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【安価SS】全8話 765プロ劇場ドラマ制作!
1 :
主
2021/08/05 20:36:02
ID:7Ez7aEaegU
立つかなー
590 :
夏の変態大三角形
2021/11/10 18:22:30
ID:6rnLBMGFGs
雪歩「まだ術式は発動していないよね?世界を新規に構成するんじゃなくて、再構成というからには今あるこの世界(異界)に何らかの影響がないというのは変よ」
可憐「そうですよね……」
百合子「こういうのって、アイテムを集め終えてから特定の場所で儀式するものじゃないですか?魔法陣なんて地面に描いたりもして」
雪歩「どう?可憐ちゃん。その鍵ってのが集まったら、その後、どこでどうするかは聞いている?」
可憐「ゆ、百合子ちゃんが言ったように発動のための儀式を行うとは。だけど、その具体的内容も場所も知らないままです」
春香「亜美は?琴葉ちゃんがどこへ向かったのか知っている?」
亜美「知らないよ。教えてくれなかった。ねーねー、なんかむずかしいこと話していないでさ、遊ぼうよ。亜美、こう見えて
>>330
で触れているとおり鳥籠の少女だから、毎日退屈しているんだよ?」
春香「いやいや、私たち今すぐにでもここを出なきゃだよ」
亜美「ふーん。琴葉お姉ちゃんが言っていたとおりにしないとかな」
雪歩「どういう意味?」
亜美「悪いけど、今日一日は大人しく亜美のおもちゃになってもらうからね!ぜったい、この屋敷から出してあげないんだから!」
百合子「ええっ!?」
591 :
そなた
2021/11/10 18:26:32
ID:6rnLBMGFGs
春香(尺があれば①強行突破②亜美の遊びに付き合い、隙を見つけて脱出③2人だけ屋敷から出してもらい、あとの3人は残る④逆に亜美をみんなでおもちゃにする……みたいな選択安価もあったんだけどね)
百合子(ど、どうするんですか)
雪歩(当然、①よ。手っ取り早くね)
百合子(でもこの部屋にいる黒服さんだけもけっこう強敵っぽいですよ?)
可憐(あ、あの……百合子ちゃん、風の能力が使えるんだよね?)
百合子(え?はい。でも全員をかまいたちでズタズタになんてできませんよ)
可憐(そ、そういうのは求めていないから。えっとね、うまく空気の流れを操って、私たちを護ってほしいの)
百合子(護るって―――)
亜美「こそこそ話は終わった?」
可憐「う、うん。亜美ちゃん、リンゴとオレンジ、どっちが好き?」
亜美「へ?いきなりなに?」
可憐「これとこれ……」
春香(取り出したのは、小さな瓶に入った2種類の香水?)
可憐「どっちもいい香りがするんだけど」
亜美「うん?」
可憐「変わった代物なんだよ……2つを混ぜちゃうと、とっても危険なんだ。こんなふうに、ね!」
百合子「床にたたきつけた?!」
雪歩「百合子、今よ!」
百合子「はい!? あっ、風!」
亜美「うわっ、なに、これ!?」
護衛の黒服たち「ワァァァアアアアア!?」
592 :
ダーリン
2021/11/10 18:30:03
ID:6rnLBMGFGs
可憐が瓶を割り、ふたつの液体が接触したことで化学反応が引き起こされる。
急速に気化し、特殊な神経ガスと化したそれを百合子は亜美と取り巻きに向けて放つ。
彼らの身動きが麻痺している間に、雪歩たちは部屋から脱出する。
が、しかしべつの黒服たちがすぐに雪歩たちを追いかけてくるのだった!!
4人は一目散に走って逃げる!
春香「事態の把握が早すぎない!?」
雪歩「まったく、優秀な護衛たちね!」
百合子「か、可憐さん!もうストックはないんですかぁ!?」
可憐「あわわわわわわわ。携帯しているのはあれだけだったの……!」
雪歩「しかたない、全員、焼いてやりますぅ!」
足を止めた雪歩が後ろを振り向き、レーヴァテイン(スコップ)を構えたそのとき、すぐそばから声がする。
??「みんな、こっちだよ♪」
可憐「えっ、窓の外!?ここ3階なのに!」
百合子「あなたは1回戦の相手―――」
春香「麗花さん!?」
雪歩「敵なの?それとも味方?」
麗花「琴葉ちゃんの計画を阻止したいんでしょ?私たちもだよ」
593 :
おにいちゃん
2021/11/10 18:35:48
ID:6rnLBMGFGs
可憐「なんでそのことを……?って、浮いている!?」
百合子「翼もないのに飛んでいるって感じですね」
春香「うわー!追手がすぐそこだよ!」
雪歩「ええい、ままよ!信じますぅ!麗花さん、『こっち』ってどうしたらいいんですかっ」
麗花「つかまって!」
開かれた窓、麗花が手を伸ばす。雪歩はその手をとる。
すると、雪歩の身体が浮かんだ。
雪歩「!? これ、麗花さんが腕力で『持ち上げている』わけじゃない」
百合子「ははーん、これは接触している対象にも浮遊能力を分け与えているってことですね。私の風の能力も添えれば……」
春香「私たちみんな、空を飛べるって計算だね!」
麗花「無限の彼方へさあしゅっぱーつ♪」
黒服「な、なんだあれは?!美少女5人が手をつないで空を駆けているだと!?」
黒服「くっ、そのくせスカートは鉄壁だぜ!」
亜美「え~!! 亜美の出番、これでおわり~!?」
594 :
do変態
2021/11/10 18:39:56
ID:6rnLBMGFGs
麗花「ふぅ、4人分、力を与えるのは初めてだったから思ったより疲れちゃった」
百合子「まだ屋敷の敷地内からギリギリ出たところですね」
春香「みたいだね。って……雪歩、可憐ちゃん!なんで着陸失敗して、そのまま絡み合い、見つめ合っているの!視聴者サービスか!」
雪歩「ごめん、ごめん、ついうっかり。えへへ……」
可憐「も、もうっ、雪歩ちゃんってば」
百合子「それで、このあとはどうすれば?」
麗花「えっとね―――」
??「もちろん、引き返すの。じゃないと痛い目みることになるの」
??「そういうわけなんで、みなさん、さっさと屋敷に戻りましょう♪」
春香「なっ?! あなたたちは、えっと、1回戦の審査員をしていた翼ちゃんと、」
麗花「あらら、美希ちゃんも?アーミーエンジェルズの隊長さんと副隊長さんが何の用かな?」
百合子「アーミーエンジェルズ……ああ、亜美ちゃんの護衛部隊ってことですね。って、ようは私たちを連れ戻しにきたってことですかぁ!?」
美希と翼に続いて、背中に羽(装飾)を生やした武装集団がやってきた。どうやら彼女たちが亜美親衛隊改め、アーミーエンジェルズのようだ。
595 :
プロヴァンスの風
2021/11/10 18:45:21
ID:6rnLBMGFGs
可憐「この場所を、こ、こんなに早く特定して、部隊を展開させているなんて……なかなかできることじゃないです!」
翼「ふっふっふ、わたしと美希センパイの2人に不可能はないんですよー。諦めてください☆」
美希「あふぅ……眠いから、とっとと屋敷に帰ってくるの。どうしてもっていうなら、抱き枕にしてあげてもいいの」
雪歩「え、ほんと!?」
可憐「雪歩ちゃん……?」
春香「雪歩……」
百合子「白雪さん……」
雪歩「ふっ、馬鹿言わないで。私たちにはやるべきことがある。あなたたちなんかにかまっていられないわ」キリッ
春香「どうしてそれを最初に言えないのか。ま、雪歩らしいけどね」
美希「ふーん、抵抗するんだ。じゃ、ミキ、久しぶりに全力出しちゃおうかな」
翼「え?そんなに手ごわい相手なんですか」
美希「見てのとおりなの。キャラメルマキアートみたいに甘い敵じゃないよ、この人たち」
可憐「せ、戦闘は避けられないのかな……!」
春香「早く琴葉ちゃんを止めにいかないと、なのに」
麗花「そろそろだと思うよ」
百合子「え、なにがですか」
596 :
師匠
2021/11/10 18:49:59
ID:6rnLBMGFGs
??「待たせちゃったわね!」
??「間に合ったようでよかったです。ここからは麗花さんと私たちに任せてください!」
春香「捜査官ハンドレッドこと、莉緒さん!?」
雪歩「それに……」
百合子「一騎当千、疾風迅雷、そして不撓不屈のサヨさん!!」
紗代子「そ、そこまでの通り名じゃないよ」
莉緒「まぁ、いいじゃない。また出番をもらえたってことで♪」
麗花「あれ?紗代子ちゃん、ジュリアちゃんは?」
紗代子「結局、連絡取れずじまいで……。さ、そんなことより、雪歩ちゃんたちは早く行って!」
雪歩「行って、ってどこに?」
莉緒「異界ライブラリよ!」
百合子「え、どうしてそんなところに……?」
可憐「そういえば、あの場所はかつてハーヴェイであった頃に、琴葉さんの指揮のもと建設された施設だって……」
雪歩「気まぐれで登場させた場所じゃなかったってことね」
莉緒「案内に昴ちゃんもいるはずよ!さぁ、ここはお姉さんたちに任せなさい!」
597 :
プロデューサーさま
2021/11/10 18:54:19
ID:6rnLBMGFGs
春香「へぇ、プレアデスも協力してくれているんだ。雪歩、行こう!」
美希「あはっ、行かせないの。とくに、そこのドジっぽいリボン。ミキが直々に相手してあげる」
春香「たしかにあなたとはどこか運命を感じるけど……今は無理!悪いけど、また今度ね!」
翼「あ、こら、待てーっ!」
麗花「ごめんねー、そういうわけだから、」
紗代子「あなたたちはここで私たちがやっつけます!」
莉緒「さあ、みんな、セクシーにいくわよ!」
美希「やれやれなの………翼、いくよ」
翼「はい♪」
かくして、みきつばたちエンジェル・アーミーズを麗花・紗代子・莉緒に後を任せ、双海亜美令嬢の屋敷を脱出した雪歩たち。
4人は琴葉が世界再構築の儀式を行うという異界ライブラリへと向かう。
可憐を加えた新生グリルモワールは琴葉の計画を阻止できるのか!?
次回『YUKIHO'Sキッチンへようこそ』最終回(予定) Recipe8partD 乞うご期待!
15日前後には投稿できそうです。あ、最終安価はそのときに。
598 :
続き投下していきます
2021/11/14 18:11:21
ID:D0CLaQ2hBw
Recipe8partD
箱崎家の私有鉄道列車・夢色トレインに乗って異界ライブラリへと向かう雪歩・春香・百合子・可憐の4人。
春香「今のうちに、話を整理しておこうか」
雪歩「そうだね」
百合子「事の起こりは390年前に遡るんですよね。魔法使いハーヴェイが今ある異界を創造した……」
可憐「うん。でも、彼の望むような世界にはならなかった。制御するには、あまりにも不確定要素が多すぎたみたい」
春香「そこで生きる人の心しかり、動植物たちの予想外の変質や進化しかり、か。この異界がどのぐらいの大きさなのか正確には知らないけれど、とにかくこれだけの空間を構築できるだけでもハーヴェイの力が伝説的魔法使いと呼べるものなのは納得できるね」
雪歩「うん。で、そのハーヴェイは異界を再構築、ようは今度こそうまく作り直すために、ある力に目を付けた」
百合子「それがオトメティックパワーなんでしたよね。料理研究家でもあった彼は、異界で採取したり獲ったりした食材を調理し、食べてみることでその力を発見した」
可憐「ただしその力を充分に発揮するには乙女でないといけなかった。身体的要素のみならず、魂まで」
春香「そこで転生、と」
雪歩「異界の再構築について危険視する彼の弟子たちもいて、彼が転生魔法の手伝いを頼んだ魔女3人によって転生魔法は不完全に発動することになった」
599 :
我が友
2021/11/14 18:11:38
ID:D0CLaQ2hBw
百合子「彼の側からすれば裏切られたってわけですよね」
春香「そうなるね。まぁ、そんなわけで当の魔女たち3人は異界の管理機構を結成して自らも不老長寿の魔法を施して、今に至ると」
雪歩「その魔女の1人が師匠なんだよね。転生を果たしたハーヴェイ、今の田中琴葉が高坂海美をかつての『四条亭』に送り込み、そして師匠はこの世界を離れざるを得なくなった。この結果については予想外だったみたいだけれど」
可憐「そして……海美ちゃんに私はついていき、琴葉さんと合流して『HOTDOGS』として3人で活動をしていたわけです」
百合子「そういうことがあった後で、私がこっちの世界にやってきたんですね」
雪歩「さて、それじゃあ、現状について」
春香「可憐ちゃんの見立てでは、というより麗花さんや紗代子ちゃんのあの雰囲気だと、もう時間がないみたいよね」
百合子「琴葉さんは異界再構築の魔法に必要な鍵をすべて手に入れて、儀式を行おうとしている、異界ライブラリで―――」
可憐「と、到着しましたね、最寄り駅。………か、覚悟を決めなくちゃですよね。きっと……海美ちゃん、琴葉さんと戦うことになります」
春香「料理バトルで済む話じゃなさそうなんだよね」
雪歩「っと、あそこにいるのは……プレアデスね」
600 :
我が下僕
2021/11/14 18:14:39
ID:D0CLaQ2hBw
昴「よお。待っていたぜ。グリルモワールの3人に……篠宮可憐、か」
可憐「ど、どうも。初めましてですよね」
昴「そうだな。思えば、そこの白兎のお嬢ちゃんと知り合ったのはあんたがきっかけだった」
可憐「え?」
雪歩「ん、ん。余計なこと言わなくていいわ」
春香「そんな深い話じゃないけれどね。単に、可憐ちゃんの居場所を私と2人で探しているときに情報屋の存在に行きあたったってだけ」
百合子「なるほど。えっと、プレアデスさん。私たち、麗花さんからはプレアデスさんに案内をしてもらえるって聞いているんですが」
昴「ああ、本来であれば異界ライブラリ内への隠し通路や何かを探したり作ったりして、田中琴葉自身やその息がかかった連中たちにバレないようにお嬢ちゃんたちを先導するつもりだったんだ」
雪歩「田中琴葉の息がかかった連中……。劇場で昴ちゃんがうとうとしているところに、耳にふーっと息を吹きかける、いたずらっ子琴葉ちゃんってシチュはありかもですぅ」
可憐「雪歩ちゃん……?」ジトーッ
百合子「なんてMP(妄想パワー)!さすがです、白雪さん!」
春香「はいはい、話進めようねー。プレアデス、その言い方だと予定が変更されたってこと?」
601 :
あなた様
2021/11/14 18:16:38
ID:D0CLaQ2hBw
昴「そうだ。異界ライブラリ。やはりあれは特別な施設だな。正面の入口以外は進入不可能だ」
百合子「天窓や通気口がベタな気はしますけど、そういうのもないってことですね。あ、だったら地下からは?白雪さんの穴掘りで」
雪歩「時間があれば一つの手だったかもね。………正面突破しかない、そうよね?」
昴「まあ、そう焦るな。現場近くまでいけば気が変わるかもだぞ?」
可憐「……?」
- 異界ライブラリ付近 茂み -
百合子「な……なんですか、あれは!?」
可憐「チュ、チュパカブラ!?あんなに大勢……!?」
春香「尋常じゃない警戒ぶりだね。あんなふうに布陣を敷かれたんじゃ、相手をするには骨が折れるよ」
雪歩「誰にも邪魔させる気はないみたい。プレアデス、策は?」
昴「もちろんある」
百合子「というと……?」
昴「あんたたちも知っているある人が協力してくれる」
春香「私たちも知っているある人……?」
602 :
あなた様
2021/11/14 18:18:38
ID:D0CLaQ2hBw
ロコ「グッドモーニングです!ハルカ、ユリコ!ツーマンスぶりですね!」
百合子「あなたは、クッキングデバイスの専門家、ロコさん!」
可憐「お、お久しぶりです。師匠がいた頃から、メンテナンスを定期的にしてくださっていましたよね」
春香「ドクター・ロコ。あなたがきてくれるなんて。一度きりのゲストかと思っていました」
ロコ「ナンスのアンナもいっしょですよ!」
アンナ「ロコ……ロコ……ロコ…」モフモフ
百合子「え?ああ、この子が例の。へー、思ったより知能が高そうですね」
雪歩「それでロコさん。この状況を打開する何かデバイスが?」
ロコ「はい! プレアデス、ヘルプは呼んでくれましたか?」
昴「ああ、たった今、きたぜ」
百合子「えっ。あ、あなたたちは……」
603 :
ご主人様
2021/11/14 18:21:15
ID:D0CLaQ2hBw
紬「七尾さん、何をそんなに驚いているのですか。この異界の危機ということであれば協力します。私がそんなに薄情な人間だとあなたは……」
真「紬、ここまできてつむらなくてもいいだろ?それよりも……春香、久しぶりだね。会いたかったよ」
風花「あ、あの、えっと、箱崎家からきました、メイドの豊川風花です。って、試合でお会いしていますよね。わ、私は麗花ちゃんと違って事情を知らなくて、うう……でも、できるかぎり頑張りますから!」
百合子「異界で知り合った人たちがここで次々に登場なんて、まるで最終決戦みたいです!」
春香「みたいじゃなくて、そうなんだよね」
可憐「あう……し、知らない人ばかり……」
雪歩「ロコさん、これだけの人数を使っていったい何を?特攻をしかけるってことはないでしょうし」
ロコ「プレアデス、例のものをエブリワンに」
昴「ああ」
雪歩「? これは……」
春香「アンプル?中に少量の液体が入っているけど?」
可憐「くんくん……独特な匂いがしますね。ちょうど、そこにいるアンナちゃんに近いような……」
アンナ「ロコ……ロコ……ロコ…?」
604 :
そこの人
2021/11/14 18:24:15
ID:D0CLaQ2hBw
ロコ「ザッツライトです!相変わらずいい鼻をしていますね、カレン。これはアンナの体液を基にして作られた強力なドラッグです」
百合子「強力な薬品!?そ、それはどんな効果があって、どう使うんですか!?」
昴「これだよ、これ」
春香「わぁ、ピストル! って、ええっ?!」
紬「なん……なん!?」
真「へー、意外と軽いし、それに形状が妙だね」
風花「あ、この部分にアンプルをセットするようですね」
昴「ドクターが説明すると、(横文字が多くて)わかりにくいだろうからオレから説明するよ」
可憐「は、はい」
昴「まず配った薬品について。これはANNA785379と名付けられた劇薬で、一滴で一般的なチュパカブラならほんの39秒で絶命してしまう」
百合子「怖っ!」
昴「元々は、特殊な弾丸に注入して射出するなんて用途を前提に作られた薬品ではない。こういう事態も考慮して、オレとロコとで急ごしらえでに製造した拳銃もどき、こいつに装填することで、いちおうは対チュパカブラ兵器として使えるはずだ」
605 :
主
2021/11/14 18:27:15
ID:D0CLaQ2hBw
雪歩「そういえば失念していたわね。プレアデスといえば、情報屋のなかでも、特殊な装備を用いて情報収集や敵対組織からの逃亡をするなどをすることで有名だって」
春香「ははぁ、ドクター・ロコとはもともと同盟関係にあったってことかな」
ロコ「そうですね、プレアデスはロコのベストパートナーと言えるかもしれません!」
アンナ「ロコ……ロコ……ロコ…?」
昴「まあ、否定はしないな」
雪歩「ははは……舞浜歩が聞いたら複雑な表情をしそうね」
百合子(べつにいいですけど、昴さんが特殊な装備を云々って後付設定ですよね)
可憐(ゆ、百合子ちゃん!そんな細かいことは気にしなくていいんだよ……?)
百合子(は、はい)
風花「あのー、ちなみに、これもしも、誤って人に当たってしまったら、どうなるんです?」
真「試してみようか」
紬「!? き、菊地さん!?なんでうちに銃口を向けるん!?」
ロコ「オールライトというわけにはいきませんけど、デスの心配はいらないですよ」
606 :
番長さん
2021/11/14 18:30:25
ID:D0CLaQ2hBw
昴「実践したことはないが、理論上はオフアンナ状態っていう無気力状態になるらしい」
百合子「待ってくださいよ。オフの杏奈ちゃんがそんな無気力だなんて」
アンナ「ユリコサン…!」
百合子「あ、ドラマの中の設定だからいっか」
アンナ「ユリコサン…?」
可憐「このピストルをつかって……あそこにたくさんいるチュパカブラさんを、倒せばいいんですね……!」
雪歩「早い話、虐殺よね、これ」
昴「いや、これもあくまで理論上だが、この弾丸、というより毒針だと絶命には至らない可能性が高い。しかも、ほら、見てみろ。あれは一般的とは言い難い、チュパカブラだ」
真「たしかに彼らを制圧するのに、3、4人じゃ足りないだろうね。この数……ロコさんを入れて9人でいけるかな」
昴「ちょうど野球チーム1つぶんじゃん」
百合子「戦いは数ですよ、ロコさん!」
ロコ「うーん……今あるANNA785379のアンプルはそれでオールですから」
百合子(あれ?そういえば、さらっと流したけどこれ、アンナちゃんの体液が主成分なの?……体液?)
春香「いざとなったら、拳ですよ!拳!」
607 :
プロデューサーちゃん
2021/11/14 18:32:18
ID:D0CLaQ2hBw
雪歩「みんなピストルはもったよね!!行きますぅ!!」ドドドドドド
チュパカブラたち「!? チュパ、チュパチュチュパパパチュパ!?」
春香「どけどけー!」
百合子「目指すは正面入口!」
ロコ「ミッションスタートです!」
昴「オレたちで少なくとも、雪歩と春香、それに百合子は通す!」
紬「例の田中さんと高坂さんとの決戦を任せるってことですね」
可憐「わ、私もできれば……!」
真「ふっ、所詮はチュパカブラ、遅いよ!」
風花「あ、あわわわ、みんな待ってぇ~」
608 :
我が下僕
2021/11/14 18:35:09
ID:D0CLaQ2hBw
一方その頃
- 異界ライブラリ内 秘密区画 -
琴葉「……海美ちゃん、ここで待っていてくれるかな」
海美「へ?この先もついていっちゃダメなの?」
琴葉「ダメというか……きっとあの子たちがここに来るだろうから」
海美「あの子たちって―――まさか雪歩さんたちのこと?でも、あれだけのチュパカブラがいたら、いくら雪歩さんたちだって」
琴葉「いいえ、あの子たちなら他の誰かの手助けだって得られるはずだし、チュパカブラたちを突破するのは間違いないと思うわ」
海美「でも、この秘密区画には入れないんじゃ……」
琴葉「そうね、と言いたいところだけれど、向こうには可憐さんがいる」
海美「! ……たしかに可憐さんの感知能力があれば、並大抵の妨害行為なんか通じないね」
琴葉「ええ、だから思い切って、ここに至る通路は開いたままにしてあるわ。私は信じているから」
海美「信じている?えっと、何のこと?」
609 :
Pサマ
2021/11/14 18:37:30
ID:D0CLaQ2hBw
琴葉「海美ちゃん、あなたのことよ。ここにいてくれる?ここにやってくる、私、ううん、私たちの夢の実現を邪魔しようとするみんな、排除してくれるかな」
海美「琴葉……。うん、わかった!そういうことだったら。もっといっしょにいたかったけど」
琴葉「ふふっ、すべてが終わればずっといっしょよ。ずっとね」
海美「ほんと?えへへ……。あ、あのね、琴葉。もし私がここにくる邪魔者、みーんな、どうにかできたら、ご褒美くれる?」
琴葉「ご褒美?何か欲しいものがあるの?」
海美「えっとね、えーっと……わ、私を琴葉の…………あ、あーっ。なし、やっぱ、なし。ちゃんと落ち着いてから言うね」
琴葉「ふふっ、変な海美ちゃん。そういうところも可愛いんだから」
海美「琴葉ぁ……。私、頑張る!」
琴葉「期待しているわ」
海美「うん!じゃあ、また後で」
琴葉「ええ、またね」
610 :
EL変態
2021/11/14 18:41:17
ID:D0CLaQ2hBw
- 秘密区画深奥 聖域 -
琴葉「やっと、ここまできたわね。これでついに………」
??「待っていたわ」
琴葉「――――ふふっ。悪いけれど、驚かないわ。あなたならいるかもしれないって考えていたもの」
??「不思議なものね。そんな可愛い女の子の姿で、それに相応しい口調なのに、それでもわかるのだから。あなたがあの師匠だって」
琴葉「それでこそ我が愛弟子ね。アズール・ミューラー……また一段と美しく、強くなったものだわ」
あずさ「強くなる必要があったのよ。ここであなたを止めるために」
611 :
そこの人
2021/11/14 18:44:21
ID:D0CLaQ2hBw
つづきはまた後日 遅くとも21日には
思ったより書き進められず、最終安価も出せませんでした
11月中に完結させます。させたい。できるはず。
誰かしら1人ぐらい読んでいるものだと信じています
何卒最後までお付き合いください!
612 :
続き投下していきます
2021/11/21 12:23:48
ID:ZtrasMKNlg
- 双海令嬢屋敷 -
雪歩たちを異界ライブラリへと送りだした麗花・紗代子、そして今日が誕生日である莉緒の3人が、亜美の護衛隊であるアーミーエンジェルズ(以下AA)と戦闘していた。
AAはその名のとおり、天使の羽を模した空中駆動装置を背中につけている。といっても、隊長の美希と副隊長の翼が地上1メートルの高さ、彼女たち以外はせいぜい50センチほどの高さで浮遊できているに過ぎない。
そういうわけで天使たちは、紗代子たちの手の届かない距離から一方的な攻撃を仕掛けてはいない。装置の真価は浮遊能力ではない。得られる恩恵の最たるものはスピードであった。
素早い動きに翻弄されつつも、紗代子と莉緒が一般隊員を相手にし、本当の意味で空中戦を得意とする麗花が美希と翼の2人を相手にしていた。
美希「あふぅ……なかなかしぶといの」
麗花「あらら、まだまだ元気そう」
翼「もう、さっさと倒れちゃってくださーい!ほんとならセンパイとデートの時間なのに~!」
紗代子「はぁ、はぁ……こんなの、一介のお嬢様の護衛隊が持っていい武力じゃないでしょ!」
莉緒「驚いたわ。あの麗花ちゃんと空中戦で同等に渡り合えるなんて、美希ちゃんも翼ちゃんも相当な実力者よ」
紗代子「美希ちゃんが近中距離に対応できる電撃能力、翼ちゃんは遠距離主体の光線銃……。あの息の合ったコンビネーションじゃ、さすがの麗花さんも全部を回避できはしないです。早く、助けにいかないと!」
莉緒「そうね。っと!こっちはこっちで全然倒れてくれないし、速度に加えて、なんて頑丈な奴らなの!天使っていうより悪魔だわ!」
紗代子「ハンドレッドさん、一瞬でいいんです、道を作ってくれませんか?」
莉緒「道?紗代子ちゃん、どこへ行くっていうの?あなたの能力だと美希ちゃんたちとの相性は良くないわ」
613 :
プロデューサー殿
2021/11/21 12:26:22
ID:ZtrasMKNlg
紗代子「わかっています。この拳が当たることはないでしょう。私は……この窮地を一変させる。それができる人物のところに向かいます!」
莉緒「……なるほどね。これだけの数の護衛隊が屋敷内から出払って、敷地の端っこでドンパチやっているんだもの、今なら……ってことね」
紗代子「はい、それにあの子のことだから、お祭りでも見るように近くまではきているはずです」
莉緒「オーケー、紗代子ちゃん、あなたに任せたわ!さぁ、百発百中のハンドレッド、ここでセクシーに決めるわよ!」
それまで鞭状の得物で戦っていた莉緒がごそごそと胸元から小さな球体をいくつか取り出す。
そしてそれらを一斉に上へと投じた。敵の目は自然とそれらに向かう。地面へと落ちる前に莉緒は得物を一瞬で数度振るい、その球体を敵に目がけてはじいた!
バチバチバチッと爆発音と共に眩しい光、それからピンク色のスモークがあたりを覆う。
紗代子は動きの止まった敵に不可避の手刀を繰り出しつつ、間をくぐって、屋敷の建物がある方面へと駆けた。
戦場とはうってかわって静かで長閑な屋敷内で紗代子は考えをめぐらす。
麗花や莉緒が戦っているあの場所を直に見物できる場所、それはどこか。
でも、もしもカメラか何かを使って遠方で状況を探っていたら―――その不安が形になる前に、紗代子は警備の1人に見つかる。
が、それは好都合。紗代子は「すみませーん」とニコニコとして近寄っていき、そして瞬時に背後に回り、組み伏せ、ドスの効いた声で問う。
紗代子「亜美ちゃんはどこ?」
614 :
兄ちゃん
2021/11/21 12:30:01
ID:ZtrasMKNlg
- 異界ライブラリ前 -
雪歩たち9人の乙女は異界ライブラリ前に集結し、出入り口を塞いでいるチュパカブラたちに総攻撃を仕掛けた!
ロコのペットであるアンナの体液を基に、ロコとプレアデスの初めての共同作業によって作られた対チュパカブラウェポンを手に彼女たちは暴れ狂う怪異に立ち向かう!
百合子「ガンシューティングなんて久々!」
春香「拳銃の使い方だったら、ハワイで親父に教えてもらったから、問題ないよ!」
ロコ「あなたたちのデスも、一つのロコアートです!」
アンナ「ロコ………ロコシテ……ロコシテ」」
昴「よっしゃ!ヒット、ヒット、ヒット、ホームラン!」
真「危ないっ、紬!」ダーン!
紬「あ、あんやと」
風花「射線上に入るなって、私言わなかったっけ? オラオラオラオラー!」
可憐「ふ、風花さん、豹変している!?」
雪歩「もっと、もっとですぅー!!!」
615 :
ごしゅPさま
2021/11/21 12:35:31
ID:ZtrasMKNlg
チュパチュパチュパチュパチュパ……
昴「思ったより多いぞ!白兎!さっさと突入しろ!」
真「援護は任せて!」
春香「合点承知の助! 雪歩、百合子ちゃん、可憐ちゃん!ジエットストリームアタックをかけるぞ!」
百合子「よくわかりませんが、とにかく前に突っ込みます!」
雪歩「可憐ちゃん、急いで!ほら、掴まって!抱きしめて!」
可憐「は、はいっ」
紬「え?あの、こんな状況で手をつないだり、抱きしめる行為はただの遅延なのでは?」
ロコ「マーベラスなディレクションです!」
風花「オラオラオラオラー!」
雪歩・春香・百合子・可憐がライブラリ内への突入を成功させ、唯一の出入り口が再び固く閉ざされると、深い静寂が訪れた。
ライブラリ内はすぐ近くで起こっている喧騒がまるで夢であるかのように、邪魔な音を遮り、内部の空気を維持させ、神聖とも言える空間で在り続けていた。
それは先日、百合子たちが来館した際にはそれほど感じられなかった厳かで神秘的な装いであり、何かが変わり始めていると雪歩たちに確信させた。
616 :
Pーさん
2021/11/21 12:38:45
ID:ZtrasMKNlg
雪歩「行こう」
黙って顔を見合わせていた4人のうちで最初に口を開いたのは雪歩だった。
そうして残りの3人が声に応じて、肯く。
百合子「ここから先はセーブできなさそうですね」
春香「いよいよラスボス戦ってこと?」
可憐「え、えっと、まだ戦うってきまったわけでは」
百合子のいつもの妄想、軽口をきっかけに4人はなるべく平然であろうと、日常会話に努めた。
一歩、一歩、深淵へと近づくのを感じながら。
可憐の感知能力によって、琴葉と海美が秘密の通路を抜けて、深奥部へと向かっているのがわかった。
春香のとっておきのジョークが披露され、皆が失笑した後、先頭を歩いていた雪歩がピタリと足を止めた。
雪歩「気をつけて」
春香・可憐・百合子「!」
雪歩「そこをどいてくれる?………海美ちゃん」
海美「…………」
617 :
師匠
2021/11/21 12:40:59
ID:ZtrasMKNlg
海美「それはできないよ、雪歩さん。うん、できない、ぜったい。私はここを誰も通すわけにはいかない」
春香「いやぁ、でもさ、私たち全員を止めるって無理じゃないかな。4人に勝てるわけないじゃん。ね?」
海美「そう?所詮は、のらりくらり、のほほんと生きてきた人たちばかりでしょ?地獄を知っている私が負けるわけがない」
百合子「ど、どういうことですか?」
可憐「………海美ちゃんは、私たちに、ううん、琴葉さんに会うまでは――――」
海美「黙れっ!裏切り者!」
可憐「っ!」
海美「勝手に人の過去をべらべら喋ろうとしないで」
可憐「ご、ごめんなさい……」
雪歩「で?教えてくれるの?」
海美「あれは10年前のこと……」
雪歩「浸りすぎーーー!!!!」バキ
海美「ぐへぇっ!!」
百合子「えぇーーっ!!??」
618 :
お兄ちゃん
2021/11/21 12:43:26
ID:ZtrasMKNlg
雪歩「今すぐに琴葉ちゃんを止めないといけないっていうのに、長い長い回想なんて聞いていられないですぅ!」
百合子「たしかに!」
可憐「正論ですけど、空気読めていなくないですか?!」
海美「くっ、私としたことがこんな不意打ちをくらっちゃうなんて」
雪歩「海美ちゃん、もうやめて!私たちが戦うなんてどうかしているよ!」
春香「たった今いきなり殴りつけたやつが言うことじゃねーー!!」
海美「もう迷いはなくなったよ。雪歩さんたち全員、ここでぶっ倒す!」
雪歩「あー、うん、しかたないなぁ。戦わなければ生き残れないってやつかなぁ」
春香「なんでちょっと他人事みたいなの!?」
百合子「ま、待ってください!」
春香・可憐・海美・雪歩「!?」
雪歩「え?なに、どうしたの、そんな大声出して。引くわ……」
可憐「も、もしかしてお手洗い?え、えっとね、百合子ちゃん。そういうのは撮影前にちゃんと済ませておかないとだよ……?」
春香「百合子ちゃん、勇を失ったな……」
百合子「なんだこの扱い?!」
619 :
Pさん
2021/11/21 12:45:41
ID:ZtrasMKNlg
海美「それでどうしたの?ゆりりん」
百合子「あ、あのですね、ほら、この後の展開考えたら、ここは全員で戦うよりも誰かしら温存させたほうがいいかなって」
春香「ラスボス前に消耗しすぎないようにってこと?」
百合子「そう、それです!」
雪歩「ゲーム脳じゃん」
可憐「ま、まとめてさっさと片付けてしまえばいいんじゃないかなって……えへへ」
百合子「ひどい言われ様!」
海美「わかった。じゃあ、ゆりりん。一対一(サシ)でやろう」
百合子「ええっ!? 私ですかぁ!?」
雪歩「!! それならツイスターゲームとか野球拳がいいんじゃないかな」
春香「それだと最終回拡大放送枠のゴールデンタイムで流せないやつじゃん!事務所NGですよ!事務所NG!」
可憐「で、でもたとえば体力勝負で百合子ちゃんが海美ちゃんに勝てる可能性ってゼロですよね……?」
百合子「ばっさり言われたーー!!」
620 :
仕掛け人さま
2021/11/21 12:47:09
ID:ZtrasMKNlg
春香「ったく、ここはメインヒロインである私がやるしかないね」ドンッ
雪歩「春香……」
可憐「春香さん……!」
百合子「え、え?なんでそんないきなりキメ顔なんですか」
春香「海美ちゃんも私も共に強化系の能力者だからね」
海美「春香さん、いいの?私に組手で一度も勝ったことないでしょ?」
百合子「そ、そんな、あの春香さんが?! 私が修行をしてもらったときは、春香さんに一度も触れることさえできなかったのに!」
雪歩「だって、べつに百合子の能力、近接戦闘向きじゃないから……」
可憐「ゆ、雪歩ちゃん。しーっ、しーっですよ!」
春香「昔の私とは違うよ、海美ちゃん」
海美「それは私もだよ。今の私はあの頃の10倍は強いよ!」
春香「ふーん、じゃあ、私は100倍!」
海美「え?じゃ、じゃあ、私は390倍!」
春香「765倍!」
海美「せ、1000倍!」
百合子「小学生か!」
621 :
箱デューサー
2021/11/21 12:51:32
ID:ZtrasMKNlg
雪歩「百合子、可憐ちゃん、離れて」
可憐「え?」
雪歩「春香と海美ちゃんの拳の語り合いは外野が水を差せるようなものじゃないから」
百合子「は、はい」
海美「いくよ、春香さん。『海』を持つ者同士、決着をつけるときがきたんだよ」
春香「日本海にじゃっぱーん!!」
- 異界ライブラリ内秘密区画 深奥 -
対峙したかつての師とその愛弟子
転生を果たした偉大なる魔法使いにして料理研究家・『HOTDOGS』のリーダーこと田中琴葉
不老長寿の魔女にして占星術師あずさことアズール・ミューラー
琴葉の計画を止める、あずさの言葉に琴葉は微笑んだ。それはあたかも純粋に愛弟子の成長を嬉しく思う師の微笑みであった。
622 :
下僕
2021/11/21 12:54:59
ID:ZtrasMKNlg
琴葉「へぇ……その手に持っているのはただの金槌でないわね」
あずさ「見覚えないかしら?」
琴葉「ふむ……。ああ、思い出したわ。ミョルニルね。この私がレーヴァテインと共に作った。なに?思い出の品として大事にもっていてくれたの?」
あずさ「そんなところよ。ところで、雷をその身に受けたことは?」
琴葉「さぁ、何度かあったかしら」
あずさ「そう――――じゃあ、これが最後ねっ!」
瞬間移動、まさにそれほどの速さをもってしてあずさは琴葉との距離をつめ、その雷神の槌をふるった。
それで勝負はつくはずだった。ハーヴェイの弟子にして竜宮の魔女と言われたあずさはそのときを何度も想像して、鍛錬してきたのだから。
そうだ、どんな武具や防具をもってしてもミョルニルの雷を纏った撃潰を受けて無事に済むなどあり得ない。あり得ないのだ……。
しかし―――
琴葉「悪いわね」
あずさ「嘘……。その剣は、なん……なん?」
623 :
Pちゃん
2021/11/21 12:57:17
ID:ZtrasMKNlg
いとも容易く、そうだ、琴葉がミョルニルをあまりに簡単に剣で受けたことにあずさは愕然とした。びっくりしてつむつむしてしまった。
琴葉「この剣の材料はミリシタニウム鉱石。知らないでしょうね。それはそう。私が勝手に命名したんだから。この鉱石は、私がハーヴェイであった時代の異界においてはまだなかった。ううん、あったとしても、まだ充分に成熟していなかったのでしょうね。ねぇ、理解した?」
あずさ「くっ……」
琴葉「長い月日がこの鉱石をここまでのものにした。この剣は、かつで私の作ったその雷神の槌だろうと、砕けはしない。あなたたちが私の魂に与えた長く深い眠りはこの出来損ないの異界を育むのに十分な時間だったのよ」
あずさ「まだよ、まだ終わりじゃない!轟け、雷音!かの者を穿ち、粉砕せよ!雷神の―――」
琴葉「ごめんね」
あずさの詠唱は途切れた。最後の切り札である大技は発動できぬまま、琴葉の剣によってその身は斬られたのだから。
倒れるあずさ。見下ろす師の姿はやはり見慣れぬ姿をしていたが、その瞳の奥に宿る野心と悲哀はあの時と変わらなかった。
あずさ「う……ぐ……」
琴葉「私はあなたたち3人をそれほど恨んでいないわ。たとえあんな仕打ちを受けても、私にとっては3人とも娘のようなものだもの。だからここでわざわざあなたに止めをさすなんてしない。とはいえ、救いもしない。せいぜいそこで息も絶え絶えに新世界の創造を見届けなさい」
あずさ「まだ……希望は……あるわ」
琴葉「それはそうよ。何を勘違いしているの?私は破滅を望んでここを再構築するわけじゃない。むしろ絶望に満ちた世界を救うのよ。そして私は―――」
624 :
Pしゃん
2021/11/21 13:01:09
ID:ZtrasMKNlg
そのときあずさが、弱々しく、小さな声を発した。ある人物の名前。それは琴葉の耳に届いた。
琴葉「よく調べたわね。あなたたちと出会うよりも、ずっと前のことなのに」
390年よりもさらに過去。ハーヴェイが魔法使いとしての才覚をまだ世間に示しておらず、ただの青年であった頃。
あずさ「………忘れ…られないのね」
琴葉「ええ。彼女のことを忘れたことなんてただの一度もない。そしてこれからも」
あずさ「……」
気を失ったあずさから離れて、琴葉は異界再構築の儀式に用いる装置へと歩み寄る。
一切の埃がかぶっていない、物言わぬ冷ややかな装置を琴葉はゆっくりと撫でる。
琴葉「もうすぐ貴女に再び会えるわ。愛しい人―――――コレット」
つづく
625 :
彦デューサー
2021/11/21 13:03:17
ID:ZtrasMKNlg
安価や料理要素どこ……?って感じですが、もうすぐ完結です
最後までお付き合いください!
626 :
つづき
2021/11/22 18:39:59
ID:W1NROkfcyQ
- 双海令嬢屋敷 -
莉緒に手助けより、紗代子が戦場の一時離脱に成功直後。
麗花がみきつばに応戦を続けるも、2人の連携攻撃にしだいに追いつめられてしまう。
莉緒は名前のないアーミーエンジェルズの隊員たち複数人相手にギリギリの戦いを続ける―――。
莉緒「はいだらぁー!………っ、ま、まだやるの?紗代子ちゃんを送り出したはいいけれど、まだ帰ってこないし」
麗花「はぁ……はぁ……」
美希「終わりが近いってカンジ?あはっ」
翼「ふっふっふ、美希センパ~イ、やっぱり今日このあとデートしましょう♡ よく考えたら夜のデートのほうがオトナって気がしますし!」
莉緒「あの麗花ちゃんが追いつめられているなんて……!っと、私も余裕、ないけどっ!うー、まさか、信じて送り出した紗代子ちゃんが年下令嬢に調教されてビデオレターを送り返してくるなんて展開になっちゃうんじゃ……」
紗代子「皆の者!鎮まれ!鎮まれーい!静まれいたそ~」
莉緒「紗代子ちゃん!? あ、あれは……!」
美希「あれ?あそこで肩車して遊んでもらっているのって……」
翼「亜美ちゃん?!」
麗花「ふぅ……間に合ったみたいだね♪」
627 :
Pサン
2021/11/22 18:42:18
ID:W1NROkfcyQ
紗代子が担いでいる(物理)美少女を目にして、戦っていた者たちが動きを止めた。
紗代子「亜美ちゃん、そろそろ降りてくれる?年齢では私が4歳上だけど、体重は同じだし、身長は私の方が低いから」
亜美「りょーかい!」
紗代子「さ、亜美ちゃん、さっきお願いしたとおりね」
亜美「わかっている、わかっているって。あー……えーっと、みんな、もう帰っていいよ!」
紗代子「雑ぅ!」
翼「ほんとですか!?やったぁ!ささ、いきましょう、美希センパイ♪ 疲れたから、そこでほら、ご休憩ってことで……」
美希「むー、納得いかないの。美希たち、亜美のためにこんなに頑張ったんだよ?」
モブ隊員「そうだー!そうだー!」
莉緒「まぁまぁ、そう言わずに。雇い主がああ言っているんだから、ね?」
美希「でも、亜美。いいの?ここでこの人たちを足止めしておかないと、琴葉のところにいって、邪魔しちゃうかもなんでしょ?」
翼「えっと、そうしたらあれですよね、亜美ちゃんが約束したっていう、美食の数々はなくなっちゃう?」
628 :
変態インザカントリー
2021/11/22 18:45:25
ID:W1NROkfcyQ
莉緒「どっちみち、雪歩ちゃんたち通しちゃっているし、そのあたりは手遅れ感があるけどね」
亜美「亜美ね、気がついたの」
翼「え、何に?」
亜美「亜美を求めて争うみんなを見るのは、最初は面白かったけど、途中から全然楽しくないなーって」
紗代子「亜美ちゃん………ぐすっ」
莉緒「ここ泣くところなの?! せ、成長したってことかしら」
このみ「そういうことね」
莉緒「このみ姉さん!?なぜここに!?」
このみ「ドラマ中の呼称は『このみ』だった気もするけど、まぁ、いいわ」
麗花「このみさん、どうでした?」
このみ「裏がとれたわ。田中琴葉の後ろ盾として双海財閥はたしかに関わっている、というより『関わっていた』みたいね。けれど、亜美ちゃんにその細部が知らされていたという事実はないわ」
紗代子「すみません、このみさん……あなたまで動いてもらうことになるなんて」
629 :
プロデューサー殿
2021/11/22 19:00:42
ID:W1NROkfcyQ
このみ「いいのよ、紗代子ちゃん。私も半分関係者みたいなものだったから。今回の件をとおして、双海のおじさまに約束してもらったわ」
亜美「え?まいだでぃとどんなぷろみすを?」
このみ「亜美ちゃんにもっと外の世界を教えるって」
莉緒「それって……」
紗代子「初期設定だから忘れ去られていましたけど、亜美ちゃんはいわゆる鳥籠の中の少女的な立場でしたね」
美希「ふーん、それじゃあ、これからはもっと自由に亜美と遊べるってこと?」
亜美「そうなるの、かな」
翼「美希センパイを渡すつもりはありませんけど……うん、亜美ちゃんと自由に遊べるっていうなら、今日のところは終わりにしてあげてもいいですよ?」
紗代子「そこ、翼ちゃんが締めるところなの?!」
このみ「―――というわけで、双海屋敷編は終わり!めでたし、めでたしよ!」
莉緒「よーし、このみ姉さん、飲みにいくわよねっ!」
630 :
プロデューサー君
2021/11/22 19:03:09
ID:W1NROkfcyQ
麗花「わーい、わーい!あれ?紗代子ちゃん、なんでそんな暗い顔しているの?画鋲踏んだ?」
紗代子「い、いえ。てっきり私、あいつがサッと登場して助けてくれるのかなって思っていたから……」
麗花「ん?あー、紗代子ちゃんの愛しの……」
紗代子「そんなんじゃありません! さ、私たちもいきましょう!まだ終わっていませんからね!」
麗花「ふふっ、そうだね。きっと、あの子はもう異界ライブラリについているだろうけど」
紗代子「え?今なんて……」
麗花「なんでもないよ♪」
亜美「メシだぁーーーーー!!!」
翼「ステーキですよ!ステーキ!」
美希「断然、おにぎりなの!」
モブ隊員「ワァァアアアアアアアア!!!」
631 :
der変態
2021/11/22 19:09:07
ID:W1NROkfcyQ
- 異界ライブラリ 秘密区画内 -
琴葉の所恵美……もとい、ところにいかせまいと立ちはだかる海美に春香が勝負を挑む。
乙女の拳と拳のぶつかり愛、これぞアイドルファイトッ!!
春香「やるじゃない」ニコ…
海美「春香さん、やせ我慢はよくないよ。もう立っているのもやっとでしょ?」
百合子「くっ、殴り合うシーンは事務所NGだったから場面転換によってカットされて、既に勝負がかなり進んだところから再開ですよ!!」
可憐「か、解説ありがとう」
雪歩「春香……」ギュッ
可憐「ひゃあっ」
百合子「白雪さん?そこはふつう、手を祈るように握って春香さんの健闘を願うのに、なんで可憐さんに抱き着いているんですか」
可憐「か、解説ありがとう?」
海美「春香さん、次の一撃で最後にするよ」
春香「戦うのをやめてくれるってこと?やったー!」
海美「そのふざけた空元気さえ、もうじきなくなる」
春香「はぁ、なんでそんな顔しちゃうかな。覚悟なんかきめちゃって」
海美「………」
632 :
P殿
2021/11/22 19:12:14
ID:W1NROkfcyQ
春香「ねぇ、海美ちゃん。ミリオンスープって知っている?」
海美「……ううん」
春香「雪歩、可憐ちゃん、覚えているよね?」
雪歩「う、うん」
可憐「はい……で、でも急にどうして」
百合子「あのー、私、知らないんですけど」
春香「私たちがまだ10歳かそこらだった頃の話だよ」
雪歩「SFYのロリ可憐ちゃん可愛いよね」
百合子「なんでこんなときに、そんなこと真顔で同意求めてくるんですか……」
春香「師匠である貴音さんの言いつけで、私たち3人は協力してミリオンスープを作ることになった。この料理はね、100万とはいかないけれど、数多くの食材をそれにとっても長い時間煮込み続けて作るスープなんだ」
百合子「へぇー、センチュリースープのようなものですかね」
春香「3人で交代して見張り番について、十三夜、ついにスープが完成した」
633 :
do変態
2021/11/22 19:15:36
ID:W1NROkfcyQ
海美「で?なにを言いたいの?それはそれは美味しかっただろうね!その程度の苦労、私だって……!」
雪歩「食べられなかったんだよ」
百合子「へ?」
可憐「………スープは、か、完成しました。師匠も褒めてくれました。みんなで味わおうってなって、でもそのとき……」
春香「私がどんがらしちゃったんだよね」
海美「!」
百合子「な、なんちゅーことしはるんや……あんさんは、あ、悪魔や……」
春香「不思議なもので、そのときのどんがらがっしゃーんは今なお鮮明に覚えているよ。スローモーションでさ、コマ送りではっきりと」
雪歩「あのときは泣いたよ、私も可憐ちゃんも、春香につられてわんわん泣いた」
可憐「ワン! ニャン! ブー! でワンダフール! ほらね!」
百合子「鳴いてどうするんですか!?」
春香「貴音さんはそんな私たちみんなを抱きしめてくれた。そばにいてくれて、怒らずに、優しく、ずっと……床にぶちまけられて台無しになったスープを飲むかどうか悩んでいた」
百合子「そこまで意地汚い人なんですか!?」
634 :
Pちゃま
2021/11/22 19:20:40
ID:W1NROkfcyQ
春香「最後のは冗談だけど、とにかく私はその失敗を経て決心したんだ」
海美「それって……」
春香「料理中は転ばないってね」ドヤッ
百合子「えぇ……結局、何がいいたいんですか、これ」
雪歩「転んだって立ちあがればいいってことね」
可憐「ど、どんなに転んだって、立ちあがればいいんです……それができるんです。ひ、1人では難しくても、みんながいれば……!」
百合子「今の話、そこまで踏み込んだ話でした!?」
春香「海美ちゃんがうちに、『四条亭』にきたとき、もっとこういうことを教えるべきだったね」
雪歩「師匠は教えてくれていたかもしれない、あるいは私たちが海美ちゃんに教えるのを期待していたかも」
可憐「……海美ちゃん、琴葉さんは教えてくれた?あの人は優しくて強い。それは私も知っているよ?でも……今の彼女は、師と呼ぶに相応しい人じゃない」
海美「うるさいっ!うるさいうるさいうるさい!あんたに何がわかるっていうの?!」
春香「わかんねぇ!」ドンッ
海美「!?」
635 :
そこの人
2021/11/22 19:23:09
ID:W1NROkfcyQ
春香「わからないけど、わかろうとするのを私はやめないっ! 海美ちゃん、私も覚悟したよ。この一撃で終わらせるッ!ぜんぶ終わって、『YUKIHO'Sキッチン』に連れ帰る!」
可憐「あ、あの構えは!」
百合子「伝説の、ロクなこと言わないポーズ……!この目で見られるなんて!」
雪歩「!! 海美ちゃんも構えた、あ、あれはコンテンポラリーダンス?!」
可憐「ちがいますよ!?」
そして3人が見守る中、春香と海美が同時に動く。
春香「―――」ドン………
百合子(ええっ!?こ、この土壇場でまさか、どんがらしちゃうんですかぁ?!)
可憐(あれはいつものどんがらじゃない!)
ゆらりと傾く体、転びかかる春香に対し、海美は数歩の間にその速度を上げ、ついには音を置き去りにして春香に激突する―――うみみんロケット、身長だけなら雪歩と同じその小柄と呼べる範疇にある少女の身体全体を武器にするその技は、まともに喰らえば、たちまち散体するほどのパワーとスピードである。
別名・ウミミンアクセルレーション。ノーツ速度300%のOMが春香を襲う!
春香「―――」ガラ、ガラ、ガラ、ガラ……
海美「!!」
636 :
プロヴァンスの風
2021/11/22 19:25:26
ID:W1NROkfcyQ
百合子「春香さんのどんがらに海美さんが巻き込まれたぁっ!?」
雪歩「転びきることのないどんがら、終わることのない回転に、海美ちゃんの激突による衝撃が吸収されたっていうの!?」
可憐「つ、つまり、このあとどうなるんですか!?」
春香はその場でどんがらし続けている。
海美はそのどんがらの回転に巻き込まれたまま身動きあがとれない。
いったいどうなっているのか、図示することは難しいが、フィーリングで理解してほしい。
春香「終わりのないのが『終わり』それが『ドンガラガッシャーン・H(ハルカサン)・レクイエム』」
海美「ッッッ!?」
春香「さぁ、雪歩、可憐ちゃん、百合子、行って!琴葉ちゃんのもとへ!」
百合子「そのよくわからない状態の春香さんを置いていけっていうんですかぁ!?」
可憐「く、くんずほぐれつです……!」
春香「私たちなら大丈夫!39の39乗ぐらい回転し終えたら、解除できるモードに移行するから」
雪歩「途方もないですぅ!」
637 :
我が下僕
2021/11/22 19:31:36
ID:W1NROkfcyQ
海美は春香の回転に巻き込まれ、絡み合い、その思考さえも溶けあっていく過程で、かつて失ったはずのあたたかさを取り戻そうとしていた。
ついに語られることのなかった彼女の味わった地獄について、知っておくべきことはただ1つ。彼女は救われたということである。
どんがら、どんがらと頭に、魂に響くその回転を子守唄とし、やがて思考は眠りについた。
うみみーん、と小さな鳴き声をあげ、高坂海美はどんがらの回転の内に安らかな眠りを享受することになったのだ―――。
可憐「た、たどり着きましたね」
百合子「見るからにラスボスの間に通じる扉です!」
春香の頼みに従い、雪歩たち3人は春香と海美を残して秘密区画の深奥部に到着した。
雪歩「あのね、聞いてほしいことがあるんだ」
可憐「どうしたんですか、そんな、ひなたちゃんのソロ曲みたいなこと言い出して」
百合子「ここまできて、なんですか。重要な話なんでしょうね」
雪歩「うん。ふたりにはここで待っていてほしいの」
可憐「え?」
百合子「はい?」
638 :
監督
2021/11/22 19:35:14
ID:W1NROkfcyQ
雪歩「私1人が行く。琴葉ちゃんとふたりきりで話したいことがあるから。それにもしかしたら戦いになるかもしれない。そのとき……ふたりは足手まといになる」
可憐「そ、そんな……!」
百合子「可憐さんはともかく、私だったら、戦えます!ぶっちゃけ、琴葉さんと関係性薄いし!」
可憐「私だって!わりと口下手な雪歩ちゃん1人じゃ説得できなくても、私がいればなんとかなるかもしれません!ほら、琴葉さん、なぜか私のことを公式で『可憐さん』呼びだから……!」
雪歩「ふたりとも、ありがとう。でも……やっぱりここで待っていてほしいの」
百合子「どうしても、ですか」
雪歩「うん」
可憐「雪歩ちゃんのバカっ、ちんちくりん!エセポエマー! ぐすっ……うう……」
雪歩「………百合子、可憐ちゃんをお願いね」
百合子「白雪さん! 生きて、帰ってきてください。約束ですよ。私と可憐さんじゃ、『餞の鳥』を歌うのはハードル高いですからね」
雪歩「『隣に…』ってのも悪くないんじゃない?」
百合子「も、もうっ、こんなときまでそんな冗談言わないでくださいっ」
639 :
プロデューサーちゃん
2021/11/22 19:37:29
ID:W1NROkfcyQ
雪歩「ふふっ。今のうちにさ、打ち上げのときに用意する料理を考えておいてくれる?その魔導書使って」
百合子「はい!私たち、待っていますから。必ず無事でいてくださいね!」
可憐「うう……い、一度決めたらきかないんですから……ぐすっ、ぐす……」
雪歩「可憐ちゃん……」
可憐「ぐすっ……うええ……こ、これを!」
雪歩「え?これって……?」
可憐「勇気のfragranceです。お守り代わりに」
雪歩「ありがとう、胸ポケットに入れておくね」
百合子(生存フラグ!)
640 :
P君
2021/11/22 19:40:40
ID:W1NROkfcyQ
- 深奥部 聖域 -
琴葉「きたわね」
雪歩「ええ………。って、ほわぁっ!?なんか血まみれの人がいますぅ!!」
琴葉「気にしないで。生きてはいるわ。しばらくは動けないでしょうけどね」
あずさとの勝負を終えたばかりの琴葉が、そうとは知らない雪歩を迎える。
ぶつかる視線。数秒間の沈黙。雪歩が「ん、ん」と咳払いをする。
雪歩「琴葉ちゃん、それともハーヴェイと呼んだ方がいいのかな。……止まる気はない?」
琴葉「ないわ」キッパリ
雪歩「だよね」
琴葉「雪歩ちゃん。あなたこそ、心変わりしない?世界の半分をあげてもいいわよ?」
雪歩「魅力的な提案だけれども、遠慮しておくよ」
琴葉「そう、残念ね」
雪歩「お茶を一杯飲む時間はある?」
琴葉「本気?」
雪歩「もちろん。そのために準備してきたんだから」
641 :
兄ちゃん
2021/11/22 19:52:33
ID:W1NROkfcyQ
琴葉「そんな、今になって料理要素を……?何を考えているの?」
雪歩「メタネタはお腹いっぱいですぅ。いいから、飲んでみやがれですぅ!」
雪歩は魔法瓶と湯呑を取り出す。その魔法瓶は文字通り魔法がかけられている、クッキングデバイスの1つである。
魔法瓶から湯呑に注がれるお茶は淹れ立てそのもの。雪歩が屋敷から出る前に、この展開を予期していて淹れていたものであった。
あまりに無防備に近づき、湯呑を平然と渡してくる雪歩に、琴葉は警戒を忘れ、それを受け取る。
雪歩「熱いから気をつけて」
琴葉「………ええ」
雪歩「しじみ汁のほうがよかった?」
琴葉「いえ、そういう気分でもないもの」
琴葉「! この味は―――――」
つづく
642 :
プロヴァンスの風
2021/11/22 21:12:14
ID:zobv2JDfIY
おつです
ちなみに39の39乗を先生に聞いてみた
643 :
つづき
2021/11/28 10:55:15
ID:4QH8as7SdM
- 異界ライブラリ前 -
風花「ひ、ひえ~ん、弾切れになっちゃいました~」
ロコ「あんなにバンバン、ショットしていたら当然のリザルトです!」
アンナ「ロコ……?イマ、アンナッテ……ヨンデクレタ……?ロコ……ロコ」
昴「ちっ、オレも弾切れだ!まだたくさんいやがるぜ!」
真「しかたないね。ここから先は実力でねじ伏せるっ!紬!」
紬「そう大声を出さなくてもいいでしょう。紡げ―――さかしまの言葉」
チュパァァァァ!! チュパァ! チュパァ!
ロコ「な、なんですかあのアビリティは!?」
風花「チュパカブラたちが混乱している?す、すごいよ、紬ちゃん!これがネオカナザワの力!」
紬「風花さん、今のはもしかして金沢を馬鹿にしているのですか?」
真「で、でたぁー!紬のつむり!やーりぃ!これで勝つる!」
昴「なんでもいいから、戦ってくれ!やばいぞ、まだ増えやがる!」
ロコ「うー、こんなことならロコのインベンションの数々をもっとブリングしておけばよかったです~!」
644 :
ごしゅPさま
2021/11/28 10:58:04
ID:4QH8as7SdM
真「紬!他に必殺技もっていないの!?」
紬「ただのしがない商店街のパン屋に何を求めているんですか」
真「こっちだって、市場で働くただの看板娘なんだけど!」
風花「わ、私、単なるメイドなので」
昴「今更、身分や立場の確認はいい!次がくるぞ!」
ロコ「あわわわわわわ」
アンナ「!! ミンナ……アレヲミテ……!」
ドカァァァァァァンンッッッッ
真「な、なんだぁ!?まるで爆発でも起こったみたいじゃないか」
紬「まるで、ではありません。明らかに爆発……爆弾が投じられたんです!」
風花「きゃっ、爆風で私の清楚な水玉ワンピースがっ!」
ロコ「あそこにいるのは――――」
昴「遅かったじゃないか……」
ジュリア「待たせたな」ドジャァァァァ~~ン
645 :
Pさぁん
2021/11/28 11:00:52
ID:4QH8as7SdM
紬「誰ですか?なんとなくいっしょに戦った覚えがある方ですが」
真「え?ボクは敵対していた記憶が……」
ロコ「聞いたことがあります。ダイナマイター・ジュリアというレッドヘアーをしたボムのプロフェッショナルがいると」
風花「ジュリア……あっ!もしかしてあなたが麗花ちゃんが話してくれた、アクアリウスのひとりのジュリアちゃん?」
ジュリア「ああ。ほんとなら、サヨやレイに加勢するつもりだったんだけどな。あっちにはハンドレッドが回ったもんで、あたしがこっちにきたってことよ」
昴「話は後だ。ジュリア、お前の爆発はこんなもんじゃないだろ?」
ジュリア「ふっ、言ってくれるな。おい、チュパカブラども!うちらのライブ、目に焼きつけな!」
チュパァァァァァ!!!
ロコ「アートはエクスプロージョンなの!」
アンナ「ジップンゴ………」
ジュリア「『明けない夜はない』って、いい言葉だと思わないか?あのライブを思い出すよ。ひたすら走れば、いつかたどり着けるさ、ウチらの目指す場所に……そう思うだろ?」
風花「やったぁ!今の私、よく出来たと思いませんか?」
真「まっこまっこり~ん!」
紬「粗方、片付きましたね。あとは……萩原さんたちを信じるしかないようです」
昴「すっげー!」
ロコ「エンディングまでもう少しですよ!」
646 :
Pちゃま
2021/11/28 11:03:38
ID:4QH8as7SdM
- 聖域 -
琴葉「このお茶はいったい……?」ズズズ
雪歩「………」
琴葉「ありえない。これまで幾千どころか、幾万ものあらゆる食材を研究し、その知識と経験とを蓄積しているはずの私であっても、この味はわからないわ」
雪歩「美味しい?」
琴葉「……ええ、とてもね。種明かししてくれる?」
雪歩「私は今、複雑な気持ちだよ」
琴葉「どういうこと?」
雪歩「琴葉ちゃんがそのお茶を美味しいと言ってくれたのは嬉しいけれど、それほどまでに特別なふうに受け止められるとは思わなかったから」
琴葉「何がいいたいの?このお茶は、なんなん?早く教えなさいっ」
雪歩「そのお茶は――――現世のスーパーマーケットでもごく当たり前に売られている茶葉を使って私が淹れたお茶だよ」
琴葉「嘘だッ!!」
雪歩「なぜ?」
琴葉「なぜ、ですって……?だって、こんなにも美味しいなんてありえないわ、こんなにも私の心を――――はっ」
雪歩「やっと気づいた?」
647 :
P君
2021/11/28 11:06:16
ID:4QH8as7SdM
琴葉「そんな………でも………もしかして、ううん………」
雪歩「あなたの作った異界ではこんなことだって起きる。それをあなたは知っているよね。そのお茶をそこまで美味しくしている要素、まだ確信が持てないの? まだわからない?」
琴葉「っ!」
雪歩「心だよ!」
琴葉「けど……なぜなの?雪歩ちゃんが私に心を込めてお茶を淹れるなんて、そんなこと……ひょっとして一目ぼれ?!」
雪歩「ちがうよ!?」
琴葉「じゃあ、どうして」
雪歩「知ってほしかったんだよ、伝わってほしかった。こんなにも私が、いいえ、私たちがこの異界を愛しているってことを」
琴葉「……」
雪歩「かつてのあなたが……伝説的魔法使いが出来損ないだとしたこの世界、今では数えきれないぐらいの生きとし生けるものが暮らし、日々を過ごし、命を育んでいるここは素晴らしい世界だって」
琴葉「それでも―――今の異界では、私の野望は、理想は、夢は叶わない!」
雪歩「ねぇ、本当にあるの?」
琴葉「え?」
雪歩「本当に大きな野望や理想なんてあるの?私には………もっと単純で、素朴で、でも……叶えるには世界を歪ませないといけないような、そんな夢をあなたは、そう、あなた一人で抱えているように思えるんだ」
648 :
バカP
2021/11/28 11:08:26
ID:4QH8as7SdM
琴葉「まいったわね」
雪歩「琴葉ちゃん……」
琴葉「私の作りだしたこの異界を、大切に想うあなたの気持ち。それがこのお茶を飲んだ私に伝わって、そしてそれは同時に、私の心の底をあなたに覗かせる結果になったのかしらね」
雪歩「何か叶えたい夢があるの?」
琴葉「ええ。ありふれた話よ」
雪歩「聞かせてくれる?」
琴葉「聞いたら、あなたは私を止めずに、見過ごしてくれるかしら」
雪歩「ううん、残念だけどそれはないよ。私はあなたを止めるためにここにいる」
琴葉「ふっ―――揺るぎない信念、か。いいわ、あなたを永久の眠りにつかせる前に、教えておいてあげる」
雪歩「………」
琴葉「500年前の話になるわ。ハーヴェイとしての私がまだ、魔法使いとして有象無象の1人に過ぎなかった頃。1人の青年であった頃………私はとある女性と恋に落ちた。私たちは結ばれ、幸せな時間を紡いだ。そして……突然、私は彼女を失った。不条理にも、理不尽なやり方で、そうよっ!誰もが納得できない在り方で、世界は彼女を追放した!永遠の闇に」
雪歩「つまり、あなたが異界を作ろうとしているのは―――」
琴葉「彼女を、コレットを取り戻すため。それだけ、それがすべてだった。とはいえ、390年と少し前に今あるこの世界を作った際には、弟子たちにした説明は違ったけれどね。弟子たちがついてくるように、より大きな、ええ、大きすぎる理想を掲げたわ」
649 :
プロデューサーちゃん
2021/11/28 11:11:09
ID:4QH8as7SdM
雪歩「死者は生き返らない。それは絶対の理だって。師匠が教えてくれたよ」
琴葉「ふっ……その世界の理をも壊す。壊せるのよ。私の魔法とオトメティックパワーがあればね」
雪歩「異界の再構築―――そのことで失われる命はどうする気なの?それも取り戻せるの?」
琴葉「どうもしない。代償としてあるだけよ。私はね、自らを正義とするつもりはないわ。さっき言ったとおりよ。コレットを取り戻す、それがすべて。それを成すために、何もかもを利用してきた」
雪歩「でも迷いはある」
琴葉「………なんですって」
雪歩「じゃなきゃ、もっと強引な手段をずっと選んできたはずだから」
琴葉「違うわ。最初の頃は、ただの料理バトルドラマの設定だったってだけよ!!」
雪歩「くっ、それを言われたら言い返せないですぅ!」
琴葉「もう終わりにしましょう。気がつけばスレ立てから4カ月近くが経とうとしているもの」
そう言って、琴葉は魔法瓶を宙に投げた。そしてそれは落ちるより先に真っ二つとなった。
雪歩「なんて剣なの……あの刹那の間に鞘走るかよ!?」
琴葉「いくわよ。あなたのその揺るがない心ごと―――切り刻んであげるっ!」
雪歩「ここで倒れるわけにいかないのは私も一緒だよ!レーヴァテイン!唸れっ、神撃の焔よ!」
650 :
3流プロデューサー
2021/11/28 11:14:05
ID:4QH8as7SdM
手加減無用。雪歩は覚悟を決めて、その神炎の剣先スコップを振るう。
その炎は並の人間なら火傷どころかほんの何秒かで灰へと変えるようなものだ。
異界ライブラリ、その聖域は雪歩の心、つまりは異界への想いに応じ、そのスコップの潜在能力、創造主であるハーヴェイさえも知らない力を引き出していた。
しかし、それでも琴葉がまさにこうした状況、コレットとの再会を阻む者との対峙のために用意したミリシタニウム鉱石を精錬してできた剣―――ゴッドイーターはその神炎をも喰らう!
琴葉「ふふふ……このゴッドイーターはその名のとおり神さえ餌食とする」
雪歩「なんて化物じみた剣なの!」
琴葉「雪歩ちゃん、あなたにはアズールと違って短い時間しかなかったのに、よくもそこまで鍛えたものね。感動的だわ。でも、それもここで無意味となる」
雪歩「無意味なんかじゃない!たしかにゴッドイーターシリーズは無印・バーストで良くも悪くも完成されていて、2が主にシナリオ面で不評で、出さないといっていたはずのレイジバーストで少し持ち直したかと思いきや、3のあの出来はちょっと……って感じらしいけれど、思い出補正込みでなら、そこそこ面白いハンティングアクションゲームシリーズだよ!!」
琴葉「そんなこと聞いていないわよ!」
聖域が炎のリングと化す。
異界の創造主は転生してなお、その空間においては特別ということなのか、酸欠状態とは無縁なのは当然のこと、レーヴァテインの炎はまだ琴葉の髪の毛一本燃やせずにいる。
雪歩(なにか手はないの……あの剣術を避け続けるのは至難の業だよ)
雪歩は炎で作り出した分身で琴葉の攻撃対象からなんとか逃れながら戦っていた。
傍から見れば、場を支配しているのは火焔の担い手たる雪歩であるのに、実際には琴葉が優勢であった。
651 :
ご主人様
2021/11/28 11:16:57
ID:4QH8as7SdM
雪歩「っ!!」
琴葉の高速の太刀筋が激昂した雪歩を捉える。
琴葉「あの体勢から避けるなんて、すごいわ。でも、完全には避けきれなかった。ふふ……かすり傷、ではないようね」
雪歩「はぁ……はぁ……」
琴葉「時間をかけてなぶる趣味はないわ。もうそこから動かないほうがいいわよ。痛いのは嫌でしょう?次できめてあげる」
雪歩(お腹の皮の一枚、二枚なんて思っていたけど……。あの剣、想像以上。切り傷が、彼女の抱える悲哀と憤怒が私の全身を駆け巡るのを感じる。凄まじい呪い。う……立っているのがやっと。動きたくても、うまく動けないっ)
琴葉「モノローグは済んだ?炎の勢いもずいぶんと弱まったわね。さぁ、終幕よ!」
雪歩(避けきれない―――それならっ!)
雪歩「迎え撃つ!」
聖域内の炎が収縮する、すべては雪歩が握り直したスコップ、レーヴァテインへと返る。
逃げ場がないのなら、迎え撃つしかあるまい。たとえ刺し違えようとも――――!
652 :
そなた
2021/11/28 11:19:42
ID:4QH8as7SdM
琴葉「ねぇ、雪歩ちゃん。私はそんなにおかしいかしら?」
雪歩「何が言いたいの」
琴葉「あなただって、可憐さんや春香ちゃん、百合子ちゃんが理不尽な死を遂げたら、同じように生き返らせようとするんじゃない?」
雪歩「嫌な想像させないで」
琴葉「でも誰にでも起こり得ることよ。そしてもし、あなたが大切な人ともう一度会える方法を知ってしまったら?たとえどんな犠牲を払ってでもあなたは進むんじゃないかしら」
雪歩「…………」
琴葉「仮定に過ぎないとまだ思っている?それなら……そうね、あなたをここで半殺しにして、さっきあげた3人の首をもってきましょうか」
雪歩「なっ……」
琴葉「そうしたら、私に協力する気になるかもね。うん、それがいい」
雪歩「そんなことさせないっ!さっさと来やがれですぅ!こっちも最高の技をお見舞いしてやりますぅ!」
653 :
プロデューサー君
2021/11/28 11:22:14
ID:4QH8as7SdM
雪歩「ラグナロク!」
ここにきていきなり名前ありの技を雪歩が披露するっ!
スコップの先端、その一点に集まった焔が収縮を越える速度で爆発し、琴葉を襲う。無論、雪歩も無事では済まない。
対して琴葉は一瞬で距離を詰めてゴッドイーターを振る――――えない!?
琴葉「!」
剣を握る手が突然痺れ、琴葉は剣を床に落としてしまう。それが光速の雷撃によるものだと、聖域の隅で倒れていたはずの愛弟子が放ったものであると理解したときは遅かった。
あずさ「ふふ、暑くて目が覚めちゃったわ」
その女神のはにかみを雪歩も琴葉も見ることはかなわない。2人は神炎の爆風に包まれた!
あずさ「雪歩ちゃん―――!」
雪歩「けほっ、けほっ。うう~、熱いですぅ」
靄が晴れて、その場に立っていたのは雪歩だった。手にはレーヴァテインの姿がない。
あずさは爆風によって琴葉が吹き飛んであろう方向を見やった。
聖域の壁。そこに黒い影が磔となっていた。スコップがその影に突き刺さっている。
654 :
監督
2021/11/28 11:24:54
ID:4QH8as7SdM
黒い影―――ラグナロクをその身に受けた琴葉の体が灰になることなく、壁に貼りついているのだった。
雪歩「やった……んだよね?」
あずさ「ええ。あなたの炎が、信念がハーヴェイを燃やしたのよ」
雪歩「えっと、ところであなたは……?」
あずさ「え?ああ、そうね、面識がなかったわね。私こそ、ハーヴェイの弟子の1人にして、かつて彼の計画を邪魔した張本人、春香ちゃんに道を示した、占星術師アズール・ミューラー。あずさって呼んで!」ドタフ~゚ン
雪歩「か、肩書多いですね。あ……レーヴァテインを回収しないと」
あずさ「そんなことよりも、傷の手当が先だわ」
雪歩「いえ、それより、」
「くっくっくっく……ふーーはっはっはっはっは!!」
聖域内にあたかも小悪党の笑い声が響いた。
655 :
ボス
2021/11/28 11:27:07
ID:4QH8as7SdM
雪歩・あずさ「!?」
2人が声をした方向を見ると、そこにあったのは、やはり黒い影。
が、完全に動きを失くしたはずのそれが、動いている!!
雪歩「嘘……でしょ?」
あずさ「不死身だというの!?」
黒い少女の影は、自らを貫いていたスコップを引き抜く。
そして、そのスコップをへし折った!
雪歩「ああ!レーヴァテインが!」
琴葉「くっくっく、まさかこの我をここまで追いつめるとはな」
あずさ「ハーヴェイ……!」
琴葉「言っておくが、この黒影の姿は貴様の炎によるものではない。我の最終手段が自動で発動されたのだ」
雪歩「なん……だと」
琴葉「アズール……貴様らのせいで、転生に遅延した我はこの世界に生を受けた時、このような影だったのだ。ヒトではなかったのだ。先ほどまでの姿……我の記憶に残るコレットの姿を得るまでに、多くの時間を費やしたよ。これも一種の受肉というものだ」
656 :
Pたん
2021/11/28 11:29:32
ID:4QH8as7SdM
雪歩「愛しい人の姿をあなた自身がとっていたなんて……再会できたらどうするつもりだったの」
琴葉「戯言を。再構築された世界であれば、我の姿なぞいくらでも好きなように作り変えられる」
あずさ「便利な世界ね。反吐が出るわ」
琴葉「くっくっく……遺言はそれでいいか?さあ、今度こそ幕引きだ。見せてやろう、これがホントウノワタシだっ!!」
黒影が一歩、また一歩、近づいてくる。その手にはラグナロクをもってしても溶けきることのなかった半壊したゴッドイーターが握られている。
雪歩「あずささん、離れてください」
あずさ「ええ!?」
琴葉「間抜けが……魔女1人逃がそうとでもいうのか?それとも抵抗する気なのか。いや、無理な話だ。貴様は武器を失った」
雪歩「あずささん、お願いします」
あずさ「……策があるのね?」
雪歩「はい」
琴葉「存外、嘘つきなものだな、力無き少女よ。いいか、貴様のせいで我は異界の再構築の儀式に必要な清廉なる少女の躰を失ったのだ。またゼロからはじめなければならないのだぞ?」
657 :
5流プロデューサー
2021/11/28 11:32:44
ID:4QH8as7SdM
雪歩「まだ諦めていないの?」
琴葉「ああ、計画を練り直すのだ。その一歩目が貴様らを冥府に送り込むことだっ!」
雪歩「結局、最後までオトメティックパワーってのはよくわからなかったわ。でも、もういい。ここであなたを討つために、私もこの魂を賭ける!」
琴葉「大口をたたくな!レーヴァテインを失った貴様なんぞ微塵も恐怖になりえん! この異界であってもあれほどの炎を操る能力は稀有であるが、しかしここで絶やさねばならぬ!」
雪歩「私に炎を操る能力なんてない。あれはすべてレーヴァテインによるものだよ」
琴葉「………なに?では、貴様は能無しだったのか、傑作だな!ふーっはっはっは…………ん?なんだ、これは………」
あずさ「――――――冷気?」
雪歩「あずささん、もっと離れてください」
あずさ「雪歩ちゃん、いったい何を……」
琴葉「なんだこの冷気は……貴様、説明しろっ!」
雪歩「ふふっ。冥土の土産に話してあげる。ねぇ、どうして私が異界でレーヴァテインを持ち続けていたと思う?」
琴葉「!! ま、まさか………」
あずさ(察しがいいのね)
658 :
あなた様
2021/11/28 11:35:07
ID:4QH8as7SdM
雪歩「師匠と可憐ちゃんが家から出ていって、そばに春香がいたといっても、私の心はすぐには安定しなかった。不安定な心のまま、行き場のない、誰にぶつけたらいいかわからない想いばかりが育った。そして……ある時、花を咲かせた。それがこの能力」
琴葉「やめろ……この冷気………貴様自身さえも、凍てつくぞ」
あずさ「! だから、レーヴァテインを……?」
雪歩「はい。この能力がいつ暴走するかわからなくなった私は、宝物庫からレーヴァテインを取り出し、鍛錬を始めた。春香を抱き枕にして眠る回数も減らした」
あずさ「すべてのものを凍てつかせるほどの凍結能力……それはかつてのハーヴェイだって形にできなかったものよ」
琴葉「黙れっ! 萩原雪歩……考え直せ、それ以上は貴様自身をも滅ぼす、もう、やめるんだ」
雪歩「怖いんだね」
琴葉「なにぃ!!?」
雪歩「死を恐れているんだよね。大丈夫、私もだよ。みんな、そうなんだ。ハーヴェイ、あなたの敗因はその恐怖を忘れ、過去にしがみつき、世界の再構築を目指しながらも結局のところ一歩も前に進もうとしなかった、その脆弱な精神だよ。でも、責めはしない。あなたは……どこまでも普通の人間だった。ただ、少しだけ力を得ることができて、多くを知っていただけ」
琴葉「やめろ……やめるんだ……アズール!なぜ止めない!そいつは……そいつは我ごと自分自身を凍らせるつもりなんだぞ!?」
あずさ「雪歩ちゃん……私が失敗していなければ、今、ここでハーヴェイを討てるだけの力が残っていれば……」
659 :
Pちゃん
2021/11/28 11:38:26
ID:4QH8as7SdM
雪歩「あずささん、調整ミスって、凍らせたらごめんなさい」
あずさ「!? あ、うん。そうよね……まあ、それもしかたないわ。思い切ってやりなさい。すべてをここで断ち切るために」
琴葉「い、嫌だ……こんなところで終われるか……に、逃げないと……」
近づいていた琴葉が足を止め、そして引き返す。が、そこには壁しかない。聖域の唯一の出入り口は雪歩たちの後ろにあるのだから。
ハーヴェイは絶望した。終わりが近い。
ついに雪歩が歩みを始める。ゆっくりと、しかし迷いなく琴葉へと向かって。一歩、また一歩、踏み出していく。
雪歩「冥府の氷海、嘆きの氷河よ、我が魂、熱き血潮に応え、かの者を永久に凍てつかせろ―――――」
琴葉「馬鹿な……ありえない、こんなところで、こんなところでぇぇぇええええ!!!!!!!!」
黒影は身を翻し、少女を襲った。
しかし、少女は動じず、その影に優しく手をかざす。
雪歩「コキュートス」
世界が凍てついた。
660 :
プロデューサーちゃん
2021/11/28 11:40:54
ID:4QH8as7SdM
つづきは早ければ今夜 最終安価はそこで
エピローグは12月入るかもです
661 :
つづき
2021/11/28 18:41:38
ID:4QH8as7SdM
- 聖域 -
氷漬けとなった黒影はやがて音を立て、崩壊した。
それはおおよそ500年前に始まった、伝説的魔法使い兼料理研究家ハーヴェイの謀が終焉したことも意味するのだった。
聖域の明かりがバラバラの氷塊を照らし、それら一つ一つが宝石のように輝いていた。
あずさ「師匠………貴方が向こう側で最愛の人と再会できていることを切に願います」
雪歩「っ―――」フラッ
あずさ「雪歩ちゃん!」
倒れ込む雪歩をあずさが抱え込む。いや、抱え込もうとしたものの、思わず手を離してしまう。
雪歩の身体があまりにも冷たかったからだ。
雪歩「あずささん……離れていてください。まだ……私の冷気の放出は終わっていないみたいですから……」
あずさ「そ、そう。雪歩ちゃん、お疲れ様。あなたのおかげでこの異界は失われることなく……雪歩ちゃん?」
雪歩「……すみません、やっぱり、うん……無理そうですぅ」
あずさ「!! 雪歩ちゃん、目を開けて! そんな、冗談でしょう!? こんな結末、ダメよ!しっかりしなさいっ」
その身を凍てつかせていく雪歩をあずさは抱える。どんなに冷たくとも今度は離さない。
あずさ「雪歩ちゃん!眠ってはダメ!その眠りは永遠のものよ!お願い、目を覚まして!」
662 :
プロヴァンスの風
2021/11/28 18:44:22
ID:4QH8as7SdM
雪歩「これを……これを、開けてもらえますか?」
あずさ「この小瓶は?フレグランス?……ううん、わかったわ。開けるわ。だから、まだ眠ってはダメよ」
可憐から託された『勇気のfragrance』をあずさは開ける。
漂う香りに、あずさは恍惚としてしまい、一瞬、雪歩のことを忘れさえした。
意識の揺蕩う雪歩もまた、その香りに溺れる。思い起こされるのは最愛の妹たち。それに師匠の綺麗な銀髪。いつか4人で眺めた、闇夜に浮かぶ月。その淡い光……。
ああ、これって走馬灯?と雪歩は思う。つい笑ってしまった。虚しく。悪くない最期かなと。
そうして瞼の重さに耐えられなくなった。
あずさ「雪歩ちゃんっ!? 嘘……嘘よ、そんなの、嘘でしょう!!」
雪歩の身体を懸命に揺り動かすあずさ。その腕ごとかじかんでいる。目を閉じた雪歩は返事をしない。
あずさは彼女に比べればいくらかつつましやかな雪歩の胸部に耳をぴったりとつけ、心音をどうにか聞こうとする。
冷たさが痛みとなってあずさを襲う。そのなかで、あずさは確かに耳にした。
あずさ「! まだ、まだよっ!雪歩ちゃんは生きているわ……!でも、どうすれば―――」
占星術師はまず天井を見上げる。そこに星々はなく、何も彼女を導きはしない。そして彼女はあたりを見回す。
すると………
663 :
プロデューサー
2021/11/28 18:46:13
ID:4QH8as7SdM
あずさ「あなたたち――――!」
可憐「?! ゆ、雪歩ちゃん!? ど、どうしたんですか、この状況はいったい……?」
百合子「音が止んだので、入ってみましたが……うう、さ、寒いですねここ。冷房が効いているんですか……って、白雪さん?!」
あずさ「あのね、ふたりとも落ち着いて聞いて」
慌てふため始めた2人にあずさは事の成り行きを説明する。
百合子「そんな!『勇気のfragrance』、あれは生存フラグだったんじゃ」
可憐「あ、あれは私が雪歩ちゃんのことを一途に想って調合しただけの……言ってしまえばただのフレグランスだから」
あずさ「待って。たった今、すべてが繋がったわ」
可憐・百合子「え?」
あずさ「そういうことだったのね…………ずっとわからなかった、気がかりだったけれど、それが大きな変化を与えはしないと高を括っていたわ」
可憐「え、えっと?」
百合子「なんのことですか。そんなことより、白雪さんを!」
あずさ「百合子ちゃん」
百合子「はい?」
664 :
箱デューサー
2021/11/28 18:48:08
ID:4QH8as7SdM
あずさ「あなたは本来、ここにいないはずの存在なの」
可憐「え……」
あずさ「私は春香、じゃなくて遥か昔からこのときを、ハーヴェイの計画を打ち破る時を予知していたわ。と言っても、全部まるっとお見通しだったわけではないけれどね。事実、私はミョルニルの力を借りても1人ではあの人を討てはしなかった。とにかく、私はハーヴェイに立ち向かう私以外の存在、そう、雪歩ちゃんたちのことをなんとなくだけれど知っていたの」
可憐「そ、それがどうしたっていうんですか……。もしかして、雪歩ちゃんがこうなることも!?」
あずさ「違うわ。そうなの、違うのよ。雪歩ちゃんはこんなところで命の灯を消してしまう存在ではないの」
百合子「あのー、それで私が本来存在しないはずってのは……」
あずさ「そのままの意味よ。私の占星術をもってしてなお、七尾百合子、あなたの存在は予見できなかった。不完全な未来予知につきものの、ちょっとしたイレギュラーかと思っていたけれど、でも、そうじゃない。やっとわかったの」
可憐「わかったって、なにが……」
あずさ「百合子ちゃん。あなたが雪歩ちゃんを救うのよ」
百合子・可憐「!!」
あずさ「正確にはその本、ハーヴェイであっても解明し得なかったその魔導書と契約を結んでいるあなたが、雪歩ちゃんの目を覚ます料理を閃くの」
665 :
おにいちゃん
2021/11/28 18:50:45
ID:4QH8as7SdM
百合子「な、なんだってー!そんな、まるで私がメインヒロインみたいじゃないですか!」
あずさ「思い出して。百合子ちゃん、よく、よーく、思い出すの。本気で雪歩ちゃんを救いたいなら、思い出す必要がある。あなたがその本と契約した時のことを」
可憐「ゆ、百合子ちゃん、絶対思い出してください!さもないと、私、私は……こ、ここで穴を掘って埋めてやりますから!」
百合子「待って、待ってください!そんないきなり……」
春香「できるよ、百合子なら」
可憐・百合子「春香さん!?」
春香「いやぁ、さすがにまだ目がぐるぐるしているしている感じ。よいしょっと」
可憐「それに海美ちゃんも……気絶しているみたいですね」
春香「うん。あー、一生分、転んじゃった。もう転ばないかもね、なんて」
百合子「春香さん……私、えっと」
春香「『何度も言えるよ』……って、これは雪歩の名曲か。あのね、百合子ちゃんならできるよ。うん、何度だって言える」
百合子「ど、どうしてそこまで」
666 :
プロデューサー
2021/11/28 18:52:52
ID:4QH8as7SdM
春香「簡単だよ。だって、私たちの妹だもん」ドンッ
百合子「へ?」
可憐「ほ、他に根拠は?」
春香「いらないでしょ。百合子ちゃん、私たちと過ごした時間は偽物だった?ううん、全部、本物だよ。血が繋がらずとも、私たちはあの家で、いっしょに過ごした家族だよ。私、わかるんだ。異界は、とりわけこの場所は想いに応えてくれるって。そう信じられる」
あずさ「ん、ん。百合子ちゃん、不安は捨てなさい。信じるの。私たちが信じるあなたをあなた自身が何よりも信じて」
可憐「お願いします、百合子ちゃん……!」
百合子「―――――わかりました。だっ…大丈夫です。いきます!」
最後にいつ登場させたかも覚えていない魔導書を百合子は取り出し、開いた。そして精神を集中させる。
思い出す。遡っていく。この世界でのこれまでの日々を。かけがえのない日常を。
濃密な39秒の後、百合子の目がカッと開いた!
百合子「思い……出した!」
667 :
プロデューサーさん
2021/11/28 18:55:17
ID:4QH8as7SdM
春香「やった!」
可憐「そ、それでどんなことを思い出したんですか」
あずさ「教えてくれる?」
百合子「―――――歌です」
春香「歌?」
百合子「はい。あの日、私はあの不思議な図書館で、歌声を聞いたんです。そしてその声が聞こえるほうへと進んでいった」
可憐「その歌が……百合子ちゃんを、み、導いたってこと?」
百合子「そうだと思います。それで……歌声の主に私は出会った」
あずさ「ねぇ、百合子ちゃん。ひょっとしてその主は、女の子?」
百合子「はい」
あずさ「!! も、もしかして、蒼くなかった?」
春香「え?」
可憐「それってどういう……」
668 :
プロデューサーちゃん
2021/11/28 18:57:25
ID:4QH8as7SdM
百合子「そうなんです。私、直感しました。あ、この人、蒼いなって。スレンダー系の美人でした」
あずさ「そう、そういうことだったのね」
春香「あずささん!?なんで急に涙を……!?」
あずさ「ふふ……千早ちゃん、いなくなっちゃったと思ったら、あの子なりにハーヴェイの計画を止めようとしていたのね。因果律さえも捻じ曲げて」
百合子「その人は言いました。『ごめんなさい、七尾百合子さん。でも、これしか方法がないの』と。何度も私に謝ってきたんです。私は何がどういうことなのかさっぱりで。でも、その人は本当に悲しそうな顔をしていました。だから、私、『大丈夫です。私は風の戦士ですから』って」
春香「うわぁ」
百合子「春香さん!?そこは『すげぇよ百合子は。強くて、クールで度胸もある』みたいに褒めてくださいよ!」
可憐「続けて」
百合子「あ、はい。それで、その人が私に差し出したんです。この、魔導書を。これと契約して救ってほしい世界が、そして人がいるんだって」
あずさ「なるほどね。そうしてあなたはこの世界へとその魔導書と共に転移してきた。救世の宿命をその身に委ねられて」
春香「でも、記憶は混濁してしまったと。契約、あるいは転移の代償に」
669 :
EL変態
2021/11/28 18:59:37
ID:4QH8as7SdM
可憐「元いた世界からの実質上の追放を受けて、百合子ちゃんはこの世界に来てくれたんだね。私たちを救うために」
あずさ「百合子ちゃん。真なる契約を思い出したあなたであれば、今の状態にある雪歩ちゃんの目を覚ます料理がわかるはずよ」
春香「魂まで冷え切った雪歩を温める料理、か」
可憐「その魔導書の力、きっと今の百合子ちゃんなら充分に引き出せます……!」
あずさ「こんな悲しい結末を覆すのよ、百合子ちゃん」
春香「もちろん、1人でぜんぶさせないよ。私たちも協力する。他ならぬお姉ちゃんのことだもんね」
可憐「はい!私たち妹3人で雪歩ちゃんを救う……ある意味、最強です!」
あずさ「あなたたちには『たしかな足跡』がある。できるわ、あなたたちなら。どうか乙女の力の加護があらんことを」
春香「さぁ、百合子ちゃん!閃いて!」
可憐「雪歩ちゃんを救う料理を!」
百合子「はいっ!それは―――――」
670 :
兄(C)
2021/11/28 19:03:56
ID:4QH8as7SdM
最終安価
黒影を打ち破るため、能力の代償により魂を凍らせてしまった雪歩
彼女を目覚めさせる異界料理とは?
期限は11/29 23:59:59まで
(安価がつかなくても)早ければ11/30の早朝か夜に続きを投下する予定
671 :
プロデューサー
2021/11/28 19:30:31
ID:UCpbQBbvfc
ここで一話で作ったタコスをドーン!!
672 :
レスありがとうございます!!
2021/12/01 05:47:04
ID:6aoFVxyiCo
可憐「タ、タコス!?」
百合子「ええ、このドラマが始まって最初にみんなで作った料理なんですっ!」
春香「相変わらずメタ!っていうか、あの時もほとんど雪歩が作っていた気もするけどね」
あずさ「それを今回はあなたたち3人でつくるってことね」
百合子「はいっ。春香さん、可憐さん、材料と調理器具をここに!」
可憐「え?こんなところにそんな設備、ないですよね……?」
春香「材料ならあるよ!ほら、すっかり忘れていたけど、琴葉ちゃんが異界再構築魔法のために集めた貴重な食材たちが!」
あずさ「折り畳みキッチン~♪」
可憐「!? あずささんがポケットから取り出した、折りたたまれた紙を広げると立派なキッチンが!?」
春香「わぁ!ドラ○もんの秘密道具みたい!」
百合子「さすが空間魔法の使い手ですね」
可憐「よ、よし、はじめましょう……!」
673 :
ボス
2021/12/01 05:49:24
ID:6aoFVxyiCo
百合子「まずはチリコンカンをつくります」
春香「牛豚の合いびき肉に豆、トマト、その他の野菜と香辛料をスパイシーに煮込んだ料理だね」
可憐「テクス・メクス料理の1つらしいですね。メキシコ風のアメリカ料理だって」
あずさ「煮込み終わったものがこちらです」
春香「おおっ!まるで料理番組!」
百合子「そしてこれにチーズをのせてオーブンに!」
可憐「オーブンでチ、チーズが溶けるまで充分に加熱したものがこちらです……!」
春香「出来上がったものに、トルティーヤ・チップスを添える!むしろこのトルティーヤ・チップスをメインといってもいいんだけどね」
百合子「チリコンカンはトッピングの1つですもんね」
あずさ「まあ!たった1レスで完成したのね!」
可憐「こ、これを雪歩ちゃんに……!」
百合子「あれ?でもどうやって食べさせたらいいんでしょう」
あずさ「眠っているものね」
674 :
Pたん
2021/12/01 05:52:00
ID:6aoFVxyiCo
春香「ここはあれじゃない?もの○け姫で、サンがアシタカに干し肉を食べさせたときを倣って……」
百合子「口移しってことですか」
あずさ「やむなしね」
春香「ここは雪歩と付き合いが長い私がするしかないかな」
百合子「いえ、この料理は私に責任があるわけだし、なんだかんだこのドラマのメインを担う私が!」
あずさ「料理をみんなで作ってくれたのだし、食べさせるのは私がやるわ」
可憐「あ、あの……私も役に立ちたいです…!」
春香・百合子・あずさ「どうぞ、どうぞ」
可憐「ええっ!?」
あずさ「――――というわけで、(雪歩ちゃんと)スタッフさんから『ふつうに食べさせて』と指示があったので、ふつうに食べさせるわね」
675 :
P殿
2021/12/01 05:54:06
ID:6aoFVxyiCo
可憐「ふー、ふー。雪歩ちゃん、あ、あーん」
春香「眠っているから、それはどうなんだろう……」
百合子(あ、空気を読んで雪歩さんが口を開いてくれた)
雪歩「…………」モグモグホ
春香「けっこうあるから、私たちも食べていいよね」
百合子「そうですね」
可憐「大事なシーンなので、き、緊張感出していきましょう……!?」
あずさ「!! 雪歩ちゃんが何か言っているわ」
春香「えっ!?」
雪歩「…………じゃん」
百合子「ん?じゃん?」
雪歩「これ…………じゃん」
可憐「これじゃん?」
676 :
Pさん
2021/12/01 05:56:40
ID:6aoFVxyiCo
雪歩「だから………これは………じゃん」
春香「あっ」
雪歩「だから、これはナチョスじゃぁあああああん!!!!!!」
春香・百合子・可憐・あずさ「!???!?!??!」
雪歩「包めよ!挟めよ!もっと手軽に食べられるようにさぁ!本場の様式とかいらないんだよ!日本でタコスいうたら、キッチンカーで販売されているようなクレープ感覚で食べられるような感じやろがい!今日日、コンビニでも買えるんだよ!?そのうちタコパがタコスパーティーの略称として流行る可能性も微粒子レベルに存在するの!肉、生野菜、チーズ、それらをトルティーヤに挟んでさぁ!揚げたチップスにしたら、それはやっぱりナチョスじゃん!!!!」
677 :
5流プロデューサー
2021/12/01 05:59:22
ID:6aoFVxyiCo
可憐「雪歩ちゃん!よかった、目が覚めたんですね」ギューッ
百合子「わ、私もっ」ギューッ
春香「私の抱き着くところがない!あずささん!」ギューッ
あずさ「あらあら~」
雪歩「ん……ここは……て、天国ですかぁ!?」
可憐「うう……ぐすっ……よかった、よかった……!」
百合子「すごく香ばしい空気が漂う中でのクライマックスですけど、感動です!」
春香「かくして、魂を凍りつかせた雪歩を、温かな料理で溶かした春香たち。それから仲睦まじく末永く暮らしたそうな。めでたし、めでたし」
あずさ「もうちょっとだけ続くわよ」
百合子「!! 気絶して、そこに放置していたはずの海美さんがいないですよ!」
可憐「えっ」
春香「待って、よく見たら、バラバラに崩れた氷塊(琴葉)の一番大きなやつが消えているよ!」
あずさ「ということは………海美ちゃんが?」
678 :
Pチャン
2021/12/01 06:01:33
ID:6aoFVxyiCo
百合子「ど、どどどどどうしましょう」
雪歩「どうもできないよ」
あずさ「雪歩ちゃんのぜったいれいどを受けているから、あれを溶かすことなんてそうそうできないだろうし、そもそもの話、砕け散っているから、あれはもう琴葉ちゃんとも言い難いのだけれど……」
春香(そんな技名だっけ)
可憐「でも、海美ちゃんなら琴葉さんを治す方法を見つけるかも……」
雪歩「そのときは………もし、仮に海美ちゃんが再び私たちの前に敵として立ちはだかることがあれば、何度だって打ち破るだけだよ。ううん、それよりも美味しいものを食べさせて仲間にしたいかも。うん、それがいいよ」
春香「雪歩……」
雪歩「この戦いで、私たちは大切な妹を1人を取り戻し、1人、失ったのかもしれないね」
可憐「雪歩ちゃん、こんな大事なシーンなのに、く、口許にナチョスのかすがついていますよ……」ペロッ
雪歩「ひゃぁっ///」
春香「犬じゃないんだから、普通にとってあげなよ。見ているこっちが恥ずかしいよ」
百合子「まったくです!」
あずさ「美しい姉妹愛ね。ふふっ、アズール・ミューラーはクールに去るわ。私もようやく肩の荷が下りたのだから―――」
679 :
P様
2021/12/01 06:03:59
ID:6aoFVxyiCo
Recipe Epilogue
聖域での決戦から2週間――――。
かつてハーヴェイが出来損ないだとみなした異界は、今日も数えきれないぐらいの多くの命を育み続けている。
そんな異界と現世、その境界部に位置する、とある料理店。
そこに美少女四姉妹が暮らしているという……。
- YUKIHO'Sキッチン -
やよい「うっうー!もう出番ないかと思っていましたぁー!」
春香「そ、そんなわけないじゃん。元はと言えば、やよいが『HOTDOGS』が動き出したっていう情報を持ってきてくれたのがはじまりだったんだから」
雪歩「うん。お店が臨時休業中も、店の前を掃除していてくれたみたいだし、やよいちゃんには感謝しないと」ナデナデ
やよい「頭を撫でられるのもいいけど、誠意は形にしてほしいかなーって」
雪歩「アッ、ハイ」
百合子「じゃあ、料理ですね!私とこの魔導書のリンクがさらに深まって、今だったらどんな料理のレシピだって引き出せる気がします!」
可憐「料理の腕は、ま、まだまだこれからだけどね……♪」
百合子「可憐さん?! それはそれ、これはこれですよ~!」
680 :
プロデューサーさま
2021/12/01 06:06:39
ID:6aoFVxyiCo
春香「ん、呼び鈴だ。お客さんかな。新しい悩める乙女?」
雪歩「ううん、この高貴な、でもどこか懐かしく、親しみやすい気配はきっと……」
可憐「くんくん……この香りって」
百合子「迎えにいってきますね!」
春香「あっ、待って、私もいくよ」
千鶴「久しぶりですわね。雪歩ちゃん、春香、可憐、やよい、それに……えっと」
百合子「は、初めまして、にゃなお、ぷりこれす!」
千鶴「ニャニャオプリコレスさん?珍しいお名前ですわね。こちらの出身ではないのかしら」
雪歩「緊張しすぎでしょ?!」
春香「千鶴さんったら、セレブにさらに磨きがかかって、初対面の人だとしかたないかもね」
可憐「ご、ご無沙汰しております」
681 :
魔法使いさん
2021/12/01 06:09:13
ID:6aoFVxyiCo
千鶴「雪歩ちゃん、看板が『YUKIHO'Sキッチン』になっておりましたが、貴音は……?」
雪歩・春香・百合子・可憐「!!!!」
やよい「へっ?貴音さんだったら一年近く前に出て行きましたよ。そうですよね?」
雪歩「えっと、話せば長くなるんですけど……」
千鶴「………いえ、そんな気はしておりましたの」
春香「え?」
千鶴「これを」
可憐「封筒……て、手紙?」
百合子「誰からの……?」
千鶴「貴音ですわ。私が海外に行く前、託されましたの。『この封筒は魔法の封筒です。開くべきときにひとりでに開くのです』と。先日、そうですわね、2週間前ほどに封が切られていることに気がつきましたわ。それで休みをとって、こちらに参りましたの」
雪歩「それで中身は……」
千鶴「手紙が2通。1通はわたくしに。そしてもう1通はあなたたちにですわ」
春香「師匠が私たちに残した手紙、か」
可憐「したためたのは、1年前ってことですよね」
682 :
プロデューサーさま
2021/12/01 06:11:31
ID:6aoFVxyiCo
千鶴「ですが、私宛の手紙だけを読んでも、貴音は今現在の状況を予見していたようですわね」
百合子「それって……」
やよい「ああっ!タイムセールの時間なんで、私、しつれいしまーす!!」ドヒューン!
雪歩たちは千鶴から手紙を受け取り、皆で読むことにした。
『この手紙が読まれているということは、私は既にあなたたちとは世界を別にし、その場にいないのでしょう』
雪歩「師匠さん……」
春香「無理に『四条さん』とかけなくていいよ!?」
『そしてこの手紙が雪歩、春香、可憐、あなたたちが呼んでくれているのであれば、無事にハーヴェイの計画を阻止できたことを意味しているのでしょう』
百合子「あずささんさえ予知できなかった私の名前がないのはしかたないですけど、海美さんの名前がないってことは、つまり……」
雪歩「あの日のこと、海美ちゃんがピンクのユニコーンによってオトメティックパワーを暴発させそうになった時点で、師匠はハーヴェイの存在、つまり転生した琴葉ちゃんの動きを多少は掴んでいたってことなのかな」
683 :
P殿
2021/12/01 06:14:09
ID:6aoFVxyiCo
春香「そして海美ちゃんとのただならぬ関係も?だったら、はじめから……ううん、師匠だったらすべてを知ったうえでなお、海美ちゃんをこの家に迎え入れるだろうね」
可憐「ええ、師匠ならそうすると思います」
『頑張りましたね。3人とも。あなたたち3人は私にとって何にも代えがたい宝です。これまでもこれからもずっと一番の誇りです。実の娘だと思って共に暮らしておりました』
雪歩「……ぐすっ」
春香「な、泣かないでよ。こっちまで泣けてきちゃうから……」
可憐「うう……」
百合子(こんなときどんな顔していればいいんだろう)
『それはそうと、知らせておきたいことがあります』
雪歩「?」
『2021年11月30日15時よりミリオンライブシアターデイズ内ではセカンドヘアスタイルガチャが開催されております。今回の対象は、なんと、私、四条貴音と松田亜利沙が務めさせていただいております。ふふっ、皆様に普段お目にかけぬような髪型に今回はちゃれんじしておりますゆえ、ぜひ引けるまで引いてくださいませ。しかも、はーふあにばーさりーを記念して、1日1回無料プラチナガチャキャンペーンも開催中なのですよ♪同時に実装されました野々原茜のぱじゃまも、真、可愛らしいものですね。では、みなさん、めりーくりすます』
百合子「宣伝だぁあーーーーーっ!!!!」
684 :
P君
2021/12/01 06:16:33
ID:6aoFVxyiCo
千鶴「さすがは貴音、こんなときまでミリシタのことを考えているなんて、その心意気見習わなくてはいけませんね」
可憐「そ、そうですね」
春香「そうかなぁ?!」
雪歩「ん、ん。ところで、千鶴さん。そろそろ、そちらの可愛い女の子を紹介してくれますか?」
百合子「わっ、ずっと千鶴さんの影に隠れていたから気づきませんでした。って、ほんとにかわいい!!SHSですよね」
可憐「もともとの髪型も可愛いですけど、こっちだといつもより幼さが強調される雰囲気ですね」
千鶴「では………こほん。さぁ、お姉ちゃんたちにご挨拶しなさい―――――桃子ちゃん」
桃子「…………」
春香「あー、あれか、人見知り設定なんだ」
雪歩「設定とか言わない!」ムニーッ
百合子「なんへ、わはひ~」
桃子「ぷっ……くすくす」
可憐(桃子ちゃん、笑っている!雪歩ちゃん、まさか桃子ちゃんの緊張を和らげるためにわざと百合子ちゃんの頬を!?)
春香(雪歩、そこまで考えていないと思うよ)
685 :
プロデューサークン
2021/12/01 06:19:00
ID:6aoFVxyiCo
桃子「桃子は………桃子だよ」モモーン
雪歩「もじもじしている演技の桃子ちゃんも可愛いですぅ!(そう。はじめまして、桃子ちゃん。私は雪歩)」
春香「逆!逆になっているよ、雪歩!」
百合子「あはは……」
可憐「あの、桃子ちゃんと千鶴さんはどんな関係なんですか?………娘さん?」
雪歩「そっか。設定といえば、千鶴さんって私たちが幼い頃から勉強教えてくれているわけだから、ドラマ中だと30過ぎぐらいなんだ。娘さんがいてもおかしくないんだね」
百合子「三十路過ぎの千鶴さん………妄想が捗りますね!」
千鶴「…………」ムニーッ
百合子「いひゃい、いひゃいへふ~~!!」
千鶴「娘というわけではありませんの。川で洗濯していましたら、大きな桃がどんぶらこ、どんぶらこと流れてきまして……」
春香「桃太郎か!」
桃子「桃子は桃子だよ」
千鶴「雪歩ちゃん。勝手なお願いだとは承知していますが――――桃子ちゃんをこちらでしばらく預かってくれませんか」
686 :
監督
2021/12/01 06:21:20
ID:6aoFVxyiCo
雪歩「ええっ!?い、いいんですか!いやぁ、妹がまた1人増えちゃうなぁ」
春香「軽っ!もっと熟考しなよ!」
百合子「私もついにお姉さんになる……ってこと!?」
可憐「しばらくってどれぐらいなんですか」
千鶴「次の大きな仕事が終わるまでですわ。ほんの……5年か、10年ですわね」
百合子「ふっ、アイマスが歩んできた年月を考えれば、それぐらい、どうってことないですよ!」
雪歩「桃子ちゃん。今日からこの家が、あなたのココロがかえる場所だよ」
桃子「雪歩さん……!」
春香(これが言いたかっただけでは?)
雪歩はしみじみと思い出す。
このYUKIHO'Sキッチンをこれまでに訪れた客たちのこと―――
美奈子や響、未来ちゃ……
他にも新しく知り合った人々―――
昴と半同棲していた歩、審査員して登場したこのみや歌織、真美に、のり子、翼……
アクアリウスの3人はちゃんと揃ったのだろうか、ハンドレッドこと莉緒の捜査はどうなったのだろう
回収されなかった設定、伏線の数々
オトメティックパワーってなんなん……
687 :
箱デューサー
2021/12/01 06:23:53
ID:6aoFVxyiCo
百合子「どうせ締めるなら、……って感じで締めませんか」
春香「あ、それいいね」
可憐「私も参加していいですか?」
桃子「?」
千鶴「ふふ……。では、雪歩ちゃん、お願いしますわ」
雪歩「ん、ん。それでは改めまして。桃子ちゃん!」
桃子「な、なに?」
雪歩・春香・百合子・可憐「YUKIOHO'Sキッチンへようこそ!!」
ゆるゆると時が流れる藍鱒町、この穏やかな町のひっそりとした路地裏に、乙女の悩みを解決してくれるお店があるらしい。
それはそれは、と~っても素敵なお店が―――――
【安価SS】全8話 765プロ劇場ドラマ
YUKIHO'Sキッチンへようこそ
おしまい
688 :
プロデューサー
2021/12/01 06:27:00
ID:6aoFVxyiCo
以上です!
最後までお付き合いありがとうございましたっっっ!!!!!
反省点が山積みですが、ああだこうだ、ぐちぐちと言ってもしかたないので、スパッと終わりにしますね
(需要関係なしに)年明けに第5回やれたらなー、なんて考えていますけどね!
689 :
監督
2021/12/01 06:51:23
ID:wXWXfuQbQU
乙!
せいぜいリアクションで宇宙まで飛んだり天国一歩手前までいったりするくらいだろうと思ってたけど想像以上に壮大になってたなw
▲
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