【安価SS】全8話 765プロ劇場ドラマ制作!
1 :   2021/08/05 20:36:02 ID:7Ez7aEaegU
立つかなー
2 : Pたん   2021/08/05 20:36:54 ID:7Ez7aEaegU
立ちました!
第4回となりますが、これまでと内容面でつながりはありません。
安価形式としては、こちらで用意したあらすじ(大枠)の穴を埋めていってもらいつつ、物語の舵取りをしてもらうイメージです
過去の制作に軽く目をとおしていただければ雰囲気がわかるかも

1.メイン:琴葉「星空と珈琲を」
http://imasbbs.com/patio.cgi?tr=all&read=20101

2.メイン:のり子「失われた陽だまりを求めて」
http://imasbbs.com/patio.cgi?tr=all&read=20542

3.メイン:可憐・昴「フレグランスは写らない」
http://imasbbs.com/patio.cgi?tr=all&read=20907


これまでの反省をふまえて今回の方針
・公序良俗を遵守 2021夏中の完結を目標とする

・安価箇所と会話パートを含み、物語の流れを決めていく「下書き」と、展開を追いやすいようにまとめた「清書」で構成予定

・字数については、短すぎず長すぎずを意識 明確な制限はなし 勢いを大事に

・一部例外を除いて安価募集期間(=レスの有効期限)を24時間程度に 

・1つでもレスがつけば続行
3 : プロデューサークン   2021/08/05 20:38:05 ID:7Ez7aEaegU
8/8夕方あたりに第1話をスタートするために、まずタイトル&メインキャスト(3名)候補募集を行います
タイトル名(必須)とジャンル(任意)のレスをお願いします!
ただし、長すぎるものやこれまでの続編と思しきもの、また固有名詞としてアイドルの名前が含まれている等々、こちらが不適切と判断したものは候補から外させてもらいます

そのドラマに出演するキャストをID判定により選出します
=これまと同様にミリシタアプリ内のアイドル順に並べた際の765プロ所属52人それぞれにアルファベット小文字・大文字を割り振る方法
例:天海春香=a、春日未来=n、桜守歌織=Z
IDに3種類以上のアルファベットが原則含まれると仮定して、左から読んだ際に1~3番目に現れたIDで判定処理
※琴葉・のり子・可憐・昴の4人についてのみ判定をずらして処理
※もし2種類以下の場合は直後のレスを使用

→タイトル&メインキャスト候補(最大数6 同一ID無効)選出期限
8/6 18:00まで 
万一、これより前に最大数に達したらスケジュール前倒し
4 : プロデューサーくん   2021/08/05 20:38:40 ID:7Ez7aEaegU
今回は集まった候補それぞれについて、(コラ修行の一環として)イメージコラージュを作成したうえで、多数決か何かで実際に展開するドラマを決めていこうかなと考えています
コラは添付画像を参照 本格的なやつは作れないので、あくまでスレ主個人のイメージの出力ということでお願いします

5 : お兄ちゃん   2021/08/05 20:39:20 ID:7Ez7aEaegU
【まとめ】
このレス直後から、今回のドラマのタイトル名をレスしてください!
ジャンルの付記は任意 
同時に、いただいたレスのIDによってメインキャスト候補(3名)の選出を行います

採用レス最大6(1つでも書く気はあります)
締め切り 8/6 18:00

ご協力お願いします!
6 : せんせぇ   2021/08/05 20:44:43 ID:zU.aW44.iE
あなたの眼差しはどこへ

切ない要素ありのヒューマンドラマ
7 : おやぶん   2021/08/05 21:02:07 ID:dz2aXEXeMQ
〇〇(アイドル名)'sキッチンへようこそ

料理バトルドラマ
8 : do変態   2021/08/06 16:14:25 ID:i1rQQ23QMc
選出処理経過
>>6 zU.aW44.iE
→(z,U,a)→「U」=昴なので再判定→(z,a,W)=(百合子・桃子・春香)
「あなたの眼差しはどこへ」
切ない要素ありのヒューマンドラマ

>>7 dz2aXEXeMQ
→(d,z,a)=(雪歩・百合子・春香)
「〇〇(アイドル名)'sキッチンへようこそ」
料理バトルドラマ

何の因果か、現段階では百合子・春香の2人がメインキャスト内定

残り2時間足らずですが、まだ募集しております!
9 : der変態   2021/08/06 18:13:41 ID:wBKfmuyAVE
お、立ってる
今回も楽しみにしてます
10 : プロデューサーさん   2021/08/06 18:30:32 ID:6/be6mwh1k
今頃前回のエピローグを読んでいる大たわけが通ります
今回もどうぞよしなに
11 : 高木の所の飼い犬君   2021/08/06 18:54:52 ID:v9rvx2C67.
もうタイトル募集終わってたか
過去作はシリアスめなのが多いから今回はガッツリコメディとかどうかな〜なんて
12 : 下僕   2021/08/06 19:11:45 ID:wBKfmuyAVE
受験ドラマとか()
13 : Pたん   2021/08/06 20:51:21 ID:i1rQQ23QMc
あたたかい(?)レスありがとうございます!
パパパパパッとコラ作りました
14 : 変態大人   2021/08/06 20:51:46 ID:i1rQQ23QMc
A
あなたの眼差しはどこへ

15 : そこの人   2021/08/06 20:54:42 ID:i1rQQ23QMc
B
YUKIHO'Sキッチンへようこそ

※今更ですが、タイトルにアイドル名が含まれていますがID判定選出後を前提にしていたのでこちらも候補に採用しています

16 : 高木の所の飼い犬君   2021/08/06 20:58:05 ID:i1rQQ23QMc
というわけで、それぞれメインキャストのうち最初にIDとして登場したアイドルを使ってタイトル作成してみました
3人で作ろうとしてうまくできずに、けっこうな時間を無駄にしたのは内緒だよ!

8/7 22:00 までにレスがついた数(選択された数)が多い方を今回は制作していきます
念のため言っておくと両方は体力と時間的に無理です

ご協力お願いします!
17 : ぷろでゅーしゃー   2021/08/06 21:16:54 ID:IFsHHp7NeU
B
18 : 仕掛け人さま   2021/08/06 21:31:40 ID:/BcvpJ9eB.
B!
19 : お兄ちゃん   2021/08/06 21:57:42 ID:6/be6mwh1k
お盆に描かれたのが不安だがBで
20 : 1   2021/08/07 16:53:34 ID:bkkmXhMgOk
定期age
Bでほぼ確定かなー
こちらの裁量で、締切早めて今夜中(20時〜)にプロローグ部分出せたら出すかもです
21 : Pサン   2021/08/07 17:10:37 ID:epNo2Ivo7k
今回もできる限り安価に参加したい
22 : Pチャン   2021/08/08 06:50:17 ID:hWjF25WXBM
レスありがとうございます!
第1話partA投下していきます!
23 : 貴殿   2021/08/08 06:51:22 ID:hWjF25WXBM
ゆるゆると時が流れる藍鱒町、この穏やかな町のひっそりとした路地裏に、乙女の悩みを解決してくれるお店があるらしい。
まるで異世界の食材を使って作られた、世にも珍しい料理の数々。お口の中がライブ会場。
支払いは現金?カード?電子マネー?いやいや、どれでもない。悩みと料理に見合った「対価」を客たちは支払うこととなる。
奇怪千万、摩訶不思議、幽玄なる料理店はその在り様とは裏腹に、安直かつ平凡にも店主の名をとって『YUKIHO'Sキッチン』と看板を掲げているという。
オリーブオイルはさほど用いないとの噂ではあるのだが……。
24 : ぷろでゅーしゃー   2021/08/08 06:51:55 ID:hWjF25WXBM
9月。夏休みが明けて間もない頃。高校1年生の【ID判定】は【A】のことで悩んでいた。
そんな彼女がとぼとぼと独り、下校しているといつの間にか見知らぬ路地裏に迷い込んでおり、辺りから何とも言えないふしぎな香りがするのだった。
その香りにつられるままに、ふらりふらりと路地の奥へと進んでいくと、暗がりにぽつんと明かりの灯る店があった。
香りはたしかにそこからするようだ。看板には『YUKIHO'Sキッチン』―――見た目は【B】

彼女が店の前で立ち尽くしていると、後ろから大きな荷物を背負った、自分と年の変わらない少女がやってきた。
頭にリボンをつけた彼女は「お客さん?」と微笑みかけてきた。曖昧な返事をよこしてから、「このお店の人ですか?」と訊ねてみると、彼女は「はい!」とどこか嬉しそうに返事をよこした。
「えっと……ウェイトレスさん…?」
「うーん、たしかに給仕も任されているけど、それだけじゃなくて、まぁ、いろいろやっているんですよ!えっへん♪」
「は、はぁ……」
「ささ、どうぞ、どうぞ。中に入ってくださいな」
「えっ、いや、でも、そんなに持ち合わせもないですし、それにお腹もそんなに……」

「ですが、ここにたどり着いたということは、貴女にはここで料理を召し上がり、解決したい悩みがあるということ。この世には偶然などなくあるのは必然だけなのです」
断るための体のいい文句を探していると、そばでそんな声がした。声のした方向を見やると、いつからいたのだろう、そこに本を持つ少女がいた。
25 : P様   2021/08/08 06:52:21 ID:hWjF25WXBM
「あっ、百合子ちゃん」
「春香さん!私のことはセブンテールと呼んでくださいと以前から何度もお願いしているじゃないですか」
「えー……百合子ちゃんっていう名前のほうが可愛いよ?百合子ちゃんにぴったり」
「~~~っ。と、とにかく下手に真名を呼ばれるのは光と闇とあと風の眷属である私にとっては……」
百合子と呼ばれた少女は、春香と呼ばれた子が普通の恰好をしているのと違って、【C】を着ていた。
それから2人はあれやこれやと話し始める。
彼女たちが話しているのを見守ることしかできず、いっそのこと、そろりと引き返してしまおうかと思い始めた。
けれども、この香りに惹きつけられたのも確かな事実で、この場を易々と去ってしまうのも、もったいないような……。

2人に声をかけるべきかと迷っていると、店の扉が開いた。そして現れたのは美しい少女。
「春香、それに百合子。お客様が困っておられるわよ。無駄話はおよしなさい」
面差しにどこか儚さを漂わせるその少女はすぐに状況を把握したのか、それとも開くより先に察していたのか、儚さとはかけ離れた強かな口調でぴしゃりとそう言ってのけた。
26 : do変態   2021/08/08 06:52:37 ID:hWjF25WXBM
「し、白雪さん。すみません」
「ごめんね、雪歩」
「謝る相手がちがうでしょう?」
「で、ですよね!」
「うう……」
「い、いえ、私なら平気ですから!」

白雪とも雪歩とも呼ばれた少女が見つめてくる。その眼差しは深い部分まで見抜くよう。
「平気ということもないでしょう。ここへとやってきたということは、あなたは今、何か悩みを抱えているはず。心の平穏をかき乱すような問題を」
「―――っ」
百合子が似たようなことを口にはしていたが、それよりもずっと真に迫った、心を見透かされたと感じる声だった。

返答に窮していると、少女が頭を下げる。春香と百合子もそれに倣ってお辞儀をする。
「YUKIHO'Sキッチンへようこそ」
顔をあげた少女は上品な笑みを浮かべて、そう言った。
27 : do変態   2021/08/08 06:53:15 ID:hWjF25WXBM
※【ID判定】悩める乙女(1人目) このレス直後のレスのIDを判定に使用 メインキャスト3人の場合、ずらして判定。 
※【A】抱えている悩みとは? 夏休み明けという設定がありますが、そこを参考にするかは任せます。いきなり重すぎるのは勘弁してください。
※【B】店の佇まいについて 
※【C】百合子の服装 過度な露出等、放送できない・事務所NGなものは採用しません セーラー水着もお控えください
※【D】partBで作る料理 ただし食材は現実のもとの異なる予定 効果と対価は悩みが決定しないとダメなのでpartBで安価予定

※第1話では難しいですが、バトル(対決?)要素も第2話以降に加える予定 わ、わわ忘れていたわけじゃないんです、ほんとです、はい、すみません……。
※第1話partB以降、コメディ色強くしていくかも 
レスの有効期限 8/9 06:59:59まで
清書は明日中に投下予定

ご協力お願いします!
28 : プロデューサー様   2021/08/08 07:57:35 ID:s4sCuwvjhI
A休み明けテスト
B茶畑をイメージした和風のデザイン
C赤いノースリーブにジーンズ、そしてスニーカー
Dところてん
29 : バカP   2021/08/08 08:45:38 ID:AdZjs88QDk
A 文化祭の出し物
B□-ソンの居抜き物件
Cチナ・オアハケーニャ(メキシコの民族衣装)
Dタコス
30 : Pさん   2021/08/08 09:42:21 ID:JY.aoJowtE
A休み明けから親友とギクシャクしている
B看板が出ている事以外はただの一軒家
Cセンスを疑うレベルの派手な色をした割烹着
D麻婆茄子
31 : 兄(C)   2021/08/08 11:35:34 ID:dWV0WzS8mY
A友人関係
Cアカデミックドレス
Dリゾット
32 :   2021/08/08 18:16:37 ID:W3c1lJv0RM
A:部活動での悩み
仲間達の不甲斐なさ(次年度での予算削減を前に、春は予選落ち、このままでは秋では一回戦負けが濃厚)
B:古いが造りはしっかりしている(一見して和風)
C:(添付画像参照)、着替えは一応あるらしい
D:ラタトゥイユ、それを基にしたバリエーションの数々

33 : Pチャン   2021/08/09 08:40:16 ID:/Re30laops
レスありがとうございます!
Recipe1 partA 
投下していきます

あとタイトルイメージ、作り直してみました
雪歩の立ち絵は某素材スレからお借りしました。やっぱクオリティ高いっすね
ただサムネだと肝心のドラマ名読めないかも…
今回、各話に合ったコラ作りは今のところ作るかは未定です

34 : P君   2021/08/09 08:40:35 ID:/Re30laops
Recipe01 partA

9月。夏休みが明けて間もない頃。高校1年生の佐竹美奈子は友人関係で悩んでいた。
休みが明けてからというもの親友とギクシャクしている。原因は夏休みにある。
もともとは夏休みに定期的に会って、遊ぶついでに勉強を、という計画を立てていた。そうだ、遊びが最優先。
高校1年生の夏は一度しかないのだから――――。八月中旬まではうまくいっていた。最高の夏だった。遊びに勉強、部活。なかったのは恋愛ぐらいか。
親友が熱中症で倒れた日、美奈子はわっほ、わっほと部活動に励んでいた。
彼女が倒れたことを知ったのは日をまたいでから。いくつかの偶然の重なりが、その倒れた日に限って親友と連絡をとらない選択を美奈子にさせたのだった。
その選択を親友は快く思わなかった。それから2人のすれ違いが始まった。
「お見舞いにきてほしいなんて言うつもりはないけれど、でも気にかけてほしかったし、単純に……声が聞きたかった、安心させてくれるその声を……」
そんなふうにぼそぼそと電話口で言われたのは、もう夏休みが終わりに差し掛かった頃だった。
結局、夏休み明けテストの出来も散々で、文化祭の出し物の準備にだって身が入らず、何にも事情を知らないクラスメイトから非難されもした。
35 : バカP   2021/08/09 08:40:48 ID:/Re30laops
美奈子が独りで俯き気味に重い足取りで下校しているといつの間にか見知らぬ路地裏に迷い込んでいた。
辺りから何とも言えないふしぎな香りがする。その香りにつられるままに、ふらりふらりと路地の奥へと進んでいくと、暗がりにぽつんと明かりの灯る店があった。
香りはたしかにそこからするようだ。見た目は古めかしい和風の一軒家。その色合いは茶畑を想起させる。古くはあるが、造りはしっかりしており、今なお住居として機能している気配は充分にする。
とすれば、異様に思えるのは掲げられた看板――『YUKIHO'Sキッチン』
いやいや、ミスマッチじゃない?と美奈子は思う。親友がいたなら、声に出してオーバーにツッコミをいれていたかも。
美奈子が店の前で立ち尽くしていると、後ろから大きな荷物を背負った、自分と年の変わらない少女がやってきた。
頭にリボンをつけた彼女は「お客さん?」と微笑みかけてきた。美奈子は曖昧な返事をよこしてから、「このお店の人ですか?」と訊ねてみると、彼女は「はい!」とどこか嬉しそうに返事をよこした。
「えっと……ウェイトレスさん…?」
「うーん、たしかに給仕も任されているけど、それだけじゃなくて、まぁ、いろいろやっているんですよ!えっへん♪」
「は、はぁ……」
「ささ、どうぞ、どうぞ。中に入ってくださいな」
「えっ、いや、でも、そんなに持ち合わせもないですし、それにお腹もそんなに……」
36 : ご主人様   2021/08/09 08:41:07 ID:/Re30laops
「ですが、ここにたどり着いたということは、貴女にはここで料理を召し上がり、解決したい悩みがあるということ。この世には偶然などなくあるのは必然だけなのです」
断るための体のいい文句を探していると、そばでそんな声がした。声のした方向を見やると、いつからいたのだろう、そこに本を持つ少女がいた。

「あっ、百合子ちゃん」
「春香さん!私のことは風来のセブンテイルと呼んでくださいと、以前から何度もお願いしているじゃないですか」
「えー……百合子ちゃんっていう名前のほうが可愛いよ?百合子ちゃんにぴったり」
「~~~っ。と、とにかく下手に真名を呼ばれるのは光と闇とあと風の眷属である私にとっては……」
春香と呼ばれた子がごく普通の服装をしているのに対し、百合子と呼ばれた少女は黒いドレスを着ていた。
いわゆるゴスロリに分類されるであろう代物だ。美奈子の視線に気づいて百合子は言う。

「これはビスクドール・ノワールというんです!」
ふわっとその場で一回転。そしてドヤ顔。かわいい。
「大丈夫?百合子ちゃん、今度は言い間違いしていない?」
「なっ!べ、べつにあれは私のせいじゃないです!……こほん。『深淵の住人より漆黒のドレスを賜った可憐で無垢な人形姫は、無慈悲な運命の糸に抗い続ける。…その時間は刹那か永遠か』」
「衣装詳細だね。あ、気にしないで。この子、いつもこんな感じだから」
「そ、そうなんですね」
どうやら2人は親しい仲であるようだ。
37 : プロデューサーちゃん   2021/08/09 08:41:28 ID:/Re30laops
それから2人はあれやこれやと話し始める。
彼女たちが話しているのを見守ることしかできず、いっそのこと、そろりと引き返してしまおうかと思い始めた。
けれども、この香りに惹きつけられたのも確かな事実で、この場を易々と去ってしまうのも、もったいないような……。

2人に声をかけるべきかと迷っていると、店の扉が開いた。そして現れたのは美しい少女。
「春香、それに百合子。お客様が困っておられるわよ。無駄話はおよしなさい」
面差しにどこか儚さを漂わせるその少女はすぐに状況を把握したのか、それとも開くより先に察していたのか、儚さとはかけ離れた強かな口調でぴしゃりとそう言ってのけた。

「し、白雪さん。すみません」
「ごめんね、雪歩」
慌てて2人は謝る。

「謝る相手がちがうでしょう?」
「で、ですよね!」
「うう……」
「い、いえ、私なら平気ですから!」
今度は美奈子が慌てた。
38 : 仕掛け人さま   2021/08/09 08:41:42 ID:/Re30laops
そして、白雪とも雪歩とも呼ばれた少女が美奈子を見つめる。品定めとは違うが、しかしその眼差しは深い部分まで見抜くようだった。
「平気ということもないでしょう」
「へ?」
「ここへとやってきたということは、あなたは今、何か悩みを抱えているはず。心の平穏をかき乱すような問題を」
「―――っ」
百合子が似たようなことを口にはしていたが、それよりもずっと真に迫った、心を見透かされたと感じる声だった。



返答に窮していると、少女が頭を下げる。春香と百合子もそれに倣ってお辞儀をする。
「YUKIHO'Sキッチンへようこそ」
顔をあげた少女は上品な笑みを浮かべて、そう言った。

partBにつづく
39 : おやぶん   2021/08/09 08:44:27 ID:/Re30laops
※【D】についてはどれを採用したかはpartBで明示
※親友については特定しません あの子だと、2話以降に登場するかもしれないし。兼ね役でもいいですけどねー

ご意見・ご想像募集中です
partBは早ければ今夜、遅くとも明後日早朝には

何卒最後までお付き合いください!
40 : せんせぇ   2021/08/09 09:07:41 ID:ycadqa5K0E
始まったばかりだけど、どういう風なバトルになるのか楽しみ
41 : 魔法使いさん   2021/08/09 09:15:12 ID:z75Xwyy2Ws
いかん、ツッコミという言葉で親友枠は奈緒なのかと思ってしまう
42 : 兄ちゃん   2021/08/09 15:06:25 ID:/Re30laops
予定より早いですが書けたので、Recipe1 partB(下書き)投下します
43 : ダーリン   2021/08/09 15:06:52 ID:/Re30laops

薄暗く長い廊下だった。
お店にしては小さな玄関から入って、土足のまま進んでいく。
雪歩の背中を追う。雪歩は姿勢がいい。なんというか洗練されている歩き方だった。自分よりも身長の低い少女からそんな格式高い印象を受ける美奈子。
従業員用の出入り口なんてあったのかな、気がつけば百合子も春香もいない。玄関まではいっしょだったような。
ようやく雪歩が足を止め、戸を開く。「こちらへ」と半身を返して、美奈子を誘う手振り。
戸の先は明るい。美奈子は進む。

和モダンとでも形容すればいいのか、室内は完全な和室でも洋室でもない。
和洋折衷と言うしては主体はあくまで和。もてなす相手と振る舞う料理が多岐にわたるからこその造りだろうか。
正直、内装を描写するのは面倒だし、読むほうだって疲れるだろうから好きに想像してほしいというのが伝わってきた。

「体質で食べられないもの、好みで食べたくないものはおありですか?」
「い、いえ………。あ、あの、私―――」
何からどう言えばいいのか。お金なんて夏休み中に散財したから今は財布に765円しかないってことや、この劇中では佐竹飯店は存在しないってこと、そして親友のと件。
美奈子の頭に次々と浮かんでは沈んでいく考え。浮かび続けるのは、ここで待つことしか自分はできないのだという直感。
が、不安は募る。それを見て取ったのだろう、雪歩がそっと美奈子の手を握り、微笑む。
「なるようにしかなりません。あとは祈ることしかできないのです。あなたも私も」
占い師にしても料理人にしても無責任な台詞。安心というより、ぽかんと呆けてしまった美奈子を置いて、雪歩は去った。
44 : おやぶん   2021/08/09 15:07:16 ID:/Re30laops
― 厨房 ―

百合子「白雪さん、白雪さん!」
雪歩が入ると百合子が興奮した様子で近づいてくる。

百合子「今日は何にします?あの人に何をお出しするんです?」
雪歩「さぁ?春香が持ってきてくれたものしだいだわ」
春香「うんうん♪ ちょうど私の仕入れが終わったタイミングでやってきたんだから、あの子のための食材なんだって思うな。きっとそうに違いないよ。今日はね、面白いものが手に入ったんだ」
雪歩「へぇ…?」
春香「ほら、この魚!」
百合子「わぁ、真っ白な魚。雪みたいですね」
春香「ね? 尾も白い!だから面白い!ふふっ」
雪歩・百合子「…………」


雪歩「で? お勧めはあるかしら?」
春香「オスメスなら。この蝶の番なんてどうかな?」
雪歩「あの子は見たところ、パンピーみたいだから、そんな初恋バタフライなんて食べさせられないわよ」
百合子「ん、ん。ここはやっぱり私に任せていただけませんか」
春香「で、でたー! 百万のレシピを知る乙女にして、厨房のシベリア鉄道、人呼んで、とある料理の禁書目録(インデックス)こと、七尾百合子だぁー!」
百合子「セブンテイルズです!」
雪歩「名前、ころころ変わるね。まあ、いいわ。ここにある食材でのレシピの候補の検索、お願いできる?なるべく早く」
百合子「お任せあれ!サーチ&デストロイは得意分野です!」
春香「いや、壊さなくていいから」
雪歩「その間、私はお客様にお茶を出してくるから」
春香「はーい」
45 : 高木の所の飼い犬君   2021/08/09 15:07:36 ID:/Re30laops
厨房に残った百合子と春香。百合子が深呼吸をする。
大切に抱えていた本を、表紙を上にして呪文を唱えはじめる百合子。

百合子「百万の味の力を秘めし魔導書よ 我の前にその味を示せ 契約のもと七尾百合子が命じる――――」
春香(やっぱり百合子ちゃんじゃん。というかレシピ知っているのは本であって百合子ちゃんではないのでは?)

百合子「【A】!」

魔導書が自動で開き頁がめくられていく!
尽きることのない頁は行ったり来たりを繰り返す。この場にある食材、また季節やその他の条件を基に魔導書がレシピを導き出す!
しばらくして、バサッ、バサッと頁が数枚、勝手に本から離れて舞った。

百合子「あわわわ」
そのうちの一枚が百合子の顔に貼りつく。
百合子「んー、んー!」
春香「はいはい、今とってあげるから」

散らばった頁を拾うと共に百合子に貼りついた頁を回収する春香。
春香「へぇ……これなんてよさそうだね」
百合子「春香さん、読めないですよね」
春香「雰囲気ですよ、雰囲気!ほら、イラストも載っているから、なんとなーくわかるでしょ?」
百合子「それはそうですけど……えっと、これは―――」
顔に貼りついてたいた一枚を百合子は見る。
46 : プロデューサーちゃん   2021/08/09 15:07:53 ID:/Re30laops
雪歩「ふうん、【B】を具材に使ったタコス?面白そうね」
百合子「きゃぁっ! も、もう、白雪さん、いつ戻っていたんですか!そんな後ろから耳元で……恋しますよ!」
春香「タコスかー。だったらトルティーヤを生地をこねるところからやってさ、タコスパーティにしようよ!」
雪歩「タコスパーティ?」
百合子「みんなでやるから尊いんですよね、絆が深まるんですよ!」
雪歩「悪くない案だけど、今は例のお客様のために作るだけにしておきましょう」
春香「えー」
雪歩「隠し味は……心太でもいれておこうかな」
47 : Pサマ   2021/08/09 15:08:15 ID:/Re30laops
春香「しゃあっ! 完成!!」
百合子「!? えっ、あの、レスとんでませんか?だって、調理しているところなんて一切……」
雪歩「『YUKIHO'Sキッチン』の中ではこの世の時間は消し飛び、すべての食材は切られたことにも、焼かれ、煮られたことにも気づかない!残るのは『結果』だけなんですぅ!」
百合子「ひ、ひええええ」
春香「第1話からがっつり描写すると尺がどうこうより、2話以降の描写のハードルがあがっちゃうんだよぉ~!」


― 客間 ―

雪歩「お待たせしました」キリッ
美奈子「これは……」
予想外の一品に動揺する美奈子。さっき出された冷たい麦茶をそのまま浴びせられたかのような衝撃。
和食じゃないにしても、まさかこれがくるなんて。……変わった匂いがする。
にこにことしている雪歩だが、食べることを断れば般若の表情になるかもしれない。
美奈子「ええい、ままよ!」
余談だが『はじける夏の味♪ 佐竹美奈子』の覚醒後イラストの美奈子にかぶりつきたいPも多いのではないだろうか
48 : せんせぇ   2021/08/09 15:08:37 ID:/Re30laops
美奈子「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」
春香「おかわりもあるからね」
百合子「宴だ~~!!!」
美奈子「!?(いつからここに!?)」

雪歩「いかがですか、お味は」
美奈子「え、えっと、不思議な味ですけど……で、でも美味しいです、このナチョス」
雪歩・百合子・春香「ナチョス!?!??」
美奈子「ち、ちがいましたか?」
春香「百合子ォ!!」
百合子「私ですかぁ!? 白雪さんがタコスって……」
雪歩「あー、うん、おいしいですよね、ナチョス。えっと、イタリア?」
春香「メキシコだよ!国旗の色で判断するんじゃないよ!」
百合子「国旗についてはマークの有無以外に緑の濃さも違うって話ですしね!」
雪歩「タコスもナチョスもトルティーヤ使っているから似たようなものです。そうですよね?」
美奈子「アッ、ハイ」
49 : お兄ちゃん   2021/08/09 15:09:12 ID:/Re30laops
雪歩「さて、実はそのタ…ナチョスにはあなたの悩みを解決する効果があるんです」
美奈子「えっ!?」
雪歩「ですが、同時に対価として【C】という結果をもたらしもするんです」
美奈子「なんで!?」
百合子「世の中、得るだけのことなんてありえません。同時に失いもするんです」
美奈子「え、えぇ……」
春香「こんな等価交換、某錬金術師でも予想だにしなかったでしょうね」
雪歩「さ、そろそろお帰りください。日が完全に沈むとこのあたりはよく出ますから」
美奈子「で、でるって、痴漢とか?まさか幽霊?」
春香「チュパカブラですよ、チュパカブラ!」
美奈子「!?」
百合子「心配ですね。白雪さん、この方に何か魔除けのアイテムを授けたほうが……」
雪歩「うーん、塩でも撒く?ちょうどこの前、可愛い見習いサンタにもらったんだけど」
美奈子「け、けっこうです!お邪魔しました!」バタンッ


美奈子は急いで店を出る。廊下はなぜか来た時よりずっと短くなっていたのだった。
路地裏を抜けるところで、後ろを振り返ると建っている場所からしてその奥にかすかに見えるはずの店はどこにもなかった。
狐か狸にでも化かされたのだろうか、いや、あの子たちだったらむしろ妖精?
いずれしても口にはまだナチョスの匂いが残っていた。
……胃洗浄したほうがいいかな。

(以下、美奈子と親友のギクシャク解決編加筆)
50 : あなた様   2021/08/09 15:09:32 ID:/Re30laops
その夜
雪歩たち3人がナチョスではなくタコスパーティをしていると、ドンドンドンと店の扉を叩く音がした。
3人は顔を見合わせる。ここに来れるのは資格のある者だけ。お客さん?
しかし基本的には一日、一組のはずだが……。
百合子「あ、あの、ひょっとしてチュパカブラなんじゃ……」
雪歩「師匠お手製の結界をどうこうできるチュパカブラなんていないと思う」
春香「どうする?これも縁。いなくなるのを待つのはあんまりじゃないかな」
雪歩「それもそうね。春香、見てきて」
春香「!?」
百合子「ふふっ、言いだしっぺの法則ですよ」
雪歩「念のため百合子も連れていっていいわよ。囮にはなるでしょ」
百合子「鬼畜!」

春香と百合子がおそるおそる店の出入り口までいって、扉に向かって声をかけると、くぐもってはいるが聞いたことのある声が返ってきた。

春香「え?【ID判定】さん/ちゃん/(呼び捨て)!?」
百合子(誰……?)
51 : あなた様   2021/08/09 15:10:13 ID:/Re30laops
扉を開けると、息を切らして彼女は言う。
「雪歩さん/ちゃん/(呼び捨て)を呼んで!奴らが動き出したわ!」

百合子「や、奴ら!? ほ、ほほほんとにチュパカブラが」
春香「ううん、そうじゃないよ、百合子ちゃん」

パニックになりかけの百合子とは違い、春香は冷静であったがその表情には緊張感がある。
訪問者と春香は顔を見合わせ、頷き合った。
春香は何か心当たりがありそうだが……?
52 : Pさん   2021/08/09 15:10:49 ID:/Re30laops
※【A】百合子が魔導書の力を解放するときの掛け声とは?

※【B】特製タコス(ナチョス)に用いる材料は? 1レス最大3つまで可 採用枠は最大で5 逆に少なければこちらで適当に足します

※【C】美奈子の悩みを解決するための対価 文中の「失う」にとらわれなくてもいいです 

※【ID判定】訪問者 この直後のレス 登場済みキャラの場合、再判定処理

※物語の方針は二転三転するかも(予防線)

レスの有効期限は 8/10 17:59:59まで
ご協力お願いします!
53 : おにいちゃん   2021/08/09 15:45:39 ID:er3ivkB3Xk
A:お願いだから開いてください!
B:鯖、ナス、味噌
C:あらゆる関節を曲げ伸ばすとよく鳴る
54 : 変態インザカントリー   2021/08/09 15:49:57 ID:mh7PowzCpQ

B 何かの肉(少なくとも牛豚鶏羊等一般的なものではない)、キャベツ、チリソース(オリジナルブレンド)
C 何故かこの店の存在を他人に話す気がなくなる
55 : Pチャン   2021/08/09 16:51:00 ID:ycadqa5K0E
A開けゴマ!
B大根、白菜、春菊、豆腐、茄子
C今日から1週間、語尾が「ザマス」になるザマス
56 : ボス   2021/08/10 09:07:00 ID:g6tAJHZbEI
A: ‘Gia Corm Fillippo Dia!’など、何処かで見たような呪文
いくつか繋げ合わせたりして、他の人に「適当なんじゃない?」と突っ込まれたりして
B:何故かあるミニリンゴ、ミニプルーン、胡椒の植木から生の実をもぎ取ってすりつぶす
C:記憶を一時的に失う(ベタなところで友達との思い出とか)
何かの拍子で記憶が蘇ると涙が止まらなくなる
57 : プロデューサーくん   2021/08/10 12:24:50 ID:5jKd.SlkxU
Aウィンガーディアム・パトローナム!
58 : Pサマ   2021/08/10 22:26:14 ID:RMhXCeYKZw
レスありがとうございます!
Recipe1 partB 加筆清書投下していきます

>>2で「清書」は「展開が追いやすいようにまとめたもの」なんて言っていますが忘れてください!
59 : Pサン   2021/08/10 22:26:33 ID:RMhXCeYKZw
Recipe1 partB
(前略)
雪歩にレシピの選出を頼まれた百合子はそれまで大切に胸元に抱えていた本を天にかざすように持ち直す。

百合子「百万の料理を知り、幾数億の味をもたらす魔導書よ―――」

本が百合子の手を離れ浮遊する。そして妖しげな光を発し始めた!

百合子「我が声に応え その力を示せ 契約のもと七尾百合子が命じる」

百合子「テクマクマヤコンテクマクマヤコンマハリクマハリタヤンバラヤンヤンヤン」

本がひとりでに開く!

百合子「私の願いを聞けぇええええええ!!」

頁がめくられていき、行ったり来たりと決して頁の尽きることのない魔導書が乙女の叫びに応じて求めるものを探し始めた
やがて十数枚の頁が本を離れて極小の竜巻に乗って浮遊し、そしてはじけた!
百合子「あわわわわわわわわ」
そのうちの一枚が百合子の顔に貼りつく。
百合子「んー、んー!」
春香「はいはい、今とってあげるから」
60 : バカP   2021/08/10 22:26:53 ID:RMhXCeYKZw
(中略)
雪歩「どうやら材料には茄子と……」

春香「かこ?」

雪歩「ううん、ナス」

百合子「ナンス?」

雪歩「なすだよ。卵サイズの丸型から細長い大長、形や色は時と場所で様変わりするけれど、今回はこっちの世界で広く流通しているものでいいみたい」

百合子「あの、これって何のお肉を使うつもりですか?頁には、用いる肉によって効果が違うとありますが」

春香「よしっ、きた!これなんてどう?」

百合子「?? なんですか」

春香「カエルですよ、カエル!ゲコゲコ~♪」

百合子「えっ」

雪歩「グルヌイユってやつね。フランス語で食用の蛙を指す言葉。食べるのは専ら後ろ足の部分だけ」
61 : Pサマ   2021/08/10 22:27:15 ID:RMhXCeYKZw
雪歩「味噌チリソースをベースにして、この際、百合子が大事に育てているミニリンゴをもぎとって、すりつぶしてつかうわね」

百合子「ああっ!ひ、ひどい!育て上げれば禁断の果実に成長するっていうふれこみの品種なのにぃ」

春香「どうせろくでもないって」

雪歩「ん……味は悪くないわね」

百合子「そ、そうですか。えへへ……」



― 客間 ―

雪歩「お待たせしました」キリッ
美奈子「これは……」
予想外の一品に動揺する美奈子。さっき出された冷たい麦茶をそのまま浴びせられたかのような衝撃。
変わった匂いがする
62 : Pさん   2021/08/10 22:28:01 ID:RMhXCeYKZw
雪歩の作ったナチョスは美奈子の悩み、すなわち親友とのこじれてしまった関係を修復する効果があるとのことだった。
しかしその一方でその親友との思い出の一部を失ってしまうらしかった
「一時的なものよ」
雪歩はそう言ったが、帰路についた美奈子は不安でしかたがなかった。
家へと歩きながら、彼女との出会いからひとつずつ、できるだけ丹念に思い出をたどっていこうとする。
何を失っているかわからない。どうせならあの日のことを、熱中症で倒れた彼女のもとへと、駆けつけることができなかったどころか、その日のうちに知ることもなかった、薄情な自分の記憶を失くしてくれたらよかったのに……。
不思議な味のナチョスを食べて、妙に浮ついた心はしだいに沈んでいって、美奈子は例の路地裏に迷い込んだときと同様に、俯き気味となってしまった。
だからなのか、家の前で待つ親友の姿に気づいたのはすぐ近くになってからだった。

顔をあげた美奈子に、親友は驚く。
「美奈子……なんで泣いているんや」
「えっ――――」

視界が滲むのを抑えられない。親友との思い出の軌跡を辿れば辿るほどに自分の不甲斐なさに涙をこぼしていたのだ。
美奈子は簡単に店での出来事、料理について話す。
「し、信じられないと思うけど」
話し終わってからそう言い足し、こんなこといきなり話されても困るよねとますます暗い気持ちになった。

しかし、親友は「なるほどなぁ」となぜか得心したふうにうなずく。
「私な、美奈子にどうしても会いたくなったん。会って、話して、それで……また元どおりになれたらって」
「……!」
「そのへんてこ料理にかけられた魔法のせいか知らんけど、とにかく私―――」
63 : 魔法使いさん   2021/08/10 22:28:24 ID:RMhXCeYKZw
「美奈子がいないとダメみたいや」ギュッ
「あ……」
「なんかひとつ、ふたつ思い出消えたからって、そんなの2人で思い出せばいい。なんだったら、これからどんどん新しい思い出作っていけばいいんちゃうかなーって」
「うん……うん……!」
「あー、もう泣きすぎ!ほら、わっほーい!って。な?」
「わ、わっほーい……ふふふ」
「やっぱり美奈子は笑っていた方がかわええな」
「~~~っ。も、もうっ!」




春香「エンダァーーーーーイヤァーーーー!!」
64 : P君   2021/08/10 22:28:42 ID:RMhXCeYKZw
百合子「ちょっ、春香さん、うるさい!ここまで尾行してきたのバレたらどうするんですか!」
春香「よかったよぉ……あんな料理でどうにかなって」
百合子「あんな料理!?」
??「ん……百合子さん、呼んだ…?」
百合子「あ、●奈ちゃん!? 呼んでないよ?! なんでいるの!?」
雪歩「やれやれ、一件落着ね。……帰ってタコスパーティにしましょう」
春香「わっほーい!」
65 : Pしゃん   2021/08/10 22:29:03 ID:RMhXCeYKZw
雪歩たち3人がナチョスではなくタコスパーティをしていると、ドンドンドンタコスと店の扉を叩く音がした。
3人は顔を見合わせる。ここに来れるのは資格のある者だけ。お客さん?
しかし基本的には一日、一組のはずだが……。

雪歩の指示で春香と百合子がおそるおそる店の出入り口までいく。
戸に向かって声をかけると、くぐもってはいるが「うっうー」と声が返ってきた。

春香「え!? やよい!?」

戸を開けると、息を切らして少女が言う。

やよい「ゆ、雪歩さんを呼んでください! あ、あの人たちが動き出したそうなんれす!」

百合子「!? まさか名前を呼んではいけない例のあの人、闇の帝王」

やよい「ちがいます」

百合子「あっ、はい」
66 : 高木の所の飼い犬君   2021/08/10 22:29:49 ID:RMhXCeYKZw
春香「そっか、あの子たちが……。雪歩に知らせないとね」

いつになく真剣な顔つきで春香はそう呟くのだったが―――?


Recipe2につづく
67 : バカP   2021/08/10 22:31:05 ID:RMhXCeYKZw
ご意見・ご想像募集中です
Recipe2下書きの投下は早ければ明日 遅くとも明後日の夜には

ご協力お願いします!
68 : Pさん   2021/08/11 07:40:25 ID:7m2an7Czlc
Recipe2下書きを投下していきます!
69 : 5流プロデューサー   2021/08/11 07:40:48 ID:7m2an7Czlc
店主にして料理担当・雪歩
仕入れから給仕、清掃、会計、その他諸々なんでもやります!春香
百万のレシピが記されし魔導書と契約した妄想文学少女・百合子

タコスパーティに興じていた3人のもとを訪れたのは――――


― 雪の間 ―

雪歩「…………」

春香「それで、やよい、本当なの?その……あの子たちが動き始めたって」

やよい「うう……念押しされちゃうと、自信なくなっちゃいます。で、でも!たしかに聞いたんです」
70 : 我が下僕   2021/08/11 07:41:18 ID:7m2an7Czlc
雪歩「誰から?」

やよい「【ID判定①】さんです」

百合子「え、それってあの凄腕の情報屋のこと?風の噂で聞いたことありますよ」

春香「うん。腕がよすぎて、名前が知れ渡ってしまっているんだけどね。まぁ、偽名には違いないし、変えないということは何か思い入れがあるんだろうけど」

雪歩「やよいは取引したわけじゃないでしょう?……やよいには甘いからね、あの人」

やよい「えーっと、口を滑らせてしまった感じだったかなーって」

春香「もしくは演技かもね。やよいにその情報を持たせてここに導くための」

雪歩「………」

百合子「あ、あの!」
71 : Pしゃん   2021/08/11 07:41:43 ID:7m2an7Czlc
春香「わっ、どうしたのいきなり大声あげて」

雪歩「お花摘み? はぁ……しかたないわね。さっさといってらっしゃい」

やよい「空気呼んでほしいかなーって」

百合子「ち、ちがいます! 私、その、知らないんです」



百合子「『HOTDOGS』っていったい何者なんですか」
72 : ぷろでゅーしゃー   2021/08/11 07:41:57 ID:7m2an7Czlc
春香「あー……」

雪歩「そっか、百合子と出会ったのはあの後でだったわね。あの頃は百合子もまだ契約者でなかっただろうし」

春香「知る由もない、か」

百合子「意味深トークはいいですから、とにかく教えてください!わ、私だって今はおふたりの仲間なわけですし」

やよい「そうなんですかー?」

春香「うーん……」

雪歩「仲間って言われると、ニュアンスが……」

百合子「私の扱いひどくないですか!?」

雪歩「もう家族みたいなものでしょ?」

春香「そうそう」

百合子「えっ、あ、そういうことですか!! え、えへへ……なんだか照れちゃいますね」

雪歩(……ちょろいわね)

春香(まぁ、そこも可愛いんだけど)

やよい(そろそろ話を進めていいですかー?)
73 : 兄(C)   2021/08/11 07:42:17 ID:7m2an7Czlc
雪歩が百合子に『HOTDOGS』について説明する。
それは3人組の料理人を示す名前であるそうだ。『YUKIHO'Sキッチン』のように特定の場所に店を構えてはいないが、彼女たちが雪歩たちと同じくハザマであることには違いない。

百合子「ハザマ?」
春香「私たちのように異界とこちらに跨って活動する料理人を指す言葉だよ。異界の食材、というより物質全般の、こっちの世界にもたらす影響を考えるとハザマの活動を快く思わない人たちもいるけどね」
雪歩「実際、機関には目をつけられがちね」
百合子「機関!? な、なんですかその中二病ワード!詳しく訊いていいですか!?」
春香「詳しくは知らないよ?」
雪歩「掘り下げるのも面倒だからたぶん最後までそんな関わらないよ」
やよい「雪歩さんは、掘るのは得意だって思いますよ!」
74 : ハニー   2021/08/11 07:42:45 ID:7m2an7Czlc
春香「で、『HOTDOGS』に話を戻すけど……」

HOTDOGS ハザマの美少女料理人グループ
3人のメンバーのうち2人については正体を雪歩たちは知っている。
1人は雪歩と春香の幼馴染であり、超人的な嗅覚を持つ少女・篠宮可憐
もう1人は可憐を『YUKIHO'Sキッチン』側から引き抜いた張本人である高坂海美

百合子「引き抜いた……?」
春香「そのへんの話は、また追々ね」
雪歩「………」


百合子「その熱犬たちが動きだしたって……ただのハザマの料理人とはちがうってことですか?」
春香「女子力ですよ!女子力!」
百合子「へ?女子力?」

雪歩がさらに説明する。
ここでいう女子力というのは、特定の異界料理によって主に乙女が得られる超常的な力のことだという。
百合子もそのことについては知っている。実際、これまでの『YUKIHO'Sキッチン』にきた客に対して、女子力UPメニューを振る舞ったこともあった。

春香「高濃度の女子力はオトメティックパワーに変換されるんだよ」
百合子「それはキネティックパワーと似たようなものと考えてもいいですか」
雪歩「中らずと雖も遠からずね」
やよい「すっごい力なんですー!建物の支柱とかブンブン振り回せるようにもなるんですよ」
百合子「ひぇええ」
75 : Pさん   2021/08/11 07:43:06 ID:7m2an7Czlc
春香「『HOTDOGS』たちはオトメティックパワーを効率よく摂取し、しかもそれをなるべく負担なしに運用できるような料理を作り上げようとしているの」
百合子「いったいなんのために……」
春香「さぁ……世界征服?」
百合子「壮大!」
雪歩「力を求めることに小難しい理由なんていらないわ。自分たちの作る料理で超人を生み出すことができる、それを快楽だと感じるのじゃないかしら」
百合子「でも……危険、ですよね?」
春香「うん。実際、私たちの師匠は―――」
雪歩「春香。それ以上いけない」
百合子「……私たちは家族じゃなかったんですか?」
雪歩「ごめんね、百合子。今はまだ話せない。けれど、いつか必ず話すから」
やよい「まだ書き手が考えていないだけかなーって」
76 : Pくん   2021/08/11 07:43:25 ID:7m2an7Czlc
百合子「まとめると……異界料理によって得られる高濃度の女子力、つまりオトメティックパワーは扱いが危険なもので、こちらと異界の均衡さえも脅かす存在になり得る。そしてそのOPを効率的に取り込む料理を作ろうとしているハザマが『HOTDOGS』……こ、これ、けっこうシリアスな展開なんじゃ…」
春香「落ち着いて百合子ちゃん。今すぐに彼女たちとの全面戦争編に突入するわけじゃないよ。居場所だってわからないし、止めるには情報が足りなさすぎるって」
雪歩「何はともあれ―――やよい、ありがとうね。今日はもう遅いから泊まっていきなさい。空き部屋はあるけど……客用の布団はきちんと綺麗にしていたかしら」
春香「んー、じゃあ、私といっしょに寝よっか」
やよい「えー」
春香「喜ぶところでしょ!!わた、春香さんと同衾できるんだよ?一生の思い出にしなよ!」
雪歩「やよい、【A】でいい?」
やよい「うっうー、わかりましたぁ!」
(以下、加筆予定)
77 : プロデューサーはん   2021/08/11 07:43:38 ID:7m2an7Czlc
翌朝、春香がやよいを家まで送り届けに出発してから、百合子は厨房に向かう雪歩を引きとめる。

百合子「あの、白雪さん……その、」
雪歩「質問は1つだけ」
百合子「は、はい。じゃあ、【B】」
(以下、雪歩の返答加筆)
78 : プロちゃん   2021/08/11 07:44:20 ID:7m2an7Czlc
昼過ぎ。3人で小さな中庭を上手に使って流しそうめんを堪能し、その片付けがちょうど終わった頃、誰かが店に近づく気配を3人は感じた。

雪歩「パンピーね」
百合子「お客様ですね!」
春香「大したもの、仕入れていないんだけどなー」

果たして店の前できょろきょろとしている、いかにも迷い込んできた少女/女性を春香が見つけた。
彼女の名前は【ID判定②】というらしい。
『HOTDOGS』のことは気になるが焦ってもしかたない。まずはいつもどおり運命によって訪れるお客様をもてなさなくては。

春香「『YUKIHO'Sキッチン』へようこそ!」

Recipe2 partBにつづく
79 : プロデューサーくん   2021/08/11 07:45:37 ID:7m2an7Czlc
※【ID判定①】情報屋 今後どこかで一度は必ず劇中で直接面識を持つ人物 直後のレスで判定 登場済キャラおよび可憐・海美→再判定処理

※【A】やよいが誰と寝ることになるか 雪歩・百合子・春香のうち1人を選択してください 原則多数決

※【B】『HOTDOGS』の話を聞いた翌朝に百合子が雪歩にする質問1つ。核心部分の質問は誤魔化されるのは確実 べつに『HOTDOGS』に無関係でもかまいません

※【ID判定②】迷える乙女(2人目) このレスから二つ目のレスで判定 ①とかぶれば再判定処理

※【C】2人目の乙女が抱える悩みとは? ふわっとした感じでも詳細あってもいいです

※【D】partBで作る予定の料理

レスの有効期限は 8/12 06:59:59まで(延長の可能性あり)
何卒ご協力お願いします!
80 : Pさぁん   2021/08/11 08:02:06 ID:UfZDEfHL/Q
A 雪歩
B よく潰れませんね、ここ
C なかなか営業の成果が上がらない
D フレンチトースト(とコーヒーのセット)
81 : 3流プロデューサー   2021/08/11 08:17:26 ID:mSrz58yb.E
A雪歩
B彼女達は何故熱犬・HOTDOGSを名乗っているんでしょう?
Cダイエットしたい
Dパンケーキ
82 : Pちゃま   2021/08/11 09:16:54 ID:UfZDEfHL/Q
本筋とは全く関係ないけど百合子は毎話別のコスプレじみた服装をしてほしい
83 : ご主人様   2021/08/11 18:14:50 ID:SKjUkgd3JM
A:春香(雪歩ばかりこき使うのはどうかなーって)
B:差し当たっての対応策(今度は春香を引き抜きにかかるのでは?)
(Aで雪歩が選ばれたら疲れた描写が欲しいです)
C:久しぶりに旧友と会えるのはいいけれど、昔交わした約束を守れそうにない(探し物を見つけられないとか)
D:中華点心セット(何処か和風寄り)

ところでこっちの雪歩も犬は苦手なのでしょうか?
84 : プロちゃん   2021/08/11 21:20:55 ID:7m2an7Czlc
定期age
ID判定処理
・情報屋
>>80 UfZDEfHL/Q →U=永吉昴

・悩める乙女(2人目)
>>81 mSrz58yb.E→m=我那覇響

なぜか料理が得意な子が悩んでいますね 次はあの子かな?
レスはまだ募集中です!!
いただいたご意見・質問は本編で応えていけたらなと思います
85 : Pサン   2021/08/12 00:21:03 ID:wywwGhiHjg
C堅苦しい性格を直したい
Dケバブ
86 : プロデューサー   2021/08/12 07:02:43 ID:uoh2IMcE4s
レスありがとうございます!
Recipe2 partA 清書
投下していきます
87 : 我が友   2021/08/12 07:03:03 ID:uoh2IMcE4s
Recipe2 partA
乙女の悩みを対価をもって叶える料理店『YUKIHO'Sキッチン』
店主はこの世界と異界とを跨り活動する料理人・ハザマである雪歩
その幼馴染にして異界での仕入れから、給仕、清掃、会計その他諸々、なんでもこなす春香
2人との巡り合いは運命の悪戯なのか、八百万のレシピが記されし魔導書と契約した乙女・百合子

ある夜、タコスパーティに興じていた3人のもとを訪れたのは――――
88 : ぷろでゅーさー   2021/08/12 07:03:17 ID:uoh2IMcE4s
― 雪の間 ―

雪歩「…………」

春香「それで、やよい、本当なの?その……可憐ちゃんたちに動きがあったって」

やよい「うう……念押しされちゃうと、自信なくなっちゃいます。で、でも!たしかに聞いたんです」

雪歩「誰から?」

やよい「プレアデスさんです」

百合子「!! えっ、プレアデスってあの凄腕の情報屋の?風の噂で聞いたことあります!永吉昴が妹なのずるいだろう大学を主席で卒業後、今や大企業になったと言っても差支えないあの永吉昴が妹なのずるいだろう(株)の創立にも裏方として携わったっていう……」

春香「2022年の市場区分再編成もプレアデスが一枚噛んでいる、むしろ昴ちゃんになら噛まれてもいいって噂も耳にしたよ」

雪歩「けれど、どうしてやよいに情報を?インサイダー取引?」

やよい「えーっと、そのシュワシュワしていそうな取引のことは知りませんけど、プレアデスさんと話をしていたらポロッと口を滑らせたみたいに教えてくれたんです」

雪歩「へぇ、あの人、やよいには甘いからね」
89 : プロデューサーさん   2021/08/12 07:03:33 ID:uoh2IMcE4s
『HOTDOGS』について知らない百合子のために雪歩が説明する。
『YUKIHO'Sキッチン』のような店舗を持たずに活動している3人組のハザマであり、そのうちの1人は雪歩と春香の幼馴染である篠宮可憐であるそうだ。
そしてその可憐を雪歩たちのもとから去る理由を作ったのが、メンバーの1人、高坂海美であるという。
最後の1人についてはその名前さえ知らないというのが現状であった。
しかし、彼女たちの狙い、少なくとも計画の一部を雪歩たちは知っていた。
それは特定の食材を用いた異界料理によって得られるオトメティックパワーの効率的な運用、ひいては何らかの目的の達成のための武力(おとめぢから)の調達であるらしい。
雪歩と春香、そして可憐の師匠はこのオトメティックパワーによって何か悪い事態に巻き込まれてしまったようだが、雪歩たちは百合子にまだそのことを話すべきではないと判断している。

(中略)
春香「んー、じゃあ、私といっしょに寝よっか」
やよい「えー」
春香「喜ぶところでしょ!!わた、春香さんと同衾できるんだよ?一生の思い出にしなよ!」
雪歩「やよい、私といっしょでいい?」
やよい「うっうー、わかりましたぁ!」
春香「はぁ、しかたないなぁ。ま、雪歩、ちっちゃいから2人でちょうどいいか」
雪歩「あ゛?」
春香「なんでもないです」
百合子(言うほど春香さんと白雪さん、体格差ないよね)
90 : プロちゃん   2021/08/12 07:03:47 ID:uoh2IMcE4s
― 雪歩の部屋 ―

いっしょの布団に入るふたり。天使たちかな?

雪歩「ねぇ、やよい」
やよい「なんですかー?」
雪歩「他に何かプレアデスから聞いていない?」
やよい「他に……。あっ」
雪歩「なに?」
やよい「ながいもずる高校が甲子園に21世紀枠で出場できることになったって!」
雪歩「……それは普通にニュースで見たよ。そうじゃなくて、えっと……可憐ちゃんのこと」
やよい「可憐さんの、ですか?」
雪歩「うん。心配なの。元気でいるか街には慣れたか友達できたか寂しかないかお金はあるか―――」
やよい「………」
雪歩「今度いつ……うん、いつか帰ってきてくれるのかって」
やよい「雪歩さん……」
雪歩「な、なーんて、ごめん。ついおふくろっぽくなっちゃったね。このネタ、伝わらない人だって多いだろうに」
91 : 高木の所の飼い犬君   2021/08/12 07:04:00 ID:uoh2IMcE4s

やよい「雪歩さんっ」ギュッ
雪歩「やよい……?」
やよい「すみません、可憐さんのこと何も聞けていません」
雪歩「いいの、やよいは悪くないよ」
やよい「私でよければ……えっと、異界での聞き込みや庭でとれたお野菜をおすそ分けする以外でも、何でも依頼してください!雪歩さんたちの役に立ちたいんです」
雪歩「ありがとう、やよい。ふわぁ……今日はなんだか疲れちゃったな。もう眠ろう?」
やよい「は、はい」

そうして雪歩はやよいを抱き枕にして眠りについたのだった。
92 : Pちゃま   2021/08/12 07:04:15 ID:uoh2IMcE4s
翌朝。
春香がやよいを家まで送り届けに出発してから、百合子は厨房に向かう雪歩を引きとめる。

百合子「おはようございます! あの、白雪さん……その、」
雪歩「おはよう。……質問は1つだけでお願いね」
百合子「! じゃあ―――『HOTDOGS』って何か名前の由来があるんですか?ホットドッグってあれですよね、ソーセージを細長いパンで挟んだやつ」
雪歩「百合子は会ったことないからわからないか」
百合子「え?」
雪歩「可憐ちゃんと高坂海美は……どことなく犬っぽいの。わんこ系女子ってやつなんですぅ!」
百合子「え……?」
雪歩「だからじゃないかな」キリッ
百合子「いや、キリッとされても! そんなんでいいんですか!?」
雪歩「私、本物の犬って苦手なの。あっ、食用犬の話じゃないよ、これ」
百合子「いきなりなんですか、もうっ、聞いて損し、」
雪歩「意趣返しかもしれない」
百合子「えっ」
雪歩「と言っても、何か2人に恨まれることした覚えないけど。でも……私のこと、よく思っていないだろうから。それでもしかしたら私が苦手な犬と関連するするような名前にしたのかなって」
百合子「そんな……な、ないと思いますけど」
雪歩「そうだね。考えすぎよね。はいさい、この話、終わり!」
93 : プロデューサー君   2021/08/12 07:04:27 ID:uoh2IMcE4s
昼過ぎ。3人で小さな中庭を上手に使って流しそうめんを堪能し、その片付けがちょうど終わった頃、誰かが店に近づく気配を3人は感じた。

雪歩「パンピーね」
百合子「お客様ですね!」
春香「大したもの仕入れていないんだけどなー。パンケーキでいいかな39段重ねの」

果たして店の前できょろきょろとしている、いかにも迷い込んできた少女を春香が見つけた。
雪歩より小柄で南国育ちの完璧少女は響と名乗った。シタからはじめて非担当だと編み物が趣味ってのはあまり知られていないのではないか。
1コマ漫画でペットたちのためにいろいろ作っているが、なかなかに器用な子である。

春香「『YUKIHO'Sキッチン』へようこそ! 何か悩んでいるでしょ!」ワシャワシャ
響「こ、こらー!頭を撫でながら言うんじゃないぞ!」
百合子「これが、がなはる……何気にダイヤモンドダイバー◇が出そろったんですね」
94 : P殿   2021/08/12 07:04:43 ID:uoh2IMcE4s
春香「えっ?久しぶりに旧友と会えるのはいいけれど、昔交わした約束を守れそうにない?」
響「そうなんさー」
百合子「約束って?」
春香「歩こう~♪ 果てない道~♪」
響「歌おう~♪ 天を越えて~♪」
百合子「いや、そうじゃなくて!」

春香「なんくるないさー、ここで食べていけば全部解決だよ!」
響「うさんくさいぞ……」
春香「いいから、いいから、話が進まないんで、入った、入った!」
百合子(仲いいなぁ)
95 : EL変態   2021/08/12 07:04:56 ID:uoh2IMcE4s
― 客間 ―

響「それにしてもそれ、おしゃれな服だな!ステージ衣装みたいだぞ!」
百合子「えっ、わかる人にはわかっちゃうかー、いやー、困っちゃいますねー」
春香「見たまんまだと思うよ?」
百合子「これは【エピックナビゲーター】!貴方が主人公の物語に登場する案内人の衣装。どんなに辛くて苦しい物語でも、貴方を必ずハッピーエンドへ導きます♪」
春香「SSRキター! 眼鏡がいいよね。よく似合っているよ、文学少女感がお手軽に出せているし」
百合子「えへへ」


雪歩「百合子、しあわせのレシピの検索お願いできる?」
百合子「喜んで!」
春香「料理作ろう~♪ 大切な人の為に~♪」
響「うぎゃー、勝手に人の持ち歌、歌いだすなーっ」
百合子(さっきのはいいの!?)

partBにつづく!
96 : der変態   2021/08/12 07:05:27 ID:uoh2IMcE4s
※どの料理を採用したかはpartBで
※響と旧友との約束の詳細はまだ思いついていないので、こういうのでいいんじゃない?ってのがあればレスください(採用を約束できませんが)
※雪歩の口調が安定しないのは伏線です 伏せてないけど

partBは早くとも明日の夜になる予定
遅くとも今週中には
最後までお付き合いください!
97 : ハニー   2021/08/12 07:20:17 ID:sK4j17vHuM
「ステージ衣装みたい」って台詞を伏線にして響自身がブレイク前の新人アイドルで約束が故郷の病弱な旧友(同じくアイドル志望だった)が寂しくないように全国区のTVで活躍するという約束とか
98 : プロデューサー様   2021/08/13 21:37:56 ID:RQimf.eHCs
partB下書き投下していきます!
99 : 魔法使いさん   2021/08/13 21:38:15 ID:RQimf.eHCs
客間に春香が残り、響の相手をしている間に雪歩と百合子は厨房にて調理を開始する。
魔導書によってレシピを導く百合子であるが、彼女自身の料理スキルは食材に対する知識含めて未熟と言えるのだった。
雪歩は、百合子をただのレシピ本をめくる存在にはせず、積極的に調理の手伝いをさせている。
とはいえ、たとえば包丁を持たせて何かを切らせたり、烈火の前に不用意に立たせたりなどしない。
食材に触れ、それらが形を変えるのを直に目にし、音として聞き、香りを嗅ぎ、時に(仕上げの味見係として)味わいもする。
そうした経験が百合子を魔導書の契約者として次の段階に至らせる―――そう信じている雪歩の方針であり、また百合子の希望でもあった。
仮に百合子が魔導書に心を侵されきった人形に等しい存在であったのなら、決して家族同等の仲になることなんてありえなかっただろう。
百合子と彼女が契約した魔導書に関して、雪歩たちが知るところは多くない。
春香と可憐、師匠とこの場所で10年程度いっしょに生きてきたのに対し、百合子とはまだ半年余りしか共にしていないのだった。
穿鑿を避けてきたことがある。迂闊に踏み込めば百合子だけではなくこちらが壊れてしまいそうな何か危うい事実が潜んでいるようで。
そろそろ頃合いかもしれない……。どれが本当の呪文なのかよくわからない、百合子の掛け声を耳にしながら雪歩はそう思った。
100 : おやぶん   2021/08/13 21:38:34 ID:RQimf.eHCs
― 厨房 ―

雪歩「フレンチトーストのほうは完成ね」

百合子「は、はい。あのー……」

雪歩「なに?言いたいことがあったら言いなさい」

百合子「普通にコーヒーとセットでよかったんじゃ……?」

雪歩「だったら、このお店でなくていいでしょう?」

百合子「けど、ケバブとのセットはおかしくないですか」

雪歩「甘すぎないように、肉や魚とも合うフレンチトーストに仕上がっているわよ」

百合子「うーん……だったら、いいのかな……」

雪歩「でも、そうね。インパクトに欠けるとは思っていたのよ」

百合子「へ?」

雪歩「うん、決めた。隠し味に【A】を足すわよ。フレンチトーストとケバブのセットでより啓蒙を高めるには、これがいいわ!」

百合子「隠れてなくないですか?!」
101 : der変態   2021/08/13 21:38:49 ID:RQimf.eHCs
― 客間 ―

春香「へぇ、響ちゃんってアイドルなんだ」

響「まだ候補生だけどね」

春香「旧友との約束ってのに関係している?」

響「うん……実は自分、もともとは南の島でローカルアイドルをやっていたんだ」

春香「いわゆる、ロコドルってやつ? あっ、モフモフ髪のアーティスティックアイドルは今はノーコネクションです!」

響「その旧友と2人でしていたんだ。高校生の間の期間限定でって。旧友にはアイドルとは全然別の夢があって、それを叶えるにはその分野に強い大学に進学するのがいいらしくて、だから、旧友にとってはロコドル活動はあくまで……趣味?って感じだったんだ」

春香「……響ちゃんにとっては?」

響「もともと、うまく乗せられていつの間にかステージに立っていたんだけど……いろんなお仕事させてもらっていくうちにアイドルっていいなって。ローカルにはローカルならではのよさがあるのは十分に感じたうえで、もっと広い世界を見たくもなったんさー」
102 : 下僕   2021/08/13 21:39:09 ID:RQimf.eHCs
そんな時、響は自社所属のアイドルのPV撮影にやってきていた某アイドルプロダクションのプロデューサーの目に止まった。
しかし旧友はそうではなかった。そのプロデューサーは響だけを候補生としてスカウトしたいと申し出たのだ。
「真剣度が違うのが一目でわかったのかな。ううん、響には私にはない魅力に溢れているから、当然の結果だね」
といった内容を島言葉で旧友は響に言い、悩む響を送り出した。ローカルアイドルとしての彼女たちの活動は終止符を打ち、それぞれの夢に向かって、別々の道を歩み始めた。
いずれそうなることが決まっていたとはいえ、それは想定したよりもずっと早い決別となった。
別れの日、響は約束した。今度会う時は一人前のアイドル我那覇響としてだと。

響「でも、それはかなわないみたいなんだぞ……」

春香「というと?」

響「来週、うちの看板アイドルユニット3人組が自分の故郷の島でとあるバラエティ番組のロケを行うんだ。それに自分はガイド役として同行することになって……」

春香「ガイド役かぁ。一人前のアイドルとは言い難いかー」

響「予定だとちょうど旧友も帰省しているんだよね。きっと旧友のことだから、同行できているだけでも、えっと、つまりさ、アイドルとして進み続けているだけでも褒めてくれるっていうか、励ましてくれるだろうなーってわかるんだけど、でも、」

春香「どうせなら、約束どおりアイドルとしての姿を見せたい?」
103 : プロちゃん   2021/08/13 21:39:30 ID:RQimf.eHCs
響「うん……。ま、まぁ、ロケ期間に旧友と会ってきちんと話す時間がとれるかわかんないんだけどね、ははは……」

春香「チバリヨ!」

響「う、うん」

春香「大丈夫だよ、響ちゃん!そのロケの日、シンデレラにしてあげる!」

響「えっ? そんなことできるのか?自分たち765プロだよね?」

春香「ふふっ、できるよ。そう、YUKIHO'Sキッチンならね」ドヤッ



春香が雪歩たちの料理を知らぬまま、そんな勝手な約束をしていると、完成した料理を持って2人が現れた。
本来、給仕はあなたの仕事よね?と雪歩の視線が痛いが、素知らぬふりをする春香だった。
104 : おやぶん   2021/08/13 21:39:45 ID:RQimf.eHCs
雪歩「お待たせしました。反逆のフレンチトーストとケバブのセット~真実の赤を添えて~です」

響「あ、この流れで『Rebellion』なんだ……」

百合子「ちなみに対価は【B】だそうです」

響「うぎゃー!」

(以下、響と旧友の約束解決編)
105 : 兄ちゃん   2021/08/13 21:40:05 ID:RQimf.eHCs
その夜 月の見えない空の下
『YUKIHO'Sキッチン』から1人の少女がそーっと出ていこうとするのを、背後から声をかけるもう一人の少女―――


春香「夜の散歩なんてするものじゃないよ」

声をかけた側の少女である春香。その口調は優しい。
かけられた側はびくっとして、ゆっくりと振り返った。暗がりでその表情には半ば諦念がある。見つかってしまった、と。



春香「何に襲われるかわかったものじゃないよ。可愛い女の子だったらなおさらね」

雪歩「……起こしちゃった?でも寝室は別なのに」
106 : プロデューサーはん   2021/08/13 21:40:17 ID:RQimf.eHCs
春香「どれだけいっしょにいると思っているの? 1人で行く気だったんでしょ?」

雪歩「どこへ?」

春香「プレアデスのところ」

雪歩「………」

春香「沈黙は肯定とみなすよ。ねぇ、焦ってもしかたないって話したばかりだよね」

雪歩「………でも」

春香「でもじゃない。もし仮に、プレアデスのもとに確かめにいくとしたら3人いっしょ。ちがう?」

雪歩「それは……それがいいのはわかってはいるけど、でも、」
107 : プロヴァンスの風   2021/08/13 21:40:34 ID:RQimf.eHCs
春香「でもじゃない」

雪歩のそばへと一歩踏み出す春香。顔と顔、息が当たりそうなぐらいに近い。

春香「三度目は言わせないでね」

雪歩「……っ」

春香「ほら、入って。夏でもこの時間は肌寒いでしょ?」

雪歩「私はちゃんと外に出るための恰好しているから問題ないよ」

春香「じゃあ、私に風邪を引かせる気?」

わざとらしく肩をすくめて苦笑してみせる春香に、首を横に振る雪歩。
108 : ボス   2021/08/13 21:40:54 ID:RQimf.eHCs
雪歩「…………ごめん」

春香「Recipe3のpartAでさ、3人で行こうよ、プレアデスのもとへ。ね?」

雪歩「………うん」

春香「そんな声出さないでよ。私が悪者みたい」

雪歩「ごめんね」



夜風が吹く。くしゃみをしたのは雪歩だった。
109 : そこの人   2021/08/13 21:41:09 ID:RQimf.eHCs
春香「今日はいっしょに寝よっか」

雪歩「……うん」ギュッ

春香「あ、そうだ。1つ聞いていい?【C】」

(以下、雪歩の反応)
110 : あなた様   2021/08/13 21:42:08 ID:RQimf.eHCs
※【A】隠れていない隠し味とは!? 響の反応も加筆予定 

※【B】響が支払う対価 響の約束の叶え方(=料理の効果)自体はこちらで考えがあるにはあります

※【C】春香の質問 シリアスである必要ないです 春香なりに場を和ませようとしているんじゃないかなって

※【D】プレアデスこと永吉昴の居所 次回partAで、3人で外出する場所になります 地名というより施設名や場所の性質(?)をレスお願いします

※響の口調再現については勉強不足ですみません。
違和感があれば(雪歩同様に)ドラマ中での口調変更ってことでお許しください

レスの有効期限は 8/14 22:59:59まで
清書投下は早ければ8/15夜 たぶん8/16朝になるかと
111 : do変態   2021/08/13 21:50:44 ID:SYgMWW3Ze.
A パイナップル
B 向こう数日間動物たちから特に理由もなく吠えられるようになる

D テレビ局(既にHOTDOGSが料理バラエティで王者に君臨して次の挑戦者を募集している段階ーとか ここから料理バトル路線にもいけるし)
112 : 監督   2021/08/14 00:28:26 ID:cd6DN6p7vY
Aドリアン
B東北弁になる(期間は不明)
Cそんな派手な服着ててバレないと思ったの?
Dオフィス街のオシャレなコーヒーショップ
113 : そなた   2021/08/14 04:10:37 ID:dzYIM4wwyM
A:完熟トマト(仕様か否か、完熟でないのも混じっている)
B:いじられる頻度が急激に上がる(それがきっかけで人気が上がる)
C:「本当は誰かに気付いて欲しかったんじゃないの?」
D:さだまさしのライブ会場(案山子とか歌っていたりして)
114 : ぷろでゅーしゃー   2021/08/14 20:01:16 ID:DpbHtgylXw
副業終わりに定期age

まだ募集中ですよー
115 : Pたん   2021/08/15 06:20:07 ID:PhP7iOfAE6
想定より早く書けたのでRecipe2partB投下していきます
116 : 魔法使いさん   2021/08/15 06:20:23 ID:PhP7iOfAE6
Recipe2 partB
百合子が雪歩たちと出会ったときには既に、彼女たちの隣に可憐はいなかった。
現在、百合子が使わせてもらっている部屋は可憐の部屋と言うわけではない。
可憐の部屋とされている場所。百合子はそれを知っているが、立ち入ったことは一度もなかった。
雪歩たちから止められているわけではない。入る理由がないだけだ。好奇心だけで覗くのも気が引ける。
春香が定期的に掃除していることも知っていた。時間の止められた部屋に降り積もる埃なんてほとんどないのに。
117 : 兄ちゃん   2021/08/15 06:21:02 ID:PhP7iOfAE6
(中略)
雪歩「うん。決めた、隠し味にパイナップルを足すわよ!! よしっ、できあがり!」

百合子「隠す気ないですよね!?」

雪歩「フレンチ感でてる?」

百合子「微塵もないですよ!!」

118 : 変態インザカントリー   2021/08/15 06:21:18 ID:PhP7iOfAE6
(中略)
雪歩「お待たせしました。反逆のフレンチトーストとケバブのセットです」

響「パイナップル!?」

百合子「ちなみに対価は、いじられる頻度が急激にあがるだそうです」

響「なんで!?」

春香「やったね、響ちゃん!これでアイドル仲間やお仕事でいっしょになった芸人さん、それにスタッフさんからも、いじられっぱなしの毎日だよ!!」

響「うぎゃー!! 一生そうなっちゃうの!?」

雪歩「安心して。せいぜい39日ってところだから。それだけあればトップアイドルになれるわよね」

響「アイドルなめんな!!」

百合子「弄られることでしだいに気持ちよくなっていく響さんは、いつしか弄りつづけられていない物足りない身体になってしまい……ってことになりませんかね!!」
119 : 兄ちゃん   2021/08/15 06:21:36 ID:PhP7iOfAE6
そして1週間後、響の故郷の島―――

ロケ終了後

響「ふぅ……もう、みんなひどいよ!自分がガイド役だからって、なんでもかんでも無茶ぶりしすぎだぞ!」

同僚アイドルA「ごめん、ごめん、響ちゃんの反応が可愛くってさぁ。ねぇ?」

同僚アイドルB「うんうん。がんばってくれたね、えらい、えらい!」

響「わわわ。きゅ、急に撫でるなーっ」

P「冗談はともかく、よくやってくれた我那覇。君のおかげで今回の番組、かなりいいできに仕上がりそうだ」

響「ほんとう!? えへへ……自分、カンペキだからなー」
120 : そなた   2021/08/15 06:21:52 ID:PhP7iOfAE6
P「なんか欲しいものあるか?ご褒美に、300円以内ならなんでも買ってやるぞ」

響「300円!? それ、小学生のお小遣いレベルじゃないの!?」

A「えっ、響ちゃんばっかりずるいですよP! 私にもグランドピアノとかテニスコートとかマンション買ってください!」

響「予算オーバーマスター!?」

B「んー、それで響ちゃん、何か欲しいことやしたいことないの? この島に来てからそわそわそわそわそわしているけど?」

響「『そわ』多くない!? えっと……」

P「ずばり会いたい人がいるんだな?」
121 : 兄ちゃん   2021/08/15 06:22:03 ID:PhP7iOfAE6
A「ふぁっ!? 響ちゃん、私がいるのに浮気!? どこのベルリンよ!!」

B「ふつーに家族や友達じゃないの?」

響「う、うん。親友なんだ。えっと、813プロに入る前は、ふたりでここでロコドルしていたんだぞ」

A「ふつうじゃない島人女子高校生が【ろこどる】やってみたんだぞ。ってか!」

P「……時間ならいちおうとれるぞ」

響「え?」

A「ねぇねぇ、私たちにも紹介してよ!」

B「うん。感動の再会シーン、撮れ高グンバツだね」
122 : 番長さん   2021/08/15 06:22:17 ID:PhP7iOfAE6
P「べつに撮らないって。で、どうする我那覇。君さえよければふたりを……いや、俺もいっしょにいいかな?客観的にこれまでの我那覇のこととこれからの展望を報告するのも悪くないと思う。もとはと言えば、俺がその親友と君とを別れさせたわけだから」

響「P……あ、あの!じゃあ、その、お願いがあるんだけど……」

A「おっ、なんやなんや、まさかワンマンライブやらせてくれって?さすがやね響ちゃん!」

響「………」

B「へぇ、その顔……あながちAの勝手な推測、はずれじゃない感じ?」

P「我那覇……?」

響「うん―――あいつに今の自分のすべてを、アイドルとして、ステージの自分を見てほしいんだ。……って、む、無理かな」
123 : 夏の変態大三角形   2021/08/15 06:22:28 ID:PhP7iOfAE6
P「無理じゃないだろ。アイドルがいればそこがステージだ」

響「!」

A「え?それっぽい台詞だけど、どういうこと?」

B「ライブするような機材は持ち込んでいないけど……ま、その親友さんのために歌って踊るのを止めることもしないってことじゃないの?」

P「ガイド役の君も輝いていたけど、アイドルとしてステージで輝きたいって気持ちは、普段のレッスンを見ていて知っているよ」

響「じゃ、じゃあ……」
124 : プロデューサー様   2021/08/15 06:22:42 ID:PhP7iOfAE6
P「ああ、俺もできるだけ協力するよ。あの子に今の我那覇を見せてやろう!」

A「俺たち、でしょ?」

B「日が完全に沈んでしまう前に動こう」

響「みんな……!」


そんなわけで親友のために響は歌と踊りを急ごしらえのステージで披露することになった!
125 : 変態大人   2021/08/15 06:23:00 ID:PhP7iOfAE6
親友「ビッキー……背、伸びた?あ、ごめん気のせいだったわ」

響「うぎゃー!普段はいじってくるタイプじゃなかったのに! と、とにかく!今日は自分の成長、ちゃんと見てよね!」

親友「……うん」



P「我那覇、こっちは準備完了だ。いつでもいいぞ」

A「なに歌うんだろう」

B「やっぱ、Pon De Beachじゃないの?」




響「あなたの遺伝子が呼んでいる―――」
A・B(ここで『Next Life』!?)
126 : おやぶん   2021/08/15 06:23:18 ID:PhP7iOfAE6
♪~ ♪~

A「…………!」

P「驚いたな」

B「うーむ まずいなァ あいつ私たちより(アイドルとして)強くねー?」


この出来事から一か月後、候補生から正式メンバーとなった響が、AやBと共に813プロの看板を背負うアイドルとなっていくのだが……それはまたべつのお話である。
127 : せんせぇ   2021/08/15 06:23:29 ID:PhP7iOfAE6
(中略)
春香「今日はいっしょに寝よっか」

雪歩「……うん」ギュッ

春香「それはそれとして、1つ訊いておこうかな」

雪歩「なに?」

春香「そんな恰好で、ほんとは気づいて欲しかったんじゃないの?」

雪歩「ぽえ?」
128 : der変態   2021/08/15 06:23:55 ID:PhP7iOfAE6
春香「夕食後、部屋に行ったら、やけに気合入れて服選んでいたよね? あの時点で怪しかったわけだけど。あのさ、もしかしてプレアデスのところにいけば、あの日から一度も会えていない可憐ちゃんにも再会できるチャンスがあるかもー、なんて思ったわけじゃないよね?」

雪歩「………」

春香「それでそんな気合入った恰好で夜にそっと抜け出した―――。なーんて、まさかね。いくら雪歩でも……ね?」

雪歩「もう寝るわよ。百合子に気づかれても面倒だし」

春香「ふうん。そこは穴を掘って埋まるわけじゃないんだ。成長したね。………顔真っ赤なんだろうなー、暗くてよく見えないけど」

雪歩「………う、うるさいなぁ」


Recipe3につづく!
129 : 3流プロデューサー   2021/08/15 06:26:23 ID:PhP7iOfAE6
レスありがとうございました!
Recipe3partAは明日(8/16)に投下する予定です

料理の効果が微妙なところですが、響はたしかに親友の前でアイドルとしての自分を見せることができた(その機会を得られた)ってことでお願いします

ご意見・ご想像募集中です!
130 : プロデューサーはん   2021/08/16 12:10:35 ID:ol/gJ73B.2
Recipe3partA投下していきます!
131 : 3流プロデューサー   2021/08/16 12:10:54 ID:ol/gJ73B.2
やよいの訪問から一週間後
雪歩たちはやよいの協力によって情報屋プレアデスと会って話をする手配を整えた
待ち合わせ場所として指定されたのはオフィス街のコーヒーショップだったのだが………?


雪歩「2人とも出発の準備はいい?」
春香「あー、ちょっと待って。百合子ったらオフィス街にいくのにパルフェ・ノワール着ていたから、今、着替えさせているところなんだ」
雪歩「逆にセーラー水着とかどう?」
春香「逆に、じゃないよ!! 目立ってどうするの?!」
雪歩「ドラマなんだし、これまでどおり衣装を着ていくってのでいいと思うけどなぁ。百合子の衣装楽しみにしている視聴者も多いって聞いたよ。むしろそれしか見ていないって」
春香「もっと見聞きするものあるよね!?可愛いけどさ!」
132 : P様   2021/08/16 12:11:22 ID:ol/gJ73B.2
百合子「お、お待たせしましたぁ~」
春香「えっ」
雪歩「………どことなく、うん、どことなーく和の心意気を感じるね。そう、金色の大和撫子みたいな」
春香「借りたの?」
百合子「お揃いってだけです。スタッフさんにファンの方……ご贔屓様がいたみたいで。お手製なんだとか」
春香「えぇ……」
雪歩「さ、行くわよ」

133 : 彦デューサー   2021/08/16 12:11:41 ID:ol/gJ73B.2
― オフィス街 ―

春香「どっちみち、この時間のオフィス街に私たちは浮いちゃうよね」
雪歩「あ、ごめん。はい、これ。春香の分」
春香「なにこれ?酢昆布?」
百合子「存在感を薄くする酢昆布ですよ。昨夜、作ったんです。効果時間短いですけど」
春香「なぜ酢昆布……?というか、あるならもっと早く出してよ」
雪歩「百合子、謝っておきなさい」
百合子「私のせいですかぁ!?」

そんなこんなで3人がじゃれ合いつつ歩いていると目的のコーヒーショップに到着する。
看板は地上にあるが地下に店を構えているようだ。

百合子「『シャレオツ』……いかにも業界人っぽいですね」
春香「かえってお洒落感失われていない?」
雪歩「指定の席で合言葉を言わないとプレアデスのいる部屋には通してもらえないそうよ」
134 : 魔法使いさん   2021/08/16 12:12:11 ID:ol/gJ73B.2
店内に入った3人
百合子「うわあああああ! オシャレを越えたオシャレじゃないですか! オシャレな椅子、オシャレなテーブル、オシャレなBGM、オシャレな床、オシャレなメニュー、オシャレな店員」
雪歩「恐らく書き手にはおしゃれコーヒーショップを描写する力がないと考えられるね」
春香「お客さん……全然沸いていないんだけど、いいのこれで……」


店員a「Pourriez-vous s'il vous plaît lécher ma zone érogène?」
春香「ゆ、百合子ちゃん、何語かわかる?」
百合子「シルブプレって聞こえたので、たぶんフランス語だと思いますけど……」
雪歩「へぇ、なんて?」
百合子「いや、そこまでは」
店員b「Darf ich deine kleine Brust reiben?」
春香「……今度は?」
百合子「音からするとドイツ語?でも何を訊ねているかわかりません……」
雪歩「お、おしゃれレベルが高すぎる……!」
春香「外国語ってだけだよ!? ねぇ、翻訳できる蒟蒻とかないの?」
百合子「そんなものあるわけないですか」
雪歩「さっさと指定された席につこう」
135 : ボス   2021/08/16 12:12:29 ID:ol/gJ73B.2
3人が席につくと、先の2人とは別の店員がやってきた
店員c「山」
雪歩「川」
店員「……どうぞこちらへ」
百合子「合言葉、ひねりなさすぎ!?」
春香「シンプルイズベストってことかな」
雪歩「私たちの顔はプレアデスには知られているからね。もう別室で確認は済ませているかも」
136 : 兄(C)   2021/08/16 12:12:45 ID:ol/gJ73B.2
― 地下2階 ―
そこは地下1階のコーヒーショップの内装とはうってかわって殺風景で質素な空間だった。
向かい合う革張りのソファとその間にはよく磨かれた低いテーブル。どちらも清潔感はあっても高級感はない。
誰かと待ち合わせて話すためだけの部屋のようだ。プレアデスはこういった部屋をこちら側と異界においていくつも用意できる人物なのかもしれない。

昴「待っていたよ」

春香・雪歩・百合子「!!!」

百合子「こ、こここ、」
昴「こ?」






百合子「恋しますよ!!!!(絶叫)」
昴「」
137 : do変態   2021/08/16 12:13:26 ID:ol/gJ73B.2
春香「あかん……これはなんていう破壊力なんや……まさかのイケメン男装昴ちゃんなんて、そんな聞いてへんやん……。こんなん、昴ちゃんのクラスメイトの女の子で、これまでは男子たちからは裏でちやほやされていた昴ちゃんのことを『ふん!ちょっと可愛いだけじゃないの、あんなの5流アイドルよ!』って思っていた子が見て、ファンになるどころか、ガチ恋勢になってしまうやつやん……」
雪歩「真ちゃんを継ぐ者、こんな形で発見できるなんて。とりあえず拝んでおきますぅ。ありがたや、ありがたや」
百合子「どうして参考画像がないんですか!!!!!」


770秒後
昴「あ、えっと、話……していいか?」
百合子「すみませんでした。私のなかで乙女ストームが吹き荒れちゃって。えへへ」
雪歩「ありがたや、ありがたや」
春香「雪歩、そろそろ戻ってきて。私も口調戻ったから」
138 : P様   2021/08/16 12:13:45 ID:ol/gJ73B.2
昴「念のため、訊こうか。今日は何について知りたい?」
春香「もちろん、『HOTDOGS』のこと。そうだよね、雪歩」

春香の言葉に小さくうなずく雪歩。その隣で百合子がぶんぶんと縦に首を横に振る。

昴「だろうな……。まず誤解のないよう言っておくと、ラブリーマイエンジェルやよいたんに『HOTDOGS』のことを教えてしまったのは、本当に事故なんだ」
雪歩「へぇ……」
昴「きちんと取引できる程度に情報が集まってからであれば、意図的に流したかもしれないが」
春香「ってことは、まだ『HOTDOGS』の動きについてはそんなに詳しく知らない?」
昴「ああ、残念ながらね。とはいえ、まったくというわけではない。そこで、だ」
雪歩「取引、ね」
百合子「ごくり……。も、もしかして私の身体を要求するんですか!!そうなんですか!!」
春香「そんなわけないでしょ! 普通に考えてみなよ。私たちが普段何をしているかをさ」
百合子「えっと……桃鉄で3人がかりでCPUボコボコにしたり?」
春香「いや、たしかに昨夜も盛り上がったけど」
雪歩「料理よね。何が食べたいの?」
昴「ふふっ、話が早……くもないけど、まぁ、とにかく――――】
139 : Pーさん   2021/08/16 12:14:00 ID:ol/gJ73B.2
昴「【A】を作ってくれないか?オレが満足のいくできだったら、それ相応の情報をやるよ」



春香「うん?ずいぶんありふれた料理だね」
雪歩「春香、忘れたの?私たち同様、プレアデスは異界とこちらを行き来するプロの情報屋よ。つまり食材は……」
昴「察しがいいな、白うさぎちゃん。単に作るだけじゃなくて条件がある。こいつを有効活用してくれ」

そう言って、プレアデスは荷物を取り出す。
140 : 番長さん   2021/08/16 12:14:18 ID:ol/gJ73B.2
百合子「これは……?」
昴「【B】っていうんだ。保存状態さえよければ、そんなすぐには腐りはしない。オレも忙しいから、そうだな、明後日そっちに直接行くことにするよ。情報以外で、何か手土産でも持っていくことにしようかな」
雪歩「わかったわ」
春香「見てのとおり異界食材だね。なるほど、これをどうにかうまく調理しないといけないわけか。どう?百合子」
百合子「えーっと、今の時点ではなんとも」
雪歩(これはあの秘密兵器【C】を使って調理しないとかな……)


かくして情報屋プレアデスから『HOTDOGS』に関する情報を得るべく異界食材を用いた課題料理に挑戦することとなった3人。
果たしてプレアデスの身も心も満足させられるのだろうか……?
141 : der変態   2021/08/16 12:15:34 ID:ol/gJ73B.2
※【A】情報屋プレアデスこと昴が作ってほしい料理とは?卵焼き等、調味料を除いて食材そのものが少ない料理はご遠慮ください
※【B】料理する上で使用が必須となる異界食材 あまりに常軌を逸するもの、SAN値直葬されるものはご勘弁を
※【C】『YUKIHO'Sキッチン』が所有する異界食材を調理するための道具のひとつとは? ふわっとした感じでかまいません。三日月宗近とか、そこまで大袈裟じゃなくていいです 
※【ID判定】partBに登場するアイドル 予定ではプレアデスと共に来訪予定 可憐・海美含め登場済キャラは再判定

レスの有効期限は 8/17 17:59:59まで
清書は8/18中に投下予定
ご協力お願いします!
142 : Pちゃま   2021/08/16 13:12:27 ID:3T/7IWWMUE
A 冷やし中華
B ミルキーウェイの鉢植え(実と葉が食用。いい感じにメルヘンなビジュアルと甘みのある実と滋養強壮、ペーストにしたら肩こり腰痛神経痛に効く葉が特徴。葉を燻すのはご法度らしい。ビジュアル的にもご法度)
C インフェルノバーナー(軍事転用厳禁のシロモノ。何かを炙るらしい)
143 : 監督   2021/08/16 13:25:57 ID:CTEpce1ZBE
昴と言ったら卵焼きだろ!っと思ったら禁止されてた…

A肉じゃが
B魔法使いマリーから貰った喋る野菜。口が悪い上に美味しく料理されないと怒る
C超☆圧力鍋。うるさいヤツらを色んな意味で黙らせる
144 : プロデューサーはん   2021/08/16 17:39:37 ID:vLG3DvSyfY
A:グラタン
B:チーズ各種(普通な感じの異界産のもの、異界のものとしか思えない現世のもの等色々)
C:組み立て式(!!)スチームコンベクション(様々なモードで使用が可能、動力は人力で賄う模様)
145 : der変態   2021/08/17 06:26:19 ID:NPz2Uevl4g
定期age
ID判定処理
>>141 3T/7IWWMUE →「T」=百瀬莉緒

partBで昴といっしょに雪歩たちを訊ねるのは莉緒ちゃんに決定
雪歩とはダイヤモンドな関係ですなー

レスはまだ募集中です!
146 : ハニー   2021/08/18 05:00:20 ID:CZn9VuqqVo
レスありがとうございました!
Recipe3partA、さくっとまとめたので投下します
147 : プロデューサーさま   2021/08/18 05:00:43 ID:CZn9VuqqVo
Recipe3 partA
やよいの訪問から1週間して、雪歩たち3人は凄腕の情報屋プレアデスに会う手筈を整えた。
待ち合わせ場所となったのは、とあるオフィス街のおしゃれなコーヒーショップ。
地下2階の一室で対面したプレアデスのイケメンぶりに思わず恋しちゃいそうになる百合子。
プレアデスは『HOTDOGS』の現状について、ある程度は知っているようだった。
情報提供の対価として提示してきたのは、雪歩たちの料理。
肉じゃがを作ってほしいのだと言う。条件として、使用を余儀なくされたのは何種類かのチーズだった。
肉じゃがにチーズ……なくはないが、どちらかというと一度作った肉じゃがの残りをグラタンにリメイクするイメージがあるだろうか。
プレアデスが差しだしたチーズを検分してみると、どうやら異界食材であるようだった。
たとえば1000種類以上あるナチュラルチーズのすべてを知っているわけではないが、漂うオーラに異界を雪歩は感じたのだ。
かつて共にいたあの子であるならその匂いでどういった食材か、詳細を掴めたかもしれない。春香はそう思った。

異界のチーズを使った肉じゃが作り。このプレアデスの課題に応じるための策として、雪歩が頭に思い浮かべたのは『YUKIHO'Sキッチン』にある、異界食材用の調理器具であった。
これまで百合子が魔導書を用いて導いたレシピにおいても、それらの特殊器具を何度か使ってきている。
日頃、そうした機材のメンテナンスは専ら春香の仕事なのだが。

雪歩「きっとあれの出番だね」
春香「あれ?」
百合子「って、なんですか」


雪歩「地獄の業火に焼かれてもらいますぅ……!」


partBにつづく
148 : EL変態   2021/08/18 05:01:37 ID:CZn9VuqqVo
partBの下書きは早ければ今日中に
最後までお付き合いください!
149 : P様   2021/08/18 20:50:57 ID:CZn9VuqqVo
明日の朝一になりそうです
150 : お兄ちゃん   2021/08/19 05:56:47 ID:ht9h/141EU
投下していきます!
151 : ぷろでゅーさー   2021/08/19 05:57:19 ID:ht9h/141EU
Recipe3partB下書き

プレアデスと別れ、『YUKIHO'Sキッチン』に戻った3人。
さっそく客間にて作戦会議を始める。

春香「もらったチーズ以外の食材はこっちで用意しないといけないね」
雪歩「ええ。現時点で備蓄として肉じゃがの材料が一式揃っているわけではないもの」
百合子「となると、買ってくるか、あるいはとってくるかですね。獲る・捕る・採る……食材によっては冒険の予感がします!」
春香「はは……プレアデスは明後日にもう来るそうだから、遠出はできないよ。それにあくまで―――」

3人は包みの中の塊に目をやる。

百合子「鍵となるのはこのチーズ、ですか。白雪さん、どうやって肉じゃがと合わせるつもりなんですか。地獄の業火がどうこうって言っていましたよね?」
春香「うーん、加熱するとどうなるか試してみる? まったく溶けないタイプなのか、溶けにくいタイプなのか、瞬く間にとろけるタイプなのか」
雪歩「その必要はないわ」

さらりと雪歩は言う。しげしげとチーズを眺めていた春香と百合子は雪歩のほうに顔を向けた。
152 : プロデューサー殿   2021/08/19 05:57:35 ID:ht9h/141EU
春香「つまり?」
雪歩「この子を見て、触れてティンときたってこと」
百合子「白雪さんにはこのチーズの使い道、調理法ってのが既に見えているってことですか!?ビジョンってやつですか!?」
雪歩「大それた話じゃないわ。レシピの細部までを思い描けていないし」
春香「まぁ、レシピってのは通常なら時間をかけて、それも1日、2日なんかじゃなくて1カ月、2カ月単位、もしかしたらそれ以上の月日をかけて形にしていくものであるはずだよ」
雪歩「そして絶対がないのも事実ね。その時々、ありとあらゆる状況下で食材の状態だけではなく食べる相手によって最適な味付け、分量等々にも気を配らないといけない」
春香「そんな科学であり化学でもある料理の摂理を、ある意味で壊す術を私たちは知っている。だよね、百合子」
百合子「へっ? それって……」


雪歩と春香は百合子に視線を移す。
153 : 変態インザカントリー   2021/08/19 05:57:51 ID:ht9h/141EU
百合子「この魔導書ということですね……!」
抱えている本をぎゅっといっそう強く抱きしめる百合子。

雪歩「そういうこと。八百万のレシピはただのレシピじゃない。それは料理魔法の集積にして極み。百合子、久しぶりにあれをやるわよ」
百合子「薄々そんな気はしていました。け、けど、心の準備をさせてください。まだうまくやれる自信、ありませんから」
春香「PSTだね。頑張って、ふたりとも!」

PSTすなわちプラチナスターチューンとは、魔導書の契約者である百合子が勝手につけた名称なのだが、事象としては非契約者と魔導書とが同調を果たし、その非契約者の望むようなレシピ、欲しているレシピを導く方法である。
その仲介を担うのが契約者の役割となる。といっても単なる仲介というわけではない。魔導書を通じて契約者は非契約者の心を読み解く必要があり、当然、非契約者側にしても心を開き、通わせなければならない。
早い話、雪歩と百合子の信頼関係がなければできない。かつて雪歩が百合子を厨房に入れることをも躊躇っていた時期に試したのが最初で、そのときは百合子が雪歩の心の壁にはじかれてしまったのだった。

百合子(あの時、白雪さんの心の端に触れた瞬間に、うっすらと目にした人影……師匠さんなのか、可憐さんなのかわからないけど、私はまだその人のことを知らない……)
154 : ダーリン   2021/08/19 05:58:24 ID:ht9h/141EU
雪歩「さて、と。春香には食材の仕入れをお願いしたいわ」
春香「ふふっ、言われるまでもなくそのつもりだよ。期待していいよ。最近、噂であの高名な魔法使いが育てていたっていう喋る野菜の話を聞いて……」
雪歩「わかっていると思うけど、今回の料理には『HOTDOGS』の情報がかかっている。可憐ちゃんが今どこで何しているかの手がかりが。そうよね?」
春香「も、もちんわかっているよ!! 近所の商店街、通称『昇天街』で良質な食材、揃えてくるっ!」

そう言うや否や早足で去っていく春香。気合は十分なようだ。


雪歩「心の準備ができたら、私の部屋にきて」
春香が出ていくのを見届けた雪歩が百合子にそう言って、後を追うように客間を出た。
残された百合子は無意識に溜息をつく。

百合子(春香さんたちの幼馴染がメンバーの1人だという『HOTDOGS』かぁ。今回の一件が終わったら、ちゃんと2人から話を聞きたいな。聞く資格……あるよね?)

ふと百合子は今では遠い日の記憶をよみがえらせる。
春香と雪歩、半年余り前、2人に初めて出会ったのは【A】だった。
(以下、3人の邂逅シーンわずかに加筆予定)
155 : 師匠   2021/08/19 05:58:48 ID:ht9h/141EU
そして迎えたプレアデス訪問当日
午後一番に来る予定だが、朝早くから東奔西走しているのは春香だった。
食材の仕入れが思ったより難航した、いや、これはいい、そんなのはハザマとして生きる人間として当然だ。
どこにでもある誰にでも扱えるような代物を料理するのが自分たちではない。
まな板を前に包丁を振るうことのない自分が雪歩のためにできることは、彼女のために最高・最適の食材を用意してあげること。
気恥ずかしくて口にはしないが、それは春香の生きがいのひとつと言えた。
そんな春香が忙しくている理由……。

春香「あー、もうっ、私ひとりかーっ!ワンオペですよ、ワンオペ!」

客間の掃除や(春香でも許可されている)下ごしらえの他、あれこれと雑用に追われている。
それもこれも雪歩が納得いくまで百合子にリテイクを繰り返し、何度も繋がって、2人揃ってかなりの疲労感のせいで早くに起きられないのが悪い。


春香「ってか、部屋からは生々しい声が聞こえるし、悶々としっぱなしですよ!」
雪歩「悪かったわね」
春香「げえっ、雪歩」
雪歩「朝早くからありがとう。あとは任せて。えっと……【B】を買ってきてくれるかしら?」
春香「は? なんでまた急にそんな……何に使う気?」
雪歩「いいから、いいから。ね?お願い。ダ、ダメぇ?」
春香「はぁー、上目づかいでおねだりとかさぁ。こういうときばかり、そういう表情するんだから」
雪歩「よろしくね」
春香「はいはい」
156 : プロちゃん   2021/08/19 06:00:06 ID:ht9h/141EU
正午過ぎ  路地裏 店の前
起床してから30分しない、レッスンウェアを着た百合子が寝ぼけまなこで軽くストレッチしているところに2人の人物がやってきた。

莉緒「おまたせ♪」
昴「待たせたな」

プレアデスと、もう一人は比較的背丈の高い女性。ハイヒールを履いていることもあって175㎝はある。
はだけている胸元がセクシーだ。

百合子「いらっしゃいませ! えっと、そちらのセクシーな女性は?も、ももももももしかして、ふぃ、ふぃあんせ?!」
莉緒「ま、だいたいそんな感じよね。ね、プレちゃん?」
昴「どうとでも言うがいい」
百合子・莉緒「きゃぁーーー、クール!」

莉緒「やだ、この子、私と気が合いそう♪」
百合子「えへへ」
莉緒「私は莉緒。ハンドレッドなんて通り名で【C】を生業としているわ。それでまぁ、情報屋ともつながりがあるってことなの」
百合子「なるほど」
157 : 番長さん   2021/08/19 06:00:30 ID:ht9h/141EU
雪歩「お待ちしておりました。さぁ、こちらへ」
昴を除いた3人が話に花を咲かせようとしているところに、雪歩が音もなく現れる。
プレアデスを見据えるその瞳には炎が宿る。
ただもてなすだけじゃない。今日は聞きださねばならない情報があるのだ―――その熱き想いが静かに燃え上がっていた。

(以下、課題料理パート さくっと書く予定)
158 : Pさん   2021/08/19 06:00:54 ID:ht9h/141EU
※【A】雪歩たちと百合子が出会った場所・シチュエーション  こちらで改めて書く予定もあるので、さらっとした感じでかまいません
※【B】雪歩が春香に買い出しを頼んだもの 非食材でも可 ただし気軽に近場で購入できるものに限定
※【C】莉緒の身分・地位・職業  健全なものでお願いします

※【D】昴から得られる情報(の種類)は以下の4択からいずれか1つを選んでください。原則多数決 同率でID判定処理に移行
a『HOTDOGS』をプロデュースしている奴がいるそうだ
b『HOTDOGS』を異界市場で見たっていう人がいるようだ
c『HOTDOGS』はとある料理大会に出場する予定らしい
d『HOTDOGS』の大ファンだというお嬢様がいるみたいだ

※【ID判定】Recipe4で登場するアイドル選出 このレスの直後レス 登場済キャラ再判定処理
※今回の料理については食べる人物の「悩み」や「対価」は関係ありません(たぶん)

レスの有効期限は8/20 18:59:59まで
清書は8/21中を予定。
何卒最後までご協力お願いします!
159 : do変態   2021/08/19 09:54:46 ID:n8fjfb6BvE
A 図書館で魔導書柚子胡椒の数々に埋もれてた百合子を助けた
B 柚子胡椒
C ファッション誌の記者
Dc
160 : プロデューサーちゃん   2021/08/19 14:41:20 ID:ZoGlJLVryU
A魔導書を抱えて行き倒れていたところを助けてもらった
Bお茶請け
C異界食材の密猟者を追う捜査官
Dc
161 : プロデューサー殿   2021/08/19 20:06:32 ID:dX8VODwcQs
A:古書店の片隅で魔導書と出逢った百合子
いつの間にか魔導書と一緒に異界に迷いこんで、紆余曲折の末に二人と出会う
B:チーズおろし器(客の目の前でチーズをおろして仕上げるのには、新品の方が良い)
C:硲もといハザマ関係の私立探偵(後に雪歩達の依頼を受ける展開も?)
D:b
162 : せんせぇ   2021/08/19 20:19:44 ID:77OeuB85bg
>>159
についてはAは思い切り誤字なので柚子胡椒はスルーでお願いしゃす
あとCにファッション誌記者+モデル兼任ってことで頼んます
163 : Pちゃん   2021/08/20 16:08:34 ID:T2zZl7gfU6
定期age ID判定選出
>>159 n8fjfb6BvE→n=春日未来
未来ちゃは次回登場確定!
第1回終盤ぶりかな

引き続きレス募集中ですよー
164 : プロデューサーちゃん   2021/08/21 12:47:41 ID:nxc9lrevGM
レスありがとうございます!
Recipe3partB投下していきます!
165 : 我が友   2021/08/21 12:48:04 ID:nxc9lrevGM
Recipe3partB

異界チーズを使った肉じゃが作り。雪歩は何か思いついたことがあるようだった。
それをより洗練させるために、百合子とともにPST(プラチナスターチューン)することに。
魔導書を介しての契約者と非契約者との同調。互いの信頼関係があってこそ成立する、レシピ獲得法である。
かつて、まだ「家族」扱いされてはいなかった百合子はその同調中、雪歩の心の端に触れ、何者かの影を見たのだった。
思い出してみれば、と百合子は過去を振り返る。

こことは違う、魔法のない百合子にとって「普通」の世界で、妄想少女もとい、文学少女であった百合子。
古書に興味を持ち出したのはつい一年前であっただろうか。絶版となってもう半世紀以上経つ代物から、もっともっと古い時代の本たち。
もともと古書店が家の近くにあったことも百合子の古書趣味を後押しした。が、それを実際に購入するにはお金が足りない。
そんなとき、あれはいったい誰からだったろう、古書含めて珍しい本がずらりと並んだ小さな図書館があるという噂を耳にして百合子はその場所へと1人で向かったのだった。
今になって考えてみるに、百合子に噂を与えた者は異界の住人だったのかもしれない。
百合子がたどり着いた、たどり着けてしまったその場所は、「普通」の図書館ではなかったのだから―――。
166 : 監督   2021/08/21 12:48:22 ID:nxc9lrevGM
記憶の細部はもはや崩れて落ちている。思い出すことができるのは、その図書館にて何か恐ろしい体験をして、本を一冊抱えたまま、出口を求めて駆けていた自分の姿。
やがて奇妙な紋様の施された扉から出た百合子はその外が自分のいた世界とはべつであるのを悟る。
しかし慌てて振り返ればそこに戻るための扉はなかった。へなへなとその場に座りつくす百合子。
彼女がその世界、すなわち今いる世界で初めて出会った人間が2人の可憐なる少女であったのはこれ以上ない幸運であった。

判明したのは百合子が抱えていた本が幻とされる料理魔法に関わる魔導書であり、その契約の対価によって元いた世界を追われてしまったということ。
けれども百合子は契約した覚えがないと話す。あの日、あの図書館で何が起こったのか。それは既に泡沫の夢となっていた。


プレアデス訪問当日
長く、深く繋がった雪歩と百合子は疲弊し、いつもよりずっと長時間の睡眠を貪っていた。
春香はひとり、訪問者をもてなす準備をする。
そしてやっと起きてきた雪歩は春香に、お茶請けを買ってくるよう頼む。
このタイミングで?と思う春香であったが、雪歩のおねだりには逆らえなかった。
167 : プロちゃん   2021/08/21 12:48:39 ID:nxc9lrevGM
プレアデスと共にやってきたのはセクシーな女性。現行イベントで雪歩たちとともに『真夏のダイヤ☆』を歌っている莉緒だった。

莉緒「これでも異界食材の密猟者を追う捜査官なの。近頃は個人じゃなくて一団となって管理区域内の貴重食材を根こそぎ奪う連中も出没しているのよ」
百合子「ええっ、捜査官!? か、かっこいいです。もしかして例の機関の方ですか」

百合子の言葉に莉緒は笑顔を引きつらせた。まずいことを聞いたかなと不安がる百合子にプレアデスが話す。
昴「いや、ちがう。たしかに過去には機関からの依頼も何件かこなしてみたいだが……待遇や報酬に満足できずに、今では仮に依頼がきても断っている。そうだろう?」
莉緒「まあね。やつら、こう言っちゃなんだけど、密猟者どもより質が悪いところあるもの。実体が掴めないのも、不愉快ね」
百合子「は、はぁ」
昴「表向きはファッション誌の記者として働いているんだが、そっちのほうが儲けている」
莉緒「あーっ、もう、そんなこと言わなくていいの! ん、でも、そうね、百合子ちゃんはコーディネートしがいがありそうね♪ ねぇ、今度、モデルやってみない?」
昴「やめとけ、やめとけ。表に出られない辱めを受けることになるぞ」
莉緒「ええ~、まだあのこと、根にもっているわけ?」
百合子(いったい何があったんだろう……)
莉緒「ま、そんなわけで捜査官というよりも、実際はハザマ関係の私立探偵みたいなもんかな。以後、お見知り置きを、なんてーね」
168 : プロデューサーさん   2021/08/21 12:49:02 ID:nxc9lrevGM
― 客間 ―

雪歩「お待たせしました。こちらになります」
莉緒「わぁ!肉じゃが!うーん、いいわね、この香り。柚子胡椒?」
雪歩「ええ」
昴「あれが見当たらないが?どろどろに溶かしたのか?」
雪歩「いえ――――これから仕上げをお客様たちに見せましょう。春香、お願い」
春香「よいしょっと」
百合子「これは……」

春香が抱えてきたのは見た目が工業用ハンドトーチガスバーナーで、しかしそれにしてはいやにごてごてとした赤黒い物体だった。
調理器具というよりも重火器に近い。

昴「インフェルノバーナー……実物は初めて見るな」
雪歩「さすが物知りですね」
莉緒「ねぇ、これって珍しいものなの?」
昴「ああ。インフェルノシリーズは、その筋ではいわゆる4つ星に区分される異界調理器具シリーズだ。職人が絶えてもう十数年……後継機は望めないのが惜しいな。見たところ整備もしっかりとされている」
春香「えへへ」
莉緒「で、これをどうつかうの」
昴「チーズを炙るのか?だが、こいつの火力を考えれば……」
雪歩「跡形もなくなる、ですか?」
昴「ちがうのか?」
169 : プロデューサー様   2021/08/21 12:49:21 ID:nxc9lrevGM
雪歩「インフェルノバーナーは何も高火力が売りというわけではありません」
昴「ほう……」
雪歩「地獄の業火はより罪人を長くいたぶるためにあるのです。消し炭にしてしまうなんて使い方は二流以下もいいところです」
春香「はい、持ってきたよー」

春香がサイコロ状に切ったチーズを雪歩の前に用意する。
百合子は固唾を呑んで成り行きを見守る

雪歩「業火(ひ)をつけて…」

幻想的な炎が美しくチーズを熱する!

昴「『inferno SQUARING』、まさかこんな形でお目にかかれるとはな」
莉緒「見て…!サイコロだったチーズが―――!」
百合子「丸くなって、真珠のようになった!?」
春香「うん、きらきらとして、本当に宝石のみたい」
昴「それだけじゃない、炎をチーズが吸収したように、体積が増している」
雪歩「しらじらしいですね。このチーズの特性、あなたが知らないわけがない」
莉緒「え、どういうこと?」
170 : プロデューサークン   2021/08/21 12:49:53 ID:nxc9lrevGM
雪歩「百合子とのPSTによって得たレシピが、このチーズの詳細を私に教えてくれました。私の直感どおり、このチーズは簡単に言えば、炎を旨味に変換して蓄えるんです」
春香「な、なんだってーーー!!」
昴「ふっ。そのPSTってのが何だがわからないが……正解だ。それはフレイムイーターの名で知られる異界チーズだ」
百合子「火焔喰らいだなんて、仰々しいですね」
昴「半端な熱であれば、旨味に変わるどころか異臭に変わってしまう。そして高熱であっても、短時間であれば食べることがかなわないカチカチの出来損ないの玉に変わる」
春香「インフェルノバーナーの火は短時間で長時間分の燃焼を可能にする。よくわかんないけど、そんな感じ!」
昴「こいつがこんなにも綺麗なパールとなったのは初めて見るよ」
雪歩「ふふっ、見た目だけではありませんよ。これをこうしてっと」

雪歩が肉じゃがの盛りつけられた皿に、パールと化したフレイムイーターを手際よく移していく。

莉緒「んっ!?柚子胡椒の香りが壊れたり邪魔するどころか、これは……調和、まさしく『Harmony 4 You』!!」
雪歩「さぁ、ご賞味あれ!」
171 : ぷろでゅーしゃー   2021/08/21 12:50:10 ID:nxc9lrevGM
食後

昴「ご馳走様、期待以上だったよ」
莉緒「感動したわ。これがハザマの料理……仕事柄、食材はわりと触れるけど、あんまりハザマの料理を食べられないのよねー」
雪歩「さて、それではあなたの番です、情報屋プレアデス。食後のお茶を淹れますから、ゆっくりと話していただきましょう」
春香「お茶請けもあるよ!」
百合子「栗ようかんとは、いい趣味していますね!」
春香「百合子ちゃんの分はないよ?」
百合子「ええーっ!?」
172 : あなた様   2021/08/21 12:50:25 ID:nxc9lrevGM
昴「『HOTDOGS』についてだが、前に話したとおりその居場所は突き止めていない。だが……」
雪歩「だが?」
昴「近々、現れる場所ならわかる」
春香「それって……」
百合子「行きつけの料理店とかですか?」
昴「いや、実は大会があるんだ」
雪歩「大会……」
昴「君たちよりも、異界寄りのハザマにはもう声がかかっていると思う」
春香「つまり料理大会ってこと?」
173 : Pはん   2021/08/21 12:50:40 ID:nxc9lrevGM
昴「そうだ。でもそんな大規模な大会じゃない。異界に幅を利かせている富豪の令嬢が、なかなかの食通でね」
雪歩「なるほど。そのグルメ令嬢を満足させる料理人探しの大会というやつですね」
昴「まあな」
春香「それって気軽に私たちも参加できるんですか?」
昴「参加者の大部分は富豪と元々付き合いのある人間がどこからか見つけてくる料理人だ。それらとはべつに挑戦枠がある。当然、審査があるけどな」
百合子「予選ってことですね。その令嬢と1ミリも関係ない料理人であってもそれに合格すれば、本選に参加できってことですよね!」
昴「ああ。『HOTDOGS』は予選には参加しないがな。一カ月前ほどに、令嬢の友人と偶然なのか仕組んだのか、関わりを持ったらしくてすぐに本選に参加できるみたいだ」
春香「狙いがあるとしたら……あの、その大会には何か賞品があったり?それとも得られるのはその富豪との人脈だけですか?」
雪歩「………」
174 : 兄ちゃん   2021/08/21 12:50:52 ID:nxc9lrevGM
昴「さあ。実はそこはぼかされているんだ。『異界料理人にとってすばらしいもの』だってな」
莉緒「最高位の5つ星調理器具か、レジェンド級の食材、SSR調味料、古代文明の遺したシステムキッチン……まあ、いろいろと候補はあるわよね」

春香(オトメティックパワーの増大に役立つ何かの可能性もあるってことだよね)
雪歩に耳打ちする春香。ちょうどSHS状態だったため直に吐息があたり、「ひゃんっ」と艶っぽい声をあげる雪歩だった。
隣で「あわわわ」と百合子が赤面する

雪歩「……こほん。大会の詳細を教えてくれますよね。申し込み方法とか、そういうの」

かくして『HOTDOGS』の情報を入手した3人だったが―――?

Recipe4につづく
175 : お兄ちゃん   2021/08/21 12:54:18 ID:nxc9lrevGM
Recipe4partAは早ければ明日(8/21)中に投下予定

今のところ、
Recipe4→大会準備編
Recipe5~7→大会編
Recipe8→????
って構成予定 安価しだいでは変わるかも

あと雪歩・春香・百合子の3人のユニット名をRecipe4か5で安価予定なのですが、もし既に「これだ!」っていうのがレスしてくださると嬉しいです。
(例によって採用は確約できませんが)

ご意見・ご想像募集中です!何卒最後までお付き合いください!
176 : ハニー   2021/08/21 18:28:10 ID:aaPkZ9YVcY
「グリルモワール」とかいう感じかな?
もうちょいひねった方が良いのかな?
177 : プロちゃん   2021/08/21 21:49:04 ID:nxc9lrevGM
>>176
グリルとかけたんすねー、いいっすね
暫定的にこれにしておきしょうか
今回のpartBで安価とろうかな

そんなこんなで予定より早く書けたのでRecipe4partA下書き投下していきます!
178 : ぷろでゅーしゃー   2021/08/21 21:49:22 ID:nxc9lrevGM
Recipe4 partA 下書き

プレアデスから異界料理の大会に『HOTDOGS』(以下、熱犬)が参加するという情報を得た雪歩たち。
熱犬は大会の開催側である令嬢の友人と友好関係を築いたことで、既に本選への登録を済ませてあるという。
対して、雪歩たちは予選審査をまずは通らなければならない。
プレアデスの話では開催はこちらの世界でいうところの3週間後の満月の夜、それは異界にとっては夜ですらないかもしれないが、じずれにしてもまだ日はある。
大会申し込み自体は直前で問題ない、なんだったら飛び込みでもという話だそうだ。

プレアデス訪問から3日後 早朝
厨房で雪歩が3人分の朝食を作る。春香はそれを手伝う。
慣れた手つきだ。普段は料理中にあまり会話しない2人であったが、その日は例の大会に向けての準備についてあれこれと話す。
179 : 夏の変態大三角形   2021/08/21 21:49:34 ID:nxc9lrevGM
雪歩「それじゃ、春香。百合子のこと、頼んだわよ」
春香「うん。素質はあるから大丈夫だと思う」
雪歩「そうね。ポテンシャルだけで言えば、私たちの中で一番かも」
春香「へぇ?雪歩が言うならそうなんだろうね。百合子に直接言ってやりなよ。喜ぶよ」
雪歩「そうかしら。戸惑うだけじゃない?」
春香「ここにきたばかりの百合子だったらね。あの子は、なんていうかああ見えて………タフだよ。家族や友達と突然の別離、見知らぬ大地、そこは異世界……とんでもない漂流者なんだよね。凄くない?少なくとも異常妄想愛者ってだけじゃない」
雪歩「そうね……百合子は独りでこの世界に来たのだったわね。―――私たち3人と違って」
180 : プロちゃん   2021/08/21 21:49:49 ID:nxc9lrevGM
同時刻 百合子の部屋
プレアデスでの一件が済んでから、百合子はタイミングをずっと見計らっていた。
それはつまり、雪歩たちに「可憐ちゃん」と呼ばれている彼女たちの幼馴染のことを聞くタイミングである。
いかにして雪歩たちの元を離れて熱犬のもとへと進んだのか、そこまでを知りたいとは思わない。
ただ、単純に自分以上に「家族」として認識されているであろう存在、雪歩と春香にとって間違いなく大切な存在である少女のことを聞いておきたいと思っている。
もっと言えば、自分が大会に参加する意味や意義。雪歩たち「家族」に協力することに異論はない。
が、その先にある「可憐ちゃん」についてほとんど何も知らないでいるのはいかがなものか。
181 : der変態   2021/08/21 21:50:23 ID:nxc9lrevGM
百合子「私には可憐さんのことを知る権利と資格がある」

全身を映し出す鏡の前で少女は自分を見つめてそう言った。
続けて、彼女自身を奮い立たせるような言葉が並んでいき、彼女は彼女を肯定する。
自己暗示。少女がこの世界で平常心を保ち続けるために、人知れず毎日行っている儀式めいた習慣のひとつ。
セブンテイルズと名乗ってみたり、あたかも自分自身をはじめから異界の住人、特別な人物であるとしたりするのは、くだらぬ妄想ではなく、百合子なりの防衛本能の賜物なのだろうか。
できるだけ肌身離さず持ち歩かなくてはならない魔導書。契約という名の呪い。

この本があるから私はここにいられる?白雪さんや春香さんのために役に立てる。
じゃあ、もしも、そう、もしも仮に私がこの本を扱えなくなったら―――
そうした不安が杞憂だと言えるようになったのは、実は最近になってから
2人から確かな信愛を感じられるようになってからだった。

百合子「……また今度にしよう。今日は日が悪い。それに、白雪さんなら、きっと私から言わずとも話してくれるはず、だよね? 前にそんなこと言っていたし。うん……大丈夫」

少女は鏡に埃よけの布を被せながら、そう弱々しく呟いた。
182 : ご主人様   2021/08/21 21:50:37 ID:nxc9lrevGM
百合子「護身術?」
春香「うむ。しかもただの護身術にあらず、だよ」

朝食後、春香は百合子を、話があると自分の部屋に招いた。

春香「異界は危険だからね。心得があるにこしたことはないかなって」
百合子「な、なるほど。それで先生役を春香さんが?」
春香「うん。知ってのとおり、私はこちら側に限らず、時期を見て異界でも食材の仕入れを行っているから、まぁ、それなりに動けるからね」
百合子「へぇー……」
春香「そうは見えないでしょ?いつも転んでばかりなのに不安だって思った?」
百合子「ッ!? 読心術まで身につけているんですかッ?!」
春香「おいコラ」
183 : プロデューサーさん   2021/08/21 21:50:50 ID:nxc9lrevGM

春香「こっちとあちらじゃ、身体の動かし方が違うんだよ」
百合子「というと……?」
春香「こっちだと非力な少女であっても異界だとそうとも限らないの。そう、マナをうまく使えたらね」
百合子「おお……急にバトルファンタジーな雰囲気出てきましたね!」
春香「掘り下げすぎてもしかたないから、ざっくり話すね」
百合子「あ、はい」
春香「異界の空気中に漂うマナ。場所によって濃度の分布、再生の程度はまちまち。それを身体に取り入れたり、纏ったり、より高位のエネルギーに変換したり……つまりは行使することで超常的な能力を発揮する」
百合子「ふむふむ。簡単に言ってしまえば、魔法の世界ってことですね」
春香「そうそう。マナとの相性、能力の発現の在り様は人それぞれ、資質がものを言うわけ。ってことで、はい」
百合子「これは……カード?」
184 : ボス   2021/08/21 21:51:04 ID:nxc9lrevGM
春香「機関が採用している、その人の資質を調べるアイテムだよ。一般にも流通させているの。あ、異界での一般ってことね。昨日、莉緒さんに貰ったんだ」
百合子「莉緒さんに?」
春香「美味しかったな~、絶品スイーツ。あっ、これ、雪歩には内緒ね。というか、ほら、市場調査ってやつだからね!遊んでいたわけじゃないから!うん、だって現にこれを貰ってきているし、お仕事ですよ!お仕事!」
百合子「えっと、それでこのカード、どう使えば?」
春香「単純明快。持って、にーちゅっと力を込めるの。カードに何か紋様が浮き出すまで込め続けるんだ。対応表も貰ってきているから。大まかな能力の系統がわかるんだよ。さ、やってみて」
百合子「その前に、春香さんはどうなんですか?」
春香「へっ。私? 私は……正統派だよ?」
百合子「???」
春香「身体能力向上系ってこと」
百合子「………」
春香「地味って思った?」
百合子「ッ!? 読心術まで身につけているんですかッ?!
春香「それはもうええがな!!」
185 : そなた   2021/08/21 21:51:20 ID:nxc9lrevGM
春香「こっちの世界の人間が異界で発揮できる能力としては過半数を占めるんだよ、身体能力向上系って。言い換えればこっちの2人に1人は向こうでは基礎ステータスがぐーんとあがる感じ。そういった人たちみんなが異界のストリートファイターやっているわけじゃないけどね。極めさえすれば、最も強大だって言われている系統ではあるんだよ」
百合子「力こそパワー!ってやつですね。たしかに攻撃力に極振りでなんとかなるのも多いし」
春香「そういうこと。あと、大事なことを伝えるの忘れていた」
百合子「ん?なんですか」
春香「ノリで設定作って書いたはいいけど、戦闘描写は1回か、あっても2回ぐらいだからそう気負う必要はないよ」
百合子「ええーっ」ドンガラガッシャーン
春香「またベタなリアクション……」
料理メインだからしかたないっス

そういうわけで大会開催まで定期的に、異界のほとりにて戦闘訓練をつむつむする春香・百合子であった

【A】→百合子の能力系統
186 : ハニー   2021/08/21 21:51:36 ID:nxc9lrevGM
2日後の午後 
現行イベントに便乗(?)してダイヤモンドゲームをはじめたはいいものの、すぐに飽きてしまった3人は駄弁りながらミリシタのMV観賞会をしていた。
初期・早期実装曲と比べてみるとカメラワークひとつとってもその進歩がわかる。それはそれとして初期に多い、斜め落ちノーツ、てめぇは許さん

そんなところに1人のお客様がやってきた。

未来「あれ~?ここどこだろう~?」
店の前できょろきょろしている、わんこ系の少女。先に断わっておくと実は熱犬のリーダー!っていう展開はない
あと、引くことはできていないがミリカンのパジャマ姿が可愛い。

雪歩「『YUKOHO'S』キッチンへようこそ」
毎回言うつもりが久しぶりに言った気がする台詞を雪歩はその少女にむかって言う。

未来「キッチン?もしかしてここお料理屋さんなんですかっ? それともお惣菜とかテイクアウトできるお店…?」
春香「離乳食から末期の水まで!ここは私たちが経営している料理店だよ!」
未来「乳はないんですか?」
百合子「ツッコミどころ、そこじゃないから!」
187 : プロデューサークン   2021/08/21 21:51:52 ID:nxc9lrevGM
未来「わっ! 素敵な洋服ですね。風を感じるっていうか……嵐?」
百合子「この服はインフィニティストームです!」
例のごとくその場で一回転してみせる百合子。
いろいろと丸出しの衣装。グリ時代のイラスト時点で既にその露出度の高さにPたちのなかで嵐が起こったとか起こっていないとか
ユニット名(乙女ストーム!)の印象が強すぎるせいか曲名『Growing Storm!』を忘れがちなのは自分だけだろうか。

未来「風にのって羽ばたく翼を、衣装に可愛くあしらいました。」
百合子「どんな風でも力に変えていける乙女たちは」
未来・百合子「いつだって無限大の可能性!」

未来・百合子「でへへ~」



雪歩「みらゆりですか、大したものですね」
春香「こらこら」
188 : ダーリン   2021/08/21 21:52:05 ID:nxc9lrevGM
互いに自己紹介を済ませた後、話はとんとん拍子に進み、未来は客間へとたどり着く。

今回は百合子が未来の話を聞くことに。

未来「悩み……はい、それだったら、たぶん【B】のことです!」

百合子(意外!)


以下、解決編まで(partA内で)パパッと書く予定
189 : Pはん   2021/08/21 21:54:01 ID:nxc9lrevGM
※【A】セブンテイルズこと百合子の能力系統は?大雑把な感じでかまいません 劇中で言及があるとおり、そこまでの活躍(戦闘描写はない予定) チート級なのはご遠慮ください

※【B】未来の悩み せっかくのドラマということで、意外なやつで もちろん健全なものに限定

※【C】未来のために作る料理

※【D】partBで3人のうち少なくとも1人(場合によっては全員)が訪れる場所 異界以外でお願いします

※【ID判定】partBに登場するアイドル 大会関係者 登場済アイドル再判定処理

レスの有効期限は8/23 16:59:59まで 早ければ8/22の夜に清書投下します
何卒ご協力お願いします!
190 : Pたん   2021/08/21 21:58:07 ID:nxc9lrevGM
>>189
すみません
【A】について訂正
×そこまでの活躍(戦闘描写はない予定)
○そこまでの戦闘描写はない予定

さすがに能力を安価しておいて一切の描写がないのは変なので少しは書きますとも!
191 : 我が友   2021/08/21 22:02:25 ID:HRoTwLlp9.
A 具現化(リアライズ) 言葉に出した事象、物質等が実現する。台詞や行動も実際にとらせることができる
B 誕生日プレゼントにもらったカップがなんか変(ハザマ産の物品ということが割とすぐ判明する)
C すだちうどん
192 : 監督   2021/08/22 09:49:05 ID:ovAh4K5yZ2
A自分の周りの空気を操って風を生み出す。風に乗って移動もできる(ただし距離は短い)
B飼ってるペットが最近急に喋りだした。未来自身は楽しんでるが、友達が気味悪がって遊びに来なくなった
Cボルシチ
Dスーパーマーケット
193 : ボス   2021/08/22 20:29:56 ID:HgHGAJKC9M
A:言葉や風を媒介にして周囲に働きかける
攻撃や防御にも使えるけど、特定のものや人物へのブーストが本領
(対象は魔導書や仲間たちなど)
B:周囲の人々が特定の食品(ハザマ産?)に異常な執着を見せ出した
しかも日を追うごとに増えてきている
C:オムライス
D:百合子の実家
194 : 夏の変態大三角形   2021/08/23 05:07:25 ID:w9Uhq/7OY.
定期age

ID判定処理
>>191 HRoTwLlp9.→「H」=舞浜歩

Recipe4partBに歩が大会関係者として登場
参加者か運営側かは未定
195 : P殿   2021/08/24 01:48:01 ID:TSoMApDYDY
>>189
今気づきましたが、22日の夜じゃなくて24日の夜ですわ……
196 : Pさぁん   2021/08/24 21:08:38 ID:TSoMApDYDY
レスありがとうございます
Recipe4partA投下していきます
197 : 5流プロデューサー   2021/08/24 21:08:56 ID:TSoMApDYDY
Recipe4partA

どこぞの金持ちの令嬢が開催する異界料理大会。
それに『HOTDOGS』が参加することを情報屋プレアデスから聞き出せた雪歩たち。
大会は3週間後の満月の夜。時間の流れ方が違う異界では、そのときが夜かどうかもわからない。

異界での滞在経験が乏しい百合子に春香は身を守る術を教える。
セクシー捜査官ハンドレッドこと莉緒から貰った、特殊なカードをつかって百合子の異界での資質を調べてみると、どうやら風属性の能力が発現するようだった。
使い方しだいでは、風を刃にして対象を切り裂いたり、あるいは癒しの風によって対象を回復したりができるかもしれない。
が、実際の異界のほとりで始めた訓練においては今のところそよ風がやっとの百合子だった。大会までには何か習得できるのだろうか。

大会準備中、『YUKIOHO'Sキッチン』を1人の少女が訪れる。
未来と名乗る、わんこ系美少女。悩みがあるか聞くと、
「誕生日プレゼントにもらったカップが変なんですよね~」と返される。
198 :   2021/08/24 21:09:07 ID:TSoMApDYDY
春香「えっと、そうじゃなくて、未来ちゃん自身の悩みというか、その……」
未来「えー? 私がもらったものだから、私の悩みじゃないんですか??」
百合子「うーん、美奈子さんや響さんのときは(実際の解決法はともかく、)お2人自身の気持ちや素質が変われば解決できる悩みだったけれど、今回は違うみたいですね」
春香「対価どうこうは関係なさそうだね」
雪歩「2人とも、決めつけるのは早いわよ。話を最後まで聞いてみましょう。未来さん、そのカップがどう変なんですか?」
未来「入れたものの味が変わっちゃうんです!」
春香「というと……水がコーラになる、みたいな?」
199 : P君   2021/08/24 21:09:20 ID:TSoMApDYDY
未来「いえ、そこまでのあれじゃないんですけど、基本的には美味しくなるんですよ? お茶とかジュースとか」
百合子「へぇ、入れるだけで美味しくなるって、まるで魔法……うん?」
春香「もしかして、それ―――」
雪歩「ねぇ、未来さん。それ、今、持ってはいないかしら?」
未来「やだなぁ、わざわざマイカップなんて持ち歩くこと……あっ」
雪歩たち「?」
未来「そうです!ちょうど、カップをくれた人に会いにいく途中だったんでした!でも、いつの間にか路地裏に入っちゃっていて……」
百合子「ってことは、今、持っているの?」
未来「はい!」
春香「待って。その前に、ひとついい?誰からもらったの?」
200 : プロデューサーくん   2021/08/24 21:09:32 ID:TSoMApDYDY
未来「近所のお姉さんですよ?」
雪歩「『近所のお姉さん』って……Google検索したら、ろくな結果出てこないんだけど」
春香「そ、それとは関係ないんじゃないかな」
百合子「その人、何している人なの?」
未来「うーん、よく知りません」
春香「そっかぁ」
雪歩「ならしかたないね」
百合子「それでいいんですか!?」
雪歩「とにもかくにも、見せてくれる?その変なカップっていうの」
201 : 高木の所の飼い犬君   2021/08/24 21:09:55 ID:TSoMApDYDY
未来「これですっ♪」

202 : ごしゅPさま   2021/08/24 21:10:10 ID:TSoMApDYDY
春香「スポーツスタッキングのカップやないかーい!!」
雪歩「百合子、説明を」
百合子「スタッキングは積み重ねるという意味ですが、その言葉のとおりプラスチック製のカップを積み上げたり、逆に崩したりしてその速さを競う、世界54ヶ国で公認されているスポーツですね」
春香「えっ、これでお茶とか水とか飲んでいるの?未来ちゃん」
未来「ち、ちがいます!間違えました。これは助っ人で呼ばれた部活で使っただけで、本当はこっちです!」
203 : 番長さん   2021/08/24 21:10:35 ID:TSoMApDYDY
(ゲスト:豊川風花)

204 : Pサマ   2021/08/24 21:10:49 ID:TSoMApDYDY
春香「うわー、立派なカップ。どれぐらいあるんだろう……って、中年オヤジの下ネタかーい!!!」
雪歩「」
百合子「(実際はそんなことないくせに自称ちんちくりんの)白雪さんが死んだ目をしていますよ!?」
未来「でへへ~」
春香「いや、これでお茶や水を飲むって、絵面的にR18なんじゃないの?ギリR15でいける?」
雪歩「露骨なテコ入れですぅ!脱がすなら可変サイズの百合子ちゃんを脱がせばいいんですぅ!」
百合子「ちょっ、変なこと言わないでくださいよ!?」
未来「すみません、こっちです!これが正真正銘、お姉さんからもらったカップです」
205 : Pたん   2021/08/24 21:11:11 ID:TSoMApDYDY
はるゆきゆり「!?」

206 : EL変態   2021/08/24 21:11:24 ID:TSoMApDYDY
春香「これは………」
百合子「何の変哲もないカップ……と言うには、このロゴが気になりますね」
??「えっ?ユリコ、そんな急にインタレスティッドなんて、どういうつもりですか?ラブですか?」
春香「□コちゃんじゃなくて、ロゴね!! というか、最後、瑞○ちゃんじゃん!!」
雪歩「これ、見覚えあるわ」
未来「へ?ほんとですか」
雪歩「ええ、現物は初めて見るけど……これはきっとChupadaのカップね」
百合子「なんですか、そのイタリアの老舗ファッションハイブランドをもじったような名前は」
春香「かつて存在したという高知能のチュパカブラたちによって結成されたブランドのことだよ」
207 : ぷろでゅーしゃー   2021/08/24 21:11:36 ID:TSoMApDYDY
百合子「こ、高知能のチュパカブラ!?」
雪歩「鰹のたたきや地鶏、文旦やフルーツトマトなどなど、美味しいものたくさんだよね。あと、印象は薄いかもだけど銘茶の産地でもあるんですぅ」
百合子「高知は関係ないですよ!? なんでこのタイミングでちょっとグルメドラマっぽいこと言いだすんですか!?」
春香「知ってのとおり、765年前までチュパカブラたちは私たちが異界と呼んでいる場所の支配者だった……でも今や旧支配者とさえ呼ばれることがないほどに影を潜めて生きるのを強いられる存在となったんだ」
百合子「初耳ですよ!?」
雪歩「というわけで、このカップはある意味で聖遺物の1つだってことね」
百合子「どういうわけです!?」
未来「なるほど、特別なカップだから特別な効果があるんですね!」
春香「正解!」
未来「でへへ~」
百合子「えぇ……。えっと、それでどうするんです?言うほど困っているみたいじゃないですけど」
208 : 3流プロデューサー   2021/08/24 21:11:48 ID:TSoMApDYDY
雪歩「この世に偶然はない、あるのは必然だけ。そうよね?」
百合子「は、はい」
雪歩「未来さんがここを訪れたのも例外じゃないわ」
春香「つまり、このカップと私たちは巡り合う運命だった?」
雪歩「さあ?この異界産のカップが未来さんと私たちを巡り合わせた、もっと言うとその近所のお姉さんとやらは、ここまで計算していた可能性もあるわね」
百合子「そこまでいくと確認しない限りは、想像の域を越えませんよね」
雪歩「ええ、そうね。ぶっちゃけ本編とは関わりのないサブイベント的なあれだと思うわ」
春香「ぶっちゃけるね!?」
雪歩「未来さん、このカップだけど……私たちにしばらく預けてくれない?」
未来「えっ? で、でも……今、思い出しましたけど、私の友達がこのカップでうどんの出汁を飲んだらどうなるか検証したいって言っていて……」
209 : Pさぁん   2021/08/24 21:12:02 ID:TSoMApDYDY
雪歩「もちろんタダでとは言わないわ。ご馳走するわよ。そうね、オムライスなんてどう?」
未来「いいんですか!? じゃあ、はい、どうぞ♪」
百合子「軽っ!!」
春香「グッドタイミングだね。珍しい卵が手に入ったところだったんだ」
百合子「あの、ふつうので作ってあげたほうがいいんじゃ……」
雪歩「ボルシチ風ソースで一味違ったオムライスにしようかしら」
未来「わーい♪」
210 : プロデューサーさん   2021/08/24 21:12:14 ID:TSoMApDYDY
食後

雪歩「ねぇ、未来さん。よかったらそのお姉さんのこと、紹介してくれる?」
春香「!! 雪歩、浮気!?」
百合子「なんですかその反応……」
雪歩「念のため、どういう人物なのか確認しておこうと思って。もしかしたら……大会のために私がハザマとしてレベルアップできるきっかけになるかも」
春香「まぁ、たしかに、Chupadaのカップを持っているぐらいだから、ひょっとすると異界に精通している人なのかな」
百合子「うーん……でも危ない人の可能性だってありますよね」
春香「襲われちゃう(意味深)ってこと?」
百合子「(意味深)かどうかはともかく、気をつけるにこしたことはないですよ」
雪歩「そうね。それはそうと、2人には別に頼みたいことがあるの」
春香・百合子「え?」
未来「あのー、おかわりいいですか?」
211 :   2021/08/24 21:12:26 ID:TSoMApDYDY
雪歩「このスーパーマーケットに調査しに行ってくれないかしら」ピラッ
春香「チラシ? えーっと……特におかしな部分はないような」
百合子「何があるんです?」
雪歩「……partBを書くまでに考えておくわ」
春香「ええ~!?」ドンガラガッシャーン
百合子(なんて古典的なリアクション……)

未来「んー♪ おいしい~」


partBにつづく!
212 : Pさぁん   2021/08/24 21:17:53 ID:TSoMApDYDY
partBでは①雪歩②春香・百合子で別行動にしてみようかなと。近所のお姉さんは歩になるかもです
正式に安価とるつもりないですけど、この人がいいっていうのあればレスお願いします
なお、お姉さんはRecipe4しか出ないと思いますが

あと百合子の実家は行くことが難しい(隔絶された別世界だから)ので、実質的に消去法でスーパーマーケットになりました
どういう展開がいいか、アドバイスあればほしいなーって
(採用は確約できませんけど……)

何はともあれ、最後までご協力していただけると助かります!
明日の夜あたりには下書き投下したいです!
213 : 貴殿   2021/08/24 22:09:58 ID:qG9YJR8kcU
近所のお姉さんが歩なら、どこかで昴と繋がりがあって欲しい
(以前のお話が好きだったんだよ!)
214 : 兄ちゃん   2021/08/25 21:28:46 ID:mzJTSFhnv6
遅くなりましたが、Recipe4partB下書き投下します
215 : ぷろでゅーしゃー   2021/08/25 21:28:59 ID:mzJTSFhnv6
雪歩は未来の案内で例のChupadaのカップを所持していたという「近所のお姉さん」なる人物へのもとへと向かう。
その間に、春香と百合子は異界関係者とも繋がりがあるというスーパーマーケットへ調査しに行くのだった。
216 : プロデューサーくん   2021/08/25 21:29:17 ID:mzJTSFhnv6
side雪歩

夕焼けに染まる町を歩くこと15分ほどして、未来が「ここでーす!」と示したのは洋館らしい建物だった。
古めかしい門まである。住んでいる人の気配こそあるが、庭はさほど手入れしていないよう見えた。
ここにそのお姉さん一人が暮らしているのだという。未来曰く、そのお姉さんとやらが祖父母から継いだ屋敷であるのだとか。
くんくん、と雪歩は鼻をならす。あの子には及ばずともこのただならぬ気配を感じ取る。しかし、こうも露骨に怪しいと訪ねるのはよしておこうか。
そう踏みとどまっていた雪歩にかまわず、未来がすたすたと門をくぐって、出入り口の呼び鈴を鳴らすのだった。

未来「雪歩さん? こっちですよー?」
雪歩「あ、うん」

頼もしいといえばいいのか。まぁ、未来はその人物と面識があるみたいだし、下手なことは起こらないだろう。雪歩はそう思うことにした。
インターホンでの短いやりとり。声だけだとずいぶんと若い。大学生ぐらいだろうか。
待っていると、内側で扉に誰かが近づく足音がして、そして扉がゆっくりと半分だけ開かれた。
姿を現したのは、未来や雪歩よりは年が上であるようだが、二十歳かそこらといった雰囲気のファンキーな髪色をした女性だった。

歩「……あれ? 未来、こちらの方は?」
未来「雪歩さんです。とっても美味しい料理を作ってくれるんですよ」
歩「へぇ……」
217 : プロデューサーはん   2021/08/25 21:29:33 ID:mzJTSFhnv6
警戒されている。扉が完全に開かれはしない。歩が雪歩に向ける目つきは疑いがこめられている。
誤魔化しても好転するとは思えない。未来がいっしょなのだからと雪歩は「未来さんにあげたカップのことで話があるんです」と思い切って言ってみた。
すると歩は「あー……うん、アタシ、詳しくないけどいい?」と面倒くさそうに返してきた。
もしかするとこの女性はカップの価値というか、謂れについて知っているわけではないのだろうか。

雪歩「ええ、大丈夫です。私だってそうですから」
歩「ふうん」

まるっきり嘘というわけでもない。食材や調理法、調理器具ほどには、食器類、しかも失われたに等しいチュパカブラ文明のものなんてのは精通してなどいない雪歩だった。

未来「あのー……雪歩さん」
雪歩「うん?どうしたの?」
未来「ほんとなら、私もご一緒したいんですけどー……、その、今日は友達がお泊まりしにくる予定で」
歩「例のうどんの子?」
未来「あ、そうです」
歩「だってさ。どうする?」
雪歩「あなたさえよければ、私1人でお邪魔しても構いませんか」
218 : 監督   2021/08/25 21:29:46 ID:mzJTSFhnv6
日を改めることが最善ではないだろう。勢いが大切。
歩はしばし考える素振りをして、それからいったん、後ろ、つまりは室内側に顔を向けたかと思うと、とくに何もなかったふうにまた雪歩たちのほうに向き直った。

歩「ま、いっか。わかった、入りなよ。遅くなったけど、アタシ、歩・マイハマン」
雪歩「私は雪歩です。えっと……今日はありがとうね、未来さん」
未来「いえいえ、私のほうこそ!ご馳走でしたっ」

ぺこりと頭を下げて駆けていく未来。

雪歩「では、お邪魔します――――」
219 : Pはん   2021/08/25 21:30:38 ID:mzJTSFhnv6
洋館の内装の描写は割愛。各自の想像に任せることにして、応接室らしい部屋に通される雪歩。
立派なソファにかけてから、どう切り出せばいいか考えていると、背後から、つまり歩は前方で同じくソファに腰掛けているにもかかわらず、後ろから声がした。
聞き覚えのある声だ。

反射的に振り返ってみると、そこにプレアデスがいた。

雪歩「プレアデス?なぜここに」
歩「あれ、出てきていいの?知り合いなのか」
昴「ああ。つい先日、会ったばかりなぐらいだよ」
雪歩「プレアデス……どうして、あなたがここに?」
昴「そいつはこっちの台詞だよ。……とはいえ、オレ目当てじゃないようだが」
雪歩「あなたがいるだなんて知らなかった。もしかして……」
220 : Pサン   2021/08/25 21:31:01 ID:mzJTSFhnv6
雪歩は歩のほうをちらりと見やる。

雪歩「恋人と同棲しているって感じかしら?」
昴・歩「まさか」

2人の声が重なる。きっと同じように苦笑しているのだろう。
プレアデスは移動し、雪歩の隣に座る。大きなソファだ。距離はちゃんととっている。

昴「こいつの祖父さんと、オレの……まぁ、先代とでも言えばいいかな、その人が親しくてな。その縁で、ここはオレの隠れ家のひとつってわけだ」
歩「アタシとしてはいい迷惑だけどね」

非難というより諦念がこもった言い方だった。納得はしていなくても許容はしているみたいである。

昴「さて、と。うさぎちゃん、何の用なんだ? オレがいたほうが話が早く済むかと思って出てきてやったんだぞ」
雪歩「恩着せがましいわね」
歩「ふふっ。……えっと、あれだろ、未来にあげたカップ。選んだのは未来だけどな」
雪歩「え?」
歩「なんだ聞いていなかったのか? 誕生日にさ、パーティ前かなんかだったのかな、ふらっとこっちにきてさ、あのでへへ~っとした顔で誕生日なんですよ、なんて言うから、なんかあげようと思って、家にあげたんだよ。で、グランパのコレクションから、そんな高そうでも安そうでもないやつ、いくつか持ってきて、選ばせてやったんだ」
221 : 彦デューサー   2021/08/25 21:31:13 ID:mzJTSFhnv6
説明を求めて雪歩はプレアデスに視線を送る。

昴「歩の祖父さんは食器やら調理器具の蒐集家だったんだよ。そしてオレの先代が関係しているってことから、わかるとおり、」
雪歩「異界とも縁があった、ということね」
昴「そのとおり」
雪歩「歩さん自身は見たところ、異界にそこまで染まっていないみたいだけど?」
歩「そりゃそうさ。アタシは普通を愛する人間だからね。異常事態は、時折、勝手に上がり込んで屋根裏で寝泊まりする厄介者で充分だよ」
昴「いちおう手土産は毎回持ってきているだろ?」
歩「それはそれ、これはこれだって」
雪歩「……くすっ。仲がいいのね」
昴・歩「べつに」
雪歩「ふふっ」
昴・歩「………」
222 : 番長さん   2021/08/25 21:31:25 ID:mzJTSFhnv6
その後、Chupadaのカップについて話をした3人。最終的に雪歩がそのまま譲り受けることになっただけではなく、なんと歩は今度の料理大会のことを知って、協力してくれるという。

雪歩「協力?」
歩「そうそう。いや、力になれるかわかんないけどさ、こうしてやってきたのは、偶然にしては出来過ぎなんだよ」
昴「どういうつもりだ?」
歩「グランパのさ、コレクション、保存状態の維持に気をつけているけどさ……このままただの飾りで半永久的に眠るには惜しいような奴らもいると思うんだよね」
昴「……前にそういうの、全然わからないって言っていなかったか」
歩「たしかに噂で聞くグランパのような鑑定眼ってやつはアタシにはないよ。あくまで見た感じっていうか、まぁ、フィーリングだな。使おうと思えば使えるのに、もったいないなぁってさ」
昴「蒐集物なんて得てしてそういうものなんじゃないか」
雪歩「……どれか持っていっていいってこと?」
歩「貸すだけさ。そのみょうちくりんな料理大会で、ぜひとも使って、その使い心地を語りにまた来てくれたらそれでいい」
昴「おいおい、ずいぶん気前がいいんだな。わさびキメすぎなんじゃないのか?」
歩「うっさいな! ま、そんなわけだから、こっちにきてくれ。倉庫部屋があるんだ」
雪歩「ありがとう。役立てられるか約束はできないけど、興味があるわ」
223 : P殿   2021/08/25 21:31:37 ID:mzJTSFhnv6
side春香&百合子

異界関係者も利用するというスーパーマーケット。
一見するとありふれたごく普通のスーパーマーケットだった。
大手系列店ではないので、大手に負けないような長所、それが地の利なのか何なのかわからないがあると思われるが、案外、異界との繋がりこそがこの店舗を存続させているのかも?
そんなことを春香は百合子に話しつつ、実際に店内に入って食材をみていた。
オフィス街にいくときもそうであったが、悪目立ちするのもまずいので百合子はまた着替えていた。
224 : そなた   2021/08/25 21:32:14 ID:mzJTSFhnv6
百合子「どうですか?」
春香「おー、お嬢様っぽい」

225 : Pサマ   2021/08/25 21:32:28 ID:mzJTSFhnv6
春香「ところで、それ……」
百合子「借りていないですよ?」
春香「じゃあ、例のスタッフさんのお手製?」
百合子「はい! エミリーちゃんと同じぐらい星梨花ちゃんも好きなみたいで、というかエミせり?ってのが大好物なんだそうですよ」
春香「へ、へぇ。いっそうちにスカウトしたらどうかな。ほら、うちって美咲さん、1人であんな数の衣装を……」
百合子「わー、わー、ダメですよ、春香さん!タブーですよ、タブー!」


??「あれ?あの子たちは……」
226 : プロデューサーちゃん   2021/08/25 21:32:39 ID:mzJTSFhnv6
※【A】歩から借りることとなった調理器具とは? 大会で使用予定あり 詳細ありでもいいし、「包丁」「鍋」みたいに種類だけでもかまいません

※【B】スーパーマーケットで春香と百合子に声をかける/から声をかけられる人物とは? まだここでの展開は決まっていないので、どういう立場の人物かも示してくれるとありがたいです。ただし『HOTDOGS』メンバーは不可

※【C】雪歩がハザマ(異界料理人)として大会までの残り日数でする特訓は? 描写をどの程度するかわかりませんが、安価とるだけとっておきたいなぁと

※【ID判定】大会予選で接触する人物 登場済キャラおよび今回の【B】とかぶった場合は再判定処理

レスの有効期限は8/27 17:59:59まで
清書投下は早くても8/27夜 
気が早いですが9月のうちには完結させたいですねー

何卒、ご協力お願いいたします!!
227 : ハニー   2021/08/25 22:37:34 ID:Md6XFvT1K.
A 「ミルキーウェイ」と呼ばれるおろし金
B エミリー(本編開始前に悩みを解決してもらった客)
C うまく淹れたら茶柱が立つどころかブレイクダンスすると専ら噂のハザマ産急須(=ハザマ産でもトップクラスに癖が強い道具)を使いこなす。
228 : お兄ちゃん   2021/08/26 00:20:30 ID:wTTHLwqJmQ
Aまな板
Bロコ(異界調理道具の職人。インフェルノバーナーの入手の際に面識あり)
C千切り、桂剥き、飾り切りなど、純粋に包丁の扱いの精度を上げる
229 : プロちゃん   2021/08/26 20:28:37 ID:SkLF3T3v8I
A:土鍋(実は雪歩には幼少期に見覚えがあった)
B:莉緒が「何か依頼はないかしら?」とか言いながら登場
協力はするが「これじゃお金は取れないわね」と肩をすくめて退場
C:幼少期に食べた料理の再現(夢に出る頻度が日を追うごとに上がっていく)
230 : 番長さん   2021/08/27 16:57:59 ID:L5q/ylpjTY
定期age

ID判定処理
>>227 Md6XFvT1K→M=馬場このみ
大会予選で出会うのはこのみさんに決定

残り1時間 まだレス募集していますよー
清書投下は明日中を予定
231 :   2021/08/28 09:43:54 ID:XtQIt5qDqM
レスありがとうございます!
Recipe4partB投下していきます
232 : 我が友   2021/08/28 09:44:10 ID:XtQIt5qDqM
未来の案内で雪歩が訪れた洋館にいたのは、いかにもダンスが得意そうなお姉さん・歩だった。
彼女の祖父は異界ともゆかりのあった食器や調理器具の蒐集家であったらしく、Chupadaのカップをそのなかの一品だと判明する。
孫娘である歩はというと、異界との縁はそれほどないが、祖父から譲り受けた洋館は情報屋プレアデスのアジトの1つとして使われもしているのだった。
プレアデス曰く、先代の情報屋と歩の祖父に親交があったとのこと。
成り行きでChupadaのカップをそのまま受け取ることになった雪歩。しかも例の料理大会のことを知った歩は、こうして出会ったのも運命に違いないと捉えて、雪歩たちに調理器具の1つを貸しだすことを提案する。
そうして雪歩は洋館内の倉庫に歩とプレアデスと共にきていた。
233 : 兄ちゃん   2021/08/28 09:44:27 ID:XtQIt5qDqM
雪歩「これは……おろし金?このコーティングは特殊ね。まるで、そう、宇宙みたい」

歩「へぇ、そいつを選び取るとは、なかなかどうしていい目をしている。いい腕、と言うべきかな」

昴「側面に刻まれた英字……ミルキーウェイ?天の川銀河ってことか。いやに壮大だな」

雪歩「たしかに宇宙(コスモ)を感じる―――」

歩「こいつにかかれば、並の食材だってあっという間に煌めく星屑に変わり、その味は銀河(ギャラクシー)級なんだ!」

昴「ずいぶん大きく出るな。しかし、まぁ……星屑のシンフォニアというわけか」


LTH09の曲について言えば、ミリシタで紗代子のソロ曲一周目として実装されている『vivid color』が好き。歌詞とメロディにうるっとくるというか、じーんと胸に響くものがある。
それはさておき、星々の瞬きを力に変えるおろし金「ミルキーウェイ」を手に入れた雪歩はお礼を言って洋館を後にした。
234 : 監督   2021/08/28 09:44:41 ID:XtQIt5qDqM
春香と百合子は異界関係者御用達のスーパーマーケットに調査しにきていた。
今度の大会関係者も利用しているかもしれない。そんな予想は虚しく、特に変わったことなどないように思えたのだが……。

??「ハルカ!! 会うのはロングタイムですね!」

春香「えっ!? そのモフモフは……ロコさん」

百合子「ロコ……さん?」

春香に声をかけてきた人物、それはどことなくアーティスティックなムードがあるガールだった。
とはいえ、春香と比べてエルダーなふうではないのに「さん」づけ……?
もしかして偉い人?と身構える百合子だった。
235 : Pサン   2021/08/28 09:45:00 ID:XtQIt5qDqM
ロコ「うん? そちらのガールは……ふむふむ、春香のガールフレンドですか?」

春香「というよりファミリーだよ。百合子っていうの。百合子、こちらはロコさん。異界調理器具の職人さんなの」

百合子「異界調理器具の職人…?」

春香「そう!あのインフェルノバーナーも実は最初は壊れていたのをロコさんが修理してくれたんだ。あと、うちにある機具のメンテナンス方法はロコさんから教わったものがほとんどだし」

百合子「へぇー、すごい人なんですね!」

春香「その筋では有名人なんだよ。マスターって呼ばれることもあるんだ。ただ、職人気質のせいか引きこもり気味で……こんなに可愛い女の子だってのはあんまり知られていないんだけどね」
236 : プロデューサーはん   2021/08/28 09:45:20 ID:XtQIt5qDqM
ロコ「も、もうハルカったら、急にプレイズしないでください!」

百合子(照れている…!)

ロコ「コホン。……こんなところで会うなんて珍しいですね。ハルカがいつも利用しているマーケットはここじゃなかったはずですよね?何かありました?」

春香「何かっていうか、まぁ、かくかくしかじかどんがらがっしゃーん……」

ロコ「ああ、例のコンペティションの」

百合子「大会のことを知っているんですか!?」
237 : 変態大人   2021/08/28 09:45:29 ID:XtQIt5qDqM
ロコ「と言っても、少しだけですよ。この前、とあるクッキングデバイスのメンテナンスを頼まれた際にクライアントが話してくれたんです」

百合子「クッキングデバイス……!か、かっこいい!そういう言い方もあるんですね」

春香「百合子、そこじゃないでしょ。……その人も大会に出るってこと?」

ロコ「うーん……いくらフレンドのハルカであってもクライアントのパーソナルインフォメーションは教えられませんよ」

春香「それはそうだね。ふふっ、しっかりしているなぁ、ロコさん」モフモフ

ロコ「ハルカ!? スクリプトにない行動はNGですよ~!」

百合子(楽しそう)
238 : P様   2021/08/28 09:45:44 ID:XtQIt5qDqM
春香「それはそうと、ロコさんのほうこそこんな時間にこんな場所に出てくるなんて珍しいですよね」

ロコ「うっ」

百合子「……何か事情があるんですか?はっ!!もしかして職人であるロコさんの命を狙うエージェントたちから身を隠そうと……」

ロコ「妄想はストップなの! ……最近、ハウスメイトが増えて、その子のために買い出ししにきたんです」

春香「へぇ……?異界生物ってことだよね。異界鳩を何羽か飼っていた覚えがあるけど」

ロコ「そのうちの1羽が亡くなってしまったので、つい衝動的に家の庭にいたのを捕まえたんです」

百合子「捕まえた?またその、異界鳩ってやつですか」
239 : 変態大人   2021/08/28 09:45:58 ID:XtQIt5qDqM
ロコ「いえ……ナンスです」

百合子「ナ、ナンス? 春香さん、それって……」

春香「比較的大人しい異界生物だよ。食用には向かないね。ONとOFFがあるってきいたことあるよ」

ロコ「そのエコロジーはまだまだミステリーな部分が多いんです。何はともあれ、そのナンス……アンナは放っておくとロコが眠っている間に髪の毛に入り込んだり、髪の毛をもぐもぐしたりするんです!」

百合子「怖いですね」

ロコ「しかたがないので、ナンスの好物だっていうフードを調達しにきたんです。眠っている間にロコズヘアーが全部イートされたら大変なので」

春香「なるほどね。あれ?百合子ちゃん、どうしたのそんな難しい顔して」
240 : 師匠   2021/08/28 09:46:16 ID:XtQIt5qDqM
百合子「えっと、私自身もよくわからないんですけど、私―――囚われし乙女の運命の鎖でロコさんと、そのアンナっていう生物とは繋がっている気がするんです」

春香・ロコ「??????」

百合子「つまり力になれたらな、と」

ロコ「いいんですか!?」

春香「えー……めんどくさいなぁ」

ロコ「ハルカ!?スクリプトとちがいますよ!?」

春香「ふふっ、冗談、冗談。百合子がそう言うなら、ううん、ロコさんにはお世話になっているから、ここは一肌脱ぎますか!そしてあわよくば大会に役立つアイテムゲットだよ!」

百合子(明らかに最後が本音…!)
241 : プロデューサーちゃん   2021/08/28 09:46:32 ID:XtQIt5qDqM
そんなわけで、困った異界生物ナンスのアンナの飼育・躾に協力することとなった春香・百合子。
大会に向けての修行の合間、ロコのアトリエに行き、あれこれと試行錯誤するのだった。
とはいえ本編上はRecipe5で大会予選を書きたいので、このロコ・春香・百合子のやりとりの仔細は語られることはない。
春香たちが報酬として得たアイテムはさらっとどこかで登場するかもしれないが……。


Recipe5につづく!
242 : Pサン   2021/08/28 09:48:23 ID:XtQIt5qDqM
雪歩の修行に関する描写はRecipe5partA冒頭を予定
アンナちゃんは長い1本の触角(通称:アホ毛)のついた一頭身の生物をイメージ
登場はしないと思います

ご意見・ご想像募集中!
Recipe5partAは早ければ明朝に投下予定です
243 : プロデューサー殿   2021/08/28 11:24:46 ID:GASOHijxLM
こんな所にもあんロコが…
隔離しなきゃ
244 : 夏の変態大三角形   2021/08/30 01:42:38 ID:2Yj0rexjic
遅くなりました!!!!!!
Recipe5partA下書き 投下していきます!!!
245 : Pはん   2021/08/30 01:42:53 ID:2Yj0rexjic
Recipe5partA 下書き

異界での料理大会3日前
『YUKIHO'Sキッチン』の朝
雪歩・春香・百合子は3人で食卓を囲んでいた。
大会に向けてそれぞれが修行に励んでいるが、3人揃っての食事は変わることがない。

百合子「ベーコンエッグ…ワカメのみそ汁…さんまの塩焼き…山盛りのキャベツ……」

百合子「ごきげんな朝飯ですね……」スズ…パク…モリ…メリ…モニュ……

百合子「こっちにきて間もない頃、あの塞ぎこんでいた時の私は、『うまいから喰うんやない 生きるために喰うんや』なんて言っていましたが、今ではあり得ないですね。こうして毎朝、白雪さんの作るご飯が食べられるなんて幸せですっ!」
246 : プロちゃん   2021/08/30 01:43:08 ID:2Yj0rexjic
春香「雪歩、それとって」

雪歩「はい」

春香「ん。ありがと」

雪歩「春香」

春香「はい、どうぞ」

雪歩「うん」
247 : プロデューサー君   2021/08/30 01:43:28 ID:2Yj0rexjic
百合子「ちょっと、ちょっと、ちょっとぉぉお! なんで私ひとりでしみじみしているんですか!?」

雪歩「しじみ汁だったらポットに入っているわよ。自分で飲みに行きなさい」

百合子「しじみ汁じゃありません!」

春香「ははは……百合子ちゃんは今日も元気だね」

百合子「苦笑まじり!!」

雪歩「で、どうなの?異界での修業は。エア□ガぐらいはもう使えるの?」

百合子「そんな、最後のファンタジーにでてくる魔法みたいなのは使えないですよ!」

春香「シリーズによっては黒じゃなくて白だったり青だったりするって話だよ」

雪歩「? それって春香が持っているパ、」

百合子「白雪さんは!? 白雪さんはどうなんですか、この半月余りで料理の腕は上がったんですか?」
248 : レジェンド変態   2021/08/30 01:43:45 ID:2Yj0rexjic
雪歩「百合子はどう思う?」

百合子「えっ?えっと……描写がないだけでここ数日でも何人かこの路地裏に迷い込むパンピーのために料理を作って、その度に対価どうこうのやりとりをしていたのは、私もその場にいたことがほとんどだから知っていますけど……」

春香「百合子ちゃんの魔導書のレシピを使うのが恒例になっているからね」

百合子「ええ、そうですとも。ただ……なんていうか、白雪さんの料理の腕を飛躍的にあげられるような、そんな調理はなかったような気がします」

春香「ふーん、百合子ちゃんが思う料理スキルのレベルをガンガンあげられる料理ってなんなの?」

百合子「………ドラゴンの解体ショーとか?」

雪歩「なんとも豪快ね」

百合子「あはは……」
249 : EL変態   2021/08/30 01:44:02 ID:2Yj0rexjic
春香「たとえばこのおみそ汁ひとつとっても、昨日より必ず美味しくなるとは限らない」

百合子「え?」

春香「味噌でもワカメでも、なんでも、相手は『生物』だからね。同じようでまるっきり同じってことはないわけで。それでも、雪歩の作る朝食の味が大きく崩れたことなんて、百合子ちゃんがきて一度もないんじゃない?」

百合子「ま、まぁ、記憶にないですね」

春香「漫然と単純作業をこなすように作るのか、それとも目的意識をもって作るのか」

百合子「………」

春香「雪歩、最近のメニューってどこか懐かしい気がしてならないんだけど、気のせい?」

雪歩「さあね。事実として言えるのは私たちがここにきて間もない頃、まだハザマと言えなかった時期に、師匠が作っていたメニュー、そして私たちに作ることを課したメニューが多いってことね」

百合子「白雪さんたちのお師匠さんが……?」
250 : Pたん   2021/08/30 01:44:20 ID:2Yj0rexjic
雪歩「春香、気づいたの今日じゃないでしょ?覚えていないってことはないはずよ」

春香「まあね。でも昔のことは昔だから」

雪歩「………べつに懐古したかったわけじゃないわ。師匠が教えてくれた料理は料理人にとっての技術と精神を鍛えるものだって信じているから。それに……」

百合子「それに?」

雪歩「近頃は夢でよく見るの。師匠と私たち……可憐ちゃんも含めた4人で料理を作っていたときの日々を」

夢という形であってもそれは懐古に他ならないのでは、百合子はそう思ったが決して口にしなかった。
春香と目が合う。同じことを思ったみたいだった。

百合子「えーっと……基本的な、シンプルなメニューであるからこそ、技量が試されるってことですか?」

ここ最近のメニューを思い出して百合子が訊ねる。

雪歩「そんなところかしらね。それはとはべつに歩・マイハマンから貸してもらったのを含め、大会で使えそうなクッキングデバイスの調整は済んでいるわ。これは春香のメンテナンスのおかげでもあるけどね」
251 : プロデューサーはん   2021/08/30 01:44:47 ID:2Yj0rexjic
春香「ふふっ、照れちゃうね」

百合子「あ、あの……!」



百合子「白雪さんたちのお師匠さんのこと、訊いてもいいですか?」
252 : Pたん   2021/08/30 01:45:06 ID:2Yj0rexjic
雪歩「………」

百合子「ダ、ダメですか」

春香「雪歩、そんなに硬い表情するものじゃないでしょ。百合子ちゃんは―――家族なんだよ。知る権利は充分にある。むしろ私たちはそろそろ話すべきことを話しておいた方がいいよ」

雪歩「そうね。そのとおりよね」

自分自身に言い聞かせる雪歩。

雪歩「でも、朝食が終わってからにしましょう?お茶を淹れるわ。ゆっくり……ええ、落ち着いて話がしたいもの」

百合子「あ、ありがとうございます!」

春香「さ、いったん料理大会の話も昔の話もおしまい!うーん!いいね、このしじみ汁!」

百合子「わっ、いつの間にポットがここに?!」
253 : 番長さん   2021/08/30 01:45:23 ID:2Yj0rexjic
春香「ねぇ、雪歩」

雪歩「なに?」

春香「私に毎日しじみ汁を作ってくれる?」キリッ

百合子「プ、プロポーズ!? はわわわわわ」

雪歩「それ、私が作ったやつじゃないわよ」

春香「ガ、ガーン!!」

百合子「フラれた!?」

〇葉「はーーじーーけーーろーーっ!!」
254 : 兄(C)   2021/08/30 01:45:36 ID:2Yj0rexjic
朝食後 雪歩の部屋

雪歩「さて、どこから話せばいいかしら……」

百合子「あの、さっきの話しぶりだと白雪さんたちも生まれ育ったのはこのあたりじゃないってことですか?」

春香「そういえば言ってなかったっけ」

雪歩「私たちも百合子と同じよ」

百合子「私と……同じ?」

春香「こことも私たちが異界と呼んでいる世界とも違う、べつの『異世界』から来たっていう点はね」

百合子「えええっ!???!??」
255 : プロヴァンスの風   2021/08/30 01:45:52 ID:2Yj0rexjic
雪歩「百合子が謎の図書館で、その魔導書との契約の対価で元いた世界から追放されたのとはちがうけどね」

百合子「というと?白雪さんたちは……?」

春香「手短に言ってしまうとさ、私たちは……」

そこで春香は雪歩に視線を送る。アイコンタクト。うなずく雪歩。

春香「滅びゆく世界で、師匠に助けられてこっちに来たんだよ」

百合子「滅びゆく世界……!?」

雪歩「SFのジャンルでいうなら、ポストアポカリプス、まさにそうした世界に私たちはいたの」
256 : Pーさん   2021/08/30 01:46:07 ID:2Yj0rexjic
百合子「終末ものってやつですね。モヒカン男がヒャッハーする世界だったってことですか?」

春香「愛をとりもどせ!!って雰囲気ではなかったかな。完全に文明崩壊していたわけでもなかったし」

雪歩「いずれにせよ、あの世界の黄昏とそれに対する機構、人類の姿をきちんと理解できるほどには、長くいなかったわ」

百合子「え? じゃあ、何歳からこっちにいるんですか」

雪歩「7歳よ。つまり10年前にこっちにきたってこと」

百合子「こっちの世界での生活の方がもう長いってことですか。いえっ、それよりも、お師匠さんは何者なんですか!?どうやって、異世界渡航なんて―――」
257 : プロデューサー様   2021/08/30 01:46:20 ID:2Yj0rexjic
春香「どうどう、落ち着いて百合子ちゃん」

雪歩「そうね――――いくつもの世界を渡り歩く料理人、ハザマの中のハザマってところかしら」

春香「対価として、長くは同じ世界に留まることはできないらしいけれどね」

雪歩「現にこの世界に師匠がまた足を踏み入れられるのは………39年後だもの」

百合子「え」

春香「そんなわけで今はいないんだよ。正確には1年半ぐらい前からいないの」

雪歩「本当であればもう少し長くいられたけれどね」

百合子「えっと……?」
258 : ダーリン   2021/08/30 01:46:42 ID:2Yj0rexjic
春香「……暴走したオトメティックパワーを抑えるために、この世界で存在を維持する力を消費しちゃったんだ」

百合子「!! それって『HOTDOGS』の?」

雪歩「その頃はまだ結成されていないけれど―――――高坂海美のせいよ。可憐ちゃんは………悪くない」

春香「雪歩……」

百合子「あわわわわわ」

次々に判明する事実に百合子はついていけなくなる。
ここまでの話をまとめてみると……
・雪歩・春香・可憐の3人は、もともとの滅びゆく世界の住人だった
・彼女たちの師匠はいくつもの異界を行き来する料理人で、しかしその対価として一つの世界に長くは留まれない放浪者である
・百合子が春香と雪歩に出会うより前、今から1年半前に何かが起こった その結果として師匠はこの世界を離れざるを得なくなった
259 : Pちゃん   2021/08/30 01:46:58 ID:2Yj0rexjic
春香「このタイミングで言うのがベストとは思わないけど……百合子ちゃん」

百合子「は、はい!なんですか」

春香「念のため言っておくと、仮に師匠であっても百合子ちゃんを元の世界に戻すことは、つまりそういう料理を作るのは難しいと思う。できないんじゃないかな」

百合子「え?」

雪歩「不本意にせよ、百合子はその魔導書と契約していて、その対価として元の世界を追放されているからね。その誓約と制約に外部から干渉することは何人もできないってこと」

百合子「そ、そうですか……」

契約を破棄することってできないのだろうか、百合子は今更ながらそんなことを思うのだった。
と言っても、目の前の料理大会を前にそんなことを真剣に検討はしなかったのだが。
260 : 3流プロデューサー   2021/08/30 01:47:18 ID:2Yj0rexjic
百合子「1つ訊いていいですか」

雪歩「なに?」

百合子「白雪さんたちは、そのお師匠さんに助けられたってことですけど……そこに対価、言い換えれば代償はなかったんですか」

春香「!」

百合子「だって、いくらなんでもそんな3人の人間を別世界に移すような処置……何のリスクもなしに行えるとは思えません」

雪歩「鋭いわね。たしかに対価はあったわ。でもそれを負ったのは師匠じゃない。こっちの世界へと実質、亡命を果たした私たち3人が支払ったのよ」

百合子「白雪さんたちが対価を……それっていったい―――」

春香「【A】だよ」

百合子「そんなんでいいんですか!?」

雪歩「そこは、ほら、3人で分散して背負ったってことで。あんまり重いとここまでの展開とこれからの展開に支障きたすし」

百合子「身も蓋もない!」
261 : 兄(C)   2021/08/30 01:47:31 ID:2Yj0rexjic
かくして雪歩たちの背景を部分的に知ることができた百合子。
まだ可憐、そして現『HOTDOGS』のメンバー・高坂海美なる人物については教えてもらえていないが、またの機会ということだろう。

そしてあっという間に大会当日―――
262 : 番長さん   2021/08/30 01:47:46 ID:2Yj0rexjic
春香「みんな、準備はできた?」

雪歩「ええ、よろしくてよ」

百合子「無問題です!」

春香「百合子ちゃん、その服……」

雪歩「華舞守護姫……気合入っているね」

百合子「恋を知った精霊は、巡る季節の中、ただ1人の人間を待ち続けました。その健気な想いは人々の心を強く惹きつけるでしょう…。」

春香「覚醒後のイラスト、すごい素敵だよね。百合子ちゃん、本当に精霊みたい」

雪歩「覚醒前にPとイチャコラしているのも忘れてならない事実だけどね」

百合子「料理大会中はこれでいきます!」
263 : そなた   2021/08/30 01:49:25 ID:2Yj0rexjic
雪歩「ところで春香。例のクッキングデバイス……【B】は持ったわね?」

春香「ロコさんから報酬としてもらったやつね。うん、持ったよ。かなりのじゃじゃ馬だったから調整には苦労したけどね」

百合子「きっと大会でも役立ちますよ!じゃないとあんなに苦労した時間が無駄になっちゃいますもん」

春香「アンナだけに、ね」

雪歩「は?」

春香「さぁ、大会に出発!【C】、ファイトーーー!」

百合子「あ、私たちのユニット名、それに決まったんですね」

月夜に響く春香の声。3人はいざ異界へ……!
264 : プロデューサーちゃん   2021/08/30 01:49:44 ID:2Yj0rexjic
― 異界 39番地 ―

百合子「こ、ここが会場……?お屋敷というより、もはやお城ですよね、ここ」

春香「ここが主催者であるご令嬢・【ID判定①】のハウスね」

雪歩「気を引き締めなさい。この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ、ということよ」

百合子「ごくり……」

春香「たのもーー!」

雪歩「緊張感ないわね」

百合子(そう口にする白雪さんは緊張しているふうだった。春香さんはあえて空気を緩ませようとしてくれているんだろうな)

異界のほとりで特訓を積んだ百合子であったが、異界の奥と言える場所に来るのは初めてだった。
マナの濃度が高いのは気のせいではないだろう。大会中に、自分の能力セブンテイルズ・ウインド(仮)を使う場面が訪れるかと思うとハラハラする百合子だった。
265 : ハニー   2021/08/30 01:50:10 ID:2Yj0rexjic
このみ「レディース&ジェントルメンーーーー!!!」

受付を済ませてから1時間後、ついに大会予選がはじまる
壇上にあがったのは体格の割には計り知れないセクシーさを有している女性であった。
ひょっとすると彼女もまたある種の契約者なのではないかと百合子は想像する。
今から競い合うのは異界に片足どころか少なくとも半身はどっぷり浸かっている人たちなのだ……!

このみ「ひい、ふう、みい……。へぇ、【ID判定②】人ね。ま、こんなものか」


このみ「あなたたち、よく聞きなさいっ!何のコネクションもないあなたたちの中で本選に出場できるのは―――たった1組よ!」
266 : プロデューサー様   2021/08/30 01:50:25 ID:2Yj0rexjic
このみ「予選でいちいちトーナメントなんてしているつもりないわ。ずばりっ、予選の課題は、こちら!!」

異界の灰色の空を指さすこのみ、参加者たちが見上げると、花火の打ちあがる音がして、空に浮かび上がったのは……

百合子「【D】!?」

雪歩「これが……予選の課題ってコト!?」

春香「どひゃあーーっ」


(以下、少し加筆予定)
267 : プロデューサー   2021/08/30 01:51:52 ID:2Yj0rexjic
※【A】雪歩・可憐・春香が元いた世界から今の世界に、師匠の助けを借りて来るために支払った対価とは?ギャグテイストでいいです。重すぎると扱いに困るので。
※【B】あんロコの件を解決した春香・百合子が手にしたクッキングデバイスは?大会予選あるいは本選で使用する予定
※【C】はるゆきゆりのユニット名 今のところ『グリルモワール』が候補に挙がっています
※【D】大会予選の課題とは? 料理無関係のバトルロイヤルはご遠慮ください
※【ID判定①】この直後のレス1つで判定 大会主催者の令嬢とは誰のことなのか 登場予定はもちろんあり
※【ID判定②】有効期限内についたレスをすべて使用 IDに含まれる数字の総和 予選参加者人数 0となった場合、それらしい描写する予定

レスの有効期限は9/1 16:59:59まで
今週は忙しいので清書投稿は遅れるかも
予定どおりRecipe5partBで予選を終えてRecipe6からは本選にしたいです
最後まで何卒お付き合いください!

あと読み返したら、春香→百合子の呼称、劇中でバラバラになっていて自分でもびっくりしたのですが「百合子ちゃん」で統一したいと思います
268 : プロデューサーくん   2021/08/30 07:16:20 ID:md6MTkDvhw
A 一発ギャグ
B グローイングストームミキサー(しっかり蓋をしないとその場で竜巻を発生させるシロモノ)
C フローラ・アラカルト
D屋敷の敷地内の山で食材を自分で見つけて何か作る
269 : 3流プロデューサー   2021/08/30 20:01:33 ID:hpFjiTnfak
A:「汗を流してもらう」からの従業員スペースに設置されたサウナのモニター体験
後に百合子も体験する
B:泡立て器『始まりの風』キメが細かい泡が出来るが扱いは難しい
C:スペルラウト(スプラウトという伝説のユニットにあやかって)
D:チームごとに一つの(スイカ大の大きさの)果実をランダムに渡して料理させる
"カボチャやらアボカドとか)
270 : プロデューサー様   2021/08/31 00:14:47 ID:BahEgHD1kc
A元いた世界とは微妙に性格が変わる
Bデストルナイフ(切りたいものを自在に切ることが出来るが、破壊衝動が増幅されるので扱いが難しい)
D普通の食材に紛れた異界食材を探し出した上で指定された料理を作る
271 : P殿   2021/09/01 17:57:10 ID:GEx7kfdISI
定期age
ID判定処理①
>>268 md6MTkDvhw
[m][d][M][T]がそれぞれ響・雪歩・このみ・莉緒と対応するので、さらにずれて、[k]の亜美を採用!
双子セットで出すつもりは今のところないよー
異界令嬢・亜美かー、どういうキャラにするか迷うね

ID判定処理
ついた3つのレスに含まれる数字の総和は7
予選参加組数は7 雪歩たち以外モブの予定 妥当な結果やね

清書は早ければ明日の夜に。遅くとも土曜日中には
最後までお付き合いおねがいします!
272 : 夏の変態大三角形   2021/09/02 08:54:01 ID:MZCG4vAvoI
バトルがはじまる…!
273 : プロデューサーくん   2021/09/02 22:51:48 ID:kMlWo9Sq22
遅くなりました!
Recipe5partA投下していきます
274 : Pさぁん   2021/09/02 22:52:09 ID:kMlWo9Sq22
Recipe5partA

料理大会直前 百合子は雪歩たちから彼女のたちの師匠のことを聞く。
そもそもが雪歩・春香・可憐の3人は百合子同様に、この世界でもそして「異界」の住人でもなく、別世界で生きていた。
その世界というのはいわゆるポストアポカリプスの世界であり、あとは滅びゆくだけの世界であったという。
幼かった3人は、いくつもの世界を渡り歩くハザマの中のハザマである師匠と巡り合い、今の世界に亡命を果たした。
その対価として、3人は一日一回どこかで、他人に一発ギャグを披露しなければならないのだった。
春香のはともかく、雪歩の一発ギャグなんて見たことがないと話す百合子。
どうやら雪歩は専ら春香相手に夜に一発ギャグをかましているのだとか。
春香曰く、七度生まれ変わっても芸人になることはおすすめしないほどの出来らしいが。
一方、例の可憐も『HOTDOGS』内で高坂海美や今はまだ正体の掴めないもう一人を相手に一発ギャグをしているかと思うと、少し間抜けな気がする百合子だった。
とはいえ師匠が今の世界を予定より早くに発たなければならなくなったのは、その可憐・海美との出来事が関係しているようで……?
275 : ごしゅPさま   2021/09/02 22:52:28 ID:kMlWo9Sq22
そして迎えた大会予選当日。
雪歩たち3人は通常の調理器具以外に、歩から借りたおろし金『ミルキーウェイ』、春香・百合子がロコから貰った泡だて器『始まりの風』を含めた数種の異界クッキングデバイスと共に会場へと向かった。
予選会場は、主催者たる令嬢の住まう、城といっても過言じゃない屋敷だった。令嬢本人は姿を見せない。予選に参加する連中のことなど興味がないのだろうか。
雪歩たち側からすればどんな人物なのか気になるのだが。現状では、令嬢の名が「亜美」ということと、雪歩より背が高いということしか会場でわからなかった。
話には聞いていたが確認してみると、2より前は149㎝で雪歩より小さかったらしい。へぇ、成長期ってすごいんすね。

大会予選はセクシー司会者・KONOMIが取り仕切る。雪歩より小柄な彼女が持つ強大なセクシーに雪歩たちはKONOMIもまた何か対価を支払った人物であると予想するのだが……おそらく本編には関係してこない。
集まった7組の予選メンバー。雪歩たちの知り合いはいない。
異界の灰色の空に打ちあがった花火によって、明かされる大会予選の課題。
それは――――敷地内にある山で食材を見つけて調理するというものだった!
果物や山菜だけではなくそこには猪や鹿ともちがう、異界生物がいるのだとか……。

制限時間は食材調達から調理ひっくるめて765分
おおよそが食材調達にかける時間になるだろう。
276 : do変態   2021/09/02 22:52:44 ID:kMlWo9Sq22
予選開始の合図を受けて雪歩たちがさっそく例の山、双海山(78)へと移動し始めた矢先、ふらりと誰かが姿を見せる―――。



春香「!!!」

雪歩「……どうして、あなたがここに」

百合子「え―――?だ、誰なんですか、この三つ編み?の女の子」




雪歩「高坂海美……!!」
277 : P様   2021/09/02 22:53:08 ID:kMlWo9Sq22
海美「ふふっ、久しぶりだね。春香さん、雪歩さん」

278 : プロデューサーさん   2021/09/02 22:53:59 ID:kMlWo9Sq22
春香「うわああああああ!! 登場コラがあるなんて……!」

百合子「でもホットドッグの画像ないですよ」

雪歩「百合子の衣装コラの次は順当に私と春香のコラかと思いきや、高坂海美、許さないわ!」

海美「え、あ、そう言われても……」

百合子「あなたが高坂海美さん!? くっ、想像以上の美少女ですっ。名前からすると得意分野はシーフード…!?」

海美「ふふ……それはどうかしらね。暇だったから予選を見学でも、と思ったけどまさか春香さんと雪歩さん、そして―――魔導書の契約者と会うことができるなんてね」

百合子「!?」
279 : Pちゃま   2021/09/02 22:54:28 ID:kMlWo9Sq22
雪歩「……可憐ちゃんは?いないの?」

海美「残念でしたね。今日はいっしょじゃないですよ」

春香(普通に答えてくれるんだ)

雪歩「だったら、さっさとこの場から失せなさい。あなたにかまっている時間はないわ」

海美「つれないですね、雪歩さん。あの頃はあんなに優しくしてくれたのに」

春香「!? ど、どどういうことなの、雪歩!!」

百合子「いや、なんで春香さんが知らないんですか!? そこ私の台詞ですよね!?」
280 : おにいちゃん   2021/09/02 22:55:43 ID:kMlWo9Sq22
雪歩「……まぁ、あの頃は私も若かったから」

百合子「なに頬染めているんですか!? そんな昔でもないっていうか、今だって若いですよね!?」

春香「おのれ高坂海美!」

海美「せいぜい頑張ってください。本選に出場できたのなら……お相手することもあるかもしれませんね。私たち、『HOTDOGS』が。あなたたち『YUKIHO'Sキッチン』とかいう安直な名前の小さな台所の人たちに絶望を見せてあげますよ」

百合子「待ってください」キリッ

雪歩・春香「!?」

海美「なにかしら」
281 : Pさん   2021/09/02 22:56:13 ID:kMlWo9Sq22
百合子「私たちはそんな安直な名前の面子じゃないですよ」

雪歩「うう……いい名前なのにぃ」

春香「! まさか百合子、きまったの?私たちのクッキングユニット名」

百合子「ええ、たった今!私たちは――――」

雪歩「チュパカブラですぅ」

百合子「ちがいます」






百合子「グリルモワールです!」

partBにつづく…!
282 : Pチャン   2021/09/02 23:01:16 ID:kMlWo9Sq22
レスありがとうございました!
というわけで料理ユニット名はグリルモワールにしました
>>269 呪文のスペルとあのSprouTをかけているんですかね これもいいなーって思いました
フローラ・アラカルトは料理ユニット名として汎用性高そうなので本選で使えたらなぁって

ご意見・ご想像募集中です!
partBは9/4(土)の夜までに投下したいですが……難しいかも
何卒最後までお付き合いください!
283 : Pちゃん   2021/09/04 14:31:49 ID:LSK497zrR.
早めに書けました
Recipe5partB下書き投下します!
284 : プロデューサーちゃん   2021/09/04 14:32:01 ID:LSK497zrR.
Recipe5partB 下書き

未だに全貌が明らかになっていない『HOTDOGS』の野望を阻止するため、そして可憐を取り戻すため雪歩たち『グリルモワール』は異界での料理大会に参加する。
会場は主催者であるとある令嬢・亜美の屋敷であった。令嬢と何のコネクションもない者たちは予選を通過しなければ本選の出場を認められない。
集まった予選参加者7組に課せられたのは敷地内にある双海山での食材調達と調理であった。
審査員兼予選司会者のセクシーお姉さんこのみの合図によって予選が開始される。

直後、山へと向かう雪歩たちの前に姿を見せたのは『HOTDOGS』のメンバーであり、ポプマスに実装が決まった高坂海美であった。
彼女は雪歩と春香との再会を喜ぶ素振りを見せたうえで、本選で競うことになった際には200連金蝶ほどの絶望を見せてあげると言い残して去っていった……。
285 : プロヴァンスの風   2021/09/04 14:32:13 ID:LSK497zrR.
春香「ここが双海山……なかなか立派なお山だね」

雪歩「異界生物、ようは魔物どもも生息しているらしいから、気をつけないといけないわ」

百合子「つ、ついに私の風の戦士としての力を試すときがきたってことですね…!」

春香「ルール上、他の参加者を再起不能にしても問題ないみたいよ」

雪歩「そういう勝ち残り方もあるってわけね」

百合子「ええっ!?料理バトルなのにですか?!」

雪歩「よいしょっと。念の為、持ってきておいてよかったわ」
286 : バカP   2021/09/04 14:32:24 ID:LSK497zrR.
百合子「あの……それ、スコップですよね?なんだか禍々しい光を纏っていますけど」

春香「ああ、レーヴァテイン。持ってきたんだ」

雪歩「うん」

百合子「ほわっ!?北欧神話!? どうしてスコップが伝説の剣の名を冠しているんですか!?」

春香「ほら、巷ではヴァル原雪歩って言われているから」

百合子「初耳ですよ!?というか、ヴァルハラって、北欧神話つながりってだけでべつに……」
287 : 我が下僕   2021/09/04 14:32:36 ID:LSK497zrR.
雪歩「細かいことは気にしないで。……埋めるよ?」

百合子「ひえええ」

春香「ま、私たちは他の参加者をノックアウトするよりも、食材集めに勤しむとしますか」

雪歩「そうね。時間も限られていることだし……百合子、お願いできる?」

百合子「え?」

春香「こんなときにとぼけないでいいって。大会までの特訓を通じて、魔導書のレベルがあがって半径39メートル圏内にある食材を把握できるスキルが使えるようになったでしょ?」

百合子「そんな描写ありましたか!?」
288 : Pはん   2021/09/04 14:32:53 ID:LSK497zrR.
雪歩「39メートル圏内というと……この山だと、狭くはないけど広くもないから移動しながらじゃないとね。大丈夫、スキル行使中は護ってあげるわ」

春香「そうそう。スキル行使中は、放送できるギリギリぐらいに無防備になるからね」

百合子「それも聞いていないですよ?!」

春香「テコ入れですよ!テコ入れ!」

雪歩「お茶の間で家族みんなでの視聴ができなくなるのは残念だけどしかたないね」

百合子「全年齢対応でお願いします!!」


かくして雪歩・春香が無防備な百合子を護衛しながら山中を進む。
289 : der変態   2021/09/04 14:33:04 ID:LSK497zrR.
百合子「ふむふむ……エメラルドグラス、ハニーアント、セイタカトーン、フレスベリー……いろいろありますね」

春香「異界っていうより某錬金術士ゲームシリーズだね」

雪歩「何気にアイマスより歴史あるんだよね」

百合子「えーっと……あ、【A】なんてあるみたいですよ!」

春香「おお!どんな素材なのかさっぱりわからないけど、すごそう」

雪歩「採取しに行くわよ」

百合子「了解!」
290 : Pはん   2021/09/04 14:33:17 ID:LSK497zrR.
山中 ― 精霊の広場 ―

春香「開けた場所に出たみたいね」

雪歩「百合子、反応は?」

百合子「えーっと……あっ、あのあたりです」

駆け出す百合子、しかし何者かが脇から飛び出してくる!

百合子「きゃあっ!?」

雪歩・春香「百合子(ちゃん)!」

駆け寄る春香と雪歩
見るとそこにいたのは―――
291 : 魔法使いさん   2021/09/04 14:33:42 ID:LSK497zrR.
モブ「ふっふっふっふ……こいつは可愛いお嬢ちゃんたちだねぇ。こいつはとんでもない上物の『食材』だわぁ!」

百合子「ひ、ひぃっ!」

大きな刃物をもったモブがあらわれた!萩原雪歩さんに配慮して女性キャストだ!

雪歩「ふんっ!」

モブ「へ?」

雪歩がスコップをふるうと刃物が瞬時に灰塵と化す!

百合子「えぇ……」

雪歩「またつまらぬものを斬ってしまった」

春香「言うほど斬撃じゃないよね」
292 : Pはん   2021/09/04 14:34:18 ID:LSK497zrR.
雪歩「さぁ、持っている食材全部置いて、とっとと去りやがれですぅ!」

モブ「ふっ、いつからあたし1人だと錯覚していたんだい?」

春香「え―――」

モブが口笛を吹くと、背後から仲間がふたり、戦闘力の低そうな百合子目がけて跳びかかってきた!拘束されてしまう百合子!

百合子「わ、私ばっかり~~!!」

春香「うわ、おいしいポジション………じゃなくて、百合子ちゃんを離せ!」

モブ&モブ「そうはいかないねぇ。ほら、この子の命が惜しかったら食材でもなんでも、役に立つものよこしな!」
293 : 変態インザカントリー   2021/09/04 14:35:34 ID:LSK497zrR.
百合子「わ、私だって!足手まといじゃない!」

モブ&モブ「!」

百合子「――――気高き風の乙女よ、我が声に応えよ…我に力を!シルフィード!」

モブ&モブ「な!?タクティクスオ〇ガだと!?」

百合子の詠唱を大人しく待ったモブたちは百合子の身体から放たれた風によって拘束を解かざるを得ない!
そして疾風のごとく、百合子はモブたちの背後に回り込み、素早い手刀を繰り出した

百合子「ウインド・チョーーップ!×2」

モブ&モブ「がっ……」

春香「経験値がもらえるよ!やったね、百合子ちゃん!」

モブ「くっ、あたいだけでも!」
294 : プロデューサーはん   2021/09/04 14:35:46 ID:LSK497zrR.
雪歩「動かないほうがいいわ」

雪歩がスコップを突きつける。

モブ「!!」

雪歩「手が滑って、生焼けにしちゃうかもしれない。さっさと命を落とすほうがいいって思えるような苦悶を味わいたい?」

モブ「ま、まいりましたー!」

雪歩たちはモブたちから【B】を取得した
295 : Pーさん   2021/09/04 14:35:57 ID:LSK497zrR.
最初のモブが慌てて、倒れた二人を引きずって退場した数分後

春香「うーん、肝心の【A】が見つからないね」

百合子「反応はあるんですけど……どうしてでしょう?」

雪歩「ふむ。場所の名前が精霊の広場って表示されたから、精霊を見つけないといけないのかしらね」

百合子「いや、あの……あれは私たちには見えない表示なんじゃ…」

春香「精霊の見つけ方かぁ。よしっ、ここは【C】だね♪」

百合子「!?」

(以下、加筆)
296 : 魔法使いさん   2021/09/04 14:36:16 ID:LSK497zrR.
精霊から無事に食材を得た雪歩たちだったが、予選を勝ち抜くための食材として、もう一つ何かが欲しいと考えた。
食材調達に割くことのできる時間はもう少ない。あまり山の奥にいっている余裕はないだろう。
結局、百合子の魔導書の探索能力によって山菜や茸類、果実は着実に集まってはいるので、そろそろ戻ろうという話にまとまった。
荷物のほとんどを春香が運ぶ。異界でのスキル:基礎身体能力向上がここで役に立っている。

入山口まであともう少しというところで、3人は轟音と共に異様な気配を察知した――――
直後、悲鳴と共に誰かが木々の間を駆けてくる……微かに見えるその表情には恐怖と驚きが貼りついていた。
そして、その人物は雪歩たちのもとへはたどり着けずに、倒れたかと思うと何かに引きずりこまれた。
静寂―――それが戻ってきたのは一瞬で、何か、そう、明らかに人ならざる者が雪歩たちのもとへと素早い動きで迫ってくる……!

雪歩「これは骨が折れそうな相手ね」

スコップを握りしめた雪歩が春香と百合子の前に立つ。

百合子「白雪さん……!」

現れたそれは巨大な【D】の姿をした魔物だった!
297 : 変態大人   2021/09/04 14:37:11 ID:LSK497zrR.
雪歩「私を置いて先に会場へ戻りなさい!後からすぐ追いつくわ」

百合子「そんな!それはもうフラグじゃないですか!」

春香「だいたい調理担当は雪歩じゃん!私たちは手伝い要員だよ?食材だけあってもどうしようもないって」

雪歩「いざとなったら、大きな鍋に全部ぶっこんで、煮ればなんとかなるわよ」

百合子「えぇ………」

雪歩「早く!」

春香「くっ……百合子ちゃん、行くよ!」
298 : 魔法使いさん   2021/09/04 14:37:54 ID:LSK497zrR.
百合子「う、嘘ですよね?! 白雪さんを置いて逃げるなんてそんなこと私にはできません!」

春香「雪歩を信じなよ。あれでも近頃は半月に一回ぐらいは、なんとか笑える一発ギャグをかましてくれるんだから」

百合子「打率低いですね!?って、そういう問題じゃないです!!」

雪歩「さっさと行きなさい。空気を読んで待ってもらっているんだからね」

【D】「…………」

百合子「あ、はい」


(以下、加筆)
299 : Pたん   2021/09/04 14:38:24 ID:LSK497zrR.
※【A】精霊から手に入れる食材
※【B】モブたちから手に入れる食材
※【C】精霊の呼び出し方 または現れた精霊との【A】をめぐる交渉・取引方法 なんだったら両方書いてくださってもかまいません
※【D】魔物の種類 蟲系はNG 
※【ID判定】このみといっしょに審査員として登場するアイドル 未登場アイドル限定(亜美も再判定)
※調理&審査をするためのpartCを用意するかも。もしくは安価形式を通常に戻すか

レスの有効期限は9/5 23:59:59まで
清書投下は早ければ9/6中 遅くとも9/8朝には
何卒ご協力お願いします!
300 : 兄ちゃん   2021/09/04 17:13:41 ID:cW.EtBmZN6
A魔獣スンゴイヤンバイウナギー
B普通の栗
C下級妖精を取っ捕まえて上級精霊にお願い(恫喝)
Dチュパカブラ
301 : ダーリン   2021/09/04 19:20:05 ID:yrS4GE./cw
A精霊のナミダ
B山ワカメ
C輪になって踊る 精霊を暴力的行為以外で泣かす
D巨大なウーパールーパー
302 : Pはん   2021/09/05 18:20:35 ID:obY2WX96n.
レスありがとうございます!

定期age
ID判定処理
>>300 cW.EtBmZN6→「c」=星井美希
このみさんといっしょに(予選)審査員を務めるのは美希に決定

レスはまだ募集中だよー
ご協力おねがいします!
303 : Pちゃま   2021/09/08 00:58:29 ID:xfWBFwR1tw
あげときますー
304 : プロデューサークン   2021/09/08 02:37:38 ID:Og/sfA.h6c
遅くとも今朝には、と言っていましたが投下するのは夜になりそうです すみません
305 : 変態インザカントリー   2021/09/08 21:56:25 ID:Og/sfA.h6c
遅れました!Recipe5partB投下します
あとpartCの安価も最後にあるのでご協力お願いします!

画像は、ごめんねする可憐ちゃん(かわいい)

306 : 箱デューサー   2021/09/08 21:57:00 ID:Og/sfA.h6c
Recipe5partB
双海山にて食材を調達するグリルモワールの3人。
百合子の魔導書のスキルによって食用に適する草花や木の実を見つけ出して採取していく。
予選を勝ち抜くために何かインパクトのある食材、捕獲レベル765ぐらいの代物を探そうと山奥へと進んでいった。
やがて魔導書が示したのは「精霊のナミダ」というレア食材(?)
反応がある広場に到着した3人は別のグループに襲撃されるが、雪歩が持ってきた武具と百合子の風の力によって切り抜ける。
そのモブたちからは「普通の栗」を巻き上げて、再び「精霊のナミダ」の探索に戻ったのだが………?
307 : ハニー   2021/09/08 21:57:13 ID:Og/sfA.h6c
百合子「うーん……全然見つかりませんね。さっきの人たちがもっていた、うに……じゃなくて栗さえ一つも落ちていないですよ」

春香「名前からして、精霊を呼び出す必要があるんじゃないかな」

雪歩「へぇ、どうやって?」

春香「……百合子ちゃん、ちょっと踊ってくれる?」

百合子「へ?」

春香「精霊さんは人間が楽しくしているところが好きなはずなのです。百合子ちゃんが歌って踊っていればきっと精霊さんのほうから寄ってくるに違いないのです!」

百合子「ほわっ!? なんで急にま〇りさんみたいな口調なんですか!?というか、さらっと歌うことも追加されてる!?」

雪歩「百合子、精霊とか好きそうだし。さっさとやりなさい」

百合子「え、えぇ……私に対するあたりが強くなってません?」

春香「それもラブこれもラブだよ!」
308 : 兄(C)   2021/09/08 21:57:36 ID:Og/sfA.h6c
百合子「え、えーっと、では七尾百合子、一曲歌わせてもらいます。『地球儀にない国』」

♪~、♪~

雪歩「MS2では、これまでのソロ曲とは違った風になりそうだよね」

春香「百合子ちゃんの場合は既存3曲が似た曲調って言われているからね」

雪歩「既に01の試聴がはじまっているんだっけ?」

春香「発売予定日は9月29日……歌唱メンバーには私もいますよ!」

雪歩「! 見て、春香。あそこ」

精霊「ほー!」

春香「おお!見るからに精霊だね。ちっちゃくてかわいいね」

雪歩「誰がちんちくりんだって!?」

春香「言ってないよ?!」

百合子「虹の彼方~♪ 水晶のレムリア~♪」
309 : 貴殿   2021/09/08 21:57:49 ID:Og/sfA.h6c
精霊「ほ! ほー!」

百合子「こ、これが精霊。ふわふわしていますね」

雪歩「形の定まっていない下級精霊だと思う」

精霊「ほ?」

春香「で、どうやって泣かす?」

百合子「笑顔満面で言うことじゃないですよね!?」

雪歩「……この子じゃダメね。涙を流すような器官は有していないわ」

百合子「へ?じゃあ、どうするんですか」
310 : P様   2021/09/08 21:58:03 ID:Og/sfA.h6c
雪歩「うーん……ここは3人で歌い踊って、下級精霊をもっともっと呼び出して、みんな捕まえてさ、上級精霊を誘い出すってのはどうかな」

百合子「非道!」

春香「いやいや、ゲリラライブみたいなもんだって。危害を与えるつもりはないよ。大人しくしてくれていたらね、ふふ」

百合子「えっと、でも他の参加者たちがきたらどうするんですか?」

雪歩「燃やす」

百合子「あ、はい」

春香「よーしっ、自然な流れで今回のドラマのテーマソングをお披露目できるね!CD発売で儲けよう!」

百合子「お、おー!」

精霊「ほー!」
311 : 彦デューサー   2021/09/08 21:58:20 ID:Og/sfA.h6c
39分後

精霊たち「ほ!ほ!ほ!」

春香「後ろの精霊たちまでちゃんと見えているからねー!」

百合子(す、すごい熱気!精霊たちもこんなに集まって、本当にライブ会場みたい)

雪歩「………こんなところか」スッ

百合子「白雪さん? えっと、精霊たちを手に持ってどうするんです?」

春香「さぁ、最後の曲、いっくよー!」

雪歩「ふふ、こうするの、よ!」

精霊「ほ!?」

百合子「!? 精霊同士を無理やりくっつけた!?」

綿菓子のような見た目をした精霊たちを雪歩は次々に合体させていく……!
312 : おやぶん   2021/09/08 21:58:59 ID:Og/sfA.h6c
ついに下級精霊たちはマシュマ〇マンのような見た目をした1つの存在となった

精霊「どうものなのです」

百合子「しゃ、しゃべったぁぁぁあ!!」

春香「アンコールありがとー!いっくよー!」

雪歩「春香、もうやめなさい。歌を聞いてくれていた者たちは既に1つになってここにいるわ」

精霊「ういっす」

春香「どうもどうも」

百合子「……で、どうするんですか」

雪歩「泣いて♡」(非暴力的行為)

百合子「直球交渉?!」

精霊「うおおおおおお」

百合子「男泣き!?うわっ、目から滝みたいにめっちゃ出てるーっ」

春香「よしっ、採取ですよ、採取!」

雪歩「空きビンを持っていてよかったわね」
313 : おやぶん   2021/09/08 21:59:21 ID:Og/sfA.h6c
雪歩たちは「精霊のナミダ」を手に入れた!
マシュマ〇マンはスタッフが美味しくいただきました
314 : プロデューサーはん   2021/09/08 21:59:32 ID:Og/sfA.h6c
精霊から無事にナミダを調達した雪歩たち。調理工程に進むため、下山しようとするが入山口そばで魔物の襲撃を受けてしまう。

百合子「こ、これは巨大な……ウーパールーパー!?」

春香「うん?ああ、Jus-2-Mintの……」

百合子「それは『Super Duper』!」

雪歩「みななお尊いですぅ」

ウパ「うぱー!!(たしかに!)」

百合子「え、えぇ……」
315 : ご主人様   2021/09/08 21:59:47 ID:Og/sfA.h6c
雪歩「2人とも、私を置いて先に行きなさい」

春香「雪歩……!」

百合子「そんな、白雪さんを置いていくなんてできるわけないですよ!」

雪歩「もし無事に合流できたら……そうね、パインサラダを作っておいてくれるかしら」

百合子「妙なフラグ立てないでください!」

春香「百合子、行くよ。雪歩……待っているから」

雪歩「うん」

百合子「くっ。ご武運を!」

全長3メートルはあるだろう、巨大ウーパールーパーの相手を雪歩が引き受け、一足先に春香・百合子は会場へと戻ることに。
316 : P様   2021/09/08 22:00:09 ID:Og/sfA.h6c
雪歩「食用ウーパールーパーっているみたいだけど……」

ウパ「うぱぱぱ!!!!」

雪歩「これはどうかしらね―――」

どこからともなくレーヴァテイン(スコップ)を取り出す雪歩。

雪歩「ウェルダンにしてあげる!」

ウパ「うぱにしゃっど!」

巨体のわりに素早い動きのウーパールーパー
神話級の煌めく炎でもその湿り気のある肌を焼くことはかなわない……!

雪歩「っ!なんてやつなの……!」

斬撃はことごとく弾き返されてしまう。
心眼スキルをつけていれば別だったがスロットの関係でつけられていない雪歩だった
それでもどうにかうまく立ち回って、急所にスコップを何度も突き刺す!
317 : 高木の所の飼い犬君   2021/09/08 22:00:26 ID:Og/sfA.h6c
雪歩「はぁ……はぁ……これでどう!?」

ウパ「う、うぱーー!」

巨体の動きは鈍くなり、やがて完全に静止した。

雪歩「体力をだいぶ持っていかれたけど、どうにかやったわ。あとははぎ取りをして―――っ?!」


息絶えた巨大ウーパールーパーのもとに寄る雪歩だったが、強烈な殺意を感じて跳び退いた!
318 : 5流プロデューサー   2021/09/08 22:00:51 ID:Og/sfA.h6c
「うーーーぱーーーーーー!」

雪歩「嘘……今、倒したのって……子供だったってわけ?」

体勢を整えた雪歩、視線の先、倒れたウーパールーパーのそばにいたのはさらに一回り大きいウーパールーパーだった
その全長は6メートルは優にあるだろう。先に息絶えたものと違って、その皮膚の色艶具合と目つきから、その魔物が歴戦の勇士であり、怪物であり、この双海山の絶対的捕食者、生態ピラミッドの頂に坐することを雪歩は察した。

雪歩「逃げられそうに……ないわね」

レーヴァテインを握りなおす雪歩。

雪歩「最大火力で押し切りますぅ!」
319 : ごしゅPさま   2021/09/08 22:01:10 ID:Og/sfA.h6c
数分後

雪歩「はぁ……はぁ……ぐっ」

ウパマザー「うぱ?(もう終わり?)」

雪歩は劣勢に立たされていた。レーヴァテインの最大火力をもってしても、ウパマザーを焼き切ることはできず、表皮にかすり傷をつけるのが精一杯だ

ウパマザー「うぱぱ(こっちからいくわよ)」

雪歩「!」

単に体格が大きいだけではない。スピードもパワーも先に倒した個体とは段違いだ。
怒りによってのみ動いているわけでもない、知性ある動き、戦略をもってして雪歩を追い詰めている……!
戦闘から数分して、雪歩は防戦一方となってしまっていた。ウパマザーの攻撃を紙一重で躱して、反撃の隙を見つけようと躍起になっていたものの、奴はそんなに甘くない。
320 : そなた   2021/09/08 22:01:27 ID:Og/sfA.h6c
雪歩(レーヴァテインの煌めきを一点に集中させる……そしてこの技を出すためには、数秒でいい、奴が止まってくれないと……!)

師匠の残した宝具の1つであるレーヴァテイン。雪歩がそれを毎日朝と夜に振るうにようになって、どれぐらいが立つだろう。
幼馴染3人と師匠の4人でいた頃は思いもしなかった修行の日々。自分が身を隠す穴を掘るために必要としたスコップとはわけが違う。
敵対する者を討つために。大切なものを護るために。鍛錬を積んでいた。

雪歩「くっ……」

その日々を嘲笑うかのごとく、ウパマザーは圧倒的な力で雪歩を窮地に追いつめる。
あとがない。こうなれば不安定な状態ではあるが、一か八か奥義を放つしかあるまい。
そう雪歩が決心した、まさにそのときだった。
321 : Pサマ   2021/09/08 22:01:49 ID:Og/sfA.h6c
ヒュンッ!

ウパマザー「!?」

雪歩「!」

ウパマザーの顔面目がけて何か袋のようなものが、どこからか投げこまれた―――瞬間、身を捩らせて、悶え苦しむウパマザー。

雪歩(あれは匂い袋!? もしかして、いや、そんなことより今はこのチャンスを……逃しはしない!)

瞬時に構える雪歩。さながら居合術の姿勢。
そして踏み出される左足とともに繰り出される神速の抜刀ッ!

ウパマザー「うぱっ!?(消えた!?)」

正気に戻ったウパマザーは雪歩の姿をその目で追うことはできなかった
次の一瞬には、すべて終わっていた。

雪歩「天翔〇閃!」

ウパマザー「おろろーーーっっ!!!」

真っ二つとなる巨体、切り口から立ち上る炎
だったら志〇雄の秘剣でもよかったのではと思うが……。
322 : プロデューサーさん   2021/09/08 22:02:35 ID:Og/sfA.h6c
ウパマザーとの激闘に勝利した雪歩は周囲を気配を探る。
そして勝負の決め手となった匂い袋のそばに慎重に近寄った。

雪歩「やっぱりこれは……」

再びあたりを見まわす雪歩だったが、彼女が探している人物の気配は一切感じられなかった。

雪歩「……高坂海美は、ここには来ていないって言っていたのに……ううん、今は考えている暇はないよね。早く2人のもとへ急ごう」

かくして雪歩はウパマザーの肉を土産に春香たちのいる会場へと向かうのだった。


partCにつづく
323 : プロデューサーはん   2021/09/08 22:03:19 ID:Og/sfA.h6c
partCのための安価

※【A】以下の食材をメインに用いて雪歩たちが作る料理とは?
普通の栗・フタミベリー・精霊のナミダ・ウパマザーの中落ち

※【B】雪歩たちが予選で使うクッキングデバイス(新登場)
登場済のものと組み合わせる予定です

レスの有効期限は9/9 17:59:59まで 
partCの投下は9/9夜を予定しています たぶん長くても1500字程度かと

何卒最後までご協力お願いします!
324 : Pサマ   2021/09/09 18:18:44 ID:7Q6exHwTo.
定期age

レス募集期間延長します
9/10 16:59:59まで
レスついてもつかなくても、9/11朝までにはpartC投下します
どうぞよしなに
325 : Pサン   2021/09/09 18:32:34 ID:pJwGSBRRXQ
A ローストウーパールーパーとデザートのフタミベリーと栗のモンブラン

B 魔包丁 チェンジ・ザ・ワールド (切断面に熱を加えることも冷凍することもできる包丁)
326 : プロデューサーちゃん   2021/09/09 20:54:22 ID:RupqBxs5no
A中落ちステーキ~ベリー&マロンソース~
Bユビキタス 腕を装着し、様々な作業を平行して行えるようになる
327 : プロデューサーはん   2021/09/10 03:50:41 ID:Bzqizbd9I2
A:ウパマザーの精霊のナミダソース炒め&火を通して味を濃くした栗とフタミベリー
B:中華鍋「Flyers!!!」食材を普通より高く跳ね上げて火を通していきます

また出遅れるかとヒヤヒヤしました
パインサラダってアナタ……
328 : あなた様   2021/09/10 21:39:46 ID:kp52Ng8f8w
レスありがとうございます!!
遅くなりました。あと、結局、予選終わらせられませんでした
Recipe6のpartAで審査させます
329 : P殿   2021/09/10 21:40:15 ID:kp52Ng8f8w
Recipe5partC

- 屋敷内 予選会場 -

進行役兼審査員のこのみがサングラスをした黒服の女性から何か耳打ちされる。
このみが「ありがとう」とそっけない口調で返事をよこすと女性は影の溶け込むかのように消えた。

このみ「……残ったのは、3組か。全滅もあり得るかなーなんて思っていたんだけどね」
330 : おやぶん   2021/09/10 21:40:33 ID:kp52Ng8f8w
退屈であることを隠さないこのみだった。
主催者である令嬢・亜美とは数回会って話した程度の関係。
彼女の両親、つまりは現世と異界の両方で権力者である夫婦の友人という立場である。
人付き合いのほとんどがビジネスライクな彼らにとっては数少ない、友人と呼べる人間であるが、そうは言ってもこのみは近頃の彼らをそれほど好ましくは思っていなかった。
どちらか片方の世界においても危ない橋を渡ることが多々あるというのに、両世界にまたがって、あの夫婦は何かとんでもないことを企んでいる……そんな気がしてならない。
質の悪いことには、それは娘である亜美を想っての行動だというのは話しぶりから伝わってくる。
友人である自分でさえも、なかなか会わせないような、箱入り娘というよりも鳥籠の中の少女・亜美―――。
そうとは感じさせない朗らかな性格がかえって、このみを不安にさせる。
331 : Pサマ   2021/09/10 21:40:47 ID:kp52Ng8f8w
このみ「ま、こんな大会でもあの子にとってプラスにはたらけばいいのだけれど」

実態としては夫婦のご機嫌取り、コネクションの強化が狙いの輩たちがどこからか「ハザマ」を雇って参加させているのが大半である。
実のところ今回で3回目になる。1、2回ともに予選審査員をこのみは務めた。
が、期待以上の料理にありつけた覚えはない。参加者の多くはやはり夫婦の持つ富と権力のおこぼれを欲している連中ばかりなのだ。
先の大会で予選を勝ち抜いた選手たちは本選では、盛り上げ役にすら十分になれなかったと聞く。
本選……第1回の時点で審査員の話を断ってから、2度と招待されることはなくなった。それとなく聞いた話では、夫婦と「仲良し」な業界の大物たち何人かが審査員を務めているのだとか。
332 : おにいちゃん   2021/09/10 21:40:59 ID:kp52Ng8f8w
このみ「美希ちゃん、そろそろ起きなさいよ?」

隣に腰掛け、テーブルに突っ伏して眠る少女にこのみは声をかける。
今回のゲスト審査員だ。けっこうなグルメ、ようするに食道楽らしいが、このみはさっき初めて会ったばかりだ。
妖精に見間違うほどに美しい少女が横で規則的な寝息を立てはじめたのはいつからか。予選を開始してすぐだった気がする。
いずれにせよ、今のところ……今回も期待できそうにないわね、そう思うこのみだった。
333 : Pしゃん   2021/09/10 21:41:11 ID:kp52Ng8f8w
春香「よーしっ!せっかく審査員として出演しているこのみさんの掘り下げが済んだところで、調理にとりかかるよ!」

百合子「りょ、了解!」

雪歩「春香、百合子。わかっていると思うけれど、調理は私が中心になって進めていくとはいえ、あなたたちの協力が必要不可欠だわ。いい?ここから先はくだらないことを言う度に、デコピンするわ」

百合子「(さらっと私たちとの感動的な合流シーンがカットされた)白雪さん……。任せてください!」

春香「えー?でもさ、私たちのなかで、きれいにおでこを出している子いなくない?〇織とか呼んでこないといけなくない?」

雪歩「はい、春香、アウト―」バチンッ

春香「ぐえーっ!」

百合子「ひえええ……!」
334 : せんせぇ   2021/09/10 21:41:23 ID:kp52Ng8f8w
雪歩「ひとまず、調達してきた食材と持ってきた特殊なクッキングデバイスを整理するわよ」

百合子「情報整理ですね」

春香「えーっと、食材についてはありふれた茸や木の実を除くと……」

・フタミベリー
・精霊のナミダ
・ウパマザーの中落ち

百合子「それに、あの人たちから巻き上げた『普通の栗』が合わさって4種類ですかね」

春香「デバイスのほうは?」
335 : プロちゃん   2021/09/10 21:41:39 ID:kp52Ng8f8w
雪歩「通常の調理器具とは別に6つね」

・おろし金『ミルキーウェイ』
・泡だて器『始まりの風』
・中華鍋『Flyers!!!』

百合子「残り3つは次話以降ってことですね」
336 : Pさぁん   2021/09/10 21:41:52 ID:kp52Ng8f8w
雪歩「何はともあれ、メインとなるのはこいつね。なんだったらこれを焼くか煮るかした一品で勝負だわ」

百合子「巨大な異界ウーパールーパーの雌のお肉……美味しいんでしょうか?というより食べて大丈夫ですかね」

春香「百合子ちゃん、凝を使うんだよ」

百合子「はい?ぎょ、凝?」

雪歩「知らない?『H〇NTER×HUNTER』のあれだよ」

百合子「伏字が機能していない!?」

春香「ようするにさ、異界での能力発現の要領で目を凝らしてみなよ」

百合子「えーっと………こ、こうかな?」
337 : せんせぇ   2021/09/10 21:42:13 ID:kp52Ng8f8w
百合子「あっ―――お肉が纏うこのオーラは……?」

雪歩「オーラの色と形状でおおよその味の傾向がわかるんだけど、ざっくり言えば食用に適するか否かを判別できるわけ」

百合子「おお……!でも、これ、慣れていないとすごく疲れますね」

雪歩「ハザマとして、異界食材の見分け方ってこういうものだって、頭に入れるだけではなく身体に覚え込んでおきなさい。魔導書ばかりに頼っていたんじゃ危うい局面もあるかもしれないわ」

百合子「は、はい!」

春香「先日の修行じゃ、異界での基礎能力(百合子の場合は風)と魔導書とのリンクの向上だったからねー。Lesson2ってところだね」
338 : P殿   2021/09/10 21:42:27 ID:kp52Ng8f8w
雪歩「話を戻すわね。この肉をメインとするとして、どう調理するか」

春香「ステーキですよ!ステーキ!」

雪歩「妥当ね。ただ、それだけじゃ足りない。たとえば……ソースを工夫するとか」

百合子「!! 感じます!魔導書が今ここにある材料と器具で至高のステーキソースを導いてくれる気配がします」

雪歩(へぇ、前と比べて魔導書との共鳴値が高まっているのね。大したものだわ。調子に乗るだろうから褒めないけど)

春香(修行をいっしょにした春香さんは褒めていいんだよ?)

雪歩(遠慮するね?)

春香(がーん!)
339 : Pサマ   2021/09/10 21:42:42 ID:kp52Ng8f8w
雪歩「やってみなさい、百合子」

百合子「はい! では―――(以下、七尾百合子のアドリブ呪文)」

春香(ノリノリだね、百合子ちゃん)

雪歩(この語彙力、見習いたいですぅ。ポエムに使えないかな)

春香(痛々しいことになるのが見えているよ……)
340 : ボス   2021/09/10 21:42:56 ID:kp52Ng8f8w
かくして百合子が魔導書を使って導き出したステーキソースのレシピを傍らに調理を開始するグリルモワールの3人。

フタミベリーと普通の栗を含めた果実系食材を中華鍋『Flyers!!!』で炒めていく普通よりも高く跳ね上がる食材が鍋の発する特殊な気流と異界の空気とを受けて味を変化させていく……!
一方、採取から時間が経過したせいか、液体というよりは固体に近くなった、ドロドロ状の精霊のナミダを、泡だて器『始まりの風』を使って攪拌していく。
粘度の高まった精霊のナミダは一般の調理器具で溶かそうとしても無味乾燥な代物となってしまい、食材としての価値がゼロに等しくなってしまう。しかし『始まりの風』は素材がもともと持つ味、潜在能力を損なわずにかき混ぜることが可能なのだ!

完成したベリーソースに光り輝く精霊のナミダを合わせるっ!
341 : プロデューサー様   2021/09/10 21:43:14 ID:kp52Ng8f8w
そして肉!

百合子「ウルトラ上手に焼けました~♪」

雪歩「焼いたのは私だけどね」

焼き上がったウパマザーの中落ちにソースをどーん!

春香「うひゃぁっ! ねぇ、見ているだけでほっぺたが落ちそうだよ!食べていい?」

雪歩「ダメよ。百合子のほっぺたをむにるだけにしておきなさい」

百合子「ええっ!? なんでわた、ひゃっ、はふははん、ほんほひふへははひへ(※春香さん、ほんとにつねらないで)」

春香「この手触り……癖になるッッッ」


さぁ、ついに審査開始♪

Recipe6につづく…!
342 : お兄ちゃん   2021/09/10 21:47:38 ID:kp52Ng8f8w
モンブランは久しく食べていないなーなんて思いつつ、今回は採用しませんでした
申し訳ない
あと、長くて1500字とか言っておきながら3000字程度だけど……話、そんなに進んでねぇ!

Recipe6からはテンポあげていけたらなーと
異界での能力云々の設定掘り下げはたぶん終盤に忘れるかもです
もしかすると予選と本選だと本選のほうがあっさりした描写になる…?

Recipe6partA下書きは9/13までを目安に投下予定
ご意見・ご想像募集中です!何卒最後までお付き合いください!
343 : Pちゃん   2021/09/11 20:41:07 ID:Qdgs52KDFo
書けましたので投下します!
Recipe6partAは下書きなしで清書をすぐに投下
内容的に実質、Recipe5partDになったかと思います

次のための安価もあります!
344 : ごしゅPさま   2021/09/11 20:41:25 ID:Qdgs52KDFo
Recipe6partA 

予選にて双海山で無事に食材を調達し、調理を終えた3組
審査が今、始まる―――!


美希「で、どの人から持ってきてくれるの?ミキ、起きたばかりだけどそこそこお腹空いているの」

このみ「くってねてあそべ くってねてあそんじゃえ くってねてあそぼってことね」

美希「『ら♪ら♪ら♪わんだぁらんど』なの。あふぅ」
345 : プロヴァンスの風   2021/09/11 20:41:38 ID:Qdgs52KDFo
百合子「それじゃあ、熱いうちに私たちのを……」

モブ美「それでは私たちの料理からどうぞ召し上がってくださいまし!」

このみ「オッケー。じゃあ、一番手はモブ美・モブ香・モブ乃3人組『おかわりおわかり?』ね」

百合子「うっ、出遅れました」

春香「まぁまぁ、大丈夫だって」

雪歩「あんなふざけたユニット名に負けないわよ」
346 : ぷろでゅーさー   2021/09/11 20:41:54 ID:Qdgs52KDFo
モブ香「ふふふ、それはどうかしら。私たちの勝利は決まったようなものですわ」

雪歩「ふうん」

春香「大層な自信だけど、何を作ったんだろう?」

モブ乃「この予選には必勝法がある」

百合子・春香「!?」

このみ「へぇ……それって?」

モブ美「とくとご覧あれ!」

モブ香「これが私たちの料理ですわ!」

百合子「あ、あれはっ!」
347 : 番長さん   2021/09/11 20:42:07 ID:Qdgs52KDFo
『おかわりおわかり?』が示したテーブルには料理がずらりと並べられていた
圧倒的物量ッ!!!これぞ満腹至極フルコォス 色鶏鶏!!!

モブ乃「一番手でおいしい料理を大量に作って、食べてもらえば他の料理を食べられなくなる……!」

モブ美「他の組は審査対象にすらならない、不戦勝ですわ」

モブ香「完璧な作戦、まさに必勝法ですわ!おーっほっほっほっほ!」

百合子「な、なんだってぇーーー!」

春香「あわわわわわ、ど、どどどどどうしよう、雪歩」

雪歩「見ていなさい、今にわかるわ」
348 : 兄ちゃん   2021/09/11 20:42:23 ID:Qdgs52KDFo
美希「うわ………まっず」

モブたち「」コトバウシナイー

このみ「食材本来の旨味を39%しか活かせていないわね。これじゃあ、食通のチュパカブラも食べないわ」

雪歩「勝負あったわね」

このみ「というか、仮に美味しくたって、審査員として他の料理が食べられなくなるまでいっぱいに食べるわけないじゃない」

美希「あんたバカァ?」

モブたち「」

百合子「こ、これが料理バトル!」

春香「言うほどバトルになっている……?」
349 : 変態インザカントリー   2021/09/11 20:42:42 ID:Qdgs52KDFo
百合子「しゃぁっ!次こそ私たちの出番ですね!」

モブ婆「ちょいとお待ち」

春香「え!? あ、あなたは?」

このみ「参加者の1人、『うまいばぁ』ね。2番手はあなたってことかしら」

百合子「え、あの、私たちのほうが先に……」

モブ婆「なんだい?最近の子は年寄りを敬うってことを知らないのかい?」

百合子「うう……わ、わかりました。では、先にどうぞ」

春香「百合子ォ!」

百合子「だ、だって……!」

雪歩「今更だけど参加登録は1~3人でできるわ」
350 : 変態インザカントリー   2021/09/11 20:42:57 ID:Qdgs52KDFo
モブ婆「ふっふっふ、それではこちらをどうぞご賞味あれ…!」

百合子「え?あれってただの……」

美希「おにぎりなの!!」

春香「うわっ?! なにあの松茸みたいな目!きらきらして―――ま、まさか」

このみ「美希ちゃん、もしかしておにぎり好きなの?」

美希「そうだよ? すごいね、おばあさん、もしかして知っていたの?」

モブ婆「さぁ、どうかねぇ……ほっほっほっほ」
351 : 変態インザカントリー   2021/09/11 20:43:08 ID:Qdgs52KDFo
モブ乃「食べる相手の好みを事前に把握しておく……これぞ必勝法」

モブ美「ふっ、これであんたたちもおしまいよ!」

モブ香「うわーん、せっかく作ったのにー」

雪歩「なんで一瞬で敗退したあんたたちがしゃしゃり出ているのよ……。それにまだわからないわ。肝心なのは味よ」

百合子「そ、そうですよ!どうせお婆さんが脇で握ったとかそういう、あれですよ!出来損ないのおにぎりですよ!」

春香「でも、あのおにぎりから漂うオーラは……」

美希「いただきますなの!」

このみ「んっ……こ、これは!?」
352 : おにいちゃん   2021/09/11 20:43:29 ID:Qdgs52KDFo
美希「うめぇーーーーー!」

百合子「う、梅!?」

春香「ただの梅干しじゃない!あれは異界の品種……ウメ星デンカ!」

百合子「はい!? 知る人ぞ知るF先生のSFギャグ漫画じゃないですか!」

雪歩「にへへ……」

百合子「それは283プロの大〇甜花さんじゃないですか!」

このみ「単に梅干しが美味しいだけじゃないっ、このお米と海苔との三位一体、至高のハーモニー、やるじゃない!」

春香「惹かれ合って」

雪歩「弾き合って」

百合子「強くなった振動が空気を伝って……って、それはジュリアさんたちの『ハーモニクス』!」
353 : Pくん   2021/09/11 20:43:46 ID:Qdgs52KDFo
百合子「ちょ、ちょっと待ってください!それほどの梅干し、こんな短時間でできるわけないですよ!お米だってあんな山に……」

雪歩「百合子、いつもの世界の常識に囚われてはいけないわ」

百合子「!」

春香「うん。あのお米はたぶん……あきたMachico」

百合子「あきたこまちじゃなくて!?」

雪歩「広島生まれのホリプロ所属のお米だよ」

百合子「自分で言っていておかしいと思いません!?」

春香「秋田じゃないんかーい!」

百合子「ツッコミどころ、もっとあります!」
354 : せんせぇ   2021/09/11 20:43:58 ID:Qdgs52KDFo
雪歩「そして梅干しを短時間で作った方法はおそらく、あの壺……!」

春香「あれは異界クッキングデバイス!?」

モブ婆「これぞ、梅干し族・封印の壺じゃ」

百合子「遊〇王か! って、なんで封印しているんですか!」

美希「おかわりなのー!」

このみ「さて……それじゃあ、予選を勝ち抜いたのは『うまいばぁ』さんというわけで……」
355 : Pサン   2021/09/11 20:44:15 ID:Qdgs52KDFo
百合子「えええっ!? ま、待ってくだいよ!」

春香「おいおい まだ私たちの番が回っていないでしょうが」

雪歩「ここからの逆転こそ、料理バトルの醍醐味ね……!」

美希「ふーん。ま、いいよ。持ってきてみて」

このみ「亀の甲より年の劫……あなたたちみたいなアダルティの欠片もない女の子たちじゃ、無理だと思うけどね」

モブ美(33)「そうよ、そうよ!」

モブ香(41)「まったくですわ」

モブ乃(27)「えっ?あ、はい」

百合子(意外といい大人!だからって、負けるわけにはいかないっ!)
356 : プロデューサーはん   2021/09/11 20:44:27 ID:Qdgs52KDFo
百合子「おあがりよ!『ウパマザーのステーキ 精霊のナミダ&フルーツソースかけ』ですっ」

美希・このみ「!!」
357 : Pはん   2021/09/11 20:44:43 ID:Qdgs52KDFo
美希「うぱまざーってなんなの?」

百合子「えっ。あ、その、巨大なウーパールーパのお母さん?」

このみ「それって美奈子ちゃんと奈緒ちゃんの……」

百合子「それは『Super Duper』!」

春香「天丼ですよ!天丼!」

美希「えっ? どう見てもステーキなの」

百合子「ああ、もう!いいから食べてみてくださいっ!」

このみ「上にかかっているソースからする不思議な香り……けれど、食欲をそそるわね」

美希「しかたないの。あむっ」

このみ「はむっ」
358 : ご主人様   2021/09/11 20:44:58 ID:Qdgs52KDFo
百合子「ど、どうですか」

このみ「………」パクパク

美希「………」モグモグ

百合子「黙って一心不乱に食べている……!?」

雪歩「勝ったな」

春香「ああ」

モブ婆「そんな馬鹿な! ゲテモノの肉に奇怪なソースなんぞ、そんなのうまいわけがないわ!どれ、わしにも食べさせてくれ!」

雪歩「しょうがないわね。百合子、少し分けてあげなさい」

百合子「は、はい」

モブ婆「」ナポ…
359 : Pさぁん   2021/09/11 20:45:20 ID:Qdgs52KDFo
モブ婆「!!!!!」

雪歩「どう?」

モブ婆「す……」

春香「す?」

モブ婆「素敵なステーキ…っ!!」

百合子「どひゃあっ」ドンガラガッシャーン!

モブ婆「し、信じられんわ。牛や豚、鶏とも違うこの食感と味……肉界にとんだスーパールーキーが現れたもんじゃ」

春香(語感似ているね)

モブ婆「そしてこのソース。口に入れた瞬間、広がるサラマンダーの発する炎が如く衝撃、かと思えば次の瞬間にはウンディーネの司る水のような癒しの風味がやってきて、次にはシルフの風が如く爽快な味が口内を駆け巡り、最後にはノームまでも来たんじゃわい…!」

百合子「ノームって土の精霊ですよね。じゃあ、土の味なんじゃ……」

春香「野暮なことを言わないでおこうよ。無理やり、精霊にからめた喩えを使っているってことがバレバレだよ」

百合子「ははは……」
360 : プロデューサー殿   2021/09/11 20:45:45 ID:Qdgs52KDFo
雪歩「私たちは運がよかったわ。あのモブ&モブズから得た普通の栗がなければこのソースの完成はなかったのだから」

春香「精霊のナミダ単体でソースとして使おうとすれば強すぎて、このウパマザーの中落ちのくせのある味ばかりが舌に残ってしまう」

百合子「ですが、普通の栗やフタミベリーを炒めて作ったフルーティーなソースがこの特殊食材2つを繋げてくれたんです!」

このみ「むむむ……ただ異界の珍しい食材に頼るのではなく、一般の食材をつなぎに役立てるなんて…!」

美希「これ、おにぎりの具材にしたら最強なの!」

雪歩「ふふっ、そういうアレンジもありかもしれないわね」

モブ婆「くぅ、今回はどうやら負けを認めざるを得ないようじゃな」

百合子「ということは――――」
361 : ぷろでゅーさー   2021/09/11 20:45:59 ID:Qdgs52KDFo
このみ「予選を勝ち抜き、本選出場権を得たのは……『グリルモワール』の3人だぁあああ!!!!!!」

モブたち「ワァアアアアア!!!!!!!」

美希「zzz……」

百合子「やった!」

雪歩「当然の結果ね」

春香「私たちの戦いはこれからだ!」

百合子「打ち切りですか!?」
362 : Pチャン   2021/09/11 20:47:24 ID:Qdgs52KDFo
Recipe6partB(下書き)のための安価
【A】本選・1回戦のお題料理(相手ユニットとのタイマンになります)
【B】必要な食材(の一部)を調達する場所や方法 
【ID判定×2】亜美以外の審査員2人 1回戦の相手および登場済アイドルを除いて判定

※1回戦の相手はこちらで決めています ユニット名はフローラ・アラカルト 勝負の決着はpartCを予定
※サクッと書けるところは書くつもり(手抜きじゃないよ!)
※レスの有効期限は9/13 17:59:59まで 早ければ9/13中に投下します

調理・食事シーン難しくてめげそう(大幅に端折った結果が今回だよ!)
何卒最後までお付き合いください!
363 : プロデューサーはん   2021/09/11 20:56:40 ID:p3neMcuZ4I
A ピッツァ
B 屋敷の使用人の取引先の市場 目利きから自分でやる、水棲生物ハザマ食材の生け簀もある
364 : Pしゃん   2021/09/12 02:50:36 ID:1zM2dZ8f0U
A:アクアパッツァ
B:予選に出ていたモブ達から「これをどう料理するのか見たくなった」と食材を提供される
「ただのモブじゃいられない」と意地を見せて欲しい
365 : P殿   2021/09/13 05:31:38 ID:QzH8agXMzw
定期age

ID判定処理
>>363 p3neMcuZ4I→[p]=翼
>>364 1zM2dZ8f0U→[z]=百合子→[M]=このみ→[d]=雪歩→[Z]=歌織

本選1回戦審査員は翼・歌織に決定

レスはまだ募集中です!
今日中の投下は無理そうなんでレスの有効期限は今日いっぱい(23:59:59)に延長しておきます
366 : プロデューサーくん   2021/09/14 11:15:44 ID:YstDfR2YPI
レスありがとうございましたー
Recipe6partB(下書き)投下していきます!
367 : P殿   2021/09/14 11:16:04 ID:YstDfR2YPI
Recipe6partB 下書き

予選を無事に勝ち抜いたグリルモワールの3人。
2日後に開催されるという本選の説明をこのみから受ける。
『HOTDOGS』との対決、ひいては可憐との接触が目的ではあるが、それとはべつに気になっていたことが百合子にはあった。

百合子「あの……優勝賞品って何なんですか?富豪とのコネクション以外にもあるっていう話を聞きましたけど」

このみ「ああ、それなら私も実は知らされていないのよ」

春香「そうなんですか?」

このみ「ええ。1回目も2回目も大会後日に莉緒……えっと、友人からその正体を聞いたんだけど」

春香・百合子「うん?莉緒って―――」

雪歩「もしかしてハンドレッドのことですか?」
368 : P様   2021/09/14 11:16:16 ID:YstDfR2YPI
このみ「えっ。あの子と知り合いなの?」

雪歩「ええ、かくかくしかじかちんちくりんってわけで」

このみ「なんだ、そうだったの。言われてみれば……たしかにあの子ったら、私がこの大会のことで電話で愚痴をもらしたときに、なぜだか意味ありげに『今回はきっと違うわよ』って話していたわね。なるほどね……」

春香(当の莉緒さんはもしかするとプレアデスから聞いたのかな)

雪歩(それとも彼女の異界での仕事の関係……貴重食材密猟者の捜査のうえで知ったのか、ね)

百合子(そうだとしたら、賞品ってのは他でもなく私たちのような料理人に関係する何かですね!)

春香(単なる金銀財宝ではない何か。『HOTDOGS』がこの大会に参加している目的がそれにあると見ていいかも)

雪歩(令嬢の友人の勧めで、ってだけなのは不自然よね。オトメティックパワーの強化に必要な食材かデバイスか……)
369 : 夏の変態大三角形   2021/09/14 11:16:27 ID:YstDfR2YPI
このみ「……こほん。ひそひそ話は済んだ?」

百合子「あっ、は、はい!えっと、訊く順番が前後しちゃいましたけど、莉緒さんとはお友達なんですか?」

このみ「最初はビジネス上の付き合いだったけどね。私、あっち(現世)だとファッションモデルをしているの。うーん、見た感じあなたたちの年だとあまり読まないような雑誌とかでね」

春香「ローティーン向けってことですか?」

このみ「張り倒すわよ? 逆よ、逆!大人のセクシーさを売りにするやつよ!まぁ……私が出る時は、その、低身長の大人女子向けの特集のことが多いけど……」

百合子「あわわわわわ、そんなセクシー雑誌でセクシーな格好をしているお姉さんだなんて!」

このみ「……発禁処分を受けるようなやつじゃないわよ?」

雪歩「ところで、念のためにうかがっておきたいのですが、『HOTDOGS』についてはご存知ですか?本選参加者なのですが」
370 : おにいちゃん   2021/09/14 11:16:40 ID:YstDfR2YPI
このみ「うーん………あなたたちがその人たちと何か因縁があるっていうのは、なんとなく察したけれど……ごめんなさい、知らないわ」

春香「ちなみに他の本選参加者については?」

このみ「それなら、1組だけ知っているわよ。組というか、1人ね。第1回大会で優勝した富豪お抱えシェフの愛弟子が1人で出場しているって。噂じゃかなりの美人だって評判で、無論、それだけじゃなくて料理の腕も相当みたい」

春香「ふーん、美人の料理人かぁ。雪歩といい勝負かな、なんて」

雪歩「か、からかわないで春香。……いろいろありがとうございます、このみさん。また機会があればうちに食べに来てください」

このみ「ふふっ、そうね。そのうち、莉緒といっしょに行くわ。あ、でも……」

百合子「でも?」
371 : P様   2021/09/14 11:16:50 ID:YstDfR2YPI
このみ「お酒はあるかしら?安酒は嫌よ?」

雪歩「……用意しておきます。ね、春香」

春香「口噛み酒でいい?」

雪歩「………」ベシンッ!

春香「いったぁっ!」

百合子「ひえぇ…!」
372 : プロヴァンスの風   2021/09/14 11:17:09 ID:YstDfR2YPI
一方その頃 屋敷内 某所

美希「ふわぁ……亜美に用意してもらった部屋でもう一眠りするの」

??「センパ~イ!」ドタドタドタ

美希「……うるさいの、翼。廊下は走ったらダメだって思うな。それにミキは今、忙しいの。かまっていられないの。ばいばいなの」

翼「えー?そんな眠そうな顔して、どうせまたどこかでお昼寝するだけじゃないですかー?」

美希「zzz……」

翼「なんで話しながら寝るんですかー! どうだったんですか、大会予選!美味しいもの食べられましたか!?」

美希「うん! あんなステーキ、食べたことなかったの。あと、あのおにぎりも悪くなかったの」
373 : Pちゃん   2021/09/14 11:17:32 ID:YstDfR2YPI
翼「ステーキ!? いいなー! じ・つ・は!私も今回はお願いして、なんと本選一回戦の審査員をさせてもらうんですよ!すごくないですか」

美希「zzz」

翼「美希センパイ!」

美希「むぅ……なんなのなの。話なら部屋で聞くの。連れていってくれたらね」

翼「わっ。きゅ、急にそんな体をあずけてくるなんて、ダ、ダメですよ!こんなところでそんな……」

美希「……zzz」

翼「………いや、知っていましたけど。センパイってばしかたないんだから、ふふっ」
374 : 5流プロデューサー   2021/09/14 11:17:50 ID:YstDfR2YPI
会場敷地内 客室

雪歩「みきつばキテますぅ!」

春香「は?頭打った?大丈夫?結婚する?」

百合子「それにしてもいい部屋ですね。私の部屋の何倍も広いですよ!」

雪歩「元々が物置の百合子の部屋と比べてもしょうがないけど、たしかに3人部屋としても十二分な大きさよね」

春香「でもさぁ……」チラッ

雪歩「べ、べつにどうってことないでしょ、うん」

百合子「どうしてベッドがキングサイズの1つしかないんですかね」

春香「川の字で眠れるね!家族ですよ!家族!」

雪歩「………春香、寝相悪いから床で眠りなさい」

春香「ええっ!?」

百合子「いずれにしても、今日の残りと明日一日は自由行動なわけですよね。どうしますか?」
375 : プロデューサー様   2021/09/14 11:18:24 ID:YstDfR2YPI
春香「自由とは言いつつ、まったりするわけにもいかないよね」

雪歩「本選は私たちを含めた8組によるトーナメント形式……そして私たちの出場する1回戦のお題はピザ」

百合子「白雪さん、ピザじゃなくてピッツァですよ!」

雪歩「……」ペチンッ

百合子「ひゃぁっ♡」

春香「具材はシーフードをメインに、かぁ。アクアピッツァってことだね」

百合子「無理にアクアパッツァっぽくしなくても……」

雪歩「……」ペチンッ

百合子「ひぃっ♡」
376 : プロデューサー殿   2021/09/14 11:18:42 ID:YstDfR2YPI
雪歩「1回戦の特設会場は海湾近く。そばにあるのは、この屋敷の料理人たちも懇意にしている仕入れ先の1つ……菊地市場」

百合子「築地?」

春香「菊地だよ。交互に何回も言うと舌を噛みそうになるね」

雪歩「異界でも有名な市場の1つね」

百合子「大きいんですか?」

雪歩「規模としてはそうでもないわ。私たちのような小さいお店、というより一般人は相手にしてくれない上流階級向けのマーケットね」

百合子「へぇ……」

春香「実は師匠がいた頃に4人で何回か行ったことはあるんだ」

雪歩「小さい頃の話よ。って、今もちんちくりんで悪かったわね!」ペチンッ

百合子「んあぁっ♡ 理不尽ですよ!」

春香(するほうもされるほうも癖になっていない!?)
377 : Pはん   2021/09/14 11:19:01 ID:YstDfR2YPI
雪歩「いつの間にか、師匠はそこを利用することはなくなったわ。きちんと理由を聞いたことはなかったけど……何か変わったのかしらね」

春香「変化があったとしたら―――それは師匠を含めた私たち側なのか、あるいは」

百合子「菊地市場の側なのか、ですね。わくわくするというか、はらはらするというか」

雪歩「明後日、ピッツァの具材はそこで調達するルール。他の参加者はどうか知らないけれど、少なくとも私たちは明日に下見できるわけでもないそうね」

百合子「けっこうな不利ですよね?」

雪歩「さあね。参加者しだいかしら。異界食材の目利きについては春香と、百合子の魔導書頼りになるのは間違いないわね。市場の人として出演してくれる人、男の方も多いみたいだし、私はそんなに役立てそうにないわ」

百合子(そういう問題なんだ……)

春香「参加者といえば、私たちの対戦相手のこと。知っている?雪歩」

雪歩「ううん、『フローラ・アラカルト』なんて聞いたことないわ」

百合子「このみさんも大会進行委員の1人として名前だけは、って感じでしたね。あと、女性3人で構成されているってことぐらいですか」
378 : おにいちゃん   2021/09/14 11:19:16 ID:YstDfR2YPI
百合子「2月の誕生石として有名な紫の宝石ですよね。愛の守護石なんて言われもするんです!きゃーっ!」

雪歩「それはアメジスト」

春香「へぇ、ラスカルって悟空と同じ声優さんだったんだ」

雪歩「それはアライグマ」

百合子「フランス人民の皇帝ですよね。ジャック・ルイ・ダヴィットの肖像画が有名です」

雪歩「それはナポレオン・ボナパルト」

春香「ふわふわシートのマシュマロコースターに乗り込んで お城へれっつごー!なのです!」

雪歩「それは『プリンセス・アラモード』」

百合子「コースメニューに対して、一品ずつ注文していく形式のことですよね」

雪歩「それがアラカルト」
379 : そなた   2021/09/14 11:19:30 ID:YstDfR2YPI
春香「話を戻すと、今日の残りは疲れをとるのに専念することにして明日はどうするの?」

雪歩「そうね……【A】に行ってみるのはどうかしら?」

百合子「狙いは何ですか?」

雪歩「【B】よ」

春香「どひゃぁっ」ドンガラガッシャーン


(以下、本選前日を加筆予定 長くはならないと思います)
380 : ダーリン   2021/09/14 11:19:45 ID:YstDfR2YPI
1回戦当日 - 特設会場 -

予選とは違い、黒いフードに黒いローブを纏った異世界の住人達が観客として50人近くいるようだ。
皆がそれぞれチケットを購入して観戦している、富豪と少しでもコネのある人間らしい。
会場そばの菊地市場からは市場ならではの熱気も感じられた。

開始時刻に合わせて、会場の西ゲートが開くとそこから、絶世の美人が一本角を生やした白馬に乗って入ってきた!
会場がどよめくなか、定められた位置でピタリと止まり、華麗に降り立ち、会場全体をゆっくりと見回すと上品な微笑みを浮かべる。
それから壇上へと移動し、恭しく一礼をしてからマイクをとった。
今回の進行役兼審査委員の1人であるらしいその女性は本選の開始を告げる挨拶と共に自己紹介を手短に済ました。
桜守歌織―――双海家と最も親交の深い名家のお嬢様自らが今日は亜美のために一肌脱ぐということだそうだ。興奮してきたな。

選手入場の合図とともに雪歩たち『グリルモワール』と、そして『フローラ・アラカルト』が入場する!
381 : あなた様   2021/09/14 11:19:59 ID:YstDfR2YPI
春香「! あの人たちが……」

百合子「あわわわわ」

雪歩「雰囲気にのまれてはいけないわよ」ペチンッ

百合子「きゃんっ♡ もうっ、こんな大勢の前で!」

春香「なんなん……」
382 : Pサン   2021/09/14 11:20:16 ID:YstDfR2YPI
花の1人が満面の笑みで会場をきょろきょろを見まわしている。
そうして歌織が紹介している最中で、すーっと息を大きく吸う素振りをしたかと思いきや、マイクもなしに大きな声で会場全体に挨拶をするのだった。

麗花「みなさーん、こんにちはー♪」

そのよく通る声と、歌織とは別のタイプのとびっきりの美人の笑顔に会場がまたしてもどよめく…!

歌織「北上麗花さん?今はまだ紹介途中なのですが……いえ、よければ自分たちでお話されますか?」

動揺することなく微笑みを携えたまま歌織がそう言う。うんうんと肯く麗花、その一方で彼女のすぐ隣に立つ女性の目は「ええっ!?」と語っていた。

??「あ、あの、麗花ちゃん。ここは司会の方に任せていいんじゃない?」

麗花「ええー?けど風花さん、台本ではここで私が歌織さんの紹介を遮って……」

風花「えっ、あ、いや、その……」

???「それでは、マイクを貸していただけますか?私、ここできっぱり言っておきたいことがあるんです!」

おろおろする清楚でむちぽよな女性の隣から、ぬっと少女が一歩踏み出して言う。
その要望を受けて歌織が『フローラ・アラカルト』の3人のそばまで移動してマイクを手渡す。

歌織「はい、どうぞ。頑張って、星梨花ちゃん」

星梨花「ありがとうございます!歌織さん!」

歌織「ふふふ」
383 : Pちゃん   2021/09/14 11:21:05 ID:YstDfR2YPI
星梨花と呼ばれたいかにもピュアでキュートでエンジェルなお嬢様が、その印象とは裏腹に、マイクをとって開口一番「やい!お前らー!」と雪歩たちをビシッと指さした。

百合子「へ?」

星梨花「海美さんたちにひどいことをしようと企んでいますよね?」

春香「誤解されているね」

雪歩「なるほど……あの子がおそらく令嬢の例のお友達ね」

星梨花「そんな人たちなんかに、ぜーったいっ、負けませんからね!ふんっ!」

宣誓とともに拗ねた調子の美少女、その可愛さに観客が一斉に「うぉぉおおおおお!!」と歓声を上げる。
どうやら観客たちのほとんどが今ので『フローラ・アラカルト』側に与したようだった。
384 : 高木の所の飼い犬君   2021/09/14 11:21:21 ID:YstDfR2YPI
春香「くっ、ここで逆転するためには百合子がすっぽんぽんになるしか……!」

百合子「ふぁっ!?放送できませんよ!? いや、まず脱ぎません!!」

雪歩「春香、何言っているのよ。まだ何も始まっていないでしょ。料理で勝負するのよ、私たちは」

春香「そうでした、そうでした。てへぺろ☆」

雪歩「それはそれとして、百合子の着替えは必要かもね」

百合子「へ?」

春香「わりと視聴者の目当てなところあったからねー。スタッフさーん!」

百合子「ええっ?!マジですか?!」

雪歩「というわけで次回は新たな衣装で百合子ちゃんの登場ですぅ!」


清書につづく
385 : ダーリン   2021/09/14 11:21:35 ID:YstDfR2YPI
※【A】本選前日に雪歩たちが向かう場所
※【B】目的は? 例:ピッツァの生地部分の準備や作るコツを教わりに/異界の魚介類について詳しくなるために/『HOTDOGS』の手がかりを求めに など
※【ID判定】訪問先で出会うアイドル 登場確定者除き判定(市場関係者として登場予定の真も除外)
※【C】市場で入手予定のアクアピッツァに用いる具材 異界の魚介類 複数回答可(3種まで)
※審査員の翼は後から会場に登場 
※予選のモブたちから食材を託されているかも

レスの有効期限は9/17 17:59:59まで 
清書投下は早ければ9/18、遅くとも9/20を予定 
いよいよ9月中の完結が難しくなってきた……?
386 : Pサマ   2021/09/14 11:45:03 ID:VkYRS.Q7RI
A近くの商店街
B観光(という名のピザ作りの為の情報収集)
C瑠璃色金魚、こまち、かまぼこ
387 : ぷろでゅーさー   2021/09/14 12:46:24 ID:ATCM0pXqwk
A 「小麦のカリスマ」と称される料理人の店
B 情報収集
C コレットシジミ、ウドンイカ、チー鱈
388 : プロデューサーはん   2021/09/15 17:40:51 ID:lKWeuPpWSg
定期age

レス有効期限の修正
9/16 18:59:59まで

ID判定処理
>>386 VkYRS.Q7RI→[V]=麗花→[k]=亜美→[Y]=紬

本選前日の訪問先にて出会うのは紬に決定

レスはまだ募集中です!
389 : プロデューサー殿   2021/09/16 01:36:40 ID:h2Usrw8yiQ
A:莉緒行きつけのカフェ(という名の飲み屋)
B:莉緒への焼き犬調査の依頼
C:食用ウミウシ(愛称アリエル)
海蛇「ダイヤモンドダイバー」
伊勢海老「Fleuranges」
390 : 高木の所の飼い犬君   2021/09/18 06:11:42 ID:xghm6rgcXY
レスありがとうございます!
定期age

清書、明日には投下できそうです
たぶん

391 : プロデューサーさん   2021/09/19 05:39:20 ID:ykAwVliaKI
Recipe6partB 清書投下していきます


大会予選を勝ち抜いたグリルモワールの3人は、みきつばがキテる裏で、このみから本選の日程等の説明を受けた。
話をしてみてわかったことには、このみはあの異界捜査官(表向きはファッション雑誌編集者)のハンドレッドこと莉緒と友人であるらしかった。
そのアダルティなセクシーを活かしてファッションモデルを仕事にしているそうである。歌声も素敵だし。
さらにこのみに本選参加者に関して訊ねると、雪歩たちと同じく今大会が初出場の、第1回大会で優勝した富豪お抱えシェフの愛弟子(美人)が優勝候補にあがっているのだとか。
残念ながら『HOTDOGS』の情報は大して得られなかった。

雪歩たちはキングサイズのベッドが1つある、立派な部屋を割り当てられて大会開催中はそこで寝泊まりすることとなった。
本選まで一日、自由時間(準備期間)があり、どこで何をするか3人は話し合った。
その結果、第1回戦の課題料理がシーフードピザ(アクアピッツァ)であるのを受け、春香は他の2人に、異界の商店街を訪れることを提案した。
392 : バカP   2021/09/19 05:41:49 ID:ykAwVliaKI
百合子「異界の商店街?」

春香「うん。普段は現世の『昇天街』に行くことが多いけれど、実はこっちの商店街も月に2,3度は来ているんだ」

雪歩「ちょっと前までは治安があまりよくなくて、『地獄街』なんて呼ばれ方もしていたそうよ」

百合子「へー……あれ?白雪さんもこっちの商店街について、詳しいんですか?」

雪歩「それなりにね。春香が買い出しに行く場所なんだから、何も知らないでいるのもダメでしょう?」

春香「はぁ~、愛を感じるね」

雪歩「はいはい」

百合子「その話しぶりだと今では治安が悪くないんですよね?」

春香「そうそう。例の富豪がこっちで台頭してきて、そうした『整備』が進んだとも聞くよ」

雪歩「あれでしょ?一人娘があるけるような場所にしておかないと、なんて思ってはりきったんじゃないの?」

百合子「娘さん……亜美ちゃんでしたっけ、とっても大切にされているんですね」

春香「でも、私は商店街で見たことないんだよね。会ったっていう人の話を聞く限り、ボディガードを何名もつけているみたい」

百合子「やっぱり黒サングラスで黒スーツの大男ですか?」

春香「ううん、それが嘘か本当か、可愛い女の子たちばかりなんだって」

雪歩「異界ならではね。きっと上級能力者たちなんでしょう。不思議と、可愛い女の子たちがこっち(異界)だと強力な能力を獲得するみたいだから」

春香「え?それって私が最強ってこと?」

雪歩・百合子「………」

春香「ちょっ、なんか言ってよ!」
393 : Pチャン   2021/09/19 05:45:36 ID:ykAwVliaKI
本選前日 - 異界商店街(旧地獄街)-

雪歩「ピザ生地は半日以上かけて(二次)発酵させておかないと美味しくできないと聞くけれど、異界素材だとそういうわけでもないのよね」

百合子「現世でも発酵なしで簡単ピザ!なんてのもありますけどね。えっと、明日の本選では、持ち込んだピザ生地に具材を載せて焼くだけ……って感じではないんですか?」

春香「うーん……それはそうとピザ窯なんてうちにないし、あっても持ってこれるような設備じゃないよ。ってことはさ、どう焼き上げるかも考えないといけないってわけかぁ」

雪歩「そういう諸々含めて、ピザの作り方に詳しい人を知らない?春香なら、こっちの商店街でも、親しい人多いでしょ?」

百合子「あと具材となるシーフードについても、詳しい人がいればいいですね」

春香「となると―――うん、心当たりあるよ!」
394 : Pちゃま   2021/09/19 05:47:51 ID:ykAwVliaKI
春香の案内で3人が向かったのは商店街「ナンナン」と看板がかけられた小さなお店だった。


百合子「ナンナン? 安直に考えるなら、ナンを作って、売っているお店ですか?たしかにそれなら窯での焼き方にも詳しいのかも……?」

春香「いやいや、ナンがメインってわけじゃないよ。試しに焼いてみたりもしているそうだけれど。ここは、どこの商店街にも一軒はありそうなパン屋さんだよ。他と違うところは、和風アレンジって言えばいいのかな、惣菜パンの具材が和を意識したものが多いんだ」

百合子「へぇ、和風のパン屋さん……! よく見れば、お店の佇まいもどことなく和ですね」

雪歩(だったら、素直に『紬』でよかったんじゃ)

春香(さすがに自分の名前そのままってのは恥ずかしかったんじゃない?)

春香「一部では早とちりのカリスマ……じゃなくて、小麦のカリスマなんて呼ばれもしているぐらいに腕の立つ人だから、きっと頼りになってくれるんじゃないかな」

百合子「そうなんですね。忙しくなければいいんですけど……」

春香「近くの甘味処に誘って、あんみつパフェでも奢ればイチコロだって!」

紬「それは、私が食べ物であっさり懐柔されるような安い女だとおっしゃりたいのですか?」

春香「げぇ!?紬ちゃん!?いつからそこに!?」
395 : 箱デューサー   2021/09/19 05:50:09 ID:ykAwVliaKI
百合子「紬ちゃん? わぁ……まさしく和の美人って雰囲気ですね。お店の看板娘さんですか」

春香「いや―――」」

紬「それは、私が店主などできずに、ただ愛想を振りまき、雑用しかできない小間使いのような存在だとおっしゃりたいのですか?」

百合子「!?」

春香「看板娘ってそういうものかなー……あはは」

百合子「す、すみません!店主さんだったんですね」

紬「ところで……久しぶりですね、萩原さん」

雪歩「ええ、白石さん、お久しぶりです。ふふっ。一段と綺麗になりましたね」

紬「なっ。あなたまでそのような……」

雪歩「本心ですよ?」ニコッ

紬「っ!! ……こんなところで立ち話もなんですし、どうぞお上がりください。今日は定休日ですので、そう忙しくはありませんから」

百合子「ほんとだ。書いてある。あ、申し遅れました、私、七尾百合子っていいます!春香さんたちといっしょに暮らしているんです」

紬「そうでしたか、あなたが七尾さん。お会いするのは初めてですが、天海さんからよく聞かされています」

百合子「そうなんですか?なんだか照れちゃうなぁ、あはは」

紬「妄想文学少女なのですよね」

百合子「空想文学少女です!どんなふうに伝えているんですか、春香さん!」

春香「ありのままなんだけど」
396 : プロデューサーちゃん   2021/09/19 05:52:40 ID:ykAwVliaKI
ナンナンの厨房にて、ピザ作りの基礎から応用まで一通りを教わる雪歩たち。
途中、おやつタイム(もちろんピザ)を挟み、気がつけば夕暮れを迎えていたのだった。

雪歩「白石さん、今日はありがとうございました。一朝一夕で極めたなんて言えませんが、おかげで何とかなりそうです」

紬「そうですね、正直、驚きました。さすがはあの方の弟子……いえ、すみません。この話はそう軽率にしていいものではありませんでしたね。いずれにせよ、萩原さんであれば、その妙な大会でも勝ち抜けると信じています」

春香「となると、あとは具材だよね。紬ちゃん、前にたしか菊地市場に知り合いがいるって話してなかった?」

紬「菊地市場?」

雪歩「一回戦の特設会場はそのそばに作られて、具材はそこで調達するそうなんです」

紬「そうでしたか………。この時季なら、もしかすると……少々、待っていただけますか。短い文をしたためて参りますので」

百合子「市場のお知り合いに、ですか」

紬「ええ。あの人であれば、あなたたちの力にきっとなってくれるはずです。それに……」

雪歩「それに?」

紬「ひょっとすると、あれが手に入るかもしれません」

春香「うん?見るからにわくわくしている表情だね、紬ちゃん。あれって何のこと?」

紬「っ! そ、そんなに顔に出ていましたか。ん、ん」キリッ

雪歩「ふふっ、すごく可愛かったよ」

紬「からかうのはやめてください///」ムニーッ

百合子「はんへははひほふへふんへふは(なんで私をつねるんですか)!?」
397 : プロデューサーちゃん   2021/09/19 05:54:52 ID:ykAwVliaKI
雪歩「それで結局、あれっていうのは?」

紬「実は……異界では今の季節、あの菊地市場で幻の魚―――瑠璃色金魚が手に入るかもしれないのです」

春香・百合子「どひゃぁっ!!」


Recipe6partCにつづく
398 : Pさぁん   2021/09/19 05:56:36 ID:ykAwVliaKI
清書と言いつつ、ほぼ補完部分(本選前日)の話でした。
今回、余裕があれば同じ商店街内で莉緒行きつけの飲み屋に立ち寄るシーンも入れたかったのですが叶わず。申し訳ない。
莉緒の立場上、おそらく再登場するでしょう。昴(プレアデス)も。たぶんですけど。
次回は『フローラ・アラカルト』とのやりとりから再開し、百合子の着替え(という名の雑コラ?)、それから菊地市場に材料調達(瑠璃色金魚含め、安価済)、うまくいけばサッと料理させつつ、いくつか安価出して、partCの清書で一回戦終了できるかも?


明日お休みをもらっているので清書は明日の夜にでも投下できたらなーと。
ご意見・ご想像募集中です!
何卒最後までお付き合いください!
399 : Pちゃま   2021/09/19 07:54:22 ID:aG5Zq.sZao
待っとるで
400 : プロデューサークン   2021/09/20 19:44:37 ID:OmqHunAlyE
お待たせしました!
Recipe6partC 下書き投下していきます


春香「というわけで、新衣装百合子ちゃんですっ!」

雪歩「他アイドルの既存衣装を百合子ちゃん用に作り直していますぅ!」

百合子「ど、どうもー」

春香「ぶっちゃけコラだよね。アイコラってやつですよ」

雪歩「生着替えシーンは私と春香ちゃんで美味しくいただきましたぁ」

百合子「言いたい放題!」

401 : 変態大人   2021/09/20 19:47:39 ID:OmqHunAlyE
雪歩「パンケーキ好きそうな衣装だね」

春香「あとプチシューね!あの劇場版から早7年半って信じられないよ」

百合子「『ミーツ・ザ・ノーツ』の衣装詳細は『悲しくなったり泣きたくなったらいっしょに歌ってみない?元気になれるおまじない、たくさんの音符に乗って届くといいな♪』ですね」

春香「『おまじない』、本当に素敵な曲だよね。ゲームサイズ版でもラスサビ前の『約束だよ!』のセリフが入っていて、おお!ってなったPも多いんじゃないかな」

雪歩「『飛んでけ!』」ペチンッ

百合子「ひゃうんっ♡」

春香「えぇ……」
402 : 魔法使いさん   2021/09/20 19:49:44 ID:OmqHunAlyE
本選1回戦 菊地市場付近 特設会場

百合子「う、海美さんたちにひどいことをって……そんな私たちはべつに……」

星梨花「! あなたが噂の妄想文学少女ですね。そこにいる2人を誑かした張本人!」

百合子「ええっ!?」

風花「お、落ち着いてください、星梨花お嬢様。私たちは料理で勝負しにきたんですから」

麗花「んー、でもでも、料理できない体にしちゃえば、手っ取り早いかも?」

百合子・風花「ええっ!?」

雪歩「星梨花お嬢様って……もしかしてあの箱崎の?こっちは噂どおり花の妖精みたいな子ね」

春香「どうしてこんなところにいるんだか。わざとか勘違いか、海美ちゃんってば彼女に何か吹き込んじゃっているみたいだし」

歌織「ふふふ、お話はそれまでにいたしましょう? 料理対決で存分に互いを知ってくださいな。さぁ、準備はよろしいですか?」

星梨花「はい!私、負けません!」

風花「お嬢様?はりきるのはいいですが、約束どおり、味見役に徹してくださいね?包丁を持たせたなんてことが旦那様に知られたら私たちクビになっちゃいますから」

麗花「ピッケルならいいかな?」

風花「ダ、ダメです!」

歌織「それでは『グリルモワール』対『フローラ・アラカルト』―――勝負開始です!」
403 : 仕掛け人さま   2021/09/20 19:52:42 ID:OmqHunAlyE
歌織の合図で、各チームともに菊地市場へと移動をし始める。飛んでいきそうになる麗花を風花が慌てて止めているのを尻目に、雪歩たち3人が先に市場へと入った。

雪歩「春香、百合子。今一度、作戦を簡単におさらいよ」

春香「うん。まずは市場を取り仕切っているっていう菊地さんの一人娘、真さんと接触しないとだね」

百合子「手分けはしないんでしたよね」

雪歩「ええ、私と春香にとってかなり久しぶりの場所、百合子にとっては初めての場所……それに用心するに越したことはないもの」

春香「下手に1人ずつになったら、たしかにまずいね」

百合子「危ない目に合うってことですか」

春香「うん、ナンパされちゃうかもだよ。ワンチャンあるかもしれないし、って」

雪歩「ひええぇ!」

百合子「そういう方向の危険性なんですね」

雪歩「白石さんの話していた幻の魚・瑠璃色金魚……あればいいけど」

ちなみに例の富豪が事前に市場関係者に「目利きができる人間には適正な価格で売る」ことを伝達・依頼している。
早い話、まともに食材のことを知らない人間には売らない。わかる人間には売るのを拒まない、ということだ。
このみがそれとなく話してくれた情報によると、大会運営そのものはおおよそクリーンと言っていいそうだ。すなわち、極論、あらかじめ優勝者が決まっているなどという裏事情はない。
審査員の過半数が富豪と親密にしている人物から選ばれる事実をしても、特定のチームに贔屓が発生しないようなルールをとっていると聞く。
実態としてもそのとおりであるのを願う雪歩たちであった。
なお、今回の食材調達資金についても「勝者は」経費扱いで後で対応がなされる。
404 : 我が下僕   2021/09/20 19:56:01 ID:OmqHunAlyE
春香「裏を返せば、敗者は損しかないってことだよね。せめて自分たちが食べる分を残してくれればいいんだけど」

雪歩「何言っているの。完璧に勝つ。でしょ?春香」

春香「だね。それはそうと、百合子ちゃん。何か感じる?」

百合子「う~ん……あまり大きな声で言えませんけど、魔導書が強く反応する食材は今のところ……いや、いいものが揃っているってのはなんとなくわかるんですけど」

春香「そうだね、目を凝らして見ているけどどれも悪くないと思う。ただ、ここ一番の勝負に使うとなると、物足りないかな」

雪歩「……そう。こうなると、瑠璃色金魚を中心に、それと合う海鮮食材で検討しましょう。1つ1つが最高の食材でも、組み合わせに問題があるっていうパターンもあるからね」

百合子「料理漫画でたまに見る展開ですよね。意外な食べ合わせで、高級食材を打ち負かす!みたいな」

春香「あ、ここじゃないかな、菊地さんのお店」

雪歩「ここは――――他と違ってお店というより……運営局って雰囲気ね。ねぇ、春香……」

春香「うん。うっすらだけど、ここに入った記憶があるよ」

百合子「え?それじゃあ、もしかしてその真さんにも出会ったことが?」

雪歩「ううん、ないと思うわ。私の記憶にある出会った子は、元気な男の子だもの。そうね、私たちと同い年ぐらいだった気がする」

春香・百合子「あっ……(察し)」
405 : Pたん   2021/09/20 19:58:35 ID:OmqHunAlyE
店内に入ると、凛々しい顔立ちをした美少年に見間違うようなショートヘアの美少女が何人かの客と楽しげに話していた。
客が全員男性だったせいなのか、雪歩がごくごく自然に春香の背中の後ろに立ち位置を変えたのを百合子は見逃さなかった。
やがて客の1人が「いやぁ、真ちゃんには負けたよ」と笑って、真と思しきその美少女が勧めた品々も追加で買っていく。
単なる看板娘ではなく商売上手なのがわかる。客足は一向に減る気配がない。どうやら真は一時的に店番をしている、という感じではなく任されているふうだった。
その真が、見慣れない雪歩たち3人に少し遅れて気がつく。「あの、」と春香が挨拶を交わそうとしたそのとき、真は驚いた表情に変わって、3人に近づいてきた。

真「もしかして春香と雪歩!?」

百合子(私もいますよー)

春香「え?う、うん。えっと、あなたが真さん?って、いや、そうじゃなくて、え?私たちを知っているの?」

雪歩「………」

真「ボクのこと、覚えていない?ほら、昔、ここで会ったよね」

雪歩「えっと、ひょっとして、あのときの……活発な男の子って」

春香「あー……うん、あれだね、昔に一夏の間遊んだ子が男の子だと思っていたら女の子だったのが後年になってわかる展開ね」

百合子「ベタですね」
406 : 夏の変態大三角形   2021/09/20 20:00:50 ID:OmqHunAlyE
真「そっか……あんまり覚えていなかったかぁ。ボクは忘れたことなんてないんだけど」

春香「ええっ?そ、そんなに?なんかあったっけ?命救ったとかそういうの」

雪歩「そこまでのだったら、覚えているはずだけど……うーん、どうだろう。そもそもが師匠と菊地さん……真さんのお父様が知り合いなんだよね、たしか」

真「えっと……恥ずかしい話だけど、ボクにとっては初恋の相手みたいなものだから」

春香・雪歩・百合子「!?」

真「へへへ……。ずっと会いたかったよ、春香」

春香「私?!」

雪歩・百合子「!??!??」

真「うん。あの頃って、春香、今よりずっと髪が短かったよね。なんだったら今のボクよりさ」

春香「そ、そうだっけ?」

雪歩「料理修行中に火の使い方間違えて、部分的に髪を焦がしちゃったから、その勢いで短くしていたのよ」

百合子「白雪さんは覚えているんですね」

春香「いやぁ、でもさ、だからといって、うん、つまりあれでしょ?私を男の子って勘違いしたってこと?いやいや、名前でわかるじゃん」

雪歩「……師匠はハルって呼んでいたから。私は……今と比べて無口だったからたぶん『春香』とは呼んでいない」

春香「でも、服装が……」

雪歩「この市場に来るのにお洒落してこないでしょう?食材の匂いがうつってもいいような、そして動きやすい恰好で来ていたと思うわよ。それこそ男の子と変わらないような」
407 : 高木の所の飼い犬君   2021/09/20 20:03:09 ID:OmqHunAlyE
春香「そっかぁ。なんかごめんね、真さん。私がこんな可愛い女の子でがっかりしちゃったかなー、あはは」

真「ううん、大丈夫」

春香「え?」

真「変わっていたけれど、ボクは気がついたよ。君が春香だってこと。ああ、春香っていう名前をさ、父さんが後になって教えてくれたんだ、女の子だってこともね」

春香「へ、へぇ」

真「実際に再会してわかった。ボクは今でも、」

雪歩「そうはならんやろ」ズイッ

百合子「白雪さん!?」

雪歩「百歩譲って、そこは私やろがい。唐突なはるまことかなんなん?わりとここまではるゆきも推しているんだが?」

春香「あっ、あーっ、ナンナンで思い出した!えっと、真さん!私たちね、紬ちゃんの紹介なんだ!」
408 : ダーリン   2021/09/20 20:06:01 ID:OmqHunAlyE
真「紬の?」

春香「そう!そのとおり!私たち、例の大会の参加者なんだよ!うん!今は大会に集中したいかなーって!」

真「そっか。ごめんね、ボクとしたことが事を急ぎ過ぎたみたいだね。春香……大会が終わったら、時間を作ってくれるかな?」

春香「えっと、」

雪歩「春香。私たちは家族。何より大切な存在よね?」

春香「えっ、なにどうしたの、雪歩。目が怖いんだけど」

真「雪歩……家族離れもいつかは必要じゃない?」

百合子「あわわわわ、17歳トリオのはずが、修羅場トリオに!?」

春香「は、はいっ、これ!紬ちゃんからの手紙!受け取って!ほら、読んで早く!」

真「………………なるほど、瑠璃色金魚か」

百合子(あれ?私、自己紹介のタイミング、完全に見失った?)
409 : Pくん   2021/09/20 20:08:58 ID:OmqHunAlyE
真「わかった。瑠璃色金魚を用意しよう」

春香「ほんと!? ありがとう、真さん!」

真「真でいいよ、春香」キリッ

春香「う、うん///」ドキッ

雪歩「……………」ギリギリ

百合子「この展開なんなん……」

真「ん、ん。ただし、瑠璃色金魚を売るには条件がある」

雪歩「ねぇ、まさか公私混同しないわよね?」

真「しないさ。紬から聞いたと思うけど、瑠璃色金魚は幻とも言われる魚なんだ。本来はそのすべてが上得意客にのみ売られるものさ。……そんなわけで父さんに確認せずに、というのは実のところまずくもあるんだけど、でも大会で使うんだったら、きっと許してくれると思う。店の宣伝を忘れずに、ね」

春香「うん」

雪歩「店の宣伝……条件はそれだけじゃないんでしょう?」

真「ああ。【A】ってのはどうかな?」

百合子「どひゃぁっ!」

(以下、加筆)
410 : 魔法使いさん   2021/09/20 20:11:18 ID:OmqHunAlyE
無事(?)に真から瑠璃色金魚を得たグリルモワーリルの3人。
会場へと戻る前に、他のお店で瑠璃色金魚と合い、そしてアクアピッツァにうってつけのシーフードを探す。
真のアドバイスもあって、ウドンイカと食用ウミウシを調達した。

百合子「食用ウミウシですか……美味しいんですか、これ」

春香「食用だからね。他のウミウシとの差別化というか、イメージアップを狙ってなのか、アリエルっていう愛称がつけられている種みたい」

百合子「へぇ、リトル・マーメイドですか」

雪歩「お兄様の邪魔をするな!」

百合子「あっ、そっちですか。そっか、ウミウシだからですね」

春香「百合子はウミウシのことを少し、勘違いしていたみたいだ」

雪歩「求婚されるかも」

百合子「いやいや、そんなこと、」

春香「あり得るね。アリエルだけに」

雪歩・百合子「………」

雪歩「百合子、やっておしまい!」

百合子「アラホラ、サッサー!」

春香「甘いっ!」ムニーッ

百合子「はへひふひ(返り討ち)!?」



春香「あと、ウドンイカは最上のものを選べたよ」

雪歩「もがみ?」

百合子「さいじょうです!」
411 : >>410 グリルモワールでした(汗   2021/09/20 20:14:22 ID:OmqHunAlyE
- 特設会場 -

歌織「2チームとも、会場に戻ってきましたね。では、ここからは亜美お嬢様親衛隊が1人で、今回のゲスト審査員の翼ちゃんといっしょに選手たちの料理していく様子を実況解説していきたいと思います」

翼「どうもーっ!伊吹翼でーす♪」

観客「ワァァァアアアアア!!!」

翼「ねぇ、歌織さん。実況解説と言っても、ピザでしょ?生地作って、トッピングして焼くだけじゃないの?」

歌織「あら、そんなのピザ職人たちが聞いたら卒倒しちゃうわ。でも、そうね、わかりやすい部分をまずは見ていきましょうか」

翼「ってことは?」

歌織「各チームがトッピングとして選んだ食材。なかなか珍しいものを選んだみたいだから」



百合子「! 魔導書が強く反応している!? こ、これは―――?」

麗花「ふんふんふーん♪」

雪歩「どうやらあの人が調理しようしている食材みたいね」

春香「でも、あんなの……なかったよね?」

麗花「とれたて♪新鮮♪嬉しいなー♪」

百合子「……もしかして今獲ってきたんじゃ?」

春香「ルール上、ありなんだっけ」

雪歩「制限時間内に戻れるのなら、でしょう。常人じゃ無理よ」


(以下、加筆 勝敗は次パートを予定)
412 : プロデューサー様   2021/09/20 20:16:39 ID:OmqHunAlyE
※【A】真が瑠璃色金魚を売るのに提示した条件は? 文脈どおり、真の個人的感情での条件は非採用 なるべくその日その場でできる勝負や挑戦でお願いします 

※【B】紬と真の関係って?(加筆部分で少し触れる程度かも)

※【C】『フローラ・アラカルト』のアクアピッツァの(瑠璃色金魚に匹敵する)キー食材とは?

※【D】第4のクッキングデバイス ピザ窯以外でお願いします

※「亜美お嬢様親衛隊」というのは仮名です。今後、掘り下げるかは不明

レスの有効期限は9/22 19:59:59まで
清書投下は9/23を予定
何卒ご協力お願いします!
413 : Pはん   2021/09/20 20:41:33 ID:NoxccSmsz.
A ポーカー
B 真の習い事(空手)の元門下生
C キャンディパール
D 施策まな板C-72
414 : 兄ちゃん   2021/09/21 20:12:49 ID:6LvM8cImVw
定期age

少し予定が変わったので清書投下が1日遅れるかもです
ご協力お願いします!
415 : Pしゃん   2021/09/22 02:36:15 ID:ZECZdTbWcg
A:漁師を納得させて見せる(要約:一品作れ)
B:ダンス教室と日舞教室でそれぞれ一緒になった
前者で紬が真に、後者で真が紬に惹きつけられた
C:(天丼)海蛇「ダイヤモンドダイバー」
D:ピッツァを載せる板「蒼い鳥」
416 : 3流プロデューサー   2021/09/24 19:47:28 ID:kyQcOXMelo
定期age……ですけど、今日中に書くつもりが時間とれなくて無理っぽいです
レスもらっているので打ち切りはないです!
というか、展開に詰まっていないし。時間と体力がないだけですし

遅くても9/26の夜には必ず清書投稿します
9月中にRecipe7入りたいんですわ
417 : EL変態   2021/09/24 20:16:49 ID:EWkZ73A98o
頑張れ!燃えろ!
でもピッツァを焦がす展開は勘弁な
418 : プロデューサー   2021/09/27 02:03:47 ID:whcqSDLqtA
疲れて眠っちゃったよ!
今夜か、明日が休みになったので落ち着いて書くかにするよ!
なんもかんも休日出勤が悪いんだよ
419 : der変態   2021/09/28 12:13:02 ID:fhEGJEVAxA
Recipe6partC清書、やっと書けました!
(連投規制もあるから)ゆっくり投下していくよー
420 : 高木の所の飼い犬君   2021/09/28 12:15:22 ID:fhEGJEVAxA
Recipe6partC 清書

菊地市場で再会を果たした菊地真
紬からの手紙を渡して、瑠璃色金魚を売ってもらおうとする雪歩たち。
しかし易々と誰にでも売れないほどに貴重な食材であるらしく、真はある条件を提示してきたのだったが……?


春香「ポ、ポーカー?」

雪歩「席替えの時間始まります」

百合子「冗談のブラフ、視線のフェイク」

真「いや、『POKER POKER』じゃないよ!」

春香「どうしてポーカーなの?」

真「菊地市場の人間にとっては馴染み深いものなんだ。オリジナル柄のトランプだって売っている店があるぐらいさ。異海の生物たちのイラストがプリントされたものとかね」

百合子「へえ、漁師たちが船上で暇つぶしにしてでもいたんでしょうか」

雪歩「トランプといえばMILLION THEATER SEASONだね」

春香「この4人の中だと、雪歩がBRIGHT DIAMONDのメンバーでつい先日、シーズンを締めくくる13人曲である『ダイヤモンド・クラリティ』が実装されたばかりだよ」

百合子「特別ラジオも配信中なんですよね。次のスートではどんなメンバーで、どんな曲になるのか楽しみです!」

真「というわけで宣伝もできたところで、勝負するかい?ルールはわかりやすい、ファイブカード・ドロー形式をとるよ」

雪歩「1回勝てばそれでいいわけ?」

真「ああ、1回でいい。しかも本来のポーカーと違って純粋な役と役の勝負さ」

百合子「相手を降ろさせての勝利がないってことですね。ブラフがない分、駆け引きの要素は薄いですね」
421 : バカP   2021/09/28 12:17:34 ID:fhEGJEVAxA
真「ただし……君たち3人が全員同一役でないといけない」

春香「え?」

雪歩「ふうん。つまり私たちの誰かが真さんに役で勝つのではなくて全員いっしょの役で上回らないといけないわけね」

百合子「たとえば私たちが全員ツーペアで、真さんがワンペア……こうだったらいいわけですね?」

真「そういうこと。ゲーム中の話し合いもなし。カードは裏向きで捨てること」

春香「ねぇ、雪歩。私、よくわからないんだけど、この条件は難しいの?」

雪歩「なんてことないわよ。私たち3人がロイヤルストレートフラッシュを作れば負けっこないもの」

百合子「いやいやいや! 無茶言わないでくださいよ! 0.00015%なんですよ?!」

春香「え?そんなに低いの?」

百合子「いいですか、春香さん。交換しないで、最初に引いたランダム5枚でワンペアができる確率ってのがおよそ40%で、これがツーペアだとどうなるか知っていますか?」

春香「うーん、計算がめんどうだけど、たぶん半分の20%もないんだよね?」

百合子「それどころか5%もないんです!ノーハンド、通称ブタといわれる何の役にもなっていない手札になるのが50%なんですから」

春香「へ、へぇ。でもこれで方針はゲーム前に決まったね」

百合子「どういうことです?」
422 : 魔法使いさん   2021/09/28 12:19:52 ID:fhEGJEVAxA
春香「全員でワンペア狙って、真がブタになるのを待てばいいじゃん」

雪歩「……何回も挑戦させてくれるの?」

真「ああ、いいよ。でも君たちの時間の方が先に尽きるんじゃないかな?」

春香「たしかに食材を集めて会場に戻り、ピザを焼かないといけないから、すぐに勝たないとだね」

百合子(白雪さん、どう思いますか?真さんの余裕な表情)ヒソヒソ

雪歩(真ちゃん、かっこいいですぅ…!)

百合子(そうじゃなくて! 何か裏があるんじゃ……)

雪歩(そうかもね。でもね、百合子。忘れたわけじゃないでしょう?)

百合子(何の話ですか?)

雪歩(私たちが出会えたのはそんな、ちんけな確率の事象じゃないってことよ。何億、何兆どころか、天文学的な数字でさえ計り知れない、世界をまたいで私たちは出会い、家族になった)

百合子(白雪さん……)

雪歩(それに比べれば、こんなの朝飯前よ)グゥ~

百合子(し、白雪さん?)

雪歩(はうっ! ち、ちがうんですぅ!今のはお腹の音じゃなくて、えっと、ほら……むにーっ)

百合子(ひはふひはん!?)

春香(しまらないねー)

真(さっさと始めようか)
423 : 兄(C)   2021/09/28 12:22:04 ID:fhEGJEVAxA
BGM 水瀬伊織 『ロイヤルストレートフラッシュ』

真「デュエル開始!」

手際よく自分自身を含めて皆に5枚配る真

春香「!?」

春香(い、いきなりツーペア揃っている!? なんで!?)

百合子(ブ、ブタです。でも交換すればきっとワンペアぐらいには……!)

雪歩(ぶぅー、ぶぅー)

真「さて、それじゃあ、ボクからいくよ。この2枚を墓地に捨てて、ドローっ!! ふっ……負ける気がしないね」ニコッ

百合子「くっ、さすがは最近フェスが実装された真さん…!」

雪歩「何気にこの中では私だけだよね、フェスがまだなの」

春香「まあ、年末に来るんじゃない?知らんけど」

百合子「ところで、紬さんと真さんはどんな関係なんですか?」

春香「今のところ絡みがあったと思われるのって、ヒーローズ関連だけかな」
424 : Pくん   2021/09/28 12:24:28 ID:fhEGJEVAxA
雪歩「全部のコミュを記憶しているわけでもないから、案外、どこかで共演しているかも」

真「ミリシタの話は一旦おこう!? ボクは昔、あっち(現世)のダンス教室に通っていたことがあるんだよ」

百合子「ダンス教室?」

真「そう。先生が面白い人でね。道場破りってわけじゃないけど、毎月一度は必ず、どこかべつの教室を何人かの生徒と訪れて、技術を学びとるんだ」

春香「それは楽しそうだね!」

雪歩「その訪問先で白石さんと?」

真「そういうこと。紬の日本舞踊は綺麗だったなぁ。立ち居振る舞いからして大和撫子って感じでさ。それで、後で見せることになったボクのダンスに、紬は『舞と云うよりは武 武闘ですね』って言ってきたんだよ」

百合子「ええっ!」

真「紬の舞踊に応えたいと思ってのダンスだったのに、そんな評価されたからついキレちゃってね。それからなんやかんやあって、最後は紬が涙目になっていたよ」

春香「何があったの!?」

雪歩「まこつむですか、大したものですね」

真「閑話休題、勝負を再開しようか」
425 : Pサマ   2021/09/28 12:26:55 ID:fhEGJEVAxA
20分後

百合子「か、勝てない……!」

春香「どうなっているの!?何度やっても真は必ずワンペア以上の役を作ってくるし、私たちの役はいっこうに揃わないし……もしかしてイカサマ!?」

雪歩「………」

真「ひどい言いようだなぁ、春香。ボクはただ自分の力で勝利しているに過ぎないよ?」

百合子「真さんの力――――はっ!? 白雪さん、ひょっとして、これって」

雪歩「スタンド能力……!?」

春香「ええっ、真の異界での能力がトランプに特化したものだって言うの!?」

真「さあ、どうかな、ふふふ」

雪歩「! おそらくこれは……特定条件下での確率操作能力ね。イカサマなんかよりもずっと質が悪いわ」

真「……まいったな、そういうことまで詳しいんだ。というより洞察力か」

百合子「そんな!つまり何度やっても勝利条件を達成できるような結果にならないってことですかーっ!?」
426 : プロデューサーくん   2021/09/28 12:28:52 ID:fhEGJEVAxA
春香「真っ!なんでっ、そこまで……!」

真「改めて言っておくけど私情じゃないよ。この店で、瑠璃色金魚はそれだけ価値のあるものってことだよ。さあ、諦めるかい?」

百合子「白雪さん、このまま続けても時間がなくなる一方ですよ」

雪歩「しかたないわね。こうなれば瑠璃色金魚の代わりに……」




春香「待って、2人とも」

雪歩・百合子「!」

春香「私たち3人の力が合わされば、こんなのどうってことないって」

真「春香……大口叩く君も素敵だけど、自分の置かれた状況を見極められないのはこの先困るよ?」

春香「そのとおりだね。さぁ、もう1回、ゲームといこうよ。見せてあげる、私たち3人の力を!」

雪歩(春香、いったいどうするつもりなの)

百合子(何か作戦が……?仮に能力で対抗しようにも春香さんの能力は身体能力向上……概念干渉に太刀打ちできるわけ…)
427 : 貴殿   2021/09/28 12:30:55 ID:fhEGJEVAxA
真「デュエル開始!ドローっ!」

ゲームが再開され、これまでと同じように配られるカード、各々がたった一度のチェンジに賭ける
しかし実態としては真の能力『絶険、あるいは逃げられぬ恋』によって結果が操作されてしまう

真「春香、ボクの勝ちだ」

勝利を確信した真がそう宣言する。肩をすくめた百合子の隣でそれは起こった。

春香「ああっと、転んじゃったーっ!」

ドンガラガッシャーン!!!!!
春香が盛大に転び(?)、テーブルに置かれた山、雪歩が咄嗟に離した手札、春香が強引に掴むようにして落とした百合子の手札、それらすべてが床へとばらまかれる
が、次の瞬間、春香は倒れきることなしに、39の工程を完了した後、元どおりの体勢に戻った
あたかも何も起きなかったように元の位置に戻されるトランプの山 3人の手札
ぽかんと口を開き、驚きを隠せない真

春香「よっと。ごめん、ごめん。えーっと……真の役は、わぁ!スリーカード!? すごいじゃん!」

真「は、春香、君は今……」

春香「ほら、雪歩、百合子。手札を出しなよ。見せてあげないとね」

百合子「!??! あ、はい。えっと………ストレートです」

雪歩「私も。ねぇ、春香は?」
428 : ダーリン   2021/09/28 12:33:19 ID:fhEGJEVAxA
春香「おおっ!いやぁ、こんな『偶然』って本当に起こるんだね!私もストレート!」

真「春香ァ!!」

春香「もうっ、そんな情熱的に求められても~。ほら、私にはちんちくりんなお姉ちゃんと妄想癖のある妹、それに大型犬みたいな可愛い妹だっているし」

真「待ちなよ、今のこそイカサマだろ!?」

雪歩「どういうこと?うちの春香が何かしたっていうの?」

百合子「だったら説明してください。春香さんが何をどうしたのか」

真「それは………」

真自身、説明しようがなかった。ありのままを伝えるなら、確定したはずの真の勝利が、春香が転んだその瞬間に敗北と変わった
だが、運命変転なんて大層なものじゃない、間違いなく春香が力技でどうにかしたのだ!
残念なことに、その詳細を説明できるだけの力はこの世界の真にはないのだった

真「ぐっ、こんなのって暴力となんら変わらないじゃないか!」

雪歩「認めなさい。私たちはあなたの定めた運命を打ち破り、自分たちの望む新たな運命を切り開いたのだと!」

百合子(白雪さん、べつに何もしていないんじゃ……)

春香(ううん、私が『転ぶ』タイミングに合わせて自分から手札を離してくれたよ)
429 : プロデューサーくん   2021/09/28 12:35:36 ID:fhEGJEVAxA
百合子(白雪さんはあの一瞬で春香さんが何をするか読んだってことですか?)

春香(ま、付き合い長いからね。15年ぐらいかな)

雪歩「約束を果たすのよ。瑠璃色金魚を渡しなさい!」

百合子「めっちゃ目をきらきらさせていません?」

春香「雪歩、真に対してこういう役になるの珍しいからはりきっているんだと思うよ」

百合子「あー……はい、なるほど」





春香「瑠璃色金魚、とったどーーー!!!」

雪歩「やーりぃ!」

真「それ、ボクの台詞!」

百合子「あはは……」


かくして瑠璃色金魚を手に入れた『グリルモワール』3人はその他の食材を調達してから、特設会場へと戻った
430 : 3流プロデューサー   2021/09/28 12:38:28 ID:fhEGJEVAxA
特設会場 
両チームが調理を開始し、歌織と翼がその実況解説を行う

歌織「『フローラ・アラカルト』の北上選手が調理しているあれは―――異海蛇ね」

翼「えー?ウミヘビなんて美味しいんですかー?鰻や穴子とは違うんですよね?」

歌織「そうね。あの種は……間違いなさそうね、ダイヤモンドダイバーと称されるものだわ!」

翼「ダイヤモンドダイバー♢?いかにも深い、深い海にいそうな名前ですね。珍しいんですか?」

歌織「ええ、幼体はかなり珍しいわ。成体にもなると全長7.65メートルもの大きさになって、異海のガーディアンだなんて言われて、異海のダイバーにとっては嫌でも目にする存在になるのよ。食材としては断然、幼体が高級だわ。成体は逆に不味くて食べられないとまで言われるから」

翼「えっと、麗花さんの調理しているのは幼体ですよね?

歌織「ええ……幼体を一匹獲るのに十の命が失われると言われるダイヤモンドダイバー。あれを1人で、しかもこの短時間で調達してきたというのなら、北上選手はかなりの腕前ということになるわね」

翼「ふーん、センパイといい勝負になるかも、なんて。わたしも負けるつもりないですけど!」

歌織「ん?待って、あれは――!」
431 : プロデューサークン   2021/09/28 12:40:54 ID:fhEGJEVAxA
翼「わぁっ!きれい!真珠ですか?あれ?でもピザ生地の上に乗せちゃうのー!?」

歌織「豊川選手が持っているあれは、キャンディパール!小ぶりの種ではあるけれど、きっとピザのトッピングとして相応しいのを市場で選んだのね」

翼「キャンディ?ピザにですかぁ?」

歌織「翼ちゃん、キャンディといっても甘いものだけじゃないわ。あれはむしろ……いえ、これ以上の解説は実食してからね」

翼「えー、もったいぶるんだからー。ん?あれ、ダイヤモンドにパールって……」

歌織「ポケ○ンね。2006年にDS専用ソフトとして発売されたダイヤモンド・パールだけれど、偶然にも今日(9/28)がちょうど15周年なのよね」

翼「2021年11月19日にリメイクが発売予定らしいです!」

歌織「アイドルマスターとしては2006年というと、ラジオ番組の開始だったり、アーケード版の稼働1周年記念イベントの開催だったりがあったのよね」

翼「翌年2007年1月にセンパイが登場したいわゆる箱版が発売されたって聞きました!」
432 : 師匠   2021/09/28 12:44:01 ID:fhEGJEVAxA
春香「ぐぬぬ……なんでこのわた、春香さんを差し置いて向こうがダイヤモンドダイバーを……!」

雪歩「どうどう。ほら、向こうでうとうとしている星梨花ちゃんの顔でも見て癒されなさい」

百合子「天使ですね!って、ほんとに味見役なんだ」

春香「よーしっ、私たちも集めた材料とクッキングデバイスを駆使して、ピザ作りするよ!」

百合子「メインはこの瑠璃色金魚……うわー、何度見ても、この色と輝き、大きさは私が知っている金魚じゃないです!」

春香「そしてウドンイカとウミウシ(アリエル)、よし!これだけの食材が揃ったアクアピッツァなら楽勝だね!」

雪歩「プレアデスから貰った異界チーズもこんなところで活かされるとはね。あとは……あれね」

百合子「ええ。まさかあの時あの人たちにもらったあれが、ふふっ、これも運命ですね」

春香「え、なにそれ?粉……?私、知らないんだけど!」

雪歩「慌てなくていいわ。すぐにわかるわ」

春香「えー! 雪歩様はいけずです♡」

雪歩「その低クオリティのモノマネ、二度としないで」

春香「はい」
433 : Pくん   2021/09/28 12:47:18 ID:fhEGJEVAxA
百合子「ピザ窯は結局、会場に用意されていましたね。えっと、白雪さん、プレートは本当にこれを使うんですか?」

春香「!! 雪歩、これを持ってきていたの? お題がピザにでもならなきゃ、見栄えはともかく、効果はあんまり発揮されないやつだよね?」

雪歩「ええ、出発前に荷物整理をしていたら声が聞こえたのよ」

百合子「お皿のですか?」

雪歩「はっきりとじゃないわよ?でも、そうね……あの店には久しく使われていないクッキングデバイス、それにまだ私たちが扱えないようなものも眠っているの。そのなかで、この『蒼い鳥』が呼びかけてきた、そんな気がしたのよ」

百合子「私と魔導書の関係に近いってことですか」

春香「どうだろう。雪歩ってほら、ポエマー(笑)だから、普段からいろいろ声聞いているみたいだよ」

雪歩「………」ムニーッ

百合子「だはら、はんへ、わはひはんへすかー!!(だから、なんで私なんですかー)」


次回、それぞれのピザ完成!そして実食審査へ……!
434 : 我が下僕   2021/09/28 12:52:16 ID:fhEGJEVAxA
審査とその結果は、Recipe7partAとして扱うか、Recipe6partDとして扱うかは考え中
どちらにしても最速で今夜、予定では明日の朝、遅くとも9/30の夜には書き切るつもりです

ご意見・ご想像募集中
最後までお付き合いいたただけると嬉しいです
最終話のRecipe8まで駆けていくぞー!
安価も出していくので何卒ご協力お願いします!
435 : Pサン   2021/09/28 19:56:38 ID:bjPArkZHdk
お疲れ様です
まあ焦らずにいきましょう
8月半ばから今日までぶっ通しでも何とかなりますから
(大丈夫とは言ってない)
436 : P君   2021/09/28 22:19:53 ID:fhEGJEVAxA
Recipe6partD 投下していきます!

令嬢・亜美が主催する異界での料理大会 
本選1回戦は菊地市場近くの特設会場にて行われていた
箱崎星梨花・北上麗花・豊川風花、3人の花の乙女によって構成される『フローラ・アラカルト』は、異海のガーディアンにして鰻や穴子の味を悠々と超越する比類なきシーフード・異海蛇、ダイヤモンドダイバーをメイントッピングとするピザを焼き上げる!
一方で、萩原雪歩・天海春香・七尾百合子、『YUKIHO'Sキッチン』で暮らす3人は『グリルモワール』として、瑠璃色金魚をメイン食材として他にウドンイカ、食用ウミウシ(アリエル)をトッピングしたピザを作る!
審査員を務めるのは、富豪とつながりのある財界や法曹界の大物に加えて、司会も担当する桜守のご令嬢・歌織、そして亜美令嬢の親衛隊の1人である伊吹翼であった。


星梨花「これで完成ですっ!」

麗花「みんなに食べてもらうために切り分けないとね♪ピザカッターはドコドコ?」

風花「ミ、ミツケター!」


歌織「『フローラ・アラカルト』のピザが今、できあがったようです!」

翼「わたし、もう腹ペコですよー」

他の審査員たちもうんうんと頷く。

歌織「確認したところ、『グリルモワール』のピザはもう少しだけ時間がいるとのこと。それでは、まずは『フローラ・アラカルト』のピザから実食といきましょう♪」

翼「やったー♪」

観客「ワァァアアアアアアア!!」
437 : Pたん   2021/09/28 22:22:20 ID:fhEGJEVAxA
麗花「歌織さん、どこを食べたいですか?」

歌織「え?ど、どこって?」

麗花「ふつうに切り分けるのも面白くないなーって。いっそ、真ん中から小さな丸を取り出しちゃいます?」

歌織「う、ううん。麗花ちゃん、ここはアドリブを入れずに扇形を作るように切り分けてくれるかしら?」

麗花「はいはーい♪」

風花「これが翼ちゃんの分、っと。熱いから気をつけてね」

翼「ありがとうございまーす!わぁっ、おいしそう!」


歌織・翼「はむっ」



歌織「だ、だいばぁぁぁあああああああっっ!!!」

観客「!?」
438 : 仕掛け人さま   2021/09/28 22:24:29 ID:fhEGJEVAxA
歌織「すごい、想像以上だわ!焼き上がった海蛇の濃厚な、いえっ、なんて深みのある味なの!?まさに深海の神秘よ!言うなれば、深層マーメイド!!」

春香「曲変わっているやないかーい!」

雪歩「春香、横槍を入れるのはやめなさい」

百合子「あはは……」

歌織「そしてこのキャンディパール……!思ったとおり、キャンディと言いつつもこのピリッとした辛みと硬すぎない絶妙な歯ごたえ、やるわね」

星梨花「ふふっ、実はこちらも用意しているんですよ」

春香「あ、あれは!」

百合子「知っているんですか、春香さん!?」

春香「いや、知らない」

百合子「ズコー!」

雪歩「なに、くだらない掛け合いしているのよ。ほら、私たちのピザ、もう少しよ」
439 : Pーさん   2021/09/28 22:26:00 ID:fhEGJEVAxA
星梨花「じゃーん!追加トッピング用、ピザソースです!」

歌織「ええっ!?ここからさらに!?」

風花「タバスコやクラッシュドレッドペッパーもいいですけど、これはもっとすごいですよ」

麗花「さぁ、どうぞお試しあれ♪」

歌織「ぴっつぁぁぁあああああああああああんん♡♡♡」

百合子「あの歌織さんがあんなにとろけた表情に!?」

観客「うぉおおおおおお!!!!!!!!」




歌織「ねぇ、翼ちゃんはどう――――!?」

観客「!!」
440 : Pはん   2021/09/28 22:28:42 ID:fhEGJEVAxA
雪歩「ええっ!?あれってサニー・オーシャン!?いつの間に着替えたの!?」

春香「期間限定ガシャ【水上のユーフォリア 伊吹翼】の衣装だってぇ!?」

百合子「覚醒前イラストには私も写り込んでいますよ!」

翼「はっ!あまりの美味しさにいつの間にか水着衣装に着替えちゃっていました☆」

観客「うぉおおおおおおおお!!!!」

雪歩「ひぃっ!! あんなの14歳の身体つきじゃないですぅ!!おかしいですぅ!」

歌織「まさに体を張ったリアクションね。ふぅ……これは早くも勝者が決まったかしら」

観客「おおおおおおお!!」

441 : プロヴァンスの風   2021/09/28 22:30:51 ID:fhEGJEVAxA
春香「ちょーっと、待ったぁ!!」

百合子「まだ私たちのピザを食べていないじゃないですか!」

雪歩「たった今、完成しましたよ。最高の1枚ができたのでぜひお召し上がりください!」

春香「SSR確定ですよ!SSR確定!」

歌織「いいでしょう。でもその前に1つ気になるのだけれど……いいかしら?」

百合子「なんですか」

歌織「あなたたちのピザ、窯から取り出したばかりなのに、ちっともアツアツなふうじゃないけど……どうして?」

星梨花「あれ?本当ですね。まるで……」

風花「焼いていないみたいですね、あれじゃ」

麗花「あの板が関係しているんじゃないかな?」

星梨花・風花「へ?」

翼「ピザの下に敷かれた蒼い板……?綺麗だけれど、なに、これは……」

歌織「困ったわね。私でも知らないわ」

雪歩「食べてみてください。それですべてがわかりますから」

歌織「え、ええ。では、」

歌織・翼「んむっ」
442 : ハニー   2021/09/28 22:33:24 ID:fhEGJEVAxA
翼「おぉーーーーーしゃーーーーーーんんんんっっ!!!」

歌織「な、なんなん!? このピザは!? 本当にピザなの!?冷めたピザじゃない、はじめから冷たい!?というよりこれは清涼感!?ピザなのに?!」

雪歩「瑠璃色金魚の繊細な味を最大限に活かすには刺身が一番、ピザの具材になんてのは実は邪道……でも、それを覆す!!」

春香「ピザ板に使った『蒼い鳥』はヒートを加えれば逆にクールさが増す」

百合子「泣くことならたやすいけれど 悲しみには流されない」

雪歩「恋したこと この別れさえ」

雪歩・春香・百合子「選んだのは自分だから!!!」

翼「は、はい」

歌織「このウドンイカ、本当にうどんみたいだわ!」ズルズル

翼「まつりさんをアリエルに配役したのは神だと思います」ウミウシ

歌織「美味しいわ。うーん、でもこれじゃ『フローラ・アラカルト』と甲乙つけ難いわね」

翼「悩んじゃいますね」

雪歩「まだ終わっていないわ」

翼・歌織「!?」

雪歩「百合子、例のものを」

百合子「かしこまり!」
443 : おにいちゃん   2021/09/28 22:35:24 ID:fhEGJEVAxA
歌織「な、なにその粉は……」

翼「怪しいおクスリじゃないですよね?」

春香「ちがうよ!! ちがう、はず。結局、何なのか教えてもらっていないけど」

百合子「ピザにパラパラっと」

歌織「ペッパー?でも普通のものなら、味なんて大して変わることは……」


麗花「あちゃー……」

風花「麗花ちゃん?」

麗花「この勝負、私たちの負けかもしれません」

星梨花「ええっ、ど、どういうことですか!?」

麗花「あの粉の正体、私、心当たりがあるんです」

風花「そうなの?いったいあの粉は……?」

麗花「あれはどちらかといえば私たち『フローラ・アラカルト』が使うようなものなんです。うーん、これはやられちゃったなー」

星梨花「『グリルモワール』さんたちのメイン食材は瑠璃色金魚……ああっ!まさかあれって―――」


歌織・翼「!!」モグモグ
444 : 師匠   2021/09/28 22:37:25 ID:fhEGJEVAxA
♪~ ♪~

春香「え、このイントロって……」

雪歩「予選を終えてモブ子さんたちから百合子がもらった謎の粉――――それは、異界花菖蒲を乾燥させて粉末状にしたものよ!」

春香「どひゃぁあっ!」ドンガラガッシャーン

百合子「とりあえず異界ってつければ食用に適するってことでお願いします!」

歌織・翼「瑠璃色金魚は恋焦がれる 凛と咲き誇る花菖蒲~♪」

風花「そ、そんな! 歌織さんと翼ちゃんのデュオカバー!?贅沢すぎるわ!」

星梨花「あわわわわわわ」

しばし清聴する雪歩たち。と、盛り上がる観客―――!



歌織・翼「私きっと~♪」

観客「ワァアアアアアア!!!!!!」
445 : Pたん   2021/09/28 22:39:45 ID:fhEGJEVAxA
雪歩「このピザは普通のピザとはちがう、挑戦的なピザ」

百合子「どんな大海原でもものともせずに突き進む、たとえ嵐であっても!」

雪歩・百合子「これが私たちのピザ、TrySail!」

星梨花「ええーっ!?」

春香「いいのこれ!?って、『瑠璃色金魚と花菖蒲』は!?」

歌織「……どうやら勝負は決まったようね」

翼「はい。たしかに『フローラ・アラカルト』のダイヤモンドパールピザも美味しかったけれど……」

歌織の合図で審査員たちの評価点が出される



歌織「――――ご覧のとおり、33-4でこの勝負、『グリルモワール』の勝利です!」

観客「ワァァアアアアアアアアアアア!!!」

星梨花「そんな~」

風花「お嬢様……」

麗花「うーん、やっぱり開始前に料理をできない体にしておけば……」

風花「そ、それはダメですー!」
446 : おやぶん   2021/09/28 22:42:06 ID:fhEGJEVAxA
春香「しゃぁっ!1回戦突破!」

雪歩「さあ、行くわよ」

百合子「へ?どこへですか、勝利の余韻に浸ることなしに……あっ、打ち上げですか?」

春香「雪歩、歌織さんに何を訊いていたの?」

雪歩「『HOTDOGS』の1回戦の試合会場」

百合子「!」

雪歩「時間をずらしてはじまるから、観に行けるわよ」

春香「そっか。実力を見るのはもちろんだけど……今度こそ可憐ちゃんと会えるよね?」

雪歩「うん……きっと。それにリーダーにもついに会えるかもしれないわ。そういうわけで、百合子。ぼさっとしていないで、移動の準備よ」

百合子「は、はい!」


かくして本選1回戦を突破した『グリルモワール』の3人
海美たち『HOTDOGS』の1回戦を見学しに行くことにしたのだったが……?


Recipe7につづく
447 : ぷろでゅーしゃー   2021/09/28 22:46:15 ID:fhEGJEVAxA
Recipe7partA下書きは10/1前後に投下予定です
シスター服を着た病み雪歩が巨大ピザカッター(チェーンソー)振り回す展開も考えましたがネタが伝わりにくすぎるのでやめました

書いている期間が長くなると書いているほうも忘れている設定が少なくなくて、補完もしていけたらいいなーって思います
何卒最後までご協力お願いします!

画像は使いどころがなくなってしまった風花さん(キング)スクショ

448 : プロデューサーちゃん   2021/10/03 21:25:40 ID:sheEcPG/Ls
おさらいからはじめるよー

765プロ劇場ドラマ第4弾『YUKIHO'Sキッチンへようこそ』

これまでのあらすじ①
空想文学少女・七尾百合子は古書店巡りを趣味としていた。ある日、珍しい本を所蔵している図書館の噂を誰かから耳にした百合子はそこを訪れる。
記憶はそこから既に曖昧だ。一体誰から?どこにその図書館は存在したのか……。明らかなのは、百合子がその図書館訪問によって、元いた世界を追放されてしまったということ。
その追放は幻とされる料理魔法に関わる魔導書との契約による対価ということであった。
不幸中の幸いにも、百合子が飛ばされた先の異世界で最初に出会ったのは親切で美しい2人の少女だった。百合子は彼女たちと共に暮らすことに。
彼女たち、雪歩と春香もまた別の異世界から3人で移住してきたのだった。今は共にいない少女・可憐、そして別離のきっかけをつくったという少女・海美、それから雪歩たちを終末を迎えんとする異世界からこちら(現世)へと救い出した「師匠」―――。
雪歩と春香に家族とみなされ、愛されてなお、百合子は2人に確かめていないことが多くある。知らない過去がある。
百合子が知っているのは、雪歩と春香がハザマと言われる料理人、すなわち現世と異界―――現世と地続きでありながらも現世のあらゆる原則から外れた要素で構築された世界(≠異世界)―――をまたにかける特異な存在であること。
そして百合子が契約した魔導書は彼女たちの役に立つという事実だった。
449 : そなた   2021/10/03 21:28:17 ID:sheEcPG/Ls
これまでのあらすじ②
雪歩が『YUKIHO'Sキッチン』という安直な名前のお店を、春香と百合子に助けられながら経営していた、そんなある日の夜。
可愛い妹分の高槻やよいからある情報を入手する。可憐と海美とあともう一人によって構成されるフリーのハザマユニット『HOTDOGS』が動き出した……!
彼女たちの狙いははっきりとはわからないが、雪歩と春香が知るところには、世界を揺るがるほどの力をもたらすオトメティックパワー、それを得るための料理作りに本格的に着手し始めたのだという。
やよいの情報は、凄腕の情報屋・プレアデスからのものらしい。雪歩たちはさっそくコンタクトをとり、可憐たちがある料理大会に出場するのを知る……。
おそらくはその賞品こそがオトメティックパワー増大のアイテムないしその達成に欠かせない何かなのだと見当をつける3人。
かくして雪歩たちはしかるべき準備を終え、ハザマユニット『グリルモワール』として大会に出場することに。
予選を勝ち抜き、本選に出場した雪歩たちは1回戦で箱崎星梨花をリーダーとする『フローラ・アラカルト』を瑠璃色金魚を使ったアクアピッツァで打ち破り、2回戦進出を決めたのだった。
そして今、雪歩たち3人は『HOTDOGS』の試合を観戦しに向かうところだったのだが……?
450 : ダーリン   2021/10/03 21:30:18 ID:sheEcPG/Ls
Recipe7partA 下書き

百合子「こ、ここが『HOTDOGS』たちの一回戦試合会場?」

春香「私たちが海の幸で勝負だったのに対して、こっちは……森?」

雪歩「山の幸は私たちが予選でもう消化したわけだけれど、うーん……この森も例の富豪の息がかかっているのかしらね」

百合子「平地と山地だと同じような木々ある自然の中でも、採取できるものは違いますね。それに生息する魔物たちだって」

雪歩「ええ、そのとおりだわ。既に食材の調達が始まっているみたいね」

春香「両チームとも戻って来るには時間かかるよね。森にカメラがあって、各々がどうしているかわかるわけでもないかぁ」

百合子「……暇ですね」

雪歩「観客たちは何をして暇をつぶしているのかしら。というか、私たちのときもこんな感じだった?」

百合子「深く考えたらダメな気がしますね」

春香「大会の設定ガバガバじゃねぇか!って突っ込まれても無視を決め込まなきゃね」

雪歩「しかたないわね。暇つぶしに百合子のほっぺたでもむにりましょうか」

百合子「なんで!?」
451 : Pサン   2021/10/03 21:32:35 ID:sheEcPG/Ls
そんなこんなでグリルモワールの3人が戯れに興じているうちに時間が経ち……
森から誰かがふらりと帰ってきたのだった。

春香「あれは――――」

雪歩「……高坂海美」

百合子「あれっ?1人だけ?も、もしかして他の2人は……」

海美「あ!おーい、雪歩さーん、春香さーん!」

百合子「ぶんぶんと手を振りながら、こっち来ますけど?」

雪歩「あの様子じゃ、他の2人に森で何かあったわけではないみたいね」

春香「ちょっと心配した?」

雪歩「……べつに」

審査員たちは海美の行動を制止することはなかった。雪歩たちが彼女を手助けするような素振りやその逆の態度をとりでもすれば別だろうが。
客席スペースと会場の境界部で雪歩たちは話す。

海美「3人とも!私の活躍を観に来てくれたんだーっ!んんーっ、嬉しいよーっ!」

百合子(出たーっ!ふんふんする海美さん!このモーション、全員に実装してほしい!)

雪歩「ちがうわ。可憐ちゃんはどこ?」

海美「もう、雪歩さんそればっかり。いいかげん、妹離れしないとだよ?」

雪歩「この……っ!」
452 : 彦デューサー   2021/10/03 21:35:12 ID:sheEcPG/Ls
春香「雪歩、ステイ。……ねぇ、海美ちゃん。ずいぶんと余裕があるみたいだけど、大丈夫なの?」

海美「うん♪ ほら、こーんなにいい食材揃えちゃったーっ!」

百合子「わっ、リュックのなかに食材がいっぱいいっぱいですね」

春香「百合子ちゃん、凝」

百合子「へ? あ、はい。むむむーっ………え!?こんなに良質な食材なんですか!?」

雪歩「さすが『瞳の中のシリウス』」

海美「それ、雪歩さんが勝手に言っているだけだよね?」

百合子「?? ひ、瞳の?」

春香「『瞳の中のシリウス』だよ。海美ちゃんの持つ素材の目利き能力のこと。勝手に雪歩が命名したの、能力としてね。まぁ、わからなくもないよ。この私でも食材の種類によっては、海美ちゃんの目利きにはかなわないからね」

百合子「へぇ……かっこいいですね!」

春香「え?」

雪歩「でしょ?百合子にはこのセンス、わかると思ったわ。春香や海美はそのあたり弱いからね」

春香・海美「ええー……」

雪歩「で?もしかしなくても可憐ちゃんはいないわけ?あなたたちのリーダーは?」
453 : ぷろでゅーしゃー   2021/10/03 21:38:03 ID:sheEcPG/Ls
海美「いないよ?この1回戦は私だけなんだー♪」

百合子「はい?」

春香「このSSでの海美ちゃんの初登場シーン読み返してみると、もっとクールな雰囲気だったけど、原作寄りになったのね」

雪歩「それ今言うこと?」

百合子「えっと、海美さん1人で戦う気なんですか?」

海美「うん!任されたの!」

雪歩「第2のスキル、『灼熱少女』ね。大したものだわ」

百合子「………春香さん」

春香「ん、ん。ようするにスタミナお化けってこと。海美ちゃんにかかれば、1人でどうにかなる……ってことなんじゃないかな」

百合子「スタミナとかそういう問題じゃないような……」

海美「あ、さすがにそろそろ調理場につかないと怒られそう。じゃあ、雪歩さん、そこで私の活躍ぶりをちゃんと見ていてね」

そう言うと、海美はスキップしながら調理場へと向かうのだった。
重い荷物を背負っているのに軽い足取り、そして綺麗な姿勢。
日々の鍛錬の賜物といったところだろう。
454 : 下僕   2021/10/03 21:41:13 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「帰ろうかしら」

春香「馬鹿言わないで、雪歩。いい?ここで海美ちゃんの成長ぶりを確認しておかないと、戦う時苦労するよ」

雪歩「うっ……」

百合子「そうですよ、白雪さん。事前に敵情報を把握しないでどうこうできるのはイージーモードのときだけですからね。なんでしたら、イージーモードに見せかけたハードモードとかありますから」

雪歩「ところで、海美の相手は誰なの?」

春香「早い話、モブ」

百合子「身も蓋もない!」

雪歩「にしては、どうも異様ななりをしているというか……ねぇ、あれよね、今ちょうど森から帰ってきた……」

百合子「!? え、相手の選手たち、どこからどう見ても―――」

春香「チュパカブラ!?」

会場に姿を見せたのは確かにチュパカブラ3匹であった。
が、野生の低位な種と違うのは一見してわかる。まず彼らは服を着ている。
3人のうち2人が紳士服で残りの1人が婦人服であった。
しかも上等な代物である。さらに言うなら、森から帰ってきたはずであるのに、海美と同様に汚れらしい汚れはない。
つまり、と雪歩たちは推察する。彼らもまたその道のプロフェッショナルであり、今しがた森にて食材調達をきっちりと済ませてきたのだと。
455 : プロデューサー   2021/10/03 21:43:17 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「高位チュパカブラ……人間との取引を行っているだとか、対等に振る舞っている種がいるだとか、噂には聞いたことがあったけれどまさかお目にかかれるなんてね」

春香「姿勢からして、海美ちゃんにはかなわなくとも、猫背ってわけでもないし、しゃきっとしているのがかえって不気味だよ」

百合子「チュパカブラの料理人たち、いったいどんな料理を作るんだろう」

雪歩「! そんなことより高坂海美を見なさい」

百合子「え?」

雪歩「出るわよ。私の見立てが正しいならば、あの技を、第3のスキルをあの子は完成させたに違いないわ」

百合子「第3のスキル?」

春香「海美ちゃん……大量の食材を前に、包丁ひとつ。えっと、あの雰囲気は調理を始めるぞーっていうよりもまるで観客たちにこれからパフォーマンスを見せつけるような……」

百合子「パフォーマンス……パフォーマー……performer?あっ!」

海美「On・The・Wave!!」

溌剌とした掛け声
野菜も肉も何もかも、海美の前で低く宙に浮いたかと思えば、次の瞬間には切り刻まれ、そして適切な器へと落ちていく
それはあたかも魔法使いの業、いや、そうではない
圧倒的な技術が見せる卓越したパフォーマンス
審査員含め会場全体が海美の虜となる―――起こっている事象の細部をその目で追い切れなくとも、彼女の包丁捌きが超人的であるのは紛れもない事実であった
456 : 3流プロデューサー   2021/10/03 21:46:31 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「あれが『絶対的performer』!!いえ、むしろあの包丁さばきをして命名するなら、『miraclesonic☆expassion』……!!」

春香「ミラソニ……たしかにかつて海美ちゃんはああいった技術を私たちといっしょに磨いていたけど……まさかあれほどまで成長しているなんて」

雪歩「1秒間に39回の斬撃。瑞希ちゃんと桃子ちゃんも引くぐらいのCut. Cut. Cut.ね」

百合子「髪の毛を切るのといっしょにするのはどうかと……って、それよりも春香さん!」

春香「え?なにどうしたの?お手洗い?」

雪歩「はぁ……間が悪いわね。1人でいける?手伝おうか?」

百合子「ち、違いますよ!今、言いましたよね、海美さんがあの技術を磨いていたって、春香さんたちといっしょに」

春香「うん」

百合子「あの、もしかして海美さんはもともと『YUKIHO'Sキッチン』の一員だったんですか!?」

雪歩「そういえば説明していなかったわね」

百合子「じゃあ、やっぱり……?可憐さんを引き抜いた風なことしか聞いていなかったので、私はてっきり海美さんは初めから完全に部外者かと……あ、いや、そうなるとああも親しげな様子も変かぁ」

春香「短い間だったけれど、海美ちゃんは私たち3人と共にあの場所で師匠の手ほどきを受けたハザマだよ」

百合子「そうだったんですね……」

雪歩「可憐ちゃんをかどわかすのみならず、師匠との長いおわかれのきっかけを作った張本人であるのは間違いないわよ」

春香「雪歩、でもさ、あれは」

雪歩「………」

百合子「白雪さん……」
457 : ごしゅPさま   2021/10/03 21:49:52 ID:sheEcPG/Ls
気がつけば『HOTDOGS』とユニット名すら知ることのなかったチュパカブラたちの勝負は決着がついていた
満場一致で高坂海美の勝利ッ!!
春香たちはその料理を口にすることはなかったが、彼女の作ったそれが、あのアクアピッツァと同等かそれ以上のオーラを纏ったのを確認した。
料理の出来は単純な足し算ということはないが、しかしこの海美に加えて、可憐が、そしてまだ見ぬリーダーが自分たちの前に立ちはだかるのを考えると、不安にならずにいられない百合子だった。



春香「というわけで、次の相手。2回戦にして準決勝の相手が『HOTDOGS』だよ」

百合子「ええっ!? こういうのって決勝戦で戦うんじゃないですかぁ!?」

雪歩「トーナメント表に文句を言ってもしかたないわ」

百合子「そんな、私……」

春香「自信ない?」

百合子「だって、あんなスキルを見せられたら……!『フローラ・アラカルト』のときはそういうのなかったのに」

雪歩「2回戦は3日後。できることはすべてやっておきましょう」
458 : Pチャン   2021/10/03 21:52:42 ID:sheEcPG/Ls
春香「……おっほん。あー……それなんだけどさ」

雪歩「? どうしたの、春香」

春香「私、ちょっと修行にいってくる」

雪歩「そう。いってらっしゃい」

百合子「えええええ!??? ま、待ってくださいよ!急に何なんですかぁ!?」

春香「あてはあるんだ。けれど、雪歩と百合子ちゃんには適さない」

雪歩「ようは春香の秘奥義習得イベントよ。百合子、ここは春香に任せておきなさい」

百合子「えぇ……」

春香「ありがと、雪歩。私、ビッグになって帰ってくるから!」

雪歩「何かあったときに駆けつけられないのもあれだから、どこでどうするか教えてくれる?」

春香「うん。あのね、【A】だよ」

百合子「どひゃぁっ!」
459 : せんせぇ   2021/10/03 21:55:22 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「百合子、私たちは私たちでしないといけないことがあるわ」

百合子「へ?」

雪歩「【B】に行くわよ。『HOTDOGS』に勝つ方法だなんて小さいこと言わずに、最高の料理を作るためにね」

百合子「でもそんな一朝一夕では……」

雪歩「わかっているわよ。けれど、私が思うに、百合子と魔導書はもう少しで次のステップにいける気がするの」

百合子「次のステップ?」

雪歩「そう。言ってしまえば覚醒。感じるわ、百合子と魔導書のリンクがこれまでよりも深く強くなっているのを」

百合子「白雪さん……。わ、私―――なれますか?あの海美さんや他のまだ見ぬ2人以上のハザマに、愛と希望を届ける料理人に!」
460 : 師匠   2021/10/03 21:58:11 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「愛と希望というより、そう、愛と情熱ね」

百合子「愛と情熱……あっ、それって」

雪歩「うん。『深紅のパシオン』だよ」

春香「現行イベントぉっ!!」

百合子「シンクのパシオン……流し台でオーレ!ってことですね」

春香「どういうこと!?」

雪歩「そうと決まれば行動開始!グリルモワール、ファイトー……」

春香・雪歩・百合子「おーーー!!!」


Recipe7partBにつづく
461 : プロちゃん   2021/10/03 22:02:38 ID:sheEcPG/Ls
下書きとしましたがpartAはこれで清書扱いとして、partBのための安価とりますね

※【A】春香が行う修行内容 おおよその行き先だけでも可
※【ID判定①】春香の修行にて登場するアイドル(未登場アイドル限定)
※【B】雪歩と百合子が行う修行内容 おおよその行き先だけでも可
※【C】雪歩と百合子の修行にて登場するアイドル(登場済みの風花を含めたチカアモメンバーから1人のみ選択 同数票ならIDに含まれる数字で判定)
※【ID判定②・③】2回戦の審査員ふたり(未登場アイドル限定)

レスの有効期限:10/6 18:59:59まで

2回戦の課題料理や『HOTDOGS』リーダーの安価はまた後ほど
修行内容については習得するスキルの名称や詳細を書いてくださってもかまいません
相変わらず採用は保証できませんけれど

レスの有効期限は作っておきますが、10月は多忙なので更新不定期になりそうです
何卒ご協力、最後までお付き合いお願いします!
打ち切りは避けたい所存です(汗
462 : ごしゅPさま   2021/10/03 22:18:21 ID:zOjx9O0.Qg
A YUKIHO’Sキッチン地下室で秘奥義『LEGEND GIRL』を習得
B 菊地市場で利き異界食材1,000本ノック
C 紗代子
463 : Pちゃん   2021/10/03 22:43:04 ID:4.6lhdrdAg
Aメンタルとタイムのルーム
B魔導書最初のを手に入れた”場所”
C千鶴
464 : Pさん   2021/10/06 19:17:29 ID:yQCUk1rLkk
遅れてしまいました…もし許されるなら
A:滝に打たれる(そして可憐と鉢合わせ)
B:魔導書と邂逅った場所、そして現在のキッチンへ辿り着くまでのルート
C:紗代子
465 : ハニー   2021/10/06 20:40:37 ID:W59eMxn88E
レスありがとうございました!

>>464
まだ一文字も書いていないので問題ないですよ。いや、書いていないのは問題か……
明後日の夜までに書いて投下するつもりです

ID判定①(春香が修行先で会う人物)
zOjx9O0.Qg→[z]=百合子→[O]=風花→[j]=あずさ

ID判定②・③(準決勝審査員)
4.6lhdrdAg →[l]=真美
yQCUk1rLkk →[y]=ロコ→[Q]=のり子

多数決判定(百合子・雪歩が修行先で出会う人物)
=紗代子
>>464がなくても、462と463のID上で左から読んで最初に現れる数字の大小での判定で、紗代子となる
466 : P君   2021/10/08 20:25:19 ID:16JJtS.I9U
Recipe7partB投下していくよー

異界令嬢・亜美の主催する料理大会、『HOTDOGS』の1回戦の相手は、高位チュパカブラたち3匹の料理ユニットだった。
HD側はなんとぉ!海美1人だけ。彼女が雪歩たちに話したところによれば、1回戦は彼女ひとりで問題ないとのこと。
結果として、海美の言葉は正しく、彼女の有する複数のスキル(雪歩命名)、すなわち『瞳の中のシリウス』『灼熱少女』『miraclesonic☆expassion』によってチュパカブラたちはとくに調理・実食描写もなく完敗するのだった。
そうして百合子が春香と雪歩から聞かされたのは、かつて海美もまた可憐と同じく現『YUKIHO'Sキッチン』の一員であったという過去……。
師匠を含めた5人の過去にいったい何があったのか。ここ(Recipe7)まで引っ張っておいてなんだが、べつにそんな大した話はない気もするのだった。

海美の成長ぶりに自分の弱さを痛感した春香は修行を決意する。
雪歩は春香を信じて送り出すとともに、不安がる百合子ととある場所に行くことに――――?
467 : Pしゃん   2021/10/08 20:29:04 ID:16JJtS.I9U
- 異界商店街(旧・地獄街) -

活気溢れるメインストリートから外れた細い脇道にて

春香「………やっぱり。いてくれると思いました。占い師さん」

??「ふふっ、ごきげんよう~。あの日、言ったとおりね?」


『YUKIHO'Sキッチン』に導かれる一般人のための料理、その材料の大半は表の「昇天街」で春香が調達する。が、時折、そこでは不充分と判断した春香はこちらの商店街に足を運んでいる。
言うまでもなく、異界食材の目利きの向上という目的もある。調理を実際に担当する雪歩、つまりは天性のハザマである彼女のパートナーであるためには、それ相応の知識と食材選びの経験が必要なのだった。
料理大会1カ月以上前のことになる。異界商店街にて買い出しを済ませた春香は普段はのぞくことさえない脇道の奥から異様な気配を感じた。
そうだ、異様な気配だ。しかし、それは妖しげでありながらも危険というより魅惑的な、いや、だからこそ危険とも言える……春香の足を止めるのに十分な非日常を持つ気配だった。
導かれていると感じた春香はその脇道に入って、1人の占い師に出会った。「うらないでおもてなし」と書かれた看板を出していたから、占い師なのだと思う。
SHSで待望のロングヘアーが復活したその占い師は、占ってくれるようにお願いしてきた春香に言った。
「今はそのときじゃないわ。そうね……39日後、また会いましょう。そのとき、あなたは私を必要としているはずだわ~」
予想外の返答に春香がどう応じたらいいか迷っていると、その豊満なボディをした占い師は春香の持つ買い物袋を指差した。
468 : 変態インザカントリー   2021/10/08 20:34:36 ID:16JJtS.I9U
「対価はそうね、そのゴージャスセレブプリンひとつでどうかしら?」
春香は驚いた。たしかにその日、その買い物袋には3つのゴージャスセレブプリンが入っていたのだ。しかし決して透明な袋というわけではないし、密封されているから可憐でもなければ匂いでなんて……。
その歌が上手そうな占い師に凄味を覚えた春香は、百合子の分のプリンを対価として渡した。
「39日後なんて、もしかしたら忘れているかもしれません」と言う春香に、そのテレポート能力でも持っていそうな占い師は「ううん、それは大丈夫。あなたは必ず思い出すことになる。私の導きが必要になる事態に直面するわよ~」と、どたぷんとした口調で言うのだった。

かくして39日後、料理大会準決勝前に春香はその占い師と再び相見えた。


春香「ん、ん。よければお名前を教えてもらっても?」

??「そうね……せっかくだからあなたには教えておこうかしら。私はアズール・ミューラー。あずさと呼んでもらえるかしら」

春香「あずささん、ですね。わかりました」

あずさ「あなたは?」

春香「私は春香。天海春香です。ご存知、アイドルマスターの顔です」ドヤァ
469 : P様   2021/10/08 20:37:58 ID:16JJtS.I9U
あずさ「そう……。それでは占いましょうか。対価は既にもらっているわ」

春香「はい。えっと、何から説明すれば……」

あずさ「説明なんて不要よ。あなたの置かれている状況の詳細を私が知っているか否かはこの占いに関係しないもの。占い師としてでなければ、多少、興味はあるけれど、でも今は時間を無駄にできない。でしょう?」

春香(話を聞かずに占うなんて……ううん、ある意味、占いらしいのかな。こんなの信じられない、っていつもなら思うかもしれない。もっと言えば、あずささん以外の占い師であれば)

春香「信じましょう。……お願いします」

あずさ「肩の力を抜いて、そう、リラックスしていればいいわよ~」

ふふふと笑うあずさ。目の前に置かれた水晶は、春香が覗き込んでも何も見えはしない。
あずさは水晶に手をかざして、何か小声で唱え始める。春香が聞き取れないほどに小さく、複雑な、長い呪文……。
やがて、水晶の中心部分に紺碧の光の点が一瞬見えた、そんな気がした。「ここは……」とあずさが眉をひそめて言う。
470 : プロデューサー君   2021/10/08 20:43:11 ID:16JJtS.I9U
春香「『ここ』? どこかの場所が映ったんですか?」

あずさ「ええ、どうやら瀑布みたいね」

春香「鎌倉とか江戸……」

あずさ「いえ、滝のことよ」

春香「細い糸状のこんにゃく……」

あずさ「しらたきは関係ないわ」

春香「&翼?」

あずさ「タッキーさんも無関係よ」

春香「ふむふむ。では、どこの滝なんですか?イグアスですか、ヴィクトリアですか、それともナイアガラ?」

あずさ「仮にそうだったとしたら、今から行って帰ってくるとなると困るんじゃないかしら~?」

春香「そうですね。準決勝に間に合わないです」

あずさ「春香ちゃんが行かなければならないのは、こちら側、つまり異界の滝よ……その名を、観理怨滝」

春香「当て字でミリオン……それはどこに?」

あずさ「道案内しましょうか~?」

春香「いえ、なぜだか知りませんけど、ものすごく遠回りになりそうな気配がとってもするので、地図か何かありませんか?」

あずさ「Glow Map?」

春香「いってきます!……ってミリシタ3周年曲は今は関係ないです。名曲ですけど」

あずさ「地図はないけど、行き方を説明するからメモしてくれるかしら」
471 : Pさぁん   2021/10/08 20:45:53 ID:16JJtS.I9U
あずさ「えっと、妖精の国で底抜けにハッピーな呪文唱えたら泣き虫なライオンも笑顔を見せる――――」

春香「『そしてぼくらは旅にでる』!! たぶんその部分だけでピンとくる人なかなかいないですよ!? そういえばM@STER VERSIONって私と雪歩とあずささんとやよいでしたね」

あずさ「あの衣装、可愛いからミリシタにもきてほしいわ~」

春香「そういうの、わりとありますよね。『アマテラス』の月読華舞和装とかは、需要はあると思うんですけど、既に似た系統の共通衣装が実装済みだから望み薄ですかね」

あずさ「パンキッシュゴシックもいつか来ると思っているのだけれど~」

春香「だったら、あの曲も………って、えっと、何の話していましたっけ?」


そんなこんなで春香は観理怨滝の場所の情報を入手した!
そこで何をどうするのか、あずさ曰く、行けばわかるとのことらしいが……
一方、その頃、雪歩と百合子は――――





- 菊地市場 -

真「レベル上げに役立つ場所を教えてほしい?」

雪歩「ええ。あなたならそういうの詳しいんじゃないかと思って」

百合子「お、お願いします!」
472 : 番長さん   2021/10/08 20:49:01 ID:16JJtS.I9U
雪歩たちは1回戦の特設会場そばにある菊地市場を再度訪れていた。
目的は市場の元締めである菊地の一人娘である真から百合子たちの修行場を教えてもらうことだった。


真「春香はどうしたのさ」

雪歩「春香は春香でべつの場所で修行しているの」

真「ふうん……。じゃあ、今だったらあんな身体能力に任せたイカサマは使えないわけだね」

百合子「えっ!?もしかしてまたポーカーをして勝たないとってことですかぁ!?」

真「べつにポーカーじゃなくてもいいよ」

雪歩「あなたの確率操作能力が発揮されるゲームなら何でも、ってことでしょう?」

真「よくわかっているようで」

雪歩「私たちに協力するのは嫌?春香がいないとダメなの?ゆきまこは王道だと思うんですぅ」

百合子(!? 白雪さん、しゅんとしている!? いや、これはもう雪歩さんでは?)

真「そ、そんな顔しないでよ。ボクだって嫌がらせをしたいわけじゃないさ。ただ、この菊地市場なりの掟というかやり方があるわけで」

百合子「でも、たとえ何年もの時間が間にあっても、真さんたちはお友達同士じゃないんですか?市場どうこうじゃなくて、お友達に力を貸してあげるって思えば……」

雪歩「まぁ、今回は主に百合子の強化だけどね。真ちゃんとはつい先日、会っただけの」

百合子「しーっ!余計なこと言わなくていいんです!」
473 : 兄ちゃん   2021/10/08 20:51:51 ID:16JJtS.I9U
真「…………わかった」

雪歩・百合子「え?」

真「人を紹介するよ。ボクよりも修行や特訓、トレーニングにレッスン、そういう分野に関しては彼女はプロフェッショナルだ」

百合子「鍛錬の専門家ってことですか?」

雪歩「その人はいったい……?」

真「人呼んで、高山バスターブレイド紗代子先輩」

百合子「!?」

真「またの名を、不撓不屈のサヨ」

雪歩「!!」

百合子「すごい人みたいですね。どこにいけば会えるんですか?」

真「えっと、ちょっと待っていて。スマホ開いてトタチツテっと………こんにちさよさよ~」

雪歩・百合子「………」

真「ちょっ、待って、切らないで!真ちゃんなりよ!?」

雪歩・百合子「………」
474 : der変態   2021/10/08 20:54:06 ID:16JJtS.I9U
真「お願いがあってさ、え?あ、いや、そういうんじゃないって。へ?いやいや、そんな、二―ソックス履いて、水着着てゴルフって、そんなまさか……」

雪歩・百合子「………」

真「同じPrincessのよしみでさ、うん、実は同じくPrincessのふたりが――――」


345秒後

真「これでよしっと。お待たせ。紗代子、今、異界ライブラリ近くにいるみたいだ」

百合子「ライブラリって……えっ!もしかして図書館ですか!?異界にも図書館が!?」

真「そんなに目をキラキラさせなくても。蔵書数でいえば、相当少ないよ?7650冊だったかな。図書室というには多いけどね。館内閲覧のみで、借りることできないし」

百合子「で、でも!それだけ厳選されて、かつ外に持ち出せないような禁書たちが……」

雪歩「百合子、悪いけれど本当に期待しないほうがいいと思うわ」

百合子「え?」

雪歩「数年前に、師匠に連れられて4人で訪れたことがあるの。結論として、一部の分野の専門家にとってしか有益な情報としてみなすことができない本しか置いていないわ」

百合子「?? どんな本があるんです?」
475 : 変態インザカントリー   2021/10/08 20:57:07 ID:16JJtS.I9U
雪歩「物理学?ある意味地理学? 広く言うなら自然科学……といっていいのかしら、とにかく何か異界を構成する物質や法則を部分的に数式化しようとしたり、または能力の発現と運用について遺伝子学と病理学に基づいて……いや、そういうふうに師匠が話していたのを覚えているってだけなんだけど」

真「記述に用いられている言語からして、ボクたちに馴染みないものだよ」

百合子「私たちにとってみれば難解なものばかりってことですね……あれ?じゃあ、その紗代子さんはそうした本を読めるんですか」

真「ライブラリ内にいるなんて一言も言っていないけど?」

雪歩「『近くにいる』だったわね。ライブラリの近くっていうと、洋服店でもあったかしら」

真「ううん、たい焼き屋が目当てみたいだよ」

百合子「そうですか……」

雪歩「やれやれ、何を気落ちしているんだか」

百合子「だって、異界の図書館ですよ?もしかしたらこの魔導書のことだって」

雪歩「その魔導書は【異世界】の図書館にあったものでしょう?【異界】とはべつよ。とてもじゃないけど、その魔導書と百合子が邂逅した場所にもう一度なんて無理があるわ」

百合子「うう……。そういえば、今更ですが、どう違うんですか。【異世界】と【異界】」
476 : ダーリン   2021/10/08 21:01:13 ID:16JJtS.I9U
雪歩「そういうのはまた今度ね。今はやることがあるでしょ」

真「ん、ん。紗代子は、まだしばらくはたい焼き屋近くにいるそうだよ。話を聞くだけ聞くってさ」

雪歩「そう。さぁ、行くわよ、百合子。……ありがとう、真ちゃん」

真「もちろんタダじゃないよ。今度、君たちのお店に行くことにするよ」

雪歩「そうね、この大会が終わったらみんなでパーティとしゃれこむのもいいかも」

真「なんだったら、春香をいただきに参上しようかな」ニヤッ

百合子「?! せ、性的な意味ですか!?」

真「そこまで考えての台詞じゃないよ!?」


かくして雪歩と百合子は紗代子のもとへと向かうのだが……?

Recipe7partCにつづく
477 : ボス   2021/10/08 21:03:36 ID:16JJtS.I9U
気がつけばスレ立てから2カ月余りが経過。
全8話中の7話なのに、進行具合としてはまだ7割ぐらいな気もします。
次partでは春香が滝で可憐と出会うか出会わないかしたり、秘奥義『LEGEND GIRL』を習得したりしなかったりする一方で、紗代子が主に百合子に情熱と愛を注ぐ予定です。
早ければ10/10の夜あたりに投下したいです。今月以内に完結!そう先月も言っていたような……。
ちなみに、メンタルとタイムのルームは元ネタ知りませんでした。元ネタの元ネタは知っていましたけど。

何卒最後までお付き合いください!
(いざとなったら安価に頼るので)構成に詰まってはいないんです!時間と体力がないだけです!
478 : P君   2021/10/13 00:35:53 ID:6wGemHg5/g
公式が監視していると聞いて
479 : とりあえず春香パート投下していきますよー   2021/10/14 06:51:13 ID:mZYzCfO/pU
Recipe7partC Side Haruka

紺碧の占星術師ことアズール・ミューラー(あずさ)の導きによって春香は異界のなかでも人の寄り付かない密林、その奥地にあるとされる、観理怨滝へと向かうことになったのだが……?

春香「うわぁー……これはまたご立派なジャングルだね。ウンババしたくなっちゃうなー」

怪鳥の鳴き声がどこからともなく聞こえ、見慣れぬ蟲たちがそこらじゅうで蠢き、不思議な匂いのする道なき道を春香は進む。
あずさの説明によれば、何百、何千と立ち並ぶ木々のうち、(食材を見極める要領で)目を凝らした際に、根元が淡く黄金色に光ってみえる木を追っていくことで観理怨滝にたどり着くとのことだった。

春香「…………」

思えばここしばらくは雪歩と百合子と離れて過ごす時間が短かった気がする。
文字どおり寝食を共にするふたりであり、日常の大部分を彼女たちと過ごしている。
半年余り前まではそれが百合子ではなく可憐であり、そしてそこには海美の姿もあった。

春香「ののわっっと……!」

考え事をしていたせいか、転びそうになる。していなくても転ぶときは転ぶ春香だが、こんなところで転んだらべたべたして大変そうだ。
感傷に浸るには周囲の音も色も、香りも優しくないのだった。
春香は今日の分の一発ギャグを考えることに、言い換えれば久しく目にしていない雪歩が笑い転げる姿を想像しながら、滝を目指す。
しばらくして――――

春香「ここが……観理怨滝」

密林を延々と彷徨っているシーンを垂れ流してもしかたあるまい。春香は目的の滝に到着した。
思ったより小さな、それほどの高さはない滝で、横幅もさほどである。それでもすぐ近くまで寄って流れ落ちてくる部分を見上げ、そして絶え間なくしぶきをあげる水面を見れば、なるほどたしかに滝である。

春香「で、何をすればいいんだろう」
480 : プロデューサー君   2021/10/14 06:53:44 ID:mZYzCfO/pU
滝で行う修行といえば、やはり滝行。すなわち滝に入ってその水流に打たれるということだろうが……。安価レスでも滝に打たれるとあったし。
まさかテコ入れとしてすけすけセクシーショットをお披露目しろということなの?と滝を眺めながら悩む春香。
そのとき、後方から何者かの気配がした。即座に振り返る春香。蛇か熊か、大熊猫か、それともチュパカブラ?!と瞬時に巡らせた予想はすべてはずれだった。

??「えっ…………春香さん、どうしてここに」

春香「!? 嘘………可憐ちゃん……だよね?」

他でもない2回戦の相手である『HOTDOGS』の一員で、雪歩たちが大会に出場している理由、春香と雪歩の妹分である篠宮可憐がそこに立っていた。
装備からしてピクニック気分でやってきたのでもなければ、ふらふらと迷子になった様子でもない。
もとよりこんな異界の密林の奥地に何の用事もなく入る人間などいない。
どうしてここに、可憐が訊くのも、春香の側がそう思うのもおかしくない。

春香「可憐ちゃん……しばらく会わないうちに、また一段と綺麗になったね」

こうした口説き文句が最初に出るのもおかしくない……?
春香の言葉に可憐の頬に赤みがさっと差す。わざとらしく咳払いをした可憐が目元をキッとさせて「どうしてここに?」と先ほどよりも硬く、冷ややかに問う。

春香「修行ですよ!修行!」

可憐「はい?修行?こんなところで何の……」

春香「もちろん次の2回戦で可憐ちゃんたちに勝つための、秘奥義を習得する修行だよ」

可憐「ひ、秘奥義?」
481 : おにいちゃん   2021/10/14 06:57:10 ID:mZYzCfO/pU
春香「そうそう。セイクリッドブレイムとかそういうの」

可憐「春香さんがセイクリッド……?」

春香「うん?」

可憐「い、いえ……」

春香「それで可憐ちゃんこそどうしてこんなところに」

可憐「教える義理はありません」キリッ

春香「ええ~、そんな~。あれじゃないの?ここでは貴重な香料そのもの、あるいはそれを調合するための原材料の1つが採取できるから、みたいな?」

可憐「!? ど、どこでそれを……!私、海美ちゃんにだって話したことないのに……!」

春香「当てずっぽうが当たっちゃったよ。まぁ、そんなところかなってね」

可憐「くすっ。春香さんは相変わらずですね」

春香「それ、褒めている?」
482 : お兄ちゃん   2021/10/14 06:59:15 ID:mZYzCfO/pU
可憐「安心したんです……何もかもが変わっていたらどうしようって考えもしましたから」

春香「それはこっちの台詞だよ。ねぇ、雪歩のことも安心させてあげてほしいな」

可憐「……っ」

春香「ほんと、いなくなったばかりの頃はさ、手を焼いたよ。ウェルダンだよ。雪歩ったら、可憐ちゃん、可憐ちゃんって、いつまでもめそめそしているんだもん。寝かしつけるのに苦労したよ。ふたりそろって寝不足の日々が続いたし、ご飯だってあの頃はまともなもの口に入れていなかったんじゃないかな。そこらへんに生えている草とか転がっている石とか食べていたかも」

可憐「そ、それは……」

春香「もちろん私だって、うん、私だってね、可憐ちゃんがいなくなったことで気落ちした……心にぽっかりと穴が開いたってこういうことなんだなってね。こっちの世界にきてからずっと一緒だったもんね、私たち。ううん、向こうでだって家族みたいなものだった。あの日もいっしょにいたから、師匠にいっしょに救われた。こっちに3人でくることができた。覚えている?」

可憐「はい……よく覚えています。忘れたことはありません……」

春香「うん。ねぇ、可憐ちゃん」

可憐「は、はい」

春香「もう家出はおしまいにしない?私も雪歩も、可憐ちゃんが裏切って二度と私たちと相容れない存在になったは思っていないよ」
483 :   2021/10/14 07:01:11 ID:mZYzCfO/pU
春香の言葉に可憐はしばらくの間、何も言わなかった。滔々と流れる滝のそば、可憐は淀みある口調で、春香に話し始める。

可憐「……あの日、言ったとおりです。今でも……考えは、か、変わっていませんから。雪歩ちゃん、春香さんたちのやり方では……救えない人が、お、多すぎます」

春香「『HOTDOGS』が大勢の人のために料理を振る舞ったなんて話、聞いたことないけれど?」

可憐「まず……たかが数人で料理を作って、それでどうにかするなんて思っていませんから……! わ、私たちのやろうとしているのは……まさしく救世……料理はそのための手段に過ぎません」

春香「つまり?」

可憐「……オトメティックパワーがすべてを解決するんです…!」

可憐の口調に淀みが消える……いつもよりは。

春香「本気で言っているの?その得体の知れない力が、可憐ちゃんたちをどう救世主にするっていうの?」

可憐「リーダー曰く………この世界を再構築できるそうなんです……!」

春香「は?」

可憐「師匠でも私たちが元いたあの世界、滅びゆく運命にあった世界を……救うなんてできませんでした。世界の命運までをも変える力があれば……今あるこの世界、争いの絶えない、穢れきった世界を浄化し、誰もが幸せになれる世界を作り上げることが……たとえば美味しいご飯を毎日、大切な人たちと笑い合って食べられる、それを誰にとっても日常にすることができるんです……!」

春香「そんな……そんなの夢物語だよ。現実は甘くないんだよ、可憐ちゃん。自分たちの家族ですら護れないことだってあるぐらいに」
484 : プロデューサー殿   2021/10/14 07:03:40 ID:mZYzCfO/pU
可憐「荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが………このことは異界創世期から証明され、構築されてきた理論なんです……」

春香「ちょっと何を言っているかわからない」

可憐「……わからなくていいんです、今は。全部終わったら、うまくいったら、そのときは……戻ります。また3人で、ううん、今は4人でしょうか、いっしょに暮らしましょう……えへへ」

春香「可憐ちゃん……騙されているんだよ、そのリーダーに」

可憐「―――リーダーのことを悪くいうのは、いくら春香さんでも許しませんよ?」

春香(!! なんて冷たい目つき……ゾクゾクしちゃう!って、そうじゃなくて、これは……もしかして洗脳?いや、でも……)

春香「わかったよ、可憐ちゃんたちは何かとんでもなく大きなことを成そうとしているんだね」

可憐「はい♪」

春香「だったら、今回の料理大会で、私なんかに負けている場合じゃないわけだね」

可憐「そうですね……平和的な方法で、『あれ』を……賞品として譲ってもらえるのがベストだって、リーダーは話していました。私も……誰かを傷つけることなしに、手に入れるべきものが手に入ればそれが一番だと思います……」

春香「じゃあ、もし万一、私たちに負けたらさ、そのときは考え直してくれる?私たちのもとに帰ってきてくれる?」
485 : 兄(C)   2021/10/14 07:05:42 ID:mZYzCfO/pU
可憐「約束はできませんけど……でも、今の春香さんたちに負けてしまう程度の料理の腕前なら、リーダーは私のこと、いらないっていうかもしれないですね……うう」

春香「……リーダーは、2回戦に参加しないの?」

可憐「2回戦は私と海美ちゃんのふたりだけです。それでも充分すぎるって。リーダーは忙しい人ですから……あまり表舞台に立ちたいふうでもないみたいで……」

春香(舐められている?それともリーダーは料理ができるわけでもない?どちらにしても―――)

春香「ふぅ……こういうのは、雪歩たちがいるときにしたかったんだけど」

可憐「?」

春香「宣戦布告といこうかな。可憐ちゃん、ううん、『HOTDOGS』。私たちは負けない。世界が云々の壮大な話よりも、私はそばにいる家族を、それから今はそばにいてくれない家族のことを、大切に想っているんだ。私が目指すのは救世主となることじゃない。可憐ちゃん、あなたを取り戻して、私は私の、私たちの、大切な日常を再び手に入れるからっ……!」

可憐「春香さん……私たちの計画を阻もうとするのなら、たとえあなたが相手でも私は負けられませんから。さよなら、次は会場で会いましょう」

そう言うと木々に溶け込むように、可憐は姿を消した。怪鳥のけたたましい鳴き声が轟く。
春香は滝のほうから何か強い力を感じた。ついさっきまでそこに感じなかった強い力だ。
けれどもそれは初めからあったものだと春香は確信する。
根拠はないが……春香の決意にそれは反応してくれたのだと春香自身は解釈した。
486 : 魔法使いさん   2021/10/14 07:09:01 ID:mZYzCfO/pU
可憐たちの野望を阻止せねばなるまい。世界の再構成?まさか、そんなことできるわけがない。
もし、もしも……それが可能であったとして、そこに求められる『対価』は果てしなく大きいだろう―――
春香は滝の真正面に立った。春香の異界での身体能力をもってすれば水の流れに足をとられることはない。

春香「うー、わっほい!!!!!」

滝に繰り出される正拳。割れた滝はすぐに元通りになる。
そうして春香は正拳突きを繰り返していく。気がつけば空に星が瞬き、欠けた月が春香を見下ろしていた。それから月が失せ、異界の色褪せた太陽が昇り、それから――――時間が過ぎていった。

滝割り修行の果てに、春香は観理怨滝の水流から力を得る。
護りたい者を護れる力、これぞ伝説の少女としての力、その名も『Legend Girls!!』
料理大会で使えるかは……神のみぞ知る。


Recipe7partC Side Yukiho&Yurikoにつづく!
487 : EL変態   2021/10/14 07:12:46 ID:mZYzCfO/pU
雪歩・百合子編は16日中を目安に。やっと休日なんで
次でpartDの安価もとるつもりです
もう10月半ばなんて信じられない……


何卒最後までお付き合いお願いします!
488 : プロデューサー   2021/10/14 13:16:56 ID:nEZ3IyVx7Y
待ってたよー
489 : そなた   2021/10/14 17:45:06 ID:ByKM1ikeHk
お待ちしておりました。延々働き続けて急に休むとエアポケットに落ちるように寝落ちしますので(経験済み)何とぞご注意を。
490 : あたたかいレスありがとうございます!   2021/10/16 19:43:31 ID:bLNguU6YfI
投下していきます


Recipe7partC Side Yukiho&Yuriko


『HOTDOGS』(海美1人)が1回戦で高位チュパカブラ3匹に完勝したのを目にして、自身の力に不安を覚えた百合子。
修行に出るという春香を雪歩とともに見送った後で、雪歩に促されるままに菊地市場を訪れることに。
そこで2人は再び菊地真と話し、準決勝である2回戦までの残り3日間で、百合子のレベルアップができる場所や頼れる人物を紹介してもらう。
真が連絡をとってくれたのは、不撓不屈のサヨの通り名で知られる、愛と情熱のトレーニングマスター・高山紗代子であった。
彼女は異界の図書館「ライブラリ」近くに構えるたい焼き屋で待っているという。
真に礼を言い、2人は菊地市場を離れてさっそくそこへと向かったのだが……?
491 : 我が下僕   2021/10/16 19:45:31 ID:bLNguU6YfI
雪歩「ここね……マイン○ラフト初心者が作る建築物みたいな、そう、まるで揚げ出し豆腐のような建物がライブラリよ」

百合子「揚げ出し要素なくないですか?!ふつうに豆腐って言えばいいじゃないですか……いえっ、言うほど豆腐って感じでもないですけどね!」

雪歩「記憶にあるライブラリは、もっと大きかった気がするけど……あれから数年、ふふっ、私が大きくなったってことかしらね」

百合子「あー……、あれですよね、小学校までの通学路を久しぶりにたどってみると短く感じたりするやつといっしょですね」

雪歩「私たち(はるゆきかれ)は就学直前で元の世界を離れたから、学校っていうのを知らないのよね」

百合子「え?す、すみません。あれ?でも、ということはお師匠さんが白雪さんたちに物書きや計算、そういったものを全部教えてくれたんですか」

雪歩「師匠が料理と戦い方以外で私たちに教えてくれたことは数少ないわ。その他のこの世界で生きるために必要な知識は、半分を私たち自らで学ばなければいけなくて、もう半分は千鶴さんが教えてくれたの」

百合子「千鶴さん?」

雪歩「ええ。私たちが今の百合子の年齢ぐらいになるまであの家、現在の『YUKIHO'Sキッチン』に週4で通ってくれていた人よ。師匠とは旧友の仲だった。気高くて上品で、それでいてちっとも高慢さがなくて、何事にも真摯に向き合う熱意を備えている高貴な魂を持つ女性。時に私たちの母や姉であるかのような振る舞いで、またあるときは最も信頼のおける友人のようでもあった、今なお私の憧れなの」

百合子「へぇ、そんな方が。えっと、今現在は……?」

雪歩「海外でお仕事中なのよ。去年……高坂海美がまだいて、百合子がいなかった時に一度帰国して店に来てくれたわ。手紙でも不定期にやりとりしている」
492 : Pたん   2021/10/16 19:48:26 ID:bLNguU6YfI
百合子「あの、お師匠さんや可憐さん、それに海美さんが店から去った件については……」

雪歩は黙って首を横に振った。痛いところをつかれた、そんな表情をしていた。
まだ報告することができていない事実は、いずれ露見してしまうに違いない。千鶴と師匠が旧友ということであれば避けられないだろう。
「可憐ちゃんが帰ってきてくれたら」と雪歩は口にするが、後が続かなかった。百合子はこの前(>>257前後)雪歩から聞いた話を思い出す。たとえ可憐が再び店の一員になったとしても、彼女たちの師匠はあと39年はこの世界には来ることはできないのだ……。



雪歩「さて、と。サヨさんがいるっていう、たい焼き屋さんはどこかしら」

百合子「あの、白雪さん。ちょっとだけライブラリに寄っていいですか」

雪歩「……どうして?聞いたでしょう?百合子の興味関心を満たす本はきっとないわよ」

百合子「うっ。で、でももしかしたらこの魔導書と共鳴する本があるかもですし。以前、白雪さんたちが訪れたのって何年も前なんですよね?その頃とは変わっている可能性だって」

雪歩「はぁ、しかたないわね。765秒だけよ?」

百合子「13分足らずですか。わ、わかりました」

雪歩「じゃあ、いくわよ」
493 : EL変態   2021/10/16 19:52:06 ID:bLNguU6YfI
- 異界ライブラリ内 -
不自然なほどに空気の澄んだ空間。本の匂いらしい匂いなどなく。
磨かれた床はじっくりと見れば百合子のスカートの中さえ映し出しているふうだった。

百合子「受付に自動人形のお姉さんとかいないんですね。ゴシック衣装を着た甘いもの好きで背中に機械仕掛けの片羽根が生えている、そんな感じの」

雪歩「妙に具体的ね。……実際は異界生物のなかでも比較的知能の高い種と、機械が管理を担っているみたいね」

百合子「先日、異界関係者御用達のスーパーマーケットでお会いした、ロコさんが飼っているアンナっていうナンスより知能が高いんですかね(>>239前後)」

雪歩「?? そのパート、私と百合子&春香っていう別行動だったから知らないわよ。というか読み返したら1カ月半も前のレスなんだから誰が覚えているのよ」

百合子「そ、そんな~」

2人は数少ない書架がある閲覧室へと進む。出入り口の扉は戦時の避難拠点にでもなるのかと思わせるレベルのシェルターらしき造りをしている。
規則があるのだろう、2人の後ろを管理者の1匹が無言でついてくる。言葉もなければ音もない。

百合子「…………」

雪歩「どう?読めるものある?」

百合子「…………」

雪歩「百合子?」
494 : Pーさん   2021/10/16 19:54:51 ID:bLNguU6YfI
百合子「読めません。どの本も背表紙からして読めそうな言語じゃないですよ、これ」

雪歩「思わせぶりな間をとるんじゃないわよ!」ペチンッ

百合子「あんっ♡」

雪歩「ほら、さっさと出るわよ。サヨさんを待たせるのも悪いわ。『たった1秒だって~♪』って抗議してくるかも」

百合子「ま、待ってください!か、感じるんです!」

雪歩「えぇ……?書物自体に性的興奮を覚えているってこと?あの、いくら家族でも、というか家族だからこそ、そういう話はあまり……」

百合子「そういう感じるじゃありませんよ!?私のこと何だと思っているんですか!!」

雪歩「大切な妹よ」キリッ

百合子「うう~、調子がいいんですから~!」

雪歩「あっ。可憐ちゃん、春香、の次に大切な妹よ」

百合子「それは聞きたくなかったですよ!? そこ順位つけなくてよくないですか!?」

雪歩「ふふっ、可愛い妹をからかいたくなるのが姉ってものなの」

百合子「も、もうっ」
495 : 夏の変態大三角形   2021/10/16 19:57:46 ID:bLNguU6YfI
雪歩「で?何を感じるわけ?………本当に百合子の予測どおりその魔導書と共鳴している本が…?」

百合子「それが―――――妙なんです」

雪歩「?」

百合子「この感じ……私があの日訪れた図書館、迷い込んでしまったあの場所に似ている、そんな気がするんです」

雪歩「それって、百合子がこの世界へとやってくる原因を作った図書館のことよね?つまり、その料理魔法の集積、一つの到達点とも言える書物と邂逅し、契約を果たした場所」

百合子「はい。同じ場所でないのは、はっきりわかります。上手く言えませんが、雰囲気……ええ、近い空気で満たされているんです」

雪歩「………」

後ろをそっと振り向く雪歩。例の異界生物、もやもやとした影の形をとっている彼あるいは彼女の瞳は雪歩に何も訴えかけてこない。もしくは何か言わんとしていることがあろうとも、それは伝わらない。
管理者であるのだから、利用者が書架に、本に、設備に何かしようとすれば警告なしに「保安活動」と行うと案内板には簡潔に記されていた。
百合子に向き直って、雪歩は思うところを告げる。

雪歩「ずっと前に話したとおり、百合子、あなたの混濁した記憶のうちにあるその図書館が、特別な場所であるのは間違いないわ。魔導書との契約、その対価として元いた世界を追放された……それが私と春香の推測ではあるけれど、実際のところそうだと証明できているわけでもない、そうよね?」

百合子「はい。個々の書物よりも、あの図書館が特殊な機能を有している、いわば特例的な空間だとみなすこともできるってわけですよね」
496 : 我が下僕   2021/10/16 20:00:07 ID:bLNguU6YfI
雪歩「ある世界と別の世界とを繋ぐ場所……。師匠は個人レベルで世界渡りというのをそれに見合うだけの準備をして、行っていた。千鶴さんのときはさらに入念に、用意周到に、時間もお金もかけていた」

百合子「もし仮に、あの図書館にアクセスする方法があって、適切な手続きをすれば誰もが目指す異世界に飛べるのだとすれば―――」

雪歩「ううん、もうこの話はおしまいにしましょう。あまりに多くの仮定と憶測を含んでいるし、それらが導く答えが今の私たちが置かれている状況をどうにかすると思えないもの」

百合子「けれど、突き詰めていけば、私は元の世界に帰――――」

雪歩「!」

百合子「あっ。えっと、ごめんなさい、なんでもないです。い、いきましょうか、たい焼き屋さん。サヨさん、君から届くHappy Birthday いつかほしいななんて思っているかもしれませんし」

雪歩「………ねぇ、百合子」

百合子「ダメですよ、白雪さん」

雪歩「え?」

百合子「その質問は……いけません。私は……今の私はお2人の大切な妹で、私もお2人のことはお姉ちゃんだって、そう、思っていますから。嘘じゃないですよ?」

雪歩「百合子……」

百合子「行きましょう。すべてが終わったら、また来ればいいんです。そうするだけの時間はありますから」
497 : Pさん   2021/10/16 20:02:45 ID:bLNguU6YfI
- ライブラリ近く たい焼き屋『駒形』-

紗代子「おそーーーーーーい!!!」

雪歩・百合子「すいませんでしたぁああ!!!!!」

紗代子「10日だよ?安価でここでの登場人物が私に決定してから10日経っているんだよ!?」

雪歩「それは私のせいじゃないですぅ!」

紗代子「さすがの私も、たい焼きだけで生活するのはつらかったよ!! 店主さんを脅は……お願いして具材のバリエーションを39種類に増やしてもらったけど、それでもたまには焼きそばや焼肉、焼きおにぎり、食べたかったよ!」

百合子「全部焼いている!?なんて火力とパワーなの、この人!」

雪歩「結局、どれが一番おいしかった?」

紗代子「つぶ餡!」

百合子「一周回っちゃった!!」

紗代子「で?まこまこりんから事情をかるーく聞いたけど、この私の力が必要なんでしょ?」

百合子「まこまこりん……?」

雪歩「百合子、それ以上いけない」
498 : Pーさん   2021/10/16 20:05:19 ID:bLNguU6YfI
紗代子「とりあえず私に任せて!私が2人をこの短期間でメダカからリヴァイアサンまで成長させてあげるからねっ★」

雪歩・百合子「!?」

紗代子「じゃあ、まずはランニングだね。散々待たされちゃったし、うん、それじゃ、765㎞行ってみよう!」

雪歩・百合子「」

紗代子「大丈夫!おおよそ東京都・山口県の直線距離って程度だから!」

雪歩・百合子「」

紗代子「ファイトォー!」



1時間後

紗代子「どうしたー、どうしたー!まだ100分の1だよ!」

雪歩「異界だから基礎身体能力が向上しているわけだけど……」

百合子「い、いくらなんでも765㎞は、むーりぃー…」

紗代子「無理って言葉はね、嘘つきの言葉なの」

雪歩・百合子「?????」

紗代子「途中で止めてしまうから無理になるんだよ」

雪歩・百合子「えぇ……」
499 : 彦デューサー   2021/10/16 20:08:27 ID:bLNguU6YfI
2日後(準決勝前日) 
ランニング他、恋の千本ノック・改など、紗代子による地獄の特訓から解放された雪歩と百合子は、令嬢屋敷内に用意された部屋に戻って身体を休めた。
紗代子の影響のせいなのか、体の火照りがなかなか収まらず、そのままの勢いで2人はPST(>>153参照)に励んだ。ほどなく絶頂を迎えた2人は深い眠りに落ちた。
その晩、修行から帰還した春香はキングサイズのベッドであられもない姿で抱き合って眠る2人に脳を壊されかけたが、修行の成果によって持ちこたえたのだった。滝行ってすごい、そう思った。

そして準決勝当日
作者さえ忘れたクッキングデバイスの整理をしてから、3人は会場へと向かった。
審査員の真美・のり子も出番はまだなのかとそわそわしているはずだ。なんだったら主催者たる亜美も登場していない始末なのだ。

百合子の高位魔導書読解術のレベルが2から3にあがった!
(魔導書との)リンクアピールの効果が上昇した!
【竜巻旋風妄想陣】を習得した!


雪歩は【美味しいたい焼きの作り方】を習得した!


Recipe7partDにつづく!
500 : プロデューサー殿   2021/10/16 20:13:33 ID:bLNguU6YfI
※【A】『HOTDOGS』戦の舞台は?
※【B】『HOTDOGS』戦の課題料理は?(ホットドッグ・たい焼き以外で)
※【C】グリルモワールが課題料理に用いる異界食材を1種
※千鶴さんが今後の展開で登場するかは未定
※リーダーの正体を安価するかは迷っている最中


レスの有効期限は10/18 20:59:59まで
早ければ10/20午前中に投下 遅くとも10/22中には
ご協力お願いします!
何卒最後までお付き合いください!
501 : do変態   2021/10/16 20:45:00 ID:AOlBvwgvfc
A 超ビーチバレー大会会場のすぐ隣
B oDEN...もとい、おでん
C コカトリス卵
502 : おにいちゃん   2021/10/16 23:48:54 ID:T4rMsLMgd.
Aお祭りの縁日
Bハンバーガー
C虹色レタス
503 : レスありがとうございます!   2021/10/20 20:29:36 ID:cUzb1rjgaY
Recipe7partD投下していきます

Princessトリオ料理ユニット『グリルモワール』と、『HOTDOGS』の3人のうちの海美・可憐の2人。
彼女たちがついに勝負する料理大会2回戦(準決勝)
話は少しだけ遡り……
その前日 夜

異界ライブラリ前 
雪歩と百合子の特訓に付き合った不撓不屈のサヨこと、紗代子の前にぷっぷかぷ~っと姿を見せたのは―――


麗花「さーよこちゃん♪やっほ」ギュー♪

紗代子「麗花さん!? どうしてこんなところに? 箱崎のところのメイドとして潜入しているはずじゃ……」

麗花「それなら、もうおしまい!思ったより楽しかったから、ついつい何日も余計に過ごしちゃった」

紗代子「そうなんですか?そんな報告は受けていませんけど」

麗花「あれあれ?怒った?」ダキツキホドキー

紗代子「いえ、そんな。麗花さんにも考えがあるというか、その行動を私では予測しきれないのは嫌と言うほど知っているというか」

麗花「ふふふ、なんだか照れちゃうなぁ」

紗代子「褒めていませんよ?はぁ……ジュリアには報告済みなんですか?」

麗花「うーん……それが、全然連絡がとれなくて」
504 : Pチャン   2021/10/20 20:31:59 ID:cUzb1rjgaY
紗代子「それについても、いつもどおりといえばそれまでですね。ふむ……収穫はありました?」

麗花「? お米のこと?それともサツマイモのこと?」

紗代子「ちがいます! 箱崎家での潜入捜査での成果ですよ」

麗花「あ、それ? うん、白だったよ。真っ白。でも、星梨花お嬢様のお気に入りの下着の色は……」

紗代子「そういう情報はいいですから!ご家族の方から苦情きますよ!」

麗花「紗代子ちゃん、どう思う?水瀬や二階堂、そして箱崎……どの財閥も『あの子』に肩入れしているふうじゃないってことだよね」

紗代子「ええ、そうなりますね」

麗花「後ろ盾のあてがはずれちゃったね。もしも、そんなのはないんだったら、彼女は私たちが考えている以上に特別な人間ってことかな。雪歩ちゃんたちみたいな一介のハザマとは違う」

紗代子「麗花さんのが特別というのがどの程度を指すかはわかりませんが、私にとっては特別で間違いないですよ。異界深奥の遺跡をたった1人で攻略して、あれだけの貴重な異界食材を持ち帰るなんて、怪物です」

麗花「彼女はあの遺跡……と呼ぶには老朽化とはあまりに無縁のあの土地から、存在すら疑われていた故に秘宝と称されるいくつかの食材を持ち帰った。ううん、いくつも、か。なんだったら、根こそぎと言ってもいいよね」

紗代子「それらを金銭に変えたのならば、一生遊んで暮らせただろうに、実際には自身のもつ素質の強化、それを実現する料理の材料にした………そう、彼女は女子力の向上を最優先して動いたんです」
505 : EL変態   2021/10/20 20:35:41 ID:cUzb1rjgaY
麗花「純粋に力を欲している、すなわち強さの渇望こそ信念……ってわけじゃないと思うよ」

紗代子「というと?」

麗花「女子力はあくまで武器。狙いは別にあるってこと。ばきゅーん♪」

紗代子「女子力は、いえ、この場合はむしろ濃密度の……オトメティックパワー、ですね。それは彼女にとって、野望を成し遂げるための手段でしかないってことですか?」

麗花「そうそう」

紗代子「ハンドレッドやプレアデスからの情報によれば、ここ数年の異界での、とくに深部での密猟・密漁事件の多くには、裏で彼女が関係しているのだとか。まこまこりんも『正体は掴んでいないけど、確かにおかしな動きが市場でもある』って」

麗花「ふむふむ。彼女が……それは『HOTDOGS』としてではないんだったよね?」

紗代子「ええ、個人です。今は『HOTDOGS』のリーダーとして活動しているみたいですが、動きはそれ以前からありますから」

麗花「うーん、例の大会中、姿を見せていないけどね」

紗代子「雪歩ちゃんと百合子ちゃんは明日が勝負と話していたけれど……もしかすると現れないかもしれません」

麗花「アレを欲しがっているのは嘘じゃないと思うけどなー。ただ、手に入れ方はべつに優勝に固執していないのかも。機会をうかがっているんだろうね」
506 : Pちゃま   2021/10/20 20:37:43 ID:cUzb1rjgaY
紗代子「!! 待ってください、麗花さん。突き止めたんですか?双海家が、というより令嬢・双海亜美が今回の料理大会で何を賞品として設定しているのか」

麗花「確定ではないけど、それとなくね。親衛隊のひとりと偶然、お友達になれたんだ。美希ちゃんって言ってね……」

紗代子「そんなことよりも! なんなんですか、アレっていうのは」

麗花「えー?せっかちだなぁ。けっこう久しぶりに会ったのになー。もっとおしゃべりを楽しもうよ」

紗代子「そういうわけには……場合によってはすぐに行動しないと」

麗花「焦らない、焦らない。ジュリアちゃんだって揃っていないんだし。私たち3人で『アクアリウス』でしょ?」

紗代子「それはそうですが……。ジュリア、いつも私を待たせるんだから」

麗花「ピンチには駆けつけてきてくれるって。そういう子だもん」

紗代子「だといいですけど。それで?改めて訊きますけど、双海亜美は何を用意したんですか?」

麗花「えっとね――――世界をつくる鍵のひとつ、みたいなものかな」

紗代子「………はい?」
507 : 下僕   2021/10/20 20:40:12 ID:cUzb1rjgaY
雪歩「どういうこと?なぜすぐに私に言ってくれなかったの?」

春香「眠っていたじゃん。しかも百合子と。さらに言うなら、あんなふうに服をはだけさせて、何をして、」

雪歩「言い訳しないで!」

春香「えぇ……」

百合子「え、ああっ、ちがうんです、成り行きで、べつに不健全なことなんて///」

春香「それよりも可憐ちゃんがさ―――」

密林の奥、滝で出会った可憐としたやりとりを雪歩と百合子のふたりに共有する春香。
可憐自身に表面上の変化はなさそうだが、一方で、リーダーの人物の影響なのか、ある意味で洗脳であるのか、一部、精神的なねじれやズレがある印象を受けたのを話した。

雪歩「洗脳、催眠、調教……ゆ、許さないですぅ!そんな淫らな!」

春香「淫らなのは雪歩の頭の中だよ」

百合子「/////」ビュオー、ビュオー!!

春香「百合子ちゃん、それが竜巻旋風妄想陣ってやつ?無駄に風を吹かせないでほしいな、ははは……」
508 : ミスりました   2021/10/20 20:44:04 ID:cUzb1rjgaY
>>507冒頭部分抜け
そして時は戻り……
準決勝当日朝 大会本部 屋敷内 『グリルモワール』宿泊室

雪歩「可憐ちゃんと会った!?」
509 : 我が友   2021/10/20 20:46:27 ID:cUzb1rjgaY
つづき

百合子「そ、それはそうと、その張本人が今日の戦いに現れないっていうのは、これ、完全に舐めプってやつですよ!」

雪歩「え?可憐ちゃんが私を舐めるの?そういうのもありですぅ」

春香「いいかげん、正気に戻ろう?」

百合子「ん、ん。何はともあれ、私たちの成長を見せるときです。最高の料理を作って、ぎゃふんと言わせましょう!」

雪歩「ぎゃふん!」

春香(雪歩……可憐ちゃんのことで、動揺しているんだね。全力を出し切れるように、サポートしないとだなぁ)

百合子(今朝は魔導書から強い力を感じっぱなしだ……予感しているのかも。今日の料理はきっとこれまでにないとんでもないものになるって)

雪歩「さて、と。それじゃあ、行こう」

春香「会場、どこだっけ?」

百合子「ビーチですよ!ビーチ!」
510 : 変態大人   2021/10/20 20:48:55 ID:cUzb1rjgaY
準決勝特設会場(超ビーチバレー大会会場すぐ隣)


雪歩「………」

春香「雪歩、そんなきょろきょろ見まわさなくても、可憐ちゃんだったら時間が来れば海美ちゃんといっしょにやってくるって」

雪歩「え、ええ。それもそうね。あと、なんだか知らないけど、誰かにくすぐられそうな場所だと思って」

春香「?」

百合子「あ、今回の審査員はあの人たちですね。司会を担当するのは……えっと、格闘技観戦でも好きそうな溌剌としたお姉さんですね」

雪歩「へー、福田のり子さんっていうんだ。ああいうタイプの子に限って、乙女チックなのがいいんだよね。カワイイって何度だって言いたいですぅ」

春香(誰目線!?)

のり子「みんなは準備はOK?」

観客「ワァァアアアアアア!!!」
511 : ハニー   2021/10/20 20:51:17 ID:cUzb1rjgaY
のり子「それじゃあ、サイコーにいかした審査員を紹介していくよ!」

観客「ノリコォォォオオオオオ!!!」

のり子「あの亜美お嬢様の従妹、真美ィィイイイイ!!!」

真美「よろよろ→ お世話はするのもされるのもトクイ中のトクイだよ!」

観客「ゴウホォォオオオオオオオ!!!!」

百合子「あれ?屋敷の写真で見る限り、亜美さんとそっくりですね。まるで双子みたい」

春香「いや、だって本当に、」

雪歩「春香ちゃん! しーっ。今回は双子じゃないんですぅ」

のり子「そして、お次が……」

のり子が審査員を務める面々を紹介していく。
そして、それが終わると対決するユニットの紹介に移るのだった。
512 : ぷろでゅーしゃー   2021/10/20 20:55:17 ID:cUzb1rjgaY
のり子「青コーナー……転がりはじめた妄想は止まることを知らずに雪だるま式に膨れ上がっていく、正統派美少女揃い踏み、熱き想いと魔導書が導くままに料理する、『グリルモワール』!!」

雪歩「!? なんで魔王なんですかぁ?!」

春香「私の、覚醒前のラバーズでよくなかった!?」

百合子「私の神秘的な部分、出ちゃったなー。まいっちゃうなー。魅力39%増量中って感じですかね!」

雪歩・春香「………」ムニーッ

百合子「いひゃい、いひゃいへすよ!!」

のり子「そして!対するは赤コーナー……『HOTDOGS』から2人だけ!? わんこ系女子2人組、篠宮可憐と高坂海美ィィイイイ!!!」

可憐「匂い立つなぁ……」

513 : ボス   2021/10/20 20:57:42 ID:cUzb1rjgaY
対峙する2つのチーム 雪歩は可憐に一歩近寄った


雪歩「――――可憐ちゃん」

可憐「久しぶりですね、雪歩ちゃん。そして初めまして、魔導書の契約者……セブンテイルズ」

百合子「へ?あー……百合子でいいですよ」

可憐「そ、そうなの?」

春香「うん」

可憐「ん、ん。……言葉は不要か」

海美「え?もういいの?久々に会ったんだし、話したら?」

可憐「で、でも、ほら、のり子さんの進行の邪魔になっちゃうかもって……」

春香(ぐだぐだだーっ!)

雪歩(でも、そんなところも好きなんだけどね)
514 : 監督   2021/10/20 21:00:47 ID:cUzb1rjgaY
そうこうしているうちに、のり子から課題料理が発表される!

のり子「私は恋を夢見るアメリカンガール」

雪歩・春香・百合子・可憐・海美「!!!!!」

のり子「大好きな食べ物はハンバーガー あ~愛しのダーリンどこにいるの… って、ここの部分言う必要なくない!?」

観客「ウォォォォオオオオオオ!!!」

のり子「と、というわけで、課題料理はハンバーガー!使っていい食材の調達はずばり……超ビーチバレーで決めていくよ!!」

一同「な、なんだってぇぇーーっ!?」


Recipe8partAにつづく
10/25前後には投下したいです 何卒最後までお付き合いください!
515 : レジェンド変態   2021/10/26 19:48:31 ID:ujtBERLqBU
Recipe8partA

『グリルモワール』VS『HOTDOGS』
砂浜のすぐそばの特設会場に集まった大会参加者と観客。勝負の課題料理が司会役・のり子によって「ハンバーガー」であると発表された。
今回は超ビーチバレーによって食材の選定をしていくらしいのだが……?

真美「説明しよう!」バッ

百合子「わっ!? 真美ちゃん、なんで急に脱いで……って、水着!?」

雪歩「あれは2021年10月現在だと可憐ちゃんと真美ちゃんにしか実装されていない衣装、エレガントミズギ!」

春香「優雅な瑞希ちゃんのこと?」

可憐「そ、それはエレガントミズキ……って、そんなことより、なんで水着に?」

真美「んふっふっふ~、ノリーが話したとおりだよ。ハンバーガーに挟む食べ物はね、超ビーチバレーで決めていくんだYO」

のり子「超ビーチバレーで対決してもらって、1セット獲得ごとに用意した食材の中から1つ選べるってルールなんだ」

百合子「ええっ! じゃあ、もしも1セットもとれなかったら……?」

のり子「そこは大丈夫!バンズだけを審査員の方たちに食べさせるわけにもいかないからね」

雪歩「それもそうね」
516 : P様   2021/10/26 19:50:32 ID:ujtBERLqBU
のり子「料理がメインだから、超ビーチバレーをするとはいっても長丁場にならないルールにしたよ」

真美「1セット10点の5セットマッチ!ジュースはなしだって」

海美「水分補給はダメってこと!?」

百合子「デュースのことだと思いますよ」

春香「トゥース!」

雪歩「春日さんは関係ないよ!」

未来「呼びました?」

百合子「春日違い!」

百合子「『HOTDOGS』は、可憐さんと海美さんの2人がそのまま参加するとして、私たちは3人ですよね?」

雪歩「身体能力向上スキルをもっている春香は確定として、私か百合子か……」

春香「迷う必要はないって。ここは百合子ちゃん、頼んだよ」

百合子「え?」
517 :   2021/10/26 19:52:44 ID:ujtBERLqBU
春香「のり子ちゃんが言ったとおり、メインは料理。その中心を担う雪歩を、疲れさせたくないからね」

百合子「たしかに……」

春香「それにほら、百合子ちゃんはミリシタ内でも1年目、3年目、4年目、5年目と脱ぎに脱ぎまくっているから、ビーチバレーにうってつけだし」

雪歩「ちょっとした露出狂ね、すごいわ百合子」

百合子「もっと他に言い方ありません!?」

海美「私のFES限含めて、水着系衣装ってほんと多いよね~。みんな、好きなんだね!」

可憐「これから寒くなっていきますけど……ば、晩秋から真冬にかけて誕生日を迎える子たちであっても、誕生日に新たに水着が実装されるんですよね……」

真美「ゆきぴょんとか、そうだよね→」

百合子「話を戻しますけど、そっちは2人だけですよね?いいんですか、なんか不公平な気がしますけど」

のり子「う~ん、でも、2人だけってのは、『HOTDOGS』側の都合だしなぁ。こっちは3人そろってくると思っていたんだよ」

海美「そういう気遣いは不要だよ。なんだったら、3人ともコートにいてもいいぐらい」

雪歩「大した自信ね……さすがは超ビーチバレー全国大会優勝経験者といったところかしら」
518 : Pチャン   2021/10/26 19:56:15 ID:ujtBERLqBU
百合子「!? 全国大会優勝?! な、なんですか、そんなの聞いていないですよ?!というか、超ビーチバレーってなんですか?!」

春香「今更すぎるツッコミ!」

可憐「あはは……」

雪歩「のり子さん、真美ちゃん。3人でミーティングする時間くれますか?」

のり子「うん、いいよ。10分ぐらいなら」

海美「作戦会議ってやつだねー、いいよー、いいよー、燃えてきたぁー!」

真美「じゃあ、その間、観客席のみんなを飽きさせないように真美とノリーがせくちーポーズきめてくるね!」

のり子「ええっ!?」

春香「テコ入れですよ!テコ入れ!」



一旦、のり子たちや可憐たちと離れた3人。

百合子「あ、あのー……それで、白雪さん。作戦があるんですか?」
519 : おやぶん   2021/10/26 19:58:42 ID:ujtBERLqBU
雪歩「単純よ。可憐ちゃんを狙いなさい」

百合子「!?」

春香「海美ちゃんは素の身体能力が高いのに対して、可憐ちゃんの能力はそこまで。この異界においても超人的な動きはできないと見てもいいよね」

百合子「えっと、つまり可憐さんは元々、運動が得意というわけでもなく、異界における特殊な能力としても身体能力に影響していないってことですか?」

雪歩「たぶんね。後者に関しては把握しきれているわけではないけれど」

春香「私たちの下を離れた可憐ちゃんがこっち(異界)で能力を開花させた可能性も無きにしも非ず、か。昔は異界に足を踏み入れるのも怖がっていたのになぁ」

雪歩「ふふっ、そうだったね。師匠の後ろによく隠れていたっけ」

春香「それは雪歩もでしょ?」

雪歩「ん、ん。さぁ、なんのことかしら。とりあえず、ふたりとも……高坂海美をまともに相手にしてはいけないわ」

百合子「見るからに運動得意そうですものね。波動球みたいなの使ってきそう」

春香「パワーよりもスピードってタイプだとは思うけど、とにかく気をつけるに越したことはないよ」
520 : P殿   2021/10/26 20:00:35 ID:ujtBERLqBU
雪歩「当然だけど、何かあれば私がどちらかと交代するわ。いざとなったら……」

春香「雪歩、ダメだよ。あの能力は使っちゃダメ。約束したでしょ」

雪歩「春香……」

百合子「あ、あっれー?またなんか私が知らない感じの設定増えています?それとも意味深な雰囲気出して、最後まで判明しない禁術みたいなあれですか」


雪歩「試合内容はダイジェストでお送りしますぅ!」


百合子「来たれ、嵐よ!今こそ見せます!乙女ストーム!」

海美「ふうん、百合子、それがこちら側(異界)で得た力なんだね。でも足りない、足りないよ!百合子に足りないもの、それは――――情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ、」

海美「そしてなによりも――――速さが足りない!!」

春香「嘘っ!?消えた!?」

可憐「縮地法……海美ちゃんの極めた速度には音さえもついていけません……!」

百合子「ぐわぁあああああああああ」


雪歩「くっ……あっという間に1セットとられてしまったわね」
521 : ダーリン   2021/10/26 20:02:29 ID:ujtBERLqBU
春香「どんがらスクランブル!!!」

可憐「あれは……黄金の回転!?」

海美「可憐、危ない!」

百合子「いくらなんでも可憐さんにそんな……ううん、ちがう!はじめから海美さんが可憐さんを庇うことを信じての攻撃!?」

海美「うぉおおおお!!」

春香「な……!逆回転で相殺したっていうの!?」



雪歩「2セット目も可憐ちゃんたち、ね」
522 : 高木の所の飼い犬君   2021/10/26 20:06:47 ID:ujtBERLqBU
可憐「パフューム・ブリンガー!!」

春香「そんな!可憐ちゃんにこんな能力が!?」

百合子「さっきのセットで疲弊した海美さんの助けになろうと、その強い意思が、あれだけの力を目覚めさせたとでもいうんですか!?」

春香「主人公か!」

可憐「はぁ……はぁ……」

百合子「消耗しています!今です、春香さん!」

海美「可憐……!! させるかぁあああ!!!」

百合子「あ、あれはキネティックパワー!?」

春香「ここにきてヒーローズネタだって?!」



雪歩「3セット目も『HOTDOGS』……春香、百合子!」ダッ
523 : プロデューサーさま   2021/10/26 20:08:44 ID:ujtBERLqBU
春香「来ないで!」

雪歩「!」

百合子「えへへっ、やっと体があたたまってきたんですよ。残りの2セット、私たちが勝ちますから。だから、白雪さんはそこでじっとしていてください」

雪歩(ふたりとも、もうへとへとだ……!)

雪歩「で、でも!」

春香「雪歩、私たちを信じて」

雪歩「!」

百合子「お茶でも飲んで、のんびり待っていてください。選べる食材、少なくなっちゃいましたけど、でも、ぜったい……次こそ勝ちますから」

雪歩「春香、それに百合子……。わかったわ、たまっていた覚醒コミュをのんびり見てジュエル獲得していくことにする」

春香「ついついたまっちゃうよねー」

百合子「性格も出ますよね、ああいうの」
524 : プロデューサー君   2021/10/26 20:10:47 ID:ujtBERLqBU
呼吸を整え、春香が百合子を見つめて言う。

春香「百合子ちゃん、私ね、最初から間違っていた気がする」

百合子「ど、どういうことですか?」

春香「2人を打ち負かすことばかり考えていたから」

百合子「春香さん……?」

春香「私たちの呼吸を、力を、魂をひとつに、ユニゾンさせるんだよ!そうだよ、私たちは『Legend Girls!』」

百合子「!! 春香さんの力が私に流れ込んでくる! もっと早く使ってほしかったなんて言いませんよ!」

春香「1+1は―――?」

百合子「1,000,000ってことですね!なりましょう、伝説に!」

春香・百合子「はぁあああああ!!!!!!!!」

海美「ここにきて、なんて気迫……でも、私たちだって!まだまだいけるよね、可憐!」

可憐「う、うん!」
525 : プロデューサーくん   2021/10/26 20:14:50 ID:ujtBERLqBU
真美「試合しゅうりょーー!!」

のり子「熱い闘いだったね!」

雪歩「春香、百合子。ありがとう、お疲れ様。しっかり休んで」

春香「ごめんね……結局、4セット目しかとれなくて」

百合子「あのセットで全力出し切っちゃいましたもんね」

春香「食材、どんな具合?」

百合子「なんとかもぎとった虹色レタス以外は、余った食材、つまりグレードが低く設定されている食材のなかから選べるみたいですね……いてて。筋肉痛確定です」

春香「それに対して、ほら、あれ。さすが海美ちゃん、スタミナマジぱないね。あれだけ動いたのに、ちょっと休憩しただけでピンピンしているよ」

百合子「可憐さんはけっこう疲れているみたいですね。はい、春香さんの分のスパークドリンク。当日限定ですよ」

春香「ありがとう。ふーっ、生き返るぅ! ……前から思っていたけど、当日限定で、過ぎたら消失するって……これの成分っていったい……?」

雪歩「廃棄寸前のものってことなのかしら」
526 : Pちゃま   2021/10/26 20:17:27 ID:ujtBERLqBU
百合子「深く考えたらいけませんよ。噂じゃ、1つ食べさせるだけでソロライブしたときの10倍以上の親愛度を獲得するロールケーキがあるんだとか……」

雪歩「なにはともあれ、2人のおかげで手に入ったこの虹色letters……じゃなくて虹色レタス。無駄にしないよ。それにこれも」

春香「ん?雪歩、その卵は?」

雪歩「余っていた食材の中にあったの。コカトリス卵」

百合子「コ、コカトリス!?雄鶏と蛇とを掛け合わせたような姿の生物ですよね?」

雪歩「>>501にあるとおり、『コカトリスの卵』ではなく『コカトリス卵』よ。石化能力にちなんでいるのか、殻がものすごく硬いのよね。そしてその味わいはなんとも不思議、キメラって感じらしいわ」

春香「待ってよ、雪歩。たしかその卵で勝負に出ようっていうの?」

雪歩「言いたいことはわかるわ。この卵、はっきり言ってそんなに美味しくないわ。本来なら、春香の心眼や百合子の魔導書を駆使して、もっと慎重に食材を選ぶべきかもしれないわね」

百合子「超ビーチバレーの報酬になっていたものと違って、余った食材グループはわりと平凡なものが多いのが、私にだってわかります」

雪歩「そうね。でも……今度は私を信じて」

春香・百合子「!!」

雪歩「虹色レタスに、コカトリス卵、それからアレとアレとを合わせて、あのクッキングデバイスを使えば――――超バーガーの完成よ!」
527 : 仕掛け人さま   2021/10/26 20:19:40 ID:ujtBERLqBU
百合子「超バーガー!?」

春香「組み合わせしだいで無限の可能性、ってことだね。やれやれ、美味しいところは、いつも雪歩にもっていかれちゃうみたいね。………私は信じるよ、雪歩のこと。私の、ううん、私たちの自慢のお姉ちゃんだもんね。そうでしょ、百合子」

百合子「春香さん……。くっ、本当だったら私が成長した魔導書とのリンクを見せるときなのに、さっきのビーチバレーで体力を消耗しきっちゃって……。白雪さん、私も信じています!白雪さんなら、作れます、超バーガー!」

雪歩「ありがとう、ふたりとも。いってくる。輝きの向こう側へ!」




海美「可憐、いけそう?」

可憐「こ、こういう状況も考えて、既に調合は済ませてあったから……。調理の大部分は海美ちゃんに任せることになっちゃいそうだけど、このスパイスさえ適切に使えば、負けないよ」

海美「調味料の加減は今でもそんなに得意ってわけじゃないけど……でも、頑張ってみる!」

可憐「うん……」

海美「ねぇ、可憐。あのさ、この戦いが終わったら―――――」

可憐「え?」

海美「……なんでもない!休んでいて!そこで私が雪歩さんに勝つところ、しっかり見ていてね!」

可憐「う、うん」
528 : Pちゃま   2021/10/26 20:22:11 ID:ujtBERLqBU
のり子「両チームともに調理開始の準備ができたようです!」

真美「お腹ペコペコリンだよ!とっとと、さっさと、ぱぱっと作ってもってきて!」



雪歩「高坂海美……ううん、海美ちゃん。可憐ちゃんは返してもらうから」

海美「まだそんなこと言っているの?こっちについてきたのは可憐自身の意思なんだよ? 雪歩さんたちのやり方じゃ世界は救えない」

雪歩「あなたたちのやり方だったら、救えるっていうわけ?は!とんだ驕りね。勇者にでもなったつもりなわけ?」

海美「なんでそんな言い方するの! 昔の雪歩さんだったら……」

雪歩「もう昔の私じゃない。怖がりで、臆病で、ダメダメな自分は捨てたの」

海美「雪歩さん……」

雪歩「リーダーがどんな人か知らないけど、ここにいないっていう、その事実で程度が知れるわね」

海美「……っ!リーダーのことを悪く言わないで!」

雪歩「全力でかかってきなさい。あなたの全てを否定してあげる」
529 : プロデューサーちゃん   2021/10/26 20:26:10 ID:ujtBERLqBU
百合子(春香さん、あの……どっちが悪役なんですか、これ)

春香(というか、これから行われるのは料理勝負なんだけど……)

可憐(ふぁ、ふぁいとぉー!)


次回、決着!
そして『HOTDOGS』のリーダーは……!?

Recipe8partBにつづく
530 : 魔法使いさん   2021/10/26 20:29:25 ID:ujtBERLqBU
リーダー候補を2人に絞ったので、安価投票で決めたいと思います。

1.田中琴葉

2.四条貴音

多数決。同票であればIDに含まれる数字で判定。(大小)
0票であれば期限終了後に、自レスして、IDに含まれる数字で判定
(最初に登場する数字が偶数→琴葉 奇数→貴音)

レスの有効期限は10/29 11:59:59 


Recipe8partDで完結させます、なんとか
10月中は現実的ではないので、再延長して11月中を目処に。
何卒最後までお付き合いください
ぐだぐだ感を楽しんだらいいと思います(開き直り)
531 : あなた様   2021/10/26 21:03:54 ID:uTxzIV5b62
お待ちしておりました。
雪歩はどこまでこのキャラを維持できますやら

あ、リーダー候補は琴葉で一つ
532 : レスありがとうございます!   2021/10/29 17:07:47 ID:0cE.KRnr/M
Recipe8partB  


のり子「さぁ、調理が始まったよ!『グリルモワール』萩原雪歩VS『HOTDOGS』高坂海美の一騎打ち!!」

真美「お題はハンバーガーだけど、ふたりの間に挟まれたい兄(C)、姉(C)いっぱいいっぱいだよね!」


春香「雪歩、頑張って! うう、さっきの超ビーチバレーで疲れている私には百合子ちゃんの頬をむにることしかできないよ」

百合子「ふふうにおうへんひあほうほ!?(ふつうに応援しましょうよ)」


可憐「海美ちゃん、油断しないで。雪歩ちゃんはこれまで競ってきたどの相手よりも強敵だから……!」


海美「うみみーーんっ!!!」シャキンシャキンシャキン

のり子「なっ、なんだあっ!?あの速さ!?う…海美 たった数秒で具材をバラバラにした!」

春香「あれはミラソニ!」

百合子「包丁捌きに対するその呼称、ぜったい定着しませんって」

真美「切り刻んだあれ、1セット目で勝ち取ったミリオン玉葱だよ!」

のり子「食材の名前なんていちいち考えていられないってのがまるわかりだぁー!!」

海美「ふふふふ、玉葱はビタミン・ミネラル・タンパク質……そして女子力が含まれている完全食なんだよ!」

通りすがりのセレブ「玉葱を切る際に必ずといっていいほど話題にあがるのが、いかに涙を出さないようにするかですわね!」

のり子「えっ、誰!?」
533 : 下僕   2021/10/29 17:10:08 ID:0cE.KRnr/M
セレブ「料理の豆知識としては定番なので、わざわざ解説しなくていいとも思いますが……尺稼ぎに話してさしあげますわ!」

真美「ミもファもないね」

春香「それを言うなら身も蓋もない、だよ!」

セレブ「まず涙が出てしまう原因は玉葱の細胞を壊した際に、中に含まれる硫化アリルという成分が気化しはじめて空気中に放出され、それが鼻や目を刺激するからですの」

百合子「早い話、硫化アリルが目や鼻を犯すってことですね」

春香「言い方!」

セレブ「この揮発性の高さを逆手にとって、電子レンジで加熱することであらかじめ硫化アリルを気化させてしまう方法がありますわ。ただし、この方法、たしかに涙は抑えられますが、この硫化アリルは食欲増進効果や、ビタミンB1の吸収と活性化を促す作用もある成分でもあって、食味も少々落ちてしまいますの」

真美「へぇ、じゃあ逆の逆で冷やせばいいんじゃない?」

のり子「そんな安直な……」

セレブ「ええ、そうですの。安直な発想でいいですわ。あらかじめ冷蔵庫で冷やしておいて気化しにくくしておいて、素早く調理するのも効果的ですわよ。あとは、包丁にもよりますの。切れ味のいいものを使用することで細胞の破壊を抑えることができるとされていますわ」

春香「海美ちゃんがあれだけ玉葱を切っておきながら涙1つ出さないのは、切り方によるものってことだね」

百合子「あとは、換気扇でも回しながら調理することでそもそも硫化アリルを目や鼻に近づけさせないなんて方法もあるみたいです」
534 : P殿   2021/10/29 17:12:25 ID:0cE.KRnr/M
海美「そろそろ肉が食べたいよね。生肉でね」

のり子「あ、あれは!!」

真美「2セット目で勝ち取った謎の肉だぁーーー!!」

のり子「謎だけど、とりあえず加熱なんて必要ないらしいよ!」

セレブ「正体不明の肉……孤島……うっ、頭が」

海美「まだまだいっくよーー!」

のり子「あ、あれは……な、なに?」

真美「謎だぁーーー!!」

春香「どひゃぁっ!!」ドンガラガッシャーン

可憐「あ、あれは私の調合したスパイスです……!あの謎のお肉を最高のものにするんです……!」

百合子「トマトケチャップにチーズ……王道のハンバーガーの形にはなっているみたいですね」

のり子「待って、あのバンズ、妙じゃない!?」

真美「あー、わかるよ。真美も、まさかあの見た目で17歳ってびっくりどっきりまったりしちゃったもん。体重、30㎏なんでしょ?はるるんの半分しかないじゃん」

春香「それは杏……って、他所の事務所じゃん!あと、私、60㎏もないから!花も恥じらう乙女の体重だから!」

海美「完成☆」

観客「ウミミミーーンン!!!!!」
535 : おやぶん   2021/10/29 17:14:13 ID:0cE.KRnr/M
のり子「あっという間に作っちゃった」

真美「ゆきぴょんの調理描写一切ないよ!?」

雪歩「このあとでありますぅ!」

海美「さぁ、食べてみて!女子力満点だよ♪」

のり子「ピンクのバンズにスパイスの効いた謎の肉、玉葱、チーズ、トマト、他」

春香「他ってなに!?」

百合子「春香さん、考えるな、感じろですよ!」

真美「いただきマーシャル諸島♪」

のり子「オセアニアっ!」

真美・のり子「!!!!!!!!!」
536 : Pしゃん   2021/10/29 17:16:49 ID:0cE.KRnr/M
春香「うわああああああ、のり子ちゃんの衣装が乙女チックに変わっているぅ!?」(画像はない)

百合子「あれは、ミルクティーン・ダイヤ!そもそもカード名が『乙女、風に吹かれて』なんて、乙女すぎますよ!?」

可憐「み、みなさん、真美ちゃんのほうも見てあげてください……!」

春香「えっ、でも真美はべつのそのまま………んん!?」

百合子「真美ちゃんが会場にしれっと置いた盆栽が――――」

のり子「嘘!?白バラの花壇に変わっている?!なんて演出力なの!?」

春香「そうかなぁ!?って、やっぱり真美自身は変わっていないじゃん!」

のり子「みなぎってくるよ、女子力が!今なら瓦1,000,000枚割れそうだよ」

百合子「女子力ってなんなん……」

真美「すごいよ、これ!謎のお肉にセクシースパイがデスマッチしているYO!」

春香「スパイスがマッチ、かな」

観客「ワァァアアアアアアアアア」

のり子「こりゃ、もう決まったかな」

真美「『うう……ひんそーでちんちくりんな、私なんて、勝負する前から負けに決まっていますぅ~~!!春香ちゃんの穴掘って埋まってますぅ~!!』」

春香「雪歩!?なに言っているの?!穴って、どの穴!?」

百合子「あれが真美ちゃんの変声制御【ボイスコントロール】!! くっ、この勝負、私たちの……」

雪歩「ちょ、待てよ」イケボ

可憐「雪歩ちゃん……まだ諦めていないんですね」

雪歩「私、調理しているところ微塵も描写されていませんけど!?」

春香「というわけで、次は雪歩のターンだね」
537 : 下僕   2021/10/29 17:20:18 ID:0cE.KRnr/M
雪歩「よいしょっと」

のり子「な……なに、あの動きは……」

可憐「!! あれは、収穫しているんです」

真美「へ?今!?」

春香「大根ですよ!大根!」

百合子「あれは白金星々と呼ばれる品種ですね」

真美「スタープラチナ?」

百合子「いえ、プラチナスターズです」

春香「無理やりアイマス要素ぶちこんできたぁー! で、でもさ、あの大根ってたしか異界の品種で、見てくれだけはいいけど、味はそんなにじゃなかった?」

のり子「うん?取り出したのは……おろし金?」

百合子「そうか!あれは『ミルキーウェイ』ですよ!白雪さんが歩さんにもらったっていう」

春香「え?あ、うん、あれかー、そっかー、あれね、うん、覚えているよ、もちろん、週2日ぐらいで使う、あれね」

雪歩「ふんっ」シュババババババ

セレブ「なんですの、あのおろし金! おろされた大根がまるで宝石のように輝いていますわよ!?」
538 : Pたん   2021/10/29 17:24:00 ID:0cE.KRnr/M
真美「これが本物の……アイドルのステージ!」

春香「白金星々は異界の大根の中でも加熱すると味が損なわれるタイプで煮物などには不向きなんだよね。かといって通常、生だと辛すぎる……」

百合子「どれ、一口、味見しておきましょう」ヒョイッ、パクッ

真美「あ、そういうの真美の絶対特権なのにぃー」

百合子「ひゃうんっ♡ な、なんですか、これ!? これが本当に大根!? 味の宝石箱や!」

海美「でも、ハンバーガーに合うの?」

可憐「………見てください、次があるみたいですよ」

雪歩「知らなかったの? 意外とぜんぶやれちゃうこと~♪」

春香「あれってどきどきシーソー?」

百合子「『ときどきシーソー』ですよ!間違えられやすいですけど!って、白雪さんが作っているあれ、オ、オムライス!?」

春香「コカトリス卵を使って、ふわっふわっなオムレツにするために、異界調理器具の職人ロコさんから貰った泡だて器『始まりの風』を使ったんだね」

百合子「コカトリスと『創造は始まりの風を連れて』……ファンタジーつながり?」

可憐「くんくん……しかもあのお米は予選のときにお婆さんが使っていたあきたMachicoですね。私もハルマチ女子なのでわかります」

春香「あれ?予選の時、可憐ちゃんいなかったよね」

可憐「ぎくっ。ま、まあいいじゃないですか、あはは……」

海美「ハンバーガーに大根とオムライスって、そんな!?なんて斬新な発想!」

のり子「えぇ……」

真美「まだなんか作るみたいよ!?」

春香「食材選びすぎじゃない!?余り物全部使っていない!?」
539 : ハニー   2021/10/29 17:26:18 ID:0cE.KRnr/M
雪歩「えいっ、えいっ!」

春香「あの具材、この香り、まさか……!」

百合子「麻婆豆腐!?」

可憐「この流れ―――ひょっとしてスポ食!?」

春香「わかっていた、わかっていたよ、大根が出てきた時点でさぁ!」

百合子「あわわわわ、じゃ、このあとはもしかして」

雪歩「和食の神髄、お目にかけましょう~♪ 包丁はちょっと怖いけど~♪」

百合子「お刺身!」

真美「しのみやんソロパートだ!」

のり子「本当に『ワールド・アスレチック・COOK-KING ~勝者必食!?スポ食の秋~』なの!?」

海美「ぐぬぬぬ」

百合子「なんか悔しがっていますけど、あの歌どおりに作ってうまくいくとは……」

春香「ううん、美味くいくに決まっているよ!だってここは異界だし、食材も異界のものだから、いざとなったらそれで誤魔化せる!」

百合子「開き直りすぎていませんか!?」

雪歩「さあ、これでラストだよ!」

可憐「!?」
540 : ダーリン   2021/10/29 17:29:24 ID:0cE.KRnr/M
春香「ええっ!?バンズは………虹色レタス!?」

のり子「どっちのチームもバンズの色攻めすぎだよ!」

雪歩「君といた虹色のbuns 食べそびれた溢れ出す食材たち 突然だけどハンバーガーにしたの...食べてね~♪」

百合子「そうはならないですよね」

セレブ「なっていますわよ!」

雪歩「完成しましたぁ! 真美ちゃん、のり子さん――――くらえ!」

春香「ハンバーガーをつきつけたぁあーーっ!」

のり子・真美「???????」モグモグ

百合子「海美さんのときは感嘆符だったのに、こっちは疑問符……ど、どうなるの、この勝負」

可憐「……もう決まっているよ」

百合子「え?」

海美「………見て」

春香「ウ…ウソやろ。こ…こんなことが。こ…こんなことが許されていいのか」

のり子「私たちみんなの服が、いつの間にか、エプロンに!?」

真美「ただのエプロンじゃないよ!これ、『パッション・クッキング』だよ!」スパッツピラッ♡

百合子「イベント期間中に書いていれば……ううん、これが白雪さんの力、どうだ、まいったか!『HOTDOGS』!」

春香「なんで百合子ちゃんが得意気なの!?」
541 : そこの人   2021/10/29 17:32:40 ID:0cE.KRnr/M
のり子「料理大会準決勝、勝者はグ―――」

海美「雪歩さんには悪いけど、負けを認めるわけにはいかないよ」スッ

可憐「海美ちゃん!?」

春香「あの包丁の構えはまずいっ……雪歩、避けて!」

海美「飛ぶ斬撃を見たことある?」

百合子「カ、カッコイイ!」

雪歩「……斬れないよ」

海美「ふん、それはどうかな。試してみなきゃ、」

雪歩「海美ちゃんじゃ、斬れないよ。私たちの絆はそんなに脆くない」

海美「!」

百合子「こ、これは」

春香「話をすり替えて、それっぽい状況にしようっていう作戦……!賭けに出たんだね、雪歩」

百合子「今回、身も蓋もないですね、ほんと!」

雪歩「どっちみちその斬撃は私には届かない。なぜなら―――」スッ
542 : あなた様   2021/10/29 17:37:13 ID:0cE.KRnr/M
可憐「……! あれは神炎の剣(スコップ)レーヴァテイン! 海美ちゃん、もうやめて!勝負は私たちのま、」

海美「ダメだよ。それじゃ、ダメなんだ。だって、リーダーは……勝ってきなさいって。私たちを信じてくれた、期待してくれたんだよ?」

可憐「そ、それは」

雪歩「ずいぶんとそのリーダーっていう人にお熱なんだね。自分は勝負の舞台に姿を見せずに、ふたりを頼りにしているだけの人の何を信じているの?」

海美「この……!」

百合子「煽るなぁ」

可憐「……雪歩ちゃんにはわからないでしょうね」

春香「可憐ちゃん……?」

雪歩「ろくに説明もせずに2人で出ていって、わかるわけないよ」

海美「リーダーは……このどうしようもなく理不尽な世界を作り変える、その方法を知っていて、それだけの力を持っているんだよ」

百合子「待ってください!そこまで世界を憎む出来事があなたにあったっていうんですか!! いったい、どうして……どうして、そんなに悲しい目をしているんですか!」

春香「いいよー!メインヒロインっぽいよー、百合子ちゃん」

百合子「私は煽らなくていいんです!」

海美「そんなの今、話したって―――」



??「そうね、話したところで何も変わらない。変えられないわ」
543 : 変態インザカントリー   2021/10/29 17:41:05 ID:0cE.KRnr/M
雪歩・春香・百合子「!!!」

のり子「おおーっと!?……えーっと、突然の乱入者、さん?あれ?警備はどうなって……え?あ、そうなんですか、あの子が」

真美「ホットペッパーの最後の1人ってこと!?」

可憐「ほ、『HOTDOGS』です…!」

のり子「えっと、はい、情報が入りました。あのカチューシャをつけた、いかにも正統派の子が『HOTDOGS』のリーダー……」


海美「こ、琴葉ぁ……」

琴葉「お疲れ様、海美ちゃん。それに可憐さんも」


のり子「田中琴葉選手です!」

観客「ワァアアアアア????」

真美「あれ?けどさ、もう勝負に決着はついったっしょ?どうするの」

春香「まさか、田中さんを含めて再戦なんて、ないよね?」

雪歩「………」
544 : Pさぁん   2021/10/29 17:44:42 ID:0cE.KRnr/M
百合子(白雪さんの田中さんを見る目………警戒している?むしろ恐れ?でも、見るからにいい人そうだけど。微笑みを浮かべているし)

琴葉「琴葉と呼んでかまわないわ」

春香「う、うん」

琴葉「それに、勝負の結果を今になってどうこうしてほしいとは言わないわ。ここでごねだした女の子を引きとりにきた、そだけ」

海美「で、でもっ!琴葉、あれがいるんでしょ?じゃあ、私たちは負けてなんていられな、」

琴葉「黙りなさい」

海美「っ!」

春香(表情は柔らかいままなのに、スッと切り込むような声)

百合子(海美さん、静かになっちゃったけど……泣きそうな顔。えっと、ここからどうなるの?)

可憐「あの、琴葉さん」

琴葉「可憐さん」

可憐「は、はひっ!」

琴葉「選びなさい」

春香(え?『鳥籠スクリプチュア』の出だし?)

百合子(ちがいます!)
545 : お兄ちゃん   2021/10/29 17:49:15 ID:0cE.KRnr/M
可憐「選ぶってなにを……」

琴葉「まだ私たちについてくるのか、それとも別れて、あちらへ―――ほら、すぐそこで私の一挙一動から目を離さないように、一音たりとも聞きのがさないようにしている、萩原雪歩のもとへと帰るのか」

可憐「!! ど、どうしていま、このタイミングで……?それに海美ちゃんは……」

琴葉「あなたは私の計画がいくつかの意味で危険を孕んでいるのに、とうの昔に気がついている」

春香・雪歩・百合子「……!?」

琴葉「それは単に失敗のリスクと言い換えられるものでもないわ。そう、世界を救うつもりが、場合によっては今以上に壊す結果につながるかもしれない」

真美「ねぇ、ノリー、真美たちはどうしたら、」

のり子「しーっ!あとでお菓子買ってあげるから!ハロウィンも近いし!」

真美「りょーかい♪パティスリーバンナムのバームクーヘンでいいよ」

のり子「げぇっ!?高級ブランドじゃん!」

琴葉「ん、ん。つまるところ、可憐さんは海美ちゃんが心配だからいっしょに行動していたんでしょう?私の動向、真意を探りながら」

可憐「それは………」

琴葉「隠さなくたっていいわよ。あなたには、うん、あなたの持つその嗅覚と調合術……感知系能力と調合系能力には大いに助けられたもの」
546 : 夏の変態大三角形   2021/10/29 17:57:18 ID:0cE.KRnr/M
可憐「あくまで過去形……。!! も、もしかして、準備が整ったってことですか……!?だったら、」

琴葉「どうかしらね。ただ言えるのは……後戻りはできないってこと。ううん、それは初めからね、私にしてみれば」

可憐「うっ……」

琴葉「海美ちゃん、あなたはついてきてくれる。そうよね?あなたは覚悟がある。可憐さんよりも前に、あの日、あの時、あの場所で誓ってくれたわよね?」

海美「………いいの?」

琴葉「うん?」

海美「まだ私、琴葉のそばにいて、いいの……?」

琴葉「当たり前でしょう?こんな茶番でたった一回、負けただけで、どうにかしてしまうほどの仲じゃない。でしょ?」

海美「

琴葉「ふふっ、私もよ。可憐さん、その顔だと、どうやらあなたは私に、ううん、私たちとは相容れないようね」

可憐「………」

琴葉「大丈夫、安心して。口止めなんてしないわ。あなたが知ったすべてをそこにいる『お姉ちゃん』たちに話してあげればいいわ。でも―――そうね、もう一度、言うわ。何も変えられないわよ」
547 : うぎゃー!またやってしまった!   2021/10/29 18:06:10 ID:0cE.KRnr/M
>>546
海美の台詞抜け 琴葉の「当たり前でしょう?」台詞の直後 

海美「琴葉……ううっ! もー、好きッ! 琴葉大好き!」
548 : Pちゃま   2021/10/29 18:08:13 ID:0cE.KRnr/M
春香「あのさ、そろそろ話にまぜるか、とっとと帰るか、してくれないかな」

百合子「春香さん!?」

雪歩「春香、そんな言い方ないでしょう?私が言うのもなんだけど……海美ちゃんだって、一度は『YUKIHO'Sキッチン』の一員になったのは間違いないんだから」

春香「でもっ!雪歩、まさか気づいていないってことないよね?私は察したよ。だから、今ね、冷静さを欠こうとしている」

百合子「ど、どういうことですか!?」

雪歩「およそ一年前、あの日、海美ちゃんが現『YUKIHOS'キッチン』にやってきたのは、すべてここにいるスレンダー美人が陰で糸を引いていたんじゃないかってことよ」

百合子「!! って、私、当時のことを結局、このクライマックス(?)まで聞いていないんですけど!?」

春香「しかたないなぁ。時間(と体力)がないから、ざっっっくり、まとめて話すね」

雪歩「(リアルタイムで)数日後を目安に!」

百合子「どひゃあっ」


というわけでRecipe8partBの途中ですが、つづきはまた後日
みてのとおり、リーダーは琴葉を採用
何卒最後までお付き合いお願いします! 
549 : Pチャン   2021/10/29 18:13:07 ID:7xVq9RBp32
乙であります

もう一山ありそう、あって欲しい
年を越してもいいからもう一、二勝負ください
550 : プロデューサーくん   2021/10/29 18:32:40 ID:7tWkIzJn0M
おつかれさん
そろそろ佳境か?
551 : つづき投下していきますよー   2021/11/04 10:52:04 ID:cpS5s6NA1Q
春香「海美ちゃんは最初、お客さんとして私たちのもとを訪れたの」

百合子「『YUKIHO'Sキッチン』のですか?」

春香「ううん、その頃は師匠がいて……店名は師匠がこっちの世界で使っていた名前からとって『四条亭』だった」

百合子「『四条亭』?なんだか歴史ある料亭風の名前ですね。あっ、べつに『YUKIHO'Sキッチン』がダサいって話ではないですよ?」

雪歩「今と同じで一度に相手するお客さんは原則的に一組だけだったから、調理のほとんどは師匠の仕事。私たち3人は専らその手伝いをしていて、そうしながら師匠の技を見て学びもしていたのよ」

百合子「なるほど。それで海美さんがお客さんとしてやってきたってことは……何か悩みがあったってことなんですか?今のお店は>>23にあるとおり悩める乙女の拠り所ってのが売りなわけじゃないですか」

春香「あー、そういえばそんな設定あったね。ん、ん。たしかに海美ちゃんも悩みを抱えてやってきた」

百合子「それって……」

春香「『尊敬する人に認められたいけど、うまく料理がつくれない』、いろいろと話してくれたけど要約するとこんな悩みだったの」
552 : 変態大人   2021/11/04 10:56:05 ID:cpS5s6NA1Q
雪歩「今になって、海美ちゃんの話していた尊敬する人ってのが、大切な人だとも言っていたその人物が判明するとはね」

海美も琴葉も否定しなかった。琴葉に関していうなら、はっきりと雪歩に対して微笑みを向けさえした。
海美があの日店を訪れた理由は琴葉にある。どうやら間違いないようだ。
黙って春香たちの話を聞いている彼女を雪歩は見続けたままだった。戦闘姿勢などとっていないのに、隙がなさすぎる。
見た目は自分と同じく10代の女の子であるのに、漂わせている雰囲気は20や30じゃとても出せるものじゃない。肉体年齢と精神が一致していない―――雪歩は、というより雪歩たちはそうした「人間」に過去に会っている。
もっと言えば師事していたのだった。師匠……四条貴音とここにいる田中琴葉はその点で似ている。
ふたりは思いもよらぬ存在であり、そしてただならぬ関係なのかもしれない。雪歩はそう思った。
553 : ご主人様   2021/11/04 11:03:42 ID:cpS5s6NA1Q
海美は貴音の作った料理によって悩みを解決できた。それは彼女が急激に料理上手になったことを意味するのではなく、料理上手になる道を得たという意味でだ。
すなわち海美はその日から四条亭の一員に、さらに言い換えるなら家族となった。
当時、数多の悩める乙女たちの中には貴音の面妖な気配にあてられ、心を奪われてしまう者も少なからずいたが、彼女たちが四条亭に留まることを、深入りすることを許すことはまずなかった。
だから海美を一員に誘ったとき、春香たち3人は驚いた。他でもなく自分たちもまた貴音に誘われ、いや、救われてその場にいるのは確かであるが、しかし、海美を迎え入れた状況とはまるで異なる。
それでも貴音や海美に対する不信感は瞬く間に失せた。
四条亭の一員となった海美があまりにもまっすぐで、ひたむきだったからだ。
無論、春香や雪歩、それに可憐も貴音から料理を教わることには前向きであり、真剣そのものだった。
けれども3人はこの世界で生きる術として、半ば与えられた方法であるのに対して、海美は大切な人のために、その一心で料理をものにしようとしていた。
その姿勢の違いは両者にとって刺激となった。多くは良い意味で。時には悪い意味で、つまり衝突のきっかけとなりもしたが、そのほとんどすべては貴音によって落ち着くべきところに落ち着き、仲違いすることはなかった。
あの日までは。
554 : プロデューサーさま   2021/11/04 11:08:26 ID:cpS5s6NA1Q
取り返しのつかない事態が起こったのは、海美が四条亭に加わって3カ月が過ぎた頃。
それは海美がやってくる直前に海外に発った千鶴さんが帰国して、また海外へと旅立った数日後のことだった。

春香「その日もまた悩みを抱えた乙女が四条亭にやってきた。いつものように」

百合子「………」

春香「その子の悩みそのものが事態の中心にあるわけではないから、詳細は割愛するね」

百合子「考えるのが面倒なだけなんじゃ……」

可憐「ゆ、百合子ちゃん!」ムニーッ

百合子「ふ、ふひはへんへひた(すみませんでした)」

春香「結果を言えば、その子の悩みを取り除くことは師匠の料理をもってしてもできなかった」

百合子「!」

春香「私と雪歩、可憐ちゃんの3人はそれ以前にもそういう結果を見聞きしたことがあったの。でもね、それを師匠の失敗というのは間違っているよ。どんなに師匠が自分自身に厳しい人で、師匠自身の未熟さを嘆いてもね」

雪歩「特別な料理は特別なだけで万能じゃない。当たり前のことよね。結局は、悩みを解決するのはその悩みを抱えている本人によるところが大きいってわけ。師匠の、そしてわたしたちの作る料理はそれを助けるものでしかない」

百合子「あの……さっき、春香さんは『3人は』って」

春香「うん。海美ちゃんは、その日、初めて師匠の料理が良い結果をもたらさなかった事態を目の当たりにした」

海美「………」
555 : 貴殿   2021/11/04 11:14:08 ID:cpS5s6NA1Q
一言で表すなら幻滅なのだろう。
純真な海美はそうであるがゆえに、貴音を、その料理を心から信じていた。
たとえ普段から貴音が、自身の料理だけでなく、異界料理自体を万能薬ではなく1つの手段であるのを強調していたとしても、それは海美にとってはただの謙遜やもったいぶりに映っていたのかもしれない。
そして、もしも海美が貴音に失望しただけの出来事に過ぎなかったのであれば、その後の悲劇は起こらなかった………。

百合子「何が、あったんですか」

春香「海美ちゃんはひとりで秘密の小部屋へといき、そしてとある道具を使用した」

百合子「秘密の小部屋って、あの、Fleurangesコミュで出てきた可憐さんが知っていた……」

可憐「し、劇場にあるあの部屋とは関係ないよ……!」

百合子「それに道具って……ひみつ道具ですか。も、もしかして大人のお、」

雪歩「………」ムニーッ

百合子「いひゃい♡ いひゃいへす♡」

春香「こほん。手短に話すね」
556 : せんせぇ   2021/11/04 11:17:16 ID:cpS5s6NA1Q
信じていた貴音でも解決できないことがあるのを知った海美は、秘密の小部屋へとひとり向かった。
先日、千鶴が帰国した際に貴音が「今日は特別ですよ」と言ってみせてくれた部屋である。
そこに並べられたクッキングデバイスや、明らかに料理とは無関係の道具たちに海美は魅了された。
感心して眺める千鶴をよそに、貴音にそれらの使い方を効果を教えてほしいとせがんだ。
いつもの貴音であれば、慎重に言葉を選び、話さないことを選択したであろうことまで、ついついその日は話してしまった。
それぐらいに千鶴との再会は心躍ることであったから。
海美はすべての道具に対して興味を持ったといえるが、その中でも心をつかんだのは――――


雪歩「私の記憶がたしかなら、それはピンクのユニコーンの形をしていたわ」

春香「それこそ……女子力をオトメティックパワーに変換する魔のクッキングデバイスだった」

百合子「ほわぁ、魔のクッキングデバイス!?」ムンッ

海美「………」

春香「ピンクのユニコーン、その使い方を海美ちゃんは見誤ってしまった。あと雪歩で、じゃなかった、あと一歩でお店を含めた周辺半径39メートルが大穴になるところだったんだ」

百合子「!? オトメティックパワーってそんなにも凄まじいんですか!?」
557 : プロデューサークン   2021/11/04 11:20:31 ID:cpS5s6NA1Q
雪歩「その時に限っていえば、その名前さえ口にすることが許されないクッキングデバイスが強力だったと言えるわね。あれは……師匠が封印していたものだったのよ、きっと。未来永劫、使われてはならないものだった」

春香「狂暴化し、手におえなくなったオトメティックパワーの爆発を、師匠は間一髪でとめた。自身の持つ能力をフルに使ってね」

百合子「それが理由で……?」

春香「そう。この世界に留まるだけの力を失ってしまった。それで師匠はこの世界を強制的に離れることになった」

雪歩「『海美を責めてはなりませんよ』―――師匠が最後に残した言葉よ。39年後に再び会える、そう信じているけれど、そんなのわからない。そんな状況下で、師匠はそう言い残した。……もしもその後、海美ちゃんが自分のしでかしたことに心を痛めつつも、4人でお店をいっしょに経営していくことにしてくれたのなら、私は師匠の言葉どおり、恨み言など一切口にせずに赦そうと思っていたわ」

可憐「………」

雪歩「でも、海美ちゃんはそのときには既に虜になってしまっていたのよ。絶大な力、オトメティックパワーに。その力が自身が修行していた料理を通じて生成されるのだから、なおさらね」

『私、やりたいことが見つかったよ。でも、ここじゃダメみたい。ねぇ……ついてきてくれる?』
海美は笑って、そうだ、師匠がいなくなって悲痛な表情の面々に対していつもの爽やかな笑顔でそう言ってのけた。
雪歩は激怒した。必ずこの純情可憐な海美を反省させなければならぬと決意した。
558 : 我が友   2021/11/04 11:25:12 ID:cpS5s6NA1Q
海美は怒る雪歩に困惑していた。オトメティックパワーを経験した彼女は、その力に魅了されない3人こそ狂っているとすら感じた。
そうして、海美は店を出ることにした。
可憐は……彼女についていった。その選択は春香と雪歩をさらに苦しめることとなった。
とくに雪歩はしばらく無気力状態に陥った。絶望と言ってもいいだろう。
それを支えたのは春香であったが、しかし春香にしてもどうにか踏みとどまっているに過ぎなかった。

時間は過ぎた。虚しく。雪歩は自然とその話し方を変えた。仮面を被ったと表現すればいいのだろうか。
いつまでも落ち込んではいられない。涙はとうに枯れた。当然、話し方を変えてみたところで、すぐに何か大きく変わるわけではない。
「強く」なれることなんてない。雪歩たち2人が立ち直れたのは、いまの彼女たちになれたのは、さらに時が過ぎてから。
それは今からおよそ半年前。店の近く。

本を抱いたまま、地面に座りつくして灰色の空を見上げている少女に出くわしてからだ――――。
559 : そなた   2021/11/04 11:29:34 ID:cpS5s6NA1Q
雪歩は思い出す。百合子が最初はまだ異世界に来たのを信じられなくて、パニックになっていたのを。
春香と雪歩とは異なるふうに、しかし紛れもなく百合子もまた窮地にあった。
もとの世界にいた家族、友人、知人、すべてから切り離された少女。
見知らぬ世界に惑う彼女を、どうして雪歩たちが放っておくことができただろうか。
かつて彼女たちの師匠がそうしたように、救うことができるのなら、そうしたい。
かくして百合子を家族に迎えた雪歩と春香。それは2人で寄り添い、絶望を分かち合っていたのが、3人で寄り添い、支え合うことで、新しい日々を紡いでいく活力を彼女たちにもたらしたのだった。

春香は思い出す。初め、百合子は春香を「春風さん」と呼び、雪歩を「白雪さん」と今なお呼び続けていることを。
春香はくすぐったくて、呼称を改めるように百合子に望んだ。雪歩は……反対に白雪と呼ばれるのを望んだのだろう。
そうすることで弱い自分を捨てた。捨てようとした。
でも、と春香は考える。自分がずっとそばで見てきた雪歩。たしかに弱い部分もあるけれど、それは強さでもある。
もしもすべてが終わった、そのときは「白雪」を捨て、雪歩としてまた新たな一歩を踏み出せるのかもしれない。

春香(もちろん―――そのときは私も隣にいるつもりだけどね)

春香は見つめる。愛しい姉を。今までもこれからもずっとずっと支え合うはずの存在を。
560 : Pチャン   2021/11/04 11:33:08 ID:cpS5s6NA1Q
パチパチパチ、と。春香たち3人を中心に話された海美との過去。その話のあとに、拍手をしたのは琴葉だった。

琴葉「泣かせるわね。美しい物語だわ」

皮肉にしても本気にしても、何の色もつけていないような声だった。
ただ、話を切り上げてしまうために、次のステップへと進めるための発言。
場にいる全員が彼女を見やった。
のり子と真美はどのタイミングで話しかけたらいいんだろうと思っており、観客(エキストラ)はそろそろ帰っていいのだろうか、と考えもしていた。

琴葉「お礼に2つ教えてあげましょう」

雪歩「なによ」

琴葉「1つ。私は海美ちゃんを唆して、あの子……あなたたちの師匠を破滅に追い込もうと計画していたわけではないってこと。あの子の動向を海美ちゃんを通して知ることができていればそれでよかったの。海美ちゃんにあんなことをさせるつもりはなかった。あの子を消すにしても、それは私自らやるつもりだったわ」

雪歩「あなたいったい……」

春香「琴葉ちゃん、狙いはなに?これから、何をするつもりなの」

琴葉「さあ?ふふふ……」

百合子「それで、もう1つってなんですか」

琴葉「この先の未来、あなたたちが料理人として生きたいのであれば……表に出ることね。裏(異界)ではなく。こちらに留まり続けることは、きっとあなたたちの身を危うくするわ。あなたたちの思い描く世界はどうやら私とは違うみたいだから」

雪歩「よくわからないわ」

琴葉「避難していなさいってこと。抗うのなら、容赦しない」

可憐「……!」

春香「?」
561 : 彦デューサー   2021/11/04 11:36:48 ID:cpS5s6NA1Q
琴葉「ふふっ、それじゃあね。もしかしたらもう会わないかも」

百合子「あっ、まだ話は、」

琴葉「海美ちゃん、行くわよ。……審査員さん、早くこの子たちを祝ってあげて。グリルモワール、彼女たちが勝者よ」

のり子「へ?あ、うん」

琴葉が去っていく。後ろを海美がつづく。雪歩たち3人、そして可憐がその後ろ姿を見ていた。
拍手喝采。雪歩たちを讃える声はしかし、彼女たちにとどかない。
何かが起こる。嫌なことが。
予感、もはや確信があるのに、動き出せない、どう動いたらいいのかわからない雪歩たちだった。

2時間後―――――

部屋に戻ってきた雪歩たちと、春香に促されてついてきた可憐の合わせて4人。

春香「本当なら、再会を祝いたいところだけど……」

雪歩・可憐「………」

百合子「そんな感じじゃないですね。もっと、抱き着きでもするかと思っていたんですけど」

雪歩「ん、ん。えっと……可憐ちゃん、話してくれる?」

可憐「えっと……すみません、何から話せばいいのか、わからなくて、ただ……時間はそう残されていないのかもしれません」

百合子「どういうことですか?」
562 : 5流プロデューサー   2021/11/04 11:41:31 ID:cpS5s6NA1Q
可憐「え、えっと……」

可憐の膝に置かれた手を、包むように雪歩が握った。え、いつの間にそんなそばに座っていたの?と春香と百合子は思った。

雪歩「1つずつ、落ち着いてでいいよ。時間がなくとも……でも、聞きたい。知りたいの。店を離れて、可憐ちゃんがどうしていたかってこと。全部、知りたいの、可憐ちゃんのこと」

可憐「雪歩ちゃん……」

見つめ合う2人。頬が赤く染まる。溜息を1つついた百合子が、春香に耳打ちする。

百合子(なんか2人の世界に入り込みそうじゃありません?)

春香(いやいや、そういうのはまた今度にしてもらって、あくまで琴葉ちゃんたちの計画について知っていること、話してもらわないと)




可憐「そ、それじゃあ、なるべく短く話しますね」

百合子「長いと読むの面倒ですもんね!」

春香(書くのが、じゃないかなぁ)
563 : Pチャン   2021/11/04 11:45:14 ID:cpS5s6NA1Q
可憐「リーダー、つまり琴葉さんは―――――偉大なる料理家にして深淵なる魔法使いハーヴェイ・バーティの生まれ変わりなんです」

春香・雪歩・百合子「!??!!?!?」


Recipe8partCにつづく
564 : 監督   2021/11/04 11:51:48 ID:cpS5s6NA1Q
partCの投下は早くて明後日を予定

既に最終安価をどうとるかは決めています

何卒最後までお付き合いください!
565 :   2021/11/04 12:39:13 ID:u8PKLUw1C.
きたい
566 : せんせぇ   2021/11/04 18:44:56 ID:9aO1p.RcZY
お待ちしておりました。
どんと来い最終安価
567 : 投下していきます   2021/11/06 18:03:41 ID:GDdhUobePY
Recipe8partC


- 異界 - 
双海亜美令嬢の屋敷内グリルモワール待機部屋

雪歩たち3人は可憐から、彼女が雪歩たちのもとを去ってから『HOTDOGS』として生きてきた日々、そしてそのリーダーである琴葉の素性をうかがうことにした。
可憐曰く、琴葉はある偉大なる料理家かつ魔法使いの生まれ変わりであるそうなのだが……?

百合子「ハーヴェイ・バーティ……それって、オペラセリアの、」

可憐「か、関係ないです。役名考えるの面倒だっただけかと」

春香「へぇー。雪歩、知っている?」

雪歩「ううん……知らない。記憶にある限り、師匠の話にも出てこなかった。可憐ちゃん、そのハーヴェイって人はどんな人なの?」

可憐「お、驚かないでくださいね」

春香「うん?それはフリってやつかな」

百合子「!!!」

雪歩「なんでもう驚いているのよ」

可憐「実はハーヴェイ……彼こそがこの異界の創造主なんです」

春香・雪歩・百合子「どひゃぁっ」ドンガラガッシャーンンン!!

可憐(なんて息の合った転がり方……!)
568 : Pちゃま   2021/11/06 18:07:24 ID:GDdhUobePY
百合子「つ、つまりカミサマってことですか!?」

春香「その表記はどことなく悩める現代女子にカルト的人気ありそうだからやめておきなさい」

雪歩「神ではなく魔法使いと可憐ちゃんは言ったわ。つまり―――この異界は人工物ってことね」

可憐「……? 雪歩ちゃん、なんで急にそんな話し方なんですか」

雪歩・百合子「え?」

春香「あー……。可憐ちゃん、気にしないで。ほら、そういう年頃だから」

雪歩「春香!? >>558>>559でああいう独白しているくせに?!」

可憐「す、すみません。話の腰を折っちゃったみたいで」

百合子「可憐さんは神ではなく魔法使いと言いましたよね。ということは、異界は……人工的につくられた空間ってことですか?」

春香「!! 百合子……そこに気づくとはやはり天才か」

百合子「えへへ」

雪歩「それさっき私が言ったやつじゃん!!なんなん!」

可憐「ゆ、雪歩ちゃん。ちゃんと聞こえていましたよ。えっと、おふたりの想像どおりなんです」
569 : せんせぇ   2021/11/06 18:10:15 ID:GDdhUobePY
雪歩「想像って言っても、私は百合子ほどMPがないからこの異界ってのをどう作ったかまでは思いつかないわ」

春香「MPって?」

雪歩「M(妄想)P(パワー)よ」

百合子「いきなりなんですか、そのまるで意味のない定量化の挑戦は」

雪歩「百合子だったら、何か思いつくんじゃない?」

百合子「え?ま、まあ、そこはすごい魔法を使ったってことなんじゃないですか。ディメンジョンクリエイト!みたいな」

春香「うわっ、捻りのないネーミング」

百合子「シンプルイズベストです!ほら、ボスキャラもゴテゴテとしたやつから、最終形態って一周回ってつるっとした描画しやすいのになること多いじゃないですか」

雪歩「はぁ、話を逸らさないでほしいわね」

可憐(もとはといえば、雪歩ちゃんのせいでは……?)

雪歩「可憐ちゃん、話を続けてくれる?ハーヴェイのこと、そしてこの異界のこと」

可憐「は、はい」


可憐「遡ること390年前―――――魔法使いハーヴェイは存在するあらゆる事物を自分の意のままに操れる世界の創造を目指していたらしいです」
570 : おにいちゃん   2021/11/06 18:14:13 ID:GDdhUobePY
雪歩「ふうん、あながち神ってのも的外れじゃないようね」

可憐「あらゆる事物……それは物質的なものだけではなく、それらに作用する法則も含まれています」

百合子「異界で向こう(現世)の物理法則があてにならないのはそういう理由なんですね。ん?もしかして私たちの異界での能力……ようは異能ってのも?」

可憐「ええ、そのとおりです。ただ……ハーヴェイの大きな誤算の1つがまさにその、い、異能なんです……」

春香「つまり?」

可憐「異能は、ヒトを含め個々の生物によって千差万別、多種多様に発現しました……そ、それらはハーヴェイが予想できずそして制御もできないものばかりだったんです」

雪歩「彼の世界創造は失敗したってことね。箱庭に入れた人間やチュパカブラの精神、心、魂……呼び方はなんでもいいけど、そうした見ることも触れることもできないものを計算で動きを読むなんて到底できなかったわけだわ」

百合子「創造主を失った、いえ、必要としなくなった人工的な世界、かぁ。ある意味で本来の世界らしいのかな」

春香「小難しい話はともかく、その理想郷作りに失敗したハーヴェイが生まれ変わったってのはどういうことなの?」

可憐「……彼は諦めませんでした。彼のための完全な世界の創造は果たせなくとも、完全に近い空間……彼がすべてを支配できる空間の生成を諦めなかったんです」

百合子「それで来世に希望を託したってことですか?また、私たちじゃなんだかよくわからない魔法を使って」

可憐「少し違います。大失敗の後で、彼は見つけたんです。魔法研究の気晴らしにしていた料理中に………世界創造の鍵となる『力』を」
571 : Pさぁん   2021/11/06 18:17:32 ID:GDdhUobePY
春香「まさか――――」

雪歩「オトメティックパワー、ね」

百合子「……!」

可憐「はい。その力を使えば魔法理論上、彼の求める空間創造は可能みたいなんです。けれど、ここにも問題がありました」

春香「問題?」

可憐「オトメティックパワーの運用効率を要求値以上にすることは彼では不可能だったんです」

百合子「はい?」

雪歩「簡単な話よ。少なくとも生物学的に男性であった彼は乙女の力を十全に扱うことができなかった。でしょう?」

春香「あ、そういうことね」

百合子「でも、高等な魔法使いだったら、性別ぐらいなんとかなるんじゃ?」

可憐「オトメティックパワーの運用には、単に肉体変化や憑依といった方法ではどうにもならなかったそうです。純潔なる乙女の肉体と魂の両方が必要だった」

雪歩「それで、転生ってわけね」

百合子「転生によってある目的を果たそうとする偉大な魔法使い……そんなに意識していませんでしたけど、これ、一部の界隈では供給過多気味の設定のような……」

春香「そこは気にしないでいいから!」
572 : 変態インザカントリー   2021/11/06 18:24:43 ID:GDdhUobePY
可憐「ん、ん。しかし転生の魔法はハーヴェイであってもそう安易にできるものではなかったようです。協力者が必要でした」

雪歩「協力者?」

可憐「そう、それがハーヴェイの弟子たちです。そのうちでも特に秀でた3人の魔女……彼女たちはハーヴェイに転生魔法をかけるよう頼まれたんです」

百合子「なるほど。それがうまくいって、今、あの人はここにいるんですね」

可憐「い、いえ……少し違います」

百合子「また!?」

可憐「えーっと……ここまで、私はハーヴェイを深淵なる魔法使いと言いつつも、その業績についてこの異界の創造以外は触れてきませんでした。それで充分だったからではなく、単に琴葉さんから知らされていないからです。えっと、何が言いたいかというと……」

雪歩「察したわ」

百合子「またまた~、ゆきぴょんジョークですかー?」

雪歩「むにるわよ?」

百合子「ひえっ」

雪歩「……ハーヴェイの世界創造を支持しない者も少なからずいたってことでしょう?」

春香「弟子たちの中にも、だね。すべてが思いどおりになる世界を作ろうとしている、支配者気取りの魔法使い……危険視する人間がいるのが自然だよ」

百合子「そうですね!私も察していました!はい!」
573 : Pしゃん   2021/11/06 18:28:50 ID:GDdhUobePY
可憐「ご、ご明察です。転生魔法を託された当の魔女たち3人も反対者であったんです。そのことにハーヴェイが気づいたのは転生魔法が『失敗』してからだったみたいですが」

百合子「失敗……でも、現に琴葉さんとしてハーヴェイは……」

雪歩「もし仮に完全な状態で転生できていたら、この異界はあの人に支配されているんじゃない?」

百合子「あ、そっか」

春香「とはいえ、ただの美少女に転生を果たしたってふうでもなさそうだけど」

百合子「そもそもが390年前の出来事のはずですよね」

可憐「ハーヴェイ……いえ、琴葉さん曰く、彼女はまだ18年ほどしかあの体で生きていないそうです。魔女が転生の儀の際に施した細工は、転生の遅延についてはまずまず『成功』したと言えるでしょう。ですが、魔法使いとしての素養をすべて消し去れはしなかった」

雪歩「しっかりと準備さえ整えば、彼、いや、彼女の望む世界を作れるってことよね。そのために動いている、と」

春香「それが『HOTDOGS』の活動?」

可憐「そうとも言えるし、そうでないとも言えます。私と海美ちゃんが琴葉さんから過去を知り、野望を聞き出したのはつい最近ですから。『HOTDOGS』としての活動はあくまで、凄腕のフリーランス・ハザマという立場を確立して、世界創造魔法に必要なコネクションをつくるためなのだと思います」

百合子「裏では、世界再創造のためにいろいろしていたってこと?」

可憐「お、おそらく。微細までを知ってはいないですが、魔法を発動させるのには、十分なオトメティックパワーをその身に宿そうとするだけでも珍しい素材がかなりの量いるみたいですから」

春香「うーん……いくら自分が作った世界でも、時間も経っているし、いわゆる異界食材・素材のことは知らない部分もあるだろうし、何かとコネはいるかも?」
574 : Pたん   2021/11/06 18:31:19 ID:GDdhUobePY
雪歩「…………」

百合子「白雪さん?」

春香「どうしたの?急に眠くなった?膝、貸そうか?」

雪歩「まだここでするのもどうかと思ったけど、やっぱりしておくわ。質問を2つ。可憐ちゃんに」

可憐「は、はい。なんでしょう」

雪歩「1つ目。どうして彼女に協力を?」

百合子「えっ? さっき可憐さんは琴葉さんの正体と狙いを知ったのは最近だって言いました。だとすれば、それとはべつに体のいい話をおふたりに持ち掛けて協力させていたってところでしょうか」

春香「『お前たちを最強の料理家にしてやる!』とか、そういうの?単に料理を教えてあげる、新しい師匠としてっていう線もあるのかな」

雪歩「春香、可憐ちゃんの滝でのやりとりはもう忘れたの?」

春香「あ……」

雪歩「可憐ちゃん、あなたは田中琴葉の企みを今、打ち明けてくれた。知るところを教えてくれた。あたかも、それを止める側の人間であるかのように」

可憐「………」

雪歩「けれど、春香としたというやりとりからすると、可憐ちゃんは世界の再構築に賛成だったんじゃないの?」

百合子「待ってください、白雪さん。それは、春香さんが印象として話してくれた(>>507)ように、琴葉さんによって植えつけられていた認識、いわば洗脳だったんじゃ」

雪歩「私は、ううん、私たちは確かめないといけない。可憐ちゃんが味方か、それとも敵なのか」

春香「ねぇ、雪歩。本気?」

百合子「『だいじょうぶだ‥‥おれは しょうきに もどった!』ってなるかもってことですかーっ!?」
575 : 5流プロデューサー   2021/11/06 18:36:15 ID:GDdhUobePY
可憐「私は……………わかりません」

春香「可憐ちゃん!?」

可憐「私は師匠のあの日の失敗を、料理云々ではなく、この世界の理不尽、不条理だと受けとめました。いえ、受け止めきれなかったんです、この世界を」

百合子「それって」

可憐「この世界は悲しみで溢れています。痛みで、苦しみで、不幸で。それと同等に幸福が、釣り合う喜びを皆が享受しているとは思えません」

雪歩「………」

可憐「もしも、世界を、理想的な世界を創造できたら皆が幸せになれる世界が実現できればいいと思いませんか」

百合子「でもっ、それは1人の野心家によって支配される世界なんじゃ……」

可憐「琴葉さんは言いました。世界をありのまま自由自在に作り変えられるのなら、その管理と制御、支配と規律、新たな理と新たな価値観を受け入れられる住民たちを迎え、彼らが常に幸福であるようにすることもできるはずだ、と」

雪歩「そうするとは言っていないんじゃない?現に弟子たちに裏切られているのなら、人格者ではなかったとも考えられるわ。そもそも、大きな力を手にした者が欲望を小さいままにしておくことなんてできないと思う。それが人の性よね」
576 : 3流プロデューサー   2021/11/06 18:39:11 ID:GDdhUobePY
可憐「ここにきて琴葉さんを信じてほしい、とは言いません。もしかせずとも、彼女は私にまだ話していないことがあると思います。ただ――――信じたかったんです。あの人の力を。不条理だと嘆くことのない世界が作り出されるのを」

春香「琴葉ちゃんは言っていたよね。可憐ちゃんは海美ちゃんを心配だからいっしょに行動していたって。それに……計画に危険があることに気づいていたって。結局のところ、可憐ちゃんもまたあの日をきっかけに世界に落胆していたんだ。ひょっとしたら、私や雪歩よりもずっとこの世界に失望し続けていた……海美ちゃんを心配していたのは事実だけど、可憐ちゃんもやっぱり新たな世界を救済として求めていたんだね」

可憐「私はおふたりほど、強くありませんから……」

雪歩「それが可憐ちゃんの弱さなら―――」ギュッ

百合子「わっ///」

雪歩は可憐と繋げていた手を離すと、今度は全身で可憐を抱きしめた。

雪歩「大切な妹分がひとりいなくなった、それだけで世界なんてどうでもいいと、何もかも手がつかなくなって、どうしようもなくなってしまう私は、どんなに弱い存在なの?」

可憐「雪歩、ちゃん……」

春香「可憐ちゃんは優しすぎるんだよ。でも、それでいいと思う。世界を憂う権利は世界に生きる者なら誰にでもある。ただ、そうだなぁ、もっと肩の力抜いてさ、楽観的になってもいいんじゃないかって。そんなに大きく、広く、世界を見なくなくても、そばにいるちっちゃなお姉ちゃんたちに甘えてくれればって思うんだよね。ね、百合子」ギュッ

今度は春香が百合子に抱き着く。

百合子「あわわわわ。そんな、春香さん、べ、べつに羨ましいとか思っていませんでしたよ!えへへ……」

雪歩「確かめにいかないとね。田中琴葉が作ろうとしている世界ってのを。彼女自身に」

可憐「はい…………はいっ!」
577 : Pたん   2021/11/06 18:43:54 ID:GDdhUobePY
数分後、元の姿勢に戻った4人。
春香が雪歩に言う。

春香「で?もう1つの質問ってのは?」

雪歩「弟子たちの、3人の魔女のことよ」

百合子「ハーヴェイに転生魔法を任されて、でも予定どおりにはしなかった人たちですよね」

雪歩「ねえ、可憐ちゃん。もしかしてさ――――その1人って師匠なんじゃない?」

春香・百合子「!?」

可憐「ど、どうしてわかったんですか!?」

雪歩「琴葉ちゃん、言っていたでしょ?私自らが消すつもりだったってね。海美ちゃんを通じて動向を監視しないといけない存在、かつて自分を裏切った弟子だったら辻褄が合うし。師匠が年齢を教えてくれたなかったこと、私たちが10年でここまで変わったのに、師匠が皺ひとつ増えていなかった理由……つまりはここまでの情報を統合してみたってだけ」

春香「あー、わかるわ、私もそんな気がしていたんだよね。いやー、先に言われちゃったなー、雪歩はせっかちだなー」

百合子「ですよねー、なんだったら、他の2人の弟子ももう登場しているんじゃないですかー、なんて」

可憐「えっと、それは違います」

百合子「うう、なんで私ばっかり……」

可憐「琴葉さんは話してくれました」
578 : プロデューサー様   2021/11/06 18:48:45 ID:GDdhUobePY
琴葉『計画にとって脅威となるのは、3人の愛弟子よ。今じゃ可愛さかえって憎さが百倍だけれどね。調べたところ、彼女たち3人は私が転生に失敗した後、機関をつくった』

可憐『機関?』

琴葉『ええ。聞いたことあるんじゃないかしら?異界を裏で管理する黒幕めいた存在』

可憐『あっ(>>73で出てきたアレのこと……!?)』

琴葉『現在だと呼び名は意図的に秘匿されているらしいけど、彼女たちはその機関をARCANAと名付けたわ』




百合子「秘密機関、ARCANA……!か、かっこいい!」

春香「うん?ちょっと待って、もしかして……」

可憐「3人の魔女、すなわち私たちの師匠と、アズール・ミューラー、そしてチハ・キサラギが、」

春香「ああ!!」

百合子・雪歩・可憐「!?」

雪歩「な、なに、どうしたの」

百合子「鎮まれ、俺の左腕!とか、そういうのですか!?」

可憐「ど、どうしよう、トリカブト、トリカブト……」

春香「そのアズール・ミューラーさん、私、会ったよ!」

百合子・雪歩・可憐「どひゃぁっ!!!」

春香「かくかくしかじか、どんがらがらどん」

雪歩「春香を例の滝に、言い換えるなら私たちよりも先に可憐ちゃんと引き合わせたのがその、アズール・ミューラーなのね」
579 : 箱デューサー   2021/11/06 18:53:04 ID:GDdhUobePY
可憐「び、びっくりです。百合子ちゃんの憶測が半分は的中するなんて」

百合子「驚くのそこですか!?」

可憐「琴葉さん曰く、特記戦力級の脅威は取り除かれたはずなんです……私たちの師匠を最後に」

春香「え?でも……」

可憐「3人の弟子のなかで、最初に機関を離れたのはキサラギのようです。彼女は組織に属すること自体、さほど向いていなかったみたいだとか」

百合子「へぇ……」

可憐「離れた後、どこへ行ったのかまでは琴葉さんでも追い切れなかったそうです。もしかしたら、不老長寿でなくなって既に死滅しているかも、と」

百合子「私たちのピンチに駆けつけて、なんてはなさそうですね」

可憐「そして先ほど話してくださったミューラーについても、機関の長期的な運用法、構想を確実にしたのを最後に消息を絶ったと……」

雪歩「師匠はその後で、機関を抜けて店を開いたの?」

可憐「ど、どうなんでしょう。琴葉さんは調査の一部始終を教えてくれはしなかったので。ただ……」


琴葉『あの子たちは3人とも組織に縛られるような子じゃないわ。良くも悪くもマイペースで自分勝手。その芯の太さがあったからこそ、この私を裏切れたのよ。彼女たち3人が今や、離れ離れになっていることを私は感謝しなかればならないわね』


雪歩「異界統制機関を創立した3人の魔女……ねぇ、春香、その後アズール・ミューラーさんとは?」

春香「ううん、会っていないよ。大会中ってこともあって、あれ以来、路地裏を確認もできていない」
580 : ハニー   2021/11/06 18:56:28 ID:GDdhUobePY
百合子「ふわぁ――――あ、すみません」

可憐の話を一段落すると同時に、百合子が欠伸をした。つられて春香、それから可憐が欠伸を噛み殺す。
気がつけばすっかり夜になっていた。異界の夜は明るくも暗くもない。陰鬱と安穏が混沌としている空間。
今の異界は琴葉さんの理想とはかけ離れている、それは間違いないなと思う百合子だった。

雪歩「今日はもう休みましょうか。情報整理もほどほどに、なんだったら明日にでも何か田中琴葉、そして海美ちゃんに動きがありそうだもの」

春香「はは……その予感は当たってほしくないなぁ」

可憐「えっと……私は……その」

百合子「ああ、そっか。可憐さんの眠るスペースがないんですね」

『HOTDOGS』の控室に帰るわけにもいくまい。
雪歩がぽんと手のひらをうつ。

雪歩「私が可憐ちゃんを抱き枕にして寝るから問題ないわね。あるいは私が抱き枕になるよ」

春香「はいはい。まあ、このサイズだったら詰めれば4人でも横になれると思うよ……さすがに狭いけど」

可憐「そ、それだと疲れがとれません……!私、ソファで眠ります。毛布はあるはずですし」
581 : 5流プロデューサー   2021/11/06 18:59:19 ID:GDdhUobePY
百合子「たしかに立派なソファですけど……えっと、私がソファで眠りましょうか?ほら、久しぶりに三姉妹揃ったわけですし」

雪歩「水臭いわね。いちおうは可憐ちゃんがこうして私たちのもとに戻ってきたからと言って、私たちが今や大切な妹である百合子をないがしろにすると思う?」

百合子「白雪さん……」

雪歩「さっきのは抱き枕云々は冗談2割よ。ん、ん。ここは最年長の私がソファで寝ることにするわ。どうあっても今夜はうまく寝付けないだろうし、いっそね」

春香「ところで―――料理大会、どうしよっか。あれが準決勝で決勝があるんでしょ?」

百合子「あっ」

雪歩「優勝賞品を田中琴葉は必要としているのよね。だったら、何らかの手段であちらの手に渡るより先に、こっちが奪わないと」

百合子「ですね。次の勝負のこと、明日聞かないとですね」

雪歩(口にはしなかったけれど、海美ちゃんと田中琴葉の仲を裂くのは無理な気がしてならないわ。だとすれば、次にどこかで会う時は………料理や超ビーチバレーなんかじゃなくて、血を流すような戦いをしないとならないかもしれない)

春香(話が壮大になってきたのはいいけど、もう最終話なんだよねー)

可憐(琴葉さん……手遅れじゃなければいいけれど)

百合子(zzzz……あっ、も、もうっ、白雪さん♡ それはおはぎじゃないですよぉ、むにゃむにゃ……)
582 : Pはん   2021/11/06 19:02:41 ID:GDdhUobePY
Recipe8partCはまだ途中ですが、長すぎるのでいったんここまで 
満を持して登場したリーダー、琴葉(ハーヴェイ)関連の情報提示&これまでの伏線(伏せていない)回収って感じでした
残りはなるべく早くに書く予定!
あと、最終part予定のpartD前には本編とべつに情報(設定)を簡潔にまとめるつもりです
11月中には完結させるぞー!何卒最後までお付き合いください!
583 : プロデューサーちゃん   2021/11/06 19:44:39 ID:qKrDQSrMFg
乙であります

百合子はやはり百合子だったか
584 : 続き投下していきます   2021/11/10 17:59:28 ID:6rnLBMGFGs
翌朝、雪歩たちは大会主催者たる令嬢・亜美に従者を通じて呼び出された。
4人のうちで前もって、亜美に面会を申し込んでいた人間はおらず、そもそもが面識らしい面識を誰も持っていない。
『HOTDOGS』は、亜美の友人である箱崎財閥の一人娘・星梨花との交友によって大会参加資格を得ていたが、少なくとも可憐は当の亜美に会ったことがなかった。
次の決勝戦における段取り、ルールの説明を亜美が直々に行ってくれるのではないか。そんな予想を立てて4人は亜美が待つという応接室へと従者の案内で向かうのだった。

まさしく豪華絢爛な応接室。準決勝の審査員兼司会の1人であった真美によく似た少女が雪歩たちを待っていた。
彼女こそが亜美。早い段階で名前は出ていたものの、ここが初登場なのだった。

亜美「きたか。うむ。ぐりるもわーるの諸君……ん?それにホットドッグのぼっきゅんぼんも?まあ、くるしゅうない」

百合子「は、はぁ」

亜美「先の戦いぶり、真、見事であったぞ。わっはっは」

春香「えぇ………」

亜美「そこでおぬしたちに、我が褒美をやろうと思ってな。なに、遠慮はいらんぜよ」

可憐(あ、あの……台本ではこんな口調じゃなんですけどいいんですか)

雪歩(でも、ほら、監督さん何も言わないし、これでいいんじゃないかな、あはは……)
585 : P殿   2021/11/10 18:02:20 ID:6rnLBMGFGs
百合子「褒美って、何かいただけるんですか」

亜美「まあ、そう慌てるな。妄想の姫君よ」

百合子「も、妄想の姫君!?」

亜美「じつは……あー、うん、予定していた決勝戦なんじゃが」

春香(いや、『じゃが』って)

雪歩「何か予定に変更が?」

亜美「それがのー、もう、ええかなーって」

可憐「はい?」

亜美「ここに100万シタマニーある、持っていってよいぞ」

百合子「ええっ!! そんなに貰っちゃっていいんですか!これでMS2が布教用合わせて買えますね!」

雪歩「……どういうことですか。決勝戦はしない、私たちの優勝ってことですか」

春香「いやいや、そんな。臨時報酬じゃないの?あれだけ白熱する超ビーチバレーを見せてもらったからーって」

亜美「ちなみに亜美は見ていないぞ。全部、真美からの報告なんじゃわ」

可憐「へ?さっき、見事であったぞって」
586 : ダーリン   2021/11/10 18:06:48 ID:6rnLBMGFGs
亜美「細かいことはいいの! ほら、これあげるから、それでいいでしょ。んでさ、しばらく屋敷に泊まっていっていいよ、亜美の遊び相手になってよ」

雪歩「――――もう一度だけ訊くわね。ええ、訊き方を変えるわ」

雪歩の声色に、亜美、そして百合子と可憐がぎょっとする。春香は何か察したようで、警戒態勢に入った。

雪歩「大会は……ううん、優勝賞品はどうなったの?大会を中止する理由を教えてくれるんでしょうね」

室内に配備された6人の従者に緊張感が走るのを可憐は察知した。
亜美はしばらく言いよどみっぱなしだったが、とうとう観念したように白状する。

亜美「どこから話せばいいかなぁ。あのね、昨日の夜にね、きたんだよ」

百合子「きた?」

亜美「うん。ホットドッグのリーダー、田中琴葉が」

可憐「!!」

雪歩「……それで?」

亜美「いやぁ、あれは今、思い出しただけでも涎が出ちゃうよ。あんな美味しいハンバーガー、食べたことないね」

百合子「ハンバーガー?あれ、それって私たちが勝負した……?」
587 : Pチャン   2021/11/10 18:11:50 ID:6rnLBMGFGs
亜美「そうそう、その余り物でパパッと作ったものみたいね」

雪歩「余り物で……?けど、あの時、余っていた食材で、そんな上等なハンバーガーなんて……」

可憐「い、いえ、できると思います。なにせ彼女は……稀代の料理研究家の生まれ変わりでもあるのですから」

雪歩「そんな……本当に魔法使いだわ」

春香「で?そのハンバーガーを差し入れにもってきて、何を話したわけ」

亜美「えーと、コクサイジョウセーとか、ニッケイヘイキンカブカとか、そーいうの」

百合子「嘘ですよね」

可憐「無理があります……」

雪歩「大会の運営に関わることよね。ううん、もしかして――――優勝賞品について?」

可憐「!」

亜美「ぶっちゃけちゃうと、琴葉お姉ちゃんがね、頼んできたんだよ。『そのハンバーガーなんかよりずっと美味しいものをいくらでも食べさせてあげるから、大会の優勝賞品を譲ってくれないかしら。そうね、代わりにお金にでもしておきましょうよ。お金があれば大抵のことが解決できるのは異界でも同じだもの。ああ、大丈夫、亜美ちゃんはお金を出さなくていいわ。私に個人的な蓄えもあるから、それを使って』って」

春香「めっちゃ、声真似似ている?!」

百合子「もっと驚くポイントありますよ!」

可憐「そ、その提案を亜美ちゃんは受け入れたの……?」
588 : 魔法使いさん   2021/11/10 18:14:22 ID:6rnLBMGFGs
亜美「まあね。だってね、優勝賞品って、うちの宝物庫で見つけた薄汚い本だったんだよ」

雪歩「薄い本?!」

春香「雪歩、ステイ。薄汚い本だよ。つまり古い本で、間違いなくいわくつきだろうね」

亜美「中身も何書いてあるかよくわかんないし。でも、まあ、挿絵を見る限り料理と関係ありそうだなーって、それで今回の大会の賞品にしておいたの」

雪歩「本……?可憐ちゃん、このことは知っていた?」

可憐「ええ……それこそ、琴葉さんが世界再構築の術式を、は、発動させるのに必要なキーアイテムの1つなんです……」

百合子「私の持つ魔導書とはまた異なるわけですね」

春香「それが既に琴葉ちゃんの手にある、と。ねぇ、まずいよね」

亜美「え?美味しかったよ。でもさ、ほら、亜美のお腹にも限界ってあるから、一度にそんなに入らないの。だから、琴葉お姉ちゃんと約束しているんだよー。『ちょっとした用事を済ませて帰ってきたら、また料理を作ってあげるからね』って」

可憐「……揃ったんですね、きっと」

雪歩「揃った?」

可憐「ええ、琴葉さんが大会を私たちに任せていたのは理由があるんです」
589 : 兄ちゃん   2021/11/10 18:18:35 ID:6rnLBMGFGs
百合子「それって、単に可憐さんと海美さんの実力であれば優勝間違いなし!と思っていたんじゃないってことですか?」

可憐「ど、どうでしょう?海美ちゃんが言っていたとおり、私たちの力を信じていたとは思いますけど。でも、それとはべつに、琴葉さんには大会開催期間中にしないといけないことがあったんです」

春香「なに?ミリシタのイベントで走るとか?」

可憐「い、いえ、そうではなく」

雪歩「さっき、可憐ちゃんは優勝賞品の本についてキーアイテムの1つって言った。察するに、他に必要な鍵を探していたんじゃない?」

可憐「そのとおりです……!大会開催直前でした。琴葉さんが『術式の発動に必要な賢者の花の場所が判明したわ。けれど、望ましい状態で採取するには、今すぐに行動にでないといけないの。場所も安全とは言い難いし、ここは私ひとりで向かうから、大会はあなたたち2人に任せるわね』と」

百合子「賢者の花?またいかにも貴重そうなアイテムの名前ですね」

春香「なるほど。琴葉ちゃんはお花摘みで忙しかったから、大会の一回戦、二回戦に出場していなかったんだね」

雪歩「お花摘みならしかたないね」

百合子「……ツッコミませんよ?」

可憐「ん、ん。他にもいくつか鍵がありましたが……すべて集め終わったのかもしれません」

春香「手遅れってこと!?」
590 : 夏の変態大三角形   2021/11/10 18:22:30 ID:6rnLBMGFGs
雪歩「まだ術式は発動していないよね?世界を新規に構成するんじゃなくて、再構成というからには今あるこの世界(異界)に何らかの影響がないというのは変よ」

可憐「そうですよね……」

百合子「こういうのって、アイテムを集め終えてから特定の場所で儀式するものじゃないですか?魔法陣なんて地面に描いたりもして」

雪歩「どう?可憐ちゃん。その鍵ってのが集まったら、その後、どこでどうするかは聞いている?」

可憐「ゆ、百合子ちゃんが言ったように発動のための儀式を行うとは。だけど、その具体的内容も場所も知らないままです」

春香「亜美は?琴葉ちゃんがどこへ向かったのか知っている?」

亜美「知らないよ。教えてくれなかった。ねーねー、なんかむずかしいこと話していないでさ、遊ぼうよ。亜美、こう見えて>>330で触れているとおり鳥籠の少女だから、毎日退屈しているんだよ?」

春香「いやいや、私たち今すぐにでもここを出なきゃだよ」

亜美「ふーん。琴葉お姉ちゃんが言っていたとおりにしないとかな」

雪歩「どういう意味?」

亜美「悪いけど、今日一日は大人しく亜美のおもちゃになってもらうからね!ぜったい、この屋敷から出してあげないんだから!」

百合子「ええっ!?」
591 : そなた   2021/11/10 18:26:32 ID:6rnLBMGFGs
春香(尺があれば①強行突破②亜美の遊びに付き合い、隙を見つけて脱出③2人だけ屋敷から出してもらい、あとの3人は残る④逆に亜美をみんなでおもちゃにする……みたいな選択安価もあったんだけどね)

百合子(ど、どうするんですか)

雪歩(当然、①よ。手っ取り早くね)

百合子(でもこの部屋にいる黒服さんだけもけっこう強敵っぽいですよ?)

可憐(あ、あの……百合子ちゃん、風の能力が使えるんだよね?)

百合子(え?はい。でも全員をかまいたちでズタズタになんてできませんよ)

可憐(そ、そういうのは求めていないから。えっとね、うまく空気の流れを操って、私たちを護ってほしいの)

百合子(護るって―――)

亜美「こそこそ話は終わった?」

可憐「う、うん。亜美ちゃん、リンゴとオレンジ、どっちが好き?」

亜美「へ?いきなりなに?」

可憐「これとこれ……」

春香(取り出したのは、小さな瓶に入った2種類の香水?)

可憐「どっちもいい香りがするんだけど」

亜美「うん?」

可憐「変わった代物なんだよ……2つを混ぜちゃうと、とっても危険なんだ。こんなふうに、ね!」

百合子「床にたたきつけた?!」

雪歩「百合子、今よ!」

百合子「はい!? あっ、風!」

亜美「うわっ、なに、これ!?」

護衛の黒服たち「ワァァァアアアアア!?」
592 : ダーリン   2021/11/10 18:30:03 ID:6rnLBMGFGs
可憐が瓶を割り、ふたつの液体が接触したことで化学反応が引き起こされる。
急速に気化し、特殊な神経ガスと化したそれを百合子は亜美と取り巻きに向けて放つ。
彼らの身動きが麻痺している間に、雪歩たちは部屋から脱出する。
が、しかしべつの黒服たちがすぐに雪歩たちを追いかけてくるのだった!!
4人は一目散に走って逃げる!


春香「事態の把握が早すぎない!?」

雪歩「まったく、優秀な護衛たちね!」

百合子「か、可憐さん!もうストックはないんですかぁ!?」

可憐「あわわわわわわわ。携帯しているのはあれだけだったの……!」

雪歩「しかたない、全員、焼いてやりますぅ!」

足を止めた雪歩が後ろを振り向き、レーヴァテイン(スコップ)を構えたそのとき、すぐそばから声がする。



??「みんな、こっちだよ♪」


可憐「えっ、窓の外!?ここ3階なのに!」

百合子「あなたは1回戦の相手―――」

春香「麗花さん!?」

雪歩「敵なの?それとも味方?」

麗花「琴葉ちゃんの計画を阻止したいんでしょ?私たちもだよ」
593 : おにいちゃん   2021/11/10 18:35:48 ID:6rnLBMGFGs
可憐「なんでそのことを……?って、浮いている!?」

百合子「翼もないのに飛んでいるって感じですね」

春香「うわー!追手がすぐそこだよ!」

雪歩「ええい、ままよ!信じますぅ!麗花さん、『こっち』ってどうしたらいいんですかっ」

麗花「つかまって!」

開かれた窓、麗花が手を伸ばす。雪歩はその手をとる。
すると、雪歩の身体が浮かんだ。

雪歩「!? これ、麗花さんが腕力で『持ち上げている』わけじゃない」

百合子「ははーん、これは接触している対象にも浮遊能力を分け与えているってことですね。私の風の能力も添えれば……」

春香「私たちみんな、空を飛べるって計算だね!」

麗花「無限の彼方へさあしゅっぱーつ♪」

黒服「な、なんだあれは?!美少女5人が手をつないで空を駆けているだと!?」

黒服「くっ、そのくせスカートは鉄壁だぜ!」

亜美「え~!! 亜美の出番、これでおわり~!?」
594 : do変態   2021/11/10 18:39:56 ID:6rnLBMGFGs
麗花「ふぅ、4人分、力を与えるのは初めてだったから思ったより疲れちゃった」

百合子「まだ屋敷の敷地内からギリギリ出たところですね」

春香「みたいだね。って……雪歩、可憐ちゃん!なんで着陸失敗して、そのまま絡み合い、見つめ合っているの!視聴者サービスか!」

雪歩「ごめん、ごめん、ついうっかり。えへへ……」

可憐「も、もうっ、雪歩ちゃんってば」

百合子「それで、このあとはどうすれば?」

麗花「えっとね―――」



??「もちろん、引き返すの。じゃないと痛い目みることになるの」

??「そういうわけなんで、みなさん、さっさと屋敷に戻りましょう♪」

春香「なっ?! あなたたちは、えっと、1回戦の審査員をしていた翼ちゃんと、」

麗花「あらら、美希ちゃんも?アーミーエンジェルズの隊長さんと副隊長さんが何の用かな?」

百合子「アーミーエンジェルズ……ああ、亜美ちゃんの護衛部隊ってことですね。って、ようは私たちを連れ戻しにきたってことですかぁ!?」

美希と翼に続いて、背中に羽(装飾)を生やした武装集団がやってきた。どうやら彼女たちが亜美親衛隊改め、アーミーエンジェルズのようだ。
595 : プロヴァンスの風   2021/11/10 18:45:21 ID:6rnLBMGFGs
可憐「この場所を、こ、こんなに早く特定して、部隊を展開させているなんて……なかなかできることじゃないです!」

翼「ふっふっふ、わたしと美希センパイの2人に不可能はないんですよー。諦めてください☆」

美希「あふぅ……眠いから、とっとと屋敷に帰ってくるの。どうしてもっていうなら、抱き枕にしてあげてもいいの」

雪歩「え、ほんと!?」

可憐「雪歩ちゃん……?」

春香「雪歩……」

百合子「白雪さん……」

雪歩「ふっ、馬鹿言わないで。私たちにはやるべきことがある。あなたたちなんかにかまっていられないわ」キリッ

春香「どうしてそれを最初に言えないのか。ま、雪歩らしいけどね」

美希「ふーん、抵抗するんだ。じゃ、ミキ、久しぶりに全力出しちゃおうかな」

翼「え?そんなに手ごわい相手なんですか」

美希「見てのとおりなの。キャラメルマキアートみたいに甘い敵じゃないよ、この人たち」

可憐「せ、戦闘は避けられないのかな……!」

春香「早く琴葉ちゃんを止めにいかないと、なのに」

麗花「そろそろだと思うよ」

百合子「え、なにがですか」
596 : 師匠   2021/11/10 18:49:59 ID:6rnLBMGFGs
??「待たせちゃったわね!」

??「間に合ったようでよかったです。ここからは麗花さんと私たちに任せてください!」



春香「捜査官ハンドレッドこと、莉緒さん!?」

雪歩「それに……」

百合子「一騎当千、疾風迅雷、そして不撓不屈のサヨさん!!」

紗代子「そ、そこまでの通り名じゃないよ」

莉緒「まぁ、いいじゃない。また出番をもらえたってことで♪」

麗花「あれ?紗代子ちゃん、ジュリアちゃんは?」

紗代子「結局、連絡取れずじまいで……。さ、そんなことより、雪歩ちゃんたちは早く行って!」

雪歩「行って、ってどこに?」

莉緒「異界ライブラリよ!」

百合子「え、どうしてそんなところに……?」

可憐「そういえば、あの場所はかつてハーヴェイであった頃に、琴葉さんの指揮のもと建設された施設だって……」

雪歩「気まぐれで登場させた場所じゃなかったってことね」

莉緒「案内に昴ちゃんもいるはずよ!さぁ、ここはお姉さんたちに任せなさい!」
597 : プロデューサーさま   2021/11/10 18:54:19 ID:6rnLBMGFGs
春香「へぇ、プレアデスも協力してくれているんだ。雪歩、行こう!」

美希「あはっ、行かせないの。とくに、そこのドジっぽいリボン。ミキが直々に相手してあげる」

春香「たしかにあなたとはどこか運命を感じるけど……今は無理!悪いけど、また今度ね!」

翼「あ、こら、待てーっ!」

麗花「ごめんねー、そういうわけだから、」

紗代子「あなたたちはここで私たちがやっつけます!」

莉緒「さあ、みんな、セクシーにいくわよ!」

美希「やれやれなの………翼、いくよ」

翼「はい♪」



かくして、みきつばたちエンジェル・アーミーズを麗花・紗代子・莉緒に後を任せ、双海亜美令嬢の屋敷を脱出した雪歩たち。
4人は琴葉が世界再構築の儀式を行うという異界ライブラリへと向かう。
可憐を加えた新生グリルモワールは琴葉の計画を阻止できるのか!?
次回『YUKIHO'Sキッチンへようこそ』最終回(予定) Recipe8partD 乞うご期待!

15日前後には投稿できそうです。あ、最終安価はそのときに。
598 : 続き投下していきます   2021/11/14 18:11:21 ID:D0CLaQ2hBw
Recipe8partD

箱崎家の私有鉄道列車・夢色トレインに乗って異界ライブラリへと向かう雪歩・春香・百合子・可憐の4人。

春香「今のうちに、話を整理しておこうか」

雪歩「そうだね」

百合子「事の起こりは390年前に遡るんですよね。魔法使いハーヴェイが今ある異界を創造した……」

可憐「うん。でも、彼の望むような世界にはならなかった。制御するには、あまりにも不確定要素が多すぎたみたい」

春香「そこで生きる人の心しかり、動植物たちの予想外の変質や進化しかり、か。この異界がどのぐらいの大きさなのか正確には知らないけれど、とにかくこれだけの空間を構築できるだけでもハーヴェイの力が伝説的魔法使いと呼べるものなのは納得できるね」

雪歩「うん。で、そのハーヴェイは異界を再構築、ようは今度こそうまく作り直すために、ある力に目を付けた」

百合子「それがオトメティックパワーなんでしたよね。料理研究家でもあった彼は、異界で採取したり獲ったりした食材を調理し、食べてみることでその力を発見した」

可憐「ただしその力を充分に発揮するには乙女でないといけなかった。身体的要素のみならず、魂まで」

春香「そこで転生、と」

雪歩「異界の再構築について危険視する彼の弟子たちもいて、彼が転生魔法の手伝いを頼んだ魔女3人によって転生魔法は不完全に発動することになった」
599 : 我が友   2021/11/14 18:11:38 ID:D0CLaQ2hBw
百合子「彼の側からすれば裏切られたってわけですよね」

春香「そうなるね。まぁ、そんなわけで当の魔女たち3人は異界の管理機構を結成して自らも不老長寿の魔法を施して、今に至ると」

雪歩「その魔女の1人が師匠なんだよね。転生を果たしたハーヴェイ、今の田中琴葉が高坂海美をかつての『四条亭』に送り込み、そして師匠はこの世界を離れざるを得なくなった。この結果については予想外だったみたいだけれど」

可憐「そして……海美ちゃんに私はついていき、琴葉さんと合流して『HOTDOGS』として3人で活動をしていたわけです」

百合子「そういうことがあった後で、私がこっちの世界にやってきたんですね」

雪歩「さて、それじゃあ、現状について」

春香「可憐ちゃんの見立てでは、というより麗花さんや紗代子ちゃんのあの雰囲気だと、もう時間がないみたいよね」

百合子「琴葉さんは異界再構築の魔法に必要な鍵をすべて手に入れて、儀式を行おうとしている、異界ライブラリで―――」

可憐「と、到着しましたね、最寄り駅。………か、覚悟を決めなくちゃですよね。きっと……海美ちゃん、琴葉さんと戦うことになります」

春香「料理バトルで済む話じゃなさそうなんだよね」

雪歩「っと、あそこにいるのは……プレアデスね」
600 : 我が下僕   2021/11/14 18:14:39 ID:D0CLaQ2hBw
昴「よお。待っていたぜ。グリルモワールの3人に……篠宮可憐、か」

可憐「ど、どうも。初めましてですよね」

昴「そうだな。思えば、そこの白兎のお嬢ちゃんと知り合ったのはあんたがきっかけだった」

可憐「え?」

雪歩「ん、ん。余計なこと言わなくていいわ」

春香「そんな深い話じゃないけれどね。単に、可憐ちゃんの居場所を私と2人で探しているときに情報屋の存在に行きあたったってだけ」

百合子「なるほど。えっと、プレアデスさん。私たち、麗花さんからはプレアデスさんに案内をしてもらえるって聞いているんですが」

昴「ああ、本来であれば異界ライブラリ内への隠し通路や何かを探したり作ったりして、田中琴葉自身やその息がかかった連中たちにバレないようにお嬢ちゃんたちを先導するつもりだったんだ」

雪歩「田中琴葉の息がかかった連中……。劇場で昴ちゃんがうとうとしているところに、耳にふーっと息を吹きかける、いたずらっ子琴葉ちゃんってシチュはありかもですぅ」

可憐「雪歩ちゃん……?」ジトーッ

百合子「なんてMP(妄想パワー)!さすがです、白雪さん!」

春香「はいはい、話進めようねー。プレアデス、その言い方だと予定が変更されたってこと?」
601 : あなた様   2021/11/14 18:16:38 ID:D0CLaQ2hBw
昴「そうだ。異界ライブラリ。やはりあれは特別な施設だな。正面の入口以外は進入不可能だ」

百合子「天窓や通気口がベタな気はしますけど、そういうのもないってことですね。あ、だったら地下からは?白雪さんの穴掘りで」

雪歩「時間があれば一つの手だったかもね。………正面突破しかない、そうよね?」

昴「まあ、そう焦るな。現場近くまでいけば気が変わるかもだぞ?」

可憐「……?」



- 異界ライブラリ付近 茂み -


百合子「な……なんですか、あれは!?」

可憐「チュ、チュパカブラ!?あんなに大勢……!?」

春香「尋常じゃない警戒ぶりだね。あんなふうに布陣を敷かれたんじゃ、相手をするには骨が折れるよ」

雪歩「誰にも邪魔させる気はないみたい。プレアデス、策は?」

昴「もちろんある」

百合子「というと……?」

昴「あんたたちも知っているある人が協力してくれる」

春香「私たちも知っているある人……?」
602 : あなた様   2021/11/14 18:18:38 ID:D0CLaQ2hBw
ロコ「グッドモーニングです!ハルカ、ユリコ!ツーマンスぶりですね!」

百合子「あなたは、クッキングデバイスの専門家、ロコさん!」

可憐「お、お久しぶりです。師匠がいた頃から、メンテナンスを定期的にしてくださっていましたよね」

春香「ドクター・ロコ。あなたがきてくれるなんて。一度きりのゲストかと思っていました」

ロコ「ナンスのアンナもいっしょですよ!」

アンナ「ロコ……ロコ……ロコ…」モフモフ

百合子「え?ああ、この子が例の。へー、思ったより知能が高そうですね」

雪歩「それでロコさん。この状況を打開する何かデバイスが?」

ロコ「はい! プレアデス、ヘルプは呼んでくれましたか?」

昴「ああ、たった今、きたぜ」

百合子「えっ。あ、あなたたちは……」
603 : ご主人様   2021/11/14 18:21:15 ID:D0CLaQ2hBw
紬「七尾さん、何をそんなに驚いているのですか。この異界の危機ということであれば協力します。私がそんなに薄情な人間だとあなたは……」

真「紬、ここまできてつむらなくてもいいだろ?それよりも……春香、久しぶりだね。会いたかったよ」

風花「あ、あの、えっと、箱崎家からきました、メイドの豊川風花です。って、試合でお会いしていますよね。わ、私は麗花ちゃんと違って事情を知らなくて、うう……でも、できるかぎり頑張りますから!」

百合子「異界で知り合った人たちがここで次々に登場なんて、まるで最終決戦みたいです!」

春香「みたいじゃなくて、そうなんだよね」

可憐「あう……し、知らない人ばかり……」

雪歩「ロコさん、これだけの人数を使っていったい何を?特攻をしかけるってことはないでしょうし」

ロコ「プレアデス、例のものをエブリワンに」

昴「ああ」

雪歩「? これは……」

春香「アンプル?中に少量の液体が入っているけど?」

可憐「くんくん……独特な匂いがしますね。ちょうど、そこにいるアンナちゃんに近いような……」

アンナ「ロコ……ロコ……ロコ…?」
604 : そこの人   2021/11/14 18:24:15 ID:D0CLaQ2hBw
ロコ「ザッツライトです!相変わらずいい鼻をしていますね、カレン。これはアンナの体液を基にして作られた強力なドラッグです」

百合子「強力な薬品!?そ、それはどんな効果があって、どう使うんですか!?」

昴「これだよ、これ」

春香「わぁ、ピストル! って、ええっ?!」

紬「なん……なん!?」

真「へー、意外と軽いし、それに形状が妙だね」

風花「あ、この部分にアンプルをセットするようですね」

昴「ドクターが説明すると、(横文字が多くて)わかりにくいだろうからオレから説明するよ」

可憐「は、はい」

昴「まず配った薬品について。これはANNA785379と名付けられた劇薬で、一滴で一般的なチュパカブラならほんの39秒で絶命してしまう」

百合子「怖っ!」

昴「元々は、特殊な弾丸に注入して射出するなんて用途を前提に作られた薬品ではない。こういう事態も考慮して、オレとロコとで急ごしらえでに製造した拳銃もどき、こいつに装填することで、いちおうは対チュパカブラ兵器として使えるはずだ」
605 :   2021/11/14 18:27:15 ID:D0CLaQ2hBw
雪歩「そういえば失念していたわね。プレアデスといえば、情報屋のなかでも、特殊な装備を用いて情報収集や敵対組織からの逃亡をするなどをすることで有名だって」

春香「ははぁ、ドクター・ロコとはもともと同盟関係にあったってことかな」

ロコ「そうですね、プレアデスはロコのベストパートナーと言えるかもしれません!」

アンナ「ロコ……ロコ……ロコ…?」

昴「まあ、否定はしないな」

雪歩「ははは……舞浜歩が聞いたら複雑な表情をしそうね」

百合子(べつにいいですけど、昴さんが特殊な装備を云々って後付設定ですよね)

可憐(ゆ、百合子ちゃん!そんな細かいことは気にしなくていいんだよ……?)

百合子(は、はい)

風花「あのー、ちなみに、これもしも、誤って人に当たってしまったら、どうなるんです?」

真「試してみようか」

紬「!? き、菊地さん!?なんでうちに銃口を向けるん!?」

ロコ「オールライトというわけにはいきませんけど、デスの心配はいらないですよ」
606 : 番長さん   2021/11/14 18:30:25 ID:D0CLaQ2hBw
昴「実践したことはないが、理論上はオフアンナ状態っていう無気力状態になるらしい」

百合子「待ってくださいよ。オフの杏奈ちゃんがそんな無気力だなんて」

アンナ「ユリコサン…!」

百合子「あ、ドラマの中の設定だからいっか」

アンナ「ユリコサン…?」

可憐「このピストルをつかって……あそこにたくさんいるチュパカブラさんを、倒せばいいんですね……!」

雪歩「早い話、虐殺よね、これ」

昴「いや、これもあくまで理論上だが、この弾丸、というより毒針だと絶命には至らない可能性が高い。しかも、ほら、見てみろ。あれは一般的とは言い難い、チュパカブラだ」

真「たしかに彼らを制圧するのに、3、4人じゃ足りないだろうね。この数……ロコさんを入れて9人でいけるかな」

昴「ちょうど野球チーム1つぶんじゃん」

百合子「戦いは数ですよ、ロコさん!」

ロコ「うーん……今あるANNA785379のアンプルはそれでオールですから」

百合子(あれ?そういえば、さらっと流したけどこれ、アンナちゃんの体液が主成分なの?……体液?)

春香「いざとなったら、拳ですよ!拳!」
607 : プロデューサーちゃん   2021/11/14 18:32:18 ID:D0CLaQ2hBw
雪歩「みんなピストルはもったよね!!行きますぅ!!」ドドドドドド

チュパカブラたち「!? チュパ、チュパチュチュパパパチュパ!?」

春香「どけどけー!」

百合子「目指すは正面入口!」

ロコ「ミッションスタートです!」

昴「オレたちで少なくとも、雪歩と春香、それに百合子は通す!」

紬「例の田中さんと高坂さんとの決戦を任せるってことですね」

可憐「わ、私もできれば……!」

真「ふっ、所詮はチュパカブラ、遅いよ!」

風花「あ、あわわわ、みんな待ってぇ~」
608 : 我が下僕   2021/11/14 18:35:09 ID:D0CLaQ2hBw
一方その頃

- 異界ライブラリ内 秘密区画 -


琴葉「……海美ちゃん、ここで待っていてくれるかな」

海美「へ?この先もついていっちゃダメなの?」

琴葉「ダメというか……きっとあの子たちがここに来るだろうから」

海美「あの子たちって―――まさか雪歩さんたちのこと?でも、あれだけのチュパカブラがいたら、いくら雪歩さんたちだって」

琴葉「いいえ、あの子たちなら他の誰かの手助けだって得られるはずだし、チュパカブラたちを突破するのは間違いないと思うわ」

海美「でも、この秘密区画には入れないんじゃ……」

琴葉「そうね、と言いたいところだけれど、向こうには可憐さんがいる」

海美「! ……たしかに可憐さんの感知能力があれば、並大抵の妨害行為なんか通じないね」

琴葉「ええ、だから思い切って、ここに至る通路は開いたままにしてあるわ。私は信じているから」

海美「信じている?えっと、何のこと?」
609 : Pサマ   2021/11/14 18:37:30 ID:D0CLaQ2hBw
琴葉「海美ちゃん、あなたのことよ。ここにいてくれる?ここにやってくる、私、ううん、私たちの夢の実現を邪魔しようとするみんな、排除してくれるかな」

海美「琴葉……。うん、わかった!そういうことだったら。もっといっしょにいたかったけど」

琴葉「ふふっ、すべてが終わればずっといっしょよ。ずっとね」

海美「ほんと?えへへ……。あ、あのね、琴葉。もし私がここにくる邪魔者、みーんな、どうにかできたら、ご褒美くれる?」

琴葉「ご褒美?何か欲しいものがあるの?」

海美「えっとね、えーっと……わ、私を琴葉の…………あ、あーっ。なし、やっぱ、なし。ちゃんと落ち着いてから言うね」

琴葉「ふふっ、変な海美ちゃん。そういうところも可愛いんだから」

海美「琴葉ぁ……。私、頑張る!」

琴葉「期待しているわ」

海美「うん!じゃあ、また後で」

琴葉「ええ、またね」
610 : EL変態   2021/11/14 18:41:17 ID:D0CLaQ2hBw
- 秘密区画深奥 聖域 -

琴葉「やっと、ここまできたわね。これでついに………」




??「待っていたわ」




琴葉「――――ふふっ。悪いけれど、驚かないわ。あなたならいるかもしれないって考えていたもの」

??「不思議なものね。そんな可愛い女の子の姿で、それに相応しい口調なのに、それでもわかるのだから。あなたがあの師匠だって」

琴葉「それでこそ我が愛弟子ね。アズール・ミューラー……また一段と美しく、強くなったものだわ」

あずさ「強くなる必要があったのよ。ここであなたを止めるために」
611 : そこの人   2021/11/14 18:44:21 ID:D0CLaQ2hBw
つづきはまた後日 遅くとも21日には
思ったより書き進められず、最終安価も出せませんでした
11月中に完結させます。させたい。できるはず。
誰かしら1人ぐらい読んでいるものだと信じています
何卒最後までお付き合いください!
612 : 続き投下していきます   2021/11/21 12:23:48 ID:ZtrasMKNlg
- 双海令嬢屋敷 -

雪歩たちを異界ライブラリへと送りだした麗花・紗代子、そして今日が誕生日である莉緒の3人が、亜美の護衛隊であるアーミーエンジェルズ(以下AA)と戦闘していた。
AAはその名のとおり、天使の羽を模した空中駆動装置を背中につけている。といっても、隊長の美希と副隊長の翼が地上1メートルの高さ、彼女たち以外はせいぜい50センチほどの高さで浮遊できているに過ぎない。
そういうわけで天使たちは、紗代子たちの手の届かない距離から一方的な攻撃を仕掛けてはいない。装置の真価は浮遊能力ではない。得られる恩恵の最たるものはスピードであった。
素早い動きに翻弄されつつも、紗代子と莉緒が一般隊員を相手にし、本当の意味で空中戦を得意とする麗花が美希と翼の2人を相手にしていた。


美希「あふぅ……なかなかしぶといの」

麗花「あらら、まだまだ元気そう」

翼「もう、さっさと倒れちゃってくださーい!ほんとならセンパイとデートの時間なのに~!」



紗代子「はぁ、はぁ……こんなの、一介のお嬢様の護衛隊が持っていい武力じゃないでしょ!」

莉緒「驚いたわ。あの麗花ちゃんと空中戦で同等に渡り合えるなんて、美希ちゃんも翼ちゃんも相当な実力者よ」

紗代子「美希ちゃんが近中距離に対応できる電撃能力、翼ちゃんは遠距離主体の光線銃……。あの息の合ったコンビネーションじゃ、さすがの麗花さんも全部を回避できはしないです。早く、助けにいかないと!」

莉緒「そうね。っと!こっちはこっちで全然倒れてくれないし、速度に加えて、なんて頑丈な奴らなの!天使っていうより悪魔だわ!」

紗代子「ハンドレッドさん、一瞬でいいんです、道を作ってくれませんか?」

莉緒「道?紗代子ちゃん、どこへ行くっていうの?あなたの能力だと美希ちゃんたちとの相性は良くないわ」
613 : プロデューサー殿   2021/11/21 12:26:22 ID:ZtrasMKNlg
紗代子「わかっています。この拳が当たることはないでしょう。私は……この窮地を一変させる。それができる人物のところに向かいます!」

莉緒「……なるほどね。これだけの数の護衛隊が屋敷内から出払って、敷地の端っこでドンパチやっているんだもの、今なら……ってことね」

紗代子「はい、それにあの子のことだから、お祭りでも見るように近くまではきているはずです」

莉緒「オーケー、紗代子ちゃん、あなたに任せたわ!さぁ、百発百中のハンドレッド、ここでセクシーに決めるわよ!」

それまで鞭状の得物で戦っていた莉緒がごそごそと胸元から小さな球体をいくつか取り出す。
そしてそれらを一斉に上へと投じた。敵の目は自然とそれらに向かう。地面へと落ちる前に莉緒は得物を一瞬で数度振るい、その球体を敵に目がけてはじいた!
バチバチバチッと爆発音と共に眩しい光、それからピンク色のスモークがあたりを覆う。
紗代子は動きの止まった敵に不可避の手刀を繰り出しつつ、間をくぐって、屋敷の建物がある方面へと駆けた。


戦場とはうってかわって静かで長閑な屋敷内で紗代子は考えをめぐらす。
麗花や莉緒が戦っているあの場所を直に見物できる場所、それはどこか。
でも、もしもカメラか何かを使って遠方で状況を探っていたら―――その不安が形になる前に、紗代子は警備の1人に見つかる。
が、それは好都合。紗代子は「すみませーん」とニコニコとして近寄っていき、そして瞬時に背後に回り、組み伏せ、ドスの効いた声で問う。

紗代子「亜美ちゃんはどこ?」
614 : 兄ちゃん   2021/11/21 12:30:01 ID:ZtrasMKNlg
- 異界ライブラリ前 -
雪歩たち9人の乙女は異界ライブラリ前に集結し、出入り口を塞いでいるチュパカブラたちに総攻撃を仕掛けた!
ロコのペットであるアンナの体液を基に、ロコとプレアデスの初めての共同作業によって作られた対チュパカブラウェポンを手に彼女たちは暴れ狂う怪異に立ち向かう!


百合子「ガンシューティングなんて久々!」

春香「拳銃の使い方だったら、ハワイで親父に教えてもらったから、問題ないよ!」

ロコ「あなたたちのデスも、一つのロコアートです!」

アンナ「ロコ………ロコシテ……ロコシテ」」

昴「よっしゃ!ヒット、ヒット、ヒット、ホームラン!」

真「危ないっ、紬!」ダーン!

紬「あ、あんやと」

風花「射線上に入るなって、私言わなかったっけ? オラオラオラオラー!」

可憐「ふ、風花さん、豹変している!?」

雪歩「もっと、もっとですぅー!!!」
615 : ごしゅPさま   2021/11/21 12:35:31 ID:ZtrasMKNlg
チュパチュパチュパチュパチュパ……

昴「思ったより多いぞ!白兎!さっさと突入しろ!」

真「援護は任せて!」

春香「合点承知の助! 雪歩、百合子ちゃん、可憐ちゃん!ジエットストリームアタックをかけるぞ!」

百合子「よくわかりませんが、とにかく前に突っ込みます!」

雪歩「可憐ちゃん、急いで!ほら、掴まって!抱きしめて!」

可憐「は、はいっ」

紬「え?あの、こんな状況で手をつないだり、抱きしめる行為はただの遅延なのでは?」

ロコ「マーベラスなディレクションです!」

風花「オラオラオラオラー!」


雪歩・春香・百合子・可憐がライブラリ内への突入を成功させ、唯一の出入り口が再び固く閉ざされると、深い静寂が訪れた。
ライブラリ内はすぐ近くで起こっている喧騒がまるで夢であるかのように、邪魔な音を遮り、内部の空気を維持させ、神聖とも言える空間で在り続けていた。
それは先日、百合子たちが来館した際にはそれほど感じられなかった厳かで神秘的な装いであり、何かが変わり始めていると雪歩たちに確信させた。
616 : Pーさん   2021/11/21 12:38:45 ID:ZtrasMKNlg
雪歩「行こう」

黙って顔を見合わせていた4人のうちで最初に口を開いたのは雪歩だった。
そうして残りの3人が声に応じて、肯く。

百合子「ここから先はセーブできなさそうですね」

春香「いよいよラスボス戦ってこと?」

可憐「え、えっと、まだ戦うってきまったわけでは」

百合子のいつもの妄想、軽口をきっかけに4人はなるべく平然であろうと、日常会話に努めた。
一歩、一歩、深淵へと近づくのを感じながら。
可憐の感知能力によって、琴葉と海美が秘密の通路を抜けて、深奥部へと向かっているのがわかった。
春香のとっておきのジョークが披露され、皆が失笑した後、先頭を歩いていた雪歩がピタリと足を止めた。

雪歩「気をつけて」

春香・可憐・百合子「!」




雪歩「そこをどいてくれる?………海美ちゃん」

海美「…………」
617 : 師匠   2021/11/21 12:40:59 ID:ZtrasMKNlg
海美「それはできないよ、雪歩さん。うん、できない、ぜったい。私はここを誰も通すわけにはいかない」

春香「いやぁ、でもさ、私たち全員を止めるって無理じゃないかな。4人に勝てるわけないじゃん。ね?」

海美「そう?所詮は、のらりくらり、のほほんと生きてきた人たちばかりでしょ?地獄を知っている私が負けるわけがない」

百合子「ど、どういうことですか?」

可憐「………海美ちゃんは、私たちに、ううん、琴葉さんに会うまでは――――」

海美「黙れっ!裏切り者!」

可憐「っ!」

海美「勝手に人の過去をべらべら喋ろうとしないで」

可憐「ご、ごめんなさい……」

雪歩「で?教えてくれるの?」

海美「あれは10年前のこと……」






雪歩「浸りすぎーーー!!!!」バキ

海美「ぐへぇっ!!」

百合子「えぇーーっ!!??」
618 : お兄ちゃん   2021/11/21 12:43:26 ID:ZtrasMKNlg
雪歩「今すぐに琴葉ちゃんを止めないといけないっていうのに、長い長い回想なんて聞いていられないですぅ!」

百合子「たしかに!」

可憐「正論ですけど、空気読めていなくないですか?!」

海美「くっ、私としたことがこんな不意打ちをくらっちゃうなんて」

雪歩「海美ちゃん、もうやめて!私たちが戦うなんてどうかしているよ!」

春香「たった今いきなり殴りつけたやつが言うことじゃねーー!!」

海美「もう迷いはなくなったよ。雪歩さんたち全員、ここでぶっ倒す!」

雪歩「あー、うん、しかたないなぁ。戦わなければ生き残れないってやつかなぁ」

春香「なんでちょっと他人事みたいなの!?」

百合子「ま、待ってください!」

春香・可憐・海美・雪歩「!?」




雪歩「え?なに、どうしたの、そんな大声出して。引くわ……」

可憐「も、もしかしてお手洗い?え、えっとね、百合子ちゃん。そういうのは撮影前にちゃんと済ませておかないとだよ……?」

春香「百合子ちゃん、勇を失ったな……」

百合子「なんだこの扱い?!」
619 : Pさん   2021/11/21 12:45:41 ID:ZtrasMKNlg
海美「それでどうしたの?ゆりりん」

百合子「あ、あのですね、ほら、この後の展開考えたら、ここは全員で戦うよりも誰かしら温存させたほうがいいかなって」

春香「ラスボス前に消耗しすぎないようにってこと?」

百合子「そう、それです!」

雪歩「ゲーム脳じゃん」

可憐「ま、まとめてさっさと片付けてしまえばいいんじゃないかなって……えへへ」

百合子「ひどい言われ様!」

海美「わかった。じゃあ、ゆりりん。一対一(サシ)でやろう」

百合子「ええっ!? 私ですかぁ!?」

雪歩「!! それならツイスターゲームとか野球拳がいいんじゃないかな」

春香「それだと最終回拡大放送枠のゴールデンタイムで流せないやつじゃん!事務所NGですよ!事務所NG!」

可憐「で、でもたとえば体力勝負で百合子ちゃんが海美ちゃんに勝てる可能性ってゼロですよね……?」

百合子「ばっさり言われたーー!!」
620 : 仕掛け人さま   2021/11/21 12:47:09 ID:ZtrasMKNlg
春香「ったく、ここはメインヒロインである私がやるしかないね」ドンッ

雪歩「春香……」

可憐「春香さん……!」

百合子「え、え?なんでそんないきなりキメ顔なんですか」

春香「海美ちゃんも私も共に強化系の能力者だからね」

海美「春香さん、いいの?私に組手で一度も勝ったことないでしょ?」

百合子「そ、そんな、あの春香さんが?! 私が修行をしてもらったときは、春香さんに一度も触れることさえできなかったのに!」

雪歩「だって、べつに百合子の能力、近接戦闘向きじゃないから……」

可憐「ゆ、雪歩ちゃん。しーっ、しーっですよ!」

春香「昔の私とは違うよ、海美ちゃん」

海美「それは私もだよ。今の私はあの頃の10倍は強いよ!」

春香「ふーん、じゃあ、私は100倍!」

海美「え?じゃ、じゃあ、私は390倍!」

春香「765倍!」

海美「せ、1000倍!」

百合子「小学生か!」
621 : 箱デューサー   2021/11/21 12:51:32 ID:ZtrasMKNlg
雪歩「百合子、可憐ちゃん、離れて」

可憐「え?」

雪歩「春香と海美ちゃんの拳の語り合いは外野が水を差せるようなものじゃないから」

百合子「は、はい」

海美「いくよ、春香さん。『海』を持つ者同士、決着をつけるときがきたんだよ」

春香「日本海にじゃっぱーん!!」








- 異界ライブラリ内秘密区画 深奥 -

対峙したかつての師とその愛弟子
転生を果たした偉大なる魔法使いにして料理研究家・『HOTDOGS』のリーダーこと田中琴葉
不老長寿の魔女にして占星術師あずさことアズール・ミューラー
琴葉の計画を止める、あずさの言葉に琴葉は微笑んだ。それはあたかも純粋に愛弟子の成長を嬉しく思う師の微笑みであった。
622 : 下僕   2021/11/21 12:54:59 ID:ZtrasMKNlg
琴葉「へぇ……その手に持っているのはただの金槌でないわね」

あずさ「見覚えないかしら?」

琴葉「ふむ……。ああ、思い出したわ。ミョルニルね。この私がレーヴァテインと共に作った。なに?思い出の品として大事にもっていてくれたの?」

あずさ「そんなところよ。ところで、雷をその身に受けたことは?」

琴葉「さぁ、何度かあったかしら」



あずさ「そう――――じゃあ、これが最後ねっ!」

瞬間移動、まさにそれほどの速さをもってしてあずさは琴葉との距離をつめ、その雷神の槌をふるった。
それで勝負はつくはずだった。ハーヴェイの弟子にして竜宮の魔女と言われたあずさはそのときを何度も想像して、鍛錬してきたのだから。
そうだ、どんな武具や防具をもってしてもミョルニルの雷を纏った撃潰を受けて無事に済むなどあり得ない。あり得ないのだ……。
しかし―――





琴葉「悪いわね」

あずさ「嘘……。その剣は、なん……なん?」
623 : Pちゃん   2021/11/21 12:57:17 ID:ZtrasMKNlg
いとも容易く、そうだ、琴葉がミョルニルをあまりに簡単に剣で受けたことにあずさは愕然とした。びっくりしてつむつむしてしまった。

琴葉「この剣の材料はミリシタニウム鉱石。知らないでしょうね。それはそう。私が勝手に命名したんだから。この鉱石は、私がハーヴェイであった時代の異界においてはまだなかった。ううん、あったとしても、まだ充分に成熟していなかったのでしょうね。ねぇ、理解した?」

あずさ「くっ……」

琴葉「長い月日がこの鉱石をここまでのものにした。この剣は、かつで私の作ったその雷神の槌だろうと、砕けはしない。あなたたちが私の魂に与えた長く深い眠りはこの出来損ないの異界を育むのに十分な時間だったのよ」

あずさ「まだよ、まだ終わりじゃない!轟け、雷音!かの者を穿ち、粉砕せよ!雷神の―――」

琴葉「ごめんね」


あずさの詠唱は途切れた。最後の切り札である大技は発動できぬまま、琴葉の剣によってその身は斬られたのだから。
倒れるあずさ。見下ろす師の姿はやはり見慣れぬ姿をしていたが、その瞳の奥に宿る野心と悲哀はあの時と変わらなかった。

あずさ「う……ぐ……」

琴葉「私はあなたたち3人をそれほど恨んでいないわ。たとえあんな仕打ちを受けても、私にとっては3人とも娘のようなものだもの。だからここでわざわざあなたに止めをさすなんてしない。とはいえ、救いもしない。せいぜいそこで息も絶え絶えに新世界の創造を見届けなさい」

あずさ「まだ……希望は……あるわ」

琴葉「それはそうよ。何を勘違いしているの?私は破滅を望んでここを再構築するわけじゃない。むしろ絶望に満ちた世界を救うのよ。そして私は―――」
624 : Pしゃん   2021/11/21 13:01:09 ID:ZtrasMKNlg
そのときあずさが、弱々しく、小さな声を発した。ある人物の名前。それは琴葉の耳に届いた。

琴葉「よく調べたわね。あなたたちと出会うよりも、ずっと前のことなのに」

390年よりもさらに過去。ハーヴェイが魔法使いとしての才覚をまだ世間に示しておらず、ただの青年であった頃。

あずさ「………忘れ…られないのね」

琴葉「ええ。彼女のことを忘れたことなんてただの一度もない。そしてこれからも」

あずさ「……」


気を失ったあずさから離れて、琴葉は異界再構築の儀式に用いる装置へと歩み寄る。
一切の埃がかぶっていない、物言わぬ冷ややかな装置を琴葉はゆっくりと撫でる。



琴葉「もうすぐ貴女に再び会えるわ。愛しい人―――――コレット」


つづく
625 : 彦デューサー   2021/11/21 13:03:17 ID:ZtrasMKNlg
安価や料理要素どこ……?って感じですが、もうすぐ完結です
最後までお付き合いください!
626 : つづき   2021/11/22 18:39:59 ID:W1NROkfcyQ
- 双海令嬢屋敷 -

莉緒に手助けより、紗代子が戦場の一時離脱に成功直後。
麗花がみきつばに応戦を続けるも、2人の連携攻撃にしだいに追いつめられてしまう。
莉緒は名前のないアーミーエンジェルズの隊員たち複数人相手にギリギリの戦いを続ける―――。


莉緒「はいだらぁー!………っ、ま、まだやるの?紗代子ちゃんを送り出したはいいけれど、まだ帰ってこないし」

麗花「はぁ……はぁ……」

美希「終わりが近いってカンジ?あはっ」

翼「ふっふっふ、美希センパ~イ、やっぱり今日このあとデートしましょう♡ よく考えたら夜のデートのほうがオトナって気がしますし!」

莉緒「あの麗花ちゃんが追いつめられているなんて……!っと、私も余裕、ないけどっ!うー、まさか、信じて送り出した紗代子ちゃんが年下令嬢に調教されてビデオレターを送り返してくるなんて展開になっちゃうんじゃ……」



紗代子「皆の者!鎮まれ!鎮まれーい!静まれいたそ~」

莉緒「紗代子ちゃん!? あ、あれは……!」

美希「あれ?あそこで肩車して遊んでもらっているのって……」

翼「亜美ちゃん?!」

麗花「ふぅ……間に合ったみたいだね♪」
627 : Pサン   2021/11/22 18:42:18 ID:W1NROkfcyQ
紗代子が担いでいる(物理)美少女を目にして、戦っていた者たちが動きを止めた。

紗代子「亜美ちゃん、そろそろ降りてくれる?年齢では私が4歳上だけど、体重は同じだし、身長は私の方が低いから」

亜美「りょーかい!」

紗代子「さ、亜美ちゃん、さっきお願いしたとおりね」

亜美「わかっている、わかっているって。あー……えーっと、みんな、もう帰っていいよ!」

紗代子「雑ぅ!」

翼「ほんとですか!?やったぁ!ささ、いきましょう、美希センパイ♪ 疲れたから、そこでほら、ご休憩ってことで……」

美希「むー、納得いかないの。美希たち、亜美のためにこんなに頑張ったんだよ?」

モブ隊員「そうだー!そうだー!」

莉緒「まぁまぁ、そう言わずに。雇い主がああ言っているんだから、ね?」

美希「でも、亜美。いいの?ここでこの人たちを足止めしておかないと、琴葉のところにいって、邪魔しちゃうかもなんでしょ?」

翼「えっと、そうしたらあれですよね、亜美ちゃんが約束したっていう、美食の数々はなくなっちゃう?」
628 : 変態インザカントリー   2021/11/22 18:45:25 ID:W1NROkfcyQ
莉緒「どっちみち、雪歩ちゃんたち通しちゃっているし、そのあたりは手遅れ感があるけどね」

亜美「亜美ね、気がついたの」

翼「え、何に?」

亜美「亜美を求めて争うみんなを見るのは、最初は面白かったけど、途中から全然楽しくないなーって」

紗代子「亜美ちゃん………ぐすっ」

莉緒「ここ泣くところなの?! せ、成長したってことかしら」

このみ「そういうことね」

莉緒「このみ姉さん!?なぜここに!?」

このみ「ドラマ中の呼称は『このみ』だった気もするけど、まぁ、いいわ」

麗花「このみさん、どうでした?」

このみ「裏がとれたわ。田中琴葉の後ろ盾として双海財閥はたしかに関わっている、というより『関わっていた』みたいね。けれど、亜美ちゃんにその細部が知らされていたという事実はないわ」

紗代子「すみません、このみさん……あなたまで動いてもらうことになるなんて」
629 : プロデューサー殿   2021/11/22 19:00:42 ID:W1NROkfcyQ
このみ「いいのよ、紗代子ちゃん。私も半分関係者みたいなものだったから。今回の件をとおして、双海のおじさまに約束してもらったわ」

亜美「え?まいだでぃとどんなぷろみすを?」

このみ「亜美ちゃんにもっと外の世界を教えるって」

莉緒「それって……」

紗代子「初期設定だから忘れ去られていましたけど、亜美ちゃんはいわゆる鳥籠の中の少女的な立場でしたね」

美希「ふーん、それじゃあ、これからはもっと自由に亜美と遊べるってこと?」

亜美「そうなるの、かな」

翼「美希センパイを渡すつもりはありませんけど……うん、亜美ちゃんと自由に遊べるっていうなら、今日のところは終わりにしてあげてもいいですよ?」

紗代子「そこ、翼ちゃんが締めるところなの?!」

このみ「―――というわけで、双海屋敷編は終わり!めでたし、めでたしよ!」

莉緒「よーし、このみ姉さん、飲みにいくわよねっ!」
630 : プロデューサー君   2021/11/22 19:03:09 ID:W1NROkfcyQ
麗花「わーい、わーい!あれ?紗代子ちゃん、なんでそんな暗い顔しているの?画鋲踏んだ?」

紗代子「い、いえ。てっきり私、あいつがサッと登場して助けてくれるのかなって思っていたから……」

麗花「ん?あー、紗代子ちゃんの愛しの……」

紗代子「そんなんじゃありません! さ、私たちもいきましょう!まだ終わっていませんからね!」

麗花「ふふっ、そうだね。きっと、あの子はもう異界ライブラリについているだろうけど」

紗代子「え?今なんて……」

麗花「なんでもないよ♪」

亜美「メシだぁーーーーー!!!」

翼「ステーキですよ!ステーキ!」

美希「断然、おにぎりなの!」

モブ隊員「ワァァアアアアアアアア!!!」
631 : der変態   2021/11/22 19:09:07 ID:W1NROkfcyQ
- 異界ライブラリ 秘密区画内 -

琴葉の所恵美……もとい、ところにいかせまいと立ちはだかる海美に春香が勝負を挑む。
乙女の拳と拳のぶつかり愛、これぞアイドルファイトッ!!


春香「やるじゃない」ニコ…

海美「春香さん、やせ我慢はよくないよ。もう立っているのもやっとでしょ?」

百合子「くっ、殴り合うシーンは事務所NGだったから場面転換によってカットされて、既に勝負がかなり進んだところから再開ですよ!!」

可憐「か、解説ありがとう」

雪歩「春香……」ギュッ

可憐「ひゃあっ」

百合子「白雪さん?そこはふつう、手を祈るように握って春香さんの健闘を願うのに、なんで可憐さんに抱き着いているんですか」

可憐「か、解説ありがとう?」



海美「春香さん、次の一撃で最後にするよ」

春香「戦うのをやめてくれるってこと?やったー!」

海美「そのふざけた空元気さえ、もうじきなくなる」

春香「はぁ、なんでそんな顔しちゃうかな。覚悟なんかきめちゃって」

海美「………」
632 : P殿   2021/11/22 19:12:14 ID:W1NROkfcyQ
春香「ねぇ、海美ちゃん。ミリオンスープって知っている?」

海美「……ううん」

春香「雪歩、可憐ちゃん、覚えているよね?」

雪歩「う、うん」

可憐「はい……で、でも急にどうして」

百合子「あのー、私、知らないんですけど」

春香「私たちがまだ10歳かそこらだった頃の話だよ」

雪歩「SFYのロリ可憐ちゃん可愛いよね」

百合子「なんでこんなときに、そんなこと真顔で同意求めてくるんですか……」

春香「師匠である貴音さんの言いつけで、私たち3人は協力してミリオンスープを作ることになった。この料理はね、100万とはいかないけれど、数多くの食材をそれにとっても長い時間煮込み続けて作るスープなんだ」

百合子「へぇー、センチュリースープのようなものですかね」

春香「3人で交代して見張り番について、十三夜、ついにスープが完成した」
633 : do変態   2021/11/22 19:15:36 ID:W1NROkfcyQ
海美「で?なにを言いたいの?それはそれは美味しかっただろうね!その程度の苦労、私だって……!」

雪歩「食べられなかったんだよ」

百合子「へ?」

可憐「………スープは、か、完成しました。師匠も褒めてくれました。みんなで味わおうってなって、でもそのとき……」

春香「私がどんがらしちゃったんだよね」

海美「!」

百合子「な、なんちゅーことしはるんや……あんさんは、あ、悪魔や……」

春香「不思議なもので、そのときのどんがらがっしゃーんは今なお鮮明に覚えているよ。スローモーションでさ、コマ送りではっきりと」

雪歩「あのときは泣いたよ、私も可憐ちゃんも、春香につられてわんわん泣いた」

可憐「ワン! ニャン! ブー! でワンダフール! ほらね!」

百合子「鳴いてどうするんですか!?」

春香「貴音さんはそんな私たちみんなを抱きしめてくれた。そばにいてくれて、怒らずに、優しく、ずっと……床にぶちまけられて台無しになったスープを飲むかどうか悩んでいた」

百合子「そこまで意地汚い人なんですか!?」
634 : Pちゃま   2021/11/22 19:20:40 ID:W1NROkfcyQ
春香「最後のは冗談だけど、とにかく私はその失敗を経て決心したんだ」

海美「それって……」

春香「料理中は転ばないってね」ドヤッ

百合子「えぇ……結局、何がいいたいんですか、これ」

雪歩「転んだって立ちあがればいいってことね」

可憐「ど、どんなに転んだって、立ちあがればいいんです……それができるんです。ひ、1人では難しくても、みんながいれば……!」

百合子「今の話、そこまで踏み込んだ話でした!?」

春香「海美ちゃんがうちに、『四条亭』にきたとき、もっとこういうことを教えるべきだったね」

雪歩「師匠は教えてくれていたかもしれない、あるいは私たちが海美ちゃんに教えるのを期待していたかも」

可憐「……海美ちゃん、琴葉さんは教えてくれた?あの人は優しくて強い。それは私も知っているよ?でも……今の彼女は、師と呼ぶに相応しい人じゃない」

海美「うるさいっ!うるさいうるさいうるさい!あんたに何がわかるっていうの?!」



春香「わかんねぇ!」ドンッ

海美「!?」
635 : そこの人   2021/11/22 19:23:09 ID:W1NROkfcyQ
春香「わからないけど、わかろうとするのを私はやめないっ! 海美ちゃん、私も覚悟したよ。この一撃で終わらせるッ!ぜんぶ終わって、『YUKIHO'Sキッチン』に連れ帰る!」

可憐「あ、あの構えは!」

百合子「伝説の、ロクなこと言わないポーズ……!この目で見られるなんて!」

雪歩「!! 海美ちゃんも構えた、あ、あれはコンテンポラリーダンス?!」

可憐「ちがいますよ!?」



そして3人が見守る中、春香と海美が同時に動く。

春香「―――」ドン………

百合子(ええっ!?こ、この土壇場でまさか、どんがらしちゃうんですかぁ?!)

可憐(あれはいつものどんがらじゃない!)


ゆらりと傾く体、転びかかる春香に対し、海美は数歩の間にその速度を上げ、ついには音を置き去りにして春香に激突する―――うみみんロケット、身長だけなら雪歩と同じその小柄と呼べる範疇にある少女の身体全体を武器にするその技は、まともに喰らえば、たちまち散体するほどのパワーとスピードである。
別名・ウミミンアクセルレーション。ノーツ速度300%のOMが春香を襲う!

春香「―――」ガラ、ガラ、ガラ、ガラ……

海美「!!」
636 : プロヴァンスの風   2021/11/22 19:25:26 ID:W1NROkfcyQ
百合子「春香さんのどんがらに海美さんが巻き込まれたぁっ!?」

雪歩「転びきることのないどんがら、終わることのない回転に、海美ちゃんの激突による衝撃が吸収されたっていうの!?」

可憐「つ、つまり、このあとどうなるんですか!?」


春香はその場でどんがらし続けている。
海美はそのどんがらの回転に巻き込まれたまま身動きあがとれない。
いったいどうなっているのか、図示することは難しいが、フィーリングで理解してほしい。


春香「終わりのないのが『終わり』それが『ドンガラガッシャーン・H(ハルカサン)・レクイエム』」

海美「ッッッ!?」

春香「さぁ、雪歩、可憐ちゃん、百合子、行って!琴葉ちゃんのもとへ!」

百合子「そのよくわからない状態の春香さんを置いていけっていうんですかぁ!?」

可憐「く、くんずほぐれつです……!」

春香「私たちなら大丈夫!39の39乗ぐらい回転し終えたら、解除できるモードに移行するから」

雪歩「途方もないですぅ!」
637 : 我が下僕   2021/11/22 19:31:36 ID:W1NROkfcyQ
海美は春香の回転に巻き込まれ、絡み合い、その思考さえも溶けあっていく過程で、かつて失ったはずのあたたかさを取り戻そうとしていた。
ついに語られることのなかった彼女の味わった地獄について、知っておくべきことはただ1つ。彼女は救われたということである。
どんがら、どんがらと頭に、魂に響くその回転を子守唄とし、やがて思考は眠りについた。
うみみーん、と小さな鳴き声をあげ、高坂海美はどんがらの回転の内に安らかな眠りを享受することになったのだ―――。



可憐「た、たどり着きましたね」

百合子「見るからにラスボスの間に通じる扉です!」

春香の頼みに従い、雪歩たち3人は春香と海美を残して秘密区画の深奥部に到着した。

雪歩「あのね、聞いてほしいことがあるんだ」

可憐「どうしたんですか、そんな、ひなたちゃんのソロ曲みたいなこと言い出して」

百合子「ここまできて、なんですか。重要な話なんでしょうね」

雪歩「うん。ふたりにはここで待っていてほしいの」

可憐「え?」

百合子「はい?」
638 : 監督   2021/11/22 19:35:14 ID:W1NROkfcyQ
雪歩「私1人が行く。琴葉ちゃんとふたりきりで話したいことがあるから。それにもしかしたら戦いになるかもしれない。そのとき……ふたりは足手まといになる」

可憐「そ、そんな……!」

百合子「可憐さんはともかく、私だったら、戦えます!ぶっちゃけ、琴葉さんと関係性薄いし!」

可憐「私だって!わりと口下手な雪歩ちゃん1人じゃ説得できなくても、私がいればなんとかなるかもしれません!ほら、琴葉さん、なぜか私のことを公式で『可憐さん』呼びだから……!」

雪歩「ふたりとも、ありがとう。でも……やっぱりここで待っていてほしいの」

百合子「どうしても、ですか」

雪歩「うん」

可憐「雪歩ちゃんのバカっ、ちんちくりん!エセポエマー! ぐすっ……うう……」

雪歩「………百合子、可憐ちゃんをお願いね」

百合子「白雪さん! 生きて、帰ってきてください。約束ですよ。私と可憐さんじゃ、『餞の鳥』を歌うのはハードル高いですからね」

雪歩「『隣に…』ってのも悪くないんじゃない?」

百合子「も、もうっ、こんなときまでそんな冗談言わないでくださいっ」
639 : プロデューサーちゃん   2021/11/22 19:37:29 ID:W1NROkfcyQ
雪歩「ふふっ。今のうちにさ、打ち上げのときに用意する料理を考えておいてくれる?その魔導書使って」

百合子「はい!私たち、待っていますから。必ず無事でいてくださいね!」

可憐「うう……い、一度決めたらきかないんですから……ぐすっ、ぐす……」

雪歩「可憐ちゃん……」

可憐「ぐすっ……うええ……こ、これを!」

雪歩「え?これって……?」

可憐「勇気のfragranceです。お守り代わりに」

雪歩「ありがとう、胸ポケットに入れておくね」

百合子(生存フラグ!)
640 : P君   2021/11/22 19:40:40 ID:W1NROkfcyQ
- 深奥部 聖域 -


琴葉「きたわね」

雪歩「ええ………。って、ほわぁっ!?なんか血まみれの人がいますぅ!!」

琴葉「気にしないで。生きてはいるわ。しばらくは動けないでしょうけどね」

あずさとの勝負を終えたばかりの琴葉が、そうとは知らない雪歩を迎える。
ぶつかる視線。数秒間の沈黙。雪歩が「ん、ん」と咳払いをする。

雪歩「琴葉ちゃん、それともハーヴェイと呼んだ方がいいのかな。……止まる気はない?」

琴葉「ないわ」キッパリ

雪歩「だよね」

琴葉「雪歩ちゃん。あなたこそ、心変わりしない?世界の半分をあげてもいいわよ?」

雪歩「魅力的な提案だけれども、遠慮しておくよ」

琴葉「そう、残念ね」

雪歩「お茶を一杯飲む時間はある?」

琴葉「本気?」

雪歩「もちろん。そのために準備してきたんだから」
641 : 兄ちゃん   2021/11/22 19:52:33 ID:W1NROkfcyQ
琴葉「そんな、今になって料理要素を……?何を考えているの?」

雪歩「メタネタはお腹いっぱいですぅ。いいから、飲んでみやがれですぅ!」


雪歩は魔法瓶と湯呑を取り出す。その魔法瓶は文字通り魔法がかけられている、クッキングデバイスの1つである。
魔法瓶から湯呑に注がれるお茶は淹れ立てそのもの。雪歩が屋敷から出る前に、この展開を予期していて淹れていたものであった。

あまりに無防備に近づき、湯呑を平然と渡してくる雪歩に、琴葉は警戒を忘れ、それを受け取る。

雪歩「熱いから気をつけて」

琴葉「………ええ」

雪歩「しじみ汁のほうがよかった?」

琴葉「いえ、そういう気分でもないもの」



琴葉「! この味は―――――」




つづく
642 : プロヴァンスの風   2021/11/22 21:12:14 ID:zobv2JDfIY
おつです
ちなみに39の39乗を先生に聞いてみた

643 : つづき   2021/11/28 10:55:15 ID:4QH8as7SdM
- 異界ライブラリ前 -


風花「ひ、ひえ~ん、弾切れになっちゃいました~」

ロコ「あんなにバンバン、ショットしていたら当然のリザルトです!」

アンナ「ロコ……?イマ、アンナッテ……ヨンデクレタ……?ロコ……ロコ」

昴「ちっ、オレも弾切れだ!まだたくさんいやがるぜ!」

真「しかたないね。ここから先は実力でねじ伏せるっ!紬!」

紬「そう大声を出さなくてもいいでしょう。紡げ―――さかしまの言葉」

チュパァァァァ!! チュパァ! チュパァ!

ロコ「な、なんですかあのアビリティは!?」

風花「チュパカブラたちが混乱している?す、すごいよ、紬ちゃん!これがネオカナザワの力!」

紬「風花さん、今のはもしかして金沢を馬鹿にしているのですか?」

真「で、でたぁー!紬のつむり!やーりぃ!これで勝つる!」

昴「なんでもいいから、戦ってくれ!やばいぞ、まだ増えやがる!」

ロコ「うー、こんなことならロコのインベンションの数々をもっとブリングしておけばよかったです~!」
644 : ごしゅPさま   2021/11/28 10:58:04 ID:4QH8as7SdM
真「紬!他に必殺技もっていないの!?」

紬「ただのしがない商店街のパン屋に何を求めているんですか」

真「こっちだって、市場で働くただの看板娘なんだけど!」

風花「わ、私、単なるメイドなので」

昴「今更、身分や立場の確認はいい!次がくるぞ!」

ロコ「あわわわわわわ」

アンナ「!! ミンナ……アレヲミテ……!」


ドカァァァァァァンンッッッッ


真「な、なんだぁ!?まるで爆発でも起こったみたいじゃないか」

紬「まるで、ではありません。明らかに爆発……爆弾が投じられたんです!」

風花「きゃっ、爆風で私の清楚な水玉ワンピースがっ!」

ロコ「あそこにいるのは――――」

昴「遅かったじゃないか……」



ジュリア「待たせたな」ドジャァァァァ~~ン
645 : Pさぁん   2021/11/28 11:00:52 ID:4QH8as7SdM
紬「誰ですか?なんとなくいっしょに戦った覚えがある方ですが」

真「え?ボクは敵対していた記憶が……」

ロコ「聞いたことがあります。ダイナマイター・ジュリアというレッドヘアーをしたボムのプロフェッショナルがいると」

風花「ジュリア……あっ!もしかしてあなたが麗花ちゃんが話してくれた、アクアリウスのひとりのジュリアちゃん?」

ジュリア「ああ。ほんとなら、サヨやレイに加勢するつもりだったんだけどな。あっちにはハンドレッドが回ったもんで、あたしがこっちにきたってことよ」

昴「話は後だ。ジュリア、お前の爆発はこんなもんじゃないだろ?」

ジュリア「ふっ、言ってくれるな。おい、チュパカブラども!うちらのライブ、目に焼きつけな!」

チュパァァァァァ!!!

ロコ「アートはエクスプロージョンなの!」


アンナ「ジップンゴ………」


ジュリア「『明けない夜はない』って、いい言葉だと思わないか?あのライブを思い出すよ。ひたすら走れば、いつかたどり着けるさ、ウチらの目指す場所に……そう思うだろ?」

風花「やったぁ!今の私、よく出来たと思いませんか?」

真「まっこまっこり~ん!」

紬「粗方、片付きましたね。あとは……萩原さんたちを信じるしかないようです」

昴「すっげー!」

ロコ「エンディングまでもう少しですよ!」
646 : Pちゃま   2021/11/28 11:03:38 ID:4QH8as7SdM
- 聖域 -


琴葉「このお茶はいったい……?」ズズズ

雪歩「………」

琴葉「ありえない。これまで幾千どころか、幾万ものあらゆる食材を研究し、その知識と経験とを蓄積しているはずの私であっても、この味はわからないわ」

雪歩「美味しい?」

琴葉「……ええ、とてもね。種明かししてくれる?」

雪歩「私は今、複雑な気持ちだよ」

琴葉「どういうこと?」

雪歩「琴葉ちゃんがそのお茶を美味しいと言ってくれたのは嬉しいけれど、それほどまでに特別なふうに受け止められるとは思わなかったから」

琴葉「何がいいたいの?このお茶は、なんなん?早く教えなさいっ」

雪歩「そのお茶は――――現世のスーパーマーケットでもごく当たり前に売られている茶葉を使って私が淹れたお茶だよ」

琴葉「嘘だッ!!」

雪歩「なぜ?」

琴葉「なぜ、ですって……?だって、こんなにも美味しいなんてありえないわ、こんなにも私の心を――――はっ」

雪歩「やっと気づいた?」
647 : P君   2021/11/28 11:06:16 ID:4QH8as7SdM
琴葉「そんな………でも………もしかして、ううん………」

雪歩「あなたの作った異界ではこんなことだって起きる。それをあなたは知っているよね。そのお茶をそこまで美味しくしている要素、まだ確信が持てないの? まだわからない?」

琴葉「っ!」

雪歩「心だよ!」

琴葉「けど……なぜなの?雪歩ちゃんが私に心を込めてお茶を淹れるなんて、そんなこと……ひょっとして一目ぼれ?!」

雪歩「ちがうよ!?」

琴葉「じゃあ、どうして」

雪歩「知ってほしかったんだよ、伝わってほしかった。こんなにも私が、いいえ、私たちがこの異界を愛しているってことを」

琴葉「……」

雪歩「かつてのあなたが……伝説的魔法使いが出来損ないだとしたこの世界、今では数えきれないぐらいの生きとし生けるものが暮らし、日々を過ごし、命を育んでいるここは素晴らしい世界だって」

琴葉「それでも―――今の異界では、私の野望は、理想は、夢は叶わない!」

雪歩「ねぇ、本当にあるの?」

琴葉「え?」

雪歩「本当に大きな野望や理想なんてあるの?私には………もっと単純で、素朴で、でも……叶えるには世界を歪ませないといけないような、そんな夢をあなたは、そう、あなた一人で抱えているように思えるんだ」
648 : バカP   2021/11/28 11:08:26 ID:4QH8as7SdM
琴葉「まいったわね」

雪歩「琴葉ちゃん……」

琴葉「私の作りだしたこの異界を、大切に想うあなたの気持ち。それがこのお茶を飲んだ私に伝わって、そしてそれは同時に、私の心の底をあなたに覗かせる結果になったのかしらね」

雪歩「何か叶えたい夢があるの?」

琴葉「ええ。ありふれた話よ」

雪歩「聞かせてくれる?」

琴葉「聞いたら、あなたは私を止めずに、見過ごしてくれるかしら」

雪歩「ううん、残念だけどそれはないよ。私はあなたを止めるためにここにいる」

琴葉「ふっ―――揺るぎない信念、か。いいわ、あなたを永久の眠りにつかせる前に、教えておいてあげる」

雪歩「………」

琴葉「500年前の話になるわ。ハーヴェイとしての私がまだ、魔法使いとして有象無象の1人に過ぎなかった頃。1人の青年であった頃………私はとある女性と恋に落ちた。私たちは結ばれ、幸せな時間を紡いだ。そして……突然、私は彼女を失った。不条理にも、理不尽なやり方で、そうよっ!誰もが納得できない在り方で、世界は彼女を追放した!永遠の闇に」

雪歩「つまり、あなたが異界を作ろうとしているのは―――」

琴葉「彼女を、コレットを取り戻すため。それだけ、それがすべてだった。とはいえ、390年と少し前に今あるこの世界を作った際には、弟子たちにした説明は違ったけれどね。弟子たちがついてくるように、より大きな、ええ、大きすぎる理想を掲げたわ」
649 : プロデューサーちゃん   2021/11/28 11:11:09 ID:4QH8as7SdM
雪歩「死者は生き返らない。それは絶対の理だって。師匠が教えてくれたよ」

琴葉「ふっ……その世界の理をも壊す。壊せるのよ。私の魔法とオトメティックパワーがあればね」

雪歩「異界の再構築―――そのことで失われる命はどうする気なの?それも取り戻せるの?」

琴葉「どうもしない。代償としてあるだけよ。私はね、自らを正義とするつもりはないわ。さっき言ったとおりよ。コレットを取り戻す、それがすべて。それを成すために、何もかもを利用してきた」

雪歩「でも迷いはある」

琴葉「………なんですって」

雪歩「じゃなきゃ、もっと強引な手段をずっと選んできたはずだから」

琴葉「違うわ。最初の頃は、ただの料理バトルドラマの設定だったってだけよ!!」

雪歩「くっ、それを言われたら言い返せないですぅ!」

琴葉「もう終わりにしましょう。気がつけばスレ立てから4カ月近くが経とうとしているもの」

そう言って、琴葉は魔法瓶を宙に投げた。そしてそれは落ちるより先に真っ二つとなった。

雪歩「なんて剣なの……あの刹那の間に鞘走るかよ!?」

琴葉「いくわよ。あなたのその揺るがない心ごと―――切り刻んであげるっ!」

雪歩「ここで倒れるわけにいかないのは私も一緒だよ!レーヴァテイン!唸れっ、神撃の焔よ!」
650 : 3流プロデューサー   2021/11/28 11:14:05 ID:4QH8as7SdM
手加減無用。雪歩は覚悟を決めて、その神炎の剣先スコップを振るう。
その炎は並の人間なら火傷どころかほんの何秒かで灰へと変えるようなものだ。
異界ライブラリ、その聖域は雪歩の心、つまりは異界への想いに応じ、そのスコップの潜在能力、創造主であるハーヴェイさえも知らない力を引き出していた。
しかし、それでも琴葉がまさにこうした状況、コレットとの再会を阻む者との対峙のために用意したミリシタニウム鉱石を精錬してできた剣―――ゴッドイーターはその神炎をも喰らう!


琴葉「ふふふ……このゴッドイーターはその名のとおり神さえ餌食とする」

雪歩「なんて化物じみた剣なの!」

琴葉「雪歩ちゃん、あなたにはアズールと違って短い時間しかなかったのに、よくもそこまで鍛えたものね。感動的だわ。でも、それもここで無意味となる」

雪歩「無意味なんかじゃない!たしかにゴッドイーターシリーズは無印・バーストで良くも悪くも完成されていて、2が主にシナリオ面で不評で、出さないといっていたはずのレイジバーストで少し持ち直したかと思いきや、3のあの出来はちょっと……って感じらしいけれど、思い出補正込みでなら、そこそこ面白いハンティングアクションゲームシリーズだよ!!」

琴葉「そんなこと聞いていないわよ!」


聖域が炎のリングと化す。
異界の創造主は転生してなお、その空間においては特別ということなのか、酸欠状態とは無縁なのは当然のこと、レーヴァテインの炎はまだ琴葉の髪の毛一本燃やせずにいる。

雪歩(なにか手はないの……あの剣術を避け続けるのは至難の業だよ)

雪歩は炎で作り出した分身で琴葉の攻撃対象からなんとか逃れながら戦っていた。
傍から見れば、場を支配しているのは火焔の担い手たる雪歩であるのに、実際には琴葉が優勢であった。
651 : ご主人様   2021/11/28 11:16:57 ID:4QH8as7SdM
雪歩「っ!!」

琴葉の高速の太刀筋が激昂した雪歩を捉える。

琴葉「あの体勢から避けるなんて、すごいわ。でも、完全には避けきれなかった。ふふ……かすり傷、ではないようね」

雪歩「はぁ……はぁ……」

琴葉「時間をかけてなぶる趣味はないわ。もうそこから動かないほうがいいわよ。痛いのは嫌でしょう?次できめてあげる」

雪歩(お腹の皮の一枚、二枚なんて思っていたけど……。あの剣、想像以上。切り傷が、彼女の抱える悲哀と憤怒が私の全身を駆け巡るのを感じる。凄まじい呪い。う……立っているのがやっと。動きたくても、うまく動けないっ)

琴葉「モノローグは済んだ?炎の勢いもずいぶんと弱まったわね。さぁ、終幕よ!」

雪歩(避けきれない―――それならっ!)

雪歩「迎え撃つ!」

聖域内の炎が収縮する、すべては雪歩が握り直したスコップ、レーヴァテインへと返る。
逃げ場がないのなら、迎え撃つしかあるまい。たとえ刺し違えようとも――――!
652 : そなた   2021/11/28 11:19:42 ID:4QH8as7SdM
琴葉「ねぇ、雪歩ちゃん。私はそんなにおかしいかしら?」

雪歩「何が言いたいの」

琴葉「あなただって、可憐さんや春香ちゃん、百合子ちゃんが理不尽な死を遂げたら、同じように生き返らせようとするんじゃない?」

雪歩「嫌な想像させないで」

琴葉「でも誰にでも起こり得ることよ。そしてもし、あなたが大切な人ともう一度会える方法を知ってしまったら?たとえどんな犠牲を払ってでもあなたは進むんじゃないかしら」

雪歩「…………」

琴葉「仮定に過ぎないとまだ思っている?それなら……そうね、あなたをここで半殺しにして、さっきあげた3人の首をもってきましょうか」

雪歩「なっ……」

琴葉「そうしたら、私に協力する気になるかもね。うん、それがいい」

雪歩「そんなことさせないっ!さっさと来やがれですぅ!こっちも最高の技をお見舞いしてやりますぅ!」
653 : プロデューサー君   2021/11/28 11:22:14 ID:4QH8as7SdM
雪歩「ラグナロク!」

ここにきていきなり名前ありの技を雪歩が披露するっ!
スコップの先端、その一点に集まった焔が収縮を越える速度で爆発し、琴葉を襲う。無論、雪歩も無事では済まない。
対して琴葉は一瞬で距離を詰めてゴッドイーターを振る――――えない!?

琴葉「!」

剣を握る手が突然痺れ、琴葉は剣を床に落としてしまう。それが光速の雷撃によるものだと、聖域の隅で倒れていたはずの愛弟子が放ったものであると理解したときは遅かった。

あずさ「ふふ、暑くて目が覚めちゃったわ」

その女神のはにかみを雪歩も琴葉も見ることはかなわない。2人は神炎の爆風に包まれた!

あずさ「雪歩ちゃん―――!」




雪歩「けほっ、けほっ。うう~、熱いですぅ」

靄が晴れて、その場に立っていたのは雪歩だった。手にはレーヴァテインの姿がない。
あずさは爆風によって琴葉が吹き飛んであろう方向を見やった。
聖域の壁。そこに黒い影が磔となっていた。スコップがその影に突き刺さっている。
654 : 監督   2021/11/28 11:24:54 ID:4QH8as7SdM
黒い影―――ラグナロクをその身に受けた琴葉の体が灰になることなく、壁に貼りついているのだった。

雪歩「やった……んだよね?」

あずさ「ええ。あなたの炎が、信念がハーヴェイを燃やしたのよ」

雪歩「えっと、ところであなたは……?」

あずさ「え?ああ、そうね、面識がなかったわね。私こそ、ハーヴェイの弟子の1人にして、かつて彼の計画を邪魔した張本人、春香ちゃんに道を示した、占星術師アズール・ミューラー。あずさって呼んで!」ドタフ~゚ン

雪歩「か、肩書多いですね。あ……レーヴァテインを回収しないと」

あずさ「そんなことよりも、傷の手当が先だわ」

雪歩「いえ、それより、」




  「くっくっくっく……ふーーはっはっはっはっは!!」


聖域内にあたかも小悪党の笑い声が響いた。
655 : ボス   2021/11/28 11:27:07 ID:4QH8as7SdM
雪歩・あずさ「!?」

2人が声をした方向を見ると、そこにあったのは、やはり黒い影。
が、完全に動きを失くしたはずのそれが、動いている!!

雪歩「嘘……でしょ?」

あずさ「不死身だというの!?」

黒い少女の影は、自らを貫いていたスコップを引き抜く。
そして、そのスコップをへし折った!

雪歩「ああ!レーヴァテインが!」

琴葉「くっくっく、まさかこの我をここまで追いつめるとはな」

あずさ「ハーヴェイ……!」

琴葉「言っておくが、この黒影の姿は貴様の炎によるものではない。我の最終手段が自動で発動されたのだ」

雪歩「なん……だと」

琴葉「アズール……貴様らのせいで、転生に遅延した我はこの世界に生を受けた時、このような影だったのだ。ヒトではなかったのだ。先ほどまでの姿……我の記憶に残るコレットの姿を得るまでに、多くの時間を費やしたよ。これも一種の受肉というものだ」
656 : Pたん   2021/11/28 11:29:32 ID:4QH8as7SdM
雪歩「愛しい人の姿をあなた自身がとっていたなんて……再会できたらどうするつもりだったの」

琴葉「戯言を。再構築された世界であれば、我の姿なぞいくらでも好きなように作り変えられる」

あずさ「便利な世界ね。反吐が出るわ」

琴葉「くっくっく……遺言はそれでいいか?さあ、今度こそ幕引きだ。見せてやろう、これがホントウノワタシだっ!!」

黒影が一歩、また一歩、近づいてくる。その手にはラグナロクをもってしても溶けきることのなかった半壊したゴッドイーターが握られている。

雪歩「あずささん、離れてください」

あずさ「ええ!?」

琴葉「間抜けが……魔女1人逃がそうとでもいうのか?それとも抵抗する気なのか。いや、無理な話だ。貴様は武器を失った」

雪歩「あずささん、お願いします」

あずさ「……策があるのね?」

雪歩「はい」

琴葉「存外、嘘つきなものだな、力無き少女よ。いいか、貴様のせいで我は異界の再構築の儀式に必要な清廉なる少女の躰を失ったのだ。またゼロからはじめなければならないのだぞ?」
657 : 5流プロデューサー   2021/11/28 11:32:44 ID:4QH8as7SdM
雪歩「まだ諦めていないの?」

琴葉「ああ、計画を練り直すのだ。その一歩目が貴様らを冥府に送り込むことだっ!」

雪歩「結局、最後までオトメティックパワーってのはよくわからなかったわ。でも、もういい。ここであなたを討つために、私もこの魂を賭ける!」

琴葉「大口をたたくな!レーヴァテインを失った貴様なんぞ微塵も恐怖になりえん! この異界であってもあれほどの炎を操る能力は稀有であるが、しかしここで絶やさねばならぬ!」

雪歩「私に炎を操る能力なんてない。あれはすべてレーヴァテインによるものだよ」

琴葉「………なに?では、貴様は能無しだったのか、傑作だな!ふーっはっはっは…………ん?なんだ、これは………」

あずさ「――――――冷気?」

雪歩「あずささん、もっと離れてください」

あずさ「雪歩ちゃん、いったい何を……」

琴葉「なんだこの冷気は……貴様、説明しろっ!」

雪歩「ふふっ。冥土の土産に話してあげる。ねぇ、どうして私が異界でレーヴァテインを持ち続けていたと思う?」

琴葉「!! ま、まさか………」

あずさ(察しがいいのね)
658 : あなた様   2021/11/28 11:35:07 ID:4QH8as7SdM
雪歩「師匠と可憐ちゃんが家から出ていって、そばに春香がいたといっても、私の心はすぐには安定しなかった。不安定な心のまま、行き場のない、誰にぶつけたらいいかわからない想いばかりが育った。そして……ある時、花を咲かせた。それがこの能力」

琴葉「やめろ……この冷気………貴様自身さえも、凍てつくぞ」

あずさ「! だから、レーヴァテインを……?」

雪歩「はい。この能力がいつ暴走するかわからなくなった私は、宝物庫からレーヴァテインを取り出し、鍛錬を始めた。春香を抱き枕にして眠る回数も減らした」

あずさ「すべてのものを凍てつかせるほどの凍結能力……それはかつてのハーヴェイだって形にできなかったものよ」

琴葉「黙れっ! 萩原雪歩……考え直せ、それ以上は貴様自身をも滅ぼす、もう、やめるんだ」

雪歩「怖いんだね」

琴葉「なにぃ!!?」

雪歩「死を恐れているんだよね。大丈夫、私もだよ。みんな、そうなんだ。ハーヴェイ、あなたの敗因はその恐怖を忘れ、過去にしがみつき、世界の再構築を目指しながらも結局のところ一歩も前に進もうとしなかった、その脆弱な精神だよ。でも、責めはしない。あなたは……どこまでも普通の人間だった。ただ、少しだけ力を得ることができて、多くを知っていただけ」

琴葉「やめろ……やめるんだ……アズール!なぜ止めない!そいつは……そいつは我ごと自分自身を凍らせるつもりなんだぞ!?」

あずさ「雪歩ちゃん……私が失敗していなければ、今、ここでハーヴェイを討てるだけの力が残っていれば……」
659 : Pちゃん   2021/11/28 11:38:26 ID:4QH8as7SdM
雪歩「あずささん、調整ミスって、凍らせたらごめんなさい」

あずさ「!? あ、うん。そうよね……まあ、それもしかたないわ。思い切ってやりなさい。すべてをここで断ち切るために」



琴葉「い、嫌だ……こんなところで終われるか……に、逃げないと……」

近づいていた琴葉が足を止め、そして引き返す。が、そこには壁しかない。聖域の唯一の出入り口は雪歩たちの後ろにあるのだから。
ハーヴェイは絶望した。終わりが近い。


ついに雪歩が歩みを始める。ゆっくりと、しかし迷いなく琴葉へと向かって。一歩、また一歩、踏み出していく。




雪歩「冥府の氷海、嘆きの氷河よ、我が魂、熱き血潮に応え、かの者を永久に凍てつかせろ―――――」

琴葉「馬鹿な……ありえない、こんなところで、こんなところでぇぇぇええええ!!!!!!!!」



黒影は身を翻し、少女を襲った。
しかし、少女は動じず、その影に優しく手をかざす。




雪歩「コキュートス」



世界が凍てついた。
660 : プロデューサーちゃん   2021/11/28 11:40:54 ID:4QH8as7SdM
つづきは早ければ今夜 最終安価はそこで
エピローグは12月入るかもです
661 : つづき   2021/11/28 18:41:38 ID:4QH8as7SdM
- 聖域 -

氷漬けとなった黒影はやがて音を立て、崩壊した。
それはおおよそ500年前に始まった、伝説的魔法使い兼料理研究家ハーヴェイの謀が終焉したことも意味するのだった。
聖域の明かりがバラバラの氷塊を照らし、それら一つ一つが宝石のように輝いていた。

あずさ「師匠………貴方が向こう側で最愛の人と再会できていることを切に願います」

雪歩「っ―――」フラッ

あずさ「雪歩ちゃん!」

倒れ込む雪歩をあずさが抱え込む。いや、抱え込もうとしたものの、思わず手を離してしまう。
雪歩の身体があまりにも冷たかったからだ。

雪歩「あずささん……離れていてください。まだ……私の冷気の放出は終わっていないみたいですから……」

あずさ「そ、そう。雪歩ちゃん、お疲れ様。あなたのおかげでこの異界は失われることなく……雪歩ちゃん?」

雪歩「……すみません、やっぱり、うん……無理そうですぅ」

あずさ「!! 雪歩ちゃん、目を開けて! そんな、冗談でしょう!? こんな結末、ダメよ!しっかりしなさいっ」

その身を凍てつかせていく雪歩をあずさは抱える。どんなに冷たくとも今度は離さない。

あずさ「雪歩ちゃん!眠ってはダメ!その眠りは永遠のものよ!お願い、目を覚まして!」
662 : プロヴァンスの風   2021/11/28 18:44:22 ID:4QH8as7SdM
雪歩「これを……これを、開けてもらえますか?」

あずさ「この小瓶は?フレグランス?……ううん、わかったわ。開けるわ。だから、まだ眠ってはダメよ」

可憐から託された『勇気のfragrance』をあずさは開ける。
漂う香りに、あずさは恍惚としてしまい、一瞬、雪歩のことを忘れさえした。
意識の揺蕩う雪歩もまた、その香りに溺れる。思い起こされるのは最愛の妹たち。それに師匠の綺麗な銀髪。いつか4人で眺めた、闇夜に浮かぶ月。その淡い光……。
ああ、これって走馬灯?と雪歩は思う。つい笑ってしまった。虚しく。悪くない最期かなと。
そうして瞼の重さに耐えられなくなった。

あずさ「雪歩ちゃんっ!? 嘘……嘘よ、そんなの、嘘でしょう!!」

雪歩の身体を懸命に揺り動かすあずさ。その腕ごとかじかんでいる。目を閉じた雪歩は返事をしない。
あずさは彼女に比べればいくらかつつましやかな雪歩の胸部に耳をぴったりとつけ、心音をどうにか聞こうとする。
冷たさが痛みとなってあずさを襲う。そのなかで、あずさは確かに耳にした。

あずさ「! まだ、まだよっ!雪歩ちゃんは生きているわ……!でも、どうすれば―――」

占星術師はまず天井を見上げる。そこに星々はなく、何も彼女を導きはしない。そして彼女はあたりを見回す。
すると………
663 : プロデューサー   2021/11/28 18:46:13 ID:4QH8as7SdM
あずさ「あなたたち――――!」

可憐「?! ゆ、雪歩ちゃん!? ど、どうしたんですか、この状況はいったい……?」

百合子「音が止んだので、入ってみましたが……うう、さ、寒いですねここ。冷房が効いているんですか……って、白雪さん?!」

あずさ「あのね、ふたりとも落ち着いて聞いて」

慌てふため始めた2人にあずさは事の成り行きを説明する。

百合子「そんな!『勇気のfragrance』、あれは生存フラグだったんじゃ」

可憐「あ、あれは私が雪歩ちゃんのことを一途に想って調合しただけの……言ってしまえばただのフレグランスだから」

あずさ「待って。たった今、すべてが繋がったわ」

可憐・百合子「え?」

あずさ「そういうことだったのね…………ずっとわからなかった、気がかりだったけれど、それが大きな変化を与えはしないと高を括っていたわ」

可憐「え、えっと?」

百合子「なんのことですか。そんなことより、白雪さんを!」

あずさ「百合子ちゃん」

百合子「はい?」
664 : 箱デューサー   2021/11/28 18:48:08 ID:4QH8as7SdM
あずさ「あなたは本来、ここにいないはずの存在なの」

可憐「え……」

あずさ「私は春香、じゃなくて遥か昔からこのときを、ハーヴェイの計画を打ち破る時を予知していたわ。と言っても、全部まるっとお見通しだったわけではないけれどね。事実、私はミョルニルの力を借りても1人ではあの人を討てはしなかった。とにかく、私はハーヴェイに立ち向かう私以外の存在、そう、雪歩ちゃんたちのことをなんとなくだけれど知っていたの」

可憐「そ、それがどうしたっていうんですか……。もしかして、雪歩ちゃんがこうなることも!?」

あずさ「違うわ。そうなの、違うのよ。雪歩ちゃんはこんなところで命の灯を消してしまう存在ではないの」

百合子「あのー、それで私が本来存在しないはずってのは……」

あずさ「そのままの意味よ。私の占星術をもってしてなお、七尾百合子、あなたの存在は予見できなかった。不完全な未来予知につきものの、ちょっとしたイレギュラーかと思っていたけれど、でも、そうじゃない。やっとわかったの」

可憐「わかったって、なにが……」

あずさ「百合子ちゃん。あなたが雪歩ちゃんを救うのよ」

百合子・可憐「!!」

あずさ「正確にはその本、ハーヴェイであっても解明し得なかったその魔導書と契約を結んでいるあなたが、雪歩ちゃんの目を覚ます料理を閃くの」
665 : おにいちゃん   2021/11/28 18:50:45 ID:4QH8as7SdM
百合子「な、なんだってー!そんな、まるで私がメインヒロインみたいじゃないですか!」

あずさ「思い出して。百合子ちゃん、よく、よーく、思い出すの。本気で雪歩ちゃんを救いたいなら、思い出す必要がある。あなたがその本と契約した時のことを」

可憐「ゆ、百合子ちゃん、絶対思い出してください!さもないと、私、私は……こ、ここで穴を掘って埋めてやりますから!」

百合子「待って、待ってください!そんないきなり……」

春香「できるよ、百合子なら」

可憐・百合子「春香さん!?」

春香「いやぁ、さすがにまだ目がぐるぐるしているしている感じ。よいしょっと」

可憐「それに海美ちゃんも……気絶しているみたいですね」

春香「うん。あー、一生分、転んじゃった。もう転ばないかもね、なんて」

百合子「春香さん……私、えっと」

春香「『何度も言えるよ』……って、これは雪歩の名曲か。あのね、百合子ちゃんならできるよ。うん、何度だって言える」

百合子「ど、どうしてそこまで」
666 : プロデューサー   2021/11/28 18:52:52 ID:4QH8as7SdM
春香「簡単だよ。だって、私たちの妹だもん」ドンッ

百合子「へ?」

可憐「ほ、他に根拠は?」

春香「いらないでしょ。百合子ちゃん、私たちと過ごした時間は偽物だった?ううん、全部、本物だよ。血が繋がらずとも、私たちはあの家で、いっしょに過ごした家族だよ。私、わかるんだ。異界は、とりわけこの場所は想いに応えてくれるって。そう信じられる」

あずさ「ん、ん。百合子ちゃん、不安は捨てなさい。信じるの。私たちが信じるあなたをあなた自身が何よりも信じて」

可憐「お願いします、百合子ちゃん……!」

百合子「―――――わかりました。だっ…大丈夫です。いきます!」

最後にいつ登場させたかも覚えていない魔導書を百合子は取り出し、開いた。そして精神を集中させる。
思い出す。遡っていく。この世界でのこれまでの日々を。かけがえのない日常を。
濃密な39秒の後、百合子の目がカッと開いた!


百合子「思い……出した!」
667 : プロデューサーさん   2021/11/28 18:55:17 ID:4QH8as7SdM
春香「やった!」

可憐「そ、それでどんなことを思い出したんですか」

あずさ「教えてくれる?」


百合子「―――――歌です」


春香「歌?」

百合子「はい。あの日、私はあの不思議な図書館で、歌声を聞いたんです。そしてその声が聞こえるほうへと進んでいった」

可憐「その歌が……百合子ちゃんを、み、導いたってこと?」

百合子「そうだと思います。それで……歌声の主に私は出会った」

あずさ「ねぇ、百合子ちゃん。ひょっとしてその主は、女の子?」

百合子「はい」

あずさ「!! も、もしかして、蒼くなかった?」

春香「え?」

可憐「それってどういう……」
668 : プロデューサーちゃん   2021/11/28 18:57:25 ID:4QH8as7SdM
百合子「そうなんです。私、直感しました。あ、この人、蒼いなって。スレンダー系の美人でした」

あずさ「そう、そういうことだったのね」

春香「あずささん!?なんで急に涙を……!?」

あずさ「ふふ……千早ちゃん、いなくなっちゃったと思ったら、あの子なりにハーヴェイの計画を止めようとしていたのね。因果律さえも捻じ曲げて」

百合子「その人は言いました。『ごめんなさい、七尾百合子さん。でも、これしか方法がないの』と。何度も私に謝ってきたんです。私は何がどういうことなのかさっぱりで。でも、その人は本当に悲しそうな顔をしていました。だから、私、『大丈夫です。私は風の戦士ですから』って」

春香「うわぁ」

百合子「春香さん!?そこは『すげぇよ百合子は。強くて、クールで度胸もある』みたいに褒めてくださいよ!」

可憐「続けて」

百合子「あ、はい。それで、その人が私に差し出したんです。この、魔導書を。これと契約して救ってほしい世界が、そして人がいるんだって」

あずさ「なるほどね。そうしてあなたはこの世界へとその魔導書と共に転移してきた。救世の宿命をその身に委ねられて」

春香「でも、記憶は混濁してしまったと。契約、あるいは転移の代償に」
669 : EL変態   2021/11/28 18:59:37 ID:4QH8as7SdM
可憐「元いた世界からの実質上の追放を受けて、百合子ちゃんはこの世界に来てくれたんだね。私たちを救うために」

あずさ「百合子ちゃん。真なる契約を思い出したあなたであれば、今の状態にある雪歩ちゃんの目を覚ます料理がわかるはずよ」

春香「魂まで冷え切った雪歩を温める料理、か」

可憐「その魔導書の力、きっと今の百合子ちゃんなら充分に引き出せます……!」

あずさ「こんな悲しい結末を覆すのよ、百合子ちゃん」

春香「もちろん、1人でぜんぶさせないよ。私たちも協力する。他ならぬお姉ちゃんのことだもんね」

可憐「はい!私たち妹3人で雪歩ちゃんを救う……ある意味、最強です!」

あずさ「あなたたちには『たしかな足跡』がある。できるわ、あなたたちなら。どうか乙女の力の加護があらんことを」

春香「さぁ、百合子ちゃん!閃いて!」

可憐「雪歩ちゃんを救う料理を!」

百合子「はいっ!それは―――――」
670 : 兄(C)   2021/11/28 19:03:56 ID:4QH8as7SdM
最終安価

黒影を打ち破るため、能力の代償により魂を凍らせてしまった雪歩
彼女を目覚めさせる異界料理とは?

期限は11/29 23:59:59まで
(安価がつかなくても)早ければ11/30の早朝か夜に続きを投下する予定
671 : プロデューサー   2021/11/28 19:30:31 ID:UCpbQBbvfc
ここで一話で作ったタコスをドーン!!
672 : レスありがとうございます!!   2021/12/01 05:47:04 ID:6aoFVxyiCo
可憐「タ、タコス!?」

百合子「ええ、このドラマが始まって最初にみんなで作った料理なんですっ!」

春香「相変わらずメタ!っていうか、あの時もほとんど雪歩が作っていた気もするけどね」

あずさ「それを今回はあなたたち3人でつくるってことね」

百合子「はいっ。春香さん、可憐さん、材料と調理器具をここに!」

可憐「え?こんなところにそんな設備、ないですよね……?」

春香「材料ならあるよ!ほら、すっかり忘れていたけど、琴葉ちゃんが異界再構築魔法のために集めた貴重な食材たちが!」

あずさ「折り畳みキッチン~♪」

可憐「!? あずささんがポケットから取り出した、折りたたまれた紙を広げると立派なキッチンが!?」

春香「わぁ!ドラ○もんの秘密道具みたい!」

百合子「さすが空間魔法の使い手ですね」

可憐「よ、よし、はじめましょう……!」
673 : ボス   2021/12/01 05:49:24 ID:6aoFVxyiCo
百合子「まずはチリコンカンをつくります」

春香「牛豚の合いびき肉に豆、トマト、その他の野菜と香辛料をスパイシーに煮込んだ料理だね」

可憐「テクス・メクス料理の1つらしいですね。メキシコ風のアメリカ料理だって」

あずさ「煮込み終わったものがこちらです」

春香「おおっ!まるで料理番組!」

百合子「そしてこれにチーズをのせてオーブンに!」

可憐「オーブンでチ、チーズが溶けるまで充分に加熱したものがこちらです……!」

春香「出来上がったものに、トルティーヤ・チップスを添える!むしろこのトルティーヤ・チップスをメインといってもいいんだけどね」

百合子「チリコンカンはトッピングの1つですもんね」

あずさ「まあ!たった1レスで完成したのね!」

可憐「こ、これを雪歩ちゃんに……!」

百合子「あれ?でもどうやって食べさせたらいいんでしょう」

あずさ「眠っているものね」
674 : Pたん   2021/12/01 05:52:00 ID:6aoFVxyiCo
春香「ここはあれじゃない?もの○け姫で、サンがアシタカに干し肉を食べさせたときを倣って……」

百合子「口移しってことですか」

あずさ「やむなしね」

春香「ここは雪歩と付き合いが長い私がするしかないかな」

百合子「いえ、この料理は私に責任があるわけだし、なんだかんだこのドラマのメインを担う私が!」

あずさ「料理をみんなで作ってくれたのだし、食べさせるのは私がやるわ」

可憐「あ、あの……私も役に立ちたいです…!」

春香・百合子・あずさ「どうぞ、どうぞ」

可憐「ええっ!?」





あずさ「――――というわけで、(雪歩ちゃんと)スタッフさんから『ふつうに食べさせて』と指示があったので、ふつうに食べさせるわね」
675 : P殿   2021/12/01 05:54:06 ID:6aoFVxyiCo
可憐「ふー、ふー。雪歩ちゃん、あ、あーん」

春香「眠っているから、それはどうなんだろう……」

百合子(あ、空気を読んで雪歩さんが口を開いてくれた)

雪歩「…………」モグモグホ

春香「けっこうあるから、私たちも食べていいよね」

百合子「そうですね」

可憐「大事なシーンなので、き、緊張感出していきましょう……!?」

あずさ「!! 雪歩ちゃんが何か言っているわ」

春香「えっ!?」

雪歩「…………じゃん」

百合子「ん?じゃん?」

雪歩「これ…………じゃん」

可憐「これじゃん?」
676 : Pさん   2021/12/01 05:56:40 ID:6aoFVxyiCo
雪歩「だから………これは………じゃん」

春香「あっ」




雪歩「だから、これはナチョスじゃぁあああああん!!!!!!」




春香・百合子・可憐・あずさ「!???!?!??!」

雪歩「包めよ!挟めよ!もっと手軽に食べられるようにさぁ!本場の様式とかいらないんだよ!日本でタコスいうたら、キッチンカーで販売されているようなクレープ感覚で食べられるような感じやろがい!今日日、コンビニでも買えるんだよ!?そのうちタコパがタコスパーティーの略称として流行る可能性も微粒子レベルに存在するの!肉、生野菜、チーズ、それらをトルティーヤに挟んでさぁ!揚げたチップスにしたら、それはやっぱりナチョスじゃん!!!!」
677 : 5流プロデューサー   2021/12/01 05:59:22 ID:6aoFVxyiCo
可憐「雪歩ちゃん!よかった、目が覚めたんですね」ギューッ

百合子「わ、私もっ」ギューッ

春香「私の抱き着くところがない!あずささん!」ギューッ

あずさ「あらあら~」

雪歩「ん……ここは……て、天国ですかぁ!?」

可憐「うう……ぐすっ……よかった、よかった……!」

百合子「すごく香ばしい空気が漂う中でのクライマックスですけど、感動です!」

春香「かくして、魂を凍りつかせた雪歩を、温かな料理で溶かした春香たち。それから仲睦まじく末永く暮らしたそうな。めでたし、めでたし」

あずさ「もうちょっとだけ続くわよ」

百合子「!! 気絶して、そこに放置していたはずの海美さんがいないですよ!」

可憐「えっ」

春香「待って、よく見たら、バラバラに崩れた氷塊(琴葉)の一番大きなやつが消えているよ!」

あずさ「ということは………海美ちゃんが?」
678 : Pチャン   2021/12/01 06:01:33 ID:6aoFVxyiCo
百合子「ど、どどどどどうしましょう」

雪歩「どうもできないよ」

あずさ「雪歩ちゃんのぜったいれいどを受けているから、あれを溶かすことなんてそうそうできないだろうし、そもそもの話、砕け散っているから、あれはもう琴葉ちゃんとも言い難いのだけれど……」

春香(そんな技名だっけ)

可憐「でも、海美ちゃんなら琴葉さんを治す方法を見つけるかも……」

雪歩「そのときは………もし、仮に海美ちゃんが再び私たちの前に敵として立ちはだかることがあれば、何度だって打ち破るだけだよ。ううん、それよりも美味しいものを食べさせて仲間にしたいかも。うん、それがいいよ」

春香「雪歩……」

雪歩「この戦いで、私たちは大切な妹を1人を取り戻し、1人、失ったのかもしれないね」

可憐「雪歩ちゃん、こんな大事なシーンなのに、く、口許にナチョスのかすがついていますよ……」ペロッ

雪歩「ひゃぁっ///」

春香「犬じゃないんだから、普通にとってあげなよ。見ているこっちが恥ずかしいよ」

百合子「まったくです!」

あずさ「美しい姉妹愛ね。ふふっ、アズール・ミューラーはクールに去るわ。私もようやく肩の荷が下りたのだから―――」
679 : P様   2021/12/01 06:03:59 ID:6aoFVxyiCo
Recipe Epilogue


聖域での決戦から2週間――――。
かつてハーヴェイが出来損ないだとみなした異界は、今日も数えきれないぐらいの多くの命を育み続けている。
そんな異界と現世、その境界部に位置する、とある料理店。
そこに美少女四姉妹が暮らしているという……。



- YUKIHO'Sキッチン -


やよい「うっうー!もう出番ないかと思っていましたぁー!」

春香「そ、そんなわけないじゃん。元はと言えば、やよいが『HOTDOGS』が動き出したっていう情報を持ってきてくれたのがはじまりだったんだから」

雪歩「うん。お店が臨時休業中も、店の前を掃除していてくれたみたいだし、やよいちゃんには感謝しないと」ナデナデ

やよい「頭を撫でられるのもいいけど、誠意は形にしてほしいかなーって」

雪歩「アッ、ハイ」

百合子「じゃあ、料理ですね!私とこの魔導書のリンクがさらに深まって、今だったらどんな料理のレシピだって引き出せる気がします!」

可憐「料理の腕は、ま、まだまだこれからだけどね……♪」

百合子「可憐さん?! それはそれ、これはこれですよ~!」
680 : プロデューサーさま   2021/12/01 06:06:39 ID:6aoFVxyiCo
春香「ん、呼び鈴だ。お客さんかな。新しい悩める乙女?」

雪歩「ううん、この高貴な、でもどこか懐かしく、親しみやすい気配はきっと……」

可憐「くんくん……この香りって」

百合子「迎えにいってきますね!」

春香「あっ、待って、私もいくよ」





千鶴「久しぶりですわね。雪歩ちゃん、春香、可憐、やよい、それに……えっと」

百合子「は、初めまして、にゃなお、ぷりこれす!」

千鶴「ニャニャオプリコレスさん?珍しいお名前ですわね。こちらの出身ではないのかしら」

雪歩「緊張しすぎでしょ?!」

春香「千鶴さんったら、セレブにさらに磨きがかかって、初対面の人だとしかたないかもね」

可憐「ご、ご無沙汰しております」
681 : 魔法使いさん   2021/12/01 06:09:13 ID:6aoFVxyiCo
千鶴「雪歩ちゃん、看板が『YUKIHO'Sキッチン』になっておりましたが、貴音は……?」

雪歩・春香・百合子・可憐「!!!!」

やよい「へっ?貴音さんだったら一年近く前に出て行きましたよ。そうですよね?」

雪歩「えっと、話せば長くなるんですけど……」

千鶴「………いえ、そんな気はしておりましたの」

春香「え?」

千鶴「これを」

可憐「封筒……て、手紙?」

百合子「誰からの……?」

千鶴「貴音ですわ。私が海外に行く前、託されましたの。『この封筒は魔法の封筒です。開くべきときにひとりでに開くのです』と。先日、そうですわね、2週間前ほどに封が切られていることに気がつきましたわ。それで休みをとって、こちらに参りましたの」

雪歩「それで中身は……」

千鶴「手紙が2通。1通はわたくしに。そしてもう1通はあなたたちにですわ」

春香「師匠が私たちに残した手紙、か」

可憐「したためたのは、1年前ってことですよね」
682 : プロデューサーさま   2021/12/01 06:11:31 ID:6aoFVxyiCo
千鶴「ですが、私宛の手紙だけを読んでも、貴音は今現在の状況を予見していたようですわね」

百合子「それって……」

やよい「ああっ!タイムセールの時間なんで、私、しつれいしまーす!!」ドヒューン!


雪歩たちは千鶴から手紙を受け取り、皆で読むことにした。


『この手紙が読まれているということは、私は既にあなたたちとは世界を別にし、その場にいないのでしょう』


雪歩「師匠さん……」

春香「無理に『四条さん』とかけなくていいよ!?」


『そしてこの手紙が雪歩、春香、可憐、あなたたちが呼んでくれているのであれば、無事にハーヴェイの計画を阻止できたことを意味しているのでしょう』


百合子「あずささんさえ予知できなかった私の名前がないのはしかたないですけど、海美さんの名前がないってことは、つまり……」

雪歩「あの日のこと、海美ちゃんがピンクのユニコーンによってオトメティックパワーを暴発させそうになった時点で、師匠はハーヴェイの存在、つまり転生した琴葉ちゃんの動きを多少は掴んでいたってことなのかな」
683 : P殿   2021/12/01 06:14:09 ID:6aoFVxyiCo
春香「そして海美ちゃんとのただならぬ関係も?だったら、はじめから……ううん、師匠だったらすべてを知ったうえでなお、海美ちゃんをこの家に迎え入れるだろうね」

可憐「ええ、師匠ならそうすると思います」


『頑張りましたね。3人とも。あなたたち3人は私にとって何にも代えがたい宝です。これまでもこれからもずっと一番の誇りです。実の娘だと思って共に暮らしておりました』


雪歩「……ぐすっ」

春香「な、泣かないでよ。こっちまで泣けてきちゃうから……」

可憐「うう……」

百合子(こんなときどんな顔していればいいんだろう)


『それはそうと、知らせておきたいことがあります』


雪歩「?」


『2021年11月30日15時よりミリオンライブシアターデイズ内ではセカンドヘアスタイルガチャが開催されております。今回の対象は、なんと、私、四条貴音と松田亜利沙が務めさせていただいております。ふふっ、皆様に普段お目にかけぬような髪型に今回はちゃれんじしておりますゆえ、ぜひ引けるまで引いてくださいませ。しかも、はーふあにばーさりーを記念して、1日1回無料プラチナガチャキャンペーンも開催中なのですよ♪同時に実装されました野々原茜のぱじゃまも、真、可愛らしいものですね。では、みなさん、めりーくりすます』



百合子「宣伝だぁあーーーーーっ!!!!」
684 : P君   2021/12/01 06:16:33 ID:6aoFVxyiCo
千鶴「さすがは貴音、こんなときまでミリシタのことを考えているなんて、その心意気見習わなくてはいけませんね」

可憐「そ、そうですね」

春香「そうかなぁ?!」

雪歩「ん、ん。ところで、千鶴さん。そろそろ、そちらの可愛い女の子を紹介してくれますか?」

百合子「わっ、ずっと千鶴さんの影に隠れていたから気づきませんでした。って、ほんとにかわいい!!SHSですよね」

可憐「もともとの髪型も可愛いですけど、こっちだといつもより幼さが強調される雰囲気ですね」

千鶴「では………こほん。さぁ、お姉ちゃんたちにご挨拶しなさい―――――桃子ちゃん」

桃子「…………」

春香「あー、あれか、人見知り設定なんだ」

雪歩「設定とか言わない!」ムニーッ

百合子「なんへ、わはひ~」

桃子「ぷっ……くすくす」

可憐(桃子ちゃん、笑っている!雪歩ちゃん、まさか桃子ちゃんの緊張を和らげるためにわざと百合子ちゃんの頬を!?)

春香(雪歩、そこまで考えていないと思うよ)
685 : プロデューサークン   2021/12/01 06:19:00 ID:6aoFVxyiCo
桃子「桃子は………桃子だよ」モモーン

雪歩「もじもじしている演技の桃子ちゃんも可愛いですぅ!(そう。はじめまして、桃子ちゃん。私は雪歩)」

春香「逆!逆になっているよ、雪歩!」

百合子「あはは……」

可憐「あの、桃子ちゃんと千鶴さんはどんな関係なんですか?………娘さん?」

雪歩「そっか。設定といえば、千鶴さんって私たちが幼い頃から勉強教えてくれているわけだから、ドラマ中だと30過ぎぐらいなんだ。娘さんがいてもおかしくないんだね」

百合子「三十路過ぎの千鶴さん………妄想が捗りますね!」

千鶴「…………」ムニーッ

百合子「いひゃい、いひゃいへふ~~!!」

千鶴「娘というわけではありませんの。川で洗濯していましたら、大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきまして……」

春香「桃太郎か!」

桃子「桃子は桃子だよ」

千鶴「雪歩ちゃん。勝手なお願いだとは承知していますが――――桃子ちゃんをこちらでしばらく預かってくれませんか」
686 : 監督   2021/12/01 06:21:20 ID:6aoFVxyiCo
雪歩「ええっ!?い、いいんですか!いやぁ、妹がまた1人増えちゃうなぁ」

春香「軽っ!もっと熟考しなよ!」

百合子「私もついにお姉さんになる……ってこと!?」

可憐「しばらくってどれぐらいなんですか」

千鶴「次の大きな仕事が終わるまでですわ。ほんの……5年か、10年ですわね」

百合子「ふっ、アイマスが歩んできた年月を考えれば、それぐらい、どうってことないですよ!」

雪歩「桃子ちゃん。今日からこの家が、あなたのココロがかえる場所だよ」

桃子「雪歩さん……!」

春香(これが言いたかっただけでは?)

雪歩はしみじみと思い出す。
このYUKIHO'Sキッチンをこれまでに訪れた客たちのこと―――
美奈子や響、未来ちゃ……
他にも新しく知り合った人々―――
昴と半同棲していた歩、審査員して登場したこのみや歌織、真美に、のり子、翼……
アクアリウスの3人はちゃんと揃ったのだろうか、ハンドレッドこと莉緒の捜査はどうなったのだろう
回収されなかった設定、伏線の数々 
オトメティックパワーってなんなん……
687 : 箱デューサー   2021/12/01 06:23:53 ID:6aoFVxyiCo
百合子「どうせ締めるなら、……って感じで締めませんか」

春香「あ、それいいね」

可憐「私も参加していいですか?」

桃子「?」

千鶴「ふふ……。では、雪歩ちゃん、お願いしますわ」

雪歩「ん、ん。それでは改めまして。桃子ちゃん!」

桃子「な、なに?」





雪歩・春香・百合子・可憐「YUKIOHO'Sキッチンへようこそ!!」



ゆるゆると時が流れる藍鱒町、この穏やかな町のひっそりとした路地裏に、乙女の悩みを解決してくれるお店があるらしい。
それはそれは、と~っても素敵なお店が―――――




【安価SS】全8話 765プロ劇場ドラマ 
YUKIHO'Sキッチンへようこそ   
おしまい
688 : プロデューサー   2021/12/01 06:27:00 ID:6aoFVxyiCo
以上です!
最後までお付き合いありがとうございましたっっっ!!!!!

反省点が山積みですが、ああだこうだ、ぐちぐちと言ってもしかたないので、スパッと終わりにしますね

(需要関係なしに)年明けに第5回やれたらなー、なんて考えていますけどね!

689 : 監督   2021/12/01 06:51:23 ID:wXWXfuQbQU
乙!
せいぜいリアクションで宇宙まで飛んだり天国一歩手前までいったりするくらいだろうと思ってたけど想像以上に壮大になってたなw
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