ミリオンライブ創作落語「偽セレブ」
1 : ボス   2022/02/24 15:27:32 ID:b0bEVZxNXc
えー、私、南無子亭美里蔵でございます。
皆様方も生きている限り嘘や隠し事の一つや二つあるかと存じますが、せっかく隠し事をするなら人を悲しませないようにしたいもんです。ワイドショーではやれ不倫だ汚職だと毎日騒がれていて脳天気なあたくしでも気が滅入ってしまいます。かくいうあたくしもこの間家内に内緒でゲームに課金していたのをバレて大目玉を食らいましてね。いやはや、これを期に隠し事はやめようやめようと思うのですが、なかなかそうはいかないのが人の悲しい性です。これはアイドルも同じで、嘘を付き続けて引っ込みがつかなくなったアイドルがおりました。
2 : Pサン   2022/02/24 15:28:34 ID:b0bEVZxNXc
そのアイドル、名前を「二階堂千鶴」と言いました。10数年前に一世を風靡したアイドルですのでご存じの方も多いかもしれませんが。まぁ名前がなんともお嬢様然としております。で、彼女は過去にそのお上品な名前と雰囲気でセレブと勘違いされて以来、生来の見栄っ張りも相まってセレブを騙り引っ込みがつかなくなってしまったんですな。それはアイドル事務所に来てからも変わらず、当初はあたくしもすっかり信じ込んで、セレブアイドルとして売り出したのです。そんな彼女の正体は下町商店街の肉屋の娘でした。まぁ肉屋もピンキリですので、セレブの肉屋なのかもしれませんが。
3 : プロデューサーちゃん   2022/02/24 15:28:53 ID:b0bEVZxNXc
さて、ここまでの話をきいたらその千鶴はさぞかし性悪女と思われるかもしれませんがとんでもございません。彼女はその見栄っ張り以外は品行方正で努力家・気配り上手で家庭的とまさに世の男性の描く理想の女性といっていいもんでした。年長者としてよく年下のアイドルの面倒を見てくれてましたし、なんならプロデューサーの面倒を見ていたくらいでございます。しかし嘘はいつかバレるもの。千鶴にもその時が訪れました。
4 : プロデューサー   2022/02/24 15:29:19 ID:b0bEVZxNXc
さて、ある日のことプロデューサーはたまたま出先からの仕事帰りに商店街へ立ち寄りました。その商店街はなんと申しますか、下町風情のある人情溢れた町並みでございまして。そんなときふと1件の精肉店に目がいきまして。そのときプロデューサーは何度も目を擦りました。その店先に立っていたのは我がプロダクションが誇るセレブアイドル、二階堂千鶴だったのですから。プロデューサーは再三悩んだ挙げ句に
「千鶴か?」
と彼女に声をかけました。すると
「…プロデューサー?」
顔を真っ青にしたセレブがそこにはおりました。
5 : そなた   2022/02/24 15:29:44 ID:b0bEVZxNXc
しばらくの沈黙を破ったのは店の奥から出てきた品の良さそうな妙齢の女性でございました。
「あら、ちーこ?お知り合い?」
と千鶴に声をかけます。すると千鶴は真っ青な顔のままに
「ちょっと…」
と言いながら店の奥に妙齢の女性を連れて消えていきました。数十秒後でしょうか。その女性は店先から出てきてこう言いました。
「いつも千鶴お嬢様がお世話になっております。私、二階堂家で使用人をしていた者でございます。千鶴お嬢様は社会勉強のために私が退職してから経営を始めた精肉店で住み込みで働いているのです」
6 : レジェンド変態   2022/02/24 15:30:08 ID:b0bEVZxNXc
えぇ、鈍感で評判のプロデューサーもそんなのは見え透いた嘘だと察しがつきました。しかしここはあえてその話に乗ることに致しました。真偽はどうあれ、彼はセレブの名誉を守れればそれはそれでよかったのです。
「そうでしたか。いえ、いつも千鶴さんには助けられております。」
「そうなの、ちー…お嬢様は765プロさんでもちゃんとやってるのね。そうだ!そろそろお店閉めるからよかったらうちのご飯を食べていってくださいな。」
この元使用人、品はいいがどうにも押しは強いようで、あれよあれよとプロデューサーは部屋に案内され、夕食に同伴することになりました。
7 : プロちゃん   2022/02/24 15:30:52 ID:b0bEVZxNXc
夕食のメニューは白米に味噌汁、生姜焼きにレタスサラダでした。
「さぁ、腕によりをかけました。高級食材で作ったセレブディナーです」
セレブはそんなこと言わないだろう、とプロデューサーはいいたくなりましたが
「ええ!見た目は普通ですがとてもいいお肉を使ってますのよ!」
と千鶴も言うのだから、突っ込みを入れるのは野暮というものでございます。プロデューサーはそのセレブディナーを頂きました。なんといいますか、お袋の味がしてとても暖かな気持ちになったのは言うまでもございません。すると、恰幅のいい男性が居間に入ってきました。
「おう、帰ったぞー。なんだ、彼氏か?」
その後の流れは妙齢の使用人の時と同様でございます。
8 : プロデューサー殿   2022/02/24 15:31:13 ID:b0bEVZxNXc
「お嬢様がお世話になっとります!私も二階堂家で働いていたものでございます!」
「こ、こちらこそ娘さ…千鶴さんにはお世話になっております。」
豪快なお父さ…もとい使用人の方だなと思いながら握手を交わしました。
「ところでプロデューサーさん!お酒はイケるクチかい?」
やはりこの流れになりました。しかしながらプロデューサーは、お酒に関しては事務所の同僚との付き合いでかなり自信がありまして、このお誘いに喜んで乗りました。
「おーい母さん!いつもの頼むわ!」
出てきたのは、なんとも見慣れたラベルの瓶ビールでございました。
9 : プロデューサー殿   2022/02/24 15:31:40 ID:b0bEVZxNXc
「これは普通のビールに見えるでしょうがね、実は中身は最高級のビールなんですよ!」
千鶴の顔をちらっと見やるともう真っ青を通り越して蒼白になっておりました。しかし瓶ビール…もとい高級ビールは好物ですのでありがたく頂いたのです。飲み慣れたアのつくビールに似た味を感じましたがそれはきっとプロデューサーが味覚音痴だったからなのでしょう。しばらくお酒を飲み交わしていると、今度は20代半ばくらいの容姿端麗な男性が玄関から入ってきました。
「ただいまー。ん?彼氏さん?」
このあとは以下同文でございます。
10 : 魔法使いさん   2022/02/24 15:32:18 ID:b0bEVZxNXc
「いつも千鶴お嬢様がお世話になっております。私は千鶴お嬢様の専属執事をさせていただいているものです。千鶴お嬢様の社会体験に私も同行しているのでございます」
その若い男性はニヤつきながら、笑いをこらえながらそう言いました。プロデューサーも、もうここまできたら最後まで付き合おうと思い
「ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ千鶴さんにはお世話になっています。」
と返しました。その後しばらく談笑して、ふとこう提案してきたのです。
「千鶴お嬢様の成長アルバムがあるのですが、ご覧になられますか?」
セレブはもう目が死んでおりました。
11 : 兄ちゃん   2022/02/24 15:32:40 ID:b0bEVZxNXc
「これが保育…もとい幼稚舎の写真ですね」
アルバムには、どろんこになりながら走り回る千鶴、七五三で不機嫌そうに写真に収まる千鶴、唐揚げを美味しそうに頬張る千鶴など、様々な千鶴が写っておりました。なんとも立派なセレブぶりでございます。その中でもひとつ目に止まったのが、おもちゃのマイクを手に楽しそうに歌う幼い日の千鶴でございました。
「昔、歌うことに凝っていた時期がありましてね。まさかこうして時間を経てまた千鶴お嬢様のお歌が聞ける日が来るとは思っていませんでした。本当に感謝しています。」
その言葉は、茶化した雰囲気のまったくない真っ直ぐな言葉でした。
12 : そなた   2022/02/24 15:33:02 ID:b0bEVZxNXc
「もう!降参ですわ!プロデューサー、この際なので洗いざらい白状いたします!」
ついに自責の念に耐えられなくなったのか、千鶴はそう切り出しました。しかし、プロデューサーは
「いえ、千鶴さんは立派なセレブアイドルですよ。例え他の人が認めなくても、俺はずっとそう思います。」
と返しました。今にして思うとなんともこっ恥ずかしい話でございます。すると、使用人もとい家族の皆様方も笑って千鶴の方を見ていました。今日一日青い顔をしていたお嬢様は、ようやく顔を真っ赤にしたのです。
13 : プロデューサー君   2022/02/24 15:33:27 ID:b0bEVZxNXc
と、言うようにどんな理由があれど嘘や隠し事を続けると手痛いしっぺがえしに会いますよというお話でした。皆様はこうならないように気をつけて頂きたいものです。さてこの千鶴という女性今後どうなったかというとそのプロデューサーと二人三脚でトップアイドルになりました。そして今は二児の母としてよくやってくれています。しかし家内もこんな大きな隠し事をしていたのだからゲームの課金くらい大目に見てほしいものでございます。やはり家内は、おっかない。
お後がよろしいようで、ありがとうございました。
14 : そこの人   2022/02/24 15:34:23 ID:b0bEVZxNXc
終わりです。見様見真似で作ったので色々と拙い部分はありますがご容赦ください。見ていただきありがとうございました。
15 : 魔法使いさん   2022/02/24 16:07:59 ID:9BpSjyNN6Y
落語の体を借りたただの惚気じゃないか!
とても面白かったです
16 : 兄(C)   2022/02/24 16:08:54 ID:lRkYpXpDYM
おつ!
おもしろかったー
17 : 箱デューサー   2022/02/24 16:52:35 ID:H0CLubpNUw
あれ?俺いつの間に落語家になったんだ?
18 : プロデューサーさま   2022/02/24 17:02:11 ID:jgJjCe9F7.
面白かった


妙齢が誤用されがちなことはもっと広まってほしいなとひとつだけ残念に思った
19 : Pさん   2022/02/24 20:24:02 ID:qfrwFi3eVo
面白かった。乙!

ここの千鶴さんPは発想や切り口が多様で面白い(幼馴染み概念とか年上に可愛がられる千鶴さんとか)
たまにちょっとおかしなのもあるけど…(ミリシタ時空に女子として転生して千鶴の夢女になりたいとかセレブ生まれのTさんとか)
20 : P様   2022/02/24 22:23:20 ID:rzSKygCA7M
これはまた面白いものを見せていただきました
オチが惚気話になるのも含めて好きなお話ですな
21 : ごしゅPさま   2022/02/25 06:16:41 ID:BX8AY92gv.
千鶴さんが商店街の肉屋の娘? ハハハ! 君は何を言っているんだい?(面白かったです)
22 : 兄ちゃん   2022/02/25 12:20:54 ID:MiBVqGVp6E
めちゃくちゃ良い…
23 : 我が下僕   2022/02/25 16:09:23 ID:iBSrc/R8VY
落語ときたか…
いいね!
24 : ご主人様   2022/03/06 21:48:18 ID:NI26o9y/oI
面白かった!!文字がいっぱいで読み始めるまで1週間かかったけどもっと早く読めば良かった
25 : EL変態   2022/03/07 12:28:45 ID:yvMaYTCOwM
なかなかセレブにふさわしい丁寧な作りで
ありがてぇありがてぇ
26 : あなた様   2022/03/09 21:09:50 ID:s7s97XELMU
落語とはな〜
面白かったです!
27 : 貴殿   2022/05/12 13:02:50 ID:3qK.Y86bDw
力作でござんすね
28 : Pちゃま   2022/05/12 17:39:00 ID:eTluexHpIs
幼少千鶴さんのアルバムは重要文化財に指定して国が管理するべき
29 : あなた様   2022/05/12 18:08:15 ID:fTJAszlNT.
ニヤニヤが治らんぞどうしてくれる
名前 (空白でランダム表示)
画像 ※JPEG/PNG/GIFのみ。最大サイズ合計: 8MB



画像は3650日で自動削除する
コメント スレをTOPへ (age)

※コメントは15行まで
※画像などのアップロードの近道 : http://imgur.com/
※コメント書き込みの前に利用規約をご確認下さい。

- WebPatio -