～～315プロ～～


涼「47……48……49……50……51……」

ｶﾞﾁｬ

大吾「お、涼！ここにおったんか！」

涼「あ、大吾くん！それに一希さんも！」

一希「リフティングの練習中だったか、涼」

涼「ボールコントロールなら、ﾊｱ、そこそこ、自信あるんです！ﾊｱ、今度、冬馬君たちと試合するから、ちょっと、ﾊｱ、気合入れて、練習中です！」

涼「ふう……リフティングはこのくらいにして……なにかあったんですか？」

一希「ああ。俺たちの次の仕事が決まった」

大吾「ついさっき、ボスからそのことについて聞いてのお。早う涼にも知らせんとと思うて、2人で探しとったんじゃ。なんでも、大手の旅行会社からオファーがあったらしい！ワシらに会社のイメージキャラクターになって欲しいそうじゃ！」

涼「旅行会社の……イメージキャラクター！？」

一希「ああ。広告のモデルに、CM出演やCMソングの歌唱の担当など、様々な仕事をすることになる」

涼「大きな仕事になりそうですね！」

一希「そこでだ。取材も兼ねて俺たち3人で旅行に行ってみないか？」

涼「いいですね！最近は忙しくてなかなか3人で遊べませんでしたし」

大吾「じゃが、今のスケジュールじゃと泊りは厳しいのう……日帰りでどこか良い場所があるといいんじゃが」

一希「既に目星はつけてある。都内から日帰りで行ける観光地……ズバリ、静岡県だ」

大吾「おお、グッドアイデアじゃ！やっぱり富士山か？サファリパークか？熱海の温泉にも行ってみたいのお」

涼「315プロには静岡県民がいないから新鮮ですしね」

一希「満場一致だな。ではさっそく出発しよう」


ｺﾞﾄｯ


涼「え？なんですかそのゴツイ機械」

一希「スイッチオンだ」

ｶﾁｯ


ウウウウウウウウウゥウウウウゥウウゥゥゥーーーーー！！！


大吾「がっ！？」

涼「み、耳がっ！？なっ……なに……この……音……？」

ﾊﾞﾀﾊﾞﾀ

涼「…………」

　・

　・

　・

　・

　・

一希「………う……………涼！」

涼「んっ……？」


一希「起きろ涼。静岡に着いたぞ」

涼「うう、頭がガンガンする……。なんだったんですかその機械……」

一希「細かいことは気にするな」


大吾「おお！でっかい湖じゃのー！これはひょっとするとアレか？かの有名な……」

一希「そう、浜名湖だ。日本一長い汽水湖で、富士山と並ぶ静岡の象徴だな」

【静岡あるあるその①】
大きな湖がある。

大吾「きすいこ……ってのはなんじゃ？」

一希「簡単に言うと、海水と淡水が混ざった水質の湖のことだ。陸と海の両方から栄養が集まるから多種多様な生き物が生息できる。一説によると浜名湖は日本一の生物数を誇る湖だそうだ」

大吾「ほおぉ～。相変わらず先生は博識じゃの～」

涼「あの、それはいいんですけど……」

一希「なんだ？」

涼「なんか、天気悪くないですか？霧がすごくてほとんど景色が見えないんですが」

大吾「確かに。せっかくの旅行なのに浜名湖の絶景が拝めんのは残念じゃのお」

一希「まあ、静岡に霧はつきものだからな。そういうものだと割り切るしかない」

涼（そんな話、聞いたことないけどなあ……）

【静岡あるあるその②】
霧が深い。

ﾊﾞﾁｬﾊﾞﾁｬﾊﾞﾁｬ


涼「ん？湖のほうでなにか……」


ﾊﾞﾁｬﾊﾞﾁｬ……ｻﾞﾊﾞｱｱｱｱﾝ!

『ＧＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡＡ！！！！！！』


涼「！！！！？？？？？？」

大吾「な、なんじゃあ！？あのバカでかいヘビみたいなのは！？」

一希「浜名湖名産のウナギだな。養殖場から逃げ出した個体が巨大化したんだろう」

涼「いやいやいや！大型フェリーみたいなサイズだし巨大化ってレベルじゃないですよ！口裂けてるし！なんか声出してるし！絶対ウナギじゃないですって！」

一希「浜名湖では度々、突然変異でまだら模様になったウナギが発見されている。人間の想像を超える変異を遂げた個体が誕生する可能性もゼロではないだろう」

大吾「まさに生命の神秘、じゃな！珍しいもんが見れて得したわい！」

涼「そ、そうなのかなあ？」

【静岡あるあるその③】
ウナギの名産地。突然変異もする。

大吾「うーん、ウナギの話をしてたら腹が減ってきたのう」

一希「では、どこか食事ができる場所を探すとするか。道沿いに歩いていけば市街地に出るはずだ」

　・

　・

　・

　・

　・

涼「かなり歩きましたけど、全然人と出くわさないですね……」

大吾「どこの家も人気が無いし、まるでゴーストタウンじゃ」

一希「実は静岡は人口減少に悩まされていてな。東は神奈川・東京、西は愛知県といった大都市に挟まれている地理的影響も関係して、若年層の流出が続いているらしい」

大吾「ああ、広島でもそんな話がニュースになっとったぞ。まったく世知辛い時代じゃ……」

【静岡あるあるその④】
街に人気がない。

涼（この街……なんで看板や道路標識が全部英語で書かれてるんだろう？街並みも全然日本ぽくないし……ここ、本当に静岡なのかな？）


？？「Excuse me？」


涼「ひっ！？」

？？「Sorry. I didn't mean to surprise you. I'm looking for people.」

涼「ががが、外国の人？えーっと、あ、あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ……」

大吾「なんか困っとる様子じゃのう。先生、なんとかならんか？」

一希「一時期、外国文学を齧っていたから簡単な言葉ならわかるが……。Sorry. I'm not good at English. Please speak more slowly.」

？？「Understood. I am looking for a wife Do you remember the woman in this photo?」


一希「この写真の女性を知りませんか？だそうだ。奥さんを探してるらしい」

大吾「そうじゃったか……。でもワシら、さっきここに来たばかりじゃし……」

涼「残念だけど、力になれそうにないね……」

一希「Sorry. We do not know.」

？？「Thank you. It's impossible for a letter to arrive from a dead human. But I want to see her...」

ﾄﾎﾞﾄﾎﾞ


涼「最後、何て言ってたんですか？」

一希「すまん、聞き取れなかった。静岡は富士山がある影響で外国人観光客が多いし、奥さんとどこかではぐれてしまったんだろうな」

大吾「見つかるといいのお。この霧じゃし、ワシらもはぐれないように気をつけないといかんな」

【静岡あるあるその⑤】
外国人観光客が多い。

大吾「……お？」

涼「どうしたの大吾君」

大吾「なんか、向こうのほうで小さい影みたいなのが動いたような……ほれ、あそこ」

涼「……ホントだ。誰かいるのかな…………って」



ﾋﾟﾁｬｯ……ﾍﾟﾁｬｯ……ｸﾁｬｯ……
ｸﾞｯﾁｬｸﾞｯﾁｬｸﾞｯﾁｬ

涼「……一希さん？あれ、なんですか？」

一希「犬だな。どう見ても」

涼「へ、へえ～。静岡の犬って皮膚がむき出しになっていて、イボイボの長―い舌で血を啜るんですね～」

一希「静岡にはカピバラ風呂で有名な伊豆シャボテン公園や、ライオンのCMでお馴染みの富士サファリパークがあるからな。他所では見られない珍しい動物に出会えるぞ」

涼「ここ動物園じゃないですよねぇ！？犬が市街地のド真ん中で得体の知れない肉貪ってる理由になってないですよねぇ！？っていうかあの肉、なに！？なんの肉なのぉ！？」


犬？『Grrrrrrrrrrrrrrr……』

涼「ひっ！？」

大吾「おい、涼が大声出すからこっちに気づいたみたいじゃぞ！」

一希「これは流石に逃げたほうがいいな。刺激しないよう、ゆっくり後ずさって……」

涼「ぎゃおおおおん!助けてえええええええええ！！！！」

ﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞﾀﾞ！


犬？『bow！wow wow wow！！』

ﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ！


一希「……やれやれ」

【静岡あるあるその⑥】
珍しい動物がいる。

　・

　・

　・

　・

　・

涼「ぜーっ、ぜーっ、ぜーっ……」

大吾「と、とりあえずたまたま近くにあった病院の中に飛び込んだのはええが……ここも人っ子一人おらんのお……」

涼「ねえ、警察に連絡しようよ。あんなのがうろついてるんじゃ外に出られないし……」

一希「うむ。俺もそう思ってさっき110番したんだが……」

大吾「どうかしたんか？」

一希「……電波が通じない」


涼＆大吾「はあ！？」

大吾「ホンマじゃ！ワシのスマホも繋がらん！」

涼「僕のもだ！まさか静岡は電波が弱いとか！？」

一希「いや、そんな話は聞いたことがないな」

涼「そこは肯定してくださいよぉ！」


一希「……仕方ない。少々気が引けるが、電話のある部屋を探して借りることにしよう。病院なら固定電話があるはずだからな」

大吾「賛成。緊急事態じゃし、あとで謝ればわかってもらえるじゃろ」

涼（そもそも、こんな大きな病院に人気が無いこと自体がおかしい気がするけど……）

　・

　・

　・

　・

　・

ｺﾞｿｺﾞｿ

大吾「涼―？あったかー？」

涼「ダメ。大吾くんは？」

大吾「こっちも同じじゃー」

一希「となると……奥の部屋か」

涼「でも、奥に続いてる通路はドアに鍵がかかってますよ」

大吾「電話と一緒に鍵も探したんじゃが、見当たらんかったのお」

一希「ふむ……」

ｽﾀｽﾀ

涼「ん？一希さん、トイレですか？」

ｽﾀｽﾀ

一希「あったぞ。鍵だ」

ｼﾞｬﾗｯ


涼「……は？」

大吾「ナイスじゃ先生！やっぱ頼りになるのお！」

一希「それほどでもない」

涼「あの、なんでトイレに鍵があるってわかったんですか？というか、トイレのどこにあったんですかそれ」

一希「細かいことは気にするな」

涼「気になりますよ！あと何でその鍵水で濡れてるんですk」


一希「　細　か　い　こ　と　は　気　に　す　る　な　」


涼「ｱｯﾊｲ」

【静岡あるあるその⑦】
トイレに便利なアイテムが隠されている。

　・

　・

　・

　・

　・

ｶﾂｰﾝ…ｶﾂｰﾝ…

涼「ううっ、ううううううう……」

大吾「涼、あんまりくっつかれると歩きづらいんじゃが」

涼「ごめん大吾君……でもこの病院、奥にいくほど暗くなってくし……あたり一面錆だらけだし……あと……」

一希「ところどころ、ドス黒い染みのようなものも見られるな。おそらく血痕だろう」

涼「やっぱりいいいいい！！！ってか、なにさらっとえげつないこと言ってるんですか！ここ絶対ただの病院じゃないですって！」

一希「誰かが輸血用の製材をこぼしたんじゃないか？病院ならあり得るだろう」

大吾「どこの世界にもおっちょこちょいな人はおるからのお」

涼「おっちょこちょいで済むレベルなの！？医療ミスだよ！記者会見だよ！医師法第７条違反で免許取消だよ！」

一希「意外と詳しいんだな……」

【静岡あるあるその⑧】
病院が血と錆にまみれている。

ｶﾞﾁｬｶﾞﾁｬ

大吾「うーん、この辺りも鍵のかかってる部屋ばっかりじゃ」

一希「あいにくトイレも見当たらないし……さて、どうするか」


……ﾘ……ﾘ……


涼「待って……このドアの向こう……何か聞こえませんか？」

一希「確かに。かすかにだが、ちょうど電話の着信音のような音が漏れてきているな」

大吾「よっしゃ！ワシがドアをこじ開ける！この鉄パイプを使って……」

涼「え？いつの間にそんな物見つけて来たの？」

大吾「なんかそこらじゅうに落ちとったぞ？気づかんかったんか？」

一希「静岡は機械産業が盛んだからな。100を超える鉄鋼業者が県内に存在しているし、至るところに鉄パイプがあってもおかしくはないだろう」

【静岡あるあるその⑨】
どこでも鉄パイプが手に入る。

大吾「ふたりとも離れとってくれよ……おりゃあああああああ！！」


ｺﾞｯ！ｺﾞｯ！ｺﾞｯ！
ﾊﾞｷｯ！


涼「開いた！」

ﾋﾟﾘﾘﾘﾘ……ﾋﾟﾘﾘﾘﾘ……！

涼「あった！やっぱり電話の着信音だったんだ！」

ｶﾞﾁｬ！

涼「もしもしすいません！僕たち今大変なことになってて……！」


？？『……ふうん。そうなんだ』


涼「えっ？」

涼（この声って……）


真『具体的にどう大変なのかな？女装した男の子に騙されておでこにキスされちゃったとか？うっかり夜遅くまで2人きりでレッスンするハメになったとか？』

涼「ま、真さん！？なんで！？」

真『ボク、涼のこと信じてたのになあ……記者会見までして庇ったのに……全部ウソだったんだもんなあ……ショックだよ……』

涼「あの、その……すいません。ちゃんと謝らなきゃってずっと思ってたんですけど……いろいろあって……」

真『そうかあ。ちなみに、今後ろを振り返ればもっといろいろなことが起きると思うよ」

涼「え？後ろ？」

ｸﾙｯ



犬？『Grrrrrrr……』

涼「！？」

犬？『GUAAAAAAAAAAA！！！』

涼「わああああああっ！？さ、さっきの犬！？なんでっ！？」

ｽﾞﾙｯ

涼（しまったっ、足が……！）

犬？『BOW！！』

ﾄﾞｶﾞｯ！

涼「うっ……お、重い……！」

犬？『SYAAAAAA……！』

ﾍﾞﾁｮｯ
ｳｼﾞｭﾙｳｼﾞｭﾙｳｼﾞｭﾙ

涼「ひいっ！？な、舐めないでえっ……！？」



一希「父さん……やめてくれ……俺は……もう……」

大吾「嫌じゃ……ワシは……みんながバラバラになるのは……見とうない……」

涼（なんだ……！？ふたりとも……この犬が見えてないのか……！？まるで別のものに怯えてるみたいな……！）

真『アハハハハ！いいねえ！ボクの純情を踏みにじった報いを受けろ！泣け！喚け！そして死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』


涼（違う……！真さんはこんなこと言わない！）

涼（全部まやかしだ！こいつも！静岡県も！なにもかも！）


涼（思い出せ……真さんは……僕の知ってる真さんは……！）

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

真『きゃるる～ん♡ロ・ミ・オ～♡ジュリはここよ～ん♡♡』

涼『え？ホントにそのノリで練習するんですか？』

真『もう！恥ずかしがってちゃダ・メ♡涼の中のオトメを解放して♡』

涼『は……はい……。きっ、きゃるる～ん？』

真『もっともっと！きゃるるるる～ん♡』

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

涼（そのとき、僕の中で何かが切れた音がした）


涼（はっきりとは言えないけど……なんというか、“決定的な何か”が……切れた）


ﾌﾟｯﾂｰﾝ

涼「せくし～びぃ～～～ム！」

ﾄﾞｷﾞｬｯ！

犬？『BOW！？』

ﾄﾞｶｰﾝ！

涼「きゃっぴぴぴぴーん！みんなのアイドル“プリンセス♡ハート”華麗に参上っ♪」

犬？『？？？？』

涼「おイタをするワンちゃんはあ～～？せくしーびーむで蜂の巣にしちゃうぞっ♡」

犬？『！？！？！？』

涼「それじゃいくよー！一斉射撃～！！」

ﾄﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞ！！

犬『GYAAAAAAAAAAAAAA！！！』

涼「ボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラボラ！！」

ﾄﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞｶﾞ！！

涼「ボラーレ・ヴィ―ア♡」（訳：飛んでいけ）


ﾄﾞｯｷﾞｬｱｱｱｱﾝ！

涼「うふっ♡大勝利い♪」


涼「……あれ？」


涼「なんか……意識、が……」


ﾊﾞﾀｯ

　・

　・

　・

　・

　・

～～翌日、315プロ～～


大吾「しっかし……なんだったんじゃろなあ。ワシら3人が別々の幻覚を見て、同時に気絶して、気づいたら事務所に戻ってきとった」

一希「……これは俺の仮説なんだが、静岡県には“心の闇”を具現化する何かがあるんじゃないか」

大吾「心の闇？」

一希「個人個人が抱える後悔やトラウマ、恐怖心といったものが形になり、目の前に現れる……そういった不思議な“力”が働いているんじゃないかと思う。それならば涼が菊地真さんの幻覚を見たのも、俺が父さんの幻覚を見たのも説明がつく」

大吾「ああ……だからワシはあんなものが見えて……」ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ

一希「無理に思い出そうとするな。人間の脳は悪い出来事を忘れにくい仕組みになってるが……それでも、忘れるに越したことはない」

大吾「そうじゃな。……まあ、涼のあの姿は忘れようと思っても忘れられんと思うが」


涼「だいごくん」

大吾「はっ！？」

涼「そのことはいちにちでもはやくわすれてね。でないとぼく、ほんきでだいごくんのこときらいになっちゃうから」

大吾「わかったわかった！そんな目で睨まんでくれ……」

涼「へんじはいっかい」

大吾「ハイイッ！！」

【静岡あるあるその⑩】
人の心の闇を具現化させ、血と錆と怪物にあふれたおぞましい裏世界に引きずり込む。
つまり、心に闇を抱えていない人にとっては普通の街。
これを読んでいる貴方ならきっと大丈夫。

皆様のお越しを心よりお待ちしております。

お　し　ま　い

静岡土産といえばうなぎパイが定番ですが……個人的には「こっこ」の方が好きですね
あと磯自慢

やっぱり876プロはブラック事務所やね。そしてギャグ要員する九十九せんせ。



浜松の街中にはヤマハ（楽器）の博物館あるらしいから行ってみたいわ。（天竜しか行ったことない）

>>1
乙です！
静岡こわいお
近づかんとこ

Mマスは静岡出身いないのか、意外

さすがのサイレントヒルの世界も、「ぷちます！」世界には負けるだろうなぁ

　　

風評被害を超えた風評被害

>>64
鍵が濡れてた原因はこれか…
浜名湖のウナギ？はアーケード版のボスかな