ちひろ「なんですか藪から棒に」

尾崎「最近あの子の様子がおかしくてですね……妙に上機嫌な日が続いたかと思ったら急にふさぎこんだり、なぜか逆転検事のサントラを延々と聴いてたり……」

尾崎「それで気づいたんですよ。テンションの上がり下がりがペンギンズの勝敗と完全に一致してることにね……」

ちひろ「ああ、贔屓チームが勝った翌日は機嫌が良くて、負けるとその逆ってことですか。愛夏ちゃんがそんなに野球好きだったなんて初耳ですね」

尾崎「どう考えてもこの前諸星さんとコラボしてからおかしくなってるんですよ！どうしてくれるんですか！」

ちひろ「あ、そういうことですか……」

尾崎「さらに悪いことに今年のペンギンズはズタボロっ……圧倒的弱さっ……！」

ちひろ「今、勝率2割くらいでしたっけ。そこらへんの野手の打率より低そうですね」

尾崎「もう1週間の大半をお通夜みたいなテンションで過ごしちゃってるんですよ……まだ正式デビューしたてだってのに……」

ちひろ「う～ん、すぐ人に影響される愛夏ちゃんにも問題ありな気はしますが……そういうことなら力をお貸ししましょう」

ﾄﾝｯ

尾崎「これは……スタドリ？」

ちひろ「はい。876さんはこの手のアイテムを取り入れてないですよね？ウチではプロデューサーやアイドルのコンディション管理に使ってます」

ｶﾞﾁｬ

P「ちひろさん……スタドリお願いします……」

ちひろ「ちょうどいいところに来ましたね。ハイ、どうぞ♪」

ｸﾞﾋﾞｯ

P「ヒャッハーーッ！まだまだ働けるぜーーッ！」

ｽﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ!

ちひろ「こんな感じで、ちょっと気分が乗らないときに飲ませてあげるだけでも全然違うんですよ」

尾崎「はあ……でもこれ、根本的な解決になってないような……」

ちひろ「無理に野球観戦禁止にしたりしたら反発されるかもしれないでしょ？とりあえずの時間稼ぎとしてはいいじゃないですか。そのうち良い解決策が見つかるかもしれないし」

尾崎「……わかりました」

―――――

―――

――

～876プロ～


尾崎(とはいえ……あまり気が進まないのよね、こういうの)

尾崎(アイドル時代に自分でも飲んでたけど……一時的に気分が高揚しても後で揺り戻しが来るだけだったっけ)

尾崎(やっぱり、きちんと叱って目を覚まさせないと――)

ｶﾞﾁｬ


愛夏「尾崎さん！わたしを殴ってください！」

尾崎「は？」

愛夏「わたし、不抜けてました！グーで思いっきりお願いします！ドカンと！」

尾崎「ちょっと落ち着いて！……また何かに影響されてるわね？昔の熱血ドラマでも見た？」

愛夏「は、はい……」

尾崎「本っ当に周りに影響されやすいんだから……でも、自分で反省して行動に移せるのは良いことだわ」

愛夏「リスナーさんたちから“最近暗くて元気がない”って言われちゃって……どうかしてました。わたし、もう野球なんか観ません！」

尾崎「……それはちょっと勿体ないんじゃない？」

愛夏「え？」

尾崎「芸能人はね、たくさんアンテナを伸ばして、いろんなことを吸収していかないといけないの。それが多いか少ないかで芸の幅が違ってくる。せっかく新しい趣味を見つけたなら生かしていくべきよ」

尾崎「そういう意味では、周りの影響を受けやすいあなたの性格は長所になり得ると思ってるわ。今回みたいに行きすぎることがあったら修正してあげるのが私の仕事だしね」

愛夏「尾崎さん……」

尾崎「さ、気を取り直して頑張りなさい。明日の朝も配信する予定でしょう？」

愛夏「……はいっ！」

―――――

―――

――

～1週間後～


ちひろ「そうですか。ちゃんと自己解決できたんですね」

尾崎「はい。なのでこのドリンクはお返しします」

ｺﾄｯ

尾崎「……昔、絵理にネットを辞めさせようとしたことがあるんです。あの子のためにならないように思えて」

尾崎「でも、絵理はリアルとネット、両方の世界からたくさんのことを吸収して成長した……だから、なんでもかんでもすぐに取り上げるのは良くないのかなって」

ちひろ「なるほど。それが尾崎さんのプロデュースですか」

尾崎「はい」

尾崎「そろそろ失礼します。……あ、ひとつ気になったんですが」

ちひろ「なんですか？」

尾崎「諸星さんは大丈夫なんですか？昨日もペンギンズ負けてましたし」

ちひろ「ああ、ご心配なく。きらりちゃんは元気ですよ」

尾崎「そうですか。またいつかコラボしましょう。今度は違う愛夏をお見せできると思いますので」

ちひろ「いいですね。そのときはきっと……」

ちひろ「きらりちゃんも、見違えるように成長してると思いますよ♪」

―――――

―――

――

―――――

―――

――

ｶﾂｰﾝ…ｶﾂｰﾝ…


ちひろ「やれやれ、スタドリ販売作戦は失敗か」

ちひろ「ま、焦らないことが肝心よね。まだチャンスはいくらでもあるだろうし……」

ｶﾞﾁｬ
ｷﾞｲｲｲｲ……


ちひろ「きらりちゃーん？ちゃんと反省できたかなー？」

きらり「にょ……わ……すた……どり……」


ちひろ「もうお仕事さぼって野球中継観たりしないー？」

きらり「すたどり……すたどり……を……」


ちひろ「野球とスタドリ、どっちが大事かなー？」

きらり「スタドリっ！スタドリっ！！スタドリっ！！！」

ちひろ「尾崎さんには悪いけど……私には、私のやり方があるのよね」

ちひろ「次に会えるときが楽しみね……ふふっ」



ちひろ「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ……」

お　し　ま　い

こんな話にしてしまいましたが実際の配信は野球の話題以外にもためになるエピソードが満載で面白かったですね
松嵜さんのプロ意識の高さに脱帽しました

ヤク（ルト）中かよ

乙
スタドリは怖い飲み物