【SS】はてしないTHE iDOLM@STER
1 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/18 22:46:11 ID:kVGxoUcuNw
SSを書いたので投下します。
いくつか注意点があるので、まずそちらから書いていきます。
425 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:21:49 ID:kh6GGcJ0hc
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426 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:22:27 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「……リーダー? えーっ、プロデューサーさん、『乙女ストーム!』って、未来がリーダーなんですかっ!?」
「そうだよ、翼……ちゃんと連絡したと思うが、マジメに聞いてなかったな……」
「ご、ごめんなさ~い! でも、未来がリーダーなんて、ホントに大丈夫なのかなぁ? 未来は、リーダーできそうなの?」
「……う~ん、改めて聞かれると、よくわかんないかも……」
「え~っ!? いきなり不安になること言わないでよ~っ!  あっ、頭良さそうだし百合子ちゃんがやればいいんじゃないかな?」
「え……あ、あの……思いとどまって、翼! 私は、本が好きなだけで、頭がいいわけじゃ……」
427 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:22:50 ID:kh6GGcJ0hc
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428 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:23:14 ID:kh6GGcJ0hc
 また別のときは、永吉昴、最上静香と組んだユニット「ウィルゴ」として。
429 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:23:27 ID:kh6GGcJ0hc
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430 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:24:02 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「う~ん、難しい……ダンスって、こんなに難しかったっけ~?」
「昴さん、もう休憩時間ですよ? 休む時はちゃんと休まないと……水分補給、どうぞ」
「おっ。サンキュな、百合子……てかさ、オレ達の新曲、なんか難しくないか? 静香はどう思う?」
「わかるわ……スピードについていけないとか、そういうことじゃないんだけど……みんなで合わせるところが、なんだかタイミングが取りづらくて。決めポーズの時に……その、腕が……」
「あっ、だよな! あそこで腕がプルプルしちゃうの、オレだけじゃなかったのか~。なんか安心したぜ♪」
「……それって、あんまり安心してる場合じゃないような……」
431 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:24:29 ID:kh6GGcJ0hc
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432 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:25:01 ID:kh6GGcJ0hc
 そんな中、ふだんは大人しいけれども、ステージ上ではスイッチが入ったようにハイテンションになり、見事なパフォーマンスを披露する、一学年下のアイドル、望月杏奈とは、デュオ曲をもらったり、プライベートでも遊んだりと、特に仲良くなっていった。
433 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:25:16 ID:kh6GGcJ0hc
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434 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:26:21 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「あの、実はプロデューサーさんにご相談したいことがあって。実は、私と杏奈ちゃん、振り付けのことで、ちょっと悩んでるんです」
「……百合子さんと一緒に踊るところ……あるんだけど……まだ、ふたりの動きが、合わなくて……どうしよう……」
「私がダンスが苦手なせいで、杏奈ちゃんが頑張ってくれてるのにちゃんと合わせられなくて。本当にごめんね、杏奈ちゃん」
「……杏奈も、うまくできてない……杏奈、誰かと合わせるのとか、あんまり、得意じゃなくて……ごめんなさい」
「ふたりは、オンラインゲームでは誰よりもうまく連携を取って動いてるじゃないか。オンラインゲームで一緒にパーティーを組、ボスを倒すつもりで、ダンスをしてみたら?」
「ええっ? 確かに、私と杏奈ちゃんは、オンラインゲーム中では、息ぴったりの名ユニットですけど……」
「うん……百合子さんと、クエスト、いっぱいクリアしたよ……ダンスでも、ゲームと、同じこと、できるの……?」
「ふたりがその気になれば、きっとできる!」
「そっか……アイドル七尾百合子が風の精霊戦士lilyknightとして覚醒すれば、この難局を無事に乗り切れるということですねっ、プロデューサーさん!!」
「いや、それはちょっと違うかもしれないが……」
「……百合子さん、やる気になってる……杏奈、ワクワク……してきた」
「杏奈ちゃん、ううん、白の聖剣士vivid_rabbit!! ゲーム内のコンビネーションをダンスに反映できれば、きっとうまく行くよね! 私たちが初めて一緒にあの呪われた魔竜アビスドラゴンを倒したときのことを思い出して!」
「……あのイベントは、大変だったけど、楽しかった……ね。百合……lilyknightさんがアシストしてくれたから……ラストアタック、取れたんだよ……」
「お~い。百合子ー、杏奈ー、ふたりとも、戻ってこーい」
435 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:26:45 ID:kh6GGcJ0hc
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436 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:27:23 ID:kh6GGcJ0hc
 50人が入れかわり立ちかわりステージに立つ劇場は、改築、増築を重ね、ショッピングモールや自前のドーム会場も併設、大型クルーズ船や飛行船まで導入し、ついにはラスベガスや恐竜、古代遺跡などをコンセプトにしたテーマエリアを持つ、巨大なアミューズメントパークへと進化していった。その一方、アイドル達は、全国各地のファンに会いに行く「全国キャラバン」に参加したり、業界最大の祭典「アルティメットライブアリーナ」でライバルと競い合ったりと、劇場外にも活動の場を増やしていく。また、歌やダンスだけでなく、さまざまな企画にも挑んでいた。百合子も、特撮番組に出演したり……
437 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:27:37 ID:kh6GGcJ0hc
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438 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:28:09 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「……えっ、火薬? 盛大に爆発!? スタントなんて聞いてないです! ちょっとカントクさん、カントクさんっ!?」
439 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:28:26 ID:kh6GGcJ0hc
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440 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:28:46 ID:kh6GGcJ0hc
 バレンタインのイベントで、本物のお菓子の家をつくったり……
441 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:29:14 ID:kh6GGcJ0hc
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442 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:29:39 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「プロデューサーさん、見てください! この書斎の本、全部お菓子でできてるんですよ! 中も書いてあるんです。ほとんど、私が書いたんですよ♪」
443 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:29:59 ID:kh6GGcJ0hc
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444 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:30:20 ID:kh6GGcJ0hc
 年末特番のバラエティ生放送でマグロ漁船に乗ったり……
445 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:30:35 ID:kh6GGcJ0hc
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446 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:31:02 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「うぅ……ふ、船って、こんなに揺れるんですね……私、冬の海を、すっかり侮っていました……でも、負けませんからっ……が、頑張ります……」
447 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:31:24 ID:kh6GGcJ0hc
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448 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:32:08 ID:kh6GGcJ0hc
 アイドルとして仕事をする本の中の自身に、百合子はハラハラさせられ通しだった。やたらと体を張っているし、プロデューサーのセンスを疑いたくなるような奇天烈なイベントへの参加も、一度や二度ではない。「THE iDOLM@STER 2」まででも、冗談のような仕事はなくはなかったが、「MILLION LIVE!」はそれ以上に何でもありだった──この世界のアイドル、本当に人間?
 その発想は、親しい友人と話すときの軽口のような、一瞬で消え去るはずのものだった。しかし、今回のお話のクライマックスであろう、50人全員参加の大型ライブ終了後に、まさかの展開が待っていた。
449 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:32:24 ID:kh6GGcJ0hc
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450 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:33:07 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「プロデューサーさん、お疲れさまです! ライブ当日の夜までお仕事なんて、本当にお忙しいんですね」
「仕事ですから。音無さんこそ、わざわざ事務所の鍵を開けてもらって…ありがとうございました」
「私も、これがお仕事ですから♪ あら? プロデューサーさん、おいしそうなもの食べてるんですね?」
「はい、ライブの差し入れの小籠包です。打ち上げに行けない代わりに、もらってきました。レンジで温め直したら、これがなかなか美味しくて……あれっ? なんだか、視界が暗く……うぐっ!!」
「!? プ、プロデューサーさん、どうしたんですか!? そんな、急に倒れるなんて……まさか、この小籠包に何か?」
451 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:33:34 ID:kh6GGcJ0hc
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452 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:34:24 ID:kh6GGcJ0hc
 突如として意識を失ったプロデューサー。心配してかけつけた50人のアイドル達。そのとき、どこからともなく、謎の声が響く。
453 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:34:39 ID:kh6GGcJ0hc
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454 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:35:09 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
(プロデューサーを助けたければ、ミリオンワールドに行き、五つの試練を乗り越えるのです)
(すべての試練に打ち勝ち、五つの小籠包を集めれば、小籠塔への道が開かれるでしょう)
(それ以外、プロデューサーを目覚めさせる方法は、ありません)
455 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:35:25 ID:kh6GGcJ0hc
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456 : Pしゃん   2024/02/22 23:35:54 ID:kh6GGcJ0hc
 ──ミリオンワールド? 五つの試練? 小籠塔?
 戸惑う百合子に、「MILLION LIVE!」は追い打ちをかける。
457 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:36:14 ID:kh6GGcJ0hc
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458 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:36:46 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「ここは観念して本当の姿に戻った方がいい気がするべさ。プロデューサーの命もかかってるしねぇ……」
「そうね。手段を選んでいる場合じゃなさそうなのは確かね……」
「じゃ、細かいことは後で考えるとして……皆、行くよ! せ~の、それっ!」
459 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:37:02 ID:kh6GGcJ0hc
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460 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:37:37 ID:kh6GGcJ0hc
 実は50人のアイドル達は、みんな超常の力を持った人にあらざる存在で、今まではそれを隠してステージに立っていたのだった。春香は悪の女王、千早はセイレーン、美希はピエロ、そして百合子はヴァンパイア──何それ?
 超人的な描写もあったとはいえ、あまりにも唐突なファンタジー路線。百合子はやや呆れつつも、夢落ちか何かだろうと思いながら、指を動かし続けた。進んだページでは、「本当の姿」になったアイドルたちが、ミリオンワールドでの試練に打ち勝ち、小籠包を集め、小籠塔を登っていた。そして、その最上階。
461 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:37:58 ID:kh6GGcJ0hc
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462 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:38:23 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「みんな、お疲れさま! よく、この螺旋階段を登ってこれたわね。ふふ……びっくりした? なんと! 謎の声の正体は、765プロの影のボス、音無小鳥でした♪」
463 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:38:39 ID:kh6GGcJ0hc
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464 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:39:24 ID:kh6GGcJ0hc
 小鳥によると、この先、「本当の姿」に戻って生きるならアイドルを続けることはできなくて、アイドルとして進むなら超人的な力を捨てなければならない、ということらしい。どちらかを選ぶよう言われた50人が出した答えは……
465 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:39:40 ID:kh6GGcJ0hc
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466 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:41:01 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「ぱんぱかぱーん! 満場一致で、私達の選んだのは普通のアイドル! でした♪」
467 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:41:18 ID:kh6GGcJ0hc
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468 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:41:36 ID:kh6GGcJ0hc
 プロデューサーを救い、アイドルとして生きていく。50人全員の意思が一つになった、そのとき。
469 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:41:51 ID:kh6GGcJ0hc
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470 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:42:18 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「マイガー!? なにこれ、小籠塔の壁が消えていく……あ、アタシ達、こんな高いところにいたの!?」
「Wow……! みなさん、大変です! 私達、浮いています!」
471 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:42:34 ID:kh6GGcJ0hc
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472 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:42:56 ID:kh6GGcJ0hc
 小籠塔が消え、宙に漂うアイドル達の見下ろす先で、異様なまでに巨大化していた765PROライブ劇場が、巨大な布に覆われていく。
473 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:43:10 ID:kh6GGcJ0hc
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474 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:45:39 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「あなた達の超自然的な力が一箇所に集まったことにより、暴走してしまった世界……それが劇場よ。あなた達が普通の女の子に戻れば劇場の進化も止まるでしょう。そして、幻想は消えるわ」
「消えるって……今までのこと、全部なかったことになるの? 桃子、そんなのやだ……」
「そんなことないよ! わたし達がしてきたこと、消えたりしないよ! そうでしょう? 小鳥さん!」
「ふふっ、そうね! みんながそう信じているなら、そうかもしれないわね」
475 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:46:23 ID:kh6GGcJ0hc
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476 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:46:43 ID:kh6GGcJ0hc
 全てを包み込んだ布は、だんだん小さくなる。やがてその姿が、一番最初の手作りのテントへと変わったとき、全員の想いを背負うかのように、春香が口を開いた。
477 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:47:02 ID:kh6GGcJ0hc
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478 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:47:34 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「ありがとう……私達の、思い出いっぱいの、大切な劇場!」
479 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:47:54 ID:kh6GGcJ0hc
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480 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:49:00 ID:kh6GGcJ0hc
 冗談じみた展開だったが、ありったけの感謝をこめた春香のセリフには、百合子もしんみりとさせられた。同時に、劇場が元に戻る描写から、次の本はまた最初からになりそう、という予感もしていた──ああ、もう、春香さん達に言いたい! 駆け出しから始めるのはそろそろ終わりにして、トップアイドルになった先の世界に行ってください、って……

「……まさか……」

 唐突なひらめきを得た百合子は、小さく呟くのと同時に、全身の血管が凍っていくような感触を覚えた――私が「MILLION LIVE!」に出てきたのって、そのためなんじゃ……
 次のページに進んだら、後戻りできなくなる。そう予感したし、怖くもあった。ただ、読むのをやめようとは思わなかった。百合子は強張った指をどうにか動かし、画面上に現れた文字列を、食い入るように見つめた。
481 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:50:53 ID:kh6GGcJ0hc
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482 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:52:07 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「だっ、だめですっ! 待ってくださいっ!」
「百合子ちゃん? どうしたの?」
「春香さん……だって……だって、このままじゃ、また最初からやり直しになっちゃうじゃないですか!」
「やり直し?」
「私、春香さん達を、ずっと見てきたんです! 悩んで、頑張って、キラキラ輝いたトップアイドルになって……でも、いっつも、それが無かったことになって……」
483 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:52:42 ID:kh6GGcJ0hc
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484 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:54:15 ID:kh6GGcJ0hc
──やっぱり私が……この私、私だったんだ!
 ついさっきまで、アイドル・七尾百合子は、実在の百合子と同じ名前、同じ性格、同じ特徴を持っていても、あくまでも本の中の住人として振る舞っていた。けれども今の台詞は、5冊の「THE iDOLM@STER」を読んでいる、現実世界の百合子にしか言えないものだ。読み手の自身が、登場人物になっている。いくら魔法の本とはいえ、あまりにも不可思議なストーリー。しかし百合子は、この展開を知っていた。
485 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:54:50 ID:kh6GGcJ0hc
「『はてしない物語』……」

 百合子はからくり人形のような動きで、顔を本棚へと向けた。下から2段目。あかがね色の絹張りの表紙の本、ドイツの児童文学者ミヒャエル・エンデの代表作、「はてしない物語」は、いつもの場所に収まっている。このファンタジー小説には、想像力豊かな主人公、バスチアンの読んでいる本の中に、その本を読んでいる彼自身が出てくるという、今、百合子の目の前で起きていることとそっくりのシーンがある──ううん、それだけじゃない。バスチアンは本を盗んだし、その前は雨の中を走ってたよね? それにバスチアンが読んでる本、途中で最初からの繰り返しになって、お話が先に進まなくなるじゃない! 「THE iDOLM@STER」みたいに!
 もし、自身にバスチアンと同じことが起きているのなら、運命の瞬間は、すぐそこまで迫ってきているはず。百合子は血走った目を画面に戻した。
486 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:55:29 ID:kh6GGcJ0hc
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487 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:56:36 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「そっか……そうだよね。でも、百合子ちゃん。私達、プロデューサーさんと出会って、アイドルとして活動して、お別れして、それでまた出会って。ずっとそうやってきたから、それ以外のことなんて、わからないよ?」
「春香さん……」
「百合子ちゃんは知ってるんだよね? 私達がこれから歩いていく道のこと。私達、どこに行けばいいの?」
488 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:56:56 ID:kh6GGcJ0hc
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489 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:57:50 ID:kh6GGcJ0hc
 ──春香さんが「幼ごころの君」!
 「はてしない物語」で、バスチアンの読む本に出てくる異世界、ファンタージエンの女王、「幼ごころの君」は、読者のバスチアンに呼びかける。私に新しい名前をつけて、と。そうすれば、ファンタジーエンは同じお話の繰り返しをやめて、新しく生まれかわれると。その願いに応え、バスチアンが本の中の「幼ごころの君」に与えた新しい名前は……

「『月の子(モンデンキント)』……」
490 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:58:07 ID:kh6GGcJ0hc
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491 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:58:34 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「『月の子(モンデンキント)』……」
492 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:58:50 ID:kh6GGcJ0hc
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493 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:59:18 ID:kh6GGcJ0hc
 現実での百合子の呟きが、本の中の百合子のセリフになる。
494 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:59:36 ID:kh6GGcJ0hc
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495 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:00:16 ID:AkPpxCOt/.
>>372
「えっと……それ、違うんじゃないかな?」
496 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:00:41 ID:AkPpxCOt/.
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497 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:01:42 ID:AkPpxCOt/.
 その次の行の春香の返事は、現実の百合子の耳にも届いた──幻聴……じゃない! 本当に聞こえた! だってほら、文字の向こう側に、苦笑いしてる春香さんがいるし! あと、しかめっ面浮かべてる千早さんと、きょとんとしてる美希さんも! 私、春香さんと千早さんの顔、知らないはずなのに!
498 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:02:16 ID:AkPpxCOt/.
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499 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:02:51 ID:AkPpxCOt/.
>>372
「百合子ちゃん、お願い。今度はちゃんと教えて」
500 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:03:06 ID:AkPpxCOt/.
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501 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:09:01 ID:AkPpxCOt/.
 春香の問いに対する答えは、百合子の中ですでに用意できていた。頂点を極めたアイドルの、次の行先に相応しい呼び名。それを口にしたら、どうなるのか。「はてしない物語」では、「幼ごころの君」の呼びかけに応えたバスチアンは、本の中、ファンタージエンへと旅立つ。その冒険は波乱に満ち、彼は一時、現実に帰れなくなりそうな危機にも陥る。しかし、それを踏まえた上でも、もはや百合子に迷いはなかった──今なら分かる! 春香さん達を前に進ませるのが、私の役割! このときのために、「THE iDOLM@STER」の読み手に選ばれたんだ! だから!

「春香さん達は、行かなければいけないんです! トップアイドルになった、その先へ……」
502 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:09:22 ID:AkPpxCOt/.
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503 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:09:55 ID:AkPpxCOt/.
>>372
「春香さん達は、行かなければいけないんです! トップアイドルになった、その先へ……」
504 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:10:10 ID:AkPpxCOt/.
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505 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:10:43 ID:AkPpxCOt/.
自身の声がリアルタイムに画面へ反映されるのを見ながら、百合子は絶叫した。

「輝きの向こう側へ!」
506 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:10:59 ID:AkPpxCOt/.
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507 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:11:31 ID:AkPpxCOt/.
>>372
「輝きの向こう側へ!」
508 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:11:48 ID:AkPpxCOt/.
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509 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:12:41 ID:AkPpxCOt/.
 直後に、画面からまばゆいばかりのオレンジ色の光が溢れ出した。そのきらめきは、無数のイメージを形作り、百合子の網膜に焼き付けていく。宣材写真を撮ってもらう伊織。地方のお祭りでシャウトする雪歩。弟や妹の世話をするやよい。ウェディングドレス姿のあずさ。事務所を遊び場にする亜美と真美。公園で鴨を見ている美希。動物番組に出演する響。遊園地ではしゃぐ真。竜宮小町のステージに立つ律子。悪徳記者を投げ飛ばす貴音。音響トラブルに負けず歌う千早。そして、みんなをまとめあげる春香。「MILLION LIVE!」よりも前からいた13人のアイドルの顔形が、はっきりとわかる。

「ああっ!」

光の奔流が勢いを増し、息もできないほどになる中、百合子は画面上に新たに映し出された、「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」という文字を、かろうじて読み取った。そして、それを最後に、百合子の意識は途切れた。
510 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:14:19 ID:AkPpxCOt/.
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511 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/23 00:21:00 ID:AkPpxCOt/.
今日はここまでです。
明日で終わる予定です。
それでは。
512 : ミスター・オールドタイプ   2024/02/23 09:19:54 ID:fU8nLEjOU6
>>365
団結の歌だったり要素が全くなかったわけではないとはいえ
今みたいに みんな一緒で765プロ! って感じになったのアニマスからのような気がしますからね
自分はアイマスのSSから入って次に触れたのはアニマスだったから違和感はなかったですがこうして見るとアイマスの原点は1対1だったのかなぁと
513 : 監督   2024/02/23 22:51:27 ID:mcfLthgdp.
感想ですがはてしない物語をそういう風に使うとは思ってもいなかったので膝を打ちました
てっきり物語をなぞっていくものだと思っていたので
514 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/23 22:52:24 ID:AkPpxCOt/.
>>512
初期のアイマスが1対1なのは確かですよね(ドラマCDやアイドラはありましたが)。
2も団結がテーマでしたし、やはり2とアニメが転換点なのではないかと思います。
「1人も手放さない」というミリオンは、この流れを引き継いでいる感じがしますね。
感想、ありがとうございました。
515 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:01:36 ID:AkPpxCOt/.
>>513
アイマスとはてしない物語は、いつかやりたいと思っていました。
少しでも驚きを感じていただけたなら、書いてよかったと思えます。
感想、ありがとうございました。
516 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:03:42 ID:AkPpxCOt/.
それでは、再開します。
517 : THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:05:07 ID:AkPpxCOt/.
 気が付いたとき、百合子はローテーブルに突っ伏していた。そのままの姿勢で数回瞬きしてから、はっと身体を起こし、周りを見る。扉、クローゼット、ベッド、本棚、机。どこからどこまでも、自身の部屋だった──えっと、私、「THE IDOLM@STER」の世界に呼ばれたんじゃ? バスチアンみたいに……違うの? まさか、夢? だとしたら、どこから? フレンチトースト食べたのは絶対に現実だし……
 ローテーブル上に視線を向けると、「MILLION LIVE!」の入っていた端末は消えていた。その代わりとなる新しい「THE IDOLM@STER」は、見当たらない。百合子は立ち上がり、机の上と引き出しの中、さらにベッドも確認したが、6冊目の本は、やはりどこにもなかった。 夢、現実のいずれにしても、春香に新しい道筋を示した時点で、自身の冒険は終わったらしい。残念なような、ほっとしたような、何とも言えない気分になった、そのとき。

(ジリリリリリ!!)

目覚まし時計が鳴った。突然のことにびくっとなった百合子は、慌てて手をのばし、スイッチをオフにする。時刻は5時半──アラーム、かけたっけ?
518 : THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:05:39 ID:AkPpxCOt/.
(コンコン)

今度はノックの音だった。

「百合子、起きたか?」

──お父さん?

「あ、うん」
「そうか、早く下りて来いよ……ふわぁ……」

 遠ざかるスリッパの音を聞きながら、百合子はどこか腑に落ちない感じがしていた──「起きたか?」って、私、やっぱり寝てた? お父さんも、なんか眠そうだったけど。
 顔を扉から室内へ向けなおすと、カーテンの隙間から差し込んだ白っぽい光が、枕の上を横切っているのに気づく。何気ない場景。ただ、何かが引っかかる。一瞬の後、その違和感の正体に気づいた百合子は、机上で充電中のスマートフォンに飛びついた。画面に浮かび上がる時刻は、5:32。17:32ではなく、5:32。

「朝っ!?」

 東向きの窓を照らす朝日の熱を感じながら、百合子は混乱していた──ずっと寝てたの!? 夕ご飯もお風呂もなしで!? おかしくない!?
 何がどうなっているのか。さっぱりわからなかったが、百合子はとにかく、父親を追うように部屋を出た。
519 : THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:07:18 ID:AkPpxCOt/.
 1階に下りた百合子は、まず両親に文句を言うつもりでいた。どうして昨日、夕食のときに起こしてくれなかったのか。呼んで返事がなかったとしても、部屋に様子を見に来るくらいはしてほしかった。それとも、ローテーブルに伏せて動かない娘を見て、そのまま放っておいたのだろうか。だとしたら、なおさら一言必要だと思った。
 ダイニングキッチンのドアノブに手をかけたとき、玄関にキャリーバッグを出してあるのが目に入った──お父さん、ひょっとして出張? ふだんよりもだいぶ早起きだし。話できる時間ないかな?
 扉を押し開けると、いつも通り、コーヒーの香りが漂ってきた。
 
「ああ、百合子、おはよう……ふわぁ……」

朝食をテーブルに運んでいる父親は、さっきと変わらず眠そうだったが、そんなに急いでいるふうでもなかった。

「あの、お父さ……」
「ん、なんだ百合子、その恰好。寝起きのまま行く気か?」
「へ? 行く気か、って……」
「おいおい、寝ぼけてるのか? 今日からだろ、765プロのって」
520 : THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:08:58 ID:AkPpxCOt/.
──え?

「期末テストのあとなら合宿OKって、先生、言ってくれたじゃない。今になって、行くのやめにするつもりかしら?」

キッチンで盛り付けをしている母親が、顔を上げて話を引き取る。

「765プロ……合宿……」
「ほらほら、着替えてらっしゃい。杏奈ちゃんと待ち合わせしてるんでしょ?」
「あ……杏奈ちゃん!?」

思わず叫んでしまった百合子に、

「どうした、大声だして?」

父親は目を丸くし、

「早くしてね、ほんとに」

母親は笑顔で急かしてくる。
521 : THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:09:24 ID:AkPpxCOt/.
「……うん、わかった……」

百合子はどうにか両親に返事をすると、回れ右をして廊下に出た。ぎこちなく手足を動かして階段を登り、自室に戻るまで、なんとか我慢する。そして中に入って後ろ手で扉を閉め、一呼吸置いてから。

「ええええっ!」

──765プロの合宿!? 何それ!? ううん、決まってるじゃない! ここ、「THE iDOLM@STER」の中の世界ってことだよね!?
 夢ではなかった。全部本当だった。「はてしない物語」のバスチアンと、同じことが起きた。沸騰しそうになる頭を両手で押さえ、部屋の中を行ったり来たりしながら、百合子はこれからどうなるのか、何をすればいいのか、必死に考えた。今、分かっているのは、自身がこれから765プロの合宿に参加することと、杏奈と一緒に行く約束をしていること──どうしよう!? 私、アイドルなの!? 歌もダンスもできないのに!? それに、杏奈ちゃんと待ち合わせって、どこで何時何分!?

「百合子、まだかー? 百合子ー?」
「今、行くー!」

階下からの父親の声に返事をしてから、百合子はクローゼットを開けた──とりあえず、着替えなきゃ。
522 : THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:09:48 ID:AkPpxCOt/.
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523 : THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:11:10 ID:AkPpxCOt/.
 新宿駅南口改札を入ってすぐの壁際。父親が貸してくれたキャリーバッグを傍らに立てた百合子は、真剣な表情でスマートフォンを見ていた。メール、電話帳、通話履歴、写真。メモリに蓄積されたそれらの存在に気付いたとき、百合子は地獄で仏の思いだった。今までに確認できた情報によれば、この世界の765プロは、響や貴音がいたり、竜宮小町の活動があったりと、「THE iDOLM@STER 2」の設定に近そうだった。また、春香がアイドルアワードという賞を勝ち取っていたり、美希のハリウッド進出や千早の海外レコーディングが世間の話題になっていたりと、所属アイドルは皆、かなりの人気を博しているようだった。
 一方、百合子自身はまだアイドルになる手前の、養成スクールに所属する練習生で、学校が終わった後、歌やダンスのレッスンを受けている、といった感じだった。スクールには「MILLION LIVE!」に出てきた子も何人かいて、百合子は今度 、彼女たちとともに、765プロのアリーナライブでバックダンサーを務めることになっていた。そして今日は、ライブに向けた765プロの合宿初日。合宿所までの移動は新幹線利用で、集合場所の東京駅へは、同じくバックダンサーに選ばれた杏奈と一緒に行く約束をしていた。この世界の杏奈とは、スクールでのクラスは別々で、知り合ってからも間もないらしかったが、それでもすぐに仲良くなれたようだった。
524 : THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!◆9RCctPo346c   2024/02/23 23:12:03 ID:AkPpxCOt/.
 春香達が、トップアイドルとまではいかなくとも、すでに有名になっていて、自身はその後輩という、念願だった「輝きの向こう側」の物語に相応しいシチュエーション。とはいえ、それを楽しもうという気持ちを、今の百合子が持ち得るはずもなかった。読者ならぬ登場人物の身になってしまった以上、まずはとにかく、このパラレルワールドに適応して、生きていかなければならない。
 幸いなことに、学校の友人たちとやりとりしたメールや写真は、百合子の記憶とほぼ一致していた。この世界は、自身が芸能活動を始めていること以外、現実と変わらないらしい。アイドルスクールに通いだしてからの日もまだ浅いようで、歌やダンスが拙くとも、何とかごまかせるかもしれないと思えた──あとは合宿に参加するメンバーと、うまく関係を作れたら……

「……百合子さん、お待たせ……」
「えっ……」

 声のしたほうを向くと、そこにいたのは、ピンク色のパーカーに膝丈のデニムスカート姿、小ぶりなキャリーバッグを引っ張り、眠たげな表情を浮かべた女の子──杏奈ちゃんだ! 
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