⋯⋯⋯⋯

静香「という訳でお願い！」

志保「……全然分からないんだけど」

静香「お願い！」

志保「久し振りにカフェに誘われたと思ったら、どうして突然お願いなの？」

静香「志保って普段からお家のお弁当作ってるんでしょ？」

志保「そうね。お母さんとりっくんのお弁当は、いつも作ってるかな」

静香「そうだよね！　じゃあお願い！」

志保「あんた、まさか料理を教えてって言うつもりじゃ」

静香「違うって。お弁当の作り方をね、教えてほしいの。お願い！」

志保「分かったからそんなに頼み込まないでよ。あ」

店員「失礼します。お待たせしました」

志保「折角、来たんだからパスタ、食べましょうよ」

静香「そ、そうね」

⋯⋯⋯⋯

静香「志保のシーフード、おいしそー」

志保「うん、素直に美味しい。塩っぱ過ぎなくて、具もふわふわ。食べる？」

静香「うん。私のカルボナーラも食べる？」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

志保「ほしい」ﾓｸﾞﾓｸﾞ

静香「はい。クリームがすっごく濃厚でいい感じよ。黒胡椒とも合うから」

志保「後で貰うわ。まず、そのままで食べたい」

志保「しつこくないクリーミーで美味しい……たまの外食もいいわね……」

静香「ほんと？　じゃあ、また誘うわ」

志保「いいわよ。頻繁に誘われても暇じゃないもの。大学もあるし」

静香「志保は6年過程でしょ？　まだ半分来てないじゃない」

志保「そんな呑気に構えてられないの。どんどん自分からステップアップしないと置いていかれるわ。それにね」

静香「？」

志保「たまにだから本当に楽しめるわ。色んな意味で」

静香「どういうこと？」

志保「分からないならいいわよ。セットのケーキもあるんだし、のんびりしてたら今日、終わっちゃうわよ」

⋯⋯⋯⋯

志保「で、静香はどんなお弁当を作りたいの？」

静香「んー美味しそうなの」

志保「そこで子供なみの発想になるのやめてよ」

静香「上手くイメージ湧かなくて……あっ」

志保「うどんって言ったら、この買い物やめて私、帰るわよ」

静香「そ、そんなことないって！　深読みしすぎよっ」

志保「どうだか。とにかく何でもいいからおかずの一品くらい言えるでしょ」

静香「卵焼き」

志保「うんうん。次は？」

静香「それからー……カラアゲ？」

志保「ふんふん。それで？」

静香「えーっと、ハンバーグ」

志保「静香のお弁当って、何が元になってるんだか」

静香「え、なんでよ！」

志保「まあ、いいわ。卵焼きと唐揚げはいいんじゃない？　後、私からも入れ知恵するわ」

静香「何か作るの？」

志保「さあて、これから買う材料で当ててみたら？」

⋯⋯⋯⋯

静香「志保、卵持ってきたわ！」

志保「はいはい。って、なんで缶詰めなんて持ってくるの」

静香「卵でしょ？」

志保「うずらの卵の缶詰めじゃない。これでどうやって卵焼き作るのよ」

静香「ほら、くるくる巻くじゃない？」

志保「……えっと、とにかく普通の卵持ってきて」

静香「普通って？」

志保「殻付きの卵よ。透明のパックに10個入りとかであるわよ。それと替えてきて」

静香「あ、そっちね！」

志保（そっちねって……え？）

⋯⋯⋯⋯

静香「志保！　カラアゲの材料、持ってきたわ！」

志保「なんで、いきなり冷凍食品の唐揚げなんて持ってきてるのよ！」

静香「何言ってるのよ！　これ以外にカラアゲの材料なんてないでしょ！」

志保「……」

志保「ね、静香。唐揚げってどうやって作るか知ってる？」

静香「もちろんよ。レンジでチンするんじゃない。簡単よね」

志保「……静香」

静香「ん？」

志保「悪いこと言わないからお弁当作りやめよ、ね？」

静香「ちょ、ちょっと待ってよ！　なんでそうなるの？」

志保「そうだ。静香にはうどんがあるわ。あなたはうどん一筋で生きていきなさい。それがいいわ」

静香「見捨てるようなこと言わないでよ！」

⋯⋯⋯⋯

志保「で、静香。あなた、料理はろくにしてないのね。うどん以外で」

静香「うう……あは、あはは……」

志保「してないならしてないって言ってよね」

静香「だって……絶対引かれるって思ったから」

志保「それは……ちょっとよ、ちょっと？」

静香「ほらぁ！　やっぱり！」

志保「ま、まぁ、いいんじゃない？　静香はアイドルとの両立もあるし、料理が出来なくたって」

静香「いや！　お弁当作りたい！」

志保「……駄々っ子か……。まあ、乗りかけた船だし、最後まで付き合ってあげるわ」

静香「ほんとっ！　志保、ありがとーっ！」

志保「そうと決まったら材料さっさと買って……静香の家でいいよね？」

静香「あっ……今日はお父さんがいるから、避けたいなぁ」

志保「じゃあ、私の家でやろっか」

⋯⋯⋯⋯

静香「お邪魔しまーす」

北沢陸「あ、静香ちゃん！　いらっしゃい！」

静香「陸くん、久しぶり。部活帰り？」

陸「うん、これから友達と遊びに行くんだ。ゆっくりしてってね！」

静香「ありがとう」

志保「りっくん。出かけるのはいいけど部活着、ちゃんと浸け置きした？」

陸「あ……お姉ちゃん、お願い！」ﾀﾞﾀﾞｯ

志保「あ、こら！」

陸「次はちゃんとやるから！」ｶﾞﾁｬﾊﾞﾀﾝ

志保「……もう、仕方ないんだから」

静香「頼りにされてるね、お姉ちゃん」

志保「まだまだ手のかかる子なのよ」

静香「その割には顔、緩んでるし、あんた」

⋯⋯⋯⋯

志保「さて、まずご飯を炊いておこうかな」

静香「あ、それはできるわ」

志保「じゃあ、お願いしようかな。私、材料を一通り出しておくわ」

静香「うん。……お米を入れて……お米の出るボタンってどこ？」

志保「何よ、そのボタンって」

静香「え？　押したらお米が出てくる機械があるでしょ」

志保「あー……。悪いけどウチにはそんな機械ないわよ」

静香「えっ、嘘でしょ！　どうやって、お米入れるのよ」

志保「あんたねぇ……。この計量カップで」

⋯⋯⋯⋯

静香「えっと、水を入れてー……」

志保「……」ﾁﾗﾁﾗ

静香「炊飯器にセットしてー……」

志保「ちょっと待って。静香、お米洗った？」

静香「え？　洗うって？」

志保「……もしかして、いつも水入れてそのまま炊飯器で炊いてるの？」

静香「そうよ。そういう風にやるでしょ？」

志保（無洗米のこと、かな？）

志保「静香。このお米は無洗米じゃないから、ちゃんと洗ってから炊飯器に入れて」

静香「ムセンマイ？　洗うって洗剤で洗えばいいの？」

志保「……ホンモノだわ……」

⋯⋯⋯⋯

志保「やっぱりお弁当作り、やめない？」

静香「お願い……見捨てないで……」

志保「というか静香、お弁当以前よ。少しは自炊に慣れてからやった方がいいわよ」

静香「で、でも……」

志保「でも？」

静香「来週にはお弁当作れるようになりたいって……」

志保「なんで期限つきなの」

静香「そ、その……春休みも終わっちゃうし！　仕事のタイミングも考えて今の時期しかないのよ！」

志保「あっそ。そういうことにしといてあげるわ」

静香「えへ、えへへへ……」

志保「貸し10個ね」

静香「な、なによ、それ！」

志保「いやならいーのよ。翼か未来辺りにでも泣きついたら？」

静香「ぐ……」

志保「冗談よ。静香って真面目ねぇ」

静香「なら、もっと冗談っぽく言ってよ……」

⋯⋯⋯⋯

静香「鶏肉は水で洗うのよね！？」

志保「そこまでしなくてもいいかも。サルモネラ菌が飛び散って大変なことになりそうだし」

静香「猿も寝るキン……？」

志保「とにかく表面の余計な水気はキッチンペーパーで拭いて……そんなに強く擦りつけないの。張り付けるだけでもいいよ」

静香「う、うん」

志保「そしたら、一口大に切って……って、大きすぎるわよっ」

静香「ふぇぇぇ……」

⋯⋯⋯⋯

志保「で、唐揚げの下味をつけるから調味料を……って、こら！　ちゃんと計って入れなきゃダメ！　ほら、計量カップ！」

静香「でも、うちのお母さんはそんなの使ってなくて直接入れてるよ？」

志保「それは慣れてるから！　慣れてないアンタはちゃんと計りなさい！」

静香「ひぃぃぃ……志保が怖い……」

⋯⋯⋯⋯

志保「静香、昔はオムライスくらい作れてなかった？」

静香「まあね！　……て言いたいけどそこから全然作ってなくて、ほとんど忘れてて……」

志保「どうりで卵の割り方もメチャクチャなのね……ああ、ほら！　また殻が入ったわよ！」

静香「ううぅぅぅ……志保ぉ、代わってよぉ……」

志保「アンタがやんなきゃ意味ないでしょ！」

⋯⋯⋯⋯

志保「じゃあ、これから揚げるけど」

静香「これを入れればいいのよね！」

志保「こら！　おバカ！」

静香「あつっ！　油跳ねてる！　あつぅぅぅぅ！」

志保「下漬けから油に入れるバカがどこにいんのよ！」

静香「あつっ！　あっつ！」

志保「静香！　火を止めて！」

静香「た、た、助けてぇぇっ、志保ーっ！」

⋯⋯⋯⋯

志保「……静香。言いすぎたから顔上げてよ」

静香「志保は悪くないわ……。こんなにもダメな自分が情けなくて……」

志保「……一度に色々やりすぎたのがいけなかったのよ」

静香「そうね……」

志保「ほら、1個ずつ、じっくりやっていこ。それならきっとできるって」

静香「……うん」

志保（やれやれ……まだ顔上げないなぁ……んー……）

志保「しっかりしなよ。プロデューサーさんに食べて貰うんでしょ？」

静香「！！？？」ｶﾞﾊﾞｯ

静香「な、な、な、なんで！？」///

志保「なんで分かったかって？　静香の事で分からない事でもあると思った？」

志保（ほんとはカマかけただけだけど）

静香「し、し、志保ぉぉぉぉぉぉ……」

志保「あーあ……泣いちゃった……」

⋯⋯⋯⋯

静香「一昨日、仕事終わってプロデューサーと帰ってたんだけど」

志保「うん」

⋯⋯⋯⋯

P「もう桜が咲いてるのか。時期に満開になりそうだな」

静香「そうですね。家の近くでも咲いてるの結構ありましたよ」

P「そうか。うかうかしてると散ってしまうな」

静香「何か心配することがあるんですか？」

P「なに、お花見したいなってだけだよ。のどかに桜を見てゆっくりしたいなぁってな」

静香「いいですね、お花見。私も……あっ！」

P「ん？」

静香「じゃ、じゃあ、私！　お弁当作ってきますからお花見しましょうよ！」

⋯⋯⋯⋯

志保「で。」

志保「出来もしない約束をしてきた訳か……」

静香「だって……咄嗟に出てきて……」

志保「咄嗟に出るほど誘いたかったわけね」

静香「ううぅ……」

志保「あわよくば、女子力アピールもできたら、とか？」

静香「そ、それはー……流れっていうかー……」

志保「年末の時から、もしや、と思ってたけど」

静香「な、何よ……」///

志保「そのつもりなの？」

静香「う、え、あ……。こ、答えなきゃだめ？」///

志保「静香の素直さ次第で、私の協力具合も変わるかもよ？」

静香「……」///

静香「……まあ、そう……その……つもり……」///

志保「ふーん、へぇぇ……」ﾆﾔﾘ

静香「……何が言いたいのさ」

志保「ううん、いいのよ。アレに関する事は自由だもの。でも、あの静香がねぇぇぇぇぇ……」

静香「……うう……。って、ちゃんと言ったわよ！　お弁当作れるように手伝ってよ！」

志保「はいはい、いいよいいよ。ちなみに」

静香「？」

志保「お花見はいつするの？」

静香「えっと、〇〇日だけど？」

志保「なるほど、それで来週か。日に余裕がないね」

静香「う、うん」

志保「今日はみっちり教えるから、ちゃんと家でも復習すること、いい？　反復しないと絶対上手にならないからね？」

静香「わ、分かった！」

⋯⋯⋯⋯
数日後

静香「……」ｶﾁｬｶﾁｬｶﾁｬ

静香「……」ｼﾞｭｰｼﾞｭｰ

静香「……よっ」

静香「……できた……！」

静香「あ、味見味見！」

静香「……うん、おいしい！」

静香「お弁当箱に盛り付けて……」

静香「……できたぁ……。あ、志保にも見せよう」ﾊﾟｼｬ

静香「メッセージメッセージ……」ﾎﾟﾁﾎﾟﾁ

「お弁当できたよ！どう？」

『いいんじゃない。ちょっと不格好なのが静香らしいけど』

静香「なにが私らしいのよ……！　ったく」

『ちなみに何時からどこでお花見するの？』

静香「？」

「なんで、そんなこと気にするの？」

『天気。その時間帯の、その場所は大丈夫なの？　もう明日でしょ？』

静香「あ、そうか！」

「11時からでシアターの近くだから大丈夫！晴れてる！」

『良かったじゃない。当日が楽しみね』

「ありがとう！また結果教えるから！」

『そんなのいいわよ。聞かなくても平気』

静香「なっ。肝心な所で連れないなぁ……。ま、いいや。送り付けよ」

静香「……」

静香「食べてくれるかなぁ……」

最上父「ただいま。おや、静香？　まだ起きてるのかい？　……ん？」

静香「パパ、おかえり。もうすぐ寝るよ」

最上父「静香……ここの所よくお弁当作ってるな。も、もしかして、パパにだったり、するのかなぁ？」

静香「え、違うけど？」

最上父「あ、そうかそうか。自分用かな？」

静香「ううん？」

最上父「じゃあ、お母さんにかな？」

静香「違うよ？」

最上父「……も、も、も、もしかして、か、か、か、彼氏とかで、で、で、できた、た、た、た、のかなぁ？」

静香「……できてないよ？」

最上父「そうか！　そうだよな！　うんうん！　じゃあ、そのお弁当は」

静香「お休みなさーい」ｽﾀｺﾗ

最上父「あ、静香っ。待ちなさい！　パパに詳しく、話して」

静香「あ、来月ライブあるけどパパも見に来る？」

最上父「もちろん見に行くよ！　もうチケットも買ってある！」

静香「はーい」ｶﾞﾁｬﾊﾞﾀﾝ

最上父「はっ！　そうじゃなくてぇぇぇ、静香ぁぁぁっ」

⋯⋯⋯⋯
翌日

P「今日は晴れて良かったな！」

静香「はいっ。天気予報もちゃんとチェックしましたから！」

静香「プロデューサー！　ここで良かったですよね？」

P「ああ。今年もいい感じに咲いてるな」

⋯⋯⋯⋯

P「静香がアイドル活動を再開してからもうすぐ1年だな。早いものだよ」

静香「まだ全然です。翼や未来に遅れを取りっぱなしですから」

P「あの二人はあの二人さ。時期に静香も目が回るように忙しくなる」

静香「そんな。まだ1年で」

P「1年でも充分さ。それだけ静香のポテンシャルは高いと踏んでいる。俺がプロデュースの時間を静香に多く割いてるのもそれがあるからだ」

静香「そ、そうだったんですか……知らなかった……。わ、私の為にプロデューサーの……」

P「それに途中だった静香のプロデュースなんだ。これだけは誰にも譲りたくなかった」

静香「は、はい……」///

静香「あのプロデューサー。そういう話もいいですけど……えっと」

P「ん？　なんだ、今後について具体的なプランとかか？」

静香「いえ、そうじゃなくて……その……」ﾁﾗﾁﾗ

P「なんだなんだ？　ま、まさか、プロデューサーが俺じゃ不満だったのか！？」

静香「そ、そうじゃありません！！」

志保「お弁当の感想はどうですか？」

P「え？」

志保「って言いたいのよね？」

静香「えっ！？　し、志保！？」

P「あれ？　なんだ志保も来てたのか」

志保「どうも。こんにちは」

⋯⋯⋯⋯

P「来るなら来るって知らせてくれても良かったのに」

志保「ちょっとしたサプライズになりました？」

P「なったなった。年末に会って以来、連絡なかったから志保も忙しいんだろうなって、再デビューは無理かなってモヤモヤしてたよ」

静香「……」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

志保「そんなにですか……。プロデューサーさんのそういう所相変わらずですね」

P「そんな事ないさ。それだけ志保をスカウトしたくて堪らないんだよ。他の事務所に盗られないか毎日悩むんだ」

志保「ふふふ……。そう言って貰えるのはちょっと、嬉しいです」

P「そうかっ！？　じゃあ」

静香「プロデューサー！！！！！」

P「うわぁ！」

志保「……」

静香「なんで志保を見るとすぐ口説きに行くんですかぁ！」

P「わわわわわ！　すすすまん！　つい仕事のテンションが入って……」

静香「この前も同じ事言ってました！」

志保「……ふっ」

静香「！？」

静香「何よ、志保！」

志保「何でも？　静香も静香で、そういう所は相変わらずね。ちょっと安心した」

静香「はあ！？」

志保「まあまあ落ち着いてよ。私に詰め寄るより大事な事があるんじゃないの？」

静香「ぐ……。ぷ、プロデューサー……！」

P「わ、分かったからそんな睨むなよ……」

⋯⋯⋯⋯

P「この卵焼きなんか、ふわっとしてて良い口当たりだよな。出汁もしっかり利いてておいしいよ」

P「からあげは衣はサクッとしてて、中はジューシーに仕上がっててボリューミーで満足できるよ。味付けも俺好みで嬉しいよ」

静香「ええ、ええ。それはもう」

志保（すごい得意気ねぇ……ちょろ……）ﾓｸﾞﾓｸﾞ

P「これは……きんぴらだよな。ニンジンとゴボウの。この千切りキレイに切れてるな。どうやったんだ？」

静香「それくらい日々の積み重ねですからっ」

志保「随分、浅い積み重ねなことで……」ﾎﾞｿ

静香「何よ」

志保「何でも」

P「なるほど。ここの所、お弁当作ってるってのは、これの事だったのか」

静香「……え？」

P「ん？　静香、最近お弁当の練習みたいなことしてたんだろ？」

静香「な、え？　ちょ、え？　し、志保っ」

志保「何も言ってないって、私……」

静香「……。ど、どうして、プロデューサーがし、知ってるんですか？」

P「なんでって、昨夜、静香のお父さんから電話かかってきたぞ」

静香「え、は、ええっ！？」

P「『娘に彼氏がいるか知らないかっ！？』って割とすごい剣幕で聞かれてな。事情を聞いたら、ここ最近お弁当作りしてるからって」

志保「うわぁ……」

静香「お、お、お父さん……！！！」ﾌﾟﾙﾌﾟﾙ

P「と、とにかく。静香、このお弁当、美味しいよ。頑張って作ったのがよく分かるよ」

静香「そ、それは……ありがとう……ございます……」///

志保「……良かったわね」ﾎﾞｿ

静香「……うるさいなぁ」///ﾎﾞｿ

P「それにしてもこの味付け……そうだよ、志保が作るものと味付けが似てるよな？」

静香「えっ！？」

志保「あ……え？」

P「そうか。静香、志保に料理を習ったのか？」

静香「え、えっと……」///

P「静香がうどん以外の料理も作れるんだ、って思ったけど、そうか、志保に教えて貰ったんだな」

静香「そ、そんなこと！　……そうなんですけど……」

志保（あーあ、全部バレてるし……居た堪れない……）

P「静香、すごく頑張ったな。俺もこんな美味しいお弁当、食べれてとても嬉しいよ」

静香「い、いえ、これくらい！　えへ……えへへ……」///

志保（ちょろすぎ……。まあ、静香本人が満更でもないみたいだし、まあいっか）

⋯⋯⋯⋯

P「ふぅ、ご馳走さま！　美味しかったな！」

静香「あ、あのプロデューサー」

P「うん？」

静香「わ、私、またお弁当作ってきますから！　ま、また一緒に食べませんかっ！？」

P「お、いいな。楽しみだな。こんな調子なら、静香はきっと良い奥さんになるな！」

静香「そ、そうですかっ。ふ、ふふふ、えへへ」///

志保「頑張った甲斐があったね」

静香「う、うんっ。これも志保のお陰よ、ありがとうっ」

静香「でも、お父さんだけは許さない……」

P「ま、まあまあ。お父さんも悪気は……。って、静香、ヤバい！　もうこんな時間だ！」

静香「えっ？　あ、次の仕事！！」

P「まだ間に合うから先に戻って支度してくるんだ！　ここは俺が片付けておくから」

静香「はいっ」ﾀﾀﾀﾀﾀ

⋯⋯⋯⋯

志保「やっぱり忙しいですね、静香」

P「ああ。復帰を望む声は以前から多かったしな。まだまだここからだと思う」

志保「友人として鼻が高いです」

P「俺もだ。これでよし。片付け手伝ってくれてありがとうな、志保」

志保「いえ。では、私も大学に戻ります。ちょっと間を抜けてきたので」

P「あ、そうだ！　志保、ちょっと待っててくれないか？　渡したい物があるんだ」

志保「え？　私に？」

P「ああ。シアターにあるからすぐ取ってくる」

志保「はあ……」

⋯⋯⋯⋯

P「はい、これ」

志保「これは……？　チケット？」

P「名前は聞いたことあるんじゃないか？　ずっと前に……志保がまだアイドルだった時、行ってみたいって言ってたレストランのチケットだよ」

志保「えっ。あのホテルの展望台の……？　でも、とても高級そうだったのに……。というか、こんなの頂けません」

P「そんな事言うなよ。誕生日プレゼントにと思ってさ。……大分過ぎてるけど」

志保「誕生日……私の……？」

P「ああ、年末に会ってまた会える時にって用意したんだ。……でも、会えずじまいだったから渡しそびれてて。別に恩に着せるつもりはないんだ。受け取ってくれないか？」

志保「でも、私はもうアイドルでもないし、プロデューサーさんともそんな関係じゃ」

P「俺は志保の誕生日をお祝いしたかっただけなんだ。アイドルとか抜きにしてな」

志保「……そう、ですか。では、頂きます。……これ、ペアチケット？」

P「ああ。二人分取るだけでやっとでな。本当は家族分取りたかったんだけど……すまないな」

志保「いえ、そんな。ありがとうございます」

P「良かったっ。じゃあ、俺も行くよ！　またゆっくり出来たら積もる話もしような！」

志保「はい」

⋯⋯⋯⋯

志保「……」

志保「……覚えていてくれたんだ」

志保「……」

志保「……ねえ、静香……」

志保「……」

志保「私も『そのつもり』って言ったら……どうする……？」

志保「……」

志保「なんて……。帰ろう……」ﾃｸﾃｸ

志保「……」ﾃｸﾃｸ

志保（ちょろいのは……私も一緒か……）

終わりです。
ご飯ネタって何があるかなと書いてたらPドルになってました。
途中解釈不一致出てきたら申し訳ない！

ちなみに、↓の作者で何となく話は繋がってます。

【Xm@s祭】静香(21)「クリスマスなんだから帰ったら？」志保(21)「帰りたくない…」
http://imasbbs.com/patio.cgi?read=27672&ukey=0&log=past&res=36

(うどん弁当の話かと思った)

ボタン押すと計量される米びつありますよね。
最近は見ない気もするが

乙です！
しずしほが作った卵焼きと唐揚げを食べたい人生だった

お父さんと仲良く？やれてるようで何よりです。
・・・ちょっと食べただけで志保の味ってわかるレベルで食べ慣れてるのは、もうゲームセットな気もゲフンゲフン

(ちなみに、ゆでるだけでできる卵焼き料理や卵焼きの缶詰はあります。なんならレトルトの目玉焼きもありますし、レストラン等では牛乳パックに入った黄身を溶いた液体を使ってますよ)