ひなた：どうも、木下ひなたです。

昴：永吉昴だぜ。

２人:『木製バット』です。よろしくお願いします。

ひなた：昴さん。今日はちょっこし気分が悪いべさ。

昴：いきなりどうした？

ひなた：実家から、お米を仕送りしてくれたんだけどねえ。白ご飯が美味しくって、食べすぎちゃったんだわ。

昴：食べすぎは良くねえな。腹八分目にしとくのが健康には良いんだからな。

ひなた：そっかぁ。やっぱりそうだよねえ。

昴：どんくらい食べたんだよ。

ひなた：うーん。16,384粒だったねえ。

昴：粒！？　一粒ずつ噛み締めたのかよ！

ひなた：16,384粒ってのは、1から順に倍々していって15回目の倍増で出てくる数字なんだよう。

昴：誰も興味ねーよ！　つーか、そんな数言われてもピンと来ねえからな！？

ひなた：そうかい？　4,000粒って茶碗1杯分だから、16,384粒は4杯分だよお。

昴：最初からそう言えよ！　そんな話をしに来たのかよ今日は！？

ひなた：あーそうだったべさ。あのねえ。聞いてほしい事があるんだわ。

昴：なんだ？

ひなた：驚かないでほしいんだけども。

昴：ん？

ひなた：……鬼が出たよぉ。

昴：律子も琴葉も今日は事務所にいなかったじゃねーか。

ひなた：昴さん、あとでシメられても知らねえべ？

昴：あ、悪ぃ！　ここカットで頼むな！

ひなた：もう手遅れだねえ。いやあねえ、私が言っているのは本物の鬼が出たって事なんだよぉ。

昴：……本物？

ひなた：……本物。

昴：……おっかねえな！

ひなた：おっかねえよぉ。

昴：どこに出たんだよ鬼なんて。

ひなた：実家近くのねえ。山に出たんだわ。

昴：鬼といったら山に居そうなイメージあるな。

ひなた：それも、全身真っ赤でねえ。虎の模様が入ったパンツをはいてるんさ。

昴：格好も大体そのまんまだ。

ひなた：しかも、大人の前には中々姿を見せないし……。

昴：うん？

ひなた：見た目の特徴で、耳と鼻がすごくとんがってるんだべさ。

昴：……ゴブリンじゃねーのかそいつ？

ひなた：え？

昴：大人には姿を見せない。耳と鼻がとがってる。これ、ゴブリンの特徴じゃねえか？

ひなた：昴さんにしてはえらく詳しいねえ？

昴：百合子が前に話してたのを覚えてたんだよ。

ひなた：そっかあ。それじゃあきっと、あの鬼はあいの子なんだねえ。

昴：国産と西洋の鬼同士の！？

ひなた：でね。その鬼は、山の中の小屋に住んでるんだけどねえ。

昴：家あるんだ。

ひなた：小屋の前に看板が立てられてて、メッセージが書かれてるんだわ。

昴：メッセージ？　どんな？

ひなた：「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお菓子がございます。お茶も沸かしてございます」ってねえ。

昴：おいおいひなた。

ひなた：なんだい？

昴：その鬼、良いヤツなんじゃねえの？

ひなた：昴さん、まさか鬼の肩を持つのかい？（ﾆｺｫ...

昴：いやいや怖い怖い！　組長の顔になってるぞひなた！　いや、なんかその話をどこかで聞いた覚えがあってさー……。

ひなた：そうかい？　とにかく、鬼は怖いから、だぁれも小屋には近づかなかったんだわ。

昴：オレの知ってる話だと、この後、別の鬼が来たような気がするんだけど……。

ひなた：よく分かったねえ。そうなんだよぉ。ある日、真っ青な身体をした鬼が、集落の方へ降りたきたんだわ。

昴：お！　来たか！

ひなた：集落中に悪さを始めたんだよお。

昴：やってんなー。

ひなた：家の呼び鈴を片っ端から押しまくったり、家中の電気をお日様が高いうちから全部点けたり……。

昴：思ったより地味！

ひなた：でね、出会った人に対して「鬼パンチ」って言いながら次々に殴りかかっていったんだわ。

昴：うわ、マジで痛そう。

ひなた：だけど、ほとんどの人は無傷だったみたいでねえ。

昴：ほとんど無傷？

ひなた：よく見ると、被害者のシャツのボタンが１個ずつかけ違えられてたんだよお。

昴：完全にイタズラレベルじゃねーか！　日本の鬼ならもっとひどい悪さとかしてるだろうよ！


昴：…………その鬼もゴブリンとのあいの子じゃねーか！？　イタズラばっかりしてるし！！

ひなた：んだよお。鼻も耳もとがってるよぉ？

昴：鬼の間で国際交流が進んでるってどういう状況だよ……。

ひなた：そんな時に！

昴：おっ！

ひなた：あの赤鬼がやってきて！

昴：おうおう！

ひなた：家中に、謝罪して回ったんだべさ。

昴：迷惑かけた子どもの保護者みたいなことやってんな！？

ひなた：で、その後に青鬼を懲らしめたんだわ。

昴：やっと来たか！

ひなた：でっかい、かねのぼうを持ってねえ。

昴：いかにも鬼らしいな。

ひなた：青鬼の顔面に……。

昴：ちょっとやりすぎじゃね？

ひなた：化粧品を塗りたくって懲らしめて……。

昴：かねのぼうってカネボウかよ！　顔にダメージほとんど無えよ！！

ひなた：赤鬼と青鬼とは実はグルで、みんなに認めてもらいたいから、一芝居を打ってたんだよぉ。

昴：知ってたのかよ！？　まぁ原作通り一芝居打ってたんだろうけど……。でも、なんで知ってたんだよ？

ひなた：村の情報網を見くびってもらっちゃ困るよお。青鬼が来る二日前には出回ってた情報だったべさ。

昴：マジかよ……。

ひなた：だから、赤鬼の小屋には誰ひとり近寄らせねえどころか、もっと遠くの山へ追いやってやったよお。

昴：お前らの方が鬼じゃねーか！

ひなた：そうかい？　だけど昴さん、最初に言ってたよねえ？

昴：ん？

ひなた：何事も「八分」がいいんでっしょや？

昴：村八分はダメだろ！　もういいぜ！

２人：ありがとうございました。



おわり

>>15　と　>>16　の間にこのやりとりが抜けてました。


ひなた；嫌がった青鬼はそのまま山の方へ逃げてったんだわさ。

昴：オレの知ってる話とちょっと違ったけど、何はともあれ、村のみんな、赤鬼の事を許してあげたんだよな？

ひなた：何を言ってるんだい昴さん。鬼は鬼だべ。

昴：え？

おつー
元ネタあるんか知らんけど、つかみのネタを最後で回収するのが、いかにもこなれた漫才でよかった

>>20
元ネタは無いです。全部オリジナル。
話の運び方は「金属バット」という漫才師がモデルです。
左の坊主がボケでロン毛がツッコミ。

漫才としての元ネタじゃなくて昔話としての鬼の話はなんか聞いたことあるな
そのせいでよりクスッとしてしまう

泣いた赤鬼がベースになってるな。

おつー！
カネボウ好き