1 :
ご主人様 2025/08/11 21:04:29
ID:C8bVjcHbEQ
夏の夜空を彩るはずだった大輪は、無情の雨にかき消された。
予定されていた花火大会の中止が告げられると、会場に漂ったのは静かな落胆の空気。浴衣姿のまま視線を落とす仲間たちの姿に、田中琴葉は胸を締めつけられた。
————せめて、この夜を笑顔で終わらせたい。
その想いに突き動かされ、田中はすぐにプロデューサーと年長メンバーたちを集め、雨の止み間を狙ってホームセンターへ駆け出す。手にしたのは、大きな袋いっぱいの手持ち花火と噴出花火。
やがて、事務所近くの広場に小さな炎が灯った。火花が舞い、闇を照らすたび、誰かの笑い声が弾ける。
「大きな花火は見られなかったけれど…こうしてみんなが笑っているなら、この夜はきっと忘れません」
その言葉に呼応するように、夜空に細やかな火の粒が次々と咲いては散っていった。雨に奪われたはずの夏は、この瞬間だけ確かに戻ってきていた。
この件について桜守歌織は、「きゃっ…! 見てください、すごく綺麗!」と語り、年長らしからぬはしゃぎっぷりで噴出花火に火をつけた。