【安価SS】可憐のアトリエ 最終話 つづき
1 : 仕掛け人さま   2022/06/23 06:29:25 ID:iD0VEg7JlY
立てーっ!
17 : 変態インザカントリー   2022/06/24 07:18:47 ID:.mLLc96VKI
可憐(みんなの消耗が想定よりずっと激しい。回復と補助アイテムがうまくきまればいいけど……私も今のでマナを一旦底をついちゃったから、発動させるのは難しいかも)

TURN4 OFFENSE PHASE
【安価→直下3レス分の投稿時刻秒数にて判定 自動判定】
※00は0ではなく60として扱う

可憐は調合してきたアイテムで混沌の力をどうにか対抗しようと試みる!

1.エネルジアニカ
・21~49かつ奇数 25
・3か14の倍数 25
・最大値ではない 30

2.ラアウェの秘薬
・10~28かつ偶数である 15%
・5か17の倍数 15%
・最小値ではない 20%


3.生命の蜜
・素数である 30
・7か10の倍数 20%
・中央値ではない 15+15%

このうち2つ以上が未発動の場合、かつ以下の条件を満たすとエミリー・美也の支援が得られる
・未発動となった値の和が4か11か19の倍数  25%


また、以下の条件を満たすと朋花の支援が得られる 
・中央値が13の倍数 40
・総和が100以上 40
・最大値と最小値の差が9の倍数 30%

※共起なし 効果が大きいものを優先

【安価→直下3レス分の投稿時刻秒数にて判定 自動判定】
何卒ご協力お願いします!
18 : プロデューサー君   2022/06/24 08:49:32 ID:cX8PA8kyRI
ほい
19 : P君   2022/06/24 13:34:55 ID:9eB3J7FL3s
回復回復〜
20 : ぷろでゅーしゃー   2022/06/24 17:26:58 ID:.mLLc96VKI
時間が作れそうで、早く進めたいから自レスします
ただ、このレスについては補助スキルのID内数字は無効で
21 : 変態インザカントリー   2022/06/24 17:43:42 ID:.mLLc96VKI
判定(32,55,58) 総和145 ID内数字総数6

混沌のツヴァイグランツの攻撃値
基礎値118
確定値42

基礎値について混沌の花の効果で
+12%適用→132(小数点以下切捨て)


可憐たち側の軽減値/率
30+15+40=85
35%+15%=50%
混沌の花の効果で-18%適用→32%

よって、
基礎値132を32%軽減したうえで、-85
→102-85=17

ここに確定値を足すので、17+42=59

したがって被ダメージ総量は59
可憐たちの耐久値152(前スレ参照)-59=93
22 : バカP   2022/06/24 19:07:48 ID:.mLLc96VKI
混沌なるツヴァイグランツの体が妖しく光ると、そのまま星屑を纏い突進してくる
しかし可憐たちはそれを冷静にいなすと、隙を見て回復アイテムを使用した
とりわけ前衛を務めた千鶴・エミリーの疲労具合は、かなりのものとなっていたが、まだ足は動くようだ

可憐「や、やった!うまく発動できた……!」

千鶴「力がみなぎってきますわ!っと、おっとっと」

朋花「千鶴さん?ふらついているではありませんか~。無理をなさらないでください~」

千鶴「え、ええ」

エミリー「混沌とした見た目ですが動きはさほど速くありません。これなら回避に専念すれば問題ないですね」

美也「はい~、ですがいくら可憐ちゃんのアイテムがあるにしても、これ以上の消耗は避けたいですな~」

朋花「ええ。このタルタロス、まだこの悲しき怪物以上の脅威が眠っている可能性があります。第一、無事に帰るまでが冒険ですからね~」

鵺ともキマイラともつかない混沌とした魔物
その猛攻を受け切った可憐たちは、幕引きのために再び攻撃に転じる

朋花「みなさん、この者の最期は私に任せてくださいませんか~?」

可憐「え?」
23 : 夏の変態大三角形   2022/06/24 19:08:05 ID:.mLLc96VKI
朋花「油断するつもりはありません。ただ……これが本当に、かつて人であったというのなら……一度冥府へと送られたその命をこのような形で現世に取り戻したというのなら、聖母として再び清らかなる約束の地へ、送り返してあげたいのです」

エミリー「朋花様……」

千鶴「ですが、朋花。あなたにあの魔物を退治する術はありますの?」

美也「それならご心配には及ばないですよ~」

可憐「み、美也さん?」

美也「朋花ちゃん、きっと今なら、その霊扇が朋花ちゃんの決意と覚悟、使命に応えてくれるでしょう~」

エミリー「! もしかして……」

千鶴「何をするつもりですの?」

可憐「わ、わからない。けど、朋花ちゃんを信じて、私たちは時間を稼ぐよ……!それでいいかな」

朋花「ええ、ありがとうございます。可憐さん。聖母として、霊山巫女候補第3位≪天空橋≫の朋花として私はなすべきことをするまでです~」
24 : プロデューサーちゃん   2022/06/24 19:08:21 ID:.mLLc96VKI
可憐「じ、陣形展開!朋花ちゃんには指一本触れさせません……!」

エミリー・千鶴・美也「了解(しました~)!」


朋花(ふぅー……必ず成功させなければなりませんね)

朋花は小さく構築させた聖域上で、呼吸を調えた。
そして霊扇を一度、閉じる。朋花は思い出す。
霊山を離れるあの日、母がこの霊扇を自分に渡し、教えてくれたことを。
ただの破魔の霊力が込められた扇子にあらず。この扇子こそが巫女候補としての成熟の度合いを示す、秤でもあったのだ。

閉じた扇子を両手で抱きしめるように持ち、祈るような面持ちで朋花は唱え始める
その詠唱は可憐たちの耳に届かぬ小さな声、そのはずであったのにやがて、聖域が拡大していき、元の声量のまま、部屋にいる生ける者どもの耳に、魂に到達する。

そして―――

朋花「聖なる霊界に住まう獣よ、我が呼び声に応えて、降臨せよ――――」

千鶴「天井に何かが!?あ、あれは魔方陣?」

エミリー「あれは召喚陣です、ですがあの術式は初めて見ます」

美也「はい~、霊山の召喚士が使役できる下級な魔獣とは違いますからね~」

可憐「聖獣?」

エミリー「巫女候補は、はじめ多くいてもその素質の強弱と日々の成長によって淘汰されていくもの。聖獣との盟約は真の巫女として認められるには避けて通れない試練であり、証なのです」

美也(当代の霊山巫女である麗花様であっても聖獣を召喚し、盟約したのは16歳の頃と伺いました~。うまくいくといいのですが~)
25 : 下僕   2022/06/24 19:08:38 ID:.mLLc96VKI
霊山の筆頭花師である朋花の母親は、美也にその秘剣・幸福蝶を譲り渡す際に誓いを立てた。
もしも朋花が聖獣召喚の儀を執り行う状況下となったそのときには、その一部始終をその眼に焼き付け、あとですべて語り聞かせると

美也(朋花ちゃん……)

朋花「天空橋の名で、血で、魂でここに誓約する……来たれ、我が友、血肉となりし聖なる獣よ!」

千鶴「何か出てきましたわ!」

可憐「お、降りてくる……あれって――――」

エミリー「ぶ、豚さんですっ!」

美也「なんと~」

朋花は聖獣の召喚、そして盟約に成功した
その聖獣は大きなぬいぐるみのように可愛らしい姿かたちをした豚であった
丸々としたその体長というのは、縦に80㎝、横に1メートル余りといったところであろうか
千鶴の知る食用の家畜とは似て非なる存在であり、後になって可憐が気づくのだが背の部分にごくごく小さな翼を生やしているのだった
その翼があるから、ではないだろうが空中浮遊をしている様はファンシーであり、つぶらな瞳は盟友である朋花に母性を早くも見出している
26 : ハニー   2022/06/24 19:09:14 ID:.mLLc96VKI
TURN4 OFFENSE PHASE
【安価→直下3レス分の投稿時刻秒数にて判定 自動判定】
※00は0ではなく60として扱う
混沌なるツヴァイグランツ 残り耐久値253

朋花は聖獣トクガワ(かつて霊山を救った美しき豪傑が由来だぞ)の力を借りて、混沌なるツヴァイグランツを冥府へと送り返すつもりだ!

聖獣トクガワ
基礎攻撃値 100-最小値×2 上限70 下限0 
・いずれかが奇数
・いずれかが4か7か11の倍数
・いずれかの1の位が1か3か9
・中央値が29~50
・いずれかが素数
・最小値が1桁
・最大値と最小値の差が5の倍数ではない
上記7条件のうち、満たした数によって発動スキルが決定される
1:基礎攻撃値の最小値参照を×1に変更

2~4:基礎攻撃値を70+最小値×2かつ上限を150に変更

5:基礎攻撃値を100+中央値×2かつ上限を200に変更

6:基礎攻撃値を3レス総和×2に変更 上限無し

7:固定値390 


さらに以下の条件を満たすことで千鶴の追撃が得られる
・総和が40~59  75
・すべて奇数   90
・中央値と最大値の和が10の倍数 110

なお、敵側の耐久値が100未満になった場合、FATAL PHASEに以降
【安価→直下3レス分の投稿時刻秒数にて判定 自動判定】
何卒ご協力お願いします!
27 : 兄ちゃん   2022/06/25 05:24:56 ID:5tfLiIlUMc
終盤なんで自レスしてでも進めていきますわー
周年イベ開始までには終わらなさそうっす
28 : 兄(C)   2022/06/25 07:54:07 ID:7SRWKw/cjw
姫は子豚ちゃんだったのか

ぶひー
29 : プロデューサー様   2022/06/25 08:00:34 ID:942f9YCtck
おはよう
30 : 仕掛け人さま   2022/06/25 11:49:13 ID:N5WEWy8Wjc
レスありがとうございます!
副業中なんで、判定だけ
(56,07,34) 

該当項目数は6
したがって97×2=194
さらに34+56=90で、10の倍数であることから+110

最終攻撃値304  撃破達成!
オーバーキルやね、さすがトクガワ

続きはなるべく今日中に
何卒ご協力お願いします!
31 : プロデューサーさま   2022/06/25 19:32:21 ID:5tfLiIlUMc
千鶴「なんて可愛らしく、神々しい豚さんですの!じゅるり」

可憐「ち、千鶴お姉ちゃん、聖獣は食用じゃないよ!た、たぶん」

エミリー「てっきり白竜や銀狼、大鷲の姿の聖獣を使役すると思っていましたが、まさか豚さんとは……」

美也「朋花ちゃん、その子の名前は何ていうんですか~?」

朋花「名前……聖なる獣たちには、彼らの存在を縛り付ける真名というのはありません。盟約を交わした私たちが彼らに与えるのが習わし……」

千鶴「ロースやバラ、もしくはヒレなんてどうですの?いえ、モモがいいですわね。美味し……可愛いですから」

可憐「千鶴お姉ちゃんは黙っていようね?」

美也「では霊山の救世主にあやかるというのはどうでしょう~」

エミリー「それってもしや?」

朋花「フェスティバル・トクガワ……。なるほど、ではフェスタというのは――」

美也「トクガワにしましょう~♪」

可憐「え?」
32 : P様   2022/06/25 19:32:40 ID:5tfLiIlUMc
トクガワ「ぶひ?」

美也「お~、気に入ってくれたみたいですな~、むふふ」

朋花「本当にトクガワでいいんですか~?」

トクガワ「ぶひー!」

可憐(何言っているかわからない……!)

朋花「やれやれ、しかたありません。では、トクガワ。さっそくですがあなたの力が必要です」

トクガワ「ぶひ?……ぶひ?」

朋花「悲しみをここで断ち切るのですよ~。できますよね~?」

トクガワ「我が盟友よ。その切なる願い、しかと心得た。いざ、参るっ!!」

可憐「普通に話せるの!?」

千鶴「可愛くねぇですわ!」
33 : Pサン   2022/06/25 19:32:55 ID:5tfLiIlUMc
混沌なるツヴァイグランツに向かって一直線に突き進むトクガワ!

朋花「みなさん、伏せて!爆風に備えてくださいっ」

可憐「爆発するの!?」

エミリー「くっ!」

千鶴「可憐、こっちに!どさくさに紛れて抱きしめますわ!」ギューッ

可憐「ま、紛れていないよ?!」

美也「なんと~」ギュッ

朋花「美也さんが、私に抱き着く必要ないですよね~……べつにイヤではありませんが~」

可憐「シリアスはどこに……!」

美也「前スレに置いてきたみたいですな~」



ちゅどーんっっ!!
34 : プロデューサーさん   2022/06/25 19:33:12 ID:5tfLiIlUMc
千鶴「崩れていく……」

エミリー「引導を渡すことができましたね」

可憐「レオンさん……ううん、戦っていたわかった、シーカさんの魂も一緒だったって」

朋花「死者蘇生計画の末路、ということですね」

美也「前スレで読んだブラックウェル卿の日記からすると、あのスラグたちはこの錬金術の怪物を封じ込めるために作られたようですな~」

千鶴「封印後は、ああいうふうに残っているのですから、粗悪品ではありませんの?」

可憐「スラグのことは……まだすべて解明できたとは思わないよ。あの力、普通の錬金術じゃない気がする」

エミリー「つまり、私たちは立ち止まるわけにはいかないのですね」

可憐「うん……最深層に到達してみないことには」
35 : Pさぁん   2022/06/25 19:33:28 ID:5tfLiIlUMc
朋花「その前に恵美さんたちと合流しないとですね~」

千鶴「ところでトクガワはどうなったんですの?」

朋花「あっ。 ん、ん。一度、霊界へと帰ってもらいました~。私の今の霊力ではトクガワを長くは留められないので~」

エミリー「今、『あっ』って言いませんでした?」

朋花「言っていませんよ~?ふふっ」


かくして、混沌なるツヴァイグランツを撃破して、1つの悲劇をようやく終幕させた可憐たち
そのはずだったが―――


可憐「!! 待って!う、動いている!?」

その身を崩落させた混沌(以下略)の残滓が可憐目がけて襲いかかるっ!

千鶴「可憐っ!危ないっ!」

可憐「―――っ」
36 : ぷろでゅーしゃー   2022/06/25 19:33:49 ID:5tfLiIlUMc
一方その頃、まつりたちは……


- タルタロス B4F 第17区画 -

エレナ「大変だったネー」

恵美「いやぁ、いきなり話をしているところに、あんな数の敵がうわーっと押し寄せてくるんだもん、びっくりしちゃったよ」

まつり「でも、恵美ちゃんのあの技、すごかったのです!あの『フローズン・ワールド』はそんじゃそこらの高位魔法だって及ばないのです」

恵美「そのぶん、代償も大きいけどね。ほら、しばらく右腕が上がんないよ、にゃはは……」

貴音「さて。まつり、続きを話してもらいますよ」

まつり「ほ?」

貴音「しらばくれても無駄です。前スレの932レス目あたりからの話、忘れたとは言わせませんよ!」

まつり「一週間近く前のことなんて覚えていないのです」

恵美「まつり、そろそろ観念しなよ。結局、まつりが言いだしたんだよ、えっと、ナンヤイネ・カナザワ・ナンナンブレードだっけ?貴音のお婆さん」

エレナ「全然違うヨー」

まつり「ん?ちょっと待つのです」

貴音「まつり!」

まつり「待つのです、誤魔化しているわけではないのです……ほら、旅立ちのコンパスが通信を拾っているのです」
37 : プロデューサーさん   2022/06/25 19:34:42 ID:5tfLiIlUMc
>>36
区画名前、そのまま前の時のコピーしちゃいました
敵を倒しながら移動したってことで、前とは別区画です
38 : Pサン   2022/06/25 19:34:58 ID:5tfLiIlUMc
恵美「マジ?朋花たちと別れてしばらくしたら、繋がらないままここまで来たんだよね」

エレナ「敵を倒しながら進んでいくうちに、カレンたちと近くの部屋にいるってことナノ?」

まつり「シッ……よく耳をすますのです」

貴音「微かに聞こえるのは雑音ですね。ふむ……今、私たちのいる部屋は広いです。手分けしましょう」

恵美「うん。ちょうど4人だし、それぞれが部屋の隅にゆっくり移動していこう?もしかしたら誰かが音をもっと正確に拾えるかも」

エレナ「三角形の部屋でなくてよかったネ♪」

まつり「そういう問題なのです?」


そうして旅立ちのコンパスの無線機能の傍受を試みる4人。
やがて、エレナが千鶴らしき声を拾う。


エレナ「! チヅルだヨ、この近くにいるんだ!」

千鶴「―――ん、ど――――の!?」

エレナ「なんて言っているんだろう?」
39 : せんせぇ   2022/06/25 19:35:15 ID:5tfLiIlUMc
一歩ずつエレナは声が聞こえやすい方向へと足を進めた。
他の3人はエレナへと近寄っていく。
そして……

エレナ「あっ、聞こえそう」


千鶴「可憐っ!! どこへ消えてしまいましたの!?」


まつり「え――――?」



つづく
40 : 魔法使いさん   2022/06/25 19:37:15 ID:5tfLiIlUMc
次回更新は遅くとも明後日の夜には

次回でようやくシーカ&レオン編は終了予定
そしてついに、まつりが……!?

何卒最後までご協力お願いします!
41 : プロヴァンスの風   2022/06/25 20:09:57 ID:Gw34EEJ/oU
おつおつ!
42 : 監督   2022/06/26 08:24:15 ID:kweA2URB9U
おつ

秘密が明らかに!
つまり…
43 : プロデューサー様   2022/06/27 15:58:07 ID:fPilAiFGo.
再開します

劇中で既に亡くなっている可憐の両親なんですけど、死因を流行り病ではなくて、実は生きたまま霊魂を賢者の石の材料にされていたっていう展開を考えていたんです。
でもそうなると可憐の心情描写をするのが面ど、ではなく自分の良心が傷んだのでやめました。そう、両親だけにね
44 : プロデューサーちゃん   2022/06/27 15:58:21 ID:fPilAiFGo.
可憐「ん………。あ、あれ?ここはどこ?」

我等が主人公、可憐が意識を取り戻したのは薄暗く小さな部屋であった。
可憐は特に怪我をしているわけではないことを確認すると、記憶の整理を始めた。
なぜ自分がここで、ただ1人いるのか。何が起こったのか。

可憐「えっと……。そうだ、混沌の残滓が私に襲いかかってきて……」

聖少女が父親を裏切り、その力を利用し、造り出した賢者の石をもって蘇生させようとした親愛なる女性。
その計画の悲しくも不可避なる運命、取り戻すことのできなかった魂の末路、混沌の化身の残りかす。
可憐はそれに不意打ちを喰らったのだったが……?

可憐「思い、出した……。避けるために咄嗟に横へ飛んだんだ。僅かに残っていた杖の霊力を解放して、自分を強制的に移動させた」

壁にぶち当たる、その衝撃に備えないとならなかったはずだ。
しかし、現実として起こったのは壁の一部がすり抜けた。トンネル効果などではない。
すなわち可憐が飛んだその先にちょうど、隠し部屋があったのだ。

??『可憐!可憐ーっ!』

可憐「ひゃぁっ!! って、これ、旅立ちのコンパスの通信!び、びっくりしたぁ。千鶴お姉ちゃん?」

千鶴『可憐!?無事ですの!?無事ですのね、よかった、本当によかったですわ!』

可憐(涙声……私、少しの間、気を失ってしまっていたから……。向こうからしたら、き、消えてしまったように感じたんだね)
45 : Pしゃん   2022/06/27 15:58:35 ID:fPilAiFGo.
可憐は隠し部屋について説明した。
しばらくして、美也が隠し部屋に入る仕掛けを見つけることができ、合流を果たすことができた。

美也「む~ん……。この部屋、私でも見つけるのに苦労しました~。構造的に、何か特別な結界があるのかもしれません~」

美也は千里眼のような能力を有している設定なのだが、忘れちゃっていた。
それはそれとして、可憐は改めて例の残滓のその後を訊ねる。

朋花「いってしまいましたよ~。円環の理に導かれて」

可憐「そっか……」

エミリー「この隠し部屋というのは、なんなんでしょう?」

美也「? 可憐ちゃん、これは少し形が違いますが、アトリエにあるものと同じではありませんか~」

可憐「同じ?その妙に大きな器が……って、ああっ!こ、これって錬金釜?!暗がりだからよくわからなかった」

千鶴「では、朋花。そのお団子で灯りをつけてくださいまし」

朋花「千鶴さん~?今の私は髪を下ろしていますし、仮にお団子であっても照明器具の効果はないのですが~」

千鶴「そうでしたわね、やれやれですわ」

朋花「どうして、頭を撫でてくるんですか~」
46 : Pちゃん   2022/06/27 15:58:48 ID:fPilAiFGo.
美也の見つけた器が錬金釜であるとすれば、部屋の主はブラックウェル卿その人か、聖少女シーカしかない。
5人はもっと調べてみることにする。小さな部屋なのでそう時間はかからない。
箪笥があれば聖少女の清楚な下着を取得できたかもしれないが、961プロからの圧力でそうした演出はできなかった。
おのれっ、961プロ!

可憐「机にあるこれは……?」

エミリー「可憐さん、それは?」

可憐「えっと、錬金術で調合したものだとは思う」

千鶴「玉ですわね。もしや爆弾では?投げられるぐらいの大きさですわよね。ひー、ふー、みー……4つありますわね」

現実基準で言えば、ハンドボールの球より一回り小さいぐらいだ。

可憐「くんくん……ううん、そういった類のアイテムじゃないよ」

朋花「表面に刻まれているのはただの飾りではないですね~、見たことのない種類ですが魔方陣だと思います~」

エミリー「あれ?よく見たら、1から5の数字がそれぞれ刻まれていますよ。4は見当たらないですけど」

美也「朋花ちゃん、お疲れだとは思いますが試しに霊力をこめてくれませんか~。この1に」

美也の提案により、可憐は朋花にその玉―――魔方陣が刻まれた球状の錬金調合物の1つを渡す。

朋花「……何も起きませんね」
47 : 兄ちゃん   2022/06/27 15:59:02 ID:fPilAiFGo.
千鶴「朋花。それではいけませんわ」

朋花「はい?」

千鶴「語尾に、にゃんをつけて猫のポーズをとってもう一度……」

エミリー「あの、可憐さん。千鶴さんはまだ混乱しているみたいですが……」

可憐「い、一度にたくさんのことが起こったから無理もないかなって。そっとしておこう?」

美也「ふむふむ、なるほど~。では、可憐ちゃんに戻していただいて。可憐ちゃん、試してみてくれませんか」

可憐「錬金術士だけが扱える道具の可能性があるってことだね」

朋花(まず私が試す必要があったのでしょうか~)

美也(むむむ、と力を込める朋花ちゃんは可愛かったので~)

朋花(直接脳内に声を届かせないでくださいね~)
48 : バカP   2022/06/27 15:59:28 ID:fPilAiFGo.
可憐「むむむ~! んっ?――――きゃっ!」

千鶴「光りましたわ!」


??『あー、あー、テスト、テスト』


可憐「こ、声が聞こえる?!」

朋花「? いえ、何も聞こえませんが~」

美也「可憐ちゃんには聞こえているんですか~」


??『ふぅ、どうかな。うまくいっているといいな。こういう特殊な音声記録装置なんて、調合するの初めてだから』


可憐「は、はい。聞こえます。わ、私にだけ?」

エミリー「どうやら錬金術士の力に反応して作動するもので、錬金術士にしか聞こえないようですね」

千鶴「なるほど……」


??『えーっと、誰に向けたメッセージってわけでもないけど、そうだね、えっと……ど、どうもー……シーカです』
49 : ごしゅPさま   2022/06/27 15:59:42 ID:fPilAiFGo.
可憐「やっぱりシーカさんなんだ、この声……」

美也「なんと~」

この部屋の性質を考えれば、女声という時点で見当はついていた。むしろシーカ以外の誰かであれば困惑してしまっただろう。
ちなみにシーカの口調については、詩花の口調をきちんと読みこんでいないので、あくまでシーカ役の演技ってことで。

可憐「大事そうなことがあったら、その都度、み、みんなに知らせるね」

朋花「ええ。聞けるのは一回きりだとは思いませんが、焦らずに落ち着いて聞いてくださいね~」

シーカ『今日はある意味、記念日ですね。司祭様には私の命日として教会に記録してほしいよう頼んでおきましたので』

可憐「……!」

シーカ『聖少女としての私は今日でさよならです。ううん、本当だったらお姉さまが亡くなって、そしてもう一度会うために、錬金術を学び始めたあの日から、既に私は聖少女だなんて名乗れる立場ではなかったのかも』

可憐「……」

シーカ『でも、例の病に冒された時からっていうのは断じて違うと思うんです。この病は身体を蝕むけど、でも心までは狂わせないって。そう思いたい。うん。いずれにせよ、私の計画は表向きは頓挫しちゃいました』
50 : 下僕   2022/06/27 16:00:15 ID:fPilAiFGo.
シーカ『レオンお姉様を復活させられるような、そんな道具。そんな調合は今の私じゃできっこないみたいです。いえ……わかってはいます。ちがう、わかりたくはない、諦めたくはないけど、でも……死者を生き返らせるには、それ相応の代償がいるってのは間違いないと思うんです』

可憐(代償――――)

そうして1つ目の玉の記録は終わった。
可憐は2つ目を再生する。
シーカは父であるタカーオが見つけた錬金術の真髄にして禁忌である賢者の石に死者蘇生の希望を見出したこと語っていた。
タカーオがその賢者の石について知ったのは、どうやら遠方から取り寄せた奥義書のようなものからであるらしい。
タカーオはこの地下研究施設で流行り病の治療法を研究する中で、錬金術にやはり希望―――それは愛娘とは別のものであったが―――を見つけた後、なんとか人脈を頼りにそうした本も手配したのだろう。

3つ目の記録にはシーカが賢者の石の調合をするべく、生ける霊魂集めのために司祭と話をつけたことが記録されていた。

可憐(シーカさんの声、震えていた……きょ、教会で『看病』することになった患者さんの一部をこの施設に移送して、け、賢者の石の『材料』にする……それを成し遂げたのは、狂気ではないんだ。ただ、タカーオさんはそれをシーカの覚悟、つまり……な、なんとしても流行り病の特効薬を得るための犠牲として捉えていたけど……シーカさんからすれば、レオンさんとの再会への一歩だった……)
51 : おにいちゃん   2022/06/27 16:00:30 ID:fPilAiFGo.
シーカが話をつけたというのは、貴音が直接依頼を受けたという、ミリ・シタの天空教会の元・司祭と同一と見ていいだろう。
シーカの享年が二十歳となっていたがその墓標がないのは本人の望むところであったのか。
例のシーカの手記(前スレ参照)についてはどこかで受け取ったのかもしれない。


可憐「これが今ある最後の記録……きっと時系列からすると、シーカさんがお父さんのタカーオさんを裏切る直前か、もしかしたら……」

可憐は玉に霊力を込める。固唾を呑んで見守る4人。
すると―――
52 : プロデューサー君   2022/06/27 16:00:43 ID:fPilAiFGo.
シーカ『結論だけ、言う。
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
私は―――――失敗した』


可憐「っ!!」

シーカ『タイムマシンとか、そういうの全然関係ないけど、とにかく私は失敗した』

千鶴「か、可憐?顔が真っ青ですわよ?」

朋花「千鶴さん、今はお静かに。気持ちはわかりますが」
53 : レジェンド変態   2022/06/27 16:00:55 ID:fPilAiFGo.
シーカ『私ってほんとバカ。薄々、気づいていたんだ。完全な賢者の石なんてのは、ここじゃ作れないって。パパは流行り病の治療薬を作るために使うつもりだったんだよね。それだったら、うまくいったのかな。わかんない、わかんない、わかんないよっ!』

可憐「……っ」

美也「可憐ちゃん……」

シーカ『パパはスラグ?っていうので、お姉さまを封じようとしている。お姉さま……?ふふっ、そう呼んでいいのかな、呼ぶべきなのかな、なんなの……あれはもう人でもなければ、そこらの魔物じゃないもの。……音が近づいてきている。逃げてきたはいいけど、私を見つけたらパパはどうするんだろう?実の娘である私を……たぶんあの人は殺めることはできない。優しい人だから。もしもパパがもっと厳しい人だったら、私につけこまれる隙なんて与えなかったと思うから。それとも親子っていうのはそういうものなのかな。私だったら赦せないだろうな、なんて。決断しないと、そう、だよね。私だけが生き残ってしまうのならいっそ私は……』

可憐「………」

エミリー「可憐さん……」

シーカ『すぅー、はぁー……。これを聞いている誰か。どうせだったら、凄腕の錬金術士がいいな。お願い。もしも……もしも、流行り病がもう収まっていて、それでブラックウェルのお屋敷がまだあったなら。どうか屋敷の裏庭、あのレオンお姉さまのお墓に……花束を。私とお姉さま、ふたりともが愛したあの花、丘の花畑に咲くメルヘンリリーの花束をどうかお願い、供えてください――――さよなら。お姉さま……本当に愛していました。今、会いにゆきます』

可憐の頬を涙が伝う。それが誰に対するどんな想いなのか、可憐自身わからなかった。
他の4人は沈黙し、可憐が落ち着き、すべてを話してくれるのを待つしかなかった。
54 : プロデューサーはん   2022/06/27 16:01:15 ID:fPilAiFGo.
その頃、まつりたちは……


エレナ「あれー!?聞こえなくなったヨー!今、チヅルの声、クリアに聞こえたよね?」

まつり「間違いないのです!可憐ちゃんが消えた、って言っていたのです!」

恵美「うん!聞こえた!すぐに移動したのかな?えーっと、どっちから聞こえたか、みたいなのわかる?」

貴音「ふむ……。こうなれば、壁を打ち壊してしまうのもありかもしれませんね」

エレナ「道は作るものだってことだネ!」

まつり「とはいえ、さっきの戦闘でみんな疲れちゃっているのです」

恵美「うーん、それじゃあさ、探索に戻る?まだ入っていない部屋もあるし、合流できるかも?」

エレナ「期待させておいてこれはないヨー!」

貴音「あれを試してみますか」

まつり「なんなのです?」

貴音「無月・四条流の奥義の1つです。ですが、確実性が低いので、ここまで試さずにおりました」

恵美「やるだけやってみてよ!」

エレナ「奥義だって空気を読んでうまくいくって!」
55 : プロデューサーはん   2022/06/27 16:01:30 ID:fPilAiFGo.
まつり「ということなのです」

貴音「いいでしょう。では……」

貴音は刀を抜く。言及していなかったかもしれないが、この刀こそ千鶴の持つ守護剣ムーンゴールドと対をなす月の刀・無月である。
旧バンナム皇国時代、皇族を守護する最高位の騎士がふるったのがムーンゴールドであるのに対し、無月は皇族の敵対者を闇夜に乗じて暗殺するために、影の騎士がふるった刀である
二本とも同じ名匠によって打たれたものであるが、この話をしだすとこのスレをも終わらせてしまうので割愛する。

恵美「抜いた刀を地面に垂直に刺した?」

まつり「刺してはいないのです。手を離してしまえば、倒れちゃうのです」

エレナ「え、もしかしてこれって……」

貴音「無月・四条流、奥義――――月夜の導き」

コテッ

まつり・エレナ・恵美「………」

貴音「こちらの方向にいるみたいですね。……おそらく」

エレナ「たずね人ス○ッキの要領だヨー!!」

恵美「ってことは的中率70%ってこと?」

貴音「いえ、76.5%ですよ、ふふっ」

まつり「どうして、したり顔なのです!?」
56 : プロデューサーさま   2022/06/27 16:01:44 ID:fPilAiFGo.
そして場面は可憐たち側に戻る


千鶴「そんなことが……これに記録されていましたのね」

可憐「う、うん」

朋花「千鶴さん~?いつまで可憐さんを抱きしめているつもりですか~」

千鶴「姉として当然のことをしているまでですわ」

エミリー「あの、やっぱりまだ混乱しているんじゃ……」

美也「お~、では次は私が可憐ちゃんを抱きしめていいですか~」

朋花「そうはならないですよね~」

可憐「ん、ん。千鶴お姉ちゃん、えっと、離れて」

千鶴「がーん!」
57 : P様   2022/06/27 16:01:57 ID:fPilAiFGo.
可憐「さて―――。そ、それじゃ、探索を再開しよっか。まだ師匠たちと合流できていないし、それにこのタルタロスの真相もまだわkっていないし」

千鶴「きっと最深層でわかりますわね。真相だけに」

美也「なんと~……」

エミリー「うう、千鶴さん、頭がおかしくなってしまったままでしゅ……!」

朋花「いえ、素ですよ~、これは」

可憐(千鶴お姉ちゃんなりに、年長者として和ませようとしてくれている、そ、そうだよね?)

可憐「じゃあ、この隠し部屋ともお別れして――――あれ?」

朋花「どうしました?」

可憐「あの隅にあるの、ひょっとして……」

千鶴「あっ、可憐」
58 : プロデューサー殿   2022/06/27 16:02:10 ID:fPilAiFGo.
可憐「あ、あったよ!記録の4が!」

美也「でかしましたね~」

エミリー「けれど、先ほど話してくれた内容を鑑みるに、大した情報はもうないのでは?」

朋花「確認してみるに越したことはないでしょう~」

可憐「うん。それじゃ、再生してみるね」

シーカ『ついに明日、賢者の石の調合が完了する予定ですっ♪ って、はは、何浮かれているんだろうね、私』

可憐(悲劇が起こる前日の記録……)

シーカ『わざわざこういう形で記録をするのは、思い出したことがあるからなんです』

可憐(思い出したこと?)
59 : do変態   2022/06/27 16:02:42 ID:fPilAiFGo.
シーカ『小さい頃に出会った錬金術士さん。私に錬金術の基礎の本をくれて、どこかへ去ったあの人のこと。今の今まで全然思い出せなかったのに、急に鮮明にその時の光景が脳裏に浮かんだんです。運命なのかな。明日、私は一度失ったお姉様を生き返らせるわけだから、錬金術士として偉業を達成するってことですからね、なんて』

可憐(シーカさんが錬金術を知るきっかけとなった錬金術士……手記にも存在自体は書いてあったんだよね)

シーカ『お姫様みたいな人でした。二十歳前後かな?内巻き髪で、かなりの美人。明るくて、自由奔放って感じで、口調も変わっていて』

可憐「え?」

心臓がバクバクとし始めるのがわかった。予感が、強烈な兆しが可憐の胸を打つ。
その時、可憐たちのいる部屋に、影が加わる。

まつり「はいほー!可憐ちゃんたち、やっと会えたのです!」

エレナ「うわーん!チヅルーっ!また会えてよかったヨー!!」

貴音「エミリー……ふふっ、こんな短時間だというのに、成長したようですね」

恵美「朋花もその服の汚れ具合、っていうか、ここの部屋の様子から察するにすごい戦いがあったみたいね、にゃはは」

嬉々とした声。再会を祝う中で、可憐はシーカの声に耳を傾ける。その続きを知りたいような知りたくないような、そんなもどかしい想いは他でもなくシーカの声によって絶たれる。
60 : do変態   2022/06/27 16:03:07 ID:fPilAiFGo.
シーカ『名前……えーっと、なんだっけ。あ、そうそう。――――まつりさん。はいほー!って。ふふっ、思い出してみたら怪しい人のはずなのに、そんなふうに思わなかったんですよね。今頃、どこで何をしているんでしょう。………もっとここにいてくれたら、な。私があの時、本気で錬金術を教わることを選択していれば、流行り病だってすぐに収束できたのかな。えっと、あとは……』

後半部分は可憐の耳に入らなかった。可憐は今、シーカが言った名前を何度も頭で確認する。
かつてシーカが幼い頃に、つまりは20年前以上に出会った1人の錬金術士のことを。

まつり「ほ?可憐ちゃん、それはなんなのです?……どうして、そんな顔をしているのです?」

可憐「師匠………」

可憐は何時間ぶりかに再会したその事実を受け止めてはいない。ただ、問いたいことがあり、ちょうど当人がそこにいたことを認識しているだけに過ぎない。


無事の再会を喜ぶ皆が異様な空気を察して、可憐とまつりに注目し、沈黙する。
可憐はまっすぐまつりの顔を見据えた。口を開くも、声が震える。
だが、訊かずにはいられない。





可憐「まつり師匠、あなたはいったい……何者なんですか?」


つづく
61 : ハニー   2022/06/27 16:05:21 ID:fPilAiFGo.
更新は一旦ここまで
やっっっっっっと、ここまできましたわ!
あとはラスボス戦まで駆け抜けて、エンディングですよ!
前にも触れたとおり、まつりがラスボスっていうのはないですよ、念のため

次回は今週中には


何卒最後までお付き合いください!
62 : プロデューサーちゃん   2022/06/27 20:33:23 ID:oaq6j8TLJw
おつ
ラスボス誰なんでしょうね
あと一息待ってますね
63 : おやぶん   2022/07/02 09:54:18 ID:bTQKyooGig
再開します
そんなに進んでいませんけど、まつりの正体は7割6分5厘ほど明らかになります
64 : ぷろでゅーさー   2022/07/02 09:54:35 ID:bTQKyooGig
千鶴「可憐?その4番目の玉には何が記録されていましたの?」

朋花「まるで……シーカさんが、ここにいるまつりさんに特別なふうに言及した様子ですが」

美也「………」

恵美「えっと、どういう流れ?再会を喜び合って、いざさらなる地下へ、って雰囲気じゃないよね……?」

エレナ「ね、ねぇ、カレン。そんな目でマツリを見るのはやめようヨ、そんな……」

貴音「あたかも目の前にいるのが怪物であるかのごとく眼差しですね」

エミリー「隊長!?」



貴音「さぁ、まつり」

まつり「ほ?」

貴音「今しがた合流した私たちとしては、そこにいる貴女の弟子がどういった記録をどういった形で知り得たのか、それはわかりません」

そう言って貴音はエミリーから離れると、まつりの傍に立つ。敵意こそないが、優しく寄り添うのとは違うのを皆がわかった。

貴音「ですが、貴女が自分自身のことを明かすときが訪れた。そうであると私は思います」

まつり「まつりのことを?」

貴音「ええ、そうですとも。もちろん、貴女から始めるのではなく、弟子が何を知ったのか、これを確かめることから始めてもかまいませんが」

ちらりと貴音は可憐を見やる。まつりがそうであるように、可憐もまた貴音に視線を合わせはしない。
見逃してたまるかといった意気で、互いの表情から心中を読み取ろうとしているのだった。
65 : プロちゃん   2022/07/02 09:54:48 ID:bTQKyooGig
千鶴「ん、ん」

このまま貴音に主導権を委ねてしまうのを恐れたのか、単に厳粛な空気に息を詰まらせてしまったのか、千鶴がわざとらしく咳払いをする。

千鶴「可憐。もう一度訊きますわ。それには何が記録されていましたの?」

シーカの隠し部屋、そこにあった錬金術で調合されたアイテムというのは、音声記録媒体として機能する玉であった。
そのことを手短に、可憐が口をもう一度開くより先に朋花が貴音たちに教える。まつりは合点がいったような面持ちとなり、それから覚悟を決めたようでもあった。

まつり「可憐ちゃん」

ようやく師が、緊張に身をこわばらせている弟子に声をかける。

可憐「師匠……」

まつり「その玉には記録されていたのですね?シーカちゃんの手記にあった出来事、彼女が幼い頃に邂逅した錬金術士のことが」

恵美「へ?でも、それって忘れちゃったって書いてなかった?」

可憐「思い出したそうなんです……賢者の石の調合を終える、その前日に」

まつり「! 賢者の石――――予想はしていたけれど、聞きたくなかったのです。ううん、今はそれよりも……可憐ちゃん」

可憐「はい」
66 : プロデューサーちゃん   2022/07/02 09:55:03 ID:bTQKyooGig
まつり「その錬金術士のことをシーカちゃんはなんて?」

可憐「内巻き髪の美人、お姫様みたいな人。名前は……まつり」

エミリー「それって……!」

美也「なんと~」

エレナ「すごい偶然だネ!ここにいるマツリと一緒だなんて!」

朋花「いえ、そうではありません」

千鶴「まつりは、時間旅行者ということですの?錬金術によって時をかける少女ですの!?」

貴音「その可能性の他にもう一つあります」

可憐「まつり師匠、あなたは――――何歳なんですか」

まつり「難しい質問なのです。なぜなら肉体は19歳で止まっているのですから」

貴音「止まっている……?」

肩をすくめてみせるまつり。すべてを話すときがきたのだった。
そして、最終話を始めた時点の予定では、このへんのシーンをしっかり書きたかったが、既に周年イベントもはじまっているし、2スレ目に突入しているし、そもそも既に4か月経っていることもあって、これ以上長引かせるつもりはないゆえに、簡単に書いてしまうのだった。
67 : おにいちゃん   2022/07/02 09:55:20 ID:bTQKyooGig
まつり「わけあって、まつりは不老の身なのです」

恵美・エレナ「ええっーー!!?!?!?」ドンガラガッシャーン

まつり「と言ってもそんなに長生きしてはいないのです。せいぜい100年足らずなのです」

朋花「ということは、もしかして」

貴音「やはり貴女がフェスティバル・トクガワなのですね?」

エミリー「ひょわあっーーー?!?!?」

まつり「それは微妙に違うのです。あの時、まつりが魔物の強襲から霊山を救う手助けをしたのは違いないけど、そんな名乗りはしなかったのです!」

美也「む~ん……一部の騎士を除いて、多くが避難していたらしいですからね~。実際に会って話した人は少なく、あくまでその活躍を讃える意味合いで広まった名前なのかもしれませんね~」

まつり「そういうことだと思うのです。たぶん朋花ちゃんのおじい様のネーミングセンスが悪いのです」

朋花「!? おじい様を知っているんですか」
68 : Pたん   2022/07/02 09:55:37 ID:bTQKyooGig
皆がまつりに質問攻めでも始めるような素振りをしたその時、可憐が例の玉を床に叩きつけた。
そして、まつりを相手にまくし立てる。

可憐「そんなことはどうでもいいんです!! フェスティバルだかカーニバルだか、ハンニバルだか、そんなことは、本当にっ、どうでもいいことなんですっ!!」

千鶴「か、可憐?」

可憐「私が知りたいのは、師匠……あなたがミリ・シタを少なくとも一度訪れていて、シーカさんに出会っていて……!その後に起こった流行り病を食い止められることができたか否かっ、そこなんです!ど、どうなんですかっ!!」

まつり「可憐ちゃん……」

可憐「し、師匠が不老であることは錬金術ときっと関係あるんですよね?はっきり言って、それは間違った錬金術の使い方に他なりません」

まつり「っ!」

可憐「私たちがついさっきまで死闘を繰り広げていた魔物もまた、誤った錬金術の産物でした。聖少女と呼ばれた女の子が切望し、実の父親を裏切り、得ようとした……死者蘇生。そんな、人の道理を外れたことを望んだがために生まれた、悲劇の怪物でした……!」

貴音「なんと、そんなことが」

可憐「師匠!どうなんですかっ、私に錬金術を教えてくれたあなたは、いつも優しくて頼もしいあなたは……この街を救えたんじゃないですか!?それなのに、それなのにっ!そんな間違った錬金術の使い方をして、人の道に背いた身体で、いったいあなたは何をしていたんですか!!!」

朋花「可憐さん、落ち着いて話を、」

可憐「落ち着いてなんかいられないよ。だって、そうでしょう?信じていたんだよ!!信じたかった……レオンさん、それからシーカさんが混沌として交わったあの花咲くウミウシを葬ったそのとき、私は思ったんです……私は錬金術をこんなことに使わない、使いたくないって。正しい使い方で、正しい結果を得るんだって」
69 : P殿   2022/07/02 09:55:56 ID:bTQKyooGig
可憐「それ、なのに……」

膝から崩れ落ちる可憐を誰も止められはしなかった。やがて嗚咽が部屋に虚しく響く。
そんな状況下、混乱する仲間たちのうちで、まつりに話の続きを促したのは美也であった。
厳密には貴音がまつりに声をかける寸前で、美也が先に口を開いた。

美也「わけあって、というのはどういうわけなんですか~」

まつり「え?」

美也「まつりちゃんの不老。可憐ちゃんは間違った錬金術の結果と捉えていますが、それが第三者から受けた呪いでないとは限らないですよね~?」

と、美也がそこで貴音に目配せをする。それを受け、貴音がつなぐ。

貴音「不老の呪い……なるほど、そういう見方もできましょう。いずれにせよ貴女はまだ詳細を語っておりません。黙っていては、弁解もできないでしょう?」

朋花「ええ、お話していただきましょう。過去に何があったのか」

千鶴「可憐……。つらいでしょうが、まつりの話を聞かないとですわよ」

千鶴が床で蹲り泣き続ける可憐の背をさする。中腰で立ち続けるわけにもいかず、可憐同様、床に膝をつける千鶴だった。
70 : Pくん   2022/07/02 09:56:12 ID:bTQKyooGig
まつり「長々と話すつもりはないのです。まず3つの事実を受けとめてほしいのです」

エレナ「3つの事実?」

恵美「それってなに……」

まつり「1つ目。まつりがミリ・シタの流行り病を知ったのは、それが教会の支援によって収束した後だったのです」

朋花「シーカさんと出会った後、長居をしなかったと?」

まつり「そうなのです。当時、まつりは各地を転々としていたのです。ざっと計算し、記憶を辿ってみると……流行り病が猛威をふるっていた頃は、ここより遥か遠方の地でスペースチュパカブラの侵略を阻止していたのです」

千鶴「荒唐無稽ですわね」

まつり「でも、事実なのです」

美也「ということは、当時のまつりちゃんはミリ・シタを救うことができない環境下にいたということですな~?」

まつり「……そうなるのです」

千鶴「あの、2つ目に行く前に、なぜミリ・シタを訪れたのかを訊いても?特に目的のない旅行でしたの?」

まつり「それはそのまま2つ目の事実に繋がるのです」

エミリー「というと?」
71 : 魔法使いさん   2022/07/02 09:56:25 ID:bTQKyooGig
まつり「まつりは、可憐ちゃんの伯祖母にあたるのです」

エレナ「??」

朋花「まつりさんは、可憐さんのおばあ様のお姉さんということですか~?」

エミリー「どひゃぁあ!!」

恵美「言い換えたら、可憐の両親にとってのおばさんってこと?!」

美也「よくわかりませんが、まつりちゃんはおばあちゃんなんですね~」

まつり「ぐぬぬ」

貴音「シーカと会った日、貴女がこの街を訪れたのは実の妹に会うためだったというわけですか」

まつり「そうなのです。でも……直接、会うことはなかったけどね」

恵美「どういうこと?」

まつり「その時には既に妹の息子が結婚していたのです。妹の旦那さんはいなかったけれど、妹と息子夫婦3人で仲良く暮らしているのをまつりは遠めから見たのです」

千鶴「えっと……可憐から聞いた覚えがありますわ。可憐がともに暮らしていた父方のおばあ様の配偶者、すなわちおじい様は別の街で早くに亡くなってしまったのだと」
72 :   2022/07/02 09:56:44 ID:bTQKyooGig
貴音「まとめましょう。貴女はこの街を、妹の様子を確認するために訪れたことがある。が、その幸せそうな様子を遠目から見ただけで声はかけなかった」

まつり「……否定はしないのです」

貴音「その時にシーカに出会ったのはまったくの偶然ですか」

まつり「それも否定しないのです。ただ、敢えて言うなら錬金術士というのは惹かれあうものなのです。だから、あの日の巡り合いも必然と言えるのです」

美也「けれど、まつりちゃんはシーカちゃんに本を渡しただけで彼女を弟子にしていませんよね~」

まつり「それはそうなのです。なにも、各地で素質のある子に声をかけまくっていたわけではないのです。まつりは……この身体になってからは、基本的には孤独に身も心も置いていたのです」

恵美「ねぇ、前提としてさ。まつりが妹さんと一緒に暮らしていなかったのは、妹さんは不老ではなかったのが原因なわけだよね?」

まつり「……。たとえば―――不慮の事故、誰かからの呪いでまつりが不老となったのなら、もしかすると妹はずっと傍にその命尽きるまでいてくれたかもなのです」

エレナ「エ?その言い方ってつまり、まつりのフロウの理由って、事故や呪いじゃないってこと?」

まつりは曖昧に首を振ったが、直後、溜息を堪え、そして「3つ目の事実に繋がるのです」と言った。
73 : 我が下僕   2022/07/02 09:57:11 ID:bTQKyooGig
まつり「私が……」

皆の顔、下を向いている可憐以外の表情を見て、一度は目線を合わせて切り出す。まつりが「私」という一人称を使うのが彼女なりに、誠意をもって過去を話すためなのだと一同は感じ取った。

まつり「私が望んで不老になったのではないのは確か。でもね――――この身体が私の罪と罰であるのも確かなんだ」

ゆっくりと可憐が顔をあげる。上がりきると、それを待っていたかのようにまつりは続きを話し始めた……。




つづく
74 : あなた様   2022/07/02 09:58:58 ID:bTQKyooGig
更新は一旦ここまで
次回はなるべく早くに

まつりの過去編はサクッと書いて、可憐と和解(?)して、決戦してエンディング!って感じになりそう

ちなみにラスボスはアイドルでもなく事務員でもない、ようはアイマス関係ない無生物になりそう


何卒最後までお付き合いください!
75 : プロデューサー様   2022/07/03 08:04:56 ID:Zyj6tEjP/Q
おつ
流石にフェスティバル・トクガワは伝言ゲームでの変わ方じゃないよね
間にロコが噛んでるに違いない
76 : スレ主   2022/07/08 11:03:53 ID:4mn.FRrPSM
今日か明日には続きを更新したい所恵美です!にゃはは……
77 : ハニー   2022/07/10 04:21:33 ID:C7muPk81ic
かなり短いですが更新します
まつりが皆に過去を明かす場面からです
78 : 我が下僕   2022/07/10 04:21:49 ID:C7muPk81ic
まつり「今から76年ほど前、私はとある小さな島国で生まれた」

貴音「島国?その名は?」

まつり「言ってもわからないと思う。大都市の専門家が発行しているような地図であっても載ることのないような、いわゆる地図にない島―――エド。それが島の名であり国の名前だった」

朋花「そのエドでまつりさんは家族と暮らしていたのですね~」

まつり「うん。いちおう、お姫様だった」

千鶴「お、お姫様!?」

美也「なんと~、この劇中では本物のお姫様なんですな~」

エミリー「いちおうというのは?」

まつり「エドの皇族というのは形だけで実際に支配力があり、統治していたわけではなかったから。かつてはそういう時代もあったそうだけれど」

恵美「う~ん、まぁ、島の歴史は長くなりそうだから、いいかな。ね、それで何があったわけ?」

エレナ「そうそう、ダイジな部分、教えてヨ!」
79 : Pさん   2022/07/10 04:22:08 ID:C7muPk81ic
まつり「私が11歳のとき、エドに異邦人がやってきた。ほとんど漂着したと言ってもいい有様で、最初に発見したのは私の母。多少、議論があったみたいそうだけれど、最終的にうちでその人の面倒をしばらくは見ることとなった」

まつり曰く、そのような漂流者というのはエドの歴史上、片手で数えられる程度にしかいないらしい。
地図にない島、その理由というのは特殊な海域と島を覆う霧、それらがある種の魔法らしき作用をもって、外界と島とを隔てていた。つまり交易というのもないし、そもそもできない環境下であった。
ひょっとしたら、かつて高名な魔法使いが、わけあって人の世から姿を消すために島を利用したのかもしれない。そしてまつりたち島の皇族というのはその魔法使いの子孫にあたる……そうしたエドの歴史も設定しはじめると長くなりすぎるので省略させていただく。


まつり「その漂流者は錬金術士だった。しかも、可憐ちゃん含めてまつりがこれまで出会った中で最も優れた錬金術の使い手だったんだ」

貴音「ふむ……エドに来ることができたのも、錬金術のおかげということなのでは?」

まつり「うん。その錬金術士は世界を旅していたの。若い頃はどこかの宮廷でその名を馳せていたみたい。でも老いて、世界のことをもっとよく知りたくなったんだって」

エレナ「その気持ちはなんとなくわかるナー」
80 : プロちゃん   2022/07/10 04:22:29 ID:C7muPk81ic
朋花「察するに、まつりさんはその錬金術士に師事することとなったんですね?」

まつり「そう。その錬金術師は島にきてから、ほんの一カ月で島中の問題を次々に錬金術で解決していった。当然、錬金術を教えてほしいという人もたくさん出てきたの」

しかし島に暮らす765人のうちで錬金術の素養があったのは、まつりただ1人であった。
年老いた錬金術士は島に漂着してすぐに、どうにかして島から離れることを考えていた。自分が骨をうずめる地はここではないと。
錬金術士は島から出るための道具を調合するのに、必要な材料を集めるための時間を多く要した。そのなかでまつりを最初は手伝いをしてくれる少女にしか見ていなかった。
だが、まつりに錬金術の素養を見出すと考えは変わる。長年、錬金術を修めてきた者として、世界を旅している間に弟子をとろうとしたこともあったが、うまくいった試しがなかった。
その錬金術士は人に何か教える才能には恵まれなかったのだった。加えて言うなら、その性格というのも、錬金術という摩訶不思議な術をその心身に深く浸してきたからだろう、偏屈といっていいものであった。

当時のまつりの理解が及ぶところではなかったが、その錬金術士がまつりを弟子として認めた最大の理由というのは、まつりの錬金術士の素養にあるのではない。
言ってしまえば、まつりが超のつく美少女であったからだった。
悲しいかな、その錬金術士はそのような美少女に慕われること、教えを乞われることなどそれまでの人生で一度もなかったのである。それで半ば有頂天になってまつりをに己が極めてきた道を教えるのを決意したのである。
81 : そこの人   2022/07/10 04:22:46 ID:C7muPk81ic
まつり「私が17歳になってすぐの頃に、ついに私とその錬金術士は島の外に安全に出られる道具の調合に成功した」

年老いた錬金術士はまつりを実の孫娘のように可愛がっており、共に島の外に出ることを提案した。

エミリー「それでまつりさんは外に?」

まつり「ううん、そうではないの」

エレナ「ン?島に残ったってこと?」

まつり「そう。その錬金術士さんも断られることはわかっていたみたい」

まつりが外界に興味がなかったわけではない。しかしそれよりもエドのことを、家族や島の人たちのことを愛していたから、外に出ることは選ばなかった。
錬金術士は2つ言い残した。
1つは、今後はまつりがエドの錬金術士として島の人たちを助けていかねばならないということ。
そしてもう一つは、その錬金術の力を決して道理に外れた目的で使ってはならないということ。
82 : Pさん   2022/07/10 04:23:01 ID:C7muPk81ic
まつり「でも…………」

まつりは沈黙する。エミリーが不安そうに見やり、それから彼女の隊長へと顔を向けた。
貴音は頷き、まつりに問う。

貴音「でも、なんですか?」

まつり「………。結局、2つとも守れなかった」

千鶴「! それではあなたは錬金術を、道理に外れた目的に?」

まつり「そのとおりだよ。ただ、そうだとわかったのは後になってからだった」

美也「それって、最初から不老を求めたのではないということですよね~?」

不老というのが人道の外にあるのは、誰もが知るとおりである。無論、それを求める人が少なからずいるのもだが。
83 : ご主人様   2022/07/10 04:23:16 ID:C7muPk81ic
可憐「師匠は……」

それまで黙っていた可憐がゆっくりと立ち上がる。肩を貸す千鶴。

可憐「いったい何を望んだのですか?れ、錬金術で何をしようとしたんですか……?」

まつり「些細なこと、うん、私にはそれがそんなにも困難だとは思っていなかったの」

朋花「まつりさん、今はもったいぶる状況ではないでしょう。あなたの弟子のためにも」

可憐「………」

まつり「私は――――」





まつり「妹にも錬金術を行使できる力を与えようとした。姉である私と同じ錬金術士になりたい、妹のその願いを叶えようとしたの」
84 : der変態   2022/07/12 08:12:51 ID:HsIJFekh7o
まつりの妹は可愛かった。
そりゃあもう姉に勝るとも劣らずの美少女であった。
小さな島国であるエドにとって、その2人の姫君こそが宝であった。
似つかわしい王子様が現れないことだけが悩みだった。

しかし姉の知らぬところで妹は劣等感を募らせ続けていた。

錬金術である。


島の人口がちょうど1000人に到達した年、まつりは18歳になった。
まつりは溺愛してやまない妹がこの頃様子がおかしいことに気づいていた。
わけを話すように言っても拒まれてしまう。
両親は反抗期なのだろうと、まつりからしてみれば楽観視していた。

例の錬金術士が島を去り、代わりにまつりが島の錬金術士としての役割を立派に果たし始めて1年。
まつりの妹の劣等感は姉に対する拒絶反応に変わりつつあった。
表立って姉を傷つけるような真似をしなかったのは、1つに姉への畏れがあり、1つに揺るぎない愛情があったからだろう。

それでも妹が錬金術が使えないことには変わりない。歴然とした事実が妹を打ちのめし続けた。
そして……
85 : Pはん   2022/07/12 08:13:01 ID:HsIJFekh7o
まつり「妹の誕生日。私はめっきり話さなくなってしまった妹に贈り物をした。けれど、気に入るどころか、錬金術で調合されたその特別なお守りを彼女は私が見ている前で砕いてしまった」

恵美「そんな……」

まつり「でも私はめげずに、訊いた。何がほしいのか、何が望みなのか。お姉ちゃんにできることだったら、なんでもするって」

朋花「そして、まつりさんの妹は願ったんですね」

可憐「…………錬金術の才覚を」


まつりが妹に言われて思ったことは、単純だ。
どうして早くそのことを閃かなかったのだろう?という自問であった。
まつりは島を去った師が、島中で自分にしか錬金術の素養がないと断定したものだから、妹に望まれるそのときまで、どうにかして錬金術の素養を後天的に開花させるという考えをもたなかったのである。
師匠はそうした方法の有無からして、何も話してくれなかった。でも、それができないなんてことはない、とまつりは信じた。


まつり「可憐ちゃんにも話したとおり、錬金術の素養というのは血筋に依る部分が大きい。それなら、私に使えて実の妹に使えないほうが不自然で、道理に合っていないと、その時になってようやく感じたの」

貴音「―――とはいえ、必要なのは血筋だけではないのでしょう?」

まつり「そう、そのとおり。もっとよく検討し、調査して、考察してみるべきだった。それで正解が得られたかはともかく、錬金術の行使というのがあまりに特別な才能であるのには気づけたはずだった……」
86 : おにいちゃん   2022/07/12 08:13:28 ID:HsIJFekh7o
錬金術を行使できない人間にその能力を与える。
そのような道具を調合しようと決めてから半年が過ぎ、まつりは19歳となった。
結果は実らず、まつりは自身の無力さを思い知り、妹に幻滅されているとも感じた
姉が妹との約束を違えたことなどこれまで一度もなかったのである。

幸か不幸か、結果からすればそれは後者であったが、まつりは類まれなる錬金術の素養をもっていたのみならず、エドという国、その島が大本を辿れば錬金術に行き着く史実がまつりに、妹の願いを諦めさせなかった。
エドは錬金術によって作られた人工島であったのだ。そのことに師が気づいていたのかまつりにはわからない。まつりが思うに、気づいたうえで沈黙を選んでいたのだろう。
調合に明け暮れるある日、まつりは偶然にも家、すなわちエド皇族のお屋敷のなかで、妹の夢をかなえる手がかりを見つけてしまう。
それは記録。錬金術によってのみ解読可能な書物であり、それがエドの成立経緯を示していたのだった。そしてそこには、師から教わらなかった調合術もあった。
それこそが、錬金術の真理に触れる道具への誘いであり、破滅への一歩ともなった……。
87 : Pさぁん   2022/07/12 08:13:37 ID:HsIJFekh7o
エレナ「zzzz……」

千鶴「エ、エレナ!こんな大事なシーンで眠ってはいけませんわ!」

朋花「まつりさんの妹さんが願ったこと。それは錬金術を行使できる力、ですがそれは想像していたよりもずっと、実現が難しいものだった」

美也「けど、試行錯誤を繰り返す日々のなかで、見つけた書物でまつりちゃんは知ったんですね。エドが人工島でそれは錬金術によって作られたものであること、そしてそれと関連して、錬金術の真理と呼べる何かに近づく調合品のことを」

可憐「話を追うに……まつり師匠は、その錬金術の真理に触れることで、妹さんが錬金術が使えるようになるって思ったんですよね」

エミリー「その道具って何だったんですか?」

まつり「鍵だよ、真理の鍵。真理の扉を開くための。でもね、もうわかっていると思うけど、失敗しちゃったの」

恵美「それで、どうなったの?」
88 : 魔法使いさん   2022/07/12 08:13:50 ID:HsIJFekh7o
まつり「エドは水底に沈み、国は滅びた。生き残ったのは私と妹、それからほんの数名だけ」

可憐「え……?」

恵美「ちょっ、ちょっと待ってよ!!なんでっ、そうなるの?!」

貴音「回りくどいのもいけませんが、端折りすぎではないのですか?」

エレナ「zzz……むにゃむにゃ。マツリが調合したっていうシンリのカギってのは、錬金術で作られた島を元の素材にでも戻しちゃったってことなのカナ?」

美也「なんと~。眠っていながら話を聞いて理解し、推測できるなんてエレナさんはすごいですな~」

千鶴「どういうことですの!?」

朋花「自然界にある理を歪めて、万物を創造してみせる錬金術。その真理に触れることが禁忌であり、厄災をもたらすとしても何らおかしくはありませんね~」

エミリー「ええと、まつりさんが不老になったのもその時なのですか……?」

まつり「気づいたのは後になってからだったけれど、間違いないだろうね。あの光……世界を歪める原初にして終焉なる光を浴びて、私の身体はもはや人ではなくなってしまった」

貴音「妹君は?彼女もまた当事者であるのですから、何か変化があったのでしょう?」
89 : プロデューサー様   2022/07/12 08:14:30 ID:HsIJFekh7o
まつり「それは……」

可憐「師匠。隠し事はもうなしです。そうですよね?」

まつり「っ……。そうだね。妹は……あの子には大きな変化はなかった、と思う」

千鶴「思う?」

まつり「その……私が引き起こした未曾有の災害から、緊急用の転移石を使って私たち数名が何とか島の外に無事に転移できたはよかったけれど、3年足らずで私は妹たちと別れた。だから、その後のこと、えっと、つまりは可憐ちゃんのお祖母さんとしてこの地で亡くなるまでのことはほとんど知らない」

朋花「妹さんと別れた理由は、不老が発覚したからですか」

まつり「それは引き金になったに過ぎないよ。だって、そうでしょう?私が全部……みんなを深い海の底に沈めたんだよ?むしろ少しの間だけでも妹と一緒に行動できたのは、見ず知らずの島の外で安定した生活を送るためには協力する以外の選択肢がなかったから、それだけ」

エレナ「カレンは心当たりあるノ?おばあちゃんが特別な能力あったかどうかって」

恵美「真理の鍵の影響、何もないとは思えないけど……どう?」

可憐「どうだろう?わかるのは、私が生まれたときから、おばあちゃんはおばあちゃんで、最期までそうだったってこと。もしも何か人と違うところがあったって、そんなの……もう、些細なことだよ」

千鶴「可憐……」
90 : Pサマ   2022/07/12 08:14:45 ID:HsIJFekh7o
まつり「付け加えておくことがあるとすれば、私は既に錬金術としての力をほとんど失っているということかな」

千鶴「ええーっ!?そうなんですの?!」

可憐「そんな気はしていました……」

千鶴「どひゃぁっー!! 平然としているっ、さすがはわたくしの妹ですわー!」

エレナ「チヅル、落ち着きなヨー」

可憐「培ってきた知識と経験はそのまま、でも錬金術を行使することはもうできないんですよね……?」

まつり「……うん」

可憐「し、師匠は一度だって実際に私の目の前で調合したことがありませんでした……ただのめんどくさがりにしては、師匠が口頭で教えてくれるその姿、眼差しは真剣すぎましたから」

貴音「ついでに訊いておきましょう。その身体、不老とはいえ弱まってきているのではありませんか」

朋花「貴音さん、なぜそう思うのですか?」

貴音「あのフェスティバル・トクガワだというのならば、動きが悪いですから」

恵美「えー、いや、それはあれでしょ、あくまで伝説は伝説で……」

まつり「銀髪ちゃんの言うとおりなのです。まつりのこの身体は、かつてほど強靭ではないのです」

美也「なんと~」

まつり「思えば、シルバーブレードと黒龍を退治していたあの頃が全盛期だったかもしれないね」

貴音「! なるほど、私のおばあ様とは戦友であったのですね……ようやく理解が追いつきました」

エレナ「前スレで、ちょろっと出てきた名前なんて覚えていないヨー!」
91 : そこの人   2022/07/12 08:14:59 ID:HsIJFekh7o
朋花「話をまとめてみましょう~」


【まつり姫の秘め事】
その正体は2年前に亡くなった可憐の祖母の姉。
地図に無い島、そして今や海底に沈んだ島国エドの生き残りにして、お姫様であった。
島に残された錬金術の奥義書を解読して、真理の鍵を調合し、妹の願いを叶えようとするも失敗に終わる。
以来、不老の身体となり、世界各地に武勇伝を残す。これはまつりにしてみれば、一種の贖罪の軌跡でもある。
ミリ・シタには流行り病が起こる以前に、一度訪れており、幸せな家庭を築いた妹を遠目に見るのみで会いはしなかった。
幼かった頃の詩花に錬金術の素養を見出し、旅路で収集した錬金術関連の書籍を一冊譲渡している。(これ、妹さんが知ったらどう思ったんだろう……)
不老の身体とはいえ、年々、衰弱しておりかつては神殺しとまで謳われた天下無双の体術を披露することは今では無理なようだ。
そもそも、真理の鍵の効果とまつりの不老とがどういった関係にあるか不明。おそらく本編完結に至っても明かされないだろう。
こじつけるとすれば、水底に沈んだエド、そこに暮らしていた千人前後の人間の魂、その寿命というのをまつりがある意味で吸収したという事態なのかもしれない。
まつりが魔法学等々、多種多様な知識を持ち合わせているのも勉学の賜物以外に、そうした島に生きていた人の智を文字通りその身に刻んでいるからなのだろうか。
92 : Pさん   2022/07/12 08:15:13 ID:HsIJFekh7o
まつり「大丈夫だよ、可憐ちゃん」

可憐「え?」

まつり「このタルタロスの調査が終わったら、うん、ミリ・シタの未来を救うことができたなら、私はこの街を離れるから」

千鶴「それって――――」

まつり「私は可憐ちゃんと違って、錬金術を正しく使えなかった人間。私は罪人であり、紛うことなき悪。失われた命、島をして、この事実は決して覆らない。私はこの身が朽ち果てるまで、罪滅ぼしのために世界をめぐる。その覚悟はできているから」

朋花「………」

エレナ「マツリ……ワタシはいつもの頭ふわふわな話し方のほうが好きだヨ?」



可憐(まつり師匠……私は……)




つづく
93 : 5流プロデューサー   2022/07/12 08:15:51 ID:HsIJFekh7o
次回は早ければ明日にでも
遅くとも明後日の夜には
94 : プロヴァンスの風   2022/07/12 13:36:55 ID:.Q6zyAc5bQ
おつ
いよいよクライマックスかな
95 : プロデューサー君   2022/07/13 07:37:20 ID:cCju3iMSLE
明らかになったまつりの素性と過去。
タルタロスの調査後にミリ・シタを去ると話したまつりに可憐は何も返せずにいた。
前スレで貴音は、まつりが今回の調査より前にこのタルタロスの存在を知っており、何か重大な事実を隠しているのではないかと疑っていたが、そんなことはなかった。
まつりはミリ・シタを二十数年ぶりに訪れ、可憐に亡き妹の面影と錬金術の素養を見出した。彼女に錬金術を教えることに決めたのはある意味で贖罪なのだろうか。
錬金術。それはまつりの妹(可憐の祖母)が望み、得られなかった力だ。
可憐に備わる錬金術の素養こそが、妹が受けた真理の鍵の影響ではないかと、まつりは思いもする。ようするに隔世遺伝めいた効果であり、妹自身は錬金術を使えないまま亡くなったが、その孫娘である可憐には錬金術を使える力が宿ったのだと。
だが、そんなのは実証しがたいことだ。単に神様の悪戯によって可憐に発現した能力かもしれない。
いずれにせよ、まつりが可憐に錬金術を教えていたことが、今回の依頼に役立った。
穢れの神域と呼ばれたこの場所に眠る真実を今、9人の探索者が解き明かそうとしている……。

一同は最深部に向けて探索を再開するのだった。
96 : 師匠   2022/07/13 07:37:34 ID:cCju3iMSLE
- タルタロス B5F 37区画 -


千鶴「また階段?たしかここが地下5階ですから、次で地下6階ですわよね?」

美也「はい~。でも、次が終点みたいですよ~」

貴音「千里眼をもってして、視えるのであれば間違いないでしょう」

美也「ですが、む~ん……この気配、どうも普通ではないですね~」

恵美「ここまで来て、一番最後の部屋に何もなかったら、それはそれで困るって」

エレナ「ねぇ、ちょっと確認していいカナ?」

朋花「なんでしょう」

エレナ「えーっと、みんなで情報をまとめてみたところ、ここでブラックウェル卿が流行り病の治療法を研究していたのは嘘じゃなかったんだよネ?」

可憐「は、はい。彼は協力者と共に街から離れたこの場所で、ど、どうにか流行り病を終結させようとしていたみたいです」

まつり「可憐ちゃんたちが見つけた記録によれば、卿は娘であるシーカによって錬金術を知り、自身にもそれを行使できる力があるのがわかると、それが治療に役立てられないかを模索し始めた」

エミリー「行き着いたのが、賢者の石……だったんですよね」

貴音「その対価は多くの生ける人魂であり、それは天空教会の当時の司祭をシーカが説得して、得たものだった」

恵美「ようはさ、生贄にしたってことだよね。ここまで来たら遠回しに言ってもしかたないよ」
97 : Pはん   2022/07/13 07:37:46 ID:cCju3iMSLE
可憐「でも……調合した賢者の石―――それは不完全なものだったみたいだけれど―――は特効薬の製造ではなく、シーカさんの願いを叶えるために使われた」

貴音「失った大切な人を取り戻すために、ですね」

美也「その願いの結果が、私たちが出くわしたあのウミウシさん……」

誰も口にせずとも、感じていた。この一連の出来事がまつりの過去と根本は似通っていると。
まつりもシーカも錬金術の可能性を信じて、しかし結果としてより大きな喪失を招いた。

エレナ「ブラックウェル卿は、そのウミウシさんにやられちゃったノ?」

朋花「どうなんでしょうか。卿は封じ込めるためにスラグたちを調合して、現に封印は一時的に成功していたわけですし」

可憐「言われてみれば、卿の最期は謎のままだね。の、遺されたメモ書きからすると、たしかにあのウミウシとは対峙しているようだけれど……」

エレナ「案外、助かってここを出て、別の街に移って今も生きているなんてこともあり得るのカナ?」

貴音「いえ、それはないでしょう。流行り病の治療法を追い求めた人物。無責任にここを放棄したうえで、街に住む人々に何も知らせずに離れるなど、行動原理に合いません」

恵美「それじゃ、やっぱり……?」

まつり「遺体は発見できていないのです。可憐ちゃんたちの戦ったウミウシさんとやらが、全部丸飲みにしていたとしてもおかしくはないけれどね」

可憐「あるいは……地下深くに逃げ込んだ」
98 : 我が友   2022/07/13 07:38:01 ID:cCju3iMSLE
千鶴「前スレで触れていたとおり、ここは研究施設としてある前に、遺跡なのですわよね?」

まつり「ここまでの探索で得た資料をもとにすると、ブラックウェル卿たちは遺跡の全容を解明してはいないようなのです」

朋花「感染の進む街から離れて、秘密裏に人道から外れた研究にも打ち込める場所としてここが選ばれただけなのでしょう」

可憐「穢れの神域………」

貴音「司書(※百合子のこと)が探し出した書物にあった名前でしたか?思えば、深部に至ってなお、ここにそうした神性も穢れも感じませんが」

エミリー「かなり無機質な雰囲気ですよね。卿たちが研究をする際に手を施したのでしょうか」

エレナ「一生懸命、クリーニングでもしたってこと?」

美也「可憐ちゃんはこの階段の下にどういった気配を感じますか~」

可憐「え?くんくん………美也さんの言うとおり、普通ではない何か。けど、よくわかりません」

千鶴「やれやれ、結局のところ、わたくしたちにできるのは進むこと。下りてみるしかないのですわね」

恵美「ま、そういうことだね、にゃはは」
99 : プロデューサーちゃん   2022/07/13 07:38:14 ID:cCju3iMSLE
- タルタロス B6F 39区画 -


それまでよりも長い階段を降りると、薄暗いだだっ広い空間が広がっていた
そして部屋の中央には――――


可憐「これは………えっと、な、なに?巨大な、銅像?」


可憐たちを迎えたのは、人の形を模した巨大な像であった。
拘束具らしき装置が全身に繋がれている。

エレナ「ねぇ、これってガン○ム?」

千鶴「モビルスーツってやつですの!?」

可憐「ふ、2人とも世界設定をぶち壊すようなこと、い、言わないようにしましょう……?」

美也「今更ですね~。ええと、目測で7.65mぐらいでしょうか~」

朋花「迂闊に近づかないようにしましょう」

貴音「! 皆、あれを見てください」

部屋の隅に「それ」はあった。


まつり「あれって……白骨死体?」
100 : そこの人   2022/07/13 07:38:28 ID:cCju3iMSLE
一同は貴音が見つけた白骨死体の元へと近づく。

エレナ「チ、チヅル~」ギュッ

千鶴「エレナ? 今まで魑魅魍魎と戦ってきたではありませんの。人骨ぐらいで怖がってどうしますの」

エミリー「着ている服からすると、この骨は……」

恵美「ずいぶんと身なりいいよね。もしかして、この人が?」

貴音「ふむ。では、失礼して」

貴音が人骨と身につけているものを検分する。
天空騎士団の第四部隊の巡礼者として、殺人事件の捜査にもあたったことのある貴音だ。
貴音とミステリは合いそうやね。探偵役でも犯人役でも。


貴音「……? これは手紙?」

まつり「遺書なのです?」

可憐(師匠の口調が戻っているのは仕様です)

朋花「読んでみましょう」

美也「では、私が黙読しますよ~」

恵美「音読しようよ!?」

エミリー「あ、あの! 蝶々騎士様だとゆっくりすぎるかと。ここは錬金術士様が読まれるのが筋ではありませんか」

可憐「えっ、あ、うん。そうだね、そういう流れだよね……」
101 : ごしゅPさま   2022/07/13 07:38:43 ID:cCju3iMSLE
果たしてそれは、タカーオ・ブラックウェルの遺した手紙だった。
震えた筆跡で記されていた内容の大部分は、後悔であった。
初期段階で治療法を確固たるものにしていれば、より安価な薬品の製造に努めていれば、ずっと仕えてきてくれたレオンをもっと気に掛けていれば、愛娘であるシーカと本心での会話を何度も重ねてさえいれば……。
いっそ錬金術に出会っていなかったのなら、その言葉はまつりに響く。もしもあの日あの時あの場所で、師に会わなければ、錬金術を知らなければエドは今でも存続し、まつりと妹の2人の姫君のもとで繁栄の時代を築いていたかもしれない。


まつり(でも……)

手紙を読み続ける弟子の顔をまつりは見つめた。

まつり(それは可憐ちゃんたちとも出会わなくなるということ。この魂と身体は既に罪で染まっているけれど、それでも私はこの出逢いを、短かったけれどミリ・シタでの日々を大切に想う。妹が生涯の幕を閉じたこの地で、その孫娘と会えて、私は嬉しい。可憐ちゃんも……そう感じていたら嬉しいけれど)



可憐「『終わりになったが、今、手紙を読んでいるあなたたちの前にそびえる巨像、それこそがこの遺跡の真実であると私は判断した』」

エレナ「手紙を持ち帰ってから読んでいたら困っていたね」

千鶴「まず読み手が現れるかどうかから問題ですわよ」

朋花「この遺跡の真実……?」

可憐「『かつてここは穢れの神域と呼ばれた場所であると、我が屋敷の蔵に残っていた古い書物にあった』」
102 : バカP   2022/07/13 07:38:59 ID:cCju3iMSLE
タカーオは、可憐たちが知らない部分、憶測しかできなかった穢れの神域について、彼が見つけた書物で知り得た話を簡潔に綴っていた。
皇国時代、この地での戦争に高位の呪術師が参加し、その者はこの土地に根付いていた神を呪術で支配し、使役してみせたのだという。
しかしその神をもってしても強大な魔術には打ち勝てず、この地の神は消滅し、穢れだけが残ってしまう。
皇国時代はこのような出来事がそこらかしこで起こっていたという。古代には神は不可侵であったのが、皇国時代においては高位の魔術師連中の契約相手となり、それは武器や人と一体化することもあった。
タカーオ曰く、例の流行り病の起源というのも、戦時に魔術師ないし呪術師が特定の動植物にかけた魔法や呪いにあるという。

可憐「『この地下何層にも及ぶ空間は、神域の民たちが地上の穢れから逃れるために作った一つの都市であるようだ。彼らは神が消えてなお、この地を離れることはできなかった。最初はほんの地下一階、二階でしかなかったのが、年月をかけて地下深くへと生活圏を広げていった』」

貴音「地下帝国の誕生といったところでしょうか」

恵美「にしては、狭いけどね。人もそんなに多くはいなかったんじゃない?」

エミリー「それよりも気になるのは、そうした都市の痕跡が卿たちが研究目的で踏み入れた時にはなかったらしい、ということですよね」

美也「時代に開きはありますよね~。皇国崩壊の戦争というのが390年ほど前で、それが終戦してからここに地下都市が形成されてどれぐらい維持されたのか……」

千鶴「そして何をきっかけに無に帰したのか、ですわね」

可憐「………」

朋花「可憐さん?」

音読をやめた可憐の顔は青ざめていた。それはちょうど、あのツヴァイグランツと対峙したときを思い起こさせる。
103 : レジェンド変態   2022/07/13 07:39:31 ID:cCju3iMSLE
まつり「地下都市の民たちに何があったのです?」

可憐「ブラックウェル卿はこう書いています。『彼らは地下にいたがために戦争が終わったのを知らなかったのだろうか、それとも知っていても復讐を諦めなかったのだろうか』」

貴音「復讐?」

エレナ「ふーん、ひょっとして、地下でせっせと地上の敵をどかーんってするためのヘイキでも作っていたノ?」


まつり・朋花・美也「!!!」

エレナの言葉に3人は一斉に同じ方向を見る。
エミリーは首をかしげ、貴音は黙り込み、千鶴はお腹を鳴らした。


可憐「『結論を言おう。その巨像を壊してくれ。それはまだ生きている。時が来れば動き出し、ミリ・シタは流行り病以上の厄災に見舞われることとなる』」

エレナ「エエーッッ!?!??!!?」

可憐「『そうだ、終末の日を迎えるのだ。おそらくは稀代の錬金術士が作ったのだろう、その機械仕掛けの巨神兵こそが神域の民をすべて葬り去ったに違いない。失敗したのだ、彼らは。御することのできない力がすべからく破滅を招くものなのだ』」

千鶴「ぬ、濡れ衣ではありませんこと?」

可憐「『拘束具をもってしてギリギリの状態で封印されているが、いつ目覚めるかはわからない。シーカとそしてほとんどの協力者を失い、たどり着いた先でこのようなものと出会ってしまうとは、絶望しかあるまい』」
104 : 箱デューサー   2022/07/13 07:39:45 ID:cCju3iMSLE
朋花「ギリギリの状態で二十年近くもっているとすれば、それはもうギリギリではないのでは?」

美也「なんと~」

まつり「よく見て。拘束具のいたるところにひび割れが生じている」

貴音「やるしかないのですね」

可憐「『未来に希望を託す。それが過去に取り返しのつかない失敗をし、もはや息絶える寸前の人間が唯一できることだ』……師匠」

まつり「え?」

可憐「この巨神兵もまた錬金術の負の遺産みたいです」

まつり「………うん」

可憐「それなら、今を生きる錬金術士が責任をもって打倒さないといけない。………ですよね?錬金術は世界を変える……未来を作る力なんですから」

ぎこちない微笑みを可憐がまつりに向ける。まつりは目頭が熱くなると共に、思わず抱きしめたくなるのを抑えて、肯いた。
105 : P殿   2022/07/13 07:39:57 ID:cCju3iMSLE
千鶴「最終決戦ですわね」

朋花「ええ、ここで負の因果を断ちますよ~」

エミリー「若干の説明不足があるでしょうが、脳内補完でお願いしましゅ!」

恵美「やってやろうじゃん、これが本物のジャイアントキリングってね!」

エレナ「先手必勝だヨー!」

貴音「地下都市の民を葬り去った巨神兵、相手にとって不足はありませんね」

美也「終わり良ければ総て良しですな~。みんなで力を合わせて倒しましょう~、お~!」

まつり「この像からは穢れを感じないのです。ううん、何も感じないのです。きっと目に映るすべてを壊すだけの存在なのです。そんなの悲しすぎるのです……」

可憐「みなさん、構えてください。オペレーション・ヴァルキュリア開始です!」



可憐たちのたたかいはこれからだ!
106 :   2022/07/13 07:42:05 ID:cCju3iMSLE
一旦ここまで
なるべく今日中にはラスボス戦開始します

補足しておくと、地下都市の民の亡骸は生き残り=巨神兵をどうにか拘束して封印した人たちによって埋葬されたか、そもそも巨神兵によって跡形もなく消滅したかだと思います
エミリーに言わせたとおり、脳内補完でお願いしまっし!


何卒最後までお付き合いください!
107 : Pしゃん   2022/07/13 19:02:55 ID:cCju3iMSLE
再開します
ご協力お願いします



イベントバトル:甦る悪夢と錬金術士の覚醒

勝利条件
機械仕掛けの巨神兵の耐久値を0にする

敗北条件
可憐たち全員が戦闘不能状態となる


※これまでどおり投稿時刻秒数を使用
※1ターンはDEFENSE PHASEとOFFENSE PAHSEで構成されている
※安価3レスが揃うまでは、3~6時間(目安)に一度、スレ主自身がレスする
→遅くとも半日程度で1フェイズ、一日で1ターンは進めたいということ
※あまりにグダるようであれば数値の倍率等を後から変更しサクサク進行する
108 : Pサマ   2022/07/13 19:03:10 ID:cCju3iMSLE
エネミー情報

機械仕掛けの巨神兵
耐久値????


可憐「あの……何もわからないんですけど」

まつり「目覚める前に、ぶっ壊してしまうのですっ!」

千鶴「チェーンソーで真っ二つですわ!」

朋花「決戦を前に所持していた回復アイテムで皆が全回復済みです。全力で行きましょう」

エレナ「ラストバトルのはじまりだヨー♪」
109 : プロデューサーちゃん   2022/07/13 19:03:44 ID:cCju3iMSLE
TURN0 OFFENSE PHASE
【安価→直下3レス分の投稿時刻秒数にて判定 自動判定】
※00は0ではなく60として扱う

攻撃基礎値=3レス総和×39 上限9000
補正値 3レス総和が50以下の時+76  51~100以下の時+39
条件を満たすことで追撃が発生!

・いずれかが二桁の3の倍数
→百花繚乱の舞 総和+20 

・いずれかが素数
→魚座の誓い 倍率+1

・偶数が2つ以上かつ同じ数値がない
→双子姫の饗宴 総和+40 

・いずれかが7か11の倍数
→闇夜の眷属の調べ 倍率+2

・最小値と最大値の差が20未満
→晴天の嵐 総和+55

・中央値が5の倍数かつ45以下
→天の川銀河の煌めき 倍率+3

・すべて奇数
→シリウスの陣形 倍率+4

・値の大小が1<2<3を満たし、かつ4の倍数を含む
→ダイヤモンドノヴァ 総和+80

・3レス平均が38~41かつ最小値が1桁
→マイペースビッグバン 倍率+8

☆上記の9項目いずれも満たさない場合、固定値3900


何卒ご協力お願いします!
110 : バカP   2022/07/14 00:49:43 ID:S.vs8tN5nM
自レスっと
111 : 我が友   2022/07/14 06:59:48 ID:S.vs8tN5nM
自レスー
112 : 我が友   2022/07/14 07:11:55 ID:m0v4fZy/rY
おっと続き来てた
ラストバトルのはじまり!
113 : 師匠   2022/07/14 09:37:21 ID:RtkKzdqZMU
副業中なので判定だけ
(43,48,55) 総和146

146+20+55+80=301
倍率は割愛

与ダメージは上限値9000で計算
甘すぎたのではなく、まさか自分で40後半を連続でとるとは予想外だったんですわ…
続きは遅くとも明日の夜には
114 : 夏の変態大三角形   2022/07/15 19:04:33 ID:ZN/rDbQB5U
再開します

可憐たち9人のそれぞれの奥義が炸裂し、深い眠りにつく巨神兵を破壊する……っ!!
たかだか地上3階建てに及ばなほどの高さをした機械仕掛けの巨像であるのに、倒れ行くその轟音と壊れていく光景は崩壊と言うに相応しい。
可憐たちはブラックウェル卿の遺言を叶え、彼が最期に未来へ託した希望をしっかりと繋ぎ止め、今、災厄の復活を阻止した――――
埃が舞い、にわかに靄に包まれたその部屋で、誰もがそうであるよう確信していた。

いいや、実を言えば2人。巨神兵の崩壊を目の当たりにしてなお、それがそのまま幸福なエンディングへと続くことはないと予感した人物がいる。
その1人は、まつり。彼女はあの日のこと、エドが沈んでいく様を思い出していた。
転移石があくまで緊急用の代物で、島を出てどこか陸へと転移できるのか、そこが安全であるのか等々、保障らしい保障など皆無であったことも思い返す。妹と他数名しか救えなかった事実、他でもなく自分自身のせいで失われた国と人……。
まつりはそうした暗い過去から、明るい希望をつまりは巨神兵の破壊を簡単には心から信じることなどできなかったのだ。
そしてもう一人………
115 : 師匠   2022/07/15 19:04:55 ID:ZN/rDbQB5U
可憐「くんくん……」

千鶴「可憐?」

可憐「――――みんな、まだだよ」

ザワ……ザワ……

エレナ「ヘ?」

朋花「まさか」

まつり「どうやら、今やっとお目覚めのようなのです」



エミリー「隊長!!」

貴音「狼狽えてはなりません。拘束具ごとその身を粉々にしたと思いきや、よもや……その巨体も拘束具だったとは」

美也「中から現れた一回り小さな、あれが……この地下都市を滅亡に追いやった存在のようですな~」

恵美「ね、ねぇ、思ったことをそのまま言っていい?あれ―――めちゃくちゃ可愛い女の子だよね」

砕かれた巨神兵から姿を見せた真の敵。それは機械仕掛けの美少女だった。
どんななりをしているのかは、各々のご想像にお任せする。
116 : 彦デューサー   2022/07/15 19:05:18 ID:ZN/rDbQB5U
朋花「いい趣味していますね、まったくもって」

まつり「美少女型殺戮兵器だなんて、今日日流行らないのです」

エレナ「言葉が通じそうにないのはよかったのカナ、悪かったのカナ?」

千鶴「宙に浮いていますわよ!?反重力装置を備えていますの!?」

可憐「いくよ、みんなっ。私たちの明日を護るために……!」


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