雪美「昨日……散歩に行ったっきり……」

雪美「いままで……どこに行っても……ごはんまでには帰ってきてたのに……」


雪美「……」


雪美「探さなきゃ……」

――――――――

――――

――

【事務所】

晶葉「ふふふ、ここをこうして……こうだ！」ﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

仁奈「すげーです！なにがなんだかわからねーけどとにかくすげーです！！」

晶葉「天才の発明とは常にそういうものだ！仁奈もようやくわかってきたようだな」


ｶﾞﾁｬ


雪美「……ふたりとも……なに……してるの……？」

晶葉「仁奈の注文で大型冷蔵庫を作っているところだ。これから暑くなるし、皆がいつでもキンキンに冷えた飲み物を手にできるようにな」

晶葉「もちろん私が作るのだから単にデカいだけの冷蔵庫ではないぞ！身長の低い人でも楽に飲み物を取れるよう、タッチパネルと音声アシストを搭載し……」

雪美「えっと……なんか……すごい……ね……」

仁奈「雪美ちゃん、なんか用でごぜーますか？」

雪美「う……うん……実は……ペロがいなくなっちゃって……見かけた人がいないかなって……」

仁奈「あっ！ペロはどうかはわからねーけど、昨日歌鈴おねーさんが黒猫を連れてるのを見たですよ」

雪美「えっ……！？どこで……？」

仁奈「こないだ歌鈴おねーさんと藍子おねーさんがお仕事してた神社のそばです。場所は……えーっと……うーんと……」

晶葉「インディゴ・ベルで仕事した場所なら藍子に聞いた方が早いだろう。今日は打ち合わせでこっちに来てるはずだし」

雪美「うん……！ふたりとも、ありがとう……！」

――――――――

――――

――

雪美（藍子……藍子は……いたっ！）


藍子「……」


雪美「藍子」

藍子「…………」

雪美「藍子？」

藍子「うわっ！？雪美ちゃん？」

雪美「どうしたの……ぼーっとして……」

藍子「ごめんなさい。ちょっと、考え事してて」

雪美「顔色……悪い……なにか……あった……？」

藍子「……歌鈴ちゃんと、連絡が取れないんです」

雪美「えっ？」

藍子「今日の打合せに来なくて……私とプロデューサーさんから電話したんですけど……全然……」

藍子「昨日は一緒にレッスンして、いつも通りだったのに……私、心配で……」

雪美（……昨日？……それ……ペロと同じ……どうして？）

雪美「あのね……実は……ペロも昨日から姿が見えなくて……それで……仁奈が、猫を連れた歌鈴を見たって……」

藍子「えっ！？どこでですか！？」

雪美「こないだ……藍子と歌鈴が仕事した神社のそば……」

藍子「六壁神社！？なんで、そんなとこに……？」

雪美「……藍子……お願い……私をそこに連れて行って……」

藍子「ダメですよ！けっこう距離があるし、今からだと夜になっちゃいます」

雪美「もし……ペロになにかあって……神社に取り残されてるなら……早く助けないと……手遅れに……なるかも……」

藍子「う……」


藍子「……わかりました。私も、歌鈴ちゃんが心配ですし」

雪美「ありがとう……！」

――――――――

――――

――

【六壁神社】

藍子「絶対に離れないでくださいね。暗いから足元に注意して」

雪美「う……うん……」

藍子「鈴歌ちゃーん！ペロー！いますかーー！？」


ｼｰﾝ…


藍子「……ダメですね。見捨てられた神社だから神主さんもいないし、どうしようかな……」

雪美「見捨てられた……？」

藍子「あっ！？ごめんなさい、脅かすつもりとかじゃなくて」

雪美「大丈夫……聞かせて。私……平気だから……」


藍子「……ここで私と歌鈴ちゃんがやった仕事って、その……いわゆる“心霊スポット巡り”的な内容だったんです」

雪美「心霊スポット……？……神社なのに……？」

藍子「神社って、良いものを祀っているところばかりじゃないんですよ。雪美ちゃんは学校で習いませんでしたか？平将門とか、菅原道真とか」

雪美「そういえば……ちょっとだけ……」

藍子「この神社も妖怪が出るとか、参拝者が奇妙な幻覚を見るようになったとか、奇妙な噂が絶えなかったらしくて……やっぱり、こんな時間に来るべきじゃ……」

ﾆｬｰ

雪美「！！」


雪美「ペロ……！……ペロなの……？」

藍子「え？どうしたんですか急に」

雪美「ペロの声がしたの……あっち……」

ﾀﾞｯ

藍子「待って！雪美ちゃん、ひとりで行っちゃダメ！」

雪美「ペロ……ペロ……！」

ﾀﾀﾀ……

雪美「私だよ……ねえ……どこにいくの……」

雪美「はあ……はあ……」

雪美「……」

雪美「……ごめん……藍子……勘違い……だったかも……」



雪美「……藍子？」

ｼｰﾝ…


雪美「藍子？……藍子っ……！」


ｼｰﾝ…


雪美（ウソ……どうして……そんなに離れてないのに……）

雪美「藍子っ！！」

ﾆｬｰ

ｶﾞｻｶﾞｻｶﾞｻ！

雪美「っ！？……ペロ……！？」


ﾆｬｰ
ｶﾞｻｶﾞｻｶﾞｻ!


雪美（勘違い……なんかじゃ……ない……絶対……いる……！）

雪美「待って……！行かないで……っ！」

――――――――

――――

――

雪美「はあーっ……はあーっ……はあーっ……」

雪美「どこだろう……ここ……」

雪美「物置小屋……？……ペロ……この中に……？」

ｶﾞﾗｯ

雪美「ペロ……いるの……？」

ﾊﾞｷｯ

雪美「ひっ……！？なにか、踏んだ……？」

雪美「なんだろう……ガラス……？」

雪美「……違う、メガネだ……。どうして……こんなところに……」

雪美「この物置……ほこりっぽい……ほとんど使われてないみたい……」

ｷﾗｯ

雪美「あれ……ひとつだけ綺麗なのが……タンス……？」

雪美「……あっ……冷蔵庫だ……すごく……大きいけど……」


雪美「……」


雪美「…………れい、ぞう、こ？」

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晶葉『仁奈の注文で大型冷蔵庫を作っているところだ。これから暑くなるし、皆がいつでもキンキンに冷えた飲み物を手にできるようにな』

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ﾄﾞｸﾝ……ﾄﾞｸﾝ……


雪美（なにを……考えてるの……私……）

雪美（そんなわけない……そんなわけないのに……）

雪美（でも……この、メガネは……）


ﾄﾞｸﾝ……ﾄﾞｸﾝ……

雪美（開ければ、わかる）

雪美（このドアを……開ければ……）

ﾄﾞｸﾝ……ﾄﾞｸﾝ……

ﾄﾞｸﾝ……ﾄﾞｸﾝ……


ｶﾞﾁｬ


雪美「！？」

雪美「うわああああああああああああああああああああああああああああ！！！！！！」

ﾍﾞﾁｬｯ……ﾍﾞﾁｬｯ……
ｸﾞｼﾞｭｸﾞｼﾞｭｸﾞｼﾞｭ


雪美（なに……！？なんなの……！？これっ……！？）

雪美（大きな……赤い肉の塊……うごめいて……生きてる……！？）

雪美（なんで……！？なんでその中に……）



雪美（藍子の首が……！？）

ﾍﾞﾁｬｱｯ！！


雪美「ひいっ！？」

ｽﾞｽﾞ……ｽﾞｽﾞ……

雪美「こ……来ないで……っ！」


藍子？「ﾆ……ﾆ……ﾆ……」

ｽﾞｽﾞ……ｽﾞｽﾞ……



藍子？「ﾆｬｰ」

雪美「！？」

仁奈「やっぱりペロも雪美ちゃんがいないとさみしーって言ってやがります！今日連れてこられて良かったですよ」

雪美「仁……奈……？」

仁奈「仁奈、ずっと寂しかったですよ。パパもママもおうちにいてくれないし。そしたら神社の神様が教えてくれたんでごぜーます。“みんながひとつになればさみしくない”って」

仁奈「はじめはパパとママをひとつにしたです。そしたらパパとママも寂しいって言うからおじーちゃんとおばーちゃんも一緒にしたです」

仁奈「どんどんどんどんひとつにしてったら、みんながすごく熱くなっちまったんです。だからこれからは、この特製冷蔵庫がおうち！これで快適でやがりますよ！」

雪美「な……なにを……言ってるの……」

仁奈「雪美ちゃんもすぐわかるようになるですよ。ペロと藍子おねーさんと晶葉おねーさんと歌鈴おねーさんと……みんなとひとつになるんでごぜーます」

雪美「嫌っ……嫌あっ……！」

仁奈「そんなこと言っても、もうとっくに手遅れでやがりますよ」

雪美「えっ」


藍子？「ﾆｬｰ」


ﾍﾞﾁｯ
ｼﾞｭｳｳｳｳｳｳｳｳｳ！

雪美「ひっ……ぎゃあああああああああああああ！！あづいあづいあづい！！！！」


仁奈『ともだち　たくさん　さみしく　ねーです』

仁奈『ぎゅーっ　ぎゅぎゅぎゅ　ぎゅーっ　ぎゅぎゅぎゅ』


雪美「プ……ㇿ……デ……サ……」

雪美「タ……ヶ……テ……」


仁奈『ぎゅーっと　かたまって』

仁奈『ひとつに　なれーっ！！』


ﾌﾞﾁｯ

――――――――

――――

――

【1週間後】

P「クソっ！どうなってんだ！」

P「雪美……藍子……ウチのアイドルが次々に失踪して……」

P「アイドルだけじゃない！この街の人間も動物も、どんどんいなくなってる！なんなんだよこれは！！」

P「オレは……一体どうすれば……」

仁奈「プロデューサー、寂しいでやがりますか？」

P「え？」

仁奈「もう少し後にするつもりだったけど、仁奈はプロデューサーの悲しい顔は好きじゃねーです！すぐみんなに会いに行くですよ！」

P「なにを……言って……いるんだ？」

仁奈「みんなでひとつになって……」

仁奈「みんなのきもちになるですよ！」

お　し　ま　い

ハガレン読みながらみんなのきもち聴いたら思いついたお話でした

乙乙！
最後の仁奈には驚かされた
みんなのきもちになるですよ、と言っている仁奈が一番気持ちを分かっていないという皮肉よ

おつ。

最近、仁奈ちゃんが闇属性してるSS多くない？（Paは仁奈ちゃん第1担当）

ヤルダバオートでも祀ってたのか

菜々「みんな一つになる……共産主義ですか！？」

最終的に仁奈ちゃんもいっしょになるのかな…

みんなのきもちはキメラ製造過程を歌った歌詞だったのか

まさか仁奈ちゃんに恐怖するとは……
素晴らしいssでした！乙でごぜーます！