【SS】はてしないTHE iDOLM@STER
1 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/18 22:46:11 ID:kVGxoUcuNw
SSを書いたので投下します。
いくつか注意点があるので、まずそちらから書いていきます。
325 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:17:31 ID:RAPLbyYwO6
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326 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:18:05 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「IA大賞発表後は、俺は皆と、一緒にいられない。ハリウッドに行って、色々勉強してくる。1年で戻ってくるけど、その後に皆のプロデュースを担当できるかどうかは、わからない。もしかしたら、IA大賞が終わったら、それっきりお別れ、ってこともあるかもしれない」
「「「ええっ!?」」」
327 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:18:19 ID:RAPLbyYwO6
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328 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:18:43 ID:RAPLbyYwO6
 やっぱりハリウッドは伏線だったんだ、と百合子は思った。今回も、トップアイドルになった春香達とプロデューサーの別れで話が終わるとすると──次の本も、また下積み時代からになっちゃうのかな?
 先走り気味の想像を巡らしながら、さらに文字を追っていくと、ナムコエンジェルはジュピターと熾烈な賞レースを繰り広げていた。体調不良の春香がステージ上で倒れ、担架で救護室に運ばれるなどのアクシデントもあったが……
329 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:19:15 ID:RAPLbyYwO6
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330 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:19:46 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「お、起きたか、天海」
「ジュピター……悪いけど、遠慮してくれないか。春香はまだ、目が覚めたばかりなんだ」
「俺達も、病人の前で騒ぐ気はねえよ。ステージで、派手にぶっ倒れたから、ちょっと気になっただけだ」
「あの……ごめんなさいっ。冬馬君達にも、迷惑かけちゃって……」
「……まあ、まだ戦う気があるなら、とっとと復活しろよ。おまえら程度でも、いれば、盛り上がるかもな」
331 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:20:10 ID:RAPLbyYwO6
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332 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:20:39 ID:RAPLbyYwO6
 IA大賞発表の直前、ノミネートアイドルが一堂に会するフェスで、ついに両雄は激突する。
333 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:20:56 ID:RAPLbyYwO6
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334 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:21:35 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「今日の俺達の相手は、あのジュピターだ。間違いなく、彼らは強い。簡単に勝てる相手じゃない……だからこそ、相手にとって、不足はないよな! さあ、今までやってきたことを、このステージで、全部、残らず全て、出しきってこい! そして……そして、勝とう!!」
「「「はいっ!」」」
335 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:21:57 ID:RAPLbyYwO6
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336 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:22:12 ID:RAPLbyYwO6
 この最終決戦を制したのは……
337 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:22:29 ID:RAPLbyYwO6
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338 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:23:04 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「プロデューサーさんっ! 私達、ジュピターに勝ちました、勝っちゃいました!」
「ああ、ステージ袖から、みんなの勝利、俺も、しっかり見てたよ!」
「今日のステージでは、私達3人が、ひとつになるのを感じました……あれが本物の、団結なんですね!!」
「力、全部出し切っちゃったってカンジ。ホント、勝ててよかったの!」
339 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:23:27 ID:RAPLbyYwO6
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340 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:24:01 ID:RAPLbyYwO6
 敗れたジュピターは、冬馬が解散を宣言、IA大賞のノミネートも辞退してしまう──このせいで、天ヶ瀬さん、961プロを辞めたのかな……って、違う! これは本の中のお話! 現実じゃないから!
 混乱しかけた百合子は、軽く頭を振ってから本の中へと戻った。そこでは、最大のライバルを撃破したナムコエンジェルが、国立オペラ劇場大ホールにて、歓喜の瞬間を迎えていた。
341 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:24:21 ID:RAPLbyYwO6
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342 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:25:01 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「それでは、発表します。本年度の、IA大賞に輝いたのは……ナムコエンジェルの皆さんです! おめでとうございまーーーっす! それでは、皆さんの、今のお気持ちをお聞かせください!」
「えっと、1年間、ずっと目標にしていたこの賞を、本当にもらえるなんて……とっても、光栄です!」
「皆さんのご声援が、私達を、ここに運んでくれました。本当に、ありがとうございました!」
「うまく言えないけど……、とにかく、ミキすっごくすっごくすっごく、うれしいの!」
343 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:25:24 ID:RAPLbyYwO6
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344 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:25:49 ID:RAPLbyYwO6
 そして、セレモニーの終了後。春香は千早や美希と帰りの車に乗るが、途中で独り降りて、プロデューサーのところに戻ってくる。
345 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:26:08 ID:RAPLbyYwO6
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346 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:27:59 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「つまり、えっと……はっきり、言います。プロデューサーさん、ハリウッドになんて、行かないで下さい!」
「ええっ!? その話は、もう前に……」
「で、でも、私達はプロデューサーさんに育ててもらったユニットです。IA大賞は終わりましたけど……まだ、教えてもらわなきゃダメなこと、いっぱい、いっぱいあるんですっ!」
「春香……春香の気持ちは、うれしいけど、もう、決めたことなんだ。それに、ナムコエンジェルは大丈夫だよ。春香という、立派なリーダーがいるからさ」
「私、立派なんかじゃないです! 全然、そんなんじゃないんですっ! いっつも1人で空回りして、みんなにも、プロデューサーさんにも、いっぱい迷惑かけて……」
「春香……」
「私が立派なリーダーに見えるとしたら、それは、プロデューサーさんが、隣にいてくれるからです……プロデューサーさんが、支えてくれなかったら、ユニットも、私も、とっくにダメになってました! だから、お願いです、プロデューサーさん。ずっと、ずっと、一緒にいてもらえませんか?」
「……」
「ずっと、私達の……私の、そばに、ずっと……!」
「……ありがとう、春香。春香の気持ち、本当にうれしいよ。でも……それは出来ない」
「ぷ……プロデューサーさん……」
「俺のほうこそ、春香が言ってくれるような、いいプロデューサーじゃない。本当に、いいプロデューサーだったら、春香の体調不良にも気が付いただろう。少なくとも、春香がステージで倒れる前に、何とかできたはずなんだ……俺はまだ、未熟すぎるんだよ」
347 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:28:30 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「……プロデューサーさん。もう、すっかり、決めちゃってるんですね?」
「春香……ごめん」
「あ、あやまらないで下さいっ! もっと、悲しくなっちゃいますから。でも、お願いです。ゼッタイ、帰ってきて下さいね。これで、お別れだなんて、私、イヤです……」
「うん、必ず帰ってくるよ。春香は、俺がいない間、リーダーとしてユニットを支えていてくれ。そして、俺達のナムコエンジェルを、今よりも、もっと、素晴らしいものにするんだ! こんな大切なことを頼めるのは、春香しかいない。世界中で、春香、ただ1人だ」
「私……私、だけ……」
「……頑張れるか、春香?」
「は、はいっ……えへへっ。わ、わかりました。でも、そのかわり、プロデューサーさん。ハリウッドから帰ってきたら……絶対に、また、私をプロデュースして下さいねっ! 約束ですよ、約束!!」
348 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:28:51 ID:RAPLbyYwO6
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349 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:29:22 ID:RAPLbyYwO6
 旅立ちの日、プロデューサーは空港でナムコエンジェルの3人に見送られ、日本を後にする。
350 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:29:38 ID:RAPLbyYwO6
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351 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:30:56 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「プロデューサー。食事は、栄養のバランスに注意して、メニューを選ぶようにして下さいね」
「ハリウッドについたら、いっぱい写真撮って、ミキ達にメールで送ってね。楽しみにしてるから!」
「ああ、わかってるよ。皆も、元気でな。バッチリ、成長して帰ってくるから、1年後を、楽しみにしててくれ」
「私、プロデューサーさんがいない間、本当に、本当に、がんばりますから……だから、プロデューサーさんも、あの……約束、ゼッタイ、守って下さいね」
「ああ、守るよ……必ず」
352 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:31:15 ID:RAPLbyYwO6
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353 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:31:45 ID:RAPLbyYwO6
 お見送りの場面が終わっても、ページはまだ少し残っていた。プロデューサーとアイドルのお別れがラストシーンだと思っていた百合子は、一瞬戸惑ったものの、すぐに自身の勘違いに気づいた──そっか、ハリウッドに行くって言っても、1年研修するだけで、プロデュース終了じゃないんだ。だから、ここで終わりじゃなくて……プロデューサーが戻ってきて、エピローグ?
 百合子の予想通りだった。ページをめくった先では、1年間の研修を終え帰国したプロデューサーが、765プロ事務所へと向かっていた。
354 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:32:03 ID:RAPLbyYwO6
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355 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:32:56 ID:RAPLbyYwO6
>>251
 ふぅ、やっと着いたぞ。それにしても、春香達がどれだけ頑張っていたのか、いやって程、分からされたな。駅前の大型モニター、コンビニのBGM、すれ違う人が持つ雑誌の表紙。ナムコエンジェルの話題を見聞きしないでは、2分と街を歩けない、って感じだ。まあ、とりあえず事務所に入ろう。あ、入る前に、おみやげは出しておいたほうがいいかな。えっと……って、うわっ!? いきなり目の前が真っ暗に!?

「えへへっ……だーれだ?」
「え、その声は……」

明るさが戻るのと同時に振り返ると、そこにはもちろん、微笑む春香が立っていた。

「……プロデューサーさん。おかえりなさいっ!」
「ああ、ただいま……! でも、どうして、こんな所に春香が?」
「ええっ!? せっかくの再会なのに、つれないこと言わないでくださいよぉ! 小鳥さんから、プロデューサーさんが、今日帰ってくるって聞いて、それで待ってたんですよ?」

口を尖らせてみせる春香。そうそう、ときどき、こうやって拗ねていたっけ。なんだか、本当に帰ってきたんだ、って実感がわいてくるなあ。
356 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:34:07 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「……ありがとう、春香。嬉しいよ。でも、本当に仕事、大丈夫だったのか? ここで俺を待つだけでも、スケジュール調整が、大変だっただろう?」
「え? どうして、それ、知ってるんですか?」
「だって、空港からここに来るまでの間、春香達の名前があちこちから、聞こえてきたぞ……もう、押しも押されぬ、超人気ユニットだな。よくやったぞ、春香!」
「……えへへっ。だって、約束したじゃないですか。ユニットの皆で、もっともっと頑張るって。あの、どうですか? 私達のユニット。プロデューサーさんがプロデュースしてた時と比べて」
「そうだな……どう考えても、俺がやっていた時より、売れてると思うぞ」
「え、本当ですか!? やったー!」

褒められると素直に喜ぶのも、ちょっと調子に乗りがちなのも、相変わらずか。

「……何だか、俺、帰って来たのはいいけど、いきなり用無しな感じだよな」
「ええっ!? そ、そんなことないですよぉ! プロデューサーさんが用無しなわけ、ないじゃないですか」
「あははは。まあ、そうかな。俺もハリウッドで、100倍くらいパワーアップしたから……正直、これくらいすぐに追いつけるぞ!」
「そうですか? ふふ、ふふふっ!」
357 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:35:24 ID:RAPLbyYwO6
>>251
ん? 何か含みのある笑いのような……

「それじゃ、早速ですけど、この後の新番組の打合せに、プロデューサーさんも参加して下さいねっ!」
「ええっ!」

い、今からか!?

「あの、俺、今、帰ってきたところなんだけど……社長にあいさつとか、事務所のおみやげとか、荷物の片付けとか、色々な用事も盛りだくさんで……」
「そんなの後です! 私、プロデューサーさんをずっと待ってたんですよ? だから、もう待てません!」
「わ、わかったよ……」

満面の笑みを浮かべ、さも当然といった感じで俺を促してくる。さっきまでは、懐かしい、変わってないって印象だったのに、それが一気に吹き飛んだ感じだ。まあ、俺のいなかったこの1年、セルフプロデュースだったナムコエンジェルで、リーダーとしていろいろと経験を積んできたんだろうけど、それにしても……
358 : THE iDOLM@STER 2◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:36:00 ID:RAPLbyYwO6
>>251
「春香、しばらく会わないうちに、少し、人使いがあらくなったんじゃないか?」
「えへへっ。私の、世界一のプロデューサーさん! またプロデュース、お願いしますねっ!」

世界一とは、言ってくれる。でも、そうだよな。『ナムコエンジェルを、今よりも、もっと、素晴らしいものに』って俺の頼みを、春香は実現してみせた。なら、今度は俺の番だ。プロデューサーとして、春香を、ナムコエンジェルを、もっともっと輝かせる。そのために、ハリウッドに行ったんだしな!

「……よしっ! 俺も、覚悟を決めたぞ! これが、世界一への第一歩だ! まずは、新番組の打合せに行こうか、春香!」

右手でスーツケースの向きを変えて脚を踏み出すと、春香が左側から俺の顔を覗き込んできた。

「プロデューサーさんっ! あの、私、これからも、プロデューサーさんのこと、す……」
「す……?」
「あ、いえ、今はやっぱりいいです。これからも、チャンスはありますからね……」
「え? なんか、言ったか、春香?」
「えへへ、何でもないですっ! それじゃ、行きましょう! 皆で……世界の頂点へっ!」
359 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:36:32 ID:RAPLbyYwO6
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360 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:39:34 ID:RAPLbyYwO6
 ──面白かった!
 本を閉じた百合子は、白い表紙をじっと見つめた。春香がプロデューサーと出会うところから、トップアイドルになるまでを描いていたのは、1冊目の「THE iDOLM@STER」の焼直しに思えなくもなかった。ただ、同じユニットの千早と美希、仲間でありライバルでもある竜宮小町と律子、倒すべき敵として立ちはだかった冬馬たち、さらにはIA大賞の司会者のような端役まで、数多くの人物が物語に関わっていたのは、大きな違いだと思えた。今までよりも世界観に奥行があるように感じられたし、熱い展開や、希望にあふれるエンディングも良かった──でも、やっぱり。
 トップアイドルになったあとのお話を読みたかった、という気持ちを、百合子はどうしても拭いきれなかった──「THE iDOLM@STER 2」、続編として作れなかったのかな? ソロで頂点の座に輝いた春香が、社長の鶴の一声で、ユニットを組んでIA大賞に挑むことになった、みたいな感じで。そしてユニットを指導するのは、かつて春香をトップアイドルへと導いたプロデューサー。1年ぶりに再会した2人は、挨拶すらもぎこちなく……うん、いけそう。
 百合子の想像の翼は、「THE iDOLM@STER 2」のその後へも広がった。世界で活躍するアイドルに挑むナムコエンジェルとプロデューサー。765プロ打倒のため、黒井社長が放つ新たな刺客。律子と竜宮小町の再起や、冬馬たちの捲土重来を描く、外伝的なエピソード。そういうお話を、次の5冊目に期待していいのかどうか。
361 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:45:40 ID:RAPLbyYwO6
 そういえば、どうしたら次の本が出てくるのだろう。今までの4冊は、気が付いたらそこにあった、という感じだった。だとしたら、5冊目の「THE iDOLM@STER」を望んでいる今、取るべき行動は?
 いろいろと考えをめぐらせた末、百合子は机の引き出しに「THE iDOLM@STER 2」をしまい込み、鍵をかけた。こうすれば大丈夫、と確信したわけではない。ただ、誰の目にも触れず、誰の手にも届かないところで、5冊目に変わったなら、本当の本当に魔法の本だとはっきりする。
 百合子はショートパンツのポケットに鍵を滑り込ませながら立ち上がった。ベッド上の時計を覗き込むと、10時半近い。七尾家の休日の習慣、ブランチの頃合だ。百合子は足早にドアへと向かった──腹が減っては戦はできぬ、だよね。
362 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:46:55 ID:RAPLbyYwO6
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363 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/21 23:52:28 ID:RAPLbyYwO6
今日はここまでです。
本の中の会話文は、基本的にゲームのテキストそのままです。
1冊目はアーケード、2冊目はxBox無印、3冊目はSP、4冊目は2ですね。
ただ、今日の2については、字数を減らしたり、話の筋をわかりやすくしたりするため、改変した箇所もあります。
明日、また続ける予定です。
それでは。
364 : 兄ちゃん   2024/02/22 09:25:25 ID:oYd8JhyGeI
2の時点でハリウッド行きの話しは出ていたんだ
2でトリオになったって話しは聞いたことあるのですがあまりよい噂聞かなくて……
ただこの流れだと元々は今みたいな仲良し路線ではなかったかもしれませんね
次はいよいよ……って感じですかね
2の続編を期待している百合子は悪いですが
365 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:47:25 ID:kh6GGcJ0hc
>>364
個人的にはアニメと2は双子なんじゃないかな、と想像しています。
企画の段階から平行して進んでいた感じなんじゃないかな、と。
お察しのとおり、次はいよいよ、です。
感想ありがとうございました。
366 : 765歌劇場P◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:48:08 ID:kh6GGcJ0hc
それでは、再開します。
367 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:49:15 ID:kh6GGcJ0hc
 ことのほか美味しかったフレンチトーストのおかげか、部屋に戻ったときの百合子は、だいぶ楽観的になっていた。鍵付きの引き出しの中には、きっと新しい「THE iDOLM@STER」がある。膨らんだ期待を胸に、百合子は鼻息も荒く、大股で机に突進した。しかし、鍵を挿して引き出しを開けた瞬間、言葉を失ってしまう。ややあって、かすれ気味の声が漏れ出した。

「……なんで……」

 そこには、「THE iDOLM@STER 2」に代わる本が、確かにあった。文庫本サイズの黒いプラスチックに画面をはめこんだ、タブレット型の電子書籍端末が。
368 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:49:59 ID:kh6GGcJ0hc
「はーっ……」

 盛大な溜息を止める気にもならなかった。スマートフォンに電子書籍アプリを入れていないほど、百合子は本に関して、断然アナログ、紙派だ。画面だと紙の温かみやページをめくるドキドキ感はないし、行間に込められた思いも感じ取れない気がしていた──だいたい、魔法の本がこれって、風情なさすぎじゃない?
 百合子は立ったまま鼻を一つ鳴らすと、しぶしぶといった様子で端末を手に取った。指先が触れた画面に、タイトルが浮かび上がる。お馴染みの「THE iDOLM@STER」と「アイドルマスター」は、若干小ぶりになっていた。かわりに大きく目立つのは、その下に表示された、「MILLION LIVE!」という文字列。添えられている「ミリオンライブ」のかな書きと合わせ、こちらがメインタイトルのように見えた。
 百合子は左手で引き出しを閉めながら、同時に右手の指も動かし、画面をスライドさせた。現れたのは、序文だった。
369 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:50:28 ID:kh6GGcJ0hc
「私達と、この劇場(ステージ)で夢を叶えてください!」

笑って、悩んで、女の子(アイドル)たちは、もっと輝く
370 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:51:00 ID:kh6GGcJ0hc
「……みじかっ」

 小さく呟き、目を画面に注いだまま椅子をひくと、机と平行の向きで座る。これが紙の本だったら、という思いは消えず、新しい物語へのときめきもあまり感じられない。百合子は半ば機械的に画面を操作し、本文へと進んだ。
371 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:51:35 ID:kh6GGcJ0hc
────
372 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:52:43 ID:kh6GGcJ0hc
THE iDOLM@STER MILLION LIVE!
373 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:53:27 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
 都内・臨海エリア、最寄り駅から徒歩8分。目の前に広がるのは、原っぱ。もらった略地図を改めて確認する。どう見ても、ここだよな。俺、庭師じゃなくて、アイドルのプロデューサーになったはずなんだけど……まあ、突っ立っていてもしかたない。行ってみよう。
 原っぱに足を踏み入れて少し進むと、まばらに生えた木の向こう側に、大型のテントが見えてくる。あれか。歩くピッチを上げると、ほどなく到着。間近に見たテントの横幕には、星やらUFOやら「がんばりまーっす!」の文字やら、自由に落書きがしてある。何というか、手作り感に溢れてるな。正面に回ると、入口脇には「めざせ! トップアイドル!!」とマジックで大書してある貼り紙、その手前には「765PRO Live THEATER」と手描きされた一本足の立て看板。うん、間違いない。今日からここが、俺の職場だ。といって、いきなり入るのもちょっとなあ。とりあえず、声をかけてみるか。
374 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:54:01 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「すみませーん!」
「はーい……なんでしょう?」

返事に続いてテントから出てきたのは、 緑のベストにタイトスカートの女性。年のころは……いや、それはともかく、いかにもOLって感じの人だ。

「あの、俺は今度765プロに入社した……」
「ああっ、さっき社長から連絡がありました!」

良かった、不審者扱いされないで済みそうだ。

「はじめまして、プロデューサーさん! 765プロへようこそ! 私は765プロの事務員音無小鳥です! プロデューサーさんの活動をサポートさせていただきます!」
「こちらこそ、はじめまして。よろしくお願いします」
375 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:54:27 ID:kh6GGcJ0hc
────
376 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:55:16 ID:kh6GGcJ0hc
 プロデューサーが新入社員ということは、またアイドルと出会うところからのスタートだろうか。だとすると、今回も、トップアイドルになった後の話は期待できなそうな気がした──それより、テントとか765PRO Live THEATERとかって、何?
377 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:55:33 ID:kh6GGcJ0hc
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378 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:56:11 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「プロデューサーさんのお仕事はこの劇場を大きく立派にプロデュースすることですよ!」
「はい、高木社長からも聞いています」

 高木社長は、フルネームが高木順二朗。俺のことを、目の前にあるテント、765PROライブ劇場の運営を担うプロデューサーとして採用してくれた、芸能事務所765プロダクションの代表取締役社長だ。何でも、765プロ所属の50人のアイドル達は、今はまだ駆け出しだけど、人気が出てくれば劇場の増築や新築も予定していて、最終的には、100万人の観客が収容できる海上ドーム、「ミリオンメガフロートドーム」を建造するのが夢だ、とか。最後のは、さすがに冗談だろうけど。
379 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:56:27 ID:kh6GGcJ0hc
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380 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:56:54 ID:kh6GGcJ0hc
 百合子は自身の目が信じられず、3回ほど見直した──50人のアイドル? 今まで9人とか10人とかだったのに? それに100万人の観客って……さすがに無茶苦茶じゃない?
381 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:57:14 ID:kh6GGcJ0hc
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382 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:57:55 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「まずはプロデューサーさんといっしょに劇場を盛り上げていく、1人目のアイドルを決めましょう!」

音無さんが分厚いファイルを差し出してくる。

「社長によるとプロデューサーさんが『ピン!』ときた子を選ぶのがコツ……らしいですよ!」
「は、はあ……」

 簡単に言うけど、50人から1人選ぶって、けっこう大変そうだな。とりあえずファイルを受け取って開くと、中の資料はいくつかのカラーインデックスで区切られていた。最初の束は、「可愛い系・真面目で頑張りや!」……なんだ、このふんわりした分類? 心の中でツッコミを入れながら、綴じてあるアイドルのプロフィールを1人ずつ確認していく。
383 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:58:54 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
名前 我那覇響
年齢 16歳
誕生日 10月10日(天秤座)
身長 152cm
趣味 編み物、卓球

名前 萩原雪歩
年齢 17歳
誕生日 12月24日(山羊座)
身長 155cm
趣味 MY詩集を書くこと
384 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:59:31 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
名前 高山紗代子
年齢 17歳
誕生日 12月29日(山羊座)
身長 156cm
趣味 ハリネズミの飼育

名前 木下ひなた
年齢 14歳
誕生日 7月4日(蟹座)
身長 146cm
趣味 ガーデニング
385 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 22:59:56 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
名前 中谷育
年齢 10歳
誕生日 12月16日(射手座)
身長 142cm
趣味 アニメ鑑賞

名前 箱崎星梨花
年齢 13歳
誕生日 2月20日(魚座)
身長 146cm
趣味 バイオリン
386 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:01:58 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
名前 周防桃子
年齢 11歳
誕生日 11月6日(蠍座)
身長 140cm
趣味 かわいいシール集め
387 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:03:12 ID:kh6GGcJ0hc
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388 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:03:40 ID:kh6GGcJ0hc
 響、雪歩は「THE iDOLM@STER 2」にも名前が出ていた。この2人が入っているのなら、春香や千早、美希もいるのだろう。やはり今回もパラレルワールドで、今までの本とは関係なく、デビュー前後からのお話になりそうだ。そして残りの、完全に初見な5人。その他大勢というわけではなく、前からいるアイドルたちと同じように、プロデューサーに選ばれる可能性があるらしい──この5人、全然聞いたことないけど、現実の765プロにいるのかな?
389 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:03:58 ID:kh6GGcJ0hc
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390 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:04:43 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
 次のインデックスは……「可愛い系・マイペースで個性的!」ね。また1人ずつ見ていくとしますか。
391 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:05:14 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
名前 野々原茜
年齢 16歳
誕生日 12月3日(射手座)
身長 150cm
趣味 スキップ

名前 水瀬伊織
年齢 15歳
誕生日 5月5日(牡牛座)
身長 153cm
趣味 海外旅行、食べ歩き
392 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:05:38 ID:kh6GGcJ0hc
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393 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:05:57 ID:kh6GGcJ0hc
 ──伊織を選べるなら、竜宮小町もなかったことになってそう? そしたら、律子もアイドルに戻ってたり?
394 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:06:12 ID:kh6GGcJ0hc
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395 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:06:46 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
名前 宮尾美也
年齢 17歳
誕生日 4月24日(牡牛座)
身長 156cm
趣味 囲碁、将棋

名前 松田亜利沙
年齢 16歳
誕生日 6月7日(双子座)
身長 154cm
趣味 アイドルのデータ集め
396 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:07:01 ID:kh6GGcJ0hc
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397 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:07:18 ID:kh6GGcJ0hc
 ──これ、50人分、続くの?
398 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:07:34 ID:kh6GGcJ0hc
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399 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:08:35 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
名前 永吉昴
年齢 15歳
誕生日 9月20日(乙女座)
身長 154cm
趣味 野球

名前 望月杏奈
年齢 14歳
誕生日 5月31日(双子座)
身長 152cm
趣味 オンラインゲーム

名前 ロコ
年齢 15歳
誕生日 3月1日(魚座)
身長 154cm
趣味 物を作ること
400 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:08:58 ID:kh6GGcJ0hc
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401 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:09:31 ID:kh6GGcJ0hc
 ──ああ、もうっ!
 どれだけ画面をスライドさせても、延々と箇条書きが出てくるだけ。いらいらした百合子は、読みはじめたばかりのページで、思わず指を動かしてしまった。あっ、と思っても、画面は止まってくれない。流れていく文字を見送るしかない中、百合子の眉はぴくりと動いた──今、なんて書いてあった?
402 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:10:02 ID:kh6GGcJ0hc
 画面外へと消えたページに、ありえないものを見た気のした百合子は、心拍数が急上昇するのを感じた。戻って確認すればいいだけなのに、指はなかなか動かない。もし、気のせいでも見間違いでもなく、本当にその文字列が画面に表示されたとしたら。その先で何が起きるのか、自慢の想像力をもってしても、見当もつかなかない。じわじわと染み出す不安感を抑えるように、深呼吸を繰り返してから、百合子はようやく決断した。口の中にたまった唾を飲みこみ、画面を1ページ前に戻す。目に入って来る、読み飛ばしてしまった部分。そこには、1人のアイドルの名前があった。
403 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:10:26 ID:kh6GGcJ0hc
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404 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:10:49 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
名前 七尾百合子
年齢 15歳
誕生日 3月18日(魚座)
身長 154cm
趣味 読書
405 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:11:08 ID:kh6GGcJ0hc
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406 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:12:09 ID:kh6GGcJ0hc
 百合子は立ち上がり、手にした端末を顔の高さで打ち振りながら、本棚の前を早足で一往復した。次に、端末を放り出すようにベッドに置くと、部屋の隅にある丸い小さなローテーブルを持ち出して、本棚とベッドの間に据え付けた。最後に、ベッド上にあるお気に入りのクッションと端末を手に取り、それぞれ床とローテーブルに置くと、自身も膝を折ってクッションの上にお尻を乗せた。そして、感情を爆発させた。

「なんなの、これ!?」

 テーブル上の端末にあらためて目をやる。何度見ても、そこには自身の名前が表示されていた──同姓同名? そんなわけないじゃない! 年齢も誕生日も身長も趣味も、全部私だし!
 呼吸が荒くなり、目の奥がじんじんする。もう、残りのアイドルをゆっくり見ていく気もしなかった。人差し指で画面をどんどんスライドさせる。プロデューサーが誰を選ぶのか。百合子はほとんど確信していたが、それでも早く答えを見たかった。そうしてたどり着いた、運命のページ。プロデューサーは……
407 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:12:34 ID:kh6GGcJ0hc
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408 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:13:10 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
 うーん、みんな有望そうだけど、音無さんの言う『ピン!』と来た子を選ぶとするなら……

「七尾百合子……」
「百合子ちゃんで決まりですね!」
409 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:13:29 ID:kh6GGcJ0hc
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410 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:13:53 ID:kh6GGcJ0hc
 予想していたとはいえ、百合子の受けた衝撃は大きかった──今から、私とプロデューサーのお話が始まるんだ! 春香や、美希や、千早みたいに! でも、なんで!? どうして私がアイドルに!?
 百合子は憑りつかれたように文字を追い続け、そして……
411 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:14:22 ID:kh6GGcJ0hc
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412 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:15:09 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
 ライブ劇場から765プロ事務所まで、ドアtoドアで小一時間。都内って広いよなあ、なんて思いながら、事務所のドアを開ける。今日はこのあと、これからプロデュースするアイドル、七尾百合子との初顔合わせだ。さっき、もう事務所に来ているって連絡があったけど……ああ、いたいた! ソファに座って読書中だ。さすが文学少女。

「……ええっ!? あの温厚そうなおばあさんがこんな猟奇的なトリックを使うなんて……!?」

 どうやら、ミステリらしい。

「……あれ? でも確か、この人は第三の事件ではアリバイが……」

 完全に物語に入りこんでるな。俺がいるのにも気づいてないみたいだ。約束の時間にはまだまだ余裕があるけど、ちょっと声をかけてみるか。
413 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:15:53 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「ずいぶんと熱心に読んでいるようだが、その小説、そんなに面白いのか?」
「はいっ! どんでん返しにつぐどんでん返しの展開にドキドキハラハラ……もう夢中です!」

 うわっ、いきなりキラキラした目で食いついてきたぞ。

「私が生まれるずっと前に書かれた本なのに、面白くて、古びない……すごいことですよね!」
「そ、そうか……すごいんだな」
「……ハッ!? す、すみませんっ! 私、夢中になるとつい興奮しちゃうクセがあって……!」
「ああ、大丈夫。プロデューサーにとってはアイドルのことを知るのも仕事のうちだ!」
「え、今なんて? ぷ、プロ……えええええっ!?」

 いや、そんなに驚かなくても、と思っているうちに、百合子は本を閉じて立ち上がった。
414 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:16:27 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「あなたがプロデューサーさんなんですか!? は、はじめまして! 私、七尾百合子です!」

 そう言ってお辞儀をする。おお、けっこうしっかりしてる。親御さんの教育の賜物かな。

「私、歌もダンスも得意じゃないし、お芝居の勉強もしたことがない初心者ですが、いつか、この本みたいに、時代を跳び超えて人の心を揺さぶるアイドルになれたらって」

 時を越えて、人の記憶に残るアイドルか。大きく出たな。うん、いいじゃないか。

「わかったよ。簡単な目標じゃないが、目指す価値はあるな! レッスンは厳しくなると思うが、二人三脚で頑張っていこう! 百合子、よろしく頼むぞ!」
「……はいっ、プロデューサーさん! こちらこそどうぞよろしくお願いします!!」
415 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:16:51 ID:kh6GGcJ0hc
────
416 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:17:48 ID:kh6GGcJ0hc
 ついに登場した、今回のヒロインアイドル、七尾百合子。描写されたその姿は、多少カリカチュア化されている感じはするものの、百合子本人に違いなかった。「THE iDOLM@STER 2」での冬馬登場時に抱いた、現実が物語に浸食されそうな薄気味悪さが、桁違いの切迫感で、胸の中をせり上がってくる。ただ、それとは別の深刻な問題も、百合子は新たに突きつけられていた──私、やらかすよね!? さっきだって、プロデューサー相手に暴走しかけてたし! このあと、妄想が思いっきり口から出てるの聞かれたりとか、変な動きや表情してるの見られたりとか、絶対する! そんなのを読まなきゃいけないの!?

「ああああ……」

 うめきとも悲鳴ともつかない声がこぼれる。どんなホラー小説よりも怖いお話。頬を両手ではさみ、気持ちが落ち着くのをしばらく待ってから、百合子は意を決して先へ進んだ。そこでは、プロデューサーのもとでレッスンを重ねた後、5人ユニットの一員として、初めてのステージに臨む百合子の姿が描かれていた。ユニットのメンバーは、百合子の他に、最上静香、箱崎星梨花、天空橋朋花、そして、天海春香。
417 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:18:14 ID:kh6GGcJ0hc
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418 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:18:48 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「み、皆さん、きょ、今日は、765PROライブ劇場に、お、お越しくださいまして、あ、ありがとうござ、ござる……」
「あはは、百合子ちゃん、緊張しないで、落ちつい……っとっと、うわぁぁ! いててててて……ええと、あのう……こけちゃいました、えへへ」
419 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:19:10 ID:kh6GGcJ0hc
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420 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:19:25 ID:kh6GGcJ0hc
 春香はMCで絡むだけでなく、ソロ曲の曲振りまでやってくれていた。
421 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:19:41 ID:kh6GGcJ0hc
────
422 : THE iDOLM@STER MILLION LIVE!◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:20:12 ID:kh6GGcJ0hc
>>372
「それでは、続いてのステージは、七尾百合子ちゃんで、『透明なプロローグ』です。私も一緒に、盛り上がっちゃいますねー」
423 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:20:30 ID:kh6GGcJ0hc
────
424 : はてしないTHE iDOLM@STER◆9RCctPo346c   2024/02/22 23:21:19 ID:kh6GGcJ0hc
 ──なんてぜいたく!
 百合子は読んでいて、本の中の自身に腹が立ってきた──春香、ううん、春香さんが、ドームを満員にしてIA大賞に輝いて世界へ羽ばたいたすごい人だって、分かってるの、私!? ひよっこのくせに同じステージに上がるなんて、図々しくない!? まあ、今回もパラレルワールドだし、春香さんも少しだけ先輩な感じで、トップアイドルってわけじゃないけど……
 無事にデビューを果たした後も、百合子は劇場のステージに、様々な形で上がり続けた。あるときは、春日未来をリーダーとする「乙女ストーム」の一員として。
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