美也「あのですね～、昨日まつりちゃんが言っていたんです～」

朋花「この時点で嫌な予感しかしませんね～」


まつり『たしかに最近暑くなってきたのです。こんなときは朋花ちゃんの出番なのです。ほ？　知らないのです？　朋花ちゃんはお団子から冷気が出せるのです。夏場でもクーラー要らずなのです。一家に一台朋花ちゃんクーラーの時代もそう遠くないと姫は考えているのです。問題は……朋花ちゃんの放出する冷気が環境に良いのか悪いかなのです。これは学会でも争議になっているらしいのですよ！』


美也「というわけで涼ませてください～」

朋花「本気……いえ、正気ですか～？」

美也「なんと～、朋花ちゃんのお団子では涼を取ることはできないんですね～？」

朋花「そうですね～。私から説明されずとも気づいてほしかったです～」

美也「なんと～、まつりちゃんの言う学会のほうに連絡しないとですな～」

朋花「美也さん～？　もう一度説明するのでちゃんと聞いていてくださいね～？」



美也「それはそうと、朋花ちゃんはひんやりしていますか～？」

朋花「はい？」

美也「むんっ」

朋花「美也さん～？　人の頬をいきなり指でつつくものではないですよ～？」

美也「お～、柔らかいですな～。でも、ひんやりはしていませんね～」

朋花「――――ていっ」

美也「！　む～ん……朋花ちゃん、眉間は勘弁してください～」



ｶﾞﾗｶﾞﾗｶﾞｯｼｬｰﾝ

まつり「はいほー！　姫の登場なのです！　朋花ちゃん、美也ちゃん、おはようなのです！」

朋花「まつりさん、おはようございます～。あの、ドアがまた………」

まつり「ほ？　またドアがまつりに照れてしまったのです。照れ屋さんなのです」

朋花「どう見てもまつりさんの怪力のせいでひしげてしまったのですが～」

美也「今週、二度目ですな～」

まつり「ほ？　まつりは、か弱い乙女なのですよ。ね？」

朋花「後で修理の依頼は出しておいてくださいね～？　ところで、まつりさん。少しうかがいたいことが……」

まつり「そんなことより、今日は頼もしい仲間を連れてきたのですよ！　これを見るのです！」

美也「お～、扇風機ですな～」

まつり「まつりと同じで魔法の国からやってきた、プーちゃんなのです。仲良くするのですよ」

朋花「メルヘンな設定を持ち出されても、見た目はごく普通の扇風機なのですが～」

まつり「試運転するのです。劇場の倉庫……じゃなくて、国ではずっと牢獄にいたから体がなまってしまっているかもしれないのです」

朋花「いきなり重い過去が明らかになって、驚きですね～」


美也「問題なく使えますね～。まつりちゃん、事前にお掃除もしてくれたんですね～」

まつり「ほ？　何のことです？　まつりは無実の罪で囚われていたプーちゃんの自分REST@RTのために身支度してあげただけなのです」

まつり「美也ちゃん、朋花ちゃん、プーちゃんの新たな門出を祝うために、プーちゃんに向かって、あ゛～ってするのです」

朋花「？　まつりさん、その『あ゛～』というのは何ですか～？」

美也「おや～？　朋花ちゃん、もしかして扇風機に向かって、あ゛～したことないんですか～」

まつり「！！　それは真なのですっ！？　だとしたら、まずいのですよ、朋花ちゃん！」

朋花「まつりさん～？　迫真の演技ですが、表情から笑いが殺せていないですよ～？」

まつり「とにかく、扇ぷ……じゃなくて、まつりの侍女に抜擢されたプーちゃんに、あ゛～するのです！」

朋花「扇風機の妙な設定を掘り下げるのは、誰も得しないと思うのですが～」

美也「戸惑っている朋花ちゃんのために、ここは私が一肌脱ぎますよ～、むむん！」

朋花「あの、そんなに気合を入れないといけないことなのですか～？」

まつり「朋花ちゃん、静かにするのです。美也ちゃんの勇姿、その眼に焼き付けるのです」

朋花「えぇ……」



美也「あ゛～～～～」


朋花「………」

まつり「朋花ちゃん、朋花ちゃん。感動で言葉を失ってしまったのです？」

朋花「ちがいますよ～？　ただ……そうですね、扇風機に向かって、ああいう風に声を出す美也さんは可愛らしいですね～」

まつり「それには同意見なのです」

美也「あ゛～～～～」

まつり「美也ちゃんの声がロボットみたいに聞こえるのです。不思議なのです」

朋花「？　声が、回転する羽根にぶつかり跳ね返ってくるか、あるいは羽根の間をすり抜けるかを高速で繰り返しているから、ああ聞こえるのですよね～」

まつり「………。朋花ちゃんはもっと心にメルヘンを持つべきなのです」

まつり「というわけで、次は朋花ちゃんの番なのです！」

朋花「どうして私がしないといけないんですか～？」

美也「まあまあ、そう言わずに～。してみると癖になりますよ～」

朋花「そんなことないと思いますが～」

まつり「撮影の準備はばっちりなのです。いつでもいいのですよ」

朋花「なぜ撮影なさるんですか～？」

まつり「朋花ちゃんが、あ゛～している動画を某サイトにあげるのです！　100万回再生もあり得るのです！」

美也「風が吹けばまつりちゃんが儲かるんですな～」

朋花「べつにうまいこと言えてませんからね～？」

まつり「さあ、朋花ちゃん、今こそ初めてのあ゛～なのです！」

朋花「……先にまつりさんのお手本を見聞きさせてもらってもよろしいですか～？」

まつり「ほ？　いいのですよ。でも、美也ちゃんとまつりがしたからには、もう逃げられないのです。覚悟するのです」

朋花「ふふっ、そうですね～。まつりさん、手を抜かずに全力でお願いしますね～。まつりさんらしい掛け声で」

まつり「？　わかったのです」

まつり「はいほお゛お゛お゛お゛ぉぉーーーー！！！！！」


ﾊﾞｷｯ､ﾊﾞｷｯ､ﾄﾞﾝｶﾞﾗｶﾞｯｼｬｰﾝ！


まつり「ほ？」

美也「扇風機、散体してしまいましたね～」

朋花「勇を失ったようですね～、ふふっ」

後日

朋花（冷房をつけるようになって、いつの間にか扇風機は控室の隅でただのオブジェになってしまいましたね～）

朋花「しかたありませんね～。倉庫に返しておきましょう～♪」

朋花「…………」ｱﾀﾘｦﾐﾏﾜｽｾｲﾎﾞ

朋花「ちょっとだけ」ﾎﾟﾁｯ

朋花「あ゛～～～～」


美也「おや～。朋花ちゃん、楽しそうですな～、むふふ」

朋花「！！？？　美也さん、いたんですか～」ﾎﾟﾁｯ

美也「むんっ」

朋花「んっ。また急につつくなんて無礼ですよ～？」

美也「お～、今の朋花ちゃん、ちょっと暖かいですな～。暖房機能は搭載しているんですか～」

朋花「………っ。美也さん～？　扇風機と一緒にお仕置きが必要ですね～」

プー「！？」

美也「ふふふっ、風が吹けば朋花ちゃんが恥じらう、ですな～」

おしまいですよ～

乙ですよ〜

>>13の冒頭部分、朋花の独白で「せっかく修理したのに」が抜けていました～。

よかったですな〜

姫の肺活量はそんなに強くありません。ね？

（なんとなく予想はついたものの爆笑してしまったw）

ドアさん、立派でしたよ…

お団子万能説

美也は扇風機であ"～～～～やりそうよね

>>22
このシーンのカード星井