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兄(C) 2019/06/16 11:43:04
ID:s1Wptv1MoU
カウンター席から飛び出した辻野が目にしたのは、統計表を飛び出さんばかりの山形県の生産量だった
千切れそうなほどに生ったりんごが収穫され、地鳴りのような青果市場の競りにかけられていた
どういうことか分からずに呆然とする辻野の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「#あかりちゃん #実家の手伝い #早く行くよ」声の方に振り返った辻野は目を疑った
「あ・・・あきらちゃん?」 「なんだンゴ、居眠りでもしてたぴにゃか?」
「ぴ・・・ぴにゃこら太コーチ?」 「なんだ辻野、かってにぴにゃこら太さんを引退させやがって」
「りんごろう・・・」 辻野は半分パニックになりながら出荷リストを見上げた
1番:秋陽 2番:シナノスイート 3番:ジョナゴールド 4番:ふじ 5番:王林 6番:秋映 7番:紅玉 8番:ジェネバ 9番:つがる
暫時、唖然としていた辻野だったが、全てを理解した時、もはや彼女の心には雲ひとつ無かった
「通用する・・・東京でも通用するんご!」
工藤からパンチを受け取り、果樹園へ全力疾走する辻野、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなっている夢見が発見され、吉村と村田は病院内で静かに息を引き取った