海美は怒る雪歩に困惑していた。オトメティックパワーを経験した彼女は、その力に魅了されない3人こそ狂っているとすら感じた。
そうして、海美は店を出ることにした。
可憐は……彼女についていった。その選択は春香と雪歩をさらに苦しめることとなった。
とくに雪歩はしばらく無気力状態に陥った。絶望と言ってもいいだろう。
それを支えたのは春香であったが、しかし春香にしてもどうにか踏みとどまっているに過ぎなかった。
時間は過ぎた。虚しく。雪歩は自然とその話し方を変えた。仮面を被ったと表現すればいいのだろうか。
いつまでも落ち込んではいられない。涙はとうに枯れた。当然、話し方を変えてみたところで、すぐに何か大きく変わるわけではない。
「強く」なれることなんてない。雪歩たち2人が立ち直れたのは、いまの彼女たちになれたのは、さらに時が過ぎてから。
それは今からおよそ半年前。店の近く。
本を抱いたまま、地面に座りつくして灰色の空を見上げている少女に出くわしてからだ――――。