【安価SS】全8話 765プロ劇場ドラマ制作!
1 :   2021/08/05 20:36:02 ID:7Ez7aEaegU
立つかなー
390 : 高木の所の飼い犬君   2021/09/18 06:11:42 ID:xghm6rgcXY
レスありがとうございます!
定期age

清書、明日には投下できそうです
たぶん

391 : プロデューサーさん   2021/09/19 05:39:20 ID:ykAwVliaKI
Recipe6partB 清書投下していきます


大会予選を勝ち抜いたグリルモワールの3人は、みきつばがキテる裏で、このみから本選の日程等の説明を受けた。
話をしてみてわかったことには、このみはあの異界捜査官(表向きはファッション雑誌編集者)のハンドレッドこと莉緒と友人であるらしかった。
そのアダルティなセクシーを活かしてファッションモデルを仕事にしているそうである。歌声も素敵だし。
さらにこのみに本選参加者に関して訊ねると、雪歩たちと同じく今大会が初出場の、第1回大会で優勝した富豪お抱えシェフの愛弟子(美人)が優勝候補にあがっているのだとか。
残念ながら『HOTDOGS』の情報は大して得られなかった。

雪歩たちはキングサイズのベッドが1つある、立派な部屋を割り当てられて大会開催中はそこで寝泊まりすることとなった。
本選まで一日、自由時間(準備期間)があり、どこで何をするか3人は話し合った。
その結果、第1回戦の課題料理がシーフードピザ(アクアピッツァ)であるのを受け、春香は他の2人に、異界の商店街を訪れることを提案した。
392 : バカP   2021/09/19 05:41:49 ID:ykAwVliaKI
百合子「異界の商店街?」

春香「うん。普段は現世の『昇天街』に行くことが多いけれど、実はこっちの商店街も月に2,3度は来ているんだ」

雪歩「ちょっと前までは治安があまりよくなくて、『地獄街』なんて呼ばれ方もしていたそうよ」

百合子「へー……あれ?白雪さんもこっちの商店街について、詳しいんですか?」

雪歩「それなりにね。春香が買い出しに行く場所なんだから、何も知らないでいるのもダメでしょう?」

春香「はぁ~、愛を感じるね」

雪歩「はいはい」

百合子「その話しぶりだと今では治安が悪くないんですよね?」

春香「そうそう。例の富豪がこっちで台頭してきて、そうした『整備』が進んだとも聞くよ」

雪歩「あれでしょ?一人娘があるけるような場所にしておかないと、なんて思ってはりきったんじゃないの?」

百合子「娘さん……亜美ちゃんでしたっけ、とっても大切にされているんですね」

春香「でも、私は商店街で見たことないんだよね。会ったっていう人の話を聞く限り、ボディガードを何名もつけているみたい」

百合子「やっぱり黒サングラスで黒スーツの大男ですか?」

春香「ううん、それが嘘か本当か、可愛い女の子たちばかりなんだって」

雪歩「異界ならではね。きっと上級能力者たちなんでしょう。不思議と、可愛い女の子たちがこっち(異界)だと強力な能力を獲得するみたいだから」

春香「え?それって私が最強ってこと?」

雪歩・百合子「………」

春香「ちょっ、なんか言ってよ!」
393 : Pチャン   2021/09/19 05:45:36 ID:ykAwVliaKI
本選前日 - 異界商店街(旧地獄街)-

雪歩「ピザ生地は半日以上かけて(二次)発酵させておかないと美味しくできないと聞くけれど、異界素材だとそういうわけでもないのよね」

百合子「現世でも発酵なしで簡単ピザ!なんてのもありますけどね。えっと、明日の本選では、持ち込んだピザ生地に具材を載せて焼くだけ……って感じではないんですか?」

春香「うーん……それはそうとピザ窯なんてうちにないし、あっても持ってこれるような設備じゃないよ。ってことはさ、どう焼き上げるかも考えないといけないってわけかぁ」

雪歩「そういう諸々含めて、ピザの作り方に詳しい人を知らない?春香なら、こっちの商店街でも、親しい人多いでしょ?」

百合子「あと具材となるシーフードについても、詳しい人がいればいいですね」

春香「となると―――うん、心当たりあるよ!」
394 : Pちゃま   2021/09/19 05:47:51 ID:ykAwVliaKI
春香の案内で3人が向かったのは商店街「ナンナン」と看板がかけられた小さなお店だった。


百合子「ナンナン? 安直に考えるなら、ナンを作って、売っているお店ですか?たしかにそれなら窯での焼き方にも詳しいのかも……?」

春香「いやいや、ナンがメインってわけじゃないよ。試しに焼いてみたりもしているそうだけれど。ここは、どこの商店街にも一軒はありそうなパン屋さんだよ。他と違うところは、和風アレンジって言えばいいのかな、惣菜パンの具材が和を意識したものが多いんだ」

百合子「へぇ、和風のパン屋さん……! よく見れば、お店の佇まいもどことなく和ですね」

雪歩(だったら、素直に『紬』でよかったんじゃ)

春香(さすがに自分の名前そのままってのは恥ずかしかったんじゃない?)

春香「一部では早とちりのカリスマ……じゃなくて、小麦のカリスマなんて呼ばれもしているぐらいに腕の立つ人だから、きっと頼りになってくれるんじゃないかな」

百合子「そうなんですね。忙しくなければいいんですけど……」

春香「近くの甘味処に誘って、あんみつパフェでも奢ればイチコロだって!」

紬「それは、私が食べ物であっさり懐柔されるような安い女だとおっしゃりたいのですか?」

春香「げぇ!?紬ちゃん!?いつからそこに!?」
395 : 箱デューサー   2021/09/19 05:50:09 ID:ykAwVliaKI
百合子「紬ちゃん? わぁ……まさしく和の美人って雰囲気ですね。お店の看板娘さんですか」

春香「いや―――」」

紬「それは、私が店主などできずに、ただ愛想を振りまき、雑用しかできない小間使いのような存在だとおっしゃりたいのですか?」

百合子「!?」

春香「看板娘ってそういうものかなー……あはは」

百合子「す、すみません!店主さんだったんですね」

紬「ところで……久しぶりですね、萩原さん」

雪歩「ええ、白石さん、お久しぶりです。ふふっ。一段と綺麗になりましたね」

紬「なっ。あなたまでそのような……」

雪歩「本心ですよ?」ニコッ

紬「っ!! ……こんなところで立ち話もなんですし、どうぞお上がりください。今日は定休日ですので、そう忙しくはありませんから」

百合子「ほんとだ。書いてある。あ、申し遅れました、私、七尾百合子っていいます!春香さんたちといっしょに暮らしているんです」

紬「そうでしたか、あなたが七尾さん。お会いするのは初めてですが、天海さんからよく聞かされています」

百合子「そうなんですか?なんだか照れちゃうなぁ、あはは」

紬「妄想文学少女なのですよね」

百合子「空想文学少女です!どんなふうに伝えているんですか、春香さん!」

春香「ありのままなんだけど」
396 : プロデューサーちゃん   2021/09/19 05:52:40 ID:ykAwVliaKI
ナンナンの厨房にて、ピザ作りの基礎から応用まで一通りを教わる雪歩たち。
途中、おやつタイム(もちろんピザ)を挟み、気がつけば夕暮れを迎えていたのだった。

雪歩「白石さん、今日はありがとうございました。一朝一夕で極めたなんて言えませんが、おかげで何とかなりそうです」

紬「そうですね、正直、驚きました。さすがはあの方の弟子……いえ、すみません。この話はそう軽率にしていいものではありませんでしたね。いずれにせよ、萩原さんであれば、その妙な大会でも勝ち抜けると信じています」

春香「となると、あとは具材だよね。紬ちゃん、前にたしか菊地市場に知り合いがいるって話してなかった?」

紬「菊地市場?」

雪歩「一回戦の特設会場はそのそばに作られて、具材はそこで調達するそうなんです」

紬「そうでしたか………。この時季なら、もしかすると……少々、待っていただけますか。短い文をしたためて参りますので」

百合子「市場のお知り合いに、ですか」

紬「ええ。あの人であれば、あなたたちの力にきっとなってくれるはずです。それに……」

雪歩「それに?」

紬「ひょっとすると、あれが手に入るかもしれません」

春香「うん?見るからにわくわくしている表情だね、紬ちゃん。あれって何のこと?」

紬「っ! そ、そんなに顔に出ていましたか。ん、ん」キリッ

雪歩「ふふっ、すごく可愛かったよ」

紬「からかうのはやめてください///」ムニーッ

百合子「はんへははひほふへふんへふは(なんで私をつねるんですか)!?」
397 : プロデューサーちゃん   2021/09/19 05:54:52 ID:ykAwVliaKI
雪歩「それで結局、あれっていうのは?」

紬「実は……異界では今の季節、あの菊地市場で幻の魚―――瑠璃色金魚が手に入るかもしれないのです」

春香・百合子「どひゃぁっ!!」


Recipe6partCにつづく
398 : Pさぁん   2021/09/19 05:56:36 ID:ykAwVliaKI
清書と言いつつ、ほぼ補完部分(本選前日)の話でした。
今回、余裕があれば同じ商店街内で莉緒行きつけの飲み屋に立ち寄るシーンも入れたかったのですが叶わず。申し訳ない。
莉緒の立場上、おそらく再登場するでしょう。昴(プレアデス)も。たぶんですけど。
次回は『フローラ・アラカルト』とのやりとりから再開し、百合子の着替え(という名の雑コラ?)、それから菊地市場に材料調達(瑠璃色金魚含め、安価済)、うまくいけばサッと料理させつつ、いくつか安価出して、partCの清書で一回戦終了できるかも?


明日お休みをもらっているので清書は明日の夜にでも投下できたらなーと。
ご意見・ご想像募集中です!
何卒最後までお付き合いください!
399 : Pちゃま   2021/09/19 07:54:22 ID:aG5Zq.sZao
待っとるで
400 : プロデューサークン   2021/09/20 19:44:37 ID:OmqHunAlyE
お待たせしました!
Recipe6partC 下書き投下していきます


春香「というわけで、新衣装百合子ちゃんですっ!」

雪歩「他アイドルの既存衣装を百合子ちゃん用に作り直していますぅ!」

百合子「ど、どうもー」

春香「ぶっちゃけコラだよね。アイコラってやつですよ」

雪歩「生着替えシーンは私と春香ちゃんで美味しくいただきましたぁ」

百合子「言いたい放題!」

401 : 変態大人   2021/09/20 19:47:39 ID:OmqHunAlyE
雪歩「パンケーキ好きそうな衣装だね」

春香「あとプチシューね!あの劇場版から早7年半って信じられないよ」

百合子「『ミーツ・ザ・ノーツ』の衣装詳細は『悲しくなったり泣きたくなったらいっしょに歌ってみない?元気になれるおまじない、たくさんの音符に乗って届くといいな♪』ですね」

春香「『おまじない』、本当に素敵な曲だよね。ゲームサイズ版でもラスサビ前の『約束だよ!』のセリフが入っていて、おお!ってなったPも多いんじゃないかな」

雪歩「『飛んでけ!』」ペチンッ

百合子「ひゃうんっ♡」

春香「えぇ……」
402 : 魔法使いさん   2021/09/20 19:49:44 ID:OmqHunAlyE
本選1回戦 菊地市場付近 特設会場

百合子「う、海美さんたちにひどいことをって……そんな私たちはべつに……」

星梨花「! あなたが噂の妄想文学少女ですね。そこにいる2人を誑かした張本人!」

百合子「ええっ!?」

風花「お、落ち着いてください、星梨花お嬢様。私たちは料理で勝負しにきたんですから」

麗花「んー、でもでも、料理できない体にしちゃえば、手っ取り早いかも?」

百合子・風花「ええっ!?」

雪歩「星梨花お嬢様って……もしかしてあの箱崎の?こっちは噂どおり花の妖精みたいな子ね」

春香「どうしてこんなところにいるんだか。わざとか勘違いか、海美ちゃんってば彼女に何か吹き込んじゃっているみたいだし」

歌織「ふふふ、お話はそれまでにいたしましょう? 料理対決で存分に互いを知ってくださいな。さぁ、準備はよろしいですか?」

星梨花「はい!私、負けません!」

風花「お嬢様?はりきるのはいいですが、約束どおり、味見役に徹してくださいね?包丁を持たせたなんてことが旦那様に知られたら私たちクビになっちゃいますから」

麗花「ピッケルならいいかな?」

風花「ダ、ダメです!」

歌織「それでは『グリルモワール』対『フローラ・アラカルト』―――勝負開始です!」
403 : 仕掛け人さま   2021/09/20 19:52:42 ID:OmqHunAlyE
歌織の合図で、各チームともに菊地市場へと移動をし始める。飛んでいきそうになる麗花を風花が慌てて止めているのを尻目に、雪歩たち3人が先に市場へと入った。

雪歩「春香、百合子。今一度、作戦を簡単におさらいよ」

春香「うん。まずは市場を取り仕切っているっていう菊地さんの一人娘、真さんと接触しないとだね」

百合子「手分けはしないんでしたよね」

雪歩「ええ、私と春香にとってかなり久しぶりの場所、百合子にとっては初めての場所……それに用心するに越したことはないもの」

春香「下手に1人ずつになったら、たしかにまずいね」

百合子「危ない目に合うってことですか」

春香「うん、ナンパされちゃうかもだよ。ワンチャンあるかもしれないし、って」

雪歩「ひええぇ!」

百合子「そういう方向の危険性なんですね」

雪歩「白石さんの話していた幻の魚・瑠璃色金魚……あればいいけど」

ちなみに例の富豪が事前に市場関係者に「目利きができる人間には適正な価格で売る」ことを伝達・依頼している。
早い話、まともに食材のことを知らない人間には売らない。わかる人間には売るのを拒まない、ということだ。
このみがそれとなく話してくれた情報によると、大会運営そのものはおおよそクリーンと言っていいそうだ。すなわち、極論、あらかじめ優勝者が決まっているなどという裏事情はない。
審査員の過半数が富豪と親密にしている人物から選ばれる事実をしても、特定のチームに贔屓が発生しないようなルールをとっていると聞く。
実態としてもそのとおりであるのを願う雪歩たちであった。
なお、今回の食材調達資金についても「勝者は」経費扱いで後で対応がなされる。
404 : 我が下僕   2021/09/20 19:56:01 ID:OmqHunAlyE
春香「裏を返せば、敗者は損しかないってことだよね。せめて自分たちが食べる分を残してくれればいいんだけど」

雪歩「何言っているの。完璧に勝つ。でしょ?春香」

春香「だね。それはそうと、百合子ちゃん。何か感じる?」

百合子「う~ん……あまり大きな声で言えませんけど、魔導書が強く反応する食材は今のところ……いや、いいものが揃っているってのはなんとなくわかるんですけど」

春香「そうだね、目を凝らして見ているけどどれも悪くないと思う。ただ、ここ一番の勝負に使うとなると、物足りないかな」

雪歩「……そう。こうなると、瑠璃色金魚を中心に、それと合う海鮮食材で検討しましょう。1つ1つが最高の食材でも、組み合わせに問題があるっていうパターンもあるからね」

百合子「料理漫画でたまに見る展開ですよね。意外な食べ合わせで、高級食材を打ち負かす!みたいな」

春香「あ、ここじゃないかな、菊地さんのお店」

雪歩「ここは――――他と違ってお店というより……運営局って雰囲気ね。ねぇ、春香……」

春香「うん。うっすらだけど、ここに入った記憶があるよ」

百合子「え?それじゃあ、もしかしてその真さんにも出会ったことが?」

雪歩「ううん、ないと思うわ。私の記憶にある出会った子は、元気な男の子だもの。そうね、私たちと同い年ぐらいだった気がする」

春香・百合子「あっ……(察し)」
405 : Pたん   2021/09/20 19:58:35 ID:OmqHunAlyE
店内に入ると、凛々しい顔立ちをした美少年に見間違うようなショートヘアの美少女が何人かの客と楽しげに話していた。
客が全員男性だったせいなのか、雪歩がごくごく自然に春香の背中の後ろに立ち位置を変えたのを百合子は見逃さなかった。
やがて客の1人が「いやぁ、真ちゃんには負けたよ」と笑って、真と思しきその美少女が勧めた品々も追加で買っていく。
単なる看板娘ではなく商売上手なのがわかる。客足は一向に減る気配がない。どうやら真は一時的に店番をしている、という感じではなく任されているふうだった。
その真が、見慣れない雪歩たち3人に少し遅れて気がつく。「あの、」と春香が挨拶を交わそうとしたそのとき、真は驚いた表情に変わって、3人に近づいてきた。

真「もしかして春香と雪歩!?」

百合子(私もいますよー)

春香「え?う、うん。えっと、あなたが真さん?って、いや、そうじゃなくて、え?私たちを知っているの?」

雪歩「………」

真「ボクのこと、覚えていない?ほら、昔、ここで会ったよね」

雪歩「えっと、ひょっとして、あのときの……活発な男の子って」

春香「あー……うん、あれだね、昔に一夏の間遊んだ子が男の子だと思っていたら女の子だったのが後年になってわかる展開ね」

百合子「ベタですね」
406 : 夏の変態大三角形   2021/09/20 20:00:50 ID:OmqHunAlyE
真「そっか……あんまり覚えていなかったかぁ。ボクは忘れたことなんてないんだけど」

春香「ええっ?そ、そんなに?なんかあったっけ?命救ったとかそういうの」

雪歩「そこまでのだったら、覚えているはずだけど……うーん、どうだろう。そもそもが師匠と菊地さん……真さんのお父様が知り合いなんだよね、たしか」

真「えっと……恥ずかしい話だけど、ボクにとっては初恋の相手みたいなものだから」

春香・雪歩・百合子「!?」

真「へへへ……。ずっと会いたかったよ、春香」

春香「私?!」

雪歩・百合子「!??!??」

真「うん。あの頃って、春香、今よりずっと髪が短かったよね。なんだったら今のボクよりさ」

春香「そ、そうだっけ?」

雪歩「料理修行中に火の使い方間違えて、部分的に髪を焦がしちゃったから、その勢いで短くしていたのよ」

百合子「白雪さんは覚えているんですね」

春香「いやぁ、でもさ、だからといって、うん、つまりあれでしょ?私を男の子って勘違いしたってこと?いやいや、名前でわかるじゃん」

雪歩「……師匠はハルって呼んでいたから。私は……今と比べて無口だったからたぶん『春香』とは呼んでいない」

春香「でも、服装が……」

雪歩「この市場に来るのにお洒落してこないでしょう?食材の匂いがうつってもいいような、そして動きやすい恰好で来ていたと思うわよ。それこそ男の子と変わらないような」
407 : 高木の所の飼い犬君   2021/09/20 20:03:09 ID:OmqHunAlyE
春香「そっかぁ。なんかごめんね、真さん。私がこんな可愛い女の子でがっかりしちゃったかなー、あはは」

真「ううん、大丈夫」

春香「え?」

真「変わっていたけれど、ボクは気がついたよ。君が春香だってこと。ああ、春香っていう名前をさ、父さんが後になって教えてくれたんだ、女の子だってこともね」

春香「へ、へぇ」

真「実際に再会してわかった。ボクは今でも、」

雪歩「そうはならんやろ」ズイッ

百合子「白雪さん!?」

雪歩「百歩譲って、そこは私やろがい。唐突なはるまことかなんなん?わりとここまではるゆきも推しているんだが?」

春香「あっ、あーっ、ナンナンで思い出した!えっと、真さん!私たちね、紬ちゃんの紹介なんだ!」
408 : ダーリン   2021/09/20 20:06:01 ID:OmqHunAlyE
真「紬の?」

春香「そう!そのとおり!私たち、例の大会の参加者なんだよ!うん!今は大会に集中したいかなーって!」

真「そっか。ごめんね、ボクとしたことが事を急ぎ過ぎたみたいだね。春香……大会が終わったら、時間を作ってくれるかな?」

春香「えっと、」

雪歩「春香。私たちは家族。何より大切な存在よね?」

春香「えっ、なにどうしたの、雪歩。目が怖いんだけど」

真「雪歩……家族離れもいつかは必要じゃない?」

百合子「あわわわわ、17歳トリオのはずが、修羅場トリオに!?」

春香「は、はいっ、これ!紬ちゃんからの手紙!受け取って!ほら、読んで早く!」

真「………………なるほど、瑠璃色金魚か」

百合子(あれ?私、自己紹介のタイミング、完全に見失った?)
409 : Pくん   2021/09/20 20:08:58 ID:OmqHunAlyE
真「わかった。瑠璃色金魚を用意しよう」

春香「ほんと!? ありがとう、真さん!」

真「真でいいよ、春香」キリッ

春香「う、うん///」ドキッ

雪歩「……………」ギリギリ

百合子「この展開なんなん……」

真「ん、ん。ただし、瑠璃色金魚を売るには条件がある」

雪歩「ねぇ、まさか公私混同しないわよね?」

真「しないさ。紬から聞いたと思うけど、瑠璃色金魚は幻とも言われる魚なんだ。本来はそのすべてが上得意客にのみ売られるものさ。……そんなわけで父さんに確認せずに、というのは実のところまずくもあるんだけど、でも大会で使うんだったら、きっと許してくれると思う。店の宣伝を忘れずに、ね」

春香「うん」

雪歩「店の宣伝……条件はそれだけじゃないんでしょう?」

真「ああ。【A】ってのはどうかな?」

百合子「どひゃぁっ!」

(以下、加筆)
410 : 魔法使いさん   2021/09/20 20:11:18 ID:OmqHunAlyE
無事(?)に真から瑠璃色金魚を得たグリルモワーリルの3人。
会場へと戻る前に、他のお店で瑠璃色金魚と合い、そしてアクアピッツァにうってつけのシーフードを探す。
真のアドバイスもあって、ウドンイカと食用ウミウシを調達した。

百合子「食用ウミウシですか……美味しいんですか、これ」

春香「食用だからね。他のウミウシとの差別化というか、イメージアップを狙ってなのか、アリエルっていう愛称がつけられている種みたい」

百合子「へぇ、リトル・マーメイドですか」

雪歩「お兄様の邪魔をするな!」

百合子「あっ、そっちですか。そっか、ウミウシだからですね」

春香「百合子はウミウシのことを少し、勘違いしていたみたいだ」

雪歩「求婚されるかも」

百合子「いやいや、そんなこと、」

春香「あり得るね。アリエルだけに」

雪歩・百合子「………」

雪歩「百合子、やっておしまい!」

百合子「アラホラ、サッサー!」

春香「甘いっ!」ムニーッ

百合子「はへひふひ(返り討ち)!?」



春香「あと、ウドンイカは最上のものを選べたよ」

雪歩「もがみ?」

百合子「さいじょうです!」
411 : >>410 グリルモワールでした(汗   2021/09/20 20:14:22 ID:OmqHunAlyE
- 特設会場 -

歌織「2チームとも、会場に戻ってきましたね。では、ここからは亜美お嬢様親衛隊が1人で、今回のゲスト審査員の翼ちゃんといっしょに選手たちの料理していく様子を実況解説していきたいと思います」

翼「どうもーっ!伊吹翼でーす♪」

観客「ワァァァアアアアア!!!」

翼「ねぇ、歌織さん。実況解説と言っても、ピザでしょ?生地作って、トッピングして焼くだけじゃないの?」

歌織「あら、そんなのピザ職人たちが聞いたら卒倒しちゃうわ。でも、そうね、わかりやすい部分をまずは見ていきましょうか」

翼「ってことは?」

歌織「各チームがトッピングとして選んだ食材。なかなか珍しいものを選んだみたいだから」



百合子「! 魔導書が強く反応している!? こ、これは―――?」

麗花「ふんふんふーん♪」

雪歩「どうやらあの人が調理しようしている食材みたいね」

春香「でも、あんなの……なかったよね?」

麗花「とれたて♪新鮮♪嬉しいなー♪」

百合子「……もしかして今獲ってきたんじゃ?」

春香「ルール上、ありなんだっけ」

雪歩「制限時間内に戻れるのなら、でしょう。常人じゃ無理よ」


(以下、加筆 勝敗は次パートを予定)
412 : プロデューサー様   2021/09/20 20:16:39 ID:OmqHunAlyE
※【A】真が瑠璃色金魚を売るのに提示した条件は? 文脈どおり、真の個人的感情での条件は非採用 なるべくその日その場でできる勝負や挑戦でお願いします 

※【B】紬と真の関係って?(加筆部分で少し触れる程度かも)

※【C】『フローラ・アラカルト』のアクアピッツァの(瑠璃色金魚に匹敵する)キー食材とは?

※【D】第4のクッキングデバイス ピザ窯以外でお願いします

※「亜美お嬢様親衛隊」というのは仮名です。今後、掘り下げるかは不明

レスの有効期限は9/22 19:59:59まで
清書投下は9/23を予定
何卒ご協力お願いします!
413 : Pはん   2021/09/20 20:41:33 ID:NoxccSmsz.
A ポーカー
B 真の習い事(空手)の元門下生
C キャンディパール
D 施策まな板C-72
414 : 兄ちゃん   2021/09/21 20:12:49 ID:6LvM8cImVw
定期age

少し予定が変わったので清書投下が1日遅れるかもです
ご協力お願いします!
415 : Pしゃん   2021/09/22 02:36:15 ID:ZECZdTbWcg
A:漁師を納得させて見せる(要約:一品作れ)
B:ダンス教室と日舞教室でそれぞれ一緒になった
前者で紬が真に、後者で真が紬に惹きつけられた
C:(天丼)海蛇「ダイヤモンドダイバー」
D:ピッツァを載せる板「蒼い鳥」
416 : 3流プロデューサー   2021/09/24 19:47:28 ID:kyQcOXMelo
定期age……ですけど、今日中に書くつもりが時間とれなくて無理っぽいです
レスもらっているので打ち切りはないです!
というか、展開に詰まっていないし。時間と体力がないだけですし

遅くても9/26の夜には必ず清書投稿します
9月中にRecipe7入りたいんですわ
417 : EL変態   2021/09/24 20:16:49 ID:EWkZ73A98o
頑張れ!燃えろ!
でもピッツァを焦がす展開は勘弁な
418 : プロデューサー   2021/09/27 02:03:47 ID:whcqSDLqtA
疲れて眠っちゃったよ!
今夜か、明日が休みになったので落ち着いて書くかにするよ!
なんもかんも休日出勤が悪いんだよ
419 : der変態   2021/09/28 12:13:02 ID:fhEGJEVAxA
Recipe6partC清書、やっと書けました!
(連投規制もあるから)ゆっくり投下していくよー
420 : 高木の所の飼い犬君   2021/09/28 12:15:22 ID:fhEGJEVAxA
Recipe6partC 清書

菊地市場で再会を果たした菊地真
紬からの手紙を渡して、瑠璃色金魚を売ってもらおうとする雪歩たち。
しかし易々と誰にでも売れないほどに貴重な食材であるらしく、真はある条件を提示してきたのだったが……?


春香「ポ、ポーカー?」

雪歩「席替えの時間始まります」

百合子「冗談のブラフ、視線のフェイク」

真「いや、『POKER POKER』じゃないよ!」

春香「どうしてポーカーなの?」

真「菊地市場の人間にとっては馴染み深いものなんだ。オリジナル柄のトランプだって売っている店があるぐらいさ。異海の生物たちのイラストがプリントされたものとかね」

百合子「へえ、漁師たちが船上で暇つぶしにしてでもいたんでしょうか」

雪歩「トランプといえばMILLION THEATER SEASONだね」

春香「この4人の中だと、雪歩がBRIGHT DIAMONDのメンバーでつい先日、シーズンを締めくくる13人曲である『ダイヤモンド・クラリティ』が実装されたばかりだよ」

百合子「特別ラジオも配信中なんですよね。次のスートではどんなメンバーで、どんな曲になるのか楽しみです!」

真「というわけで宣伝もできたところで、勝負するかい?ルールはわかりやすい、ファイブカード・ドロー形式をとるよ」

雪歩「1回勝てばそれでいいわけ?」

真「ああ、1回でいい。しかも本来のポーカーと違って純粋な役と役の勝負さ」

百合子「相手を降ろさせての勝利がないってことですね。ブラフがない分、駆け引きの要素は薄いですね」
421 : バカP   2021/09/28 12:17:34 ID:fhEGJEVAxA
真「ただし……君たち3人が全員同一役でないといけない」

春香「え?」

雪歩「ふうん。つまり私たちの誰かが真さんに役で勝つのではなくて全員いっしょの役で上回らないといけないわけね」

百合子「たとえば私たちが全員ツーペアで、真さんがワンペア……こうだったらいいわけですね?」

真「そういうこと。ゲーム中の話し合いもなし。カードは裏向きで捨てること」

春香「ねぇ、雪歩。私、よくわからないんだけど、この条件は難しいの?」

雪歩「なんてことないわよ。私たち3人がロイヤルストレートフラッシュを作れば負けっこないもの」

百合子「いやいやいや! 無茶言わないでくださいよ! 0.00015%なんですよ?!」

春香「え?そんなに低いの?」

百合子「いいですか、春香さん。交換しないで、最初に引いたランダム5枚でワンペアができる確率ってのがおよそ40%で、これがツーペアだとどうなるか知っていますか?」

春香「うーん、計算がめんどうだけど、たぶん半分の20%もないんだよね?」

百合子「それどころか5%もないんです!ノーハンド、通称ブタといわれる何の役にもなっていない手札になるのが50%なんですから」

春香「へ、へぇ。でもこれで方針はゲーム前に決まったね」

百合子「どういうことです?」
422 : 魔法使いさん   2021/09/28 12:19:52 ID:fhEGJEVAxA
春香「全員でワンペア狙って、真がブタになるのを待てばいいじゃん」

雪歩「……何回も挑戦させてくれるの?」

真「ああ、いいよ。でも君たちの時間の方が先に尽きるんじゃないかな?」

春香「たしかに食材を集めて会場に戻り、ピザを焼かないといけないから、すぐに勝たないとだね」

百合子(白雪さん、どう思いますか?真さんの余裕な表情)ヒソヒソ

雪歩(真ちゃん、かっこいいですぅ…!)

百合子(そうじゃなくて! 何か裏があるんじゃ……)

雪歩(そうかもね。でもね、百合子。忘れたわけじゃないでしょう?)

百合子(何の話ですか?)

雪歩(私たちが出会えたのはそんな、ちんけな確率の事象じゃないってことよ。何億、何兆どころか、天文学的な数字でさえ計り知れない、世界をまたいで私たちは出会い、家族になった)

百合子(白雪さん……)

雪歩(それに比べれば、こんなの朝飯前よ)グゥ~

百合子(し、白雪さん?)

雪歩(はうっ! ち、ちがうんですぅ!今のはお腹の音じゃなくて、えっと、ほら……むにーっ)

百合子(ひはふひはん!?)

春香(しまらないねー)

真(さっさと始めようか)
423 : 兄(C)   2021/09/28 12:22:04 ID:fhEGJEVAxA
BGM 水瀬伊織 『ロイヤルストレートフラッシュ』

真「デュエル開始!」

手際よく自分自身を含めて皆に5枚配る真

春香「!?」

春香(い、いきなりツーペア揃っている!? なんで!?)

百合子(ブ、ブタです。でも交換すればきっとワンペアぐらいには……!)

雪歩(ぶぅー、ぶぅー)

真「さて、それじゃあ、ボクからいくよ。この2枚を墓地に捨てて、ドローっ!! ふっ……負ける気がしないね」ニコッ

百合子「くっ、さすがは最近フェスが実装された真さん…!」

雪歩「何気にこの中では私だけだよね、フェスがまだなの」

春香「まあ、年末に来るんじゃない?知らんけど」

百合子「ところで、紬さんと真さんはどんな関係なんですか?」

春香「今のところ絡みがあったと思われるのって、ヒーローズ関連だけかな」
424 : Pくん   2021/09/28 12:24:28 ID:fhEGJEVAxA
雪歩「全部のコミュを記憶しているわけでもないから、案外、どこかで共演しているかも」

真「ミリシタの話は一旦おこう!? ボクは昔、あっち(現世)のダンス教室に通っていたことがあるんだよ」

百合子「ダンス教室?」

真「そう。先生が面白い人でね。道場破りってわけじゃないけど、毎月一度は必ず、どこかべつの教室を何人かの生徒と訪れて、技術を学びとるんだ」

春香「それは楽しそうだね!」

雪歩「その訪問先で白石さんと?」

真「そういうこと。紬の日本舞踊は綺麗だったなぁ。立ち居振る舞いからして大和撫子って感じでさ。それで、後で見せることになったボクのダンスに、紬は『舞と云うよりは武 武闘ですね』って言ってきたんだよ」

百合子「ええっ!」

真「紬の舞踊に応えたいと思ってのダンスだったのに、そんな評価されたからついキレちゃってね。それからなんやかんやあって、最後は紬が涙目になっていたよ」

春香「何があったの!?」

雪歩「まこつむですか、大したものですね」

真「閑話休題、勝負を再開しようか」
425 : Pサマ   2021/09/28 12:26:55 ID:fhEGJEVAxA
20分後

百合子「か、勝てない……!」

春香「どうなっているの!?何度やっても真は必ずワンペア以上の役を作ってくるし、私たちの役はいっこうに揃わないし……もしかしてイカサマ!?」

雪歩「………」

真「ひどい言いようだなぁ、春香。ボクはただ自分の力で勝利しているに過ぎないよ?」

百合子「真さんの力――――はっ!? 白雪さん、ひょっとして、これって」

雪歩「スタンド能力……!?」

春香「ええっ、真の異界での能力がトランプに特化したものだって言うの!?」

真「さあ、どうかな、ふふふ」

雪歩「! おそらくこれは……特定条件下での確率操作能力ね。イカサマなんかよりもずっと質が悪いわ」

真「……まいったな、そういうことまで詳しいんだ。というより洞察力か」

百合子「そんな!つまり何度やっても勝利条件を達成できるような結果にならないってことですかーっ!?」
426 : プロデューサーくん   2021/09/28 12:28:52 ID:fhEGJEVAxA
春香「真っ!なんでっ、そこまで……!」

真「改めて言っておくけど私情じゃないよ。この店で、瑠璃色金魚はそれだけ価値のあるものってことだよ。さあ、諦めるかい?」

百合子「白雪さん、このまま続けても時間がなくなる一方ですよ」

雪歩「しかたないわね。こうなれば瑠璃色金魚の代わりに……」




春香「待って、2人とも」

雪歩・百合子「!」

春香「私たち3人の力が合わされば、こんなのどうってことないって」

真「春香……大口叩く君も素敵だけど、自分の置かれた状況を見極められないのはこの先困るよ?」

春香「そのとおりだね。さぁ、もう1回、ゲームといこうよ。見せてあげる、私たち3人の力を!」

雪歩(春香、いったいどうするつもりなの)

百合子(何か作戦が……?仮に能力で対抗しようにも春香さんの能力は身体能力向上……概念干渉に太刀打ちできるわけ…)
427 : 貴殿   2021/09/28 12:30:55 ID:fhEGJEVAxA
真「デュエル開始!ドローっ!」

ゲームが再開され、これまでと同じように配られるカード、各々がたった一度のチェンジに賭ける
しかし実態としては真の能力『絶険、あるいは逃げられぬ恋』によって結果が操作されてしまう

真「春香、ボクの勝ちだ」

勝利を確信した真がそう宣言する。肩をすくめた百合子の隣でそれは起こった。

春香「ああっと、転んじゃったーっ!」

ドンガラガッシャーン!!!!!
春香が盛大に転び(?)、テーブルに置かれた山、雪歩が咄嗟に離した手札、春香が強引に掴むようにして落とした百合子の手札、それらすべてが床へとばらまかれる
が、次の瞬間、春香は倒れきることなしに、39の工程を完了した後、元どおりの体勢に戻った
あたかも何も起きなかったように元の位置に戻されるトランプの山 3人の手札
ぽかんと口を開き、驚きを隠せない真

春香「よっと。ごめん、ごめん。えーっと……真の役は、わぁ!スリーカード!? すごいじゃん!」

真「は、春香、君は今……」

春香「ほら、雪歩、百合子。手札を出しなよ。見せてあげないとね」

百合子「!??! あ、はい。えっと………ストレートです」

雪歩「私も。ねぇ、春香は?」
428 : ダーリン   2021/09/28 12:33:19 ID:fhEGJEVAxA
春香「おおっ!いやぁ、こんな『偶然』って本当に起こるんだね!私もストレート!」

真「春香ァ!!」

春香「もうっ、そんな情熱的に求められても~。ほら、私にはちんちくりんなお姉ちゃんと妄想癖のある妹、それに大型犬みたいな可愛い妹だっているし」

真「待ちなよ、今のこそイカサマだろ!?」

雪歩「どういうこと?うちの春香が何かしたっていうの?」

百合子「だったら説明してください。春香さんが何をどうしたのか」

真「それは………」

真自身、説明しようがなかった。ありのままを伝えるなら、確定したはずの真の勝利が、春香が転んだその瞬間に敗北と変わった
だが、運命変転なんて大層なものじゃない、間違いなく春香が力技でどうにかしたのだ!
残念なことに、その詳細を説明できるだけの力はこの世界の真にはないのだった

真「ぐっ、こんなのって暴力となんら変わらないじゃないか!」

雪歩「認めなさい。私たちはあなたの定めた運命を打ち破り、自分たちの望む新たな運命を切り開いたのだと!」

百合子(白雪さん、べつに何もしていないんじゃ……)

春香(ううん、私が『転ぶ』タイミングに合わせて自分から手札を離してくれたよ)
429 : プロデューサーくん   2021/09/28 12:35:36 ID:fhEGJEVAxA
百合子(白雪さんはあの一瞬で春香さんが何をするか読んだってことですか?)

春香(ま、付き合い長いからね。15年ぐらいかな)

雪歩「約束を果たすのよ。瑠璃色金魚を渡しなさい!」

百合子「めっちゃ目をきらきらさせていません?」

春香「雪歩、真に対してこういう役になるの珍しいからはりきっているんだと思うよ」

百合子「あー……はい、なるほど」





春香「瑠璃色金魚、とったどーーー!!!」

雪歩「やーりぃ!」

真「それ、ボクの台詞!」

百合子「あはは……」


かくして瑠璃色金魚を手に入れた『グリルモワール』3人はその他の食材を調達してから、特設会場へと戻った
430 : 3流プロデューサー   2021/09/28 12:38:28 ID:fhEGJEVAxA
特設会場 
両チームが調理を開始し、歌織と翼がその実況解説を行う

歌織「『フローラ・アラカルト』の北上選手が調理しているあれは―――異海蛇ね」

翼「えー?ウミヘビなんて美味しいんですかー?鰻や穴子とは違うんですよね?」

歌織「そうね。あの種は……間違いなさそうね、ダイヤモンドダイバーと称されるものだわ!」

翼「ダイヤモンドダイバー♢?いかにも深い、深い海にいそうな名前ですね。珍しいんですか?」

歌織「ええ、幼体はかなり珍しいわ。成体にもなると全長7.65メートルもの大きさになって、異海のガーディアンだなんて言われて、異海のダイバーにとっては嫌でも目にする存在になるのよ。食材としては断然、幼体が高級だわ。成体は逆に不味くて食べられないとまで言われるから」

翼「えっと、麗花さんの調理しているのは幼体ですよね?

歌織「ええ……幼体を一匹獲るのに十の命が失われると言われるダイヤモンドダイバー。あれを1人で、しかもこの短時間で調達してきたというのなら、北上選手はかなりの腕前ということになるわね」

翼「ふーん、センパイといい勝負になるかも、なんて。わたしも負けるつもりないですけど!」

歌織「ん?待って、あれは――!」
431 : プロデューサークン   2021/09/28 12:40:54 ID:fhEGJEVAxA
翼「わぁっ!きれい!真珠ですか?あれ?でもピザ生地の上に乗せちゃうのー!?」

歌織「豊川選手が持っているあれは、キャンディパール!小ぶりの種ではあるけれど、きっとピザのトッピングとして相応しいのを市場で選んだのね」

翼「キャンディ?ピザにですかぁ?」

歌織「翼ちゃん、キャンディといっても甘いものだけじゃないわ。あれはむしろ……いえ、これ以上の解説は実食してからね」

翼「えー、もったいぶるんだからー。ん?あれ、ダイヤモンドにパールって……」

歌織「ポケ○ンね。2006年にDS専用ソフトとして発売されたダイヤモンド・パールだけれど、偶然にも今日(9/28)がちょうど15周年なのよね」

翼「2021年11月19日にリメイクが発売予定らしいです!」

歌織「アイドルマスターとしては2006年というと、ラジオ番組の開始だったり、アーケード版の稼働1周年記念イベントの開催だったりがあったのよね」

翼「翌年2007年1月にセンパイが登場したいわゆる箱版が発売されたって聞きました!」
432 : 師匠   2021/09/28 12:44:01 ID:fhEGJEVAxA
春香「ぐぬぬ……なんでこのわた、春香さんを差し置いて向こうがダイヤモンドダイバーを……!」

雪歩「どうどう。ほら、向こうでうとうとしている星梨花ちゃんの顔でも見て癒されなさい」

百合子「天使ですね!って、ほんとに味見役なんだ」

春香「よーしっ、私たちも集めた材料とクッキングデバイスを駆使して、ピザ作りするよ!」

百合子「メインはこの瑠璃色金魚……うわー、何度見ても、この色と輝き、大きさは私が知っている金魚じゃないです!」

春香「そしてウドンイカとウミウシ(アリエル)、よし!これだけの食材が揃ったアクアピッツァなら楽勝だね!」

雪歩「プレアデスから貰った異界チーズもこんなところで活かされるとはね。あとは……あれね」

百合子「ええ。まさかあの時あの人たちにもらったあれが、ふふっ、これも運命ですね」

春香「え、なにそれ?粉……?私、知らないんだけど!」

雪歩「慌てなくていいわ。すぐにわかるわ」

春香「えー! 雪歩様はいけずです♡」

雪歩「その低クオリティのモノマネ、二度としないで」

春香「はい」
433 : Pくん   2021/09/28 12:47:18 ID:fhEGJEVAxA
百合子「ピザ窯は結局、会場に用意されていましたね。えっと、白雪さん、プレートは本当にこれを使うんですか?」

春香「!! 雪歩、これを持ってきていたの? お題がピザにでもならなきゃ、見栄えはともかく、効果はあんまり発揮されないやつだよね?」

雪歩「ええ、出発前に荷物整理をしていたら声が聞こえたのよ」

百合子「お皿のですか?」

雪歩「はっきりとじゃないわよ?でも、そうね……あの店には久しく使われていないクッキングデバイス、それにまだ私たちが扱えないようなものも眠っているの。そのなかで、この『蒼い鳥』が呼びかけてきた、そんな気がしたのよ」

百合子「私と魔導書の関係に近いってことですか」

春香「どうだろう。雪歩ってほら、ポエマー(笑)だから、普段からいろいろ声聞いているみたいだよ」

雪歩「………」ムニーッ

百合子「だはら、はんへ、わはひはんへすかー!!(だから、なんで私なんですかー)」


次回、それぞれのピザ完成!そして実食審査へ……!
434 : 我が下僕   2021/09/28 12:52:16 ID:fhEGJEVAxA
審査とその結果は、Recipe7partAとして扱うか、Recipe6partDとして扱うかは考え中
どちらにしても最速で今夜、予定では明日の朝、遅くとも9/30の夜には書き切るつもりです

ご意見・ご想像募集中
最後までお付き合いいたただけると嬉しいです
最終話のRecipe8まで駆けていくぞー!
安価も出していくので何卒ご協力お願いします!
435 : Pサン   2021/09/28 19:56:38 ID:bjPArkZHdk
お疲れ様です
まあ焦らずにいきましょう
8月半ばから今日までぶっ通しでも何とかなりますから
(大丈夫とは言ってない)
436 : P君   2021/09/28 22:19:53 ID:fhEGJEVAxA
Recipe6partD 投下していきます!

令嬢・亜美が主催する異界での料理大会 
本選1回戦は菊地市場近くの特設会場にて行われていた
箱崎星梨花・北上麗花・豊川風花、3人の花の乙女によって構成される『フローラ・アラカルト』は、異海のガーディアンにして鰻や穴子の味を悠々と超越する比類なきシーフード・異海蛇、ダイヤモンドダイバーをメイントッピングとするピザを焼き上げる!
一方で、萩原雪歩・天海春香・七尾百合子、『YUKIHO'Sキッチン』で暮らす3人は『グリルモワール』として、瑠璃色金魚をメイン食材として他にウドンイカ、食用ウミウシ(アリエル)をトッピングしたピザを作る!
審査員を務めるのは、富豪とつながりのある財界や法曹界の大物に加えて、司会も担当する桜守のご令嬢・歌織、そして亜美令嬢の親衛隊の1人である伊吹翼であった。


星梨花「これで完成ですっ!」

麗花「みんなに食べてもらうために切り分けないとね♪ピザカッターはドコドコ?」

風花「ミ、ミツケター!」


歌織「『フローラ・アラカルト』のピザが今、できあがったようです!」

翼「わたし、もう腹ペコですよー」

他の審査員たちもうんうんと頷く。

歌織「確認したところ、『グリルモワール』のピザはもう少しだけ時間がいるとのこと。それでは、まずは『フローラ・アラカルト』のピザから実食といきましょう♪」

翼「やったー♪」

観客「ワァァアアアアアアア!!」
437 : Pたん   2021/09/28 22:22:20 ID:fhEGJEVAxA
麗花「歌織さん、どこを食べたいですか?」

歌織「え?ど、どこって?」

麗花「ふつうに切り分けるのも面白くないなーって。いっそ、真ん中から小さな丸を取り出しちゃいます?」

歌織「う、ううん。麗花ちゃん、ここはアドリブを入れずに扇形を作るように切り分けてくれるかしら?」

麗花「はいはーい♪」

風花「これが翼ちゃんの分、っと。熱いから気をつけてね」

翼「ありがとうございまーす!わぁっ、おいしそう!」


歌織・翼「はむっ」



歌織「だ、だいばぁぁぁあああああああっっ!!!」

観客「!?」
438 : 仕掛け人さま   2021/09/28 22:24:29 ID:fhEGJEVAxA
歌織「すごい、想像以上だわ!焼き上がった海蛇の濃厚な、いえっ、なんて深みのある味なの!?まさに深海の神秘よ!言うなれば、深層マーメイド!!」

春香「曲変わっているやないかーい!」

雪歩「春香、横槍を入れるのはやめなさい」

百合子「あはは……」

歌織「そしてこのキャンディパール……!思ったとおり、キャンディと言いつつもこのピリッとした辛みと硬すぎない絶妙な歯ごたえ、やるわね」

星梨花「ふふっ、実はこちらも用意しているんですよ」

春香「あ、あれは!」

百合子「知っているんですか、春香さん!?」

春香「いや、知らない」

百合子「ズコー!」

雪歩「なに、くだらない掛け合いしているのよ。ほら、私たちのピザ、もう少しよ」
439 : Pーさん   2021/09/28 22:26:00 ID:fhEGJEVAxA
星梨花「じゃーん!追加トッピング用、ピザソースです!」

歌織「ええっ!?ここからさらに!?」

風花「タバスコやクラッシュドレッドペッパーもいいですけど、これはもっとすごいですよ」

麗花「さぁ、どうぞお試しあれ♪」

歌織「ぴっつぁぁぁあああああああああああんん♡♡♡」

百合子「あの歌織さんがあんなにとろけた表情に!?」

観客「うぉおおおおおお!!!!!!!!」




歌織「ねぇ、翼ちゃんはどう――――!?」

観客「!!」
440 : Pはん   2021/09/28 22:28:42 ID:fhEGJEVAxA
雪歩「ええっ!?あれってサニー・オーシャン!?いつの間に着替えたの!?」

春香「期間限定ガシャ【水上のユーフォリア 伊吹翼】の衣装だってぇ!?」

百合子「覚醒前イラストには私も写り込んでいますよ!」

翼「はっ!あまりの美味しさにいつの間にか水着衣装に着替えちゃっていました☆」

観客「うぉおおおおおおおお!!!!」

雪歩「ひぃっ!! あんなの14歳の身体つきじゃないですぅ!!おかしいですぅ!」

歌織「まさに体を張ったリアクションね。ふぅ……これは早くも勝者が決まったかしら」

観客「おおおおおおお!!」

441 : プロヴァンスの風   2021/09/28 22:30:51 ID:fhEGJEVAxA
春香「ちょーっと、待ったぁ!!」

百合子「まだ私たちのピザを食べていないじゃないですか!」

雪歩「たった今、完成しましたよ。最高の1枚ができたのでぜひお召し上がりください!」

春香「SSR確定ですよ!SSR確定!」

歌織「いいでしょう。でもその前に1つ気になるのだけれど……いいかしら?」

百合子「なんですか」

歌織「あなたたちのピザ、窯から取り出したばかりなのに、ちっともアツアツなふうじゃないけど……どうして?」

星梨花「あれ?本当ですね。まるで……」

風花「焼いていないみたいですね、あれじゃ」

麗花「あの板が関係しているんじゃないかな?」

星梨花・風花「へ?」

翼「ピザの下に敷かれた蒼い板……?綺麗だけれど、なに、これは……」

歌織「困ったわね。私でも知らないわ」

雪歩「食べてみてください。それですべてがわかりますから」

歌織「え、ええ。では、」

歌織・翼「んむっ」
442 : ハニー   2021/09/28 22:33:24 ID:fhEGJEVAxA
翼「おぉーーーーーしゃーーーーーーんんんんっっ!!!」

歌織「な、なんなん!? このピザは!? 本当にピザなの!?冷めたピザじゃない、はじめから冷たい!?というよりこれは清涼感!?ピザなのに?!」

雪歩「瑠璃色金魚の繊細な味を最大限に活かすには刺身が一番、ピザの具材になんてのは実は邪道……でも、それを覆す!!」

春香「ピザ板に使った『蒼い鳥』はヒートを加えれば逆にクールさが増す」

百合子「泣くことならたやすいけれど 悲しみには流されない」

雪歩「恋したこと この別れさえ」

雪歩・春香・百合子「選んだのは自分だから!!!」

翼「は、はい」

歌織「このウドンイカ、本当にうどんみたいだわ!」ズルズル

翼「まつりさんをアリエルに配役したのは神だと思います」ウミウシ

歌織「美味しいわ。うーん、でもこれじゃ『フローラ・アラカルト』と甲乙つけ難いわね」

翼「悩んじゃいますね」

雪歩「まだ終わっていないわ」

翼・歌織「!?」

雪歩「百合子、例のものを」

百合子「かしこまり!」
443 : おにいちゃん   2021/09/28 22:35:24 ID:fhEGJEVAxA
歌織「な、なにその粉は……」

翼「怪しいおクスリじゃないですよね?」

春香「ちがうよ!! ちがう、はず。結局、何なのか教えてもらっていないけど」

百合子「ピザにパラパラっと」

歌織「ペッパー?でも普通のものなら、味なんて大して変わることは……」


麗花「あちゃー……」

風花「麗花ちゃん?」

麗花「この勝負、私たちの負けかもしれません」

星梨花「ええっ、ど、どういうことですか!?」

麗花「あの粉の正体、私、心当たりがあるんです」

風花「そうなの?いったいあの粉は……?」

麗花「あれはどちらかといえば私たち『フローラ・アラカルト』が使うようなものなんです。うーん、これはやられちゃったなー」

星梨花「『グリルモワール』さんたちのメイン食材は瑠璃色金魚……ああっ!まさかあれって―――」


歌織・翼「!!」モグモグ
444 : 師匠   2021/09/28 22:37:25 ID:fhEGJEVAxA
♪~ ♪~

春香「え、このイントロって……」

雪歩「予選を終えてモブ子さんたちから百合子がもらった謎の粉――――それは、異界花菖蒲を乾燥させて粉末状にしたものよ!」

春香「どひゃぁあっ!」ドンガラガッシャーン

百合子「とりあえず異界ってつければ食用に適するってことでお願いします!」

歌織・翼「瑠璃色金魚は恋焦がれる 凛と咲き誇る花菖蒲~♪」

風花「そ、そんな! 歌織さんと翼ちゃんのデュオカバー!?贅沢すぎるわ!」

星梨花「あわわわわわわ」

しばし清聴する雪歩たち。と、盛り上がる観客―――!



歌織・翼「私きっと~♪」

観客「ワァアアアアアア!!!!!!」
445 : Pたん   2021/09/28 22:39:45 ID:fhEGJEVAxA
雪歩「このピザは普通のピザとはちがう、挑戦的なピザ」

百合子「どんな大海原でもものともせずに突き進む、たとえ嵐であっても!」

雪歩・百合子「これが私たちのピザ、TrySail!」

星梨花「ええーっ!?」

春香「いいのこれ!?って、『瑠璃色金魚と花菖蒲』は!?」

歌織「……どうやら勝負は決まったようね」

翼「はい。たしかに『フローラ・アラカルト』のダイヤモンドパールピザも美味しかったけれど……」

歌織の合図で審査員たちの評価点が出される



歌織「――――ご覧のとおり、33-4でこの勝負、『グリルモワール』の勝利です!」

観客「ワァァアアアアアアアアアアア!!!」

星梨花「そんな~」

風花「お嬢様……」

麗花「うーん、やっぱり開始前に料理をできない体にしておけば……」

風花「そ、それはダメですー!」
446 : おやぶん   2021/09/28 22:42:06 ID:fhEGJEVAxA
春香「しゃぁっ!1回戦突破!」

雪歩「さあ、行くわよ」

百合子「へ?どこへですか、勝利の余韻に浸ることなしに……あっ、打ち上げですか?」

春香「雪歩、歌織さんに何を訊いていたの?」

雪歩「『HOTDOGS』の1回戦の試合会場」

百合子「!」

雪歩「時間をずらしてはじまるから、観に行けるわよ」

春香「そっか。実力を見るのはもちろんだけど……今度こそ可憐ちゃんと会えるよね?」

雪歩「うん……きっと。それにリーダーにもついに会えるかもしれないわ。そういうわけで、百合子。ぼさっとしていないで、移動の準備よ」

百合子「は、はい!」


かくして本選1回戦を突破した『グリルモワール』の3人
海美たち『HOTDOGS』の1回戦を見学しに行くことにしたのだったが……?


Recipe7につづく
447 : ぷろでゅーしゃー   2021/09/28 22:46:15 ID:fhEGJEVAxA
Recipe7partA下書きは10/1前後に投下予定です
シスター服を着た病み雪歩が巨大ピザカッター(チェーンソー)振り回す展開も考えましたがネタが伝わりにくすぎるのでやめました

書いている期間が長くなると書いているほうも忘れている設定が少なくなくて、補完もしていけたらいいなーって思います
何卒最後までご協力お願いします!

画像は使いどころがなくなってしまった風花さん(キング)スクショ

448 : プロデューサーちゃん   2021/10/03 21:25:40 ID:sheEcPG/Ls
おさらいからはじめるよー

765プロ劇場ドラマ第4弾『YUKIHO'Sキッチンへようこそ』

これまでのあらすじ①
空想文学少女・七尾百合子は古書店巡りを趣味としていた。ある日、珍しい本を所蔵している図書館の噂を誰かから耳にした百合子はそこを訪れる。
記憶はそこから既に曖昧だ。一体誰から?どこにその図書館は存在したのか……。明らかなのは、百合子がその図書館訪問によって、元いた世界を追放されてしまったということ。
その追放は幻とされる料理魔法に関わる魔導書との契約による対価ということであった。
不幸中の幸いにも、百合子が飛ばされた先の異世界で最初に出会ったのは親切で美しい2人の少女だった。百合子は彼女たちと共に暮らすことに。
彼女たち、雪歩と春香もまた別の異世界から3人で移住してきたのだった。今は共にいない少女・可憐、そして別離のきっかけをつくったという少女・海美、それから雪歩たちを終末を迎えんとする異世界からこちら(現世)へと救い出した「師匠」―――。
雪歩と春香に家族とみなされ、愛されてなお、百合子は2人に確かめていないことが多くある。知らない過去がある。
百合子が知っているのは、雪歩と春香がハザマと言われる料理人、すなわち現世と異界―――現世と地続きでありながらも現世のあらゆる原則から外れた要素で構築された世界(≠異世界)―――をまたにかける特異な存在であること。
そして百合子が契約した魔導書は彼女たちの役に立つという事実だった。
449 : そなた   2021/10/03 21:28:17 ID:sheEcPG/Ls
これまでのあらすじ②
雪歩が『YUKIHO'Sキッチン』という安直な名前のお店を、春香と百合子に助けられながら経営していた、そんなある日の夜。
可愛い妹分の高槻やよいからある情報を入手する。可憐と海美とあともう一人によって構成されるフリーのハザマユニット『HOTDOGS』が動き出した……!
彼女たちの狙いははっきりとはわからないが、雪歩と春香が知るところには、世界を揺るがるほどの力をもたらすオトメティックパワー、それを得るための料理作りに本格的に着手し始めたのだという。
やよいの情報は、凄腕の情報屋・プレアデスからのものらしい。雪歩たちはさっそくコンタクトをとり、可憐たちがある料理大会に出場するのを知る……。
おそらくはその賞品こそがオトメティックパワー増大のアイテムないしその達成に欠かせない何かなのだと見当をつける3人。
かくして雪歩たちはしかるべき準備を終え、ハザマユニット『グリルモワール』として大会に出場することに。
予選を勝ち抜き、本選に出場した雪歩たちは1回戦で箱崎星梨花をリーダーとする『フローラ・アラカルト』を瑠璃色金魚を使ったアクアピッツァで打ち破り、2回戦進出を決めたのだった。
そして今、雪歩たち3人は『HOTDOGS』の試合を観戦しに向かうところだったのだが……?
450 : ダーリン   2021/10/03 21:30:18 ID:sheEcPG/Ls
Recipe7partA 下書き

百合子「こ、ここが『HOTDOGS』たちの一回戦試合会場?」

春香「私たちが海の幸で勝負だったのに対して、こっちは……森?」

雪歩「山の幸は私たちが予選でもう消化したわけだけれど、うーん……この森も例の富豪の息がかかっているのかしらね」

百合子「平地と山地だと同じような木々ある自然の中でも、採取できるものは違いますね。それに生息する魔物たちだって」

雪歩「ええ、そのとおりだわ。既に食材の調達が始まっているみたいね」

春香「両チームとも戻って来るには時間かかるよね。森にカメラがあって、各々がどうしているかわかるわけでもないかぁ」

百合子「……暇ですね」

雪歩「観客たちは何をして暇をつぶしているのかしら。というか、私たちのときもこんな感じだった?」

百合子「深く考えたらダメな気がしますね」

春香「大会の設定ガバガバじゃねぇか!って突っ込まれても無視を決め込まなきゃね」

雪歩「しかたないわね。暇つぶしに百合子のほっぺたでもむにりましょうか」

百合子「なんで!?」
451 : Pサン   2021/10/03 21:32:35 ID:sheEcPG/Ls
そんなこんなでグリルモワールの3人が戯れに興じているうちに時間が経ち……
森から誰かがふらりと帰ってきたのだった。

春香「あれは――――」

雪歩「……高坂海美」

百合子「あれっ?1人だけ?も、もしかして他の2人は……」

海美「あ!おーい、雪歩さーん、春香さーん!」

百合子「ぶんぶんと手を振りながら、こっち来ますけど?」

雪歩「あの様子じゃ、他の2人に森で何かあったわけではないみたいね」

春香「ちょっと心配した?」

雪歩「……べつに」

審査員たちは海美の行動を制止することはなかった。雪歩たちが彼女を手助けするような素振りやその逆の態度をとりでもすれば別だろうが。
客席スペースと会場の境界部で雪歩たちは話す。

海美「3人とも!私の活躍を観に来てくれたんだーっ!んんーっ、嬉しいよーっ!」

百合子(出たーっ!ふんふんする海美さん!このモーション、全員に実装してほしい!)

雪歩「ちがうわ。可憐ちゃんはどこ?」

海美「もう、雪歩さんそればっかり。いいかげん、妹離れしないとだよ?」

雪歩「この……っ!」
452 : 彦デューサー   2021/10/03 21:35:12 ID:sheEcPG/Ls
春香「雪歩、ステイ。……ねぇ、海美ちゃん。ずいぶんと余裕があるみたいだけど、大丈夫なの?」

海美「うん♪ ほら、こーんなにいい食材揃えちゃったーっ!」

百合子「わっ、リュックのなかに食材がいっぱいいっぱいですね」

春香「百合子ちゃん、凝」

百合子「へ? あ、はい。むむむーっ………え!?こんなに良質な食材なんですか!?」

雪歩「さすが『瞳の中のシリウス』」

海美「それ、雪歩さんが勝手に言っているだけだよね?」

百合子「?? ひ、瞳の?」

春香「『瞳の中のシリウス』だよ。海美ちゃんの持つ素材の目利き能力のこと。勝手に雪歩が命名したの、能力としてね。まぁ、わからなくもないよ。この私でも食材の種類によっては、海美ちゃんの目利きにはかなわないからね」

百合子「へぇ……かっこいいですね!」

春香「え?」

雪歩「でしょ?百合子にはこのセンス、わかると思ったわ。春香や海美はそのあたり弱いからね」

春香・海美「ええー……」

雪歩「で?もしかしなくても可憐ちゃんはいないわけ?あなたたちのリーダーは?」
453 : ぷろでゅーしゃー   2021/10/03 21:38:03 ID:sheEcPG/Ls
海美「いないよ?この1回戦は私だけなんだー♪」

百合子「はい?」

春香「このSSでの海美ちゃんの初登場シーン読み返してみると、もっとクールな雰囲気だったけど、原作寄りになったのね」

雪歩「それ今言うこと?」

百合子「えっと、海美さん1人で戦う気なんですか?」

海美「うん!任されたの!」

雪歩「第2のスキル、『灼熱少女』ね。大したものだわ」

百合子「………春香さん」

春香「ん、ん。ようするにスタミナお化けってこと。海美ちゃんにかかれば、1人でどうにかなる……ってことなんじゃないかな」

百合子「スタミナとかそういう問題じゃないような……」

海美「あ、さすがにそろそろ調理場につかないと怒られそう。じゃあ、雪歩さん、そこで私の活躍ぶりをちゃんと見ていてね」

そう言うと、海美はスキップしながら調理場へと向かうのだった。
重い荷物を背負っているのに軽い足取り、そして綺麗な姿勢。
日々の鍛錬の賜物といったところだろう。
454 : 下僕   2021/10/03 21:41:13 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「帰ろうかしら」

春香「馬鹿言わないで、雪歩。いい?ここで海美ちゃんの成長ぶりを確認しておかないと、戦う時苦労するよ」

雪歩「うっ……」

百合子「そうですよ、白雪さん。事前に敵情報を把握しないでどうこうできるのはイージーモードのときだけですからね。なんでしたら、イージーモードに見せかけたハードモードとかありますから」

雪歩「ところで、海美の相手は誰なの?」

春香「早い話、モブ」

百合子「身も蓋もない!」

雪歩「にしては、どうも異様ななりをしているというか……ねぇ、あれよね、今ちょうど森から帰ってきた……」

百合子「!? え、相手の選手たち、どこからどう見ても―――」

春香「チュパカブラ!?」

会場に姿を見せたのは確かにチュパカブラ3匹であった。
が、野生の低位な種と違うのは一見してわかる。まず彼らは服を着ている。
3人のうち2人が紳士服で残りの1人が婦人服であった。
しかも上等な代物である。さらに言うなら、森から帰ってきたはずであるのに、海美と同様に汚れらしい汚れはない。
つまり、と雪歩たちは推察する。彼らもまたその道のプロフェッショナルであり、今しがた森にて食材調達をきっちりと済ませてきたのだと。
455 : プロデューサー   2021/10/03 21:43:17 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「高位チュパカブラ……人間との取引を行っているだとか、対等に振る舞っている種がいるだとか、噂には聞いたことがあったけれどまさかお目にかかれるなんてね」

春香「姿勢からして、海美ちゃんにはかなわなくとも、猫背ってわけでもないし、しゃきっとしているのがかえって不気味だよ」

百合子「チュパカブラの料理人たち、いったいどんな料理を作るんだろう」

雪歩「! そんなことより高坂海美を見なさい」

百合子「え?」

雪歩「出るわよ。私の見立てが正しいならば、あの技を、第3のスキルをあの子は完成させたに違いないわ」

百合子「第3のスキル?」

春香「海美ちゃん……大量の食材を前に、包丁ひとつ。えっと、あの雰囲気は調理を始めるぞーっていうよりもまるで観客たちにこれからパフォーマンスを見せつけるような……」

百合子「パフォーマンス……パフォーマー……performer?あっ!」

海美「On・The・Wave!!」

溌剌とした掛け声
野菜も肉も何もかも、海美の前で低く宙に浮いたかと思えば、次の瞬間には切り刻まれ、そして適切な器へと落ちていく
それはあたかも魔法使いの業、いや、そうではない
圧倒的な技術が見せる卓越したパフォーマンス
審査員含め会場全体が海美の虜となる―――起こっている事象の細部をその目で追い切れなくとも、彼女の包丁捌きが超人的であるのは紛れもない事実であった
456 : 3流プロデューサー   2021/10/03 21:46:31 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「あれが『絶対的performer』!!いえ、むしろあの包丁さばきをして命名するなら、『miraclesonic☆expassion』……!!」

春香「ミラソニ……たしかにかつて海美ちゃんはああいった技術を私たちといっしょに磨いていたけど……まさかあれほどまで成長しているなんて」

雪歩「1秒間に39回の斬撃。瑞希ちゃんと桃子ちゃんも引くぐらいのCut. Cut. Cut.ね」

百合子「髪の毛を切るのといっしょにするのはどうかと……って、それよりも春香さん!」

春香「え?なにどうしたの?お手洗い?」

雪歩「はぁ……間が悪いわね。1人でいける?手伝おうか?」

百合子「ち、違いますよ!今、言いましたよね、海美さんがあの技術を磨いていたって、春香さんたちといっしょに」

春香「うん」

百合子「あの、もしかして海美さんはもともと『YUKIHO'Sキッチン』の一員だったんですか!?」

雪歩「そういえば説明していなかったわね」

百合子「じゃあ、やっぱり……?可憐さんを引き抜いた風なことしか聞いていなかったので、私はてっきり海美さんは初めから完全に部外者かと……あ、いや、そうなるとああも親しげな様子も変かぁ」

春香「短い間だったけれど、海美ちゃんは私たち3人と共にあの場所で師匠の手ほどきを受けたハザマだよ」

百合子「そうだったんですね……」

雪歩「可憐ちゃんをかどわかすのみならず、師匠との長いおわかれのきっかけを作った張本人であるのは間違いないわよ」

春香「雪歩、でもさ、あれは」

雪歩「………」

百合子「白雪さん……」
457 : ごしゅPさま   2021/10/03 21:49:52 ID:sheEcPG/Ls
気がつけば『HOTDOGS』とユニット名すら知ることのなかったチュパカブラたちの勝負は決着がついていた
満場一致で高坂海美の勝利ッ!!
春香たちはその料理を口にすることはなかったが、彼女の作ったそれが、あのアクアピッツァと同等かそれ以上のオーラを纏ったのを確認した。
料理の出来は単純な足し算ということはないが、しかしこの海美に加えて、可憐が、そしてまだ見ぬリーダーが自分たちの前に立ちはだかるのを考えると、不安にならずにいられない百合子だった。



春香「というわけで、次の相手。2回戦にして準決勝の相手が『HOTDOGS』だよ」

百合子「ええっ!? こういうのって決勝戦で戦うんじゃないですかぁ!?」

雪歩「トーナメント表に文句を言ってもしかたないわ」

百合子「そんな、私……」

春香「自信ない?」

百合子「だって、あんなスキルを見せられたら……!『フローラ・アラカルト』のときはそういうのなかったのに」

雪歩「2回戦は3日後。できることはすべてやっておきましょう」
458 : Pチャン   2021/10/03 21:52:42 ID:sheEcPG/Ls
春香「……おっほん。あー……それなんだけどさ」

雪歩「? どうしたの、春香」

春香「私、ちょっと修行にいってくる」

雪歩「そう。いってらっしゃい」

百合子「えええええ!??? ま、待ってくださいよ!急に何なんですかぁ!?」

春香「あてはあるんだ。けれど、雪歩と百合子ちゃんには適さない」

雪歩「ようは春香の秘奥義習得イベントよ。百合子、ここは春香に任せておきなさい」

百合子「えぇ……」

春香「ありがと、雪歩。私、ビッグになって帰ってくるから!」

雪歩「何かあったときに駆けつけられないのもあれだから、どこでどうするか教えてくれる?」

春香「うん。あのね、【A】だよ」

百合子「どひゃぁっ!」
459 : せんせぇ   2021/10/03 21:55:22 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「百合子、私たちは私たちでしないといけないことがあるわ」

百合子「へ?」

雪歩「【B】に行くわよ。『HOTDOGS』に勝つ方法だなんて小さいこと言わずに、最高の料理を作るためにね」

百合子「でもそんな一朝一夕では……」

雪歩「わかっているわよ。けれど、私が思うに、百合子と魔導書はもう少しで次のステップにいける気がするの」

百合子「次のステップ?」

雪歩「そう。言ってしまえば覚醒。感じるわ、百合子と魔導書のリンクがこれまでよりも深く強くなっているのを」

百合子「白雪さん……。わ、私―――なれますか?あの海美さんや他のまだ見ぬ2人以上のハザマに、愛と希望を届ける料理人に!」
460 : 師匠   2021/10/03 21:58:11 ID:sheEcPG/Ls
雪歩「愛と希望というより、そう、愛と情熱ね」

百合子「愛と情熱……あっ、それって」

雪歩「うん。『深紅のパシオン』だよ」

春香「現行イベントぉっ!!」

百合子「シンクのパシオン……流し台でオーレ!ってことですね」

春香「どういうこと!?」

雪歩「そうと決まれば行動開始!グリルモワール、ファイトー……」

春香・雪歩・百合子「おーーー!!!」


Recipe7partBにつづく
461 : プロちゃん   2021/10/03 22:02:38 ID:sheEcPG/Ls
下書きとしましたがpartAはこれで清書扱いとして、partBのための安価とりますね

※【A】春香が行う修行内容 おおよその行き先だけでも可
※【ID判定①】春香の修行にて登場するアイドル(未登場アイドル限定)
※【B】雪歩と百合子が行う修行内容 おおよその行き先だけでも可
※【C】雪歩と百合子の修行にて登場するアイドル(登場済みの風花を含めたチカアモメンバーから1人のみ選択 同数票ならIDに含まれる数字で判定)
※【ID判定②・③】2回戦の審査員ふたり(未登場アイドル限定)

レスの有効期限:10/6 18:59:59まで

2回戦の課題料理や『HOTDOGS』リーダーの安価はまた後ほど
修行内容については習得するスキルの名称や詳細を書いてくださってもかまいません
相変わらず採用は保証できませんけれど

レスの有効期限は作っておきますが、10月は多忙なので更新不定期になりそうです
何卒ご協力、最後までお付き合いお願いします!
打ち切りは避けたい所存です(汗
462 : ごしゅPさま   2021/10/03 22:18:21 ID:zOjx9O0.Qg
A YUKIHO’Sキッチン地下室で秘奥義『LEGEND GIRL』を習得
B 菊地市場で利き異界食材1,000本ノック
C 紗代子
463 : Pちゃん   2021/10/03 22:43:04 ID:4.6lhdrdAg
Aメンタルとタイムのルーム
B魔導書最初のを手に入れた”場所”
C千鶴
464 : Pさん   2021/10/06 19:17:29 ID:yQCUk1rLkk
遅れてしまいました…もし許されるなら
A:滝に打たれる(そして可憐と鉢合わせ)
B:魔導書と邂逅った場所、そして現在のキッチンへ辿り着くまでのルート
C:紗代子
465 : ハニー   2021/10/06 20:40:37 ID:W59eMxn88E
レスありがとうございました!

>>464
まだ一文字も書いていないので問題ないですよ。いや、書いていないのは問題か……
明後日の夜までに書いて投下するつもりです

ID判定①(春香が修行先で会う人物)
zOjx9O0.Qg→[z]=百合子→[O]=風花→[j]=あずさ

ID判定②・③(準決勝審査員)
4.6lhdrdAg →[l]=真美
yQCUk1rLkk →[y]=ロコ→[Q]=のり子

多数決判定(百合子・雪歩が修行先で出会う人物)
=紗代子
>>464がなくても、462と463のID上で左から読んで最初に現れる数字の大小での判定で、紗代子となる
466 : P君   2021/10/08 20:25:19 ID:16JJtS.I9U
Recipe7partB投下していくよー

異界令嬢・亜美の主催する料理大会、『HOTDOGS』の1回戦の相手は、高位チュパカブラたち3匹の料理ユニットだった。
HD側はなんとぉ!海美1人だけ。彼女が雪歩たちに話したところによれば、1回戦は彼女ひとりで問題ないとのこと。
結果として、海美の言葉は正しく、彼女の有する複数のスキル(雪歩命名)、すなわち『瞳の中のシリウス』『灼熱少女』『miraclesonic☆expassion』によってチュパカブラたちはとくに調理・実食描写もなく完敗するのだった。
そうして百合子が春香と雪歩から聞かされたのは、かつて海美もまた可憐と同じく現『YUKIHO'Sキッチン』の一員であったという過去……。
師匠を含めた5人の過去にいったい何があったのか。ここ(Recipe7)まで引っ張っておいてなんだが、べつにそんな大した話はない気もするのだった。

海美の成長ぶりに自分の弱さを痛感した春香は修行を決意する。
雪歩は春香を信じて送り出すとともに、不安がる百合子ととある場所に行くことに――――?
467 : Pしゃん   2021/10/08 20:29:04 ID:16JJtS.I9U
- 異界商店街(旧・地獄街) -

活気溢れるメインストリートから外れた細い脇道にて

春香「………やっぱり。いてくれると思いました。占い師さん」

??「ふふっ、ごきげんよう~。あの日、言ったとおりね?」


『YUKIHO'Sキッチン』に導かれる一般人のための料理、その材料の大半は表の「昇天街」で春香が調達する。が、時折、そこでは不充分と判断した春香はこちらの商店街に足を運んでいる。
言うまでもなく、異界食材の目利きの向上という目的もある。調理を実際に担当する雪歩、つまりは天性のハザマである彼女のパートナーであるためには、それ相応の知識と食材選びの経験が必要なのだった。
料理大会1カ月以上前のことになる。異界商店街にて買い出しを済ませた春香は普段はのぞくことさえない脇道の奥から異様な気配を感じた。
そうだ、異様な気配だ。しかし、それは妖しげでありながらも危険というより魅惑的な、いや、だからこそ危険とも言える……春香の足を止めるのに十分な非日常を持つ気配だった。
導かれていると感じた春香はその脇道に入って、1人の占い師に出会った。「うらないでおもてなし」と書かれた看板を出していたから、占い師なのだと思う。
SHSで待望のロングヘアーが復活したその占い師は、占ってくれるようにお願いしてきた春香に言った。
「今はそのときじゃないわ。そうね……39日後、また会いましょう。そのとき、あなたは私を必要としているはずだわ~」
予想外の返答に春香がどう応じたらいいか迷っていると、その豊満なボディをした占い師は春香の持つ買い物袋を指差した。
468 : 変態インザカントリー   2021/10/08 20:34:36 ID:16JJtS.I9U
「対価はそうね、そのゴージャスセレブプリンひとつでどうかしら?」
春香は驚いた。たしかにその日、その買い物袋には3つのゴージャスセレブプリンが入っていたのだ。しかし決して透明な袋というわけではないし、密封されているから可憐でもなければ匂いでなんて……。
その歌が上手そうな占い師に凄味を覚えた春香は、百合子の分のプリンを対価として渡した。
「39日後なんて、もしかしたら忘れているかもしれません」と言う春香に、そのテレポート能力でも持っていそうな占い師は「ううん、それは大丈夫。あなたは必ず思い出すことになる。私の導きが必要になる事態に直面するわよ~」と、どたぷんとした口調で言うのだった。

かくして39日後、料理大会準決勝前に春香はその占い師と再び相見えた。


春香「ん、ん。よければお名前を教えてもらっても?」

??「そうね……せっかくだからあなたには教えておこうかしら。私はアズール・ミューラー。あずさと呼んでもらえるかしら」

春香「あずささん、ですね。わかりました」

あずさ「あなたは?」

春香「私は春香。天海春香です。ご存知、アイドルマスターの顔です」ドヤァ
469 : P様   2021/10/08 20:37:58 ID:16JJtS.I9U
あずさ「そう……。それでは占いましょうか。対価は既にもらっているわ」

春香「はい。えっと、何から説明すれば……」

あずさ「説明なんて不要よ。あなたの置かれている状況の詳細を私が知っているか否かはこの占いに関係しないもの。占い師としてでなければ、多少、興味はあるけれど、でも今は時間を無駄にできない。でしょう?」

春香(話を聞かずに占うなんて……ううん、ある意味、占いらしいのかな。こんなの信じられない、っていつもなら思うかもしれない。もっと言えば、あずささん以外の占い師であれば)

春香「信じましょう。……お願いします」

あずさ「肩の力を抜いて、そう、リラックスしていればいいわよ~」

ふふふと笑うあずさ。目の前に置かれた水晶は、春香が覗き込んでも何も見えはしない。
あずさは水晶に手をかざして、何か小声で唱え始める。春香が聞き取れないほどに小さく、複雑な、長い呪文……。
やがて、水晶の中心部分に紺碧の光の点が一瞬見えた、そんな気がした。「ここは……」とあずさが眉をひそめて言う。
470 : プロデューサー君   2021/10/08 20:43:11 ID:16JJtS.I9U
春香「『ここ』? どこかの場所が映ったんですか?」

あずさ「ええ、どうやら瀑布みたいね」

春香「鎌倉とか江戸……」

あずさ「いえ、滝のことよ」

春香「細い糸状のこんにゃく……」

あずさ「しらたきは関係ないわ」

春香「&翼?」

あずさ「タッキーさんも無関係よ」

春香「ふむふむ。では、どこの滝なんですか?イグアスですか、ヴィクトリアですか、それともナイアガラ?」

あずさ「仮にそうだったとしたら、今から行って帰ってくるとなると困るんじゃないかしら~?」

春香「そうですね。準決勝に間に合わないです」

あずさ「春香ちゃんが行かなければならないのは、こちら側、つまり異界の滝よ……その名を、観理怨滝」

春香「当て字でミリオン……それはどこに?」

あずさ「道案内しましょうか~?」

春香「いえ、なぜだか知りませんけど、ものすごく遠回りになりそうな気配がとってもするので、地図か何かありませんか?」

あずさ「Glow Map?」

春香「いってきます!……ってミリシタ3周年曲は今は関係ないです。名曲ですけど」

あずさ「地図はないけど、行き方を説明するからメモしてくれるかしら」
471 : Pさぁん   2021/10/08 20:45:53 ID:16JJtS.I9U
あずさ「えっと、妖精の国で底抜けにハッピーな呪文唱えたら泣き虫なライオンも笑顔を見せる――――」

春香「『そしてぼくらは旅にでる』!! たぶんその部分だけでピンとくる人なかなかいないですよ!? そういえばM@STER VERSIONって私と雪歩とあずささんとやよいでしたね」

あずさ「あの衣装、可愛いからミリシタにもきてほしいわ~」

春香「そういうの、わりとありますよね。『アマテラス』の月読華舞和装とかは、需要はあると思うんですけど、既に似た系統の共通衣装が実装済みだから望み薄ですかね」

あずさ「パンキッシュゴシックもいつか来ると思っているのだけれど~」

春香「だったら、あの曲も………って、えっと、何の話していましたっけ?」


そんなこんなで春香は観理怨滝の場所の情報を入手した!
そこで何をどうするのか、あずさ曰く、行けばわかるとのことらしいが……
一方、その頃、雪歩と百合子は――――





- 菊地市場 -

真「レベル上げに役立つ場所を教えてほしい?」

雪歩「ええ。あなたならそういうの詳しいんじゃないかと思って」

百合子「お、お願いします!」
472 : 番長さん   2021/10/08 20:49:01 ID:16JJtS.I9U
雪歩たちは1回戦の特設会場そばにある菊地市場を再度訪れていた。
目的は市場の元締めである菊地の一人娘である真から百合子たちの修行場を教えてもらうことだった。


真「春香はどうしたのさ」

雪歩「春香は春香でべつの場所で修行しているの」

真「ふうん……。じゃあ、今だったらあんな身体能力に任せたイカサマは使えないわけだね」

百合子「えっ!?もしかしてまたポーカーをして勝たないとってことですかぁ!?」

真「べつにポーカーじゃなくてもいいよ」

雪歩「あなたの確率操作能力が発揮されるゲームなら何でも、ってことでしょう?」

真「よくわかっているようで」

雪歩「私たちに協力するのは嫌?春香がいないとダメなの?ゆきまこは王道だと思うんですぅ」

百合子(!? 白雪さん、しゅんとしている!? いや、これはもう雪歩さんでは?)

真「そ、そんな顔しないでよ。ボクだって嫌がらせをしたいわけじゃないさ。ただ、この菊地市場なりの掟というかやり方があるわけで」

百合子「でも、たとえ何年もの時間が間にあっても、真さんたちはお友達同士じゃないんですか?市場どうこうじゃなくて、お友達に力を貸してあげるって思えば……」

雪歩「まぁ、今回は主に百合子の強化だけどね。真ちゃんとはつい先日、会っただけの」

百合子「しーっ!余計なこと言わなくていいんです!」
473 : 兄ちゃん   2021/10/08 20:51:51 ID:16JJtS.I9U
真「…………わかった」

雪歩・百合子「え?」

真「人を紹介するよ。ボクよりも修行や特訓、トレーニングにレッスン、そういう分野に関しては彼女はプロフェッショナルだ」

百合子「鍛錬の専門家ってことですか?」

雪歩「その人はいったい……?」

真「人呼んで、高山バスターブレイド紗代子先輩」

百合子「!?」

真「またの名を、不撓不屈のサヨ」

雪歩「!!」

百合子「すごい人みたいですね。どこにいけば会えるんですか?」

真「えっと、ちょっと待っていて。スマホ開いてトタチツテっと………こんにちさよさよ~」

雪歩・百合子「………」

真「ちょっ、待って、切らないで!真ちゃんなりよ!?」

雪歩・百合子「………」
474 : der変態   2021/10/08 20:54:06 ID:16JJtS.I9U
真「お願いがあってさ、え?あ、いや、そういうんじゃないって。へ?いやいや、そんな、二―ソックス履いて、水着着てゴルフって、そんなまさか……」

雪歩・百合子「………」

真「同じPrincessのよしみでさ、うん、実は同じくPrincessのふたりが――――」


345秒後

真「これでよしっと。お待たせ。紗代子、今、異界ライブラリ近くにいるみたいだ」

百合子「ライブラリって……えっ!もしかして図書館ですか!?異界にも図書館が!?」

真「そんなに目をキラキラさせなくても。蔵書数でいえば、相当少ないよ?7650冊だったかな。図書室というには多いけどね。館内閲覧のみで、借りることできないし」

百合子「で、でも!それだけ厳選されて、かつ外に持ち出せないような禁書たちが……」

雪歩「百合子、悪いけれど本当に期待しないほうがいいと思うわ」

百合子「え?」

雪歩「数年前に、師匠に連れられて4人で訪れたことがあるの。結論として、一部の分野の専門家にとってしか有益な情報としてみなすことができない本しか置いていないわ」

百合子「?? どんな本があるんです?」
475 : 変態インザカントリー   2021/10/08 20:57:07 ID:16JJtS.I9U
雪歩「物理学?ある意味地理学? 広く言うなら自然科学……といっていいのかしら、とにかく何か異界を構成する物質や法則を部分的に数式化しようとしたり、または能力の発現と運用について遺伝子学と病理学に基づいて……いや、そういうふうに師匠が話していたのを覚えているってだけなんだけど」

真「記述に用いられている言語からして、ボクたちに馴染みないものだよ」

百合子「私たちにとってみれば難解なものばかりってことですね……あれ?じゃあ、その紗代子さんはそうした本を読めるんですか」

真「ライブラリ内にいるなんて一言も言っていないけど?」

雪歩「『近くにいる』だったわね。ライブラリの近くっていうと、洋服店でもあったかしら」

真「ううん、たい焼き屋が目当てみたいだよ」

百合子「そうですか……」

雪歩「やれやれ、何を気落ちしているんだか」

百合子「だって、異界の図書館ですよ?もしかしたらこの魔導書のことだって」

雪歩「その魔導書は【異世界】の図書館にあったものでしょう?【異界】とはべつよ。とてもじゃないけど、その魔導書と百合子が邂逅した場所にもう一度なんて無理があるわ」

百合子「うう……。そういえば、今更ですが、どう違うんですか。【異世界】と【異界】」
476 : ダーリン   2021/10/08 21:01:13 ID:16JJtS.I9U
雪歩「そういうのはまた今度ね。今はやることがあるでしょ」

真「ん、ん。紗代子は、まだしばらくはたい焼き屋近くにいるそうだよ。話を聞くだけ聞くってさ」

雪歩「そう。さぁ、行くわよ、百合子。……ありがとう、真ちゃん」

真「もちろんタダじゃないよ。今度、君たちのお店に行くことにするよ」

雪歩「そうね、この大会が終わったらみんなでパーティとしゃれこむのもいいかも」

真「なんだったら、春香をいただきに参上しようかな」ニヤッ

百合子「?! せ、性的な意味ですか!?」

真「そこまで考えての台詞じゃないよ!?」


かくして雪歩と百合子は紗代子のもとへと向かうのだが……?

Recipe7partCにつづく
477 : ボス   2021/10/08 21:03:36 ID:16JJtS.I9U
気がつけばスレ立てから2カ月余りが経過。
全8話中の7話なのに、進行具合としてはまだ7割ぐらいな気もします。
次partでは春香が滝で可憐と出会うか出会わないかしたり、秘奥義『LEGEND GIRL』を習得したりしなかったりする一方で、紗代子が主に百合子に情熱と愛を注ぐ予定です。
早ければ10/10の夜あたりに投下したいです。今月以内に完結!そう先月も言っていたような……。
ちなみに、メンタルとタイムのルームは元ネタ知りませんでした。元ネタの元ネタは知っていましたけど。

何卒最後までお付き合いください!
(いざとなったら安価に頼るので)構成に詰まってはいないんです!時間と体力がないだけです!
478 : P君   2021/10/13 00:35:53 ID:6wGemHg5/g
公式が監視していると聞いて
479 : とりあえず春香パート投下していきますよー   2021/10/14 06:51:13 ID:mZYzCfO/pU
Recipe7partC Side Haruka

紺碧の占星術師ことアズール・ミューラー(あずさ)の導きによって春香は異界のなかでも人の寄り付かない密林、その奥地にあるとされる、観理怨滝へと向かうことになったのだが……?

春香「うわぁー……これはまたご立派なジャングルだね。ウンババしたくなっちゃうなー」

怪鳥の鳴き声がどこからともなく聞こえ、見慣れぬ蟲たちがそこらじゅうで蠢き、不思議な匂いのする道なき道を春香は進む。
あずさの説明によれば、何百、何千と立ち並ぶ木々のうち、(食材を見極める要領で)目を凝らした際に、根元が淡く黄金色に光ってみえる木を追っていくことで観理怨滝にたどり着くとのことだった。

春香「…………」

思えばここしばらくは雪歩と百合子と離れて過ごす時間が短かった気がする。
文字どおり寝食を共にするふたりであり、日常の大部分を彼女たちと過ごしている。
半年余り前まではそれが百合子ではなく可憐であり、そしてそこには海美の姿もあった。

春香「ののわっっと……!」

考え事をしていたせいか、転びそうになる。していなくても転ぶときは転ぶ春香だが、こんなところで転んだらべたべたして大変そうだ。
感傷に浸るには周囲の音も色も、香りも優しくないのだった。
春香は今日の分の一発ギャグを考えることに、言い換えれば久しく目にしていない雪歩が笑い転げる姿を想像しながら、滝を目指す。
しばらくして――――

春香「ここが……観理怨滝」

密林を延々と彷徨っているシーンを垂れ流してもしかたあるまい。春香は目的の滝に到着した。
思ったより小さな、それほどの高さはない滝で、横幅もさほどである。それでもすぐ近くまで寄って流れ落ちてくる部分を見上げ、そして絶え間なくしぶきをあげる水面を見れば、なるほどたしかに滝である。

春香「で、何をすればいいんだろう」
480 : プロデューサー君   2021/10/14 06:53:44 ID:mZYzCfO/pU
滝で行う修行といえば、やはり滝行。すなわち滝に入ってその水流に打たれるということだろうが……。安価レスでも滝に打たれるとあったし。
まさかテコ入れとしてすけすけセクシーショットをお披露目しろということなの?と滝を眺めながら悩む春香。
そのとき、後方から何者かの気配がした。即座に振り返る春香。蛇か熊か、大熊猫か、それともチュパカブラ?!と瞬時に巡らせた予想はすべてはずれだった。

??「えっ…………春香さん、どうしてここに」

春香「!? 嘘………可憐ちゃん……だよね?」

他でもない2回戦の相手である『HOTDOGS』の一員で、雪歩たちが大会に出場している理由、春香と雪歩の妹分である篠宮可憐がそこに立っていた。
装備からしてピクニック気分でやってきたのでもなければ、ふらふらと迷子になった様子でもない。
もとよりこんな異界の密林の奥地に何の用事もなく入る人間などいない。
どうしてここに、可憐が訊くのも、春香の側がそう思うのもおかしくない。

春香「可憐ちゃん……しばらく会わないうちに、また一段と綺麗になったね」

こうした口説き文句が最初に出るのもおかしくない……?
春香の言葉に可憐の頬に赤みがさっと差す。わざとらしく咳払いをした可憐が目元をキッとさせて「どうしてここに?」と先ほどよりも硬く、冷ややかに問う。

春香「修行ですよ!修行!」

可憐「はい?修行?こんなところで何の……」

春香「もちろん次の2回戦で可憐ちゃんたちに勝つための、秘奥義を習得する修行だよ」

可憐「ひ、秘奥義?」
481 : おにいちゃん   2021/10/14 06:57:10 ID:mZYzCfO/pU
春香「そうそう。セイクリッドブレイムとかそういうの」

可憐「春香さんがセイクリッド……?」

春香「うん?」

可憐「い、いえ……」

春香「それで可憐ちゃんこそどうしてこんなところに」

可憐「教える義理はありません」キリッ

春香「ええ~、そんな~。あれじゃないの?ここでは貴重な香料そのもの、あるいはそれを調合するための原材料の1つが採取できるから、みたいな?」

可憐「!? ど、どこでそれを……!私、海美ちゃんにだって話したことないのに……!」

春香「当てずっぽうが当たっちゃったよ。まぁ、そんなところかなってね」

可憐「くすっ。春香さんは相変わらずですね」

春香「それ、褒めている?」
482 : お兄ちゃん   2021/10/14 06:59:15 ID:mZYzCfO/pU
可憐「安心したんです……何もかもが変わっていたらどうしようって考えもしましたから」

春香「それはこっちの台詞だよ。ねぇ、雪歩のことも安心させてあげてほしいな」

可憐「……っ」

春香「ほんと、いなくなったばかりの頃はさ、手を焼いたよ。ウェルダンだよ。雪歩ったら、可憐ちゃん、可憐ちゃんって、いつまでもめそめそしているんだもん。寝かしつけるのに苦労したよ。ふたりそろって寝不足の日々が続いたし、ご飯だってあの頃はまともなもの口に入れていなかったんじゃないかな。そこらへんに生えている草とか転がっている石とか食べていたかも」

可憐「そ、それは……」

春香「もちろん私だって、うん、私だってね、可憐ちゃんがいなくなったことで気落ちした……心にぽっかりと穴が開いたってこういうことなんだなってね。こっちの世界にきてからずっと一緒だったもんね、私たち。ううん、向こうでだって家族みたいなものだった。あの日もいっしょにいたから、師匠にいっしょに救われた。こっちに3人でくることができた。覚えている?」

可憐「はい……よく覚えています。忘れたことはありません……」

春香「うん。ねぇ、可憐ちゃん」

可憐「は、はい」

春香「もう家出はおしまいにしない?私も雪歩も、可憐ちゃんが裏切って二度と私たちと相容れない存在になったは思っていないよ」
483 :   2021/10/14 07:01:11 ID:mZYzCfO/pU
春香の言葉に可憐はしばらくの間、何も言わなかった。滔々と流れる滝のそば、可憐は淀みある口調で、春香に話し始める。

可憐「……あの日、言ったとおりです。今でも……考えは、か、変わっていませんから。雪歩ちゃん、春香さんたちのやり方では……救えない人が、お、多すぎます」

春香「『HOTDOGS』が大勢の人のために料理を振る舞ったなんて話、聞いたことないけれど?」

可憐「まず……たかが数人で料理を作って、それでどうにかするなんて思っていませんから……! わ、私たちのやろうとしているのは……まさしく救世……料理はそのための手段に過ぎません」

春香「つまり?」

可憐「……オトメティックパワーがすべてを解決するんです…!」

可憐の口調に淀みが消える……いつもよりは。

春香「本気で言っているの?その得体の知れない力が、可憐ちゃんたちをどう救世主にするっていうの?」

可憐「リーダー曰く………この世界を再構築できるそうなんです……!」

春香「は?」

可憐「師匠でも私たちが元いたあの世界、滅びゆく運命にあった世界を……救うなんてできませんでした。世界の命運までをも変える力があれば……今あるこの世界、争いの絶えない、穢れきった世界を浄化し、誰もが幸せになれる世界を作り上げることが……たとえば美味しいご飯を毎日、大切な人たちと笑い合って食べられる、それを誰にとっても日常にすることができるんです……!」

春香「そんな……そんなの夢物語だよ。現実は甘くないんだよ、可憐ちゃん。自分たちの家族ですら護れないことだってあるぐらいに」
484 : プロデューサー殿   2021/10/14 07:03:40 ID:mZYzCfO/pU
可憐「荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが………このことは異界創世期から証明され、構築されてきた理論なんです……」

春香「ちょっと何を言っているかわからない」

可憐「……わからなくていいんです、今は。全部終わったら、うまくいったら、そのときは……戻ります。また3人で、ううん、今は4人でしょうか、いっしょに暮らしましょう……えへへ」

春香「可憐ちゃん……騙されているんだよ、そのリーダーに」

可憐「―――リーダーのことを悪くいうのは、いくら春香さんでも許しませんよ?」

春香(!! なんて冷たい目つき……ゾクゾクしちゃう!って、そうじゃなくて、これは……もしかして洗脳?いや、でも……)

春香「わかったよ、可憐ちゃんたちは何かとんでもなく大きなことを成そうとしているんだね」

可憐「はい♪」

春香「だったら、今回の料理大会で、私なんかに負けている場合じゃないわけだね」

可憐「そうですね……平和的な方法で、『あれ』を……賞品として譲ってもらえるのがベストだって、リーダーは話していました。私も……誰かを傷つけることなしに、手に入れるべきものが手に入ればそれが一番だと思います……」

春香「じゃあ、もし万一、私たちに負けたらさ、そのときは考え直してくれる?私たちのもとに帰ってきてくれる?」
485 : 兄(C)   2021/10/14 07:05:42 ID:mZYzCfO/pU
可憐「約束はできませんけど……でも、今の春香さんたちに負けてしまう程度の料理の腕前なら、リーダーは私のこと、いらないっていうかもしれないですね……うう」

春香「……リーダーは、2回戦に参加しないの?」

可憐「2回戦は私と海美ちゃんのふたりだけです。それでも充分すぎるって。リーダーは忙しい人ですから……あまり表舞台に立ちたいふうでもないみたいで……」

春香(舐められている?それともリーダーは料理ができるわけでもない?どちらにしても―――)

春香「ふぅ……こういうのは、雪歩たちがいるときにしたかったんだけど」

可憐「?」

春香「宣戦布告といこうかな。可憐ちゃん、ううん、『HOTDOGS』。私たちは負けない。世界が云々の壮大な話よりも、私はそばにいる家族を、それから今はそばにいてくれない家族のことを、大切に想っているんだ。私が目指すのは救世主となることじゃない。可憐ちゃん、あなたを取り戻して、私は私の、私たちの、大切な日常を再び手に入れるからっ……!」

可憐「春香さん……私たちの計画を阻もうとするのなら、たとえあなたが相手でも私は負けられませんから。さよなら、次は会場で会いましょう」

そう言うと木々に溶け込むように、可憐は姿を消した。怪鳥のけたたましい鳴き声が轟く。
春香は滝のほうから何か強い力を感じた。ついさっきまでそこに感じなかった強い力だ。
けれどもそれは初めからあったものだと春香は確信する。
根拠はないが……春香の決意にそれは反応してくれたのだと春香自身は解釈した。
486 : 魔法使いさん   2021/10/14 07:09:01 ID:mZYzCfO/pU
可憐たちの野望を阻止せねばなるまい。世界の再構成?まさか、そんなことできるわけがない。
もし、もしも……それが可能であったとして、そこに求められる『対価』は果てしなく大きいだろう―――
春香は滝の真正面に立った。春香の異界での身体能力をもってすれば水の流れに足をとられることはない。

春香「うー、わっほい!!!!!」

滝に繰り出される正拳。割れた滝はすぐに元通りになる。
そうして春香は正拳突きを繰り返していく。気がつけば空に星が瞬き、欠けた月が春香を見下ろしていた。それから月が失せ、異界の色褪せた太陽が昇り、それから――――時間が過ぎていった。

滝割り修行の果てに、春香は観理怨滝の水流から力を得る。
護りたい者を護れる力、これぞ伝説の少女としての力、その名も『Legend Girls!!』
料理大会で使えるかは……神のみぞ知る。


Recipe7partC Side Yukiho&Yurikoにつづく!
487 : EL変態   2021/10/14 07:12:46 ID:mZYzCfO/pU
雪歩・百合子編は16日中を目安に。やっと休日なんで
次でpartDの安価もとるつもりです
もう10月半ばなんて信じられない……


何卒最後までお付き合いお願いします!
488 : プロデューサー   2021/10/14 13:16:56 ID:nEZ3IyVx7Y
待ってたよー
489 : そなた   2021/10/14 17:45:06 ID:ByKM1ikeHk
お待ちしておりました。延々働き続けて急に休むとエアポケットに落ちるように寝落ちしますので(経験済み)何とぞご注意を。
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