【安価SS】全8話 765プロ劇場ドラマ制作!
1 :   2021/08/05 20:36:02 ID:7Ez7aEaegU
立つかなー
490 : あたたかいレスありがとうございます!   2021/10/16 19:43:31 ID:bLNguU6YfI
投下していきます


Recipe7partC Side Yukiho&Yuriko


『HOTDOGS』(海美1人)が1回戦で高位チュパカブラ3匹に完勝したのを目にして、自身の力に不安を覚えた百合子。
修行に出るという春香を雪歩とともに見送った後で、雪歩に促されるままに菊地市場を訪れることに。
そこで2人は再び菊地真と話し、準決勝である2回戦までの残り3日間で、百合子のレベルアップができる場所や頼れる人物を紹介してもらう。
真が連絡をとってくれたのは、不撓不屈のサヨの通り名で知られる、愛と情熱のトレーニングマスター・高山紗代子であった。
彼女は異界の図書館「ライブラリ」近くに構えるたい焼き屋で待っているという。
真に礼を言い、2人は菊地市場を離れてさっそくそこへと向かったのだが……?
491 : 我が下僕   2021/10/16 19:45:31 ID:bLNguU6YfI
雪歩「ここね……マイン○ラフト初心者が作る建築物みたいな、そう、まるで揚げ出し豆腐のような建物がライブラリよ」

百合子「揚げ出し要素なくないですか?!ふつうに豆腐って言えばいいじゃないですか……いえっ、言うほど豆腐って感じでもないですけどね!」

雪歩「記憶にあるライブラリは、もっと大きかった気がするけど……あれから数年、ふふっ、私が大きくなったってことかしらね」

百合子「あー……、あれですよね、小学校までの通学路を久しぶりにたどってみると短く感じたりするやつといっしょですね」

雪歩「私たち(はるゆきかれ)は就学直前で元の世界を離れたから、学校っていうのを知らないのよね」

百合子「え?す、すみません。あれ?でも、ということはお師匠さんが白雪さんたちに物書きや計算、そういったものを全部教えてくれたんですか」

雪歩「師匠が料理と戦い方以外で私たちに教えてくれたことは数少ないわ。その他のこの世界で生きるために必要な知識は、半分を私たち自らで学ばなければいけなくて、もう半分は千鶴さんが教えてくれたの」

百合子「千鶴さん?」

雪歩「ええ。私たちが今の百合子の年齢ぐらいになるまであの家、現在の『YUKIHO'Sキッチン』に週4で通ってくれていた人よ。師匠とは旧友の仲だった。気高くて上品で、それでいてちっとも高慢さがなくて、何事にも真摯に向き合う熱意を備えている高貴な魂を持つ女性。時に私たちの母や姉であるかのような振る舞いで、またあるときは最も信頼のおける友人のようでもあった、今なお私の憧れなの」

百合子「へぇ、そんな方が。えっと、今現在は……?」

雪歩「海外でお仕事中なのよ。去年……高坂海美がまだいて、百合子がいなかった時に一度帰国して店に来てくれたわ。手紙でも不定期にやりとりしている」
492 : Pたん   2021/10/16 19:48:26 ID:bLNguU6YfI
百合子「あの、お師匠さんや可憐さん、それに海美さんが店から去った件については……」

雪歩は黙って首を横に振った。痛いところをつかれた、そんな表情をしていた。
まだ報告することができていない事実は、いずれ露見してしまうに違いない。千鶴と師匠が旧友ということであれば避けられないだろう。
「可憐ちゃんが帰ってきてくれたら」と雪歩は口にするが、後が続かなかった。百合子はこの前(>>257前後)雪歩から聞いた話を思い出す。たとえ可憐が再び店の一員になったとしても、彼女たちの師匠はあと39年はこの世界には来ることはできないのだ……。



雪歩「さて、と。サヨさんがいるっていう、たい焼き屋さんはどこかしら」

百合子「あの、白雪さん。ちょっとだけライブラリに寄っていいですか」

雪歩「……どうして?聞いたでしょう?百合子の興味関心を満たす本はきっとないわよ」

百合子「うっ。で、でももしかしたらこの魔導書と共鳴する本があるかもですし。以前、白雪さんたちが訪れたのって何年も前なんですよね?その頃とは変わっている可能性だって」

雪歩「はぁ、しかたないわね。765秒だけよ?」

百合子「13分足らずですか。わ、わかりました」

雪歩「じゃあ、いくわよ」
493 : EL変態   2021/10/16 19:52:06 ID:bLNguU6YfI
- 異界ライブラリ内 -
不自然なほどに空気の澄んだ空間。本の匂いらしい匂いなどなく。
磨かれた床はじっくりと見れば百合子のスカートの中さえ映し出しているふうだった。

百合子「受付に自動人形のお姉さんとかいないんですね。ゴシック衣装を着た甘いもの好きで背中に機械仕掛けの片羽根が生えている、そんな感じの」

雪歩「妙に具体的ね。……実際は異界生物のなかでも比較的知能の高い種と、機械が管理を担っているみたいね」

百合子「先日、異界関係者御用達のスーパーマーケットでお会いした、ロコさんが飼っているアンナっていうナンスより知能が高いんですかね(>>239前後)」

雪歩「?? そのパート、私と百合子&春香っていう別行動だったから知らないわよ。というか読み返したら1カ月半も前のレスなんだから誰が覚えているのよ」

百合子「そ、そんな~」

2人は数少ない書架がある閲覧室へと進む。出入り口の扉は戦時の避難拠点にでもなるのかと思わせるレベルのシェルターらしき造りをしている。
規則があるのだろう、2人の後ろを管理者の1匹が無言でついてくる。言葉もなければ音もない。

百合子「…………」

雪歩「どう?読めるものある?」

百合子「…………」

雪歩「百合子?」
494 : Pーさん   2021/10/16 19:54:51 ID:bLNguU6YfI
百合子「読めません。どの本も背表紙からして読めそうな言語じゃないですよ、これ」

雪歩「思わせぶりな間をとるんじゃないわよ!」ペチンッ

百合子「あんっ♡」

雪歩「ほら、さっさと出るわよ。サヨさんを待たせるのも悪いわ。『たった1秒だって~♪』って抗議してくるかも」

百合子「ま、待ってください!か、感じるんです!」

雪歩「えぇ……?書物自体に性的興奮を覚えているってこと?あの、いくら家族でも、というか家族だからこそ、そういう話はあまり……」

百合子「そういう感じるじゃありませんよ!?私のこと何だと思っているんですか!!」

雪歩「大切な妹よ」キリッ

百合子「うう~、調子がいいんですから~!」

雪歩「あっ。可憐ちゃん、春香、の次に大切な妹よ」

百合子「それは聞きたくなかったですよ!? そこ順位つけなくてよくないですか!?」

雪歩「ふふっ、可愛い妹をからかいたくなるのが姉ってものなの」

百合子「も、もうっ」
495 : 夏の変態大三角形   2021/10/16 19:57:46 ID:bLNguU6YfI
雪歩「で?何を感じるわけ?………本当に百合子の予測どおりその魔導書と共鳴している本が…?」

百合子「それが―――――妙なんです」

雪歩「?」

百合子「この感じ……私があの日訪れた図書館、迷い込んでしまったあの場所に似ている、そんな気がするんです」

雪歩「それって、百合子がこの世界へとやってくる原因を作った図書館のことよね?つまり、その料理魔法の集積、一つの到達点とも言える書物と邂逅し、契約を果たした場所」

百合子「はい。同じ場所でないのは、はっきりわかります。上手く言えませんが、雰囲気……ええ、近い空気で満たされているんです」

雪歩「………」

後ろをそっと振り向く雪歩。例の異界生物、もやもやとした影の形をとっている彼あるいは彼女の瞳は雪歩に何も訴えかけてこない。もしくは何か言わんとしていることがあろうとも、それは伝わらない。
管理者であるのだから、利用者が書架に、本に、設備に何かしようとすれば警告なしに「保安活動」と行うと案内板には簡潔に記されていた。
百合子に向き直って、雪歩は思うところを告げる。

雪歩「ずっと前に話したとおり、百合子、あなたの混濁した記憶のうちにあるその図書館が、特別な場所であるのは間違いないわ。魔導書との契約、その対価として元いた世界を追放された……それが私と春香の推測ではあるけれど、実際のところそうだと証明できているわけでもない、そうよね?」

百合子「はい。個々の書物よりも、あの図書館が特殊な機能を有している、いわば特例的な空間だとみなすこともできるってわけですよね」
496 : 我が下僕   2021/10/16 20:00:07 ID:bLNguU6YfI
雪歩「ある世界と別の世界とを繋ぐ場所……。師匠は個人レベルで世界渡りというのをそれに見合うだけの準備をして、行っていた。千鶴さんのときはさらに入念に、用意周到に、時間もお金もかけていた」

百合子「もし仮に、あの図書館にアクセスする方法があって、適切な手続きをすれば誰もが目指す異世界に飛べるのだとすれば―――」

雪歩「ううん、もうこの話はおしまいにしましょう。あまりに多くの仮定と憶測を含んでいるし、それらが導く答えが今の私たちが置かれている状況をどうにかすると思えないもの」

百合子「けれど、突き詰めていけば、私は元の世界に帰――――」

雪歩「!」

百合子「あっ。えっと、ごめんなさい、なんでもないです。い、いきましょうか、たい焼き屋さん。サヨさん、君から届くHappy Birthday いつかほしいななんて思っているかもしれませんし」

雪歩「………ねぇ、百合子」

百合子「ダメですよ、白雪さん」

雪歩「え?」

百合子「その質問は……いけません。私は……今の私はお2人の大切な妹で、私もお2人のことはお姉ちゃんだって、そう、思っていますから。嘘じゃないですよ?」

雪歩「百合子……」

百合子「行きましょう。すべてが終わったら、また来ればいいんです。そうするだけの時間はありますから」
497 : Pさん   2021/10/16 20:02:45 ID:bLNguU6YfI
- ライブラリ近く たい焼き屋『駒形』-

紗代子「おそーーーーーーい!!!」

雪歩・百合子「すいませんでしたぁああ!!!!!」

紗代子「10日だよ?安価でここでの登場人物が私に決定してから10日経っているんだよ!?」

雪歩「それは私のせいじゃないですぅ!」

紗代子「さすがの私も、たい焼きだけで生活するのはつらかったよ!! 店主さんを脅は……お願いして具材のバリエーションを39種類に増やしてもらったけど、それでもたまには焼きそばや焼肉、焼きおにぎり、食べたかったよ!」

百合子「全部焼いている!?なんて火力とパワーなの、この人!」

雪歩「結局、どれが一番おいしかった?」

紗代子「つぶ餡!」

百合子「一周回っちゃった!!」

紗代子「で?まこまこりんから事情をかるーく聞いたけど、この私の力が必要なんでしょ?」

百合子「まこまこりん……?」

雪歩「百合子、それ以上いけない」
498 : Pーさん   2021/10/16 20:05:19 ID:bLNguU6YfI
紗代子「とりあえず私に任せて!私が2人をこの短期間でメダカからリヴァイアサンまで成長させてあげるからねっ★」

雪歩・百合子「!?」

紗代子「じゃあ、まずはランニングだね。散々待たされちゃったし、うん、それじゃ、765㎞行ってみよう!」

雪歩・百合子「」

紗代子「大丈夫!おおよそ東京都・山口県の直線距離って程度だから!」

雪歩・百合子「」

紗代子「ファイトォー!」



1時間後

紗代子「どうしたー、どうしたー!まだ100分の1だよ!」

雪歩「異界だから基礎身体能力が向上しているわけだけど……」

百合子「い、いくらなんでも765㎞は、むーりぃー…」

紗代子「無理って言葉はね、嘘つきの言葉なの」

雪歩・百合子「?????」

紗代子「途中で止めてしまうから無理になるんだよ」

雪歩・百合子「えぇ……」
499 : 彦デューサー   2021/10/16 20:08:27 ID:bLNguU6YfI
2日後(準決勝前日) 
ランニング他、恋の千本ノック・改など、紗代子による地獄の特訓から解放された雪歩と百合子は、令嬢屋敷内に用意された部屋に戻って身体を休めた。
紗代子の影響のせいなのか、体の火照りがなかなか収まらず、そのままの勢いで2人はPST(>>153参照)に励んだ。ほどなく絶頂を迎えた2人は深い眠りに落ちた。
その晩、修行から帰還した春香はキングサイズのベッドであられもない姿で抱き合って眠る2人に脳を壊されかけたが、修行の成果によって持ちこたえたのだった。滝行ってすごい、そう思った。

そして準決勝当日
作者さえ忘れたクッキングデバイスの整理をしてから、3人は会場へと向かった。
審査員の真美・のり子も出番はまだなのかとそわそわしているはずだ。なんだったら主催者たる亜美も登場していない始末なのだ。

百合子の高位魔導書読解術のレベルが2から3にあがった!
(魔導書との)リンクアピールの効果が上昇した!
【竜巻旋風妄想陣】を習得した!


雪歩は【美味しいたい焼きの作り方】を習得した!


Recipe7partDにつづく!
500 : プロデューサー殿   2021/10/16 20:13:33 ID:bLNguU6YfI
※【A】『HOTDOGS』戦の舞台は?
※【B】『HOTDOGS』戦の課題料理は?(ホットドッグ・たい焼き以外で)
※【C】グリルモワールが課題料理に用いる異界食材を1種
※千鶴さんが今後の展開で登場するかは未定
※リーダーの正体を安価するかは迷っている最中


レスの有効期限は10/18 20:59:59まで
早ければ10/20午前中に投下 遅くとも10/22中には
ご協力お願いします!
何卒最後までお付き合いください!
501 : do変態   2021/10/16 20:45:00 ID:AOlBvwgvfc
A 超ビーチバレー大会会場のすぐ隣
B oDEN...もとい、おでん
C コカトリス卵
502 : おにいちゃん   2021/10/16 23:48:54 ID:T4rMsLMgd.
Aお祭りの縁日
Bハンバーガー
C虹色レタス
503 : レスありがとうございます!   2021/10/20 20:29:36 ID:cUzb1rjgaY
Recipe7partD投下していきます

Princessトリオ料理ユニット『グリルモワール』と、『HOTDOGS』の3人のうちの海美・可憐の2人。
彼女たちがついに勝負する料理大会2回戦(準決勝)
話は少しだけ遡り……
その前日 夜

異界ライブラリ前 
雪歩と百合子の特訓に付き合った不撓不屈のサヨこと、紗代子の前にぷっぷかぷ~っと姿を見せたのは―――


麗花「さーよこちゃん♪やっほ」ギュー♪

紗代子「麗花さん!? どうしてこんなところに? 箱崎のところのメイドとして潜入しているはずじゃ……」

麗花「それなら、もうおしまい!思ったより楽しかったから、ついつい何日も余計に過ごしちゃった」

紗代子「そうなんですか?そんな報告は受けていませんけど」

麗花「あれあれ?怒った?」ダキツキホドキー

紗代子「いえ、そんな。麗花さんにも考えがあるというか、その行動を私では予測しきれないのは嫌と言うほど知っているというか」

麗花「ふふふ、なんだか照れちゃうなぁ」

紗代子「褒めていませんよ?はぁ……ジュリアには報告済みなんですか?」

麗花「うーん……それが、全然連絡がとれなくて」
504 : Pチャン   2021/10/20 20:31:59 ID:cUzb1rjgaY
紗代子「それについても、いつもどおりといえばそれまでですね。ふむ……収穫はありました?」

麗花「? お米のこと?それともサツマイモのこと?」

紗代子「ちがいます! 箱崎家での潜入捜査での成果ですよ」

麗花「あ、それ? うん、白だったよ。真っ白。でも、星梨花お嬢様のお気に入りの下着の色は……」

紗代子「そういう情報はいいですから!ご家族の方から苦情きますよ!」

麗花「紗代子ちゃん、どう思う?水瀬や二階堂、そして箱崎……どの財閥も『あの子』に肩入れしているふうじゃないってことだよね」

紗代子「ええ、そうなりますね」

麗花「後ろ盾のあてがはずれちゃったね。もしも、そんなのはないんだったら、彼女は私たちが考えている以上に特別な人間ってことかな。雪歩ちゃんたちみたいな一介のハザマとは違う」

紗代子「麗花さんのが特別というのがどの程度を指すかはわかりませんが、私にとっては特別で間違いないですよ。異界深奥の遺跡をたった1人で攻略して、あれだけの貴重な異界食材を持ち帰るなんて、怪物です」

麗花「彼女はあの遺跡……と呼ぶには老朽化とはあまりに無縁のあの土地から、存在すら疑われていた故に秘宝と称されるいくつかの食材を持ち帰った。ううん、いくつも、か。なんだったら、根こそぎと言ってもいいよね」

紗代子「それらを金銭に変えたのならば、一生遊んで暮らせただろうに、実際には自身のもつ素質の強化、それを実現する料理の材料にした………そう、彼女は女子力の向上を最優先して動いたんです」
505 : EL変態   2021/10/20 20:35:41 ID:cUzb1rjgaY
麗花「純粋に力を欲している、すなわち強さの渇望こそ信念……ってわけじゃないと思うよ」

紗代子「というと?」

麗花「女子力はあくまで武器。狙いは別にあるってこと。ばきゅーん♪」

紗代子「女子力は、いえ、この場合はむしろ濃密度の……オトメティックパワー、ですね。それは彼女にとって、野望を成し遂げるための手段でしかないってことですか?」

麗花「そうそう」

紗代子「ハンドレッドやプレアデスからの情報によれば、ここ数年の異界での、とくに深部での密猟・密漁事件の多くには、裏で彼女が関係しているのだとか。まこまこりんも『正体は掴んでいないけど、確かにおかしな動きが市場でもある』って」

麗花「ふむふむ。彼女が……それは『HOTDOGS』としてではないんだったよね?」

紗代子「ええ、個人です。今は『HOTDOGS』のリーダーとして活動しているみたいですが、動きはそれ以前からありますから」

麗花「うーん、例の大会中、姿を見せていないけどね」

紗代子「雪歩ちゃんと百合子ちゃんは明日が勝負と話していたけれど……もしかすると現れないかもしれません」

麗花「アレを欲しがっているのは嘘じゃないと思うけどなー。ただ、手に入れ方はべつに優勝に固執していないのかも。機会をうかがっているんだろうね」
506 : Pちゃま   2021/10/20 20:37:43 ID:cUzb1rjgaY
紗代子「!! 待ってください、麗花さん。突き止めたんですか?双海家が、というより令嬢・双海亜美が今回の料理大会で何を賞品として設定しているのか」

麗花「確定ではないけど、それとなくね。親衛隊のひとりと偶然、お友達になれたんだ。美希ちゃんって言ってね……」

紗代子「そんなことよりも! なんなんですか、アレっていうのは」

麗花「えー?せっかちだなぁ。けっこう久しぶりに会ったのになー。もっとおしゃべりを楽しもうよ」

紗代子「そういうわけには……場合によってはすぐに行動しないと」

麗花「焦らない、焦らない。ジュリアちゃんだって揃っていないんだし。私たち3人で『アクアリウス』でしょ?」

紗代子「それはそうですが……。ジュリア、いつも私を待たせるんだから」

麗花「ピンチには駆けつけてきてくれるって。そういう子だもん」

紗代子「だといいですけど。それで?改めて訊きますけど、双海亜美は何を用意したんですか?」

麗花「えっとね――――世界をつくる鍵のひとつ、みたいなものかな」

紗代子「………はい?」
507 : 下僕   2021/10/20 20:40:12 ID:cUzb1rjgaY
雪歩「どういうこと?なぜすぐに私に言ってくれなかったの?」

春香「眠っていたじゃん。しかも百合子と。さらに言うなら、あんなふうに服をはだけさせて、何をして、」

雪歩「言い訳しないで!」

春香「えぇ……」

百合子「え、ああっ、ちがうんです、成り行きで、べつに不健全なことなんて///」

春香「それよりも可憐ちゃんがさ―――」

密林の奥、滝で出会った可憐としたやりとりを雪歩と百合子のふたりに共有する春香。
可憐自身に表面上の変化はなさそうだが、一方で、リーダーの人物の影響なのか、ある意味で洗脳であるのか、一部、精神的なねじれやズレがある印象を受けたのを話した。

雪歩「洗脳、催眠、調教……ゆ、許さないですぅ!そんな淫らな!」

春香「淫らなのは雪歩の頭の中だよ」

百合子「/////」ビュオー、ビュオー!!

春香「百合子ちゃん、それが竜巻旋風妄想陣ってやつ?無駄に風を吹かせないでほしいな、ははは……」
508 : ミスりました   2021/10/20 20:44:04 ID:cUzb1rjgaY
>>507冒頭部分抜け
そして時は戻り……
準決勝当日朝 大会本部 屋敷内 『グリルモワール』宿泊室

雪歩「可憐ちゃんと会った!?」
509 : 我が友   2021/10/20 20:46:27 ID:cUzb1rjgaY
つづき

百合子「そ、それはそうと、その張本人が今日の戦いに現れないっていうのは、これ、完全に舐めプってやつですよ!」

雪歩「え?可憐ちゃんが私を舐めるの?そういうのもありですぅ」

春香「いいかげん、正気に戻ろう?」

百合子「ん、ん。何はともあれ、私たちの成長を見せるときです。最高の料理を作って、ぎゃふんと言わせましょう!」

雪歩「ぎゃふん!」

春香(雪歩……可憐ちゃんのことで、動揺しているんだね。全力を出し切れるように、サポートしないとだなぁ)

百合子(今朝は魔導書から強い力を感じっぱなしだ……予感しているのかも。今日の料理はきっとこれまでにないとんでもないものになるって)

雪歩「さて、と。それじゃあ、行こう」

春香「会場、どこだっけ?」

百合子「ビーチですよ!ビーチ!」
510 : 変態大人   2021/10/20 20:48:55 ID:cUzb1rjgaY
準決勝特設会場(超ビーチバレー大会会場すぐ隣)


雪歩「………」

春香「雪歩、そんなきょろきょろ見まわさなくても、可憐ちゃんだったら時間が来れば海美ちゃんといっしょにやってくるって」

雪歩「え、ええ。それもそうね。あと、なんだか知らないけど、誰かにくすぐられそうな場所だと思って」

春香「?」

百合子「あ、今回の審査員はあの人たちですね。司会を担当するのは……えっと、格闘技観戦でも好きそうな溌剌としたお姉さんですね」

雪歩「へー、福田のり子さんっていうんだ。ああいうタイプの子に限って、乙女チックなのがいいんだよね。カワイイって何度だって言いたいですぅ」

春香(誰目線!?)

のり子「みんなは準備はOK?」

観客「ワァァアアアアアア!!!」
511 : ハニー   2021/10/20 20:51:17 ID:cUzb1rjgaY
のり子「それじゃあ、サイコーにいかした審査員を紹介していくよ!」

観客「ノリコォォォオオオオオ!!!」

のり子「あの亜美お嬢様の従妹、真美ィィイイイイ!!!」

真美「よろよろ→ お世話はするのもされるのもトクイ中のトクイだよ!」

観客「ゴウホォォオオオオオオオ!!!!」

百合子「あれ?屋敷の写真で見る限り、亜美さんとそっくりですね。まるで双子みたい」

春香「いや、だって本当に、」

雪歩「春香ちゃん! しーっ。今回は双子じゃないんですぅ」

のり子「そして、お次が……」

のり子が審査員を務める面々を紹介していく。
そして、それが終わると対決するユニットの紹介に移るのだった。
512 : ぷろでゅーしゃー   2021/10/20 20:55:17 ID:cUzb1rjgaY
のり子「青コーナー……転がりはじめた妄想は止まることを知らずに雪だるま式に膨れ上がっていく、正統派美少女揃い踏み、熱き想いと魔導書が導くままに料理する、『グリルモワール』!!」

雪歩「!? なんで魔王なんですかぁ?!」

春香「私の、覚醒前のラバーズでよくなかった!?」

百合子「私の神秘的な部分、出ちゃったなー。まいっちゃうなー。魅力39%増量中って感じですかね!」

雪歩・春香「………」ムニーッ

百合子「いひゃい、いひゃいへすよ!!」

のり子「そして!対するは赤コーナー……『HOTDOGS』から2人だけ!? わんこ系女子2人組、篠宮可憐と高坂海美ィィイイイ!!!」

可憐「匂い立つなぁ……」

513 : ボス   2021/10/20 20:57:42 ID:cUzb1rjgaY
対峙する2つのチーム 雪歩は可憐に一歩近寄った


雪歩「――――可憐ちゃん」

可憐「久しぶりですね、雪歩ちゃん。そして初めまして、魔導書の契約者……セブンテイルズ」

百合子「へ?あー……百合子でいいですよ」

可憐「そ、そうなの?」

春香「うん」

可憐「ん、ん。……言葉は不要か」

海美「え?もういいの?久々に会ったんだし、話したら?」

可憐「で、でも、ほら、のり子さんの進行の邪魔になっちゃうかもって……」

春香(ぐだぐだだーっ!)

雪歩(でも、そんなところも好きなんだけどね)
514 : 監督   2021/10/20 21:00:47 ID:cUzb1rjgaY
そうこうしているうちに、のり子から課題料理が発表される!

のり子「私は恋を夢見るアメリカンガール」

雪歩・春香・百合子・可憐・海美「!!!!!」

のり子「大好きな食べ物はハンバーガー あ~愛しのダーリンどこにいるの… って、ここの部分言う必要なくない!?」

観客「ウォォォォオオオオオオ!!!」

のり子「と、というわけで、課題料理はハンバーガー!使っていい食材の調達はずばり……超ビーチバレーで決めていくよ!!」

一同「な、なんだってぇぇーーっ!?」


Recipe8partAにつづく
10/25前後には投下したいです 何卒最後までお付き合いください!
515 : レジェンド変態   2021/10/26 19:48:31 ID:ujtBERLqBU
Recipe8partA

『グリルモワール』VS『HOTDOGS』
砂浜のすぐそばの特設会場に集まった大会参加者と観客。勝負の課題料理が司会役・のり子によって「ハンバーガー」であると発表された。
今回は超ビーチバレーによって食材の選定をしていくらしいのだが……?

真美「説明しよう!」バッ

百合子「わっ!? 真美ちゃん、なんで急に脱いで……って、水着!?」

雪歩「あれは2021年10月現在だと可憐ちゃんと真美ちゃんにしか実装されていない衣装、エレガントミズギ!」

春香「優雅な瑞希ちゃんのこと?」

可憐「そ、それはエレガントミズキ……って、そんなことより、なんで水着に?」

真美「んふっふっふ~、ノリーが話したとおりだよ。ハンバーガーに挟む食べ物はね、超ビーチバレーで決めていくんだYO」

のり子「超ビーチバレーで対決してもらって、1セット獲得ごとに用意した食材の中から1つ選べるってルールなんだ」

百合子「ええっ! じゃあ、もしも1セットもとれなかったら……?」

のり子「そこは大丈夫!バンズだけを審査員の方たちに食べさせるわけにもいかないからね」

雪歩「それもそうね」
516 : P様   2021/10/26 19:50:32 ID:ujtBERLqBU
のり子「料理がメインだから、超ビーチバレーをするとはいっても長丁場にならないルールにしたよ」

真美「1セット10点の5セットマッチ!ジュースはなしだって」

海美「水分補給はダメってこと!?」

百合子「デュースのことだと思いますよ」

春香「トゥース!」

雪歩「春日さんは関係ないよ!」

未来「呼びました?」

百合子「春日違い!」

百合子「『HOTDOGS』は、可憐さんと海美さんの2人がそのまま参加するとして、私たちは3人ですよね?」

雪歩「身体能力向上スキルをもっている春香は確定として、私か百合子か……」

春香「迷う必要はないって。ここは百合子ちゃん、頼んだよ」

百合子「え?」
517 :   2021/10/26 19:52:44 ID:ujtBERLqBU
春香「のり子ちゃんが言ったとおり、メインは料理。その中心を担う雪歩を、疲れさせたくないからね」

百合子「たしかに……」

春香「それにほら、百合子ちゃんはミリシタ内でも1年目、3年目、4年目、5年目と脱ぎに脱ぎまくっているから、ビーチバレーにうってつけだし」

雪歩「ちょっとした露出狂ね、すごいわ百合子」

百合子「もっと他に言い方ありません!?」

海美「私のFES限含めて、水着系衣装ってほんと多いよね~。みんな、好きなんだね!」

可憐「これから寒くなっていきますけど……ば、晩秋から真冬にかけて誕生日を迎える子たちであっても、誕生日に新たに水着が実装されるんですよね……」

真美「ゆきぴょんとか、そうだよね→」

百合子「話を戻しますけど、そっちは2人だけですよね?いいんですか、なんか不公平な気がしますけど」

のり子「う~ん、でも、2人だけってのは、『HOTDOGS』側の都合だしなぁ。こっちは3人そろってくると思っていたんだよ」

海美「そういう気遣いは不要だよ。なんだったら、3人ともコートにいてもいいぐらい」

雪歩「大した自信ね……さすがは超ビーチバレー全国大会優勝経験者といったところかしら」
518 : Pチャン   2021/10/26 19:56:15 ID:ujtBERLqBU
百合子「!? 全国大会優勝?! な、なんですか、そんなの聞いていないですよ?!というか、超ビーチバレーってなんですか?!」

春香「今更すぎるツッコミ!」

可憐「あはは……」

雪歩「のり子さん、真美ちゃん。3人でミーティングする時間くれますか?」

のり子「うん、いいよ。10分ぐらいなら」

海美「作戦会議ってやつだねー、いいよー、いいよー、燃えてきたぁー!」

真美「じゃあ、その間、観客席のみんなを飽きさせないように真美とノリーがせくちーポーズきめてくるね!」

のり子「ええっ!?」

春香「テコ入れですよ!テコ入れ!」



一旦、のり子たちや可憐たちと離れた3人。

百合子「あ、あのー……それで、白雪さん。作戦があるんですか?」
519 : おやぶん   2021/10/26 19:58:42 ID:ujtBERLqBU
雪歩「単純よ。可憐ちゃんを狙いなさい」

百合子「!?」

春香「海美ちゃんは素の身体能力が高いのに対して、可憐ちゃんの能力はそこまで。この異界においても超人的な動きはできないと見てもいいよね」

百合子「えっと、つまり可憐さんは元々、運動が得意というわけでもなく、異界における特殊な能力としても身体能力に影響していないってことですか?」

雪歩「たぶんね。後者に関しては把握しきれているわけではないけれど」

春香「私たちの下を離れた可憐ちゃんがこっち(異界)で能力を開花させた可能性も無きにしも非ず、か。昔は異界に足を踏み入れるのも怖がっていたのになぁ」

雪歩「ふふっ、そうだったね。師匠の後ろによく隠れていたっけ」

春香「それは雪歩もでしょ?」

雪歩「ん、ん。さぁ、なんのことかしら。とりあえず、ふたりとも……高坂海美をまともに相手にしてはいけないわ」

百合子「見るからに運動得意そうですものね。波動球みたいなの使ってきそう」

春香「パワーよりもスピードってタイプだとは思うけど、とにかく気をつけるに越したことはないよ」
520 : P殿   2021/10/26 20:00:35 ID:ujtBERLqBU
雪歩「当然だけど、何かあれば私がどちらかと交代するわ。いざとなったら……」

春香「雪歩、ダメだよ。あの能力は使っちゃダメ。約束したでしょ」

雪歩「春香……」

百合子「あ、あっれー?またなんか私が知らない感じの設定増えています?それとも意味深な雰囲気出して、最後まで判明しない禁術みたいなあれですか」


雪歩「試合内容はダイジェストでお送りしますぅ!」


百合子「来たれ、嵐よ!今こそ見せます!乙女ストーム!」

海美「ふうん、百合子、それがこちら側(異界)で得た力なんだね。でも足りない、足りないよ!百合子に足りないもの、それは――――情熱、思想、理念、頭脳、気品、優雅さ、勤勉さ、」

海美「そしてなによりも――――速さが足りない!!」

春香「嘘っ!?消えた!?」

可憐「縮地法……海美ちゃんの極めた速度には音さえもついていけません……!」

百合子「ぐわぁあああああああああ」


雪歩「くっ……あっという間に1セットとられてしまったわね」
521 : ダーリン   2021/10/26 20:02:29 ID:ujtBERLqBU
春香「どんがらスクランブル!!!」

可憐「あれは……黄金の回転!?」

海美「可憐、危ない!」

百合子「いくらなんでも可憐さんにそんな……ううん、ちがう!はじめから海美さんが可憐さんを庇うことを信じての攻撃!?」

海美「うぉおおおお!!」

春香「な……!逆回転で相殺したっていうの!?」



雪歩「2セット目も可憐ちゃんたち、ね」
522 : 高木の所の飼い犬君   2021/10/26 20:06:47 ID:ujtBERLqBU
可憐「パフューム・ブリンガー!!」

春香「そんな!可憐ちゃんにこんな能力が!?」

百合子「さっきのセットで疲弊した海美さんの助けになろうと、その強い意思が、あれだけの力を目覚めさせたとでもいうんですか!?」

春香「主人公か!」

可憐「はぁ……はぁ……」

百合子「消耗しています!今です、春香さん!」

海美「可憐……!! させるかぁあああ!!!」

百合子「あ、あれはキネティックパワー!?」

春香「ここにきてヒーローズネタだって?!」



雪歩「3セット目も『HOTDOGS』……春香、百合子!」ダッ
523 : プロデューサーさま   2021/10/26 20:08:44 ID:ujtBERLqBU
春香「来ないで!」

雪歩「!」

百合子「えへへっ、やっと体があたたまってきたんですよ。残りの2セット、私たちが勝ちますから。だから、白雪さんはそこでじっとしていてください」

雪歩(ふたりとも、もうへとへとだ……!)

雪歩「で、でも!」

春香「雪歩、私たちを信じて」

雪歩「!」

百合子「お茶でも飲んで、のんびり待っていてください。選べる食材、少なくなっちゃいましたけど、でも、ぜったい……次こそ勝ちますから」

雪歩「春香、それに百合子……。わかったわ、たまっていた覚醒コミュをのんびり見てジュエル獲得していくことにする」

春香「ついついたまっちゃうよねー」

百合子「性格も出ますよね、ああいうの」
524 : プロデューサー君   2021/10/26 20:10:47 ID:ujtBERLqBU
呼吸を整え、春香が百合子を見つめて言う。

春香「百合子ちゃん、私ね、最初から間違っていた気がする」

百合子「ど、どういうことですか?」

春香「2人を打ち負かすことばかり考えていたから」

百合子「春香さん……?」

春香「私たちの呼吸を、力を、魂をひとつに、ユニゾンさせるんだよ!そうだよ、私たちは『Legend Girls!』」

百合子「!! 春香さんの力が私に流れ込んでくる! もっと早く使ってほしかったなんて言いませんよ!」

春香「1+1は―――?」

百合子「1,000,000ってことですね!なりましょう、伝説に!」

春香・百合子「はぁあああああ!!!!!!!!」

海美「ここにきて、なんて気迫……でも、私たちだって!まだまだいけるよね、可憐!」

可憐「う、うん!」
525 : プロデューサーくん   2021/10/26 20:14:50 ID:ujtBERLqBU
真美「試合しゅうりょーー!!」

のり子「熱い闘いだったね!」

雪歩「春香、百合子。ありがとう、お疲れ様。しっかり休んで」

春香「ごめんね……結局、4セット目しかとれなくて」

百合子「あのセットで全力出し切っちゃいましたもんね」

春香「食材、どんな具合?」

百合子「なんとかもぎとった虹色レタス以外は、余った食材、つまりグレードが低く設定されている食材のなかから選べるみたいですね……いてて。筋肉痛確定です」

春香「それに対して、ほら、あれ。さすが海美ちゃん、スタミナマジぱないね。あれだけ動いたのに、ちょっと休憩しただけでピンピンしているよ」

百合子「可憐さんはけっこう疲れているみたいですね。はい、春香さんの分のスパークドリンク。当日限定ですよ」

春香「ありがとう。ふーっ、生き返るぅ! ……前から思っていたけど、当日限定で、過ぎたら消失するって……これの成分っていったい……?」

雪歩「廃棄寸前のものってことなのかしら」
526 : Pちゃま   2021/10/26 20:17:27 ID:ujtBERLqBU
百合子「深く考えたらいけませんよ。噂じゃ、1つ食べさせるだけでソロライブしたときの10倍以上の親愛度を獲得するロールケーキがあるんだとか……」

雪歩「なにはともあれ、2人のおかげで手に入ったこの虹色letters……じゃなくて虹色レタス。無駄にしないよ。それにこれも」

春香「ん?雪歩、その卵は?」

雪歩「余っていた食材の中にあったの。コカトリス卵」

百合子「コ、コカトリス!?雄鶏と蛇とを掛け合わせたような姿の生物ですよね?」

雪歩「>>501にあるとおり、『コカトリスの卵』ではなく『コカトリス卵』よ。石化能力にちなんでいるのか、殻がものすごく硬いのよね。そしてその味わいはなんとも不思議、キメラって感じらしいわ」

春香「待ってよ、雪歩。たしかその卵で勝負に出ようっていうの?」

雪歩「言いたいことはわかるわ。この卵、はっきり言ってそんなに美味しくないわ。本来なら、春香の心眼や百合子の魔導書を駆使して、もっと慎重に食材を選ぶべきかもしれないわね」

百合子「超ビーチバレーの報酬になっていたものと違って、余った食材グループはわりと平凡なものが多いのが、私にだってわかります」

雪歩「そうね。でも……今度は私を信じて」

春香・百合子「!!」

雪歩「虹色レタスに、コカトリス卵、それからアレとアレとを合わせて、あのクッキングデバイスを使えば――――超バーガーの完成よ!」
527 : 仕掛け人さま   2021/10/26 20:19:40 ID:ujtBERLqBU
百合子「超バーガー!?」

春香「組み合わせしだいで無限の可能性、ってことだね。やれやれ、美味しいところは、いつも雪歩にもっていかれちゃうみたいね。………私は信じるよ、雪歩のこと。私の、ううん、私たちの自慢のお姉ちゃんだもんね。そうでしょ、百合子」

百合子「春香さん……。くっ、本当だったら私が成長した魔導書とのリンクを見せるときなのに、さっきのビーチバレーで体力を消耗しきっちゃって……。白雪さん、私も信じています!白雪さんなら、作れます、超バーガー!」

雪歩「ありがとう、ふたりとも。いってくる。輝きの向こう側へ!」




海美「可憐、いけそう?」

可憐「こ、こういう状況も考えて、既に調合は済ませてあったから……。調理の大部分は海美ちゃんに任せることになっちゃいそうだけど、このスパイスさえ適切に使えば、負けないよ」

海美「調味料の加減は今でもそんなに得意ってわけじゃないけど……でも、頑張ってみる!」

可憐「うん……」

海美「ねぇ、可憐。あのさ、この戦いが終わったら―――――」

可憐「え?」

海美「……なんでもない!休んでいて!そこで私が雪歩さんに勝つところ、しっかり見ていてね!」

可憐「う、うん」
528 : Pちゃま   2021/10/26 20:22:11 ID:ujtBERLqBU
のり子「両チームともに調理開始の準備ができたようです!」

真美「お腹ペコペコリンだよ!とっとと、さっさと、ぱぱっと作ってもってきて!」



雪歩「高坂海美……ううん、海美ちゃん。可憐ちゃんは返してもらうから」

海美「まだそんなこと言っているの?こっちについてきたのは可憐自身の意思なんだよ? 雪歩さんたちのやり方じゃ世界は救えない」

雪歩「あなたたちのやり方だったら、救えるっていうわけ?は!とんだ驕りね。勇者にでもなったつもりなわけ?」

海美「なんでそんな言い方するの! 昔の雪歩さんだったら……」

雪歩「もう昔の私じゃない。怖がりで、臆病で、ダメダメな自分は捨てたの」

海美「雪歩さん……」

雪歩「リーダーがどんな人か知らないけど、ここにいないっていう、その事実で程度が知れるわね」

海美「……っ!リーダーのことを悪く言わないで!」

雪歩「全力でかかってきなさい。あなたの全てを否定してあげる」
529 : プロデューサーちゃん   2021/10/26 20:26:10 ID:ujtBERLqBU
百合子(春香さん、あの……どっちが悪役なんですか、これ)

春香(というか、これから行われるのは料理勝負なんだけど……)

可憐(ふぁ、ふぁいとぉー!)


次回、決着!
そして『HOTDOGS』のリーダーは……!?

Recipe8partBにつづく
530 : 魔法使いさん   2021/10/26 20:29:25 ID:ujtBERLqBU
リーダー候補を2人に絞ったので、安価投票で決めたいと思います。

1.田中琴葉

2.四条貴音

多数決。同票であればIDに含まれる数字で判定。(大小)
0票であれば期限終了後に、自レスして、IDに含まれる数字で判定
(最初に登場する数字が偶数→琴葉 奇数→貴音)

レスの有効期限は10/29 11:59:59 


Recipe8partDで完結させます、なんとか
10月中は現実的ではないので、再延長して11月中を目処に。
何卒最後までお付き合いください
ぐだぐだ感を楽しんだらいいと思います(開き直り)
531 : あなた様   2021/10/26 21:03:54 ID:uTxzIV5b62
お待ちしておりました。
雪歩はどこまでこのキャラを維持できますやら

あ、リーダー候補は琴葉で一つ
532 : レスありがとうございます!   2021/10/29 17:07:47 ID:0cE.KRnr/M
Recipe8partB  


のり子「さぁ、調理が始まったよ!『グリルモワール』萩原雪歩VS『HOTDOGS』高坂海美の一騎打ち!!」

真美「お題はハンバーガーだけど、ふたりの間に挟まれたい兄(C)、姉(C)いっぱいいっぱいだよね!」


春香「雪歩、頑張って! うう、さっきの超ビーチバレーで疲れている私には百合子ちゃんの頬をむにることしかできないよ」

百合子「ふふうにおうへんひあほうほ!?(ふつうに応援しましょうよ)」


可憐「海美ちゃん、油断しないで。雪歩ちゃんはこれまで競ってきたどの相手よりも強敵だから……!」


海美「うみみーーんっ!!!」シャキンシャキンシャキン

のり子「なっ、なんだあっ!?あの速さ!?う…海美 たった数秒で具材をバラバラにした!」

春香「あれはミラソニ!」

百合子「包丁捌きに対するその呼称、ぜったい定着しませんって」

真美「切り刻んだあれ、1セット目で勝ち取ったミリオン玉葱だよ!」

のり子「食材の名前なんていちいち考えていられないってのがまるわかりだぁー!!」

海美「ふふふふ、玉葱はビタミン・ミネラル・タンパク質……そして女子力が含まれている完全食なんだよ!」

通りすがりのセレブ「玉葱を切る際に必ずといっていいほど話題にあがるのが、いかに涙を出さないようにするかですわね!」

のり子「えっ、誰!?」
533 : 下僕   2021/10/29 17:10:08 ID:0cE.KRnr/M
セレブ「料理の豆知識としては定番なので、わざわざ解説しなくていいとも思いますが……尺稼ぎに話してさしあげますわ!」

真美「ミもファもないね」

春香「それを言うなら身も蓋もない、だよ!」

セレブ「まず涙が出てしまう原因は玉葱の細胞を壊した際に、中に含まれる硫化アリルという成分が気化しはじめて空気中に放出され、それが鼻や目を刺激するからですの」

百合子「早い話、硫化アリルが目や鼻を犯すってことですね」

春香「言い方!」

セレブ「この揮発性の高さを逆手にとって、電子レンジで加熱することであらかじめ硫化アリルを気化させてしまう方法がありますわ。ただし、この方法、たしかに涙は抑えられますが、この硫化アリルは食欲増進効果や、ビタミンB1の吸収と活性化を促す作用もある成分でもあって、食味も少々落ちてしまいますの」

真美「へぇ、じゃあ逆の逆で冷やせばいいんじゃない?」

のり子「そんな安直な……」

セレブ「ええ、そうですの。安直な発想でいいですわ。あらかじめ冷蔵庫で冷やしておいて気化しにくくしておいて、素早く調理するのも効果的ですわよ。あとは、包丁にもよりますの。切れ味のいいものを使用することで細胞の破壊を抑えることができるとされていますわ」

春香「海美ちゃんがあれだけ玉葱を切っておきながら涙1つ出さないのは、切り方によるものってことだね」

百合子「あとは、換気扇でも回しながら調理することでそもそも硫化アリルを目や鼻に近づけさせないなんて方法もあるみたいです」
534 : P殿   2021/10/29 17:12:25 ID:0cE.KRnr/M
海美「そろそろ肉が食べたいよね。生肉でね」

のり子「あ、あれは!!」

真美「2セット目で勝ち取った謎の肉だぁーーー!!」

のり子「謎だけど、とりあえず加熱なんて必要ないらしいよ!」

セレブ「正体不明の肉……孤島……うっ、頭が」

海美「まだまだいっくよーー!」

のり子「あ、あれは……な、なに?」

真美「謎だぁーーー!!」

春香「どひゃぁっ!!」ドンガラガッシャーン

可憐「あ、あれは私の調合したスパイスです……!あの謎のお肉を最高のものにするんです……!」

百合子「トマトケチャップにチーズ……王道のハンバーガーの形にはなっているみたいですね」

のり子「待って、あのバンズ、妙じゃない!?」

真美「あー、わかるよ。真美も、まさかあの見た目で17歳ってびっくりどっきりまったりしちゃったもん。体重、30㎏なんでしょ?はるるんの半分しかないじゃん」

春香「それは杏……って、他所の事務所じゃん!あと、私、60㎏もないから!花も恥じらう乙女の体重だから!」

海美「完成☆」

観客「ウミミミーーンン!!!!!」
535 : おやぶん   2021/10/29 17:14:13 ID:0cE.KRnr/M
のり子「あっという間に作っちゃった」

真美「ゆきぴょんの調理描写一切ないよ!?」

雪歩「このあとでありますぅ!」

海美「さぁ、食べてみて!女子力満点だよ♪」

のり子「ピンクのバンズにスパイスの効いた謎の肉、玉葱、チーズ、トマト、他」

春香「他ってなに!?」

百合子「春香さん、考えるな、感じろですよ!」

真美「いただきマーシャル諸島♪」

のり子「オセアニアっ!」

真美・のり子「!!!!!!!!!」
536 : Pしゃん   2021/10/29 17:16:49 ID:0cE.KRnr/M
春香「うわああああああ、のり子ちゃんの衣装が乙女チックに変わっているぅ!?」(画像はない)

百合子「あれは、ミルクティーン・ダイヤ!そもそもカード名が『乙女、風に吹かれて』なんて、乙女すぎますよ!?」

可憐「み、みなさん、真美ちゃんのほうも見てあげてください……!」

春香「えっ、でも真美はべつのそのまま………んん!?」

百合子「真美ちゃんが会場にしれっと置いた盆栽が――――」

のり子「嘘!?白バラの花壇に変わっている?!なんて演出力なの!?」

春香「そうかなぁ!?って、やっぱり真美自身は変わっていないじゃん!」

のり子「みなぎってくるよ、女子力が!今なら瓦1,000,000枚割れそうだよ」

百合子「女子力ってなんなん……」

真美「すごいよ、これ!謎のお肉にセクシースパイがデスマッチしているYO!」

春香「スパイスがマッチ、かな」

観客「ワァァアアアアアアアアア」

のり子「こりゃ、もう決まったかな」

真美「『うう……ひんそーでちんちくりんな、私なんて、勝負する前から負けに決まっていますぅ~~!!春香ちゃんの穴掘って埋まってますぅ~!!』」

春香「雪歩!?なに言っているの?!穴って、どの穴!?」

百合子「あれが真美ちゃんの変声制御【ボイスコントロール】!! くっ、この勝負、私たちの……」

雪歩「ちょ、待てよ」イケボ

可憐「雪歩ちゃん……まだ諦めていないんですね」

雪歩「私、調理しているところ微塵も描写されていませんけど!?」

春香「というわけで、次は雪歩のターンだね」
537 : 下僕   2021/10/29 17:20:18 ID:0cE.KRnr/M
雪歩「よいしょっと」

のり子「な……なに、あの動きは……」

可憐「!! あれは、収穫しているんです」

真美「へ?今!?」

春香「大根ですよ!大根!」

百合子「あれは白金星々と呼ばれる品種ですね」

真美「スタープラチナ?」

百合子「いえ、プラチナスターズです」

春香「無理やりアイマス要素ぶちこんできたぁー! で、でもさ、あの大根ってたしか異界の品種で、見てくれだけはいいけど、味はそんなにじゃなかった?」

のり子「うん?取り出したのは……おろし金?」

百合子「そうか!あれは『ミルキーウェイ』ですよ!白雪さんが歩さんにもらったっていう」

春香「え?あ、うん、あれかー、そっかー、あれね、うん、覚えているよ、もちろん、週2日ぐらいで使う、あれね」

雪歩「ふんっ」シュババババババ

セレブ「なんですの、あのおろし金! おろされた大根がまるで宝石のように輝いていますわよ!?」
538 : Pたん   2021/10/29 17:24:00 ID:0cE.KRnr/M
真美「これが本物の……アイドルのステージ!」

春香「白金星々は異界の大根の中でも加熱すると味が損なわれるタイプで煮物などには不向きなんだよね。かといって通常、生だと辛すぎる……」

百合子「どれ、一口、味見しておきましょう」ヒョイッ、パクッ

真美「あ、そういうの真美の絶対特権なのにぃー」

百合子「ひゃうんっ♡ な、なんですか、これ!? これが本当に大根!? 味の宝石箱や!」

海美「でも、ハンバーガーに合うの?」

可憐「………見てください、次があるみたいですよ」

雪歩「知らなかったの? 意外とぜんぶやれちゃうこと~♪」

春香「あれってどきどきシーソー?」

百合子「『ときどきシーソー』ですよ!間違えられやすいですけど!って、白雪さんが作っているあれ、オ、オムライス!?」

春香「コカトリス卵を使って、ふわっふわっなオムレツにするために、異界調理器具の職人ロコさんから貰った泡だて器『始まりの風』を使ったんだね」

百合子「コカトリスと『創造は始まりの風を連れて』……ファンタジーつながり?」

可憐「くんくん……しかもあのお米は予選のときにお婆さんが使っていたあきたMachicoですね。私もハルマチ女子なのでわかります」

春香「あれ?予選の時、可憐ちゃんいなかったよね」

可憐「ぎくっ。ま、まあいいじゃないですか、あはは……」

海美「ハンバーガーに大根とオムライスって、そんな!?なんて斬新な発想!」

のり子「えぇ……」

真美「まだなんか作るみたいよ!?」

春香「食材選びすぎじゃない!?余り物全部使っていない!?」
539 : ハニー   2021/10/29 17:26:18 ID:0cE.KRnr/M
雪歩「えいっ、えいっ!」

春香「あの具材、この香り、まさか……!」

百合子「麻婆豆腐!?」

可憐「この流れ―――ひょっとしてスポ食!?」

春香「わかっていた、わかっていたよ、大根が出てきた時点でさぁ!」

百合子「あわわわわ、じゃ、このあとはもしかして」

雪歩「和食の神髄、お目にかけましょう~♪ 包丁はちょっと怖いけど~♪」

百合子「お刺身!」

真美「しのみやんソロパートだ!」

のり子「本当に『ワールド・アスレチック・COOK-KING ~勝者必食!?スポ食の秋~』なの!?」

海美「ぐぬぬぬ」

百合子「なんか悔しがっていますけど、あの歌どおりに作ってうまくいくとは……」

春香「ううん、美味くいくに決まっているよ!だってここは異界だし、食材も異界のものだから、いざとなったらそれで誤魔化せる!」

百合子「開き直りすぎていませんか!?」

雪歩「さあ、これでラストだよ!」

可憐「!?」
540 : ダーリン   2021/10/29 17:29:24 ID:0cE.KRnr/M
春香「ええっ!?バンズは………虹色レタス!?」

のり子「どっちのチームもバンズの色攻めすぎだよ!」

雪歩「君といた虹色のbuns 食べそびれた溢れ出す食材たち 突然だけどハンバーガーにしたの...食べてね~♪」

百合子「そうはならないですよね」

セレブ「なっていますわよ!」

雪歩「完成しましたぁ! 真美ちゃん、のり子さん――――くらえ!」

春香「ハンバーガーをつきつけたぁあーーっ!」

のり子・真美「???????」モグモグ

百合子「海美さんのときは感嘆符だったのに、こっちは疑問符……ど、どうなるの、この勝負」

可憐「……もう決まっているよ」

百合子「え?」

海美「………見て」

春香「ウ…ウソやろ。こ…こんなことが。こ…こんなことが許されていいのか」

のり子「私たちみんなの服が、いつの間にか、エプロンに!?」

真美「ただのエプロンじゃないよ!これ、『パッション・クッキング』だよ!」スパッツピラッ♡

百合子「イベント期間中に書いていれば……ううん、これが白雪さんの力、どうだ、まいったか!『HOTDOGS』!」

春香「なんで百合子ちゃんが得意気なの!?」
541 : そこの人   2021/10/29 17:32:40 ID:0cE.KRnr/M
のり子「料理大会準決勝、勝者はグ―――」

海美「雪歩さんには悪いけど、負けを認めるわけにはいかないよ」スッ

可憐「海美ちゃん!?」

春香「あの包丁の構えはまずいっ……雪歩、避けて!」

海美「飛ぶ斬撃を見たことある?」

百合子「カ、カッコイイ!」

雪歩「……斬れないよ」

海美「ふん、それはどうかな。試してみなきゃ、」

雪歩「海美ちゃんじゃ、斬れないよ。私たちの絆はそんなに脆くない」

海美「!」

百合子「こ、これは」

春香「話をすり替えて、それっぽい状況にしようっていう作戦……!賭けに出たんだね、雪歩」

百合子「今回、身も蓋もないですね、ほんと!」

雪歩「どっちみちその斬撃は私には届かない。なぜなら―――」スッ
542 : あなた様   2021/10/29 17:37:13 ID:0cE.KRnr/M
可憐「……! あれは神炎の剣(スコップ)レーヴァテイン! 海美ちゃん、もうやめて!勝負は私たちのま、」

海美「ダメだよ。それじゃ、ダメなんだ。だって、リーダーは……勝ってきなさいって。私たちを信じてくれた、期待してくれたんだよ?」

可憐「そ、それは」

雪歩「ずいぶんとそのリーダーっていう人にお熱なんだね。自分は勝負の舞台に姿を見せずに、ふたりを頼りにしているだけの人の何を信じているの?」

海美「この……!」

百合子「煽るなぁ」

可憐「……雪歩ちゃんにはわからないでしょうね」

春香「可憐ちゃん……?」

雪歩「ろくに説明もせずに2人で出ていって、わかるわけないよ」

海美「リーダーは……このどうしようもなく理不尽な世界を作り変える、その方法を知っていて、それだけの力を持っているんだよ」

百合子「待ってください!そこまで世界を憎む出来事があなたにあったっていうんですか!! いったい、どうして……どうして、そんなに悲しい目をしているんですか!」

春香「いいよー!メインヒロインっぽいよー、百合子ちゃん」

百合子「私は煽らなくていいんです!」

海美「そんなの今、話したって―――」



??「そうね、話したところで何も変わらない。変えられないわ」
543 : 変態インザカントリー   2021/10/29 17:41:05 ID:0cE.KRnr/M
雪歩・春香・百合子「!!!」

のり子「おおーっと!?……えーっと、突然の乱入者、さん?あれ?警備はどうなって……え?あ、そうなんですか、あの子が」

真美「ホットペッパーの最後の1人ってこと!?」

可憐「ほ、『HOTDOGS』です…!」

のり子「えっと、はい、情報が入りました。あのカチューシャをつけた、いかにも正統派の子が『HOTDOGS』のリーダー……」


海美「こ、琴葉ぁ……」

琴葉「お疲れ様、海美ちゃん。それに可憐さんも」


のり子「田中琴葉選手です!」

観客「ワァアアアアア????」

真美「あれ?けどさ、もう勝負に決着はついったっしょ?どうするの」

春香「まさか、田中さんを含めて再戦なんて、ないよね?」

雪歩「………」
544 : Pさぁん   2021/10/29 17:44:42 ID:0cE.KRnr/M
百合子(白雪さんの田中さんを見る目………警戒している?むしろ恐れ?でも、見るからにいい人そうだけど。微笑みを浮かべているし)

琴葉「琴葉と呼んでかまわないわ」

春香「う、うん」

琴葉「それに、勝負の結果を今になってどうこうしてほしいとは言わないわ。ここでごねだした女の子を引きとりにきた、そだけ」

海美「で、でもっ!琴葉、あれがいるんでしょ?じゃあ、私たちは負けてなんていられな、」

琴葉「黙りなさい」

海美「っ!」

春香(表情は柔らかいままなのに、スッと切り込むような声)

百合子(海美さん、静かになっちゃったけど……泣きそうな顔。えっと、ここからどうなるの?)

可憐「あの、琴葉さん」

琴葉「可憐さん」

可憐「は、はひっ!」

琴葉「選びなさい」

春香(え?『鳥籠スクリプチュア』の出だし?)

百合子(ちがいます!)
545 : お兄ちゃん   2021/10/29 17:49:15 ID:0cE.KRnr/M
可憐「選ぶってなにを……」

琴葉「まだ私たちについてくるのか、それとも別れて、あちらへ―――ほら、すぐそこで私の一挙一動から目を離さないように、一音たりとも聞きのがさないようにしている、萩原雪歩のもとへと帰るのか」

可憐「!! ど、どうしていま、このタイミングで……?それに海美ちゃんは……」

琴葉「あなたは私の計画がいくつかの意味で危険を孕んでいるのに、とうの昔に気がついている」

春香・雪歩・百合子「……!?」

琴葉「それは単に失敗のリスクと言い換えられるものでもないわ。そう、世界を救うつもりが、場合によっては今以上に壊す結果につながるかもしれない」

真美「ねぇ、ノリー、真美たちはどうしたら、」

のり子「しーっ!あとでお菓子買ってあげるから!ハロウィンも近いし!」

真美「りょーかい♪パティスリーバンナムのバームクーヘンでいいよ」

のり子「げぇっ!?高級ブランドじゃん!」

琴葉「ん、ん。つまるところ、可憐さんは海美ちゃんが心配だからいっしょに行動していたんでしょう?私の動向、真意を探りながら」

可憐「それは………」

琴葉「隠さなくたっていいわよ。あなたには、うん、あなたの持つその嗅覚と調合術……感知系能力と調合系能力には大いに助けられたもの」
546 : 夏の変態大三角形   2021/10/29 17:57:18 ID:0cE.KRnr/M
可憐「あくまで過去形……。!! も、もしかして、準備が整ったってことですか……!?だったら、」

琴葉「どうかしらね。ただ言えるのは……後戻りはできないってこと。ううん、それは初めからね、私にしてみれば」

可憐「うっ……」

琴葉「海美ちゃん、あなたはついてきてくれる。そうよね?あなたは覚悟がある。可憐さんよりも前に、あの日、あの時、あの場所で誓ってくれたわよね?」

海美「………いいの?」

琴葉「うん?」

海美「まだ私、琴葉のそばにいて、いいの……?」

琴葉「当たり前でしょう?こんな茶番でたった一回、負けただけで、どうにかしてしまうほどの仲じゃない。でしょ?」

海美「

琴葉「ふふっ、私もよ。可憐さん、その顔だと、どうやらあなたは私に、ううん、私たちとは相容れないようね」

可憐「………」

琴葉「大丈夫、安心して。口止めなんてしないわ。あなたが知ったすべてをそこにいる『お姉ちゃん』たちに話してあげればいいわ。でも―――そうね、もう一度、言うわ。何も変えられないわよ」
547 : うぎゃー!またやってしまった!   2021/10/29 18:06:10 ID:0cE.KRnr/M
>>546
海美の台詞抜け 琴葉の「当たり前でしょう?」台詞の直後 

海美「琴葉……ううっ! もー、好きッ! 琴葉大好き!」
548 : Pちゃま   2021/10/29 18:08:13 ID:0cE.KRnr/M
春香「あのさ、そろそろ話にまぜるか、とっとと帰るか、してくれないかな」

百合子「春香さん!?」

雪歩「春香、そんな言い方ないでしょう?私が言うのもなんだけど……海美ちゃんだって、一度は『YUKIHO'Sキッチン』の一員になったのは間違いないんだから」

春香「でもっ!雪歩、まさか気づいていないってことないよね?私は察したよ。だから、今ね、冷静さを欠こうとしている」

百合子「ど、どういうことですか!?」

雪歩「およそ一年前、あの日、海美ちゃんが現『YUKIHOS'キッチン』にやってきたのは、すべてここにいるスレンダー美人が陰で糸を引いていたんじゃないかってことよ」

百合子「!! って、私、当時のことを結局、このクライマックス(?)まで聞いていないんですけど!?」

春香「しかたないなぁ。時間(と体力)がないから、ざっっっくり、まとめて話すね」

雪歩「(リアルタイムで)数日後を目安に!」

百合子「どひゃあっ」


というわけでRecipe8partBの途中ですが、つづきはまた後日
みてのとおり、リーダーは琴葉を採用
何卒最後までお付き合いお願いします! 
549 : Pチャン   2021/10/29 18:13:07 ID:7xVq9RBp32
乙であります

もう一山ありそう、あって欲しい
年を越してもいいからもう一、二勝負ください
550 : プロデューサーくん   2021/10/29 18:32:40 ID:7tWkIzJn0M
おつかれさん
そろそろ佳境か?
551 : つづき投下していきますよー   2021/11/04 10:52:04 ID:cpS5s6NA1Q
春香「海美ちゃんは最初、お客さんとして私たちのもとを訪れたの」

百合子「『YUKIHO'Sキッチン』のですか?」

春香「ううん、その頃は師匠がいて……店名は師匠がこっちの世界で使っていた名前からとって『四条亭』だった」

百合子「『四条亭』?なんだか歴史ある料亭風の名前ですね。あっ、べつに『YUKIHO'Sキッチン』がダサいって話ではないですよ?」

雪歩「今と同じで一度に相手するお客さんは原則的に一組だけだったから、調理のほとんどは師匠の仕事。私たち3人は専らその手伝いをしていて、そうしながら師匠の技を見て学びもしていたのよ」

百合子「なるほど。それで海美さんがお客さんとしてやってきたってことは……何か悩みがあったってことなんですか?今のお店は>>23にあるとおり悩める乙女の拠り所ってのが売りなわけじゃないですか」

春香「あー、そういえばそんな設定あったね。ん、ん。たしかに海美ちゃんも悩みを抱えてやってきた」

百合子「それって……」

春香「『尊敬する人に認められたいけど、うまく料理がつくれない』、いろいろと話してくれたけど要約するとこんな悩みだったの」
552 : 変態大人   2021/11/04 10:56:05 ID:cpS5s6NA1Q
雪歩「今になって、海美ちゃんの話していた尊敬する人ってのが、大切な人だとも言っていたその人物が判明するとはね」

海美も琴葉も否定しなかった。琴葉に関していうなら、はっきりと雪歩に対して微笑みを向けさえした。
海美があの日店を訪れた理由は琴葉にある。どうやら間違いないようだ。
黙って春香たちの話を聞いている彼女を雪歩は見続けたままだった。戦闘姿勢などとっていないのに、隙がなさすぎる。
見た目は自分と同じく10代の女の子であるのに、漂わせている雰囲気は20や30じゃとても出せるものじゃない。肉体年齢と精神が一致していない―――雪歩は、というより雪歩たちはそうした「人間」に過去に会っている。
もっと言えば師事していたのだった。師匠……四条貴音とここにいる田中琴葉はその点で似ている。
ふたりは思いもよらぬ存在であり、そしてただならぬ関係なのかもしれない。雪歩はそう思った。
553 : ご主人様   2021/11/04 11:03:42 ID:cpS5s6NA1Q
海美は貴音の作った料理によって悩みを解決できた。それは彼女が急激に料理上手になったことを意味するのではなく、料理上手になる道を得たという意味でだ。
すなわち海美はその日から四条亭の一員に、さらに言い換えるなら家族となった。
当時、数多の悩める乙女たちの中には貴音の面妖な気配にあてられ、心を奪われてしまう者も少なからずいたが、彼女たちが四条亭に留まることを、深入りすることを許すことはまずなかった。
だから海美を一員に誘ったとき、春香たち3人は驚いた。他でもなく自分たちもまた貴音に誘われ、いや、救われてその場にいるのは確かであるが、しかし、海美を迎え入れた状況とはまるで異なる。
それでも貴音や海美に対する不信感は瞬く間に失せた。
四条亭の一員となった海美があまりにもまっすぐで、ひたむきだったからだ。
無論、春香や雪歩、それに可憐も貴音から料理を教わることには前向きであり、真剣そのものだった。
けれども3人はこの世界で生きる術として、半ば与えられた方法であるのに対して、海美は大切な人のために、その一心で料理をものにしようとしていた。
その姿勢の違いは両者にとって刺激となった。多くは良い意味で。時には悪い意味で、つまり衝突のきっかけとなりもしたが、そのほとんどすべては貴音によって落ち着くべきところに落ち着き、仲違いすることはなかった。
あの日までは。
554 : プロデューサーさま   2021/11/04 11:08:26 ID:cpS5s6NA1Q
取り返しのつかない事態が起こったのは、海美が四条亭に加わって3カ月が過ぎた頃。
それは海美がやってくる直前に海外に発った千鶴さんが帰国して、また海外へと旅立った数日後のことだった。

春香「その日もまた悩みを抱えた乙女が四条亭にやってきた。いつものように」

百合子「………」

春香「その子の悩みそのものが事態の中心にあるわけではないから、詳細は割愛するね」

百合子「考えるのが面倒なだけなんじゃ……」

可憐「ゆ、百合子ちゃん!」ムニーッ

百合子「ふ、ふひはへんへひた(すみませんでした)」

春香「結果を言えば、その子の悩みを取り除くことは師匠の料理をもってしてもできなかった」

百合子「!」

春香「私と雪歩、可憐ちゃんの3人はそれ以前にもそういう結果を見聞きしたことがあったの。でもね、それを師匠の失敗というのは間違っているよ。どんなに師匠が自分自身に厳しい人で、師匠自身の未熟さを嘆いてもね」

雪歩「特別な料理は特別なだけで万能じゃない。当たり前のことよね。結局は、悩みを解決するのはその悩みを抱えている本人によるところが大きいってわけ。師匠の、そしてわたしたちの作る料理はそれを助けるものでしかない」

百合子「あの……さっき、春香さんは『3人は』って」

春香「うん。海美ちゃんは、その日、初めて師匠の料理が良い結果をもたらさなかった事態を目の当たりにした」

海美「………」
555 : 貴殿   2021/11/04 11:14:08 ID:cpS5s6NA1Q
一言で表すなら幻滅なのだろう。
純真な海美はそうであるがゆえに、貴音を、その料理を心から信じていた。
たとえ普段から貴音が、自身の料理だけでなく、異界料理自体を万能薬ではなく1つの手段であるのを強調していたとしても、それは海美にとってはただの謙遜やもったいぶりに映っていたのかもしれない。
そして、もしも海美が貴音に失望しただけの出来事に過ぎなかったのであれば、その後の悲劇は起こらなかった………。

百合子「何が、あったんですか」

春香「海美ちゃんはひとりで秘密の小部屋へといき、そしてとある道具を使用した」

百合子「秘密の小部屋って、あの、Fleurangesコミュで出てきた可憐さんが知っていた……」

可憐「し、劇場にあるあの部屋とは関係ないよ……!」

百合子「それに道具って……ひみつ道具ですか。も、もしかして大人のお、」

雪歩「………」ムニーッ

百合子「いひゃい♡ いひゃいへす♡」

春香「こほん。手短に話すね」
556 : せんせぇ   2021/11/04 11:17:16 ID:cpS5s6NA1Q
信じていた貴音でも解決できないことがあるのを知った海美は、秘密の小部屋へとひとり向かった。
先日、千鶴が帰国した際に貴音が「今日は特別ですよ」と言ってみせてくれた部屋である。
そこに並べられたクッキングデバイスや、明らかに料理とは無関係の道具たちに海美は魅了された。
感心して眺める千鶴をよそに、貴音にそれらの使い方を効果を教えてほしいとせがんだ。
いつもの貴音であれば、慎重に言葉を選び、話さないことを選択したであろうことまで、ついついその日は話してしまった。
それぐらいに千鶴との再会は心躍ることであったから。
海美はすべての道具に対して興味を持ったといえるが、その中でも心をつかんだのは――――


雪歩「私の記憶がたしかなら、それはピンクのユニコーンの形をしていたわ」

春香「それこそ……女子力をオトメティックパワーに変換する魔のクッキングデバイスだった」

百合子「ほわぁ、魔のクッキングデバイス!?」ムンッ

海美「………」

春香「ピンクのユニコーン、その使い方を海美ちゃんは見誤ってしまった。あと雪歩で、じゃなかった、あと一歩でお店を含めた周辺半径39メートルが大穴になるところだったんだ」

百合子「!? オトメティックパワーってそんなにも凄まじいんですか!?」
557 : プロデューサークン   2021/11/04 11:20:31 ID:cpS5s6NA1Q
雪歩「その時に限っていえば、その名前さえ口にすることが許されないクッキングデバイスが強力だったと言えるわね。あれは……師匠が封印していたものだったのよ、きっと。未来永劫、使われてはならないものだった」

春香「狂暴化し、手におえなくなったオトメティックパワーの爆発を、師匠は間一髪でとめた。自身の持つ能力をフルに使ってね」

百合子「それが理由で……?」

春香「そう。この世界に留まるだけの力を失ってしまった。それで師匠はこの世界を強制的に離れることになった」

雪歩「『海美を責めてはなりませんよ』―――師匠が最後に残した言葉よ。39年後に再び会える、そう信じているけれど、そんなのわからない。そんな状況下で、師匠はそう言い残した。……もしもその後、海美ちゃんが自分のしでかしたことに心を痛めつつも、4人でお店をいっしょに経営していくことにしてくれたのなら、私は師匠の言葉どおり、恨み言など一切口にせずに赦そうと思っていたわ」

可憐「………」

雪歩「でも、海美ちゃんはそのときには既に虜になってしまっていたのよ。絶大な力、オトメティックパワーに。その力が自身が修行していた料理を通じて生成されるのだから、なおさらね」

『私、やりたいことが見つかったよ。でも、ここじゃダメみたい。ねぇ……ついてきてくれる?』
海美は笑って、そうだ、師匠がいなくなって悲痛な表情の面々に対していつもの爽やかな笑顔でそう言ってのけた。
雪歩は激怒した。必ずこの純情可憐な海美を反省させなければならぬと決意した。
558 : 我が友   2021/11/04 11:25:12 ID:cpS5s6NA1Q
海美は怒る雪歩に困惑していた。オトメティックパワーを経験した彼女は、その力に魅了されない3人こそ狂っているとすら感じた。
そうして、海美は店を出ることにした。
可憐は……彼女についていった。その選択は春香と雪歩をさらに苦しめることとなった。
とくに雪歩はしばらく無気力状態に陥った。絶望と言ってもいいだろう。
それを支えたのは春香であったが、しかし春香にしてもどうにか踏みとどまっているに過ぎなかった。

時間は過ぎた。虚しく。雪歩は自然とその話し方を変えた。仮面を被ったと表現すればいいのだろうか。
いつまでも落ち込んではいられない。涙はとうに枯れた。当然、話し方を変えてみたところで、すぐに何か大きく変わるわけではない。
「強く」なれることなんてない。雪歩たち2人が立ち直れたのは、いまの彼女たちになれたのは、さらに時が過ぎてから。
それは今からおよそ半年前。店の近く。

本を抱いたまま、地面に座りつくして灰色の空を見上げている少女に出くわしてからだ――――。
559 : そなた   2021/11/04 11:29:34 ID:cpS5s6NA1Q
雪歩は思い出す。百合子が最初はまだ異世界に来たのを信じられなくて、パニックになっていたのを。
春香と雪歩とは異なるふうに、しかし紛れもなく百合子もまた窮地にあった。
もとの世界にいた家族、友人、知人、すべてから切り離された少女。
見知らぬ世界に惑う彼女を、どうして雪歩たちが放っておくことができただろうか。
かつて彼女たちの師匠がそうしたように、救うことができるのなら、そうしたい。
かくして百合子を家族に迎えた雪歩と春香。それは2人で寄り添い、絶望を分かち合っていたのが、3人で寄り添い、支え合うことで、新しい日々を紡いでいく活力を彼女たちにもたらしたのだった。

春香は思い出す。初め、百合子は春香を「春風さん」と呼び、雪歩を「白雪さん」と今なお呼び続けていることを。
春香はくすぐったくて、呼称を改めるように百合子に望んだ。雪歩は……反対に白雪と呼ばれるのを望んだのだろう。
そうすることで弱い自分を捨てた。捨てようとした。
でも、と春香は考える。自分がずっとそばで見てきた雪歩。たしかに弱い部分もあるけれど、それは強さでもある。
もしもすべてが終わった、そのときは「白雪」を捨て、雪歩としてまた新たな一歩を踏み出せるのかもしれない。

春香(もちろん―――そのときは私も隣にいるつもりだけどね)

春香は見つめる。愛しい姉を。今までもこれからもずっとずっと支え合うはずの存在を。
560 : Pチャン   2021/11/04 11:33:08 ID:cpS5s6NA1Q
パチパチパチ、と。春香たち3人を中心に話された海美との過去。その話のあとに、拍手をしたのは琴葉だった。

琴葉「泣かせるわね。美しい物語だわ」

皮肉にしても本気にしても、何の色もつけていないような声だった。
ただ、話を切り上げてしまうために、次のステップへと進めるための発言。
場にいる全員が彼女を見やった。
のり子と真美はどのタイミングで話しかけたらいいんだろうと思っており、観客(エキストラ)はそろそろ帰っていいのだろうか、と考えもしていた。

琴葉「お礼に2つ教えてあげましょう」

雪歩「なによ」

琴葉「1つ。私は海美ちゃんを唆して、あの子……あなたたちの師匠を破滅に追い込もうと計画していたわけではないってこと。あの子の動向を海美ちゃんを通して知ることができていればそれでよかったの。海美ちゃんにあんなことをさせるつもりはなかった。あの子を消すにしても、それは私自らやるつもりだったわ」

雪歩「あなたいったい……」

春香「琴葉ちゃん、狙いはなに?これから、何をするつもりなの」

琴葉「さあ?ふふふ……」

百合子「それで、もう1つってなんですか」

琴葉「この先の未来、あなたたちが料理人として生きたいのであれば……表に出ることね。裏(異界)ではなく。こちらに留まり続けることは、きっとあなたたちの身を危うくするわ。あなたたちの思い描く世界はどうやら私とは違うみたいだから」

雪歩「よくわからないわ」

琴葉「避難していなさいってこと。抗うのなら、容赦しない」

可憐「……!」

春香「?」
561 : 彦デューサー   2021/11/04 11:36:48 ID:cpS5s6NA1Q
琴葉「ふふっ、それじゃあね。もしかしたらもう会わないかも」

百合子「あっ、まだ話は、」

琴葉「海美ちゃん、行くわよ。……審査員さん、早くこの子たちを祝ってあげて。グリルモワール、彼女たちが勝者よ」

のり子「へ?あ、うん」

琴葉が去っていく。後ろを海美がつづく。雪歩たち3人、そして可憐がその後ろ姿を見ていた。
拍手喝采。雪歩たちを讃える声はしかし、彼女たちにとどかない。
何かが起こる。嫌なことが。
予感、もはや確信があるのに、動き出せない、どう動いたらいいのかわからない雪歩たちだった。

2時間後―――――

部屋に戻ってきた雪歩たちと、春香に促されてついてきた可憐の合わせて4人。

春香「本当なら、再会を祝いたいところだけど……」

雪歩・可憐「………」

百合子「そんな感じじゃないですね。もっと、抱き着きでもするかと思っていたんですけど」

雪歩「ん、ん。えっと……可憐ちゃん、話してくれる?」

可憐「えっと……すみません、何から話せばいいのか、わからなくて、ただ……時間はそう残されていないのかもしれません」

百合子「どういうことですか?」
562 : 5流プロデューサー   2021/11/04 11:41:31 ID:cpS5s6NA1Q
可憐「え、えっと……」

可憐の膝に置かれた手を、包むように雪歩が握った。え、いつの間にそんなそばに座っていたの?と春香と百合子は思った。

雪歩「1つずつ、落ち着いてでいいよ。時間がなくとも……でも、聞きたい。知りたいの。店を離れて、可憐ちゃんがどうしていたかってこと。全部、知りたいの、可憐ちゃんのこと」

可憐「雪歩ちゃん……」

見つめ合う2人。頬が赤く染まる。溜息を1つついた百合子が、春香に耳打ちする。

百合子(なんか2人の世界に入り込みそうじゃありません?)

春香(いやいや、そういうのはまた今度にしてもらって、あくまで琴葉ちゃんたちの計画について知っていること、話してもらわないと)




可憐「そ、それじゃあ、なるべく短く話しますね」

百合子「長いと読むの面倒ですもんね!」

春香(書くのが、じゃないかなぁ)
563 : Pチャン   2021/11/04 11:45:14 ID:cpS5s6NA1Q
可憐「リーダー、つまり琴葉さんは―――――偉大なる料理家にして深淵なる魔法使いハーヴェイ・バーティの生まれ変わりなんです」

春香・雪歩・百合子「!??!!?!?」


Recipe8partCにつづく
564 : 監督   2021/11/04 11:51:48 ID:cpS5s6NA1Q
partCの投下は早くて明後日を予定

既に最終安価をどうとるかは決めています

何卒最後までお付き合いください!
565 :   2021/11/04 12:39:13 ID:u8PKLUw1C.
きたい
566 : せんせぇ   2021/11/04 18:44:56 ID:9aO1p.RcZY
お待ちしておりました。
どんと来い最終安価
567 : 投下していきます   2021/11/06 18:03:41 ID:GDdhUobePY
Recipe8partC


- 異界 - 
双海亜美令嬢の屋敷内グリルモワール待機部屋

雪歩たち3人は可憐から、彼女が雪歩たちのもとを去ってから『HOTDOGS』として生きてきた日々、そしてそのリーダーである琴葉の素性をうかがうことにした。
可憐曰く、琴葉はある偉大なる料理家かつ魔法使いの生まれ変わりであるそうなのだが……?

百合子「ハーヴェイ・バーティ……それって、オペラセリアの、」

可憐「か、関係ないです。役名考えるの面倒だっただけかと」

春香「へぇー。雪歩、知っている?」

雪歩「ううん……知らない。記憶にある限り、師匠の話にも出てこなかった。可憐ちゃん、そのハーヴェイって人はどんな人なの?」

可憐「お、驚かないでくださいね」

春香「うん?それはフリってやつかな」

百合子「!!!」

雪歩「なんでもう驚いているのよ」

可憐「実はハーヴェイ……彼こそがこの異界の創造主なんです」

春香・雪歩・百合子「どひゃぁっ」ドンガラガッシャーンンン!!

可憐(なんて息の合った転がり方……!)
568 : Pちゃま   2021/11/06 18:07:24 ID:GDdhUobePY
百合子「つ、つまりカミサマってことですか!?」

春香「その表記はどことなく悩める現代女子にカルト的人気ありそうだからやめておきなさい」

雪歩「神ではなく魔法使いと可憐ちゃんは言ったわ。つまり―――この異界は人工物ってことね」

可憐「……? 雪歩ちゃん、なんで急にそんな話し方なんですか」

雪歩・百合子「え?」

春香「あー……。可憐ちゃん、気にしないで。ほら、そういう年頃だから」

雪歩「春香!? >>558>>559でああいう独白しているくせに?!」

可憐「す、すみません。話の腰を折っちゃったみたいで」

百合子「可憐さんは神ではなく魔法使いと言いましたよね。ということは、異界は……人工的につくられた空間ってことですか?」

春香「!! 百合子……そこに気づくとはやはり天才か」

百合子「えへへ」

雪歩「それさっき私が言ったやつじゃん!!なんなん!」

可憐「ゆ、雪歩ちゃん。ちゃんと聞こえていましたよ。えっと、おふたりの想像どおりなんです」
569 : せんせぇ   2021/11/06 18:10:15 ID:GDdhUobePY
雪歩「想像って言っても、私は百合子ほどMPがないからこの異界ってのをどう作ったかまでは思いつかないわ」

春香「MPって?」

雪歩「M(妄想)P(パワー)よ」

百合子「いきなりなんですか、そのまるで意味のない定量化の挑戦は」

雪歩「百合子だったら、何か思いつくんじゃない?」

百合子「え?ま、まあ、そこはすごい魔法を使ったってことなんじゃないですか。ディメンジョンクリエイト!みたいな」

春香「うわっ、捻りのないネーミング」

百合子「シンプルイズベストです!ほら、ボスキャラもゴテゴテとしたやつから、最終形態って一周回ってつるっとした描画しやすいのになること多いじゃないですか」

雪歩「はぁ、話を逸らさないでほしいわね」

可憐(もとはといえば、雪歩ちゃんのせいでは……?)

雪歩「可憐ちゃん、話を続けてくれる?ハーヴェイのこと、そしてこの異界のこと」

可憐「は、はい」


可憐「遡ること390年前―――――魔法使いハーヴェイは存在するあらゆる事物を自分の意のままに操れる世界の創造を目指していたらしいです」
570 : おにいちゃん   2021/11/06 18:14:13 ID:GDdhUobePY
雪歩「ふうん、あながち神ってのも的外れじゃないようね」

可憐「あらゆる事物……それは物質的なものだけではなく、それらに作用する法則も含まれています」

百合子「異界で向こう(現世)の物理法則があてにならないのはそういう理由なんですね。ん?もしかして私たちの異界での能力……ようは異能ってのも?」

可憐「ええ、そのとおりです。ただ……ハーヴェイの大きな誤算の1つがまさにその、い、異能なんです……」

春香「つまり?」

可憐「異能は、ヒトを含め個々の生物によって千差万別、多種多様に発現しました……そ、それらはハーヴェイが予想できずそして制御もできないものばかりだったんです」

雪歩「彼の世界創造は失敗したってことね。箱庭に入れた人間やチュパカブラの精神、心、魂……呼び方はなんでもいいけど、そうした見ることも触れることもできないものを計算で動きを読むなんて到底できなかったわけだわ」

百合子「創造主を失った、いえ、必要としなくなった人工的な世界、かぁ。ある意味で本来の世界らしいのかな」

春香「小難しい話はともかく、その理想郷作りに失敗したハーヴェイが生まれ変わったってのはどういうことなの?」

可憐「……彼は諦めませんでした。彼のための完全な世界の創造は果たせなくとも、完全に近い空間……彼がすべてを支配できる空間の生成を諦めなかったんです」

百合子「それで来世に希望を託したってことですか?また、私たちじゃなんだかよくわからない魔法を使って」

可憐「少し違います。大失敗の後で、彼は見つけたんです。魔法研究の気晴らしにしていた料理中に………世界創造の鍵となる『力』を」
571 : Pさぁん   2021/11/06 18:17:32 ID:GDdhUobePY
春香「まさか――――」

雪歩「オトメティックパワー、ね」

百合子「……!」

可憐「はい。その力を使えば魔法理論上、彼の求める空間創造は可能みたいなんです。けれど、ここにも問題がありました」

春香「問題?」

可憐「オトメティックパワーの運用効率を要求値以上にすることは彼では不可能だったんです」

百合子「はい?」

雪歩「簡単な話よ。少なくとも生物学的に男性であった彼は乙女の力を十全に扱うことができなかった。でしょう?」

春香「あ、そういうことね」

百合子「でも、高等な魔法使いだったら、性別ぐらいなんとかなるんじゃ?」

可憐「オトメティックパワーの運用には、単に肉体変化や憑依といった方法ではどうにもならなかったそうです。純潔なる乙女の肉体と魂の両方が必要だった」

雪歩「それで、転生ってわけね」

百合子「転生によってある目的を果たそうとする偉大な魔法使い……そんなに意識していませんでしたけど、これ、一部の界隈では供給過多気味の設定のような……」

春香「そこは気にしないでいいから!」
572 : 変態インザカントリー   2021/11/06 18:24:43 ID:GDdhUobePY
可憐「ん、ん。しかし転生の魔法はハーヴェイであってもそう安易にできるものではなかったようです。協力者が必要でした」

雪歩「協力者?」

可憐「そう、それがハーヴェイの弟子たちです。そのうちでも特に秀でた3人の魔女……彼女たちはハーヴェイに転生魔法をかけるよう頼まれたんです」

百合子「なるほど。それがうまくいって、今、あの人はここにいるんですね」

可憐「い、いえ……少し違います」

百合子「また!?」

可憐「えーっと……ここまで、私はハーヴェイを深淵なる魔法使いと言いつつも、その業績についてこの異界の創造以外は触れてきませんでした。それで充分だったからではなく、単に琴葉さんから知らされていないからです。えっと、何が言いたいかというと……」

雪歩「察したわ」

百合子「またまた~、ゆきぴょんジョークですかー?」

雪歩「むにるわよ?」

百合子「ひえっ」

雪歩「……ハーヴェイの世界創造を支持しない者も少なからずいたってことでしょう?」

春香「弟子たちの中にも、だね。すべてが思いどおりになる世界を作ろうとしている、支配者気取りの魔法使い……危険視する人間がいるのが自然だよ」

百合子「そうですね!私も察していました!はい!」
573 : Pしゃん   2021/11/06 18:28:50 ID:GDdhUobePY
可憐「ご、ご明察です。転生魔法を託された当の魔女たち3人も反対者であったんです。そのことにハーヴェイが気づいたのは転生魔法が『失敗』してからだったみたいですが」

百合子「失敗……でも、現に琴葉さんとしてハーヴェイは……」

雪歩「もし仮に完全な状態で転生できていたら、この異界はあの人に支配されているんじゃない?」

百合子「あ、そっか」

春香「とはいえ、ただの美少女に転生を果たしたってふうでもなさそうだけど」

百合子「そもそもが390年前の出来事のはずですよね」

可憐「ハーヴェイ……いえ、琴葉さん曰く、彼女はまだ18年ほどしかあの体で生きていないそうです。魔女が転生の儀の際に施した細工は、転生の遅延についてはまずまず『成功』したと言えるでしょう。ですが、魔法使いとしての素養をすべて消し去れはしなかった」

雪歩「しっかりと準備さえ整えば、彼、いや、彼女の望む世界を作れるってことよね。そのために動いている、と」

春香「それが『HOTDOGS』の活動?」

可憐「そうとも言えるし、そうでないとも言えます。私と海美ちゃんが琴葉さんから過去を知り、野望を聞き出したのはつい最近ですから。『HOTDOGS』としての活動はあくまで、凄腕のフリーランス・ハザマという立場を確立して、世界創造魔法に必要なコネクションをつくるためなのだと思います」

百合子「裏では、世界再創造のためにいろいろしていたってこと?」

可憐「お、おそらく。微細までを知ってはいないですが、魔法を発動させるのには、十分なオトメティックパワーをその身に宿そうとするだけでも珍しい素材がかなりの量いるみたいですから」

春香「うーん……いくら自分が作った世界でも、時間も経っているし、いわゆる異界食材・素材のことは知らない部分もあるだろうし、何かとコネはいるかも?」
574 : Pたん   2021/11/06 18:31:19 ID:GDdhUobePY
雪歩「…………」

百合子「白雪さん?」

春香「どうしたの?急に眠くなった?膝、貸そうか?」

雪歩「まだここでするのもどうかと思ったけど、やっぱりしておくわ。質問を2つ。可憐ちゃんに」

可憐「は、はい。なんでしょう」

雪歩「1つ目。どうして彼女に協力を?」

百合子「えっ? さっき可憐さんは琴葉さんの正体と狙いを知ったのは最近だって言いました。だとすれば、それとはべつに体のいい話をおふたりに持ち掛けて協力させていたってところでしょうか」

春香「『お前たちを最強の料理家にしてやる!』とか、そういうの?単に料理を教えてあげる、新しい師匠としてっていう線もあるのかな」

雪歩「春香、可憐ちゃんの滝でのやりとりはもう忘れたの?」

春香「あ……」

雪歩「可憐ちゃん、あなたは田中琴葉の企みを今、打ち明けてくれた。知るところを教えてくれた。あたかも、それを止める側の人間であるかのように」

可憐「………」

雪歩「けれど、春香としたというやりとりからすると、可憐ちゃんは世界の再構築に賛成だったんじゃないの?」

百合子「待ってください、白雪さん。それは、春香さんが印象として話してくれた(>>507)ように、琴葉さんによって植えつけられていた認識、いわば洗脳だったんじゃ」

雪歩「私は、ううん、私たちは確かめないといけない。可憐ちゃんが味方か、それとも敵なのか」

春香「ねぇ、雪歩。本気?」

百合子「『だいじょうぶだ‥‥おれは しょうきに もどった!』ってなるかもってことですかーっ!?」
575 : 5流プロデューサー   2021/11/06 18:36:15 ID:GDdhUobePY
可憐「私は……………わかりません」

春香「可憐ちゃん!?」

可憐「私は師匠のあの日の失敗を、料理云々ではなく、この世界の理不尽、不条理だと受けとめました。いえ、受け止めきれなかったんです、この世界を」

百合子「それって」

可憐「この世界は悲しみで溢れています。痛みで、苦しみで、不幸で。それと同等に幸福が、釣り合う喜びを皆が享受しているとは思えません」

雪歩「………」

可憐「もしも、世界を、理想的な世界を創造できたら皆が幸せになれる世界が実現できればいいと思いませんか」

百合子「でもっ、それは1人の野心家によって支配される世界なんじゃ……」

可憐「琴葉さんは言いました。世界をありのまま自由自在に作り変えられるのなら、その管理と制御、支配と規律、新たな理と新たな価値観を受け入れられる住民たちを迎え、彼らが常に幸福であるようにすることもできるはずだ、と」

雪歩「そうするとは言っていないんじゃない?現に弟子たちに裏切られているのなら、人格者ではなかったとも考えられるわ。そもそも、大きな力を手にした者が欲望を小さいままにしておくことなんてできないと思う。それが人の性よね」
576 : 3流プロデューサー   2021/11/06 18:39:11 ID:GDdhUobePY
可憐「ここにきて琴葉さんを信じてほしい、とは言いません。もしかせずとも、彼女は私にまだ話していないことがあると思います。ただ――――信じたかったんです。あの人の力を。不条理だと嘆くことのない世界が作り出されるのを」

春香「琴葉ちゃんは言っていたよね。可憐ちゃんは海美ちゃんを心配だからいっしょに行動していたって。それに……計画に危険があることに気づいていたって。結局のところ、可憐ちゃんもまたあの日をきっかけに世界に落胆していたんだ。ひょっとしたら、私や雪歩よりもずっとこの世界に失望し続けていた……海美ちゃんを心配していたのは事実だけど、可憐ちゃんもやっぱり新たな世界を救済として求めていたんだね」

可憐「私はおふたりほど、強くありませんから……」

雪歩「それが可憐ちゃんの弱さなら―――」ギュッ

百合子「わっ///」

雪歩は可憐と繋げていた手を離すと、今度は全身で可憐を抱きしめた。

雪歩「大切な妹分がひとりいなくなった、それだけで世界なんてどうでもいいと、何もかも手がつかなくなって、どうしようもなくなってしまう私は、どんなに弱い存在なの?」

可憐「雪歩、ちゃん……」

春香「可憐ちゃんは優しすぎるんだよ。でも、それでいいと思う。世界を憂う権利は世界に生きる者なら誰にでもある。ただ、そうだなぁ、もっと肩の力抜いてさ、楽観的になってもいいんじゃないかって。そんなに大きく、広く、世界を見なくなくても、そばにいるちっちゃなお姉ちゃんたちに甘えてくれればって思うんだよね。ね、百合子」ギュッ

今度は春香が百合子に抱き着く。

百合子「あわわわわ。そんな、春香さん、べ、べつに羨ましいとか思っていませんでしたよ!えへへ……」

雪歩「確かめにいかないとね。田中琴葉が作ろうとしている世界ってのを。彼女自身に」

可憐「はい…………はいっ!」
577 : Pたん   2021/11/06 18:43:54 ID:GDdhUobePY
数分後、元の姿勢に戻った4人。
春香が雪歩に言う。

春香「で?もう1つの質問ってのは?」

雪歩「弟子たちの、3人の魔女のことよ」

百合子「ハーヴェイに転生魔法を任されて、でも予定どおりにはしなかった人たちですよね」

雪歩「ねえ、可憐ちゃん。もしかしてさ――――その1人って師匠なんじゃない?」

春香・百合子「!?」

可憐「ど、どうしてわかったんですか!?」

雪歩「琴葉ちゃん、言っていたでしょ?私自らが消すつもりだったってね。海美ちゃんを通じて動向を監視しないといけない存在、かつて自分を裏切った弟子だったら辻褄が合うし。師匠が年齢を教えてくれたなかったこと、私たちが10年でここまで変わったのに、師匠が皺ひとつ増えていなかった理由……つまりはここまでの情報を統合してみたってだけ」

春香「あー、わかるわ、私もそんな気がしていたんだよね。いやー、先に言われちゃったなー、雪歩はせっかちだなー」

百合子「ですよねー、なんだったら、他の2人の弟子ももう登場しているんじゃないですかー、なんて」

可憐「えっと、それは違います」

百合子「うう、なんで私ばっかり……」

可憐「琴葉さんは話してくれました」
578 : プロデューサー様   2021/11/06 18:48:45 ID:GDdhUobePY
琴葉『計画にとって脅威となるのは、3人の愛弟子よ。今じゃ可愛さかえって憎さが百倍だけれどね。調べたところ、彼女たち3人は私が転生に失敗した後、機関をつくった』

可憐『機関?』

琴葉『ええ。聞いたことあるんじゃないかしら?異界を裏で管理する黒幕めいた存在』

可憐『あっ(>>73で出てきたアレのこと……!?)』

琴葉『現在だと呼び名は意図的に秘匿されているらしいけど、彼女たちはその機関をARCANAと名付けたわ』




百合子「秘密機関、ARCANA……!か、かっこいい!」

春香「うん?ちょっと待って、もしかして……」

可憐「3人の魔女、すなわち私たちの師匠と、アズール・ミューラー、そしてチハ・キサラギが、」

春香「ああ!!」

百合子・雪歩・可憐「!?」

雪歩「な、なに、どうしたの」

百合子「鎮まれ、俺の左腕!とか、そういうのですか!?」

可憐「ど、どうしよう、トリカブト、トリカブト……」

春香「そのアズール・ミューラーさん、私、会ったよ!」

百合子・雪歩・可憐「どひゃぁっ!!!」

春香「かくかくしかじか、どんがらがらどん」

雪歩「春香を例の滝に、言い換えるなら私たちよりも先に可憐ちゃんと引き合わせたのがその、アズール・ミューラーなのね」
579 : 箱デューサー   2021/11/06 18:53:04 ID:GDdhUobePY
可憐「び、びっくりです。百合子ちゃんの憶測が半分は的中するなんて」

百合子「驚くのそこですか!?」

可憐「琴葉さん曰く、特記戦力級の脅威は取り除かれたはずなんです……私たちの師匠を最後に」

春香「え?でも……」

可憐「3人の弟子のなかで、最初に機関を離れたのはキサラギのようです。彼女は組織に属すること自体、さほど向いていなかったみたいだとか」

百合子「へぇ……」

可憐「離れた後、どこへ行ったのかまでは琴葉さんでも追い切れなかったそうです。もしかしたら、不老長寿でなくなって既に死滅しているかも、と」

百合子「私たちのピンチに駆けつけて、なんてはなさそうですね」

可憐「そして先ほど話してくださったミューラーについても、機関の長期的な運用法、構想を確実にしたのを最後に消息を絶ったと……」

雪歩「師匠はその後で、機関を抜けて店を開いたの?」

可憐「ど、どうなんでしょう。琴葉さんは調査の一部始終を教えてくれはしなかったので。ただ……」


琴葉『あの子たちは3人とも組織に縛られるような子じゃないわ。良くも悪くもマイペースで自分勝手。その芯の太さがあったからこそ、この私を裏切れたのよ。彼女たち3人が今や、離れ離れになっていることを私は感謝しなかればならないわね』


雪歩「異界統制機関を創立した3人の魔女……ねぇ、春香、その後アズール・ミューラーさんとは?」

春香「ううん、会っていないよ。大会中ってこともあって、あれ以来、路地裏を確認もできていない」
580 : ハニー   2021/11/06 18:56:28 ID:GDdhUobePY
百合子「ふわぁ――――あ、すみません」

可憐の話を一段落すると同時に、百合子が欠伸をした。つられて春香、それから可憐が欠伸を噛み殺す。
気がつけばすっかり夜になっていた。異界の夜は明るくも暗くもない。陰鬱と安穏が混沌としている空間。
今の異界は琴葉さんの理想とはかけ離れている、それは間違いないなと思う百合子だった。

雪歩「今日はもう休みましょうか。情報整理もほどほどに、なんだったら明日にでも何か田中琴葉、そして海美ちゃんに動きがありそうだもの」

春香「はは……その予感は当たってほしくないなぁ」

可憐「えっと……私は……その」

百合子「ああ、そっか。可憐さんの眠るスペースがないんですね」

『HOTDOGS』の控室に帰るわけにもいくまい。
雪歩がぽんと手のひらをうつ。

雪歩「私が可憐ちゃんを抱き枕にして寝るから問題ないわね。あるいは私が抱き枕になるよ」

春香「はいはい。まあ、このサイズだったら詰めれば4人でも横になれると思うよ……さすがに狭いけど」

可憐「そ、それだと疲れがとれません……!私、ソファで眠ります。毛布はあるはずですし」
581 : 5流プロデューサー   2021/11/06 18:59:19 ID:GDdhUobePY
百合子「たしかに立派なソファですけど……えっと、私がソファで眠りましょうか?ほら、久しぶりに三姉妹揃ったわけですし」

雪歩「水臭いわね。いちおうは可憐ちゃんがこうして私たちのもとに戻ってきたからと言って、私たちが今や大切な妹である百合子をないがしろにすると思う?」

百合子「白雪さん……」

雪歩「さっきのは抱き枕云々は冗談2割よ。ん、ん。ここは最年長の私がソファで寝ることにするわ。どうあっても今夜はうまく寝付けないだろうし、いっそね」

春香「ところで―――料理大会、どうしよっか。あれが準決勝で決勝があるんでしょ?」

百合子「あっ」

雪歩「優勝賞品を田中琴葉は必要としているのよね。だったら、何らかの手段であちらの手に渡るより先に、こっちが奪わないと」

百合子「ですね。次の勝負のこと、明日聞かないとですね」

雪歩(口にはしなかったけれど、海美ちゃんと田中琴葉の仲を裂くのは無理な気がしてならないわ。だとすれば、次にどこかで会う時は………料理や超ビーチバレーなんかじゃなくて、血を流すような戦いをしないとならないかもしれない)

春香(話が壮大になってきたのはいいけど、もう最終話なんだよねー)

可憐(琴葉さん……手遅れじゃなければいいけれど)

百合子(zzzz……あっ、も、もうっ、白雪さん♡ それはおはぎじゃないですよぉ、むにゃむにゃ……)
582 : Pはん   2021/11/06 19:02:41 ID:GDdhUobePY
Recipe8partCはまだ途中ですが、長すぎるのでいったんここまで 
満を持して登場したリーダー、琴葉(ハーヴェイ)関連の情報提示&これまでの伏線(伏せていない)回収って感じでした
残りはなるべく早くに書く予定!
あと、最終part予定のpartD前には本編とべつに情報(設定)を簡潔にまとめるつもりです
11月中には完結させるぞー!何卒最後までお付き合いください!
583 : プロデューサーちゃん   2021/11/06 19:44:39 ID:qKrDQSrMFg
乙であります

百合子はやはり百合子だったか
584 : 続き投下していきます   2021/11/10 17:59:28 ID:6rnLBMGFGs
翌朝、雪歩たちは大会主催者たる令嬢・亜美に従者を通じて呼び出された。
4人のうちで前もって、亜美に面会を申し込んでいた人間はおらず、そもそもが面識らしい面識を誰も持っていない。
『HOTDOGS』は、亜美の友人である箱崎財閥の一人娘・星梨花との交友によって大会参加資格を得ていたが、少なくとも可憐は当の亜美に会ったことがなかった。
次の決勝戦における段取り、ルールの説明を亜美が直々に行ってくれるのではないか。そんな予想を立てて4人は亜美が待つという応接室へと従者の案内で向かうのだった。

まさしく豪華絢爛な応接室。準決勝の審査員兼司会の1人であった真美によく似た少女が雪歩たちを待っていた。
彼女こそが亜美。早い段階で名前は出ていたものの、ここが初登場なのだった。

亜美「きたか。うむ。ぐりるもわーるの諸君……ん?それにホットドッグのぼっきゅんぼんも?まあ、くるしゅうない」

百合子「は、はぁ」

亜美「先の戦いぶり、真、見事であったぞ。わっはっは」

春香「えぇ………」

亜美「そこでおぬしたちに、我が褒美をやろうと思ってな。なに、遠慮はいらんぜよ」

可憐(あ、あの……台本ではこんな口調じゃなんですけどいいんですか)

雪歩(でも、ほら、監督さん何も言わないし、これでいいんじゃないかな、あはは……)
585 : P殿   2021/11/10 18:02:20 ID:6rnLBMGFGs
百合子「褒美って、何かいただけるんですか」

亜美「まあ、そう慌てるな。妄想の姫君よ」

百合子「も、妄想の姫君!?」

亜美「じつは……あー、うん、予定していた決勝戦なんじゃが」

春香(いや、『じゃが』って)

雪歩「何か予定に変更が?」

亜美「それがのー、もう、ええかなーって」

可憐「はい?」

亜美「ここに100万シタマニーある、持っていってよいぞ」

百合子「ええっ!! そんなに貰っちゃっていいんですか!これでMS2が布教用合わせて買えますね!」

雪歩「……どういうことですか。決勝戦はしない、私たちの優勝ってことですか」

春香「いやいや、そんな。臨時報酬じゃないの?あれだけ白熱する超ビーチバレーを見せてもらったからーって」

亜美「ちなみに亜美は見ていないぞ。全部、真美からの報告なんじゃわ」

可憐「へ?さっき、見事であったぞって」
586 : ダーリン   2021/11/10 18:06:48 ID:6rnLBMGFGs
亜美「細かいことはいいの! ほら、これあげるから、それでいいでしょ。んでさ、しばらく屋敷に泊まっていっていいよ、亜美の遊び相手になってよ」

雪歩「――――もう一度だけ訊くわね。ええ、訊き方を変えるわ」

雪歩の声色に、亜美、そして百合子と可憐がぎょっとする。春香は何か察したようで、警戒態勢に入った。

雪歩「大会は……ううん、優勝賞品はどうなったの?大会を中止する理由を教えてくれるんでしょうね」

室内に配備された6人の従者に緊張感が走るのを可憐は察知した。
亜美はしばらく言いよどみっぱなしだったが、とうとう観念したように白状する。

亜美「どこから話せばいいかなぁ。あのね、昨日の夜にね、きたんだよ」

百合子「きた?」

亜美「うん。ホットドッグのリーダー、田中琴葉が」

可憐「!!」

雪歩「……それで?」

亜美「いやぁ、あれは今、思い出しただけでも涎が出ちゃうよ。あんな美味しいハンバーガー、食べたことないね」

百合子「ハンバーガー?あれ、それって私たちが勝負した……?」
587 : Pチャン   2021/11/10 18:11:50 ID:6rnLBMGFGs
亜美「そうそう、その余り物でパパッと作ったものみたいね」

雪歩「余り物で……?けど、あの時、余っていた食材で、そんな上等なハンバーガーなんて……」

可憐「い、いえ、できると思います。なにせ彼女は……稀代の料理研究家の生まれ変わりでもあるのですから」

雪歩「そんな……本当に魔法使いだわ」

春香「で?そのハンバーガーを差し入れにもってきて、何を話したわけ」

亜美「えーと、コクサイジョウセーとか、ニッケイヘイキンカブカとか、そーいうの」

百合子「嘘ですよね」

可憐「無理があります……」

雪歩「大会の運営に関わることよね。ううん、もしかして――――優勝賞品について?」

可憐「!」

亜美「ぶっちゃけちゃうと、琴葉お姉ちゃんがね、頼んできたんだよ。『そのハンバーガーなんかよりずっと美味しいものをいくらでも食べさせてあげるから、大会の優勝賞品を譲ってくれないかしら。そうね、代わりにお金にでもしておきましょうよ。お金があれば大抵のことが解決できるのは異界でも同じだもの。ああ、大丈夫、亜美ちゃんはお金を出さなくていいわ。私に個人的な蓄えもあるから、それを使って』って」

春香「めっちゃ、声真似似ている?!」

百合子「もっと驚くポイントありますよ!」

可憐「そ、その提案を亜美ちゃんは受け入れたの……?」
588 : 魔法使いさん   2021/11/10 18:14:22 ID:6rnLBMGFGs
亜美「まあね。だってね、優勝賞品って、うちの宝物庫で見つけた薄汚い本だったんだよ」

雪歩「薄い本?!」

春香「雪歩、ステイ。薄汚い本だよ。つまり古い本で、間違いなくいわくつきだろうね」

亜美「中身も何書いてあるかよくわかんないし。でも、まあ、挿絵を見る限り料理と関係ありそうだなーって、それで今回の大会の賞品にしておいたの」

雪歩「本……?可憐ちゃん、このことは知っていた?」

可憐「ええ……それこそ、琴葉さんが世界再構築の術式を、は、発動させるのに必要なキーアイテムの1つなんです……」

百合子「私の持つ魔導書とはまた異なるわけですね」

春香「それが既に琴葉ちゃんの手にある、と。ねぇ、まずいよね」

亜美「え?美味しかったよ。でもさ、ほら、亜美のお腹にも限界ってあるから、一度にそんなに入らないの。だから、琴葉お姉ちゃんと約束しているんだよー。『ちょっとした用事を済ませて帰ってきたら、また料理を作ってあげるからね』って」

可憐「……揃ったんですね、きっと」

雪歩「揃った?」

可憐「ええ、琴葉さんが大会を私たちに任せていたのは理由があるんです」
589 : 兄ちゃん   2021/11/10 18:18:35 ID:6rnLBMGFGs
百合子「それって、単に可憐さんと海美さんの実力であれば優勝間違いなし!と思っていたんじゃないってことですか?」

可憐「ど、どうでしょう?海美ちゃんが言っていたとおり、私たちの力を信じていたとは思いますけど。でも、それとはべつに、琴葉さんには大会開催期間中にしないといけないことがあったんです」

春香「なに?ミリシタのイベントで走るとか?」

可憐「い、いえ、そうではなく」

雪歩「さっき、可憐ちゃんは優勝賞品の本についてキーアイテムの1つって言った。察するに、他に必要な鍵を探していたんじゃない?」

可憐「そのとおりです……!大会開催直前でした。琴葉さんが『術式の発動に必要な賢者の花の場所が判明したわ。けれど、望ましい状態で採取するには、今すぐに行動にでないといけないの。場所も安全とは言い難いし、ここは私ひとりで向かうから、大会はあなたたち2人に任せるわね』と」

百合子「賢者の花?またいかにも貴重そうなアイテムの名前ですね」

春香「なるほど。琴葉ちゃんはお花摘みで忙しかったから、大会の一回戦、二回戦に出場していなかったんだね」

雪歩「お花摘みならしかたないね」

百合子「……ツッコミませんよ?」

可憐「ん、ん。他にもいくつか鍵がありましたが……すべて集め終わったのかもしれません」

春香「手遅れってこと!?」
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