雪歩「春香ちゃんなら、わかってくれるよね」

春香「え？　出し抜けになんなの？」

雪歩「守ってあげたい、っていう気持ちと、いじめたいなぁ、っていう気持ち……その両方をくれるんだよね」

春香「見損なったよ、雪歩。私たち先輩組のなかでも特に後輩想いだって評判の雪歩なのに、そういう歪んだ性癖の持ち主だったなんて」

雪歩「この前ね、いっしょにＣＤのお渡し会をしたの。する前から可憐ちゃんってば、すっごく緊張していて、そのおかげでかえって私が落ち着けたぐらいだったの。でも、いざお渡し会が始まると、テキパキとして、素敵な笑顔を振りまきながら順調に進んでいって……そのままいけばよかったんだけれど、可憐ちゃんが可愛すぎたせいなんだろうね、予定よりもずっと多くの人が押しかけてきて、上手くさばけなくて、てんやわんや。なんとか2人で協力して事無きを得たんだけど……終わったあとの、可憐ちゃん、もう泣きそうになっていたんだよね」

春香「…………」

雪歩「昔の私だったら泣いていたかも。でも、可憐ちゃんは泣くまではいかなかったよ。偉いね。で、涙目の可憐ちゃんを励ましながら、こういう表情もそそるなぁって」

春香「はぁー……そうっすか」

雪歩「わかるよね？　グッとくるよね？」

春香「いやぁー……どうっすかね」

雪歩「どちらかと言えばー？」

春香「めっっっっちゃわかる」

雪歩「ふふっ、私、素直な春香ちゃん、好きだなぁ」

春香「あれだよね、ただ単におどおどしているのがいいってわけじゃないの」

雪歩「うん」

春香「精一杯頑張って、頑張って……なんとか乗り越えて、でも、ついつい涙目になっちゃっているのがいいよね」

雪歩「うんうん」

春香「それでね、大事なのは笑顔とセットってこと。いつまでも涙目じゃ、それはやっぱりこっちもさ、いい気分じゃないよ」

雪歩「わかる。励まして、立ち直ったあとに見せてくれる『……えへへ』って感じのあれね。うん、最高だね」

春香「そう、それ。ちゃんと立ちあがれる子だからね、可憐ちゃん」

雪歩「ふふっ。また可憐ちゃんのグッとくるところ見つけたら共有するね」

べつの日　

可憐「あ、あのー……春香さん、今、いいですか？」

春香「ん？　どうしたの、可憐ちゃん。私だったら大丈夫だよ。ちょっと休憩していただけだから」

可憐「は、はい。春香さんに相談といいますか、話してみたいことと言いますか……うう」

春香「えっと……けっこう真面目で深刻な話？　だったら、きちんと時間と場所を作って……」

可憐「い、いえ！　そういう話……ではないと思うんですが。春香さんなら……わ、わかってくれるかなって」

春香「ずばり、何のこと？」

可憐「えっと…その……涙目の雪歩ちゃん、か、可愛いですよね？」

春香「は？」

可憐「可愛いですよね？」

春香「見損なったよ、可憐ちゃん。そりゃ、可憐ちゃんのほうが身長だったり胸囲だったり、外見で言えば雪歩よりパッと見、華がある雰囲気だけども、それでもいつもお世話になっているはずの先輩に対して、そういう歪な印象を持つだなんて」

可憐「せ、先日、またいっしょにドラマの出演が決まって……キャストの顔合わせと、軽い食事会があったんです。未成年が多いのを考慮して、昼間の時間帯でした。そこで雪歩ちゃん、若い男性タレントさんに話しかけられて……。ぎこちない笑顔でしたけど、ちゃんと対応できていて、でも、そこにもう一人の中年で少し強面の男性俳優さんが話に加わってくると、もう、いっぱいいっぱいな感じで……」

春香「…………」

可憐「わ、私がフォローしないと、なんて思ってもいたんですけど……最終的には、雪歩ちゃん、上手に話を締めて……私といっしょにお手洗いに行ったんです。そこでやっと緊張がほどけたのか、涙目になって『もうダメかと思いましたぁ……』って」

可憐「私だったら対処できなくて、場の空気を悪くしたり、誰か助けを求めていただろうなって。私と2人になってから、涙目になった雪歩ちゃんを、私なりに励ましながら、ああ、こういう表情も私、好きかもって……」

春香「ふーん……」

可憐「わ、わかってくれますよね？」

春香「いやぁー……どうかなぁー」

可憐「……どちらかと言えば？」

春香「すっっっっごくわかる」

可憐「ですよね」

春香「あのね、違うの、雪歩の涙目全般がいいってわけじゃないの。ほら、あの子、なんだかんだ今でも穴掘っちゃう程度には打たれ弱いから、時々、面倒だなぁなんてね思ってしまうときもあるの」

可憐「な、なるほど」

春香「でも、雪歩は本当は芯の強い子だから。それは知っているから。迷いが吹っ切れたときにあの子が見せる輝きって本物だから。一所懸命に頑張る雪歩は見ていて、こっちも負けてたまるか！ってなるぐらいに好き。それでね、全部終わって、ほっと一息ついて、そんなときに見せる安堵の涙目。これね。うん、グッとくるね。指で掬って、褒めてあげたくなるね」

可憐「は、はい」

春香「ちょっとしたことで涙目になっているときは………まぁ、その時はその時で、いじめたくなることもあるけどね」

可憐「そうなんですか？」

春香「リアクション、というか表情に富んだ子だからさ、いじりがいがあるんだよね。あ、もちろん本気で嫌がるような子はしないよ？　『も、もうっ、春香ちゃんったら～！』みたいに怒るか拗ねるかしてくるところとか、可愛いよね」

可憐「私ももっとそういう雪歩ちゃん……み、見たいです♪」

べつの日

雪歩「ねぇ、春香ちゃん」

春香「うん？　どうしたの？　またチワワにでも追いかけられた？」

雪歩「ちがうよ！？　そんな頻繁に追いかけられていないよ！」

春香「じゃあ、何？」

雪歩「ん、ん。……可憐ちゃんのドヤ顔ってグッとくるよね？」

春香「は？」

春香「あのさ、雪歩。いくら雪歩が後輩想いで、」

雪歩「あ、そういう前置きいいんで」

春香「………」

雪歩「可愛いよね？　可憐ちゃんのドヤ顔」

春香「うん、可愛い。間違いないね」

雪歩「つい昨日のことなんだけどね、2人でお買い物していたの。小物とか洋服を見たり、甘くて美味しいもの食べたり。流行のチェックって大切だからね」

春香「昨日なら私も時間あったよ？　誘ってくれてもよかったのになー」

雪歩「それでね、とあるお洋服屋さんでね……」

春香（スルーされた！？）

雪歩「せっかくだからと思って、可憐ちゃんのお洋服を私が選ぶことにしたの。美希ちゃんや恵美ちゃんみたいなファッションセンスはなくとも、可憐ちゃんのことを理解している、そばで見てきたっていう自負はあったからね。これを機に私色に染めてあげたいなって思ったの」

春香「へ、へぇ……（わりと重いな、この子）」

雪歩「私が選んだ服を持って試着室に入るのを最初は恥ずかしがっていた可憐ちゃん。でも、私の率直な賛辞におだてられて、しだいにノッてきたんだよね。さながらファッションショーめいてきたの。前もって、従業員さんが寄らないように仕組んでおいてよかったですぅ」

春香（えぇ……？）

雪歩「そうなってくると、どれ着ても、堂々とした立ち居振る舞いで、その表情も明るいし、褒めたら褒めたで『……てへへ』って感じで―――ああっ！もう思い出すだけで、たまらないですぅ！」

春香「わかる（わかる）」

雪歩「で、結局、二着に絞られて迷う私に可憐ちゃんが言うの。『べつに両方とも買ってしまっていいんですよね？』って。ドヤって。たしかにお金はあるから買えるには買えるけど、安くない買い物だよ？　経費で落ちるってわけでもないし」

春香「誰かさんといっしょで、意外とお調子者なところが可愛いんだよね、可憐ちゃん」

雪歩「え？　誰かさんって？」

春香「さあね。それで、そのあとは？」

雪歩「次のお店では可憐ちゃんが私の服を選んでくれて………えへへ。次、またオフが重なった時はお互いに今日買った服を着て出かけようねって」

春香「幸せ者だねー」

雪歩「ふふっ、思い出に残る休日でしたあ」

春香「ふうん………」

雪歩「はい、これ。春香ちゃんにも思い出のおすそ分け」

春香「え？」

雪歩「可憐ちゃんと話し合って、買ったの。リボン。春香ちゃんだったら、たくさん持っているのは違いないけど……でも、これ、きっととっても似合うと思う」

春香「雪歩……」

雪歩「可憐ちゃんもこの場にいればよかったんだけど。予定が合わなくて。はるかれされてもあれだから、私から渡しておくね」

春香「最後の一言はともかく、リボンありがとね。大切にするよ。……今、つけてもいいかな？」

雪歩「いいよ。なんだか照れくさいけど……ふふっ」

春香「そうだ！　なんだったら今じゃなくて、今度、3人のオフが重なった時にさ、」

雪歩「おおっと！　私、急用を思い出しちゃいましたあ！」

春香「あっ、こら、雪歩ー！」

べつの日

可憐「雪歩ちゃんの、したり顔っていいですよね……！」

春香「急だね」

可憐「春香さんなら、わ、わかってくれますよね？」

春香「わかるか、わからないかで言えばー……」

可憐「言えば？」

春香「わかっちゃうよね。むしろ10年以上前から知っている気さえするよね、うん」

可憐「な、なるほど？」

春香「で？　何かまたきっかけとなる出来事あったんでしょ？」

可憐「は、はい」

春香「好きなだけ話してみれば？　いいよ、春香、そういうの慣れているから」

可憐「あ、ありがとうございます。この前、バラエティー番組の収録があって………」


39分後

可憐「………そのときの雪歩ちゃんも、素敵で！　と、年上だってわかっているんですけど、なんだか、こう、ぎゅっと抱きしめたくなっちゃって……♪」

春香（ほんとに好きなだけ話された……！）

春香「まぁ、うん。雪歩ってさ、誰かさんと同じで、存外、お調子者なところあるよね。そこも雪歩の魅力の1つっていうのは、わた、春香さんも重々承知しているよ？」

可憐「？　はい」

春香「なんなんだろうね。普段、自信がない子が見せるからいっそう威力が増すってやつなのかな」

可憐「ど、どうなんでしょう……」

春香「あとちなみに先んじて言っておくと、雪歩も可憐ちゃんも、他にたとえば……上目づかいだったり、ちょっと拗ねたりしている表情もたまらなく可愛いよね。語る価値大有りだけど、割愛させてもらうね」

可憐「え、えっと……」

春香「で、そろそろ私の番じゃない？」

可憐「え？」

春香「次は『春香ちゃん（さん）の○○可愛いよね』話が展開される流れだよね？」

可憐「えっ。あの、その……」

雪歩「うーん……それは私と可憐ちゃんとで2人きりのときに、わりとしているからなぁ」

春香・可憐「！？！？　雪歩（ちゃん）、いつからそこに！？」

雪歩「春香ちゃん、気持ちはわかるけど、健全なゆきかれSSには、はるかわいいは不要かなーって」

春香「なんだそれ？！　話が違うよ！！」

可憐「あ……ツッコミをする春香さんも、いいですよね♪」

雪歩「うんうん。けど、公式じゃ、ほとんどない気もするけどね」

春香「もういいやい！　2人で勝手にイチャイチャしてなよ！　春香さん、帰る！」

雪歩（唐突な拗ね春香ちゃん！？　くっ、なかなかの威力ですぅ！）

可憐「あわわ……ど、どうすればいいですか、雪歩ちゃん……！」

雪歩（こっちは、おろおろ可憐ちゃん！？　お持ち帰りしたいですぅ！」

春香「雪歩、途中から声に出ているよ……」

可憐「もう、雪歩ちゃんったら……///」

雪歩「よ、よーしっ！　それじゃあ、はるゆきもゆきかれも堪能しちゃいますぅ～～！！！」

春香「わがままか！」

おしまいです……！

おまけ


別の日

雪歩「ねぇ、春香ちゃん、春香ちゃん」

春香「今度は何？」

雪歩「あのね、可憐ちゃんのね………」

春香「うん」

雪歩「キス顔っていいよね」

春香「え？」

雪歩「する前もドキドキしているのが伝わって好きなんだけど、した後の、とろんとした表情はもっとグッとくるよね」

春香「え？」





春香「え？」

おしまいですぅ！

ちゃんと書いたら、もっと長くなるネタでしたが時間と体力の都合上、ここまでにしておきます。

ちょっと待て、そこで止めるのか⁉︎
チューしているところを詳しく！

>>22
落ち着け。きっと次のSS、おそらく質量共に今までで最大級のSSでじっくり濃厚に描写してくれるに違いない（違いない）

熱中症って言わせたんだろうなぁ…。

ゆきかれもゆきはるもはるかれも最高かよ

板挟みはるるんで草
ドヤ可憐ってはるかれのイラストであったわね