涼「なあにカズきゅん？私、いつも通りだよ？りゅんりゅん♪」

一希「いや……とてもそうは見えないが……」

涼「あ、もしかして新しいコスメ使ってるのに気づいた？目ざといな～♡」


一希「大吾、これはどういうことだ……」

大吾「わからん……事務所に来たら涼がこんなことになっとったんじゃ……」

涼「も～大ちゃんってば。呼び捨てじゃなくてちゃん付けで呼び合おう、って言いだしたのは自分でしょ？ちゃんと『涼ちゃん』って呼んでくれなきゃ」

大吾「あれは先生や涼が飛行機苦手じゃけぇ、気を紛らわすために提案しただけなんじゃが……」

涼「りょ・う・ちゃ・ん！！」

大吾｢ｱｯﾊｲ｣


一希（……？）

一希（涼の後頭部に、たんこぶが……？）

一希「……大吾、涼の面倒を見ててくれ。俺は少し調べものをしてくる」

大吾「なっ！？こんな状態の涼とふたりっきりになれっちゅーんか！？」

一希「頼む。お前にしか頼めないんだ。すぐに戻る」

大吾「ちょっ、先生！せんせーーーい！！！」

ﾊﾞﾀﾝ

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大吾「り、涼……流石に事務所でこんなことするんは……」

涼「だいじょーぶ♡私に任せてっ」

大吾「いや……なんかこう、こそばゆい感じがするんじゃ……」

涼「あはは、大ちゃんって意外と敏感なんだね～♪そんな顔されたらもっとサービスしたくなっちゃう♡」

大吾「くっ……ふうっ……！そ、そんなトコまで……！？」

涼「ほらほら、もうちょっと我慢！」

大吾「うっ……ううううっ！」

涼「……ハイ、完成！我ながら上出来のネイルだね！」

大吾「はあ……まさか足の爪にまで塗られるとは思わんかった……」

涼「せっかく童顔なんだから、大ちゃんはもっと可愛いメイクやファッションにチャレンジするべきだと思うな～。ね、次はマツエクもやってみない？」

大吾「え、遠慮しとくわ……いくらなんでもボスに大目玉くらわされるけぇ……」

涼「そんなこと言わないで、ね？一緒に新しい扉を開こうよ♪きゃるるん♡」

大吾「っ！？」ｿﾞｸｿﾞｸｯ


大吾（い、いかん……自分の中の大事なものがゴリゴリ削られるのを感じる……これが俗に言う“SAN値”ってやつなんか……？）

ｶﾞﾁｬ

一希「戻ったぞ」

大吾「せんせーい！！どこで何をしとったんじゃ～！！！」

一希「ちょっと本屋にな。すまなかった大吾」

大吾「で、涼がおかしくなった理由はわかったんか！？」

涼「またそんなこと言って～。私おかしくなんかないもん！ぷんすか！」

一希「悪いな涼。大吾は少し気が立っているらしい。叱っておくから、向こうで少し時間を潰しててくれないか？女性向けの雑誌や料理の本を買ってきてあるから」

涼「わあ！ありがとう～。カズきゅん大好き！ぎゅー！」

ﾑｷﾞｭ!

一希「あ、ああ……。喜んでもらえて、なによりだ……」

涼「じゃ、終わったら声かけてね♡大ちゃん、しっかり反省するんだぞ！」


一希（……大吾。涼の後頭部を見てみろ）ﾋｿﾋｿ

大吾（後頭部？……あ、でっかいたんこぶがあるぞ！もしかしてあれが原因か？）ﾋｿﾋｿ

一希（恐らく。頭部へのショックが原因で人格が変わったり、幼児退行してしまった事例は過去にいくつも確認されている）

一希（……涼は女性アイドルとしてデビューした当初、女装して街を歩いたりメイドカフェでバイトさせられたり、結婚式の花嫁を演じる特訓を課せられたりしていたらしい……あの様子を見るに、その頃に涼の中に生まれた“女”の人格が蘇ってしまったのではないかと思う）


大吾（ひええ……876プロ、そこまでやるんか……怖いところじゃのぉ……）

一希（で、治療法だが……。俺たちに外科手術ができるわけでもないし、ここは東洋医学の知恵を借りようと思う）

ﾄﾞｻﾄﾞｻｯ

一希（色々と伝手を頼って、古武術の秘伝書を集めてきた。この中に治療のヒントがあるはずだ）

大吾（待った待った、なしてそこで古武術の本が出てくるんじゃ？）

一希（日本の古武術には、打撃や関節技による肉体への攻撃だけでなく、“気”を使った精神への攻撃を得意とする流派がある。そして、そういった技を使う流派には必ず精神へのダメージを治療する方法も伝わっているはずだ。“殺法すなわち活法なり”という言葉もあるしな）

大吾（“気”……ってあれじゃろ？格闘クソマンガでよくあるような……なんか胡散臭いのぉ）

一希（そうでもないぞ。とある達人は寸止めの攻撃だけで“気”を相手の脳に送り込み、あたかも肉体が崩壊したかのような“恐怖”を相手に植え付けることでどんなに凶暴な相手でも生まれたての子犬のような性格に変えてしまうらしい）

大吾（そ、そうなんか？）

一希（というわけで、俺はこれからこの本たちの力を借りて“気”による治療を習得してみせる）

大吾（なあ先生、水を差すようで悪いんじゃが、やっぱり病院に連れていくのが先なんじゃなかろうか）

一希（……いや。涼のこの姿は、俺たちだけの秘密にしておくべきだ。仮に医師の治療で治ったとしても……こんな醜態を不特定多数の人間に見られたと知ったら、涼がどれだけショックを受けることか……）

大吾（……確かに。逆に再起不能になってしまうかもしれんの）


大吾（よっしゃ！ワシも手伝うぞ！）

一希（助かる。俺たちで涼を元に戻そう）

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【2時間後】

一希「…………ふんっ」

ｺｵｵｵｵｵ……

大吾「おお！なんか先生の体から陽炎みたいなのが出とるぞ！これが“気”なんか？」


一希「だんだん……掴めてきた……。“気”とはすなわち、人間が生まれながらにして用いている体内電流……」

一希「それを放出し、患部にあてがうことで治療を行う……。そのために、“気”を掌に集中……」

ｺｵｵｵｵｵｵｵｵ!

一希「…………ふーっ」

大吾「先生、大丈夫なんか？」

一希「かなり疲れたが……問題ない。あとは涼を治療するだけだ」

大吾「流石にぶっつけ本番は危なくないか？ほれ、ライブでも必ずリハーサルやるじゃろ」

一希「そうしたいのは山々だが……自分で自分の体内電流を受けてもなんの効果もないからな。練習のしようがないんだ」

大吾「何を言うとるんじゃ。ワシの体を使えばええじゃろ」

一希「なにっ」

大吾「仲間のピンチに体を張るくらい、ウチの実家では当たり前のことじゃ。遠慮はいらんぞ！」

一希「しかし……」

大吾「頼む先生。ここで怖気づいたらワシは自分で自分を許せんようになる」

一希「…………わかった」

一希「……大吾」

大吾「ん？」

一希「おれは、お前と……涼に出会えて、本当に良かった。日陰で生き続けてきたおれにこんな素晴らしい仲間ができるなんて、思ってもいなかった……」

大吾「ぷっ！なーに畏まったコト言っとるんじゃ！ほれ、早いとこ済ませてくれ」

一希「……ああ」


一希（ありがとう、大吾……）

一希「……いくぞ」

ｺｵｵｵｵｵｵｵｵ
ｼﾞｭｯ

大吾「お、おおおっ！？」

一希「……どうだ？」

大吾「な、なんか頭の中が熱いと言うか、チリチリした熱を感じるぞ……気持ちいい……」

一希「よし。上手く“気”を放出できてるらしいな」

大吾「も、もう少し、強くやってみてくれんか？」

一希「わかった」

ｺｵｵｵｵｵｵｵｵ

大吾「おおおお！なんか知らんが、メチャクチャ気持ちいいっ！もっとじゃ！」

一希「大丈夫なのか？おれもまだ力加減がよくわかってないんだが……」

大吾「そのための練習じゃろ！ほれ！もっともっと！」

一希「わ……わかった……」

ｺｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵ!!

大吾「うおおおおおおおおっ！！気持ちいいイッツ！！脳ミソが、とろけ、る、み、た、い……」





ボ　コ　ン　！

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涼「ねえねえ大ちゃん、この“カリスマギャル直伝！真夏の悩殺コーデ！”なんてどうかな？」

大吾「めっちゃイケてんじゃ～ん☆これはもうお店に凸するしかないだろ☆」

涼「でしょ～♡じゃあ次のオフに待ち合わせしよっ♡」

大吾「おっけー☆なんだかアタシ生まれ変わった気分だわ☆」



一希「……大吾、すまない……本当にすまない……」

大吾「オイオイなんだ辛気臭い顔しやがって☆人生もっとスウィーティーに楽しまなきゃ損だゾ☆」

一希「そのどっかで聞いたことある言動はいったいどういうことだ……？おれの“気”がお前の中に新しい人格を作ってしまったのか……？」


涼「ふむふむ。ここをこうしてこうすれば……えいっ」

ｺｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵ!!

一希「なにっ！？」

大吾「ウッソだろ涼ちん、一発で“気”の出し方マスターしちゃったの！？」

涼「えへへ、この本とってもわかりやすいから簡単だったよ♪」

涼「さ、カズきゅん♡」

ｼﾞﾘｼﾞﾘ

一希「……待て。なぜ距離を詰めてくるんだ」

涼「もちろん、カズきゅんにも私たちのお友達になってもらうんだよ♡」

一希「じ、冗談はよせ……そんなことしなくてもおれたちは仲間だろう……」

大吾「今さら逃げられると思ってんじゃねーよ☆」

ｶﾞｼｯ

一希「おいっ！羽交い締めにするなっ！くっ……力は男のままなのか……！」

涼「さあ出航！夢色VOYAGER！」

大吾「希望の旗あげて！」

涼＆大吾「「素敵な革命の旅へと一緒にゆこう！！」」



一希「やめろっ……！やめてくれっ…………！」




「う　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　あ　！　！　！　」

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愛「えーっと、社長から『涼が大変だから迎えに行ってあげなさい』って言われて来たんですけど……」



一希「きゃっぴぴぴぴーん♡みんなのアイドル、九十九一希ちゃんなりよ～！」

大吾「う～ん、スウィーティー☆ばっちり女の子らしさが板についてんじゃん☆」

涼「新星F-LAGSの誕生だねっ！よーし、燃えてきたぞ～♪」


愛「こ、この状況って……」

絵理「……デジャヴ？」

P「いったいなにがあったんですかね……なんとなくどっかで聞いたことある言動になってるんですけど……」

P「水谷さん……この状況見て……どう思います？」

絵理「どう思うって……」


涼「りゅんりゅん♪」


絵理「たぶん……」

P「たぶん？」

絵理「……手遅れ？」

P「やっぱり～……」

涼「今日も元気に、アイドルライフ～～～♪」

大吾「るったらった、りょんりょん！るっぴゃるっぴゃ、きゃうん☆」

一希「私たち3人、ず～～～っと、仲間だもんげ♡」

お　し　ま　い

夢色VOYAGERは名曲ですよね
同じCDに収録されてるドラマパートも面白いのでオススメです

乙

志希に頼んで全員「科学の進歩に犠牲は付き物です」をやってもらうか……

涼ちん…やはり天才か

ちゃん付けで呼び合おうってのはイベントか何かの会話？

乙

>>33
Hope's JourneyのCDに収録されてるドラマに出てくる会話ですね
曲も良いのでオススメ

おつ。これは軽くホラー


関係ないけど、菊地と佐藤は事務所に出頭しなさい。

>>11
恐ろしく適切な語録の使用俺でなきゃ見逃しちゃうね

軽々しく気の治療に手を出すなってオトンも言ってたのに...

オトンの言う通りっスね
忌憚のない意見ってヤツっス