【微百合注意】雪歩「冬の足音」可憐「冬の香り」
1 : 兄ちゃん   2020/11/22 04:37:08 ID:9FNybUI9J6
立ったら投下していきます。
2 : 夏の変態大三角形   2020/11/22 04:40:51 ID:9FNybUI9J6
冬の足音は大きい。
街中がクリスマス、それから年末年始に向けて慌ただしく準備を始めて賑やかになっていくから。
否が応でも秋が去っていくのを感じます。季節はめぐるものだけれど、実は一度だって同じものってなくて、だからなのか季節の変わり目になると少し寂しさだったり後悔があったりします。もっと何かできなかったかな、みたいな。
お仕事についても、そう。あのときのあのお仕事は、もっと上手にできたかも……だなんて今になって思う私。
前向きに、前向きに……そう言い聞かせ、秋を振り切って冬へと踏み出す通りを歩きます。劇場へ、みんながいる場所へ。

みんな、と言えば。
可憐ちゃんだったら、足音よりも、きっと冬の香りを感じるのかも―――。
ふとそんな風にして彼女の顔を思い浮かべ、そして「今日も会えるかな」なんて呟いてしまうのは変じゃない……よね?
3 : プロデューサーさま   2020/11/22 04:41:11 ID:9FNybUI9J6
美咲さんに訊くと、可憐ちゃんは今日も律儀に許可をとって劇場の一室を使っているそうでした。
また1人でアロマの調合でもしているのかな。だったら、会いに行くのは邪魔をするようで悪いなあ。などと思いつつも、私の足は彼女がいるはずの部屋へと寄り道せずに向かっているのでした。
コン、コン、コンとノックを3回。音は控え目。返事は……なし。
おそるおそるドアを開いて中に入ると、果たしてそこには廊下とは異なる香りが漂っていました。強くはない優しい香り。ドアを閉めると、私もそれにすっぽり包まれるようで。
テーブルに置かれた小瓶たち。そして目を閉じて椅子に座っている女の子―――可憐ちゃんにそっと一歩、また一歩と近づくと彼女が「すーっ……すー…」と微かな音を立てているのがわかりました。
規則的な寝息。穏やかな表情。夢の中でも香りを楽しんでいるのかな。
起こさなくてよかったと思う一方で、こんな形で彼女の寝顔を見てしまったことに対するほんの少しの罪悪感。
4 : そなた   2020/11/22 04:41:26 ID:9FNybUI9J6
あまりに可愛い眠り姫だから、ついついその綺麗な髪を撫でてしまう私。「んっ……」と彼女の口元から漏れる、声にならない声が私の顔を熱くするのでした。
このままだと風邪を引いちゃうよね、と意識を切り替えます。
どうしよう? 起こそうか、それともブランケットをとりに一旦出ようかな。
もし可憐ちゃんに何かこの後用事があって、この居眠りでそれに支障が出るのなら起こしたほうがいい。
けれど、もしそうでないのなら、うん、許されるのなら、私が彼女に何か羽織らせてでもして、それから……起きるまで彼女のそばにいたいなあ、なんて。
5 : Pさぁん   2020/11/22 04:41:42 ID:9FNybUI9J6
「くしゅんっ」

私の逡巡に物申すかのように、ううん、そんなことないだろうけれど、とにかくその可憐ちゃんのくしゃみが私に決断させました。

「可憐ちゃん……可憐ちゃん、起きて。風邪引いちゃうよ?」

少女漫画やドラマの登場人物みたいに、たとえば主人公の女の子が恋をしている男の子や大人の男性がするように、上着を彼女にかけることができればなぁ。今日はそうするのに適した恰好をしていないものだから。
もしもそうすることができていたのなら……それはつまり私の匂いで彼女を包むということで、夢の中でも会えたかもしれないのにね。

「可憐ちゃん……ねぇ、起きないと―――」
6 : Pサマ   2020/11/22 04:42:04 ID:9FNybUI9J6
ゆさゆさと、彼女を揺らす私の手は、まだまだ本気になれなくて。

「お、起きないと……キ、キスしちゃうよ?」
7 : 高木の所の飼い犬君   2020/11/22 04:42:18 ID:9FNybUI9J6
ぴたり、と手を止める私。続く寝息。よかった、起きていない。
私ったら、何を言っちゃっているんだろう?
そうして自然と視線が彼女の唇に。無防備だ、無防備すぎるよ。今だったら―――。

「ダメ、そんなのダメ……だよね」

ぶんぶんっと首を横に振って。
……ブランケット、とりにいこうっと。
音を立てないように部屋を出て、深呼吸。ドキドキしている。なんにもしていないのに、できなかったくせに。
廊下で誰にもすれ違わないといいな。ぜったい、とんでもない顔をしているから。
8 : レジェンド変態   2020/11/22 04:42:30 ID:9FNybUI9J6
はっきりと思い出せませんが……心地良い夢だった気がします。
でも、そんな夢のことは、起きるとすぐそばにあった香りで吹き飛んでしまって。

「!? ゆ、雪歩ちゃん……?」

2つの椅子を横並びにくっつけて、そこに座る私たちも肌が触れ合うぐらいの距離で。
大きなブランケットは私と、それから雪歩ちゃんを包むようにしてあって。
言うなれば座ったままで私は雪歩ちゃんに添い寝されていました。
え………ど、どうして。えっと、もしかしてまだ夢?

「――っ~~」

近い。近いです。もはや香りどうこうよりも、確かな感触があります。
雪歩ちゃん、私の腰あたりに手を回している……むしろ、抱き着いているって言ったほうが正しいのかもしれません。
い、いずれにしても……えっと、その……は、恥ずかしいです。
9 : 兄ちゃん   2020/11/22 04:42:44 ID:9FNybUI9J6
「ん………」

もぞもぞと、雪歩ちゃん。
寝顔も可愛い……って、ち、ちがうんです。不可抗力で。つい目に入っちゃいますから。
力を入れて離れようとすればできるだろうけど……で、でも。
こんな幸せそうに眠っている雪歩ちゃんを起こすのは、ううっ……。
私はべつに、今日はもうお仕事もレッスンもないから、門限までに帰ればいいですけど……雪歩ちゃんはどうなんだろう?
たぶん、こんなところで寝ていた私が風邪を引かないようにってしてくれたんだよね?
そ、添い寝してくれるのは予想外すぎますけど……!

「あ、あのー……雪歩ちゃん…?」

囁き声で。吐息が直に彼女にあたるような距離。
10 : Pちゃん   2020/11/22 04:42:56 ID:9FNybUI9J6
「んっ……。そ、そんなに入らないよー」

むにゃむにゃと。寝言? 
えっ、あっ……。ぎゅっとされちゃっています……! いっそう離れにくくなりました。ど、どどどうしよう?

「ゆ、雪歩ちゃん、起きて、ほしいなぁーって……えっと、い、犬ですよー、わん、わんっ……」

小声で。反応は……ないです。
いや、わかってはいるんです。本当に離れたいなら声を大きくして、彼女の腕を振りほどいてっていうのは。
でも――――。
もうしばらくこのままでも、なんて。思っちゃう私もいて。これって別に変じゃない……ですよね?
11 : プロデューサーさま   2020/11/22 04:43:22 ID:9FNybUI9J6
そうして……起こすのは一旦諦めて、時が過ぎるのを待つことにしました。

何回目かの寝返り。私は避けようがなくて。

頬に、柔らかな感触。「え?」って思わず私は。
今のって……え?

ぱちくり、と。
ゆっくりと大きくまばたきをしたのは、私だけではなくて。
目が合いました。それまで眠っていたはずの彼女と。

「あ……あっ……」

「雪歩ちゃん? えっと、今の―――」

瞬く間に色が変わって。
12 : 仕掛け人さま   2020/11/22 04:43:36 ID:9FNybUI9J6
「どひゃぁぁああっっ!??!」

私から勢いよく腕を離し、奇声をあげて椅子から転げ落ちる雪歩ちゃんを止める術は私にはありませんでした。

「ち、ちがうのっ! ブランケットかけて、はい、それで終わり!ってしようと思ったの! でも、えっと、椅子に座っているからなのか、可憐ちゃんの寝相が、その、うん、そのままだとブランケット落ちちゃいそうになって、それで、しかたなく私も、せっかくだからって、えっと、や、やましい気持ちはないのっ! し、信じてほしいですぅ!!」

サッと上半身だけ起こして、手を忙しなく振りながら雪歩ちゃんは。

「お、落ち着いてください……!」

あわわわと慌てる雪歩ちゃんにあてられて、こちらも慌ててしまいます。

「あと、それにさっきは寝ぼけて―――っっ~~」

そこまで言うと雪歩ちゃんの手は彼女の自身の顔を隠すのに集中します。
13 : P様   2020/11/22 04:43:48 ID:9FNybUI9J6
雪歩ちゃんの言葉でさっきのことを思い出すと、頬が、そして顔全体が熱くなっていくのがわかります。その熱はやがて体中に伝わっていくのです。
もう街にも冬の香りがし始めているというのに、私たち2人は火照った空気の中にいて。
雪歩ちゃんが転げた衝撃で、テーブルの上の小瓶が倒れでもしたのでしょうか、不思議に甘い香りが私の鼓動を高鳴らせ続けるのでした。


14 : 師匠   2020/11/22 04:45:33 ID:9FNybUI9J6
おしまいですぅ。
過去作一覧は前回貼ってくれたやつ(「怪しい」の込みで)合っています
十分な数になったら自分自身でも貼ります。

15 : Pさぁん   2020/11/22 09:27:35 ID:dExroko1kU
そうなんだ。めっちゃ書いてるやん。すげぇな
シリーズ名つけるならなに?
16 : プロデューサーくん   2020/11/22 11:12:53 ID:3KVQ7Cd9K6
>>15
横からだけど、むしろ「ゆきかれ」とか「ゆきかれ流行らせ」以外のシリーズ名候補なくないです?
わざわざ「春香さん脳破壊キャンペーン」なんてつけないだろうし…
17 : Pちゃん   2020/11/22 11:29:12 ID:dExroko1kU
多分そうなるとは思うけど一応シリーズSS一覧に載せるために聞いとこうかなって
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