樹里「なんだよ藪から棒に」

智代子「あのね、商店街のはずれに新しいお店がオープンしてるのを見つけたんだ。オーソンの横にある小道を進んだ先のとこ」

樹里「そんな道あったっけ……？つーか、チョコは今ダイエット中だろ。油多い料理はやめといたほうがいいんじゃねえの」

智代子「今日はチートデーだから大丈夫！むしろダイエット成功のために美味しいもの食べなきゃいけないんだよ。ね、行こ行こ！」

樹里「ふうん……ま、ちょうど小腹空いてるし、行ってみるか」

智代子「やったーー！」

――――――――


――――


―

【中華料理店“卡路里天堂”】

樹里「へえ。ホントにできたばっかって感じの店構えだな」

智代子「看板の難しい漢字が通好みっていうか、そそるよね！なんて書いてあるのかは全然わかんないけど」

樹里「しっかしこんな商店街から離れたとこに店出して客来んのか？もう少し歩いたら霊園だぞ」

智代子「まあまあ、大事なのは味だよ、味！」

ｶﾞﾁｬ
ﾁｬﾘｰｰｰｰｰﾝ

智代子「おお……中もすっごくいい雰囲気……」

樹里「でもよお、テーブルがたったの2ツっきゃねーぞ？なんだこの店は？」


店員「それは私がひとりでやってるからです」

樹里「あ、どうも。2人なんですけど」

店員「いらっしゃいませ！こちらのお席にどうぞ！」

ｶﾞﾀｯ

智代子「あの……私たちとそんなに歳変わらないですよね？本当にひとりでお店やってるんですか？」

店員「はい！小さい頃から実家の手伝いで仕事覚えさせられましたから、早めに自分のお店持ちたいなって。いざ開店したら大変なことばっかりでヒーヒー言っちゃってますけどね」

智代子「へえ……すごいなあ……」

店員「私、佐竹美奈子って言います。今日はお腹いっぱい食べてってくださいね！」

樹里「とりあえずメニュー見せてくれよ」

美奈子「メニュー？“菜單”のことですか？」

樹里「わざわざ中国語で言わなくてもわかるだろ」


美奈子「そんなもの……ウチにはないよ……」


智代子「えっ」

樹里「ハア？」

美奈子「当店のお品書きはただひとつ！“満腹地獄フルコォス”1000円のみとなってます！」

智代子「安っ！？」

樹里「けどそれならコース料理のメニューがあるだろ。どんな料理が出て来るのか見せてくれよ」

美奈子「いえいえ、料理の献立はお客様次第で決定するようになっているので作ってないんですよ」

智代子「お客様次第？どういうこと？」

美奈子「そうですね……あなたの場合ですと……」

ｼﾞﾛｼﾞﾛ

智代子「な、なに？」

美奈子「フゥーむ……あなた……昨日下痢しましたね？」

智代子「え？」

美奈子「それに寝不足です。4時間くらいしか寝てませんね？」

智代子「え？え？」

美奈子「ふむふむ。右足に水虫、虫歯が2本、左肩が凝ってて切れ痔に腰痛、花粉症も患ってますね」

智代子「そっ……その通りだよッ！全部当たってるーーッ！？」

樹里「マジかよ……病気を言い当てたことよりチョコの体がそんなにズタボロだったことが驚きなんだけど……」

美奈子「そして肝心の体脂肪率は……たったの27.54%ですか。カロリーの摂取がまるで足りていません」

樹里「いやそれは適正値じゃねーか」

美奈子「私は人々が幸せになるための料理を求めて中華料理の道に進みました。数千年の歴史ある中国大陸の人々というのは成人病と無縁で長生きです。それはハイカロリーな中華料理を食べているからなんですよ」

智代子「す、スゴイ！」

樹里「広い中国を十把一絡げにして話すのはちょっと乱暴なような……ハイカロリーが体に良いってのも意味わかんねえし」

智代子「細かいコトは言いっこ無しだよ！今日はチートデーなんだから！！」

樹里「お、おう……」

美奈子「では早速料理にとりかかりますね。満腹地獄フルコォス2人前で……」

樹里「あー、わりぃ。アタシフルコース食べるほど腹減ってなくてさ。1人前でシェアさせてくれねーか？金はちゃんと2人分払うから」

美奈子「可能ですが……その場合料理の効果で健康になれるのはどちらか1人になりますよ。私の料理はお客様に合わせて作るので」

樹里「効果……？よくわかんねえけど、それならツレ用に作ってやってくれよ。色々患ってるらしいし」

美奈子「かしこまりました。少々お待ちください」

智代子「ありがと樹里ちゃん。相変わらず優しいね」

樹里「あんな病状聞かされりゃな……とりあえず食べ終わったら病院行くぞ。水虫はほったらかしてるとヤベーことになるからな」

智代子「はあい……」

――――――――


――――


―

美奈子「わっほーい！お待たせしました！」

ﾄﾞｷﾞｬｯ!

智代子「へえ、トウモロコシの揚げ物かあ」

樹里「初っ端からけっこう量あるな……」

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
蛋黄焗玉米

《材料》
・トウモロコシ（粒）
・薄力粉
・砂糖（多めに）
・塩漬け卵黄

《作り方》
茹でたトウモロコシに薄力粉をまぶし、油で揚げる。
塩漬け卵黄と砂糖を混ぜた衣をフライパンに入れ、先ほど揚げたトウモロコシにからめる。
表面がカリカリになったら完成。

賞味時期……冷めても美味しい
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

美奈子「湖南省の定番料理なんです。ホントはデザートなんですけど、“今すぐ甘いものが食べたい！”っていう顔をされてたので」

智代子「なんという洞察力……この人、タダ者じゃないよ樹里ちゃん！」

樹里（チョコがそういう顔してんのはいつものことだけどな）

智代子「それじゃ、いただきまーす！」

ｻｸｯ

智代子「！？」


智代子「うっ……あっ……」


智代子「ァ　ン　ま　あ　あ　～　い　っ　！　！」

智代子「すごいっ！すごいよこれっ！止まんないよおおお！！！」

ｻｸｻｸｻｸｻｸ

樹里「確かに旨いけどさ……やけにオーバーなリアクションするな」

智代子「さくさくさくさくさくさくさく」

樹里「そういや、今虫歯できてんだろ？大丈夫なのか」

智代子「それがさあぁ～～っ！美味しすぎて虫歯の痛みなんて全然気にならないんだよお～～っ！例えるなら担当の演出が尊すぎて奥歯へし折れたことに気づかない的な感じでさあ～～」

樹里「マジかよ」

樹里（お客様に合った料理、ってのはこういうことか。チョコにとってはストライクの味なんだろうな）

樹里（……ん？）


樹里（チョコ……なんか顔が丸くなってきてないか……？）


樹里（目の錯覚だよな……？いくらなんでも食べてすぐ太りだすわけないし）

美奈子「さっ！料理を続けましょうか！」

ﾒｷﾞｬﾝ!

智代子「わあ、お鍋だ！」

樹里「献立の組み方がデタラメすぎるぞ……量もスゲーし……1人前にしといてよかったぜ」

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
酸菜燉排骨

《材料》
・豚スペアリブ（無ければバラ肉でも）
・酸菜（酸っぱくなるまで古漬けにした白菜）
・春雨

《作り方》
豚肉と酸菜を鍋に入れ、多めの水でじっくり煮込む。
旨味がお湯に溶けだしたら塩で味を調え、春雨を投入して完成。

賞味時期……熱いうち
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

美奈子「中国東北部の冬の定番！一家団欒であったまるのに最適な料理ですよ！」

樹里「一家団欒ならこの量でもいいんだろうけどさ……1人前なんだからもう少し加減を……」

智代子「気にしない気にしない。ぼやぼやしてると私が全部食べちゃうよ」

ﾊﾟｸｯ

智代子「ゥ　ン　ま　あ　あ　～　い　っ　！」

智代子「こっこれはああ～っ……！この味わあぁ～っ！」

智代子「漬物から出たグルタミン酸が豚肉のイノシン酸にからみつく旨さだ！！白菜が豚を！豚が白菜を引き立てるッ！」

智代子「そしてその旨味を吸った春雨がもう……！“ハーモニー”って言うのかなあ～！“味の調和”って言うのかなあ～！」

智代子「例えるなら森由里子の作詞に対する椎名豪の作曲！麻倉ももに対する原由美！私とお菓子！！」

樹里「最後のはチョコの願望じゃねーか」


智代子「あああ～～幸せえええーーーッ！幸せの繰り返しだよおーーーっ！」

ｶﾞﾂｶﾞﾂ ﾑｯﾁｬﾑｯﾁｬ

智代子「……あれ？」

樹里「なんだ？急に手止めて」

智代子「なんか……最近ずっとムズムズしてた水虫の痒みが……無くなったような……？」

美奈子「足に急激に脂肪がついたことで古い皮膚が押し出され、健康な皮膚に生え変わったようですね！垢がたくさん出てると思うので今夜お風呂でしっかり洗ってください！」

智代子「えっ」

ﾌﾟﾆﾌﾟﾆ

智代子「本当だ……私の足……マシュマロみたいになってる……」

樹里「ハアア！？」

智代子「すごいよ美奈子さん！料理で水虫を治しちゃうなんて！」

美奈子「えへへ、水虫の治療については研究を重ねましたから！日常的に激しいダンスしてると足が蒸れて水虫になりやすいんですよね～。痒みが気になって歌の方にも支障出ちゃうし」

樹里「いやいやいや！水虫と引き換えに肥満になってたらどっちみちダンスに支障出るだろ！意味ねーよ！」

智代子「樹里ちゃんは忘れっぽいなあ。私ダイエット中なんだよ？明日から運動して脂肪落とせばあっという間に健康体だよ」

樹里「ダイエットの意味理解してるか？そもそもそういう問題なのか？？」

樹里（なにかがおかしいぞ……この店も……料理も……スゴく“嫌な予感”がする……）

美奈子「さっ！料理を続けましょうか！」

ﾒｯｼｬｱｱｱｱ!

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
エマ・ダツィ

《材料》
・青唐辛子（たくさん）
・玉ねぎ（いっぱい）
・ミックスチーズ（ありったけ）
・バター（好きなだけ）

《作り方》
スライスした玉ねぎ、チーズ、バターを鍋に入れ、焦げつかない程度に水を入れて煮る。
玉ねぎに火が通ったら唐辛子を投入し、色が変わるまでさらに煮込む。
最後に塩で味を調えて完成。

賞味時期……熱いうちにご飯にぶっかけて食べる
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

樹里「ちょっと待て！こりゃブータン料理じゃねーか！」

美奈子「そうですよ」

樹里「そうですよって、ここ中華料理屋だろ」

美奈子「私にとって大事なのはカロリーが高いかどうか！それに比べたらどこの国の料理かなんて事は奥歯に詰まったクラッカーほどの価値もありません！」

樹里（なにを……言ってんだ……？……こいつ……）

智代子「あの……この料理の上に乗ってる緑のやつ……全部唐辛子……？」

美奈子「はい！ブータンの人々は唐辛子が大好きで、とくにこのエマ・ダツィは毎日食卓に並ぶくらいの人気料理なんですよ」

智代子「ああ……その……私、辛いのダメで……」

美奈子「そうでしたか。でも、私のエマ・ダツィは辛いのが苦手な人でも食べられるように作ってあるんですよ」

智代子「いや、美奈子さんの料理がどーこーいうってわけじゃなくて……」

美奈子「まあ、ダメならダメでお気になさらずに……。私、主菜（メインディッシュ）を作ってきますね」

ｽﾀｽﾀ

智代子「うーん……ちょっとだけなら……」

ﾍﾟﾛｯ

智代子「あ！ダメッ！辛い辛い！」


樹里「……」

ﾊﾞｸｯ
ﾓｸﾞ……ﾓｸﾞ……

樹里（うん。バターの脂で唐辛子のカプサイシンが中和されてるから見た目ほど辛くない……玉ねぎとチーズが溶けあって、そこにピリピリした辛さ……旨い）

樹里（そして……アタシの体はなんともならない）

樹里（さっき、チョコの足だけが急激に太ったように見えたけど……あり得ないよな。きっと最初からあんな感じにプニってたんだ）

樹里（つっても……この店に入ってから妙なことがたて続けに起きてるのは確かなわけで……長居はしないほうがいいよな）

智代子「樹里ちゃん、よく平気で食べられるね……」

ﾍﾟﾛｯ

智代子「ひーっ！辛い！無理っ！」

樹里「まあ、唐辛子そのものをバリバリ食べるって習慣は日本には無いからな。無理すんなよ」

智代子「ブータンの人はなんで毎日こんなのを食べてるの……？」

樹里「高い山の上にある国だから普通の野菜が育ちにくいんだよ。それで高地でも栽培できる唐辛子を野菜として食べる生活になったとかなんとか」

智代子「へ、へえ～」

ﾍﾟﾛｯ

智代子「いだだだだだ！し、舌が痛い！」

樹里「おい、食えないならやめとけって」

智代子「でもさあ～～私美奈子さんの料理の腕は認めてるんだよォ～～。あの人間違いなく天才だもん～～～」

樹里「いや……本人の前では言わないようにしてたけど、ここの料理なにかおかしいぞ。さっさと金払って帰った方が……」

智代子「……えいっ！」


ﾊﾞｸｯ！


樹里「！？」

樹里「なっ、なにしてんだ！？」

智代子「う……くうぅ～～～っ！辛い辛い辛い辛い！！！！」


智代子「だけど……なんかクセになるっていうか……いったん味わうと引き込まれる辛さっていうか……」

ﾊﾞｸﾊﾞｸﾊﾞｸ

智代子「例えると“豆まきの節分”のときに年齢の数だけ豆を食べようとしたらホントは自分が17歳じゃないことを思い出して気づいたら1袋食べちゃってたウサミン星人……って感じ！」


ｶﾞｯｼｭｶﾞｯｼｭｶﾞｯｼｭ


智代子「うわああああはっ腹が空いていくよお～～！食べれば食べるほどもっと食べたくなるッ！」

智代子「ン　ま　あ　～　～　～　い　！　！」

智代子「味に目覚めたァーッ！」


ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸ!!

樹里「ひっ！？チョコ……！？」

智代子「ムッシャムッシャ……グッパグッパ……ブフゥ〜」


ﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸﾌﾞｸ!!


樹里（目の錯覚なんかじゃねえ！体が風船みたいに膨らんで……急激に“太って”いるっ！！）

樹里（なんかの映画で……見知らぬ道に迷い込んだ家族が……料理を食べてブタになる話があったけど……こ……こんなことが！！）



樹里（……はっ！）

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

智代子『すごいよ美奈子さん！料理で水虫を治しちゃうなんて！』

美奈子『えへへ、水虫の治療については研究を重ねましたから！日常的に激しいダンスしてると足が蒸れて水虫になりやすいんですよね～。痒みが気になって歌の方にも支障出ちゃうし』

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝


樹里（そういえば、あの時……！）

美奈子「お待たせしましたー！本日の主菜を……」

樹里「ちょっと待て」

美奈子「はい？」

樹里「アンタさっき妙な事言ってたよな。“ダンスで足が蒸れる”とか“歌に支障が出る”とか」

美奈子「ああ、最初に注文を取ったときにお客様が水虫の病院に行こうか、とか話してたじゃないですか。それで……」

樹里「アタシは“水虫はほったらかすとヤベー”って言っただけだ。それがなんで歌やダンスに結びつくんだ？このどっから誰が見ても普通の“コーコーセー”にしか見えないアタシらが“芸能人”にでも見えたってそーいうわけか？あ？」

美奈子「え？そ、それは……」

樹里「しらばっくれやがって……テメーは知ってやがったな。アタシらがアイドルだってことを」

美奈子「お、落ち着いてくださいよ。私は……」

樹里「トボけてんじゃねえーーっ！テメー何者だ！何が目的だ！ああっ！？」

智代子「フゴゴッ、モガモガッ、ムググググ！」

樹里「チョコもいいかげん食うのやめろ！この料理絶対毒かなんか入ってるぞ！」

美奈子「毒っ……！？」



美奈子「……ひどい」

美奈子「私はただ……美味しいものを食べてもらいたくて……それなのに……毒入りだなんて……」

美奈子「う……ううう～あんまりだ……」


樹里「な、なんだよ……？」


美奈子「うわああああああん！あ　ァ　ァ　ァ　ん　ま　り　だ　ア　ア　ア　ア　！　！　！　」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛﾎﾞﾛ

――――――――


――――


―

美奈子「フーっ、泣いたらスッとしちゃいました。ごめんなさい驚かせちゃって」

樹里「いや……アタシこそ悪かったっつーか……ゴメン」

智代子「話をまとめるとお……美奈子さんもアイドルで……私たちのことは前から知ってたと……ブフゥ〜」

美奈子「今まで他の事務所の人と関わる機会があまり無かったから嬉しくなっちゃって。私のことは最後にバラすつもりだったんですよ」


樹里「でも、アタシらのこと知ってたならもっとこう……カロリー抑えめの料理にしてくれてもよかっただろ……」

美奈子「なーに言ってるんですか！みんなを幸せにするアイドルが！幸せの源であるカロリーの摂取を控えるなんて言語同断！便所のネズミのクソにも劣るくだらない考えですよ！」

樹里「いや、食べ過ぎて太ったら仕事に支障が……」

美奈子「そんな心配をしなきゃならないなら！間違っているのはカロリーではなくこの世界のほうです！アイドルになっただけで好きなものを食べられなくなることのほうが絶対おかしいっ！！」

樹里（グレート！やっぱりこの女やべーよ！病院に連れてくべきだぞコイツ！）

智代子「美奈子さん！私もその考えすっごくよくわかる！」

樹里「は？」

美奈子「わかってくれるんですね！やはりアナタには素質がある……！新鮮なラードのような“純白の精神”が！」

智代子「当たり前だよ！みんなが好きなものを好きなだけ食べられる世界のほうが正しいに決まってるもん！」

美奈子「一緒に探しましょう……“天国に行く方法”を……きっとそれこそが私たちの使命……」

智代子「うんっ！」

樹里「おいオマエら、なにバカなこと言って……」

智代子「“チョコデート・サンデー”！！」


ｽﾞｷﾞｭｳｳｳｳｳｳﾝ!!


樹里「うっ！？」

樹里（なんだっ……？急にっ……眠く……？）

智代子「ごめんね。私のスタンドで血糖値をいじらせてもらったよ。いくら樹里ちゃんでも邪魔させない」

樹里「スタン、ド……？なんだよ……それ……？」


智代子「さ、美奈子さん。料理の続きガンガン持ってきて！私もうダイエットとか気にしないから！」

美奈子「フフフ……こんなに腕が疼くのはプロデューサーさんを体重300キロにして以来だなあ……ちょっと待っててね。私の本気を見せちゃいます！」

ｽﾀｽﾀ


樹里「よせ……ちょこ……しょうき、に…………ぐふっ」ｶﾞｸﾝ

智代子「ブフゥ〜。楽しみだなあ～。何が出てくるのかなあ～」


カシャーン


智代子「ん？なにかが落ちたような音が……テーブルの下かな？」

ﾋｮｲ

智代子「あ、樹里ちゃんのスマホか」


智代子（……あれ？樹里ちゃん、お店に入ってから一度もスマホ使ってなかったよね……？ずっとカバンの中にしまってたはずじゃ……）

ﾊﾟｯ
PRRRRR……PRRRRR……


智代子「えっ！？勝手に電話が……！？」


ﾋﾟｯ
？？『もしもし』


智代子「！！！」

智代子（う……ウソだ……そんなわけない……）


ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ


？？『樹里？どうしたの何も言わないで……ねえ、聞こえてる？』

智代子（ありえない……でも……この声……ウソだ……ウソだっ！！）


ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ　ゴ


？？『……わかったわ。“返事もできない事態”ということね……今、事務所を出た』



智代子「こいつはーーーっ！“有栖川夏葉”ッ！！」

ｶﾞﾁｬ

夏葉「人をバケモノみたいに言わないでちょうだい」

智代子「ひいっ！？」

夏葉「ふうん……ちょっと見ない間にずいぶん……“鍛えなおした”のね……智代子」

智代子「ご、ごめんなさい……許して……」

夏葉「なにを怯えているの？私は怒ってなんかないわよ。いつも言ってるじゃない……食べ過ぎてもその分運動すればいいって」

夏葉「さて……そのブザマな体を元に戻すために必要なトレーニングは……」


①サンディエゴ～カンザスシティまでの砂漠横断ランニング
②ミシガン湖～ニューヨークまでのトライアスロン


夏葉「どちらが適切かしら？当ててごらんなさい」

智代子「ひ……ひと思いに①で……」

夏葉「NO」

智代子「じゃあ……②？」

夏葉「NO」

智代子「ええ？意味わかんない……はっ！」

智代子「ひょっとして……りょうほーですかああ？」

夏葉「YES」

智代子「もしかしてオラオラですかーーッ！？」

夏葉「YES！YES！YES！」

智代子「オーマイガーーーッ！」

夏葉「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ！」


夏葉「オラアァーーッッ！！」


ドッギャアアアアアアン！！！

――――――――


――――


―

智代子（目が覚めると、見知らぬ海岸をひた走っていた）


智代子（ただ走り続けるだけの生命体になり、砂漠、丘陵地、雪原……過酷な環境をさまよい続ける毎日……）


智代子（止まりたいと思っても止まれなくて。お腹が空いても走ることをやめられなくて。死にたいと思っても死ねなくて）


智代子（いつしか私は……考えるのをやめた……）

――――――――


――――


―

【～半年後～　ニューヨーク】

智代子「ハッ……ハッ……ハッ……」ﾀｯﾀｯﾀｯ

智代子「フーッ、フーッ、フーッ……」ﾀｯﾀｯﾀｯ




ﾌﾞﾛﾛﾛ……ｷｷｰｯ!

樹里「チョコっ！」

ｶﾞｼｯ

智代子「ジャマ……ワタシ……ハシラナキャ……」

樹里「もういいんだよ！終わったんだ！なっ？」

夏葉「ええ。よく頑張ったわね」

智代子「ハシル……ハシル……ハシル……」

樹里「しっかりしろよ。果穂も凛世も日本で待ってるんだからな」

智代子「……カホ……？……リン、ゼ……？」


智代子「…………」



智代子「……あっ」

智代子「樹里……ちゃん……夏葉ちゃん……」

智代子「う……うわああああああん！」ﾎﾞﾛﾎﾞﾛﾎﾞﾛ


樹里「おいおい、そんなに泣くなよ」

夏葉「仕方ないわよ。最初私たちの顔もわからなくなってたようだし」

樹里「まあ、確かに……。なあチョコ、自分が誰なのかわかるか？」

智代子「あ……う……ああ……」

智代子「そのだ……」


智代子「わたしの名前は……」



智代子「園田……智代子ですっ……！」

【ごはんSS祭　智代子「中華料理を食べにいこう」】

　　　完

～スタンド能力解説～

【園田智代子】
スタンド名：チョコデート・サンデー
破壊力-C　スピード-C　射程距離-E　持続力-B　精密動作性-A　成長性-C

ありとあらゆる「糖」を操るスタンド。
料理の味を自在に変えられるほか、自身に使用して体内にブドウ糖を追加し疑似ドーピングを行うこともできる。
応用力の高いスタンドだが、智代子はお菓子の味が物足りなかったときの味変程度にしか使わないことが多い。
劇中で美奈子の激辛料理に使わなかったのは料理人に対して失礼だと思ったから。


【有栖川夏葉】
スタンド名：ダマスカス・カクテル
破壊力-B　スピード-A　射程距離-A　持続力-C　精密動作性-B　成長性-B

自身と同じ肉体・思考を持つ分身を生み出すスタンド。
一度に出せる分身は1体のみで、一般人にも見える。
分身は瞬間移動に近いスピードで遠くまで行けるほか、殴った相手を強制的に命令に従わせる能力を持つ。
スタンドを解除すると分身が行った勉強やトレーニングの経験値が本体に還元されるが、ケガや疲労も一緒に吸収されてしまうため迂闊に長時間使用すると命の危険がある。


【西城樹里】
スタンド名：シャイノグラフィ
破壊力-なし　スピード-なし　射程距離-なし　持続力-B　精密動作性-D　成長性-A

スマホと一体化したスタンド。
本体がピンチになったときにスマホが自動で助けてくれる。
樹里にスタンド使いになった自覚がないためまだまだ発展途上。
成長すればカーナビで安全な場所に誘導してくれるなどの力を得るかもしれない。

お　し　ま　い

なるべく家庭で作りやすい料理をチョイスしたので興味ある方はどうぞ
本当は智代子と夏葉のスタンドバトルも盛り込むつもりだったのですが……いくらなんでも冗長すぎるので断念しました


ちなみに美奈子は一般人です

イッチ乙！

ふるえるぞラード！燃えつきるほどミート！！刻むぞ不整脈のビート！
一般人の美奈子がある意味一番怖い！
春雨好物なんで酸菜燉排骨は一度食べてみたいです

ジョジョネタだけでなく声優ネタも豊富で楽しめました
奥歯折ったのは智代子の同僚だろ！

>>36
ウサミンはピチピチの17歳JKです。いいね？

麻倉ももに対する原由美ってなんだ…？

怒涛の勢いで楽しめました！
しかし壁紙の変更もできないのにスマホ一体型のスタンド・・・？
苦手を克服するために無意識で発現したのか？

>>66
夏葉バケモンじゃねーか
そのステで成長性Bはいかんでしょ

>>66
樹里だけソロ曲じゃないのか…
能力は完全にペイズリーパークだね

おつ、ありがとー

プロデューサーすでにプロデュースできない状態じゃないかな…

半年間食事なしで走れるとか無意識にスタンドで糖分補給してたのかな

>>71
はらみーが異常もちょ愛者だから
なんなら相思相愛だから

ウサミンは豆2袋食べても足らなさそう

特に何の能力もないのに太らせるだけで虫歯と水虫を治す美奈子が
一番恐ろしいわ、いやこれちょこ先が異常なのか？

>>75
多分、摂取した糖を脂肪に変換せずに体に溜め込むとか無意識のうちにしていたんだろう
（体の機能として糖→脂肪に変換はできても脂肪→糖へ変える事はできない）

半年着続けたちょこ先輩の服、汗吸いまくってすごい匂いだよ絶対
これは嗅ぐべき

>>2で元ネタ特定余裕でした
美奈子に能力が無くても店の立地がやべーので怪現象が起きたとも考えられる
あの世に連れてかれなくて良かったね

シャニSSだと思って開いたらジョジョSSが始まっていた
何を言ってるかわからねーと思うが(ry

>>83
ごめん嗅ぐべきというのは変態すぎた
煮込んで出汁を取るべきだった