「オハヨーございます」
　自分、砂塚あきらが出社した時、きらりサンと杏サンが何やら言い合っている様子だった。
「もー！杏ちゃん、勝手にハピハピキャンディ食べたでしょ！きらりプンプンだよ！」
「食べてないってばー。それにダイヤル錠までして、ロッカーに入れたのはきらりでしょ？私にはダイヤル錠のナンバー分からないから開けられないってばー」
なんだろ、この状況？

「オハヨーございます」
　自分、砂塚あきらが出社した時、きらりサンと杏サンが何やら言い合っている様子だった。
「もー！杏ちゃん、勝手にハピハピキャンディ食べたでしょ！きらりプンプンだよ！」
「食べてないってばー。それにダイヤル錠までして、ロッカーに入れたのはきらりでしょ？私にはダイヤル錠のナンバー分からないから開けられないってばー」
なんだろ、この状況？

「説明しましょう！」
「あ、おはようございます、都サン」
「おはようございます。あきらさん。いいですか、事件はこの休憩室で起こりました。最近きらりさんの持つハピハピキャンディの過剰摂取が注意されている杏さん」
＃ハピハピキャンディとは？
「きらりさんは心を鬼にしてハピハピキャンディを制限することにしました。そのためにダイヤル錠を買って来てハピハピキャンディを入れたロッカーを施錠したようです。問題のブツがこれです」
「あ、どうも」
　ロックがかけられているダイヤル錠を渡された。よく見かける物で、0から9まで回転する装置が３連となっていて、正しい数字3つ揃った状態で引っ張ったらロックが外れるやつだ。当然ながら答えである3つの組み合わせが分かる情報はない。
「というかきらりサンここまでやったんデスね……」
「しかしそのダイヤル錠が突破され中のハピハピキャンディが食べられてしまったようです……。ちなみにこの部屋、たまたま人が来ない状況が続いて一時間近く杏ちゃん一人だったそうですよ」
「……じゃあ杏サンが開けて食べちゃったんじゃないデスか？」
　他に容疑者がいないし。

「私は寝てたから、その間に誰か来たのかもしれないでしょ？杏はダイヤル錠に触ってないし、ハピハピキャンディなんて食べてないよ！杏が犯人だって言うなら証拠出してよ、証拠」
「完全に犯人な言動してますよ」
　チッチッチッと言いたげに都さんは指を振った。
「証拠も推理もなしに犯人扱いしてはいけませんよ。この事件、解き明かしてみせます！名探偵アイドル、安斎都の名に懸けて！！」

　バッチリと決め台詞が決まったところに志希サンがやって来た。
「にゃははー何してるのー」
　志希サンは、化学のスペシャリストで、アメリカで飛び級で研究もやっていたギフテッドらしい。この事務所とんでもない人いるな。
「うっわー杏ちゃんすっごい手が鉄臭いー！あっでも口からはきらりちゃんのハピハピキャンディの匂いだー私こっちの匂いはすきー」
　あっという間に、杏サンがダイヤル錠に触ってないしハピハピキャンディーを食べていないという嘘を看破した。
＃ギフテッドすごい
＃嗅覚関係ある？
　ふっふっふっと不敵に杏サンは笑い出した。そして
「後で貰える物先に貰って何が悪いんだー！」
　犯人の捨て台詞としてもなんとも情けない台詞を吐きながら杏サンは逃げ出していった。
「あ、待てー！杏ちゃんー！」

　きらりサンも休憩室を出て行き、自分と都サンと志希サンが残った。
「事件解決デスかね、お疲れ様デス」
「よくわかんないけどお疲れー」
「待ってください！」
　なぜか呼び止める都さん。
#なぜ？
「まだ謎は残っています！杏さんはダイヤル錠の３つの数字を突き止めないと開けられませんでした！志希さん、きらりさんが決めた3つの数字はわかりますか？」
「んーそれは分かんないなー」
　ちょっと都サンが安心したようにも見える。志希サンならもう全部分かってると言いかねないと思ったのだろう。自分もそう思った。
「きらりさんが決めた数字の組み合わせ、これが最大の謎です！事件はまだ終わってません！」
　犯人も分かったし、事件は終わった気もするけど流石探偵アイドルは謎への食いつきが普通じゃない。
「あっ、あきらちゃんそれ貸して―」
「ダイヤル錠デスか？はい、どうぞ」
　渡すと早速スンスンと匂いを嗅いだ。さっきまで手に持っていた物をかがれるのはチョイはずい。

「私が推理するに……その数字はきらりさんに関係する数字……そう誕生日です！」
　そんな防犯意識のないおばあちゃんなことするかな？
　志希サンは話を聞いてるのかいないのかダイヤル錠をすごい速さでグルグルと回転させている。
＃タイムアタック？
「杏ちゃん捕まえたよー」
「勢いで逃げたけど考えてみたら逃げるの面倒臭い」
　捕り物はあっという間に終わったらしい。
「もーぷんぷんだよー」
「ごめんてーちょっと魔が差したんだよー反省はしているー」
「逮捕お疲れ様です！きらりさん、ダイヤル錠の数字はきらりさんの誕生日だったんじゃないですか？」
「え？違うにい」
　普通に違った。

「え、じゃあ杏さんの誕生日……」
「杏ちゃん頭とーってもいいから数字はきらりたちに関係のない数字選んだにい」
「ねーそれっぽい数字全部ダメだったよー」
　杏サンも同意する。それならどうやって答えが分かったのだろう？
「そんな……それじゃあこの事件迷宮入りじゃないですか……」　
迷宮入り早い。
「捕まった犯人はここにいるけどねー」
　きらりサンに抱えられながら突っ込む犯人。
「開けた方法自白しようか？」
「うう、待ってください……犯人から教えてもらうのはプライドが……」
　うんうんと頭をひねる都サン。犯人に教えは請わない探偵の鑑……なのかなこれ？

「わかりました！きらりさんがメモした際にきらりさんは気付かなかったけど裏写りした紙があったんです！それを杏さんが見て……」
「うゆーごめんねえ。どこにもメモしてないにい」
　都サン渾身の推理は申し訳なさそうにきらりサンにばっさりと切り捨てられた。
「……な、なら346という数字はどうです！？」
「うーうん、違うかなー。きらり答え言おうか？きらり犯人さんじゃないし？」
「ま、待ってください！え、えーと765……876……283……」
　思い付く数字全部言っていくことにしたのだろうか。でも残念ながらきらりサンはクビを振っている
「あーでも正解に近付いてるよね」
「うゆ？そうかなー？」
＃どっち？

「ていうかさー志希はどうやって開けたかわかってるんじゃないの？」
　ずっとダイヤル錠を回転させて遊んでいる志希サンが手を止めないまま答えた。
「え？わかってるよ？」
　え？
「え！？さっきわかんないって言ってたじゃないですか！？後で思いついたんですか！？」
「都ちゃんが聞いたのは、きらりちゃんの考えた数字の数字の組み合わせが分かってるか？って話でしょ？それなら志希ちゃんにはわかんないなー。だって杏ちゃんも答え知らないで開けたんだろうし」
　自分も分からなくなってきた。
「？　杏さんはダイヤル錠を開けないでロッカーからハピハピキャンディを……？」
「ううん、杏ちゃん、ちゃんと数字揃えて開けてたよ。ダイヤル錠は壊されないで外されてたにい」
　都サンはダイヤル錠を開けないで取り出した可能性を考えたが、きらりサンに否定された。どうやらダイヤル錠の数字揃えてちゃんと開けたのは間違いないらしい。

「杏ちゃんはーダイヤル錠がどの組み合わせで開けるか知らないままで、ダイヤル錠の数字揃えて開けたってことー」
都サンは完全に混乱している顔だ。自分も分からない。
「あのスミマセン、もう答え教えてもらっていいデスか？」
　うーんと志希サンは頭をひねってから言った。頭をひねりつつ手は止めない。
「もんだーい！10の3乗は？」
「えっ、えーとちょっと待ってください……じゅうのさんじょう……」
「10×10×10で1,000デスね」
「ピンポンピンポン、だいせいかーい！あきらちゃんもアメリカの大学行けちゃう？」
「すごいにい！」
どう考えてもそんな褒められることでもない。
「うう、見事な推理ですあきらちゃん……」
そうでもないデスよ。

「あとさー最初っから答え分かってたなら鉄の臭い移るほどダイヤル錠触ってないでしょ？ちょっと触っただけのダイヤル錠持った匂いなんて志希ちゃんわかんないってば。志希ちゃん犬じゃないし？どっちかというと猫系？にゃんにゃん」
　この事務所ビックリ人間多いし、志希サンが匂いの判別出来たのはそういうモノかと……。
　いやそれは置いておくとしてつまり杏サンがダイヤル錠を解いた方法ってつまり……。
「え？どういうことですか？」
　あっ都さんはまだ分かってないっぽい。
「ダイヤル回して次の数字に変えて引っ張るって一連の動きって何秒かかるかな？３秒かかるとしたら1,000回分試すのにかかる時間は3,000秒、つまり50分だね。但しこれは一番最後のパターンまでやった場合だから、実際はもっと早く見つかるよね」
「ふふーん、杏は紐で引っ張りながら他二つのダイヤルは固定しながらやったからね。これなら数字が揃ったら即開くってわけだよ。1回2秒切るくらいかな？20分ちょっとくらいで開けたよ」
　自慢げに犯行を暴露する犯人。
　これはつまり……

「＃総当たり」
　面倒臭がりな割に根性あるなこの人。
「え！？全部試したってことですか！？暗号もトリックもない力技じゃないですかー！」
　がっくりとうなだれる都サン。
「うーん、すごい落ち込んでるけど、勝手にトリック期待されただけだし私悪くないよね」
「アメ泥棒はどうかと思います」
「うっそれを言われると……でもさ、あきらなら私の気持ち、分かると思うんだ……」
「急になんデス？」
　アメ盗もうなんて気持ちわからないけど。
「こう、みんな思いつかないような攻略方法を思い付いたらバッと行動しちゃうこの気持ち！1,000個しかないならこれ総当たりでやれるじゃん！って気付いた時私天才かと思ったね」
「あー」
　割と分かる。
＃ゲーマー根性

「でも……杏も後悔してるんだよ……もう二度とこんなことしないよ……」
「杏ちゃん……」
「何分もダイヤル錠の前に座り込んで必死になってさ……面倒くさ！何やってるんだろう私……って思うんだけど途中でやめたらやった時間損な気がして……しかも私000から始めたんだけど割と後ろの方だったんだよ……！999から始めてたらもっと早かったのに……！」
「杏ちゃん……」
　きらりサンのあきれが混ざったなんとも言えない顔。
　シメとなる犯人の独白シーンにしてはなんとも締まらない。

「みんなお騒がせしてごめんにい！これみんなで食べて欲しいな！志希ちゃん！都ちゃん！あきらちゃん！」
　飴を差し出すきらりサン。
「ありがとうございます……疲れた脳に糖分が染みます……」
「あ、どうも」
「わーハピハピキャンディ！これ食べると幸せになるホルモン分泌されるんだよね～」
#一ノ瀬志希お墨付き
これ食べて大丈夫なやつかな？
「まだあったんだハピハピキャンディ。杏の分は？」
「杏ちゃんの分はないにい」
「えーそんなー」
「自分でさっき食べたでしょ！」
　二人の掛け合いを見てみんな笑った。
　ところで志希サンは999から始めたようだ。志希さんがもてあそんでいたダイヤル錠はロックが解除された状態で放り出されていた。

～了～

以下、配役説明一部言い訳
　
トリックありきなので、ダイヤル錠で何か隠されてそれを破るという状況が必要に。パッと思い付いたのがあんきらコンビ。でも杏の食べ物を封じ込めるのはやり過ぎか？と思い、きらりがいつも上げてる飴をきらり自身が封印し、それを杏が勝手にいただく話に。杏が人の飴勝手に食ってることになるが「思い付きを実践してみたくなった」＆「どうせいつも貰ってるし後で貰えるもんだしバレてもきらりなら許してくれるだろう」で突発的に犯行に呼んだということで一つ。ハピハピキャンディとは。
レイナ様がイタズラし過ぎてイタズラグッズ封印されるけど……って流れも思い付いてこっちの方が自然か？とは思ったものの、レイナ様（と光）は小さいことでも真剣にやっているというイメージあるので、犯人も居直ってゆるーい会話するノリにしたかったので、より堂々と居直りが似合う杏に

安斎都は、名探偵アイドル名乗ってる以上は出さないと悪いかなと。でも綺麗にズバっと推理するのは全くイメージ出来ないのでカマセ探偵みたいなポジションに。申し訳ないと思いつついざ動かしたらミステリにもならないような話を謎解きに無理矢理持ち込んでくれていい子だなと思いました。

探偵役は志希にゃんに。まず最初に嗅覚だけで犯人をさっさと断定し推理する点を1点だけに絞ってもらい、さらに杏の手が鉄の匂いをプンプンさせてたことと、数字に強いので３桁のダイヤル錠の数字の小ささに気付いて早い段階で真実に気付いた子。「「牛乳1つ買ってきて。卵があったら6つお願い」って言われたから言われた通り牛乳６つ買ってきたよ～」

語り手はあきらちゃんに。感性が普通で、頭の良さは天才じゃないけどそれなりに良くて、地の文任せるのでそれなりにキャラ知ってるキャラということで。

以上です。暇潰しになったら幸いです

元ネタの作品名、結局わからんかった……
途中まで自分なりに真面目に推理してたけどそういう落ちかー
プロットより配役人選の方が時間かかってそう

このヒントは……えらい懐かしいネタだなｗ > 元ネタ
というか探偵じゃなく作者の名前の方が良かった気もする