可憐「ゆ、雪歩ちゃん！　穴を掘っているところ、すみません。今、いいですか？」

雪歩「穴掘っていないよ！？　そんないつも掘っているわけじゃないからね？　えっと……どうかしたの？」

可憐「私、また雪歩ちゃんに相談したいことがあって……」

雪歩「相談？　前みたいに何かの役を演じることになったから練習に付き合って、みたいな？」

可憐「そのとおりです。あ、ありがとうございます……！　じゃぁ、さっそく」

雪歩「付き合うって言っていないよ！？」

可憐「えっ……付き合ってくれないんですか？」

雪歩「付き合うけど！　他ならぬ可憐ちゃんの頼みだから、どんと来いだけれども！」

雪歩「それで今回は何の役なの？」

可憐「今、ミリシタで開催されているプラチナガシャはご存知ですよね？」

雪歩「もちろんですぅ。2021年3月19日15：00～3月29日14：59間で開催されている『我ら、主様のおそばに…！ガシャ』のことだよね。真ちゃんが限定のやつ」

可憐「そう、それです…！　静香ちゃんが『どうしてそばなの、うどんじゃダメなのかしら』って言っていたやつです」

雪歩「なんで！？　主様のうどんにって意味わかんないよ！」

可憐「それで私も、いつああいったお仕事がきてもいいように、備えておこうと思って」

雪歩「というと、執事さんやメイドさん？　あ、それともお嬢様側？　可憐ちゃんなら、どれでも似合うだろうなぁ。ただ、男装するんだとしたら……」

可憐「？」ﾊﾞｲｰﾝ

雪歩「まぁ、うん、オペラセリアでの例があるから、可憐ちゃんのスタイルでも男装路線はありなんだろうけれど……王子様とかしていたし」

可憐「えっと、私、メイドさんの役をしてみたいんですけど……雪歩ちゃんはお嬢様役をお願いできますか？」

雪歩「いいの？　可憐ちゃんみたいな可愛いメイドさんからお嬢様って呼ばれるなんて、素敵ですぅ」

可憐「では、定番のお出迎えのシーンから演じていきますね……！」

雪歩「うん……じゃなくて、よろしくてよ！」

可憐「そういうのはいいので。普通の口調でいいですよ？」

雪歩「あ、うん」

雪歩「た、ただいまー」

可憐「へい、らっしゃい！」

雪歩「待って、ちょっと待って」

可憐「？」

雪歩「きょとん顔可愛いよ！　じゃなくて、え、なに、江戸前寿司屋のお嬢様設定なの？」

可憐「いえ、そういうわけではありませんけれど」

雪歩「だよね、うん、仮にそうだとしても身内の出迎えの言葉に、へい、らっしゃいはないよね！？　というか、これ、この前も使ったネタだよね？」

可憐「お寿司だけに？」ﾄﾞﾔｯ

雪歩「ドヤ顔！　可愛いけれど！」

可憐「はぁ……リテイクお願いしまーす」

雪歩「なんで可憐ちゃんが、やれやれって感じになっているの！？　　……た、ただいまー」

可憐「お帰りくださいませ！　お嬢様！」

雪歩「帰ってきたところだよ！　メイドカフェの入店拒否か！」

可憐「メイドカフェの入店拒否……？」

雪歩「そこは引っかからなくていいよ！　フィーリングで出てきたツッコミだから！」

雪歩「ただいまー」

可憐「おかわりくださいませ、お嬢様！」

雪歩「わっほーい……じゃなくて、食いしん坊か！」

可憐「おかわしくださいませ、お嬢様」ﾍﾟﾁｯ

雪歩「もろぞふっ！　え、なんで急に平手！？　不意打ちすぎてかわせなかったし、どんな出迎えなの！？」

可憐「前略　お変わりありませんか、お嬢様。私はこっちでうまくやっています」

雪歩「突然の手紙！？　出迎えてないじゃん！　解雇されて実家に戻ったんじゃないの、これ！」

可憐「お返しなさいませっ、お嬢様！」

雪歩「何を！？　何の返還要求なの？！」

可憐「よくぞおかえりなさった、お嬢！」

雪歩「急に何！？」

可憐「え？　でも、雪歩ちゃんはお家ではお嬢、お嬢ってたくさんの男の人から呼ばれているって……」

雪歩「たしかにお弟子さんたちは、そんな感じだけれど！」

可憐「に、任侠ってやつですね、えへへ……」

雪歩「えへへじゃないよ！　うちは健全な建設会社だよ！」

可憐「おかえりなさいませ、お蔵様」

雪歩「お蔵様って……？」

可憐「ほら、雪歩ちゃんは口が堅いからお友達から、石地蔵のお雪って呼ばれているって……」

雪歩「いつの設定！？　そんなのあったなぁ、ってピンとくる人どれぐらいいるの！？」

可憐「おかわしくださいませ、お嬢様」ﾍﾟﾁｯ

雪歩「ごでぃばっ！　なんでまた平手！？」

可憐「2回目はいけるかなって……てへへ」

雪歩「いけないよ！　もう、出迎えはいいから、次！」

可憐「えっと……。お嬢様、お茶の用意ができましたよ」

雪歩「ありがとう。今日は何？」

可憐「先日、お嬢様が気に入ってくださった、あの茶園の渋いお茶と」

雪歩「と？」

可憐「箱崎のお嬢様からいただきましたローズティーがありますが、どちらにいたしますか？」

雪歩「うーん、迷っちゃいますぅ」

可憐「ふふっ、きっとお嬢様なら迷われるだろうと思って……両方淹れてから、そのまま混ぜたのがこちらです！」

雪歩「なんで？！　ブレンドってそうやるものじゃないでしょ！？　台無しだよ！！　どうしてそんな得意げな表情なの！？」

可憐「はぁ、もう、リテイクですね、リテイク」

雪歩「なんで嫌々そうなの！？」

可憐「お茶の用意ができました、お嬢様」

雪歩「そ、素っ気ない……！　えっと、今日は何？」

可憐「こちらの水槽をご覧ください……！」

雪歩「は？　えっ、なに、これ、すごく大きな水槽」

可憐「マナティーです」

雪歩「哺乳網海牛目！！　いや、ティーがついているから、お茶ってことはないでしょ！！　せめて飲み物持ってきなよ！　なんで、マナティーなの！？」

可憐「用意するのに苦労しましたので、それ相応のギャランティーをお願いしますね」

雪歩「嫌だよ！」

可憐「じゃぁ、ペナルティーが発生しますよ…！」

雪歩「ティーって言いたいだけでしょ！？」

可憐「そんなことないティー」

雪歩「語尾まで！？　ど、どうせなら、ほら、可憐ちゃんのパン

可憐「アロマパンチ！」ﾍﾟﾁｯ

雪歩「ごんちゃろふっ！！　いや、ただの平手じゃん！」

可憐「飽きたので次のシーンいっていいですか……？」

雪歩「身も蓋もない！　い、いいけど」

可憐「じゃあ、雪歩ちゃんが何者かにさらわれてしまうのを、阻止するメイドさん役やりますね」

雪歩「えっと、私、どうしていればいいの？」

可憐「さらう側の演技もお願いします」

雪歩「私が一人二役！？」

可憐「ま、待ちなさい、お嬢様を離しなさい！」

雪歩「すっと役に入った！！　え、えっと――――きゃぁー、助けてぇー！　くはははは、待てと言われて待つやつがいるか！」

可憐「た、たしかに！　し、失礼しました、ごゆっくり……」

雪歩「諦めるの早いよ！！！　納得しないでよ、ごゆっくりってなんなの！！」

可憐「くっ、お嬢様をさらってどうするつもりなの！」

雪歩「え？　えっと………身代金をたんまり要求してやるぞ、くはははは」

可憐「ふんっ、馬鹿ね。お嬢様の道楽でマナティーを何頭も買ったから、この家はもう一文なしなんですよ…！」

雪歩「まさかの伏線回収すなーっ！　さらっと私の道楽になっているし！　どう考えても無能なメイドのせいでしょ！」

可憐「ドジっ子メイドのほうが受けるって春香さんが」

雪歩「あざとく転ぶのと、家を傾けるほどに散財するのを同レベルで扱ったらダメでしょ！！」

可憐「お嬢様、お嬢様！　ご無事ですか…！」

雪歩「きゃ、きゃー！　可憐、早くなんとか助けてちょうだい！」

可憐「あっ、すみません。もう定時なので帰らせていただきます」

雪歩「薄情！」

可憐「と見せかけて、アロマキック！」ﾍﾟﾁｯ

雪歩「ろいずっ！　だから、ただの平手じゃん！！」

可憐「お嬢様、ああ！　大変、こんなにちんちくりんになってしまって」

雪歩「元からだよ！！！　って、それほどでもないよ！」

可憐「ふっ、悪党め、冥土の土産に教えてあげます…！　メイドだけにっ…！」ﾄﾞﾔｧｧ

雪歩「ドヤ顔世界一可愛いよ！」

可憐「実は雪歩お嬢様は旦那様と奥様の子ではなく、妾との子なんです…！」

雪歩「その手の話でありがちだけど、今、明かす話！？」

可憐「そして私こそが実子で、この家の財産を正当に継ぐ者……！」

雪歩「もうめちゃくちゃ！！」

可憐「けれど、そんなお金や地位よりも、私はお嬢様との愛を選びます……！」

雪歩「最終的にいい話か！！　とってつけたようなゆきかれ要素！」

可憐「―――これで、いつメイド役がきてもばっちりですね……♪」

雪歩「そんなことないんじゃないかなぁ！！」


お、おわりです！

以上です　
任侠って本来はそういう意味じゃないみたいっすね
それはそうと、ゆきかれメイドコラお願いします

いいね😉