゃん、新作ゲーム持ってきた、よ。VRのゲーム」

星梨花「VR？」

杏奈「その世界に入ったような……とにかくやってみたら、分かる、よ」

星梨花「わわっほんとにRPGの世界に潜り込んだみたい」

星梨花「わっ敵のスライムさんです。えーい」ﾋﾟｮﾝﾋﾟｮﾝ

杏奈（スカートが危うい、です。ちゃんと見せパン穿いてるかな）

杏奈（でもVRゴーグルしてるし、多少のことは気が付かないはず）

杏奈（これは下心じゃなくて、あくまでちゃんとガードできてるか検査にすぎない。それに仮に生パンだったとして、星梨花ちゃんみたいな子ってどんなの付けてるか気になる。ブランドものかもしれないし、杏奈とそう変わらないやつかもしれない）

杏奈（直接覗くのは気が引けるから、スマホ差し出しーっと）ﾄﾞｷﾄﾞｷ

杏奈「あと恋人同士だし」ﾊﾟｼﾔ

百合子「おはようござーってえ？」

杏奈「……」

百合子「……」

星梨花「えいっえいっ」刀ぶんぶん

杏奈「……これはご飯ss足りえます、か？」

百合子「足りえません」

ただいまご飯SS祭開催中！

キミも期間中にSSを投稿しよう！

おしまし

>>1
おっつおっつ
杏奈ちゃんが撮ったけしからん画像を回収したい