うん、お母さんの味。おいしい。昨日の夕ごはんも…
色々と思い浮かべながら食べていると、ふたりとも私を見ていた。
…また自分の世界に飛んでいたみたい。
私が気づくと、ふたりともおかしそうに笑った。
顔が赤くなる。
恥ずかしくなってさっとテレビに目を移す。
映像が目の前を滑るように流れていく。
ぼんやりと眺めながらごはんを食べ終えた。
「ごちそうさまでした」
今日は休日前の学校の日。もうすぐ着替えないと。

洗面台の鏡に映る私と見つめ合う。
…そういえば。テレビを思い出す。
学校でも聞くような人や音楽の話やドラマの出来事。
私には想像もできない世界。
あんなふうに人の心を動かせることも。
…私にはそんなこと、できるかわからないな。
歯みがきをして、身だしなみを整える。
…お化粧なんかもきちんと勉強したほうがいいのかな。
お母さんに聞くと、まだ熱心になる年じゃない。
…みたいで、どうだろう。たぶんそうなのかな。

学校のみんなより早く学校へ行く。
朝の道はなんとなく楽しくて、歩くのがゆっくりになるから。
スズメさんの声を聞いて、いつもの花屋さんを通って。
あの子はいつもここで鳴いてるなあ。
このお花、もうすぐ咲きそう。あ、こっちも。
学校が近くなって、小テストがあるのを思い出した。
昨日のうちに勉強したところを思い返す。
そのうちに校門を通って、教室についた。
まだぽつぽつと来ているなか、私も席につく。
時間まで復習しているうちに、声や足音が多くなって、そのまま今日の学校が始まった。

お昼休み。みんながそれぞれ友達と集まったりするなか、
私はそのままでお母さんのお弁当を広げる。
もうみんなそれぞれの輪ができているみたいで、
今からは入りづらい雰囲気。
あ、これ好きなおかずだ、なんて思っていると、
「ねぇ、真乃ちゃん」
ふいに話しかけられた。
すぐ近くで、4人で席を寄せ合ってた〜〜さん。
クラス替えして数日は、席が近くて何度か話しかけてくれた。
最近はあまり話すときはなくなったけれど、聞き直すと、
昨日のテレビの話みたい。見たことがなかったのでそう答えると、
「そっかそっか、ありがとねっ」
また自分たちの話に戻っていった。

お弁当に戻りながら話し声を聞いていると、とっても楽しそう。
まえ、話してくれたときは、私がしゃべるのが遅くなっちゃったけど、
今の3人とは気が合うみたい。
いつかもう一度、ふたりでお話してみたいな。

学校が終わって、部活もないので帰り道を歩く。
朝と違って少し遠回りする。行き先はあの公園。
今日は時間もあるし、いるかな。あ、いた。
いつもの場所に、まだ歩いてる鳩さんがちらほら。
私が近づくと、覚えていてくれたみたいで、
座ったベンチのそばに何羽か集まってきてくれる。
「いつもすぐ来てくれるね」
くるっくるっと鳴いているのを聞きながら、
鼻歌で真似したり、なんとなく歌ったりしてみる。
友達がいたら、一緒にこういうこともできたかな。
そんなことをぼんやり思ったり、思わなかったり、
また鼻歌に戻ったりしていると、だんだん鳩さんが帰っていく。
気づけば私も帰る時間になっていた。
「また来るね、ばいばい」

家へ帰って、ご飯とお風呂を済ませると、
リビングでお母さんがテレビを見ていた。
〜〜さんが話してた番組だ。
もう残り数分も無くて、ほんの少し見ていると終わってしまった。
次はちゃんと見てみようかな。
…
自分の部屋に戻って、少しだけ勉強。
次は…ここは、難しいな。…基礎のところはできるようにしよう。
もう少しで寝る時間になった。
区切りがいいので、今日はここまで。

…明日からお休み。何をしよう。
なんとなく、あの公園の鳩さんたちに会いたくなった。
もう夕方だったからあまりいられなかったけど、
明日ならたくさん一緒に過ごせるよね。
今日みたいに歌ってみようかな。
「ね、ピーちゃん」
…もう寝ているみたい。可愛い寝顔に頬が緩む。
つられて、だんだん私のまぶたも重くなってくる。
「おやすみなさい」
今日もいつもどおり、楽しくて何事もない一日。
明日もいつもどおり。だけどきっと、特別な日。

終

過去作(他サイトですが)
・霧子「今週も、終わりましたね」
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/20196/1587735277/-100
・霧子「絵本を読みましょう」
https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/20196/1587816919/l30

ありがとうございました。

ほっこりした（途中で大丈夫？実は窓ガラス割れてね？な感じになったのは秘密