サイネリア「なによ？急にタブレットで検索なんかしちゃって」

ありす「ふと気になったんです。……すてきな由来ですね」

サイネリア「ハア？もしかしてアタシが花言葉なんてクサいもんアテにして名前決めたと思ってる？」

ありす「違うんですか？」

サイネリア「違うわよ！たまたまネットで検索して語呂が良かったから採用しただけ！深い意味とかないから！」

ありす「そうですか……」

サイネリア「まーぶっちゃけクソダサい本名と違ってればなんでも良かったんだけどね」

ありす「……嫌いなんですか、自分の名前」

サイネリア「もうソバカスが粟立つくらい嫌いね。てか、アンタもそうなんじゃなかったっけ？」

ありす「昔はそうでした……けど、今はそんなことないです」

サイネリア「ふーん」

ありす「あ、そろそろ番組始まりますよ」

サイネリア「ヤバッ！？テレビテレビ……ちょりゃっ！」

ﾋﾟｯ


≪今年限りでのアイドル活動休止を発表した水谷絵理さん。当番組取材班は6カ月に渡る密着取材を敢行し、その最後の姿をカメラに収めました≫

≪異例のデビューから芸能界を駆け上がるまでの軌跡、そして引退まで……“アイドル水谷絵理”の全てをご覧ください≫

サイネリア「なーにが引退よ！歌とダンスやめるだけで芸能界には残るっつーの！マルチタレントになるだけだっつーの！テキトーなナレーションね～」

ありす「でも……本当に辞めちゃうんですね。アイドル」

サイネリア「センパイはどこでだって活躍できるわよ。もう楽曲のプロデュースとか本の出版とか始めてるけどめっちゃ評判いいんだから」

ありす「はい。本当に多才で、すごい人だなって思います。……けど」

サイネリア「けど？」

ありす「サイネリアさんはそれで良いんですか？」

サイネリア「良いも悪いもないでしょ。センパイが自分で決めたコトなんだから。そもそもアタシはセンパイがリアルアイドルするの反対だったし」

ありす「本当に？今でもそう思ってますか？」

サイネリア「ああもう、テレビに集中できないから後にしてくんない？」

ありす「……すいません」

――――――


――――


――

≪最も信頼するパートナーを失った絵理の手元に残されたのはひとつの楽譜。二人の夢の残滓。その名は“プリコグ”――≫

サイネリア「……」

ありす「……」


ありす「少し、いいですか？」

サイネリア「……なに」

ありす「私、自分の名前が嫌いでした。子供っぽい名前だって、適当につけられたんだって、両親は私の事その程度にしか考えてないんだって、ずっと思ってて」

サイネリア「……」

ありす「でもそうじゃなかった。両親は私に、国際社会でも通用する人間になって欲しいという願いをこめてこの名前をつけてくれてたんです。それがわかったとき、すごく嬉しかった……」

サイネリア「つまりアタシにも自分の名前好きになれって、そう言いたいワケ？」

ありす「そうじゃないです。これはあくまで私の物語で、私とサイネリアさんは違う人間ですから。押し付けるつもりなんてないです」

サイネリア「じゃあ何が言いたいのよ」

ありす「私、嬉しかったけど……もっと早く両親に名前の由来について聞いておけば良かったなって思うんです」

ありす「いえ、一応聞いたことはあったんですけど、その時ははぐらかされちゃって。私も自分が名前のことで悩んでいるのを打ち明けるのが怖くて、言いたいことをずっと胸の奥に仕舞い込んでいました」

ありす「一番側にいる人に言いたいことを我慢し続けるの、すごく……辛かった……」


サイネリア「……で？」

ありす「もう一度聞かせてください。絵理さんがアイドル辞めるの、本当にいいと思ってますか？」

サイネリア「さっき言ったでしょ。センパイが決めたコトに文句なんて無いわよ」

ありす「じゃあなんでそんなに思いつめた顔をしているんですか？サイネリアさん、テレビが始まってからずっと様子がおかしいですよ？」

サイネリア「なっ……！？」

サイネリア「あっ……アンタは知らないでしょうケドね、アタシはセンパイの最後のオーディションに立ち会ってたんだからね！？」

サイネリア「センパイ……負けたら辞めるって決めてて……結果聞いて、ステージから降りる時……本当に幸せそうな顔で……」

サイネリア「あんな……全部やりきった、思い残すこと無いって顔されてたら……何も言えるワケないじゃない……」

ありす「じゃあ、やっぱり絵理さんに言いたいことがあるんですね？」

サイネリア「っ！？……ウルサイッ！！！」


ｶﾞﾝｯ!


ありす「きゃっ！」

サイネリア「ガキンチョのくせに知ったような口きいてんじゃないわよっ！！センパイはっ！センパイはアタシのっ！」

サイネリア「ア、タ……シ……」


ありす「……」


サイネリア「アタシ、なにやって……」

ありす「だ、大丈夫です。ちょっとびっくりしただけですから」

サイネリア「……ごめん」

ありす「私こそすいませんでした。生意気なこと言ってしまって」

サイネリア「……今日はもう帰るわ。アタシ、どうかしちゃってるみたい」

ｶﾞﾁｬ


ありす「サイネリアさん！」

ありす「私、お二人のことを見て、本当に仲がいいなって……まるで私とプロデューサーの関係みたいだなって思ったんです」

ありす「大丈夫。どんなことがあっても、絵理さんはサイネリアさんのこと嫌いになったりしません」

サイネリア「どっから来るのよその自信」

ありす「私流の観察と分析から導き出された……カンです」

サイネリア「ハッ……なにそれ」



サイネリア「……アリガト」

ﾊﾞﾀﾝ

サイネリア（……センパイ……）


サイネリア（センパイは……アタシにとっての……）


サイネリア（……）

――――――


――――


――

【水谷家】

絵理「ここを……こうすれば……より効率が……」

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

絵理「え……？こんな時間に……誰？」

ﾋﾟｯ

絵理「！？」

ｶﾞﾁｬ!

絵理「サイネリア！？どうしたのこんな夜中に」

サイネリア「す……スイマセン……ちょっと、話したいコトがあって……」

絵理「……そう。とりあえず上がって」

ﾊﾞﾀﾝ

サイネリア「なんか、本がめっちゃ増えてません？」

絵理「うん。色々勉強してて……マネジメントの本とか、作曲の本とか……他にも沢山……」

絵理「今まで知らなかった世界に触れて……見たことも聞いたこともないような事について学ぶの……楽しい。もしかしたら、これが私の天職だったのかも？」

サイネリア「……そうデスか」

絵理「それで……話したい事って……なに？」

サイネリア「あー……その……」

絵理「もしかして、この前の返事？」

サイネリア「……ハイ」


サイネリア「センパイのプロデュースで……リアルアイドルデビューしないかって話……アタシ……やってみたい……デス……」

絵理「よかった……！私、プロデュースはまだ勉強中だけど……サイネリアが一緒なら心強いな……！」

サイネリア「……でも、条件があります」

絵理「え？」

サイネリア「センパイもアイドル続けてください。アタシと同じオーディションに出て、本気でアタシと戦ってください」

絵理「……どういう、こと？」

サイネリア「センパイ、言いましたよね。“サイネリアを必ずトップアイドルにする”って」

サイネリア「でも……ネトアの頃からずっと……アタシにとってのラスボスはセンパイなんデス！このまま一度もセンパイに勝てないまま、センパイのいない世界でトップになったってなんの意味も無いんデス！！」

サイネリア「センパイのこと尊敬してるけど！大好きだけど！このまま勝ち逃げされたくないっ！！」


絵理「サイネリア……」

サイネリア「センパイがメチャメチャ悩んでアイドル辞める決断したのわかります。見てましたから」

サイネリア「もう思い残すことなくて、気持ちよくマイクを置けたのもわかってます。ずっと見てましたから」

サイネリア「迷惑にしかならないのわかってるけど、それでも言わずにいられないからっ……！だから聞いてください！アタシのワガママ！！」


サイネリア「センパイ！アタシの――ライバルになってくださいっっ！！！」

絵理「……」

サイネリア「はあ……はあ……」

絵理「……」






絵理「………………ぷっ」

絵理「ふっ……ふふふ……あははは……」

サイネリア「セン……パイ……？」

絵理「ごめんね……でも……こらえるの……無理っ……ふふっ……」

サイネリア「な、なんで笑うんデスか……？アタシけっこうマジな覚悟で言ったんデスけど……」

絵理「だって……言ってること滅茶苦茶……アイドルと戦うプロデューサーなんて……聞いたことない……」

サイネリア「うっ……ごめんなさい……」


絵理「いいよ。……すごく、嬉しいから」

サイネリア「えっ？」

絵理「お願いなんかされなくても……サイネリアは、私のライバルだよ？……ネットアイドルの世界を離れてからも……ずっと、意識してたんだから……」

絵理「今の私があるのは、サイネリアのおかげ。競い合う相手として……親身になってくれる友達として……ずっと、側にいてくれたから……」


絵理「プリコグを完成させて……もう、アイドルを続ける意味はないって思ってたけど……」

絵理「……うん。私も、サイネリアと勝負したい。もっともっと戦いたい」


サイネリア「センパイ……！」

絵理「ああ、これから大変だなあ……アイドル休止宣言、撤回しなきゃいけないし……そもそもプロデューサーがオーディションに出るのってどんな手順踏めばいいんだろ……」

サイネリア「そこはホラ、センパイの頭脳とコネでちょえーい！って感じで！」

絵理「もう……ワガママな担当アイドル……」

サイネリア「それがアタシデスから！」

絵理「あまり目に余るようだと……教育的指導？泣いたり笑ったり出来なくしてやるかも？」

サイネリア「あ、そういうのはナシの方向で！」

絵理「ふふっ……ふふふふふ……」

サイネリア「エヘ……エへへ……」


絵理「……今夜、泊まっていかない？色々相談して……作戦立てなきゃ」

サイネリア「ハイっ！よろしくお願いシマスっ！！」

――――――


――――


――

～半年後～


TRRR……TRRR……ﾋﾟｯ

サイネリア『はいはい！チョー売れっ子アイドル（になる予定）のサイネリア様デスよ！』

ありす「ご無沙汰してます。あの、チケットありがとうございました」

サイネリア『あ、もう届いたの。絶対観に来なさいよ！アタシとセンパイのファーストマッチ！』

ありす「はい。楽しみにしています。あと、一緒に頂いたお花なんですけど」

サイネリア『ハア？なにそれアタシじゃないわよ』

ありす「え？でもとっても綺麗な白のサイネリアで……」

サイネリア『知らない知らない！悪いけど忙しいから切るわよ。ヒマになったらまた遊んであげるから。じゃ！』

ﾌﾟﾂｯ


ありす「……もう。ウソが下手な人ですね」

ありす（サイネリアは……厳しい冬の寒さにも負けず、たくさんの蕾を咲かせる……幸せの花）

ありす（いっぱい悩んで、絵理さんに気持ちを打ち明けて……幸せ、見つけられたんですね）

ありす（花言葉をクサい、なんて言ってたくせに……ちゃんと意識してるじゃないですか）

ありす（だって……白のサイネリアの花言葉は……）





ありす（“望みある悩み”ですもんね）

お　し　ま　い

バレバレかもしれないけど今回はポケモンやってたら思いついた話です

乙
最高だった。掛け値なしに

おのれ鈴木...私の絵理とイチャイチャ...おのれ...ｷﾞﾘｷﾞﾘ

>>36
嫉妬するくらいなら逃げ出さなきゃ良かったじゃないですか

>>36
オザリン…

>>36
「じゃ、もらってきマス！」

>>36
>>37
尾崎さんは最低最悪変態プロデューサーなんかじゃないよ！普通に良い人だから！トゥルーエンドが本番だから！

真面目な話、俺はトゥルーエンドで二人が見せた涙に感動して絵理Pになって今に至る人間なので一度ちゃんとした形でおざえり物を書きたいとは思ってるんですよね
今回はサイネリアがメインなので叶いませんでしたが、いつか必ず…

>>36
>>37
よりによって二人揃って最低最悪変態プロデューサーwww

ご存じだろうか…ありすも絵理もサイネリアより年下だということを…

禁断の変態3度打ち
ネタ抜きですごくない？

>>43
俺もだったわ…

絵理がサイネリアのプロデューサーになる結末自体は原作ゲームにもあるんだよね
やっぱDSのマルチエンド方式好きだわ…