エミリー「ふぅ。やはり日本の夏は暑いです。いえっ、大和撫子としてこれぐらいで音を上げるにはいきませんね」

美也「おはようございます～、エミリーちゃん。おや～、汗を掻いていますね～」

エミリー「おはようございます。最寄りの駅から歩いてきただけでなのに、じんわりと掻いてしまいました」

美也「ひなたぼっこも、ほどほどにしないといけませんな～。こんがりしてしまいますよ～」

エミリー「そうですね。途中、炎天下を走り回っている海美さんを見かけましたが……」

美也「熱中症には気をつけてほしいですな～。エミリーちゃん、よかったらお隣に座って下さい～」

エミリー「ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」

美也「ふっふっふ～、さっそくこれが役に立つときがきましたぞ～」ｺﾞｿｺﾞｿ

エミリー「それは―――扇子ですか？」

美也「はい～。実は昨日、朋花ちゃんから頂いたものなんですよ～、むふふ♪」ﾊﾟｯ

エミリー「Wow！　柄は……数羽の蝶々だけで残りは空白だというのに、それで見事に世界が完結していますね。素敵でしゅ！」

美也「そうなんです～。これでもうわざわざ、熱い中でひらひら舞う蝶々を追いかけなくて済みます～」

エミリー「そ、そうですね」

美也「では、エミリーちゃん。ぱたぱたぱたっ～♪」

エミリー「あの！もったいないです！朋花さんからのせっかくの贈り物であるのに、私なんかを扇ぐのに使うだなんて」

美也「幸せをおすそ分けしたくなりまして～、ついでに涼んでいただければ、私も嬉しいですな～」

エミリー「ああっ、朋花さんに勝るとも劣らぬ慈愛の精神、そしてこれこそが真の大和撫子の心意気なんですね」

美也「くるしゅうない、よきにはからえですな～」

エミリー「それはちょっと違うような。いえ、とにもかくにも美也さんの風雅さはぜひとも見習いたいです」

美也「風雅……。なるほど～。それでは今より私は、宮尾みやびです～」

エミリー「えっ。えっと、名前を変えずとも充分にそのままで雅であると思います」

美也「お～！たしかに宮尾と書いて『みやび』と読めますな～。さすがエミリーちゃんです～」

エミリー「今のはそういう意味での指摘ではないのですが」

美也「それならいっそ、みやびみやびと名乗ればよいでしょうか～」

エミリー「それだと自己主張が強く、かえって奥ゆかしさが損なわれていないでしょうか」

美也「む～ん……一筋縄ではいきませんな～。それっ～、ぱたぱたぱたっ～」

エミリー「涼しいだけじゃなくて、なんだかくすぐったいです♪」

美也「蝶や蜂に蜜を吸われる花の気分でしょうか～」

エミリー「ど、どうなんでしょう」

美也「エミリーちゃんは今日も向日葵みたいに可愛いですな～」

エミリー「まぁ！美也さんったら。ふふふっ、照れてしまいます」

美也「あるいはマリーゴールドやガザニア、黄色のハイビスカスです～」

エミリー（髪色からの連想なんですね）

雪歩「ただいま戻りましたぁ。あ、美也ちゃん、エミリーちゃん、おはよう」

エミリー「おはようございます、雪歩さん」

美也「どうも～、宮尾・雅・美也です～、むんっ」

雪歩「え！？」

美也「むふふ♪」

エミリー「えっと、これはですね……」

雪歩「ど、どうもー、萩原・ちんちくりん・雪歩ですぅ！」

エミリー「雪歩さん？！」

雪歩「なんだ、そういうことだったんだね。びっくりしちゃった」

美也「すみませんでした～。ではお詫びに、ぱたぱたぱたぱた～」

雪歩「ふふっ、ありがとうですぅ。扇子だなんて、たしかに風流だね」

エミリー「ですよね！」

雪歩（ただ……電車の中なんかで中年男性が扇いでいる光景もわりと目にするよね。ううん、黙っておこう）

美也「雪歩さんも熱中症に注意してくださいね～。穴掘りに夢中になりすぎてはいけませんな～」

雪歩「いや、そんなのめり込むような趣味の類じゃないからね？」

エミリー「和の精神を貴ぶ雪歩さんも扇子をお持ちなのではありませんか？」

雪歩「え？あー……。こ、こういうのだったら」

美也「お～、文明の利器ですな～」

エミリー「携帯式扇風機ですね。近頃は持ちながら歩いている人もよく見かけます」

雪歩「そうだね。ネッククーラーも流行っているよね。遠目からだとヘッドフォンかな？なんて思うこともありますぅ」

美也「はい～、縁起をかつぐために白い蛇を首に巻いているのかと勘違いしたことがありますよ～」

雪歩「響ちゃんでもぎりぎり人前でしないと思うよ！？」

雪歩「そういえば、うちの和室の1つで、床の間に大きな扇子を飾っているよ」

エミリー「扇子は形が末広がりであることから、明るい将来、繁栄や発展を願う縁起物でもあるんですよね」

美也「言われてみれば、門松やしめ縄と並んで、正月飾りに使われることも多いですな～」

雪歩「う～ん……考えてみれば扇子って不思議かも。たとえば茶道でも用いられているよね」

エミリー「そうなのですか？」

雪歩「うん。私も詳しくはないんだけど、茶扇子って言って、涼を取るんじゃなくて礼式上の役割があるんだとか」

美也「なんと～」

雪歩「花を載せたり、和歌を書いて贈ったりするなんて場面も、古典を読むと登場するよね」

美也「ふむふむ。単なる道具以上の意味があるというわけですな～」

エミリー「勉強になります」

雪歩「変わったところだと香木の白檀で作った扇子があって、いい香りがするんだって。可憐ちゃんが前に話していたの」

美也「いい香りのする扇子ですか～、面白そうですね～。時季にぴったりの草花の匂いがするのはないんでしょうか～」

雪歩「どうだろう？庭に面した縁側で扇げば自然と感じられそうだけれど」

エミリー「扇子というのは、空間との調和にも一役買うのですね。奥深いです」

雪歩「それと、ある意味で私たちと関係深いのは落語や能楽で使われる扇子かも」

美也「そういった場では、何かに見立てるはたらきもあるんですよね～」

エミリー「伝統芸能のうちでも、舞台演出の小道具として扇子は重要ということですよね」

雪歩「舞台演出って話なら、この中だとエミリーちゃんが一番実感あるんじゃないかな？」

エミリー「あっ！花咲夜として、朋花さんと紬さんといっしょに上がった舞台で使いました！」

美也「『百花は月下に散りぬるを』ですな～。ちんとんしゃん～」

エミリー「思い出すだけで今なお胸躍る、煌びやかで忘れがたい素晴らしい経験です」

美也「観ていた側の私たち、そしてファンの人たちにとってもそうだと思いますよ～」

エミリー「そうであると嬉しいです。また３人でのお仕事をいただけたらよいのですが」

雪歩「公演のことで思い出したけれど、今度エミリーちゃんは京都でのイベントに出演するんだよね」

エミリー「はいっ！そのための新曲の稽古中なんです」

美也「志保ちゃんが、歌詞の意味を掴むのが今回はいつも以上に難しいと話していました～」

雪歩「へぇ。どんな曲なの？」

雪歩「―――ヤンデレ？えっと、聞いたことあるような、ないような」

美也「病気だったら治さないといけませんな～」

エミリー「言われてみれば、たしかにそうかもしれませんね。でも……」

雪歩「でも？」

エミリー「恋の病なんて言葉がある程度には、恋心はもとより病的なのかなと」

美也「お～、これは一本とられましたな～」

雪歩（恥ずかしそうに顔を赤らめるエミリーちゃん、可愛いなぁ）

雪歩「それはそうと、ふたりとも、喉は渇いていない？水出しの緑茶が給湯室の冷蔵庫にあるから持って来るね」

美也「そういうことならお手伝いしますよ～」

エミリー「ここは若輩者である私が！」

雪歩「いいから、いいから。美也ちゃんは引き続き、エミリーちゃんを扇いであげていて」

美也「ぱたぱたぱたっ～」

エミリー「あ、あの、冷房が効いていますから、もうそれほど暑くは……」

美也「くるしゅうない～、ちこうよれ～。むふふ♪」

雪歩「ふふっ。それにしても本当に綺麗な扇子だよね。やっぱり天空橋さんはセンスがあるなぁ………あっ」

エミリー「もしかして今のは掛詞ですか？」

美也「雅ですな～」

雪歩「ち、ちがうの！うっかり口からついて出ただけで！うう、穴を掘って埋まっていますぅ～！」

エミリー「雪歩さん！？」

美也「これまた伝統芸能ですな～」



おしまい

以上です
雪歩・美也・エミリーの３人はポプマスでユニット組ませていたのを思い出します
公式でユニットは組んでいませんが、相性はよくて和みますね

朋花の固有モーション、探したらお正月に撮ったのがあったのでこちらも貼っておきますわ