それからの出来事()
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ミリマスss▶田中琴葉「プロデューサー。ワタシノユビワニチカッテクダサイ」T3/E 2/2
1 :
Pさん
2019/10/14 12:25:12
ID:JTVn91HUO.
琴葉メインss
・特にキャラ崩壊
・一部オリ設定あり
・会話形式で一部地文あり
・続き物(各話メインアイドル別)
・Pラブ勢(多分)アイドル達+αによる何の捻りもないラブコメ
・前話の直後からの再開
前話
http://imasbbs.com/patio.cgi?read=9867&ukey=0
2 :
監督
2019/10/14 12:26:21
ID:JTVn91HUO.
今までの話
01:歌織の引越しを手伝う話
02:風花にヤキモチされる話
03:このみに相談する話
04:麗花と登山ロケする話
05:莉緒をP宅に匿う話
06:歌織とデートする話 1/2
07:歌織とデートする話 2/2
08:早坂そらと同棲する話
09:エレナが半暴走する話(TSV1)
10:恵美とガチでガチる話(TSV2)
11:(TSV3/E) 1/2
12:←今ここ(TSV3/E) 2/2
3 :
ぷろでゅーしゃー
2019/10/14 12:27:55
ID:JTVn91HUO.
・・・・・・ロケ4日目 PM06:40
某ホテル 1階無人庭園
恵美「琴葉っ!」
琴葉「・・・・・・メグミ。カレン・・・・・・」
恵美「!?」
可憐「!?」ビクッ
可憐(こ、琴葉さんの目・・・・・・す、すごく冷たい・・・・・・)
可憐「こ、琴葉さん。も、もうライブが始まります・・・・・・一緒にステージにい、行きましょう」
4 :
Pーさん
2019/10/14 12:28:55
ID:JTVn91HUO.
琴葉「ゴメンナサイ、ワタシ、プロデューサーヲマッテイルノ・・・・・・」
可憐「・・・・・・え?」
恵美「琴葉! みんなでライブやろうって言ったじゃん! もう始まるよ!」
琴葉「・・・・・・」
恵美「それに、プロデューサーのことはアタシが応援するって! だから、今は」
琴葉「イイノヨ、メグミ・・・・・・モウ」
恵美「え?」
琴葉「モウソンナコト・・・・・・イワナクテイイノ・・・・・・。ワタシ・・・・・・ワカッテルカラ・・・・・・」
5 :
Pサマ
2019/10/14 12:30:10
ID:JTVn91HUO.
恵美「な、何? 一体なんなのさ?」
琴葉「コレ・・・・・・」ピラ・・・
可憐「これ、写真・・・・・あっ!」
可憐(め、め、恵美ちゃんと、ぷ、ぷ、プロデューサーさんがき、き、キスしてる・・・・・・さ、撮影なの?)///
恵美「こ、この写真・・・・・・な、なんで・・・・・・」
琴葉「ワタシ、メグミノコトシンジテイタノニ・・・・・・カゲデウラギラレテイタノネ・・・・・・」
可憐「・・・・・・」ガタガタ
可憐(怖い・・・・・・怖いよ・・・・・・)ガタガタ
6 :
ごしゅPさま
2019/10/14 12:31:47
ID:JTVn91HUO.
恵美「こ、これは・・・・・・ち、違うの。これは撮影でっ!」
琴葉「イイノ、メグミ・・・・・・アナタモアノヒトノコト・・・・・・ホンキナノデショ?」
恵美「!!」///
琴葉「ワタシタチハトモダチダモノ・・・・・・ソウヨネ・・・・・・」
恵美「う、うん・・・・・・」
琴葉「アナタノカオヲミレバワカルワ・・・・・・エンギダケジャナイデショウ?」
恵美「そ、それは・・・・・・その・・・・・・」
7 :
バカP
2019/10/14 12:33:53
ID:JTVn91HUO.
・・・・・・同日 PM06:45
某ホテル エントランス
P「はぁ、はぁ、琴葉は部屋だったな。ん? あれは・・・・・・」
P(庭園に琴葉と恵美!? マズい!)
・・・・・・・・・・・・
某ホテル 1階無人庭園
琴葉「キョウモ・・・・・・ワタシノコトリヨウシテ・・・・・・アノヒトニチカヅイタノネ・・・・・・」
恵美「ち、違うよ! そ、そんなことする訳ないじゃん!」
琴葉「アノヒトト・・・・・・タノシソウニワラッテタ・・・・・・」
8 :
ぷろでゅーしゃー
2019/10/14 12:34:55
ID:JTVn91HUO.
琴葉「アナタヲシンジタ・・・・・・ワタシガバカダッタ・・・・・・」
恵美「!」
恵美「ち、ちが、う・・・・・・。違うよ・・・・・・」
琴葉「ダカラ・・・・・・ワタシモヨクワカッタワ・・・・・・」
琴葉「ウラギリダッテ・・・・・・ユウジョウノイチブナノネ・・・・・・」
恵美「ち、違う・・・・・・違うよ、琴葉・・・・・・」グス・・・
P「恵美、琴葉!」
可憐「ぷ、プロデューサーさん・・・・・・」ガタガタ
9 :
バカP
2019/10/14 12:36:16
ID:JTVn91HUO.
P「可憐、これは・・・・・・」
琴葉「ワタシ、アナタタチニウラギラレテモヘイキヨ・・・・・・ワタシニハアノヒトガイルカラ・・・・・・」
恵美「ちがっ・・・・・・違う・・・・・・裏切ってなんか・・・・・・」ポタポタ・・・
P「!?」
P(恵美、泣いているのか・・・・・・!? ま、間に合わなかった・・・・・・)
琴葉「ダカラ・・・・・・モウワタシヒトリデイイワ・・・・・・」
琴葉「サヨウナラ・・・・・・」スタスタ・・・
10 :
プロデューサーちゃん
2019/10/14 12:37:54
ID:JTVn91HUO.
恵美「!?」
恵美「琴葉ぁっ! 違うよぉ! 行っちゃダメだよ! 戻ってきてぇ、琴葉ぁぁっ!」
P「・・・・・・」ワナワナ
P(俺は何を見ているんだ・・・・・・。どうして、恵美が泣いている・・・・・・どうして、琴葉が離れていく・・・・・・)
恵美「うう・・・・・・うぐ・・・・・・ぐすっ・・・・・・」
可憐「め、恵美ちゃん・・・・・・」ガタガタ
P「・・・・・・」
P(いや、しっかりしろ・・・・・・正念場なんだ・・・・・・!)
11 :
兄ちゃん
2019/10/14 12:38:36
ID:JTVn91HUO.
P「・・・・・・可憐、すまない。恵美を頼む」
可憐「えっ」
P「俺は琴葉を追いかける。何としてでも琴葉の暗示を解いてくる」ダッ
可憐「ぷ、プロデューサーさんっ」
・・・・・・・・・・・・
恵美「えぐっ・・・・・・ぐすっ・・・・・・うう・・・・・・」
可憐「・・・・・・」ガクガク
可憐(どうしよう・・・・・・どうしよう・・・・・・どうしたら・・・・・・)ガクガク
可憐(だ、ダメ・・・・・・た、助けて・・・・・・プロデューサーさん)ガタガタ
12 :
プロデューサーくん
2019/10/14 12:39:41
ID:JTVn91HUO.
・・・・・・・・・・・・
某ホテル 17階通路
Prrrrrr
P「着信が・・・・・・可憐か」
P「もしもし。どうした、可憐」
可憐「ぷ、プロデューサーさん。お、お願いですっ。も、戻ってきて下さい!」
P「・・・・・・可憐、落ち着くんだ」
可憐「わ、私、ど、どうしたらいいのか・・・・・・ぷ、プロデューサーさんっ」
13 :
師匠
2019/10/14 12:42:04
ID:JTVn91HUO.
P(可憐・・・・・・パニック状態になっている。あの状況だ・・・・・・無理もない)
可憐「お、お願いです、プロデューサーさんっ。も、戻ってきて、恵美ちゃんに声をかけてあげて下さい。ぷ、プロデューサーさんならきっと・・・・・・」
P「・・・・・・可憐。俺は琴葉を追っている。戻ることはできない」
可憐「そ、そんなっ! だ、だって恵美ちゃんがっ」
P「頼む、可憐。きみが、恵美を助けてあげてくれ」
可憐「えっ・・・・・・で、でも私一人じゃ・・・・・ど、どうしたらいいのか・・・・・・」
P「大丈夫だよ。恵美に呼びかけてやってくれ。特別な事は何もいらない。可憐なりのやり方でいいんだ」
可憐「でも・・・・・・でも・・・・・・わ、私、じ、自信がありません・・・・・・」
14 :
高木の所の飼い犬君
2019/10/14 12:44:05
ID:JTVn91HUO.
可憐「さっきだって、わ、私、ふ、震えているだけで、な、何も言えませんでした・・・・・・せ、せめて、プロデューサーさんがいないと」
P「可憐、震えていたのは・・・・・・俺も同じだよ」
可憐「そ、そんなの嘘ですっ。プロデューサーさんはいつも強くて・・・・・・。それに比べて私は弱虫なんです・・・・・・」
P「強がっているだけなんだよ、いつだって。本当は俺も弱虫なんだよ」
P「弱虫な自分を奮い立たせて勇気を出しているだけなんだ。普段、可憐が勇気を出しているように」
可憐「・・・・・・で、でも、私はプロデューサーさんの勇気に支えられて・・・・・・や、やっと勇気が出せるんです・・・・・・。こんな、私じゃ・・・・・・」
P「そうなのかもしれないな。でも、ダメなことじゃない」
可憐「え・・・・・・?」
15 :
あなた様
2019/10/14 12:45:18
ID:JTVn91HUO.
P「どうしても、一人で勇気が出せない時は、誰かの勇気に支えて貰うんだ。俺も、そうやって誰かの勇気に支えられている時は、あるんだよ」
可憐「・・・・・・」
P「だから、可憐。今の恵美を支えてやってくれないか?」
可憐「わ、私が・・・・・・」
P「可憐の勇気で恵美を支えてやってくれ」
可憐「わ、私の・・・・・・勇気」
P「ああ。今の恵美を支えられるのは俺じゃない。きみなんだよ、可憐」
可憐「・・・・・・」
16 :
プロデューサーはん
2019/10/14 12:46:31
ID:JTVn91HUO.
P「俺は可憐の事は見てきてる。たくさん勇気を出してくれているのも知っている。ただ、弱虫ってだけじゃない」
可憐「・・・・・・」
P「アイドルになる前とは違う。今の可憐なら自分一人で勇気を出す事だって分かるはずだ」
可憐「・・・・・・」
P「可憐、頼む・・・・・・きみの勇気を、恵美の為に出してくれ」
可憐「・・・・・・」
P「可憐・・・・・・」
可憐「・・・・・・私・・・・・・やっぱり上手くやれるって・・・・・・自信はありません・・・・・・」
17 :
おやぶん
2019/10/14 12:47:35
ID:JTVn91HUO.
P「ああ・・・・・・」
可憐「・・・・・・けど・・・・・・それでも・・・・・・私、恵美ちゃんを助けたいです・・・・・・」
・・・・・・同日 PM07:00
特設ライブ会場 バックヤード
スタッフ「島原さん。もうスタンバイに入らないと。お客さん、かなり集まってるよ!」
エレナ「う、ウン! 分かったヨー!」
18 :
Pさぁん
2019/10/14 12:49:22
ID:JTVn91HUO.
エレナ(メグミもカレンもコトハもまだ来てないヨ。プロデューサー、どうしちゃったノ)
Prrrrrr
エレナ「!? プロデューサー! もしもし、エレナだヨ!」
P「ああ、エレナ。今はステージか?」
エレナ「ウン、そうだヨ! もうすぐライブ始まっちゃうヨ!」
P「律子たちは来たか?」
エレナ「ううん、まだだヨ」
P「そうか・・・・・・すまん、こっちでもトラブル発生だ。恵美と可憐もすぐには合流できない・・・・・・エレナ、無茶を承知で頼みたい」
19 :
ごしゅPさま
2019/10/14 12:51:22
ID:JTVn91HUO.
エレナ「大丈夫だヨ。任せて、プロデューサー!」
P「え?」
エレナ「ミンナが戻ってくるまで、ワタシだけだけど。でも、ステージをホットにしちゃうヨ! それでいいよネ!」
P「エレナ・・・・・・すまん」
エレナ「ホントーはどうしよーか悩んでたけど、プロデューサーがライブを中止させないって分かったから、ワタシもヤル気満々だヨ!」
P「ああ、みんなでライブやろうって言ったもんな」
エレナ「うん! だからネ、プロデューサー。コトハもメグミもカレンもちゃんと連れてきてネ! お客さん、みーんな待ってるカラ!」
P「ああ、必ず連れていく。エレナ、ありがとう」
20 :
兄ちゃん
2019/10/14 13:30:03
ID:Rxp0TGPMTI
これはヤベーイ
21 :
ハニー
2019/10/14 15:28:05
ID:JTVn91HUO.
エレナ「ウン、ワタシ、ガンバっちゃうヨー!」
・・・・・・10分後
エレナ「よーし、スタンバイいくヨー!」
律子「え、エレナーっ!」
エレナ「ああっ! リツコ!」
ジュリア「よ、よう。間に合ったみたいだな」
麗花「呼ばれて飛び出て来ちゃったよー!」
エレナ「ジュリア、レイカ! みんなも! 来てくれてアリガトー! もっと遅くなるって聞いてたけどスゴいネ!」
22 :
我が友
2019/10/14 15:28:59
ID:JTVn91HUO.
紗代子「か、歌織さんの運転が・・・・・・す、すごくて」
歌織「空いている道があったから何とかなったわ」
ジュリア「もうどこ走ってたのかよく分かんないけどさ・・・・・・カオリ、すげー飛ばすし・・・・・・」
未来「あうう~まだ目が回るよ~」
美也「体がふわふわしますよ~」
まつり「二人ともしっかりするのです。ライブは待ってはくれないのです」
律子「エレナ、一人だけなの? プロデューサーや後の三人はどうしたの?」
エレナ「トラブル発生だヨ! でも、ちゃんとプロデューサーが連れてきてくれるって!」
23 :
彦デューサー
2019/10/14 15:29:51
ID:JTVn91HUO.
律子「・・・・・・詳しい事情は後で聞きましょ。お客さんの入りも中々ね・・・・・・みんな、スタンバイ入って!」
・・・・・・同日 PM07:10
某ホテル 17階通路
P「・・・・・・」スタスタスタ
P(琴葉・・・・・・いるんだよな・・・・・・ん?)
P「これは・・・・・・」
24 :
Pちゃん
2019/10/14 15:31:27
ID:JTVn91HUO.
P(琴葉の部屋の扉がドアストッパーで固定されて開いている・・・・・・。入って来いって事か・・・・・・)
コンコン
P「琴葉。Pだけど、入るぞ?」
25 :
監督
2019/10/14 15:32:58
ID:JTVn91HUO.
・・・・・・・・・・・・
暗紫色に包まれた琴葉の部屋は静寂だった。不思議と人の気配を感じなかった。扉止めに支えられ、不用心に空けられた扉をくぐると、異様な雰囲気に呑まれる。静かすぎて凍てつくような空気に『彼』は耐えられなかった。
「琴葉? 琴葉、いるのか?」
明かりをつけるか。そう思いはしたものの、歩を進める足は、部屋の奥に興味津々だった。単純に不在なのか。ばたん、と大袈裟に響いた扉の音を耳にするまでは、そう思えた。
突然、後ろで扉が閉まった状況に『彼』は大仰に振り向いた。そこには『彼』の探し人が佇んでいた。どこからか躍り出た彼女、田中琴葉は閉めた扉に背をつけて、『彼』を見据えていた。彼女の瞳は暗闇でも虚ろに揺れているのがよく分かる。
「オマチシテイマシタ、プロデューサー」
「ああ、待たせてしまったか」
「イイエ」
微笑んだはずの彼女の口は、笑っていなかった。
26 :
おやぶん
2019/10/14 15:34:10
ID:JTVn91HUO.
・・・・・・同日 PM07:20
某ホテル 可憐部屋
可憐「えっと・・・・・・これと・・・・・・これと・・・・・・」カチャカチャ
可憐(・・・・・・恵美ちゃん、お部屋に連れて行ったけど、泣いてるままだった・・・・・・)
可憐(わ、私が・・・・・・恵美ちゃんを・・・・・・)ガクガク
可憐(プロデューサーさん・・・・・・わ、私、やれますよね・・・・・・)
27 :
プロデューサー
2019/10/14 15:34:57
ID:JTVn91HUO.
・・・・・・・・・・・・
暖かな色のダウンライトに照らされ、可憐は恵美の部屋の前で佇んでいた。そっと胸に手をやると鼓動が高なっていた。深呼吸を一度、二度と繰り返し平静を保つ。
「・・・・・・」
周りは嫌に静かだ。廊下の静けさが緊張を高めた。可憐の手にはハーブティーを振る舞う為の道具を詰めたバッグが握られていた。その手も僅かに震えていた。
扉の奥には悲しみに暮れた恵美がいる。そう思うとノックしようとした手も何度か躊躇われた。
「・・・・・・すー・・・・・・はー・・・・・・」
最後に大きく深呼吸した彼女は意を決した。
ノックをする。返事はない。
帰ってくるばずであろう声が帰ってこず、可憐は震えた。事態の想定はある程度出来ていた。しかし、現実は思ったよりも辛辣だった。
28 :
バカP
2019/10/14 15:38:24
ID:JTVn91HUO.
「め、恵美ちゃん・・・・・・?」
呼び掛けをする。返事はない。
得も知れない不安が秒単位で募る。でも、呑まれる訳にはいかない。
「あ、開けるよ・・・・・・?」
乱れようとする呼吸を整えられないまま、可憐は震える手で、恵美が持っていたカードキーを扉の読み取り口に通すと、ドアノブに手をやる。妙に滑ってドアノブを回せずにいると思ったら、自分の手に汗が滲んでいることを知る。
そっと入った部屋は所々からのダウンライトで、おぼろげに照らされていた。恵美を部屋に送り届ける時、可憐が施していた灯りだった。あまり明るすぎると返って刺激になるかもしれない。そんな気がした。
「め、恵美ちゃん・・・・・・?」
数歩進むと、見知った豊かで艶やかな髪がベッドの脇で、うなだれていた。ベッド脇に腰を下ろしている恵美は、膝の上で握った拳を震えさせていた。うわ言のように、裏切ってない、と呟きながら。そんな光景を見るだけで可憐の胸は締め付けられそうだった。
そろりそろりと部屋の奥に進む。小さな自分の足音に、びくりと驚きながらも恵美のそばに寄ると、静かに腰を下ろした。
29 :
師匠
2019/10/14 15:40:39
ID:JTVn91HUO.
「め、恵美ちゃん・・・・・・」
目と鼻の先で呼び掛ける。返事はない。
それ所か、顔を向ける仕草すら感じられない。普段の明るい恵美から、かけ離れた淀んだ雰囲気に呑まれそうになりつつも、可憐は固唾を飲んで踏み止まる。唯一の便りは、裏切ってない、の一言。
こんな時、なんて声をかければいいのだろう。何を言えば励ましになるのだろう。『彼』ならば、どうするのだろう。そんな自答できない自問の奥から、何かを思い出した。
特別な事は何もいらない。可憐なりのやり方でいいんだ。
いつも頼りにしてる『彼』からの言葉。華奢な彼女は今一度、意を決した。
「め、恵美ちゃん。私、ハーブティーのセットを持ってきたの・・・・・・その・・・・・・い、今淹れるからねっ」
携帯用の茶道具を窓辺の卓上に広げる。こうしている内に、恵美が顔を上げてくれるかもしれない。そんな淡い願いをかけつつ、恵美をちらちらと見やりつつ、充分に熱した小さなティーポットで茶を淹れる。
飛沫も立てずに茶を注ぎ、一連の流れを終えても恵美は、うなだれたままだった。可憐は自分の顔色が沈んでいる事に気づき、また固唾を飲んだ。
30 :
兄ちゃん
2019/10/14 15:42:16
ID:JTVn91HUO.
(せ、せめて、笑顔で・・・・・・)
なるべく余計な音を立てずにカップを置いたソーサーを持ち上げる。もくもくと、微かに登るカップからの熱気を浴びると仄かな香りで落ち着けた。これを飲んで少しでも、気を落ちつけて貰おう。恐らく、これが自分に出来る精一杯。
「め、恵美ちゃん・・・・・・お茶・・・・・・淹れたよ・・・・・・。の、飲んでくれない?」
しずしずと歩み、恵美のすぐ隣に腰を下ろした可憐は、カップを恵美に差し出す。こんなときになってまた手が震える。カタカタと聞きたくない音が、消していたはずの緊張感を呼び戻す。恵美は、まだ頭を垂れたままだった。
恵美が受け取ってくれない。その現実に可憐は首の皮一枚で耐えていた。
このままではいけない。
31 :
Pくん
2019/10/14 15:54:28
ID:JTVn91HUO.
「ね、ねえ・・・・・・め、恵美ちゃん」
思い切って、恵美の肩に手を置いた。
何でもない行為のはずなのに、恵美は、いやにびくりと体を震わせた。
「裏切ってなんかないよぉっ!」
「きゃぁっ!」
かたん・・・・・・
抉るような叫び声と共に、恵美は肩に置かれた異物に、怯えて跳ね除けてしまった。だが、甲高く聞き覚えの声を認識すると、正気を取り戻したように目を見開き、顔を向ける。
「あ・・・・・・」
肩に置かれたのは異物ではない。可憐の手だ。それが分かったのは、すぐ隣に座している可憐から雫の滴る音がしたからだった。
可憐は静かな笑みのまま、恵美を真っ直ぐに見据えていた。
32 :
ぷろでゅーさー
2019/10/15 00:08:57
ID:v8NJBnBeY2
「恵美ちゃん」
「か、可憐・・・・・・?」
何やら可憐の髪が妙にしなだれている。前髪の毛先から雫が垂れている。視界の端に、床に転がったカップが入ると事態をある程度理解した。可憐の手を跳ね除けた恵美の手は、勢い余って可憐が手にしていたカップまで弾き飛ばしていた。
運悪くカップの中身は、可憐が正面から受けてしまい、身につけている服にも茶染みが広がり、髪のセットも崩れていた。笑っていられるような状況でもない。可憐は、それでも微笑んでいた。微かな震えを抑えつつ。
「か、可憐・・・・・・ご、ごめ・・・・・・」
完全に正気に戻った恵美は、己のしでかした罪悪感でまた震えた。自分に振舞ってくれた茶を台無しにした挙句に、提供者に無礼を働いた。
恵美は慌てて可憐に手を差し伸べる。何かできることでもなく、許しを乞うだけの弱々しい華奢な手だった。伸ばしてくるだけでやっとの指先を、可憐は己が両手で包み込んだ。可憐の温もりが指先から伝わると、恵美は一瞬びくりと身を震わせた。
「恵美ちゃん」
「か、可憐・・・・・・あの、アタシ・・・・・・」
「辛かったんだよね」
「え・・・・・・?」
33 :
夏の変態大三角形
2019/10/15 00:10:05
ID:v8NJBnBeY2
濡れた前髪から垣間見る可憐の目は、ゆったりと微笑んでいた。可憐は、ようやく恵美の顔を目にできた。なんて、ひどい顔なんだろう。あんなに泣き腫らして、どれほど泣けばそんな顔になるのだろう。早く、早くいつもの笑顔に戻ってほしい。
可憐の両手に、温もりを込めた力が加わる。
恵美は何故、可憐が微笑んでいるのかも分からず、半ば呆然としていた。
「琴葉さんに・・・・・・大事な、お友達に裏切られたって・・・・・・心にも無いこと、言われて辛かったんだよね・・・・・・」
「・・・・・・!」
優しい言葉。いつも緊張でちぐはぐな口調が今では、とても滑らかだった。恵美の気持ちを汲めば汲むほどに、可憐の心にあった漆黒は霧散されていた。気持ちで押していた笑顔は、いつのまにか自然のままの微笑みになっていた。
「ごめんね・・・・・・私、こんな時、上手なこと言えなくて・・・・・・。そばにいることくらいしかできなくて・・・・・・」
「・・・・・・そ、そんな・・・・・・こと・・・・・・」
恵美の瞳に、また涙が滲む。ただ、先程まで悲しみに突き動かされた涙とは違う。優しい温もりに導かれた喜びにも似た結晶。
34 :
Pサン
2019/10/15 00:10:59
ID:v8NJBnBeY2
「こんな私だけど・・・・・・恵美ちゃんの助けになりたいの・・・・・・。どうすれば・・・・・・私、恵美ちゃんの力になれるかな・・・・・・」
『彼』のような行動ができるとは可憐も思っていなかった。せめて、自分に出来ることをやり遂げよう。少しでも淀んだ空気が澄んでゆくように願いを込めて。目の前で泣いている女の子が笑顔になるように願いを込めて。
「じゅうぶんだよ・・・・・・じゅうぶんだよ・・・・・・うう、えぐっ・・・・・・」
「恵美ちゃん・・・・・・」
可憐は、そっと両手を離すと、髪を撫でるように恵美の頭を包み、抱き寄せた。されるがままに恵美は、可憐の胸に泣き顔を埋めて、また嗚咽を立てる。可憐の服や髪から漂うハーブティーの香りに胸が締め付けられた。
「可憐・・・・・・ごめん・・・・・・お茶・・・・・・ごめん・・・・・・」
「いいの・・・・・・。また淹れるから・・・・・・一緒に飲みたいな・・・・・・」
「うん・・・・・・うん・・・・・・」
「プロデューサーさんがきっと・・・・・・いつもの琴葉さんを連れてきてくれるから・・・・・・みんなで飲みたいね・・・・・・」
「うんっ・・・・・・うんっ・・・・・・」
35 :
せんせぇ
2019/10/15 00:11:54
ID:v8NJBnBeY2
恵美の声に少しずつ生気が戻ってきていた。可憐は、まだ嗚咽混じりで震える恵美の髪を撫で続けた。すると、恵美はしっかりと自分にしがみついてくる。甘えるように、助けを求めるように。恵美の淀んだ雰囲気が徐々に晴れていくのが分かる。ああ、こんな事でいいんだ。
「可憐・・・・・・可憐・・・・・・えぐっ」
「大丈夫・・・・・・大丈夫だよ・・・・・・」
「うんっ・・・・・・」
ふと可憐は天井を仰いだ。神様に祈るように。
(プロデューサーさん・・・・・・早く、早く・・・・・・琴葉さんを連れて帰ってきて下さい・・・・・・これ以上、泣いている恵美ちゃんを見たくありません・・・・・・)
これが、私にできる精一杯です。
そんな事を『彼』に思いつつ、ただただ恵美を抱き締め続けた。
36 :
兄(C)
2019/10/15 00:12:27
ID:v8NJBnBeY2
・・・・・同日 PM07:25
某ホテル 琴葉部屋
琴葉「プロデューサー。キテクレテアリガトウゴザイマス」
P(入口は琴葉に塞がれている・・・・・・これ以上、部屋の奥に行くのは何かまずい・・・・・・。出来れば、外に出たいな・・・・・・)
P「琴葉。もうライブが始まってる頃だ。俺と一緒にステージに行かないか?」
琴葉「イヤデス。ソンナコトヨリダイジナ、オハナシガアリマス」
P「・・・・・・」
P(落ち着け・・・・・・琴葉を刺激してはいけない・・・・・・焦るな・・・・・・)
37 :
ハニー
2019/10/15 00:16:27
ID:v8NJBnBeY2
P「琴葉、大事な話ってなんだ?」
琴葉「プロデューサー。ワタシハ、アナタノコトガスキデス」
P「・・・・・・」
琴葉「プロデューサーモ、ワタシヲ、スキニナッテクレマスカ?」
P「琴葉・・・・・・。俺はプロデューサーとして、お前に見初められた」
琴葉「イイエ・・・・・・アナタジシンノキモチデ、コタエテクダサイ・・・・・・」
P「・・・・・・」
P(・・・・・・受け入れるべきか、琴葉を。それで解決なのか・・・・・・)
38 :
プロデューサー
2019/10/15 00:17:33
ID:v8NJBnBeY2
P(いや、違う。この状況で琴葉の要求を飲むことは、何の解決にもならない。暗示の琴葉を、受け入れるべきじゃない・・・・・・)
P「琴葉、よく聞いてくれ。俺は、個人の気持ちで応えることはできない。俺は・・・・・・みんなのプロデューサーだ」
琴葉「・・・・・・」
P「それに、こんな形で実ったものが、成熟するはずがない。琴葉、考え直してくれ」
琴葉「・・・・・・」
P「みんなの所に行こう。みんな、お前を待っているぞ」
琴葉「・・・・・・」
P「琴葉」
39 :
Pーさん
2019/10/15 00:19:29
ID:v8NJBnBeY2
琴葉「・・・・・・イイタイコトハ、ソレダケデスカ?」
カタン・・・・・・
P「!?」
P(な、なんだ、今の音は・・・・・・)
琴葉「イマナラ、マダマニアイマス。ダカラ・・・・・・」
P「・・・・・・」
琴葉「プロデューサー。ワタシノユビワニチカッテクダサイ」
P「・・・・・・何をだ?」
40 :
高木の所の飼い犬君
2019/10/15 00:20:50
ID:v8NJBnBeY2
琴葉「ワタシヲ・・・・・・アナタノモノニシテクレル、ト」
P「・・・・・・琴葉」
琴葉「ワタシモ・・・・・・コノユビワニ・・・・・・チカイマス・・・・・・」
琴葉「アナタヲ・・・・・・ワタシノモノニ・・・・・・シマス」
P「・・・・・・琴葉、聞いてくれ」
琴葉「・・・・・・? ハイ・・・・・・」
P「俺は・・・・・・誰のものにもならない。琴葉のものにもならない」
琴葉「・・・・・・」
41 :
貴殿
2019/10/15 00:22:10
ID:v8NJBnBeY2
P「琴葉、気をしっかり持つんだ」
琴葉「・・・・・・」
P「琴葉っ」
琴葉「・・・・・・アナタハ・・・・・・アナタダケハ・・・・・・ワタサナイ・・・・・・」
琴葉「ワタシヲステキナ・・・・・・セカイニツレテ・・・・・・クレルヒト・・・・・・」
P「・・・・・・こ、琴葉」
琴葉「ワタシノサビシサヲ・・・・・・ウメテクレルヒト・・・・・・」
P「・・・・・・」
42 :
高木の所の飼い犬君
2019/10/15 00:24:16
ID:v8NJBnBeY2
琴葉「・・・・・・ダレニモ・・・・・・ゼッタイニ・・・・・・ワタサナイ・・・・・・」
琴葉「ワタシハアナタノモノ・・・・・・」
琴葉「アナタハ・・・・・・ワタシノモノッ!」
シュ!
P「!?」
43 :
プロデューサー
2019/10/15 08:02:49
ID:ifXrieruns
・・・・・・・・・・・・
『彼』は突如として、鈍い閃きを見た。それは琴葉が振るった一筋の軌跡だった。何かの素振りに満足した琴葉は歩み出る。すると、窓から入る月光が彼女の影のベールを剥がした。その時、『彼』は彼女の手に鈍い光が宿っているのを見た。光の正体が、琴葉が握るナイフだと分かると思わず、目を見張る。琴葉の足元には小さな鞘が転がっていた。
「琴葉、何をする気だ?」
「アナタヲ・・・・・・ダレニモトラレナイバショニ・・・・・・ツレテイキマス」
「やめるんだ、琴葉。そんな事をしても、何も良くならない」
「ワタシモ・・・・・・スグニオイカケマスカラ・・・・・・サビシイノハ、ホンノワズカノコトデス・・・・・・」
もはや言葉は届いていないのか、琴葉はただ、つらつらと覚束無い言葉を並べるだけだった。『彼』は戸惑いで後ずさる。
琴葉が後、数歩迫れば、彼女が握る刃の餌食になる。闇が宿る琴葉の目に迷いはない。確実に、『誰にも取られない場所』に連れていかれるのは明白だった。
(隙を見て、腕を捻りあげて拘束するか・・・・・・待て、相手は琴葉だぞ。ましてや、暗示にかかっているだけなんだ。しかし、俺が下手に抵抗すれば、弾みでナイフが琴葉を傷つける可能性も・・・・・・)
情が邪魔をする。だが、彼女を受け入れる事もできない。『彼』が取れる選択肢がどんどんなくなっていく。
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