330 : おやぶん   2021/09/10 21:40:33 ID:kp52Ng8f8w

退屈であることを隠さないこのみだった。
主催者である令嬢・亜美とは数回会って話した程度の関係。
彼女の両親、つまりは現世と異界の両方で権力者である夫婦の友人という立場である。
人付き合いのほとんどがビジネスライクな彼らにとっては数少ない、友人と呼べる人間であるが、そうは言ってもこのみは近頃の彼らをそれほど好ましくは思っていなかった。
どちらか片方の世界においても危ない橋を渡ることが多々あるというのに、両世界にまたがって、あの夫婦は何かとんでもないことを企んでいる……そんな気がしてならない。
質の悪いことには、それは娘である亜美を想っての行動だというのは話しぶりから伝わってくる。
友人である自分でさえも、なかなか会わせないような、箱入り娘というよりも鳥籠の中の少女・亜美―――。
そうとは感じさせない朗らかな性格がかえって、このみを不安にさせる。