【祭りの終わり】
本当は途中から、アイドルなんて、どうでもよくなっちゃったんです。
私がデビューして半年ぐらい経ったときのこと、覚えていますか?
観客が誰一人として集まらなかった、あの野外ステージです。
降り始めの雨に濡れるのもいとわず、貴方は私の手を握ってくださいましたね。
「約束する。もう二度と、君にこんな思いはさせない。
僕の人生をかけてでも、君をトップアイドルにしてみせる」
貴方の濡れた頬が、雨のせいでは無いと気づいたとき、私は嬉しかった。嬉しかったんです。
“この人の力になりたい”と、その時、思ったんです。
だから、私は頑張れました。
私は、耐えることができたんです。
辛いレッスンも、なかなか出ない結果も、時折浴びる冷笑も。
下賤なゴシップ記事のせいで好奇の視線に晒された時ですら、貴方を思えば耐えられた。
貴方の隣で、貴方の夢がだんだんと実っていくのを見守れるのが、楽しくて。
こんな私が、貴方のお役に立てているということが、ただただ、嬉しかったんです。
慌ただしくも楽しい日々は、今思うとお祭りのようでした。
貴方と共に四苦八苦しながら準備をしてきたこのお祭りを、今、二人で歩き回って確かめ合っている。そんな気がするんです。
祭りももうクライマックス。今、花火が上がっています。