124 : Pーさん   2023/06/28 11:59:22 ID:WmuHxpIR16

【鷺沢文香と兄P】

文香「兄さんの新作小説、さっき読み終わりましたよ。
…ふふっ、主人公の心の襞が丁寧に描写されていたせいか、気付けば感情移入してしまっていて。
後半から、ページをめくる手が止まりませんでした。今回もとても、よかったです」

P「あの文量をもう読破したのか、さすがだな文香。
そして、ありがとう。そう言って褒めてくれるのは、もう文香だけだよ」

文香「……そんなこと」

P「……あるさ。
文壇デビューしてもう10年。自慢にもならないが、ファンレターの1通も貰ったことなんてないんだぞ?」

文香「……」

P「兼業でやっていたプロデューサー業が成功したのは、まあなんというか、出来すぎた皮肉だと思うよ。
……妹は今をときめく売れっ子アイドル、かたや兄は、口に糊すら塗れないほどの売れない小説家。
ずいぶんと、差が付いてしまったな」

文香「……そんなこと言わないで、兄さん」

P「文香?」

文香「貴方のファンが、今、貴方の目の前にいるんです。
目の前のファンをがっかりさせるようなことを、してはいけない。
これは、プロデューサーの貴方に教わったことです」

P「……失言だったな、撤回するよ。
しかし文香、よくそんな昔のこと、覚えていたな」

文香「当然です。……だって私は、“貴方の最初のファン”、ですから」